--- # /authors/Shunsuke_Sagara URL: /authors/Shunsuke_Sagara name: 相良 俊輔 / Shunsuke Sagara 相良 俊輔(さがら しゅんすけ)。大学在学中より、データの収集、分析、活用のための基盤システムをクラウドで提供する米Treasure Dataの日本法人に参画。インサイドセールス部門の立ち上げ・運営を経て、製造、流通、メディアなどエンタープライズ向けの直販営業及び既存顧客へのアップセル業務に従事。2019年2月、株式会社ジェネシア・ベンチャーズに参画。慶應義塾大学 商学部卒。 --- # /authors/kaori_nakashima URL: /authors/kaori_nakashima name: 中島 馨 / Kaori Nakashima 中島 馨(なかしま かおり)。美術・デザイン関連の大学を卒業後、ファッション業界のクライアントを中心にEC事業に携わったのち、株式会社ROUTE06に入社。UIデザイン、UX設計、クリエイティブデザイン業務に従事。 --- # /authors/kohei_minami URL: /authors/kohei_minami name: 見浪 康平 / Kohei Minami 見浪 康平(みなみ こうへい)。慶應義塾大学経済学部を卒業後、有限責任監査法人トーマツ、PwCアドバイザリー合同会社を経て、楽天グループ株式会社でM\&A・JV出資・スタートアップ投資等をリード/執行。2022年、株式会社ROUTE06入社。社長室長として財務・事業開発・マーケティングを担当(公認会計士) --- # /authors/minwoo_jang URL: /authors/minwoo_jang name: チャン ミンウ / Minwoo Jang Minwoo Jang(チャン ミンウ)。復旦大学中国語言文学学部を卒業後、株式会社ファミリーマート、株式会社パソナ、株式会社MIXIを経て、株式会社コマースジャパンでEC事業責任者・人事領域の責任者として、取締役に就任。2022年、株式会社ROUTE06入社。HRBP・プロフェッショナルサービス本部の事業企画を担当。 --- # /authors/moe_mizono URL: /authors/moe_mizono name: 溝野 萌 / Moe Mizono 溝野 萌(みぞの もえ)。大学卒業後、Sansan株式会社で法人向けソフトウェアサービスの広報を担当。2021年、株式会社ROUTE06に入社。マーケティングチームにて広報業務やオウンドメディアの企画編集に従事。 --- # /authors/nahoko_imamura URL: /authors/nahoko_imamura name: 今村 菜穂子 / Nahoko Imamura 今村 菜穂子(いまむら なほこ)一橋大学商学部卒業後、McKinsey&Companyにて事業戦略立案、新規事業立案及び実行、業務オペレーション改善など様々な経営コンサルティング業務を経験。丸紅株式会社にて中米・アジア・中東地域における事業投資業務に従事した後、スタートアップにて社長室長、執行役員などを歴任。現在は英国を拠点に各種コンサルティング業務の提供、事業立ち上げ支援等に従事。 --- # /authors/research_team URL: /authors/research_team name: ROUTE06 Research Team ROUTE06では大手企業のデジタル・トランスフォーメーション及びデジタル新規事業の立ち上げを支援するためのエンタープライズ向けソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービスを提供しています。社内外の専門家及びリサーチャーを中心とした調査チームを組成し、デジタル関連技術や最新サービスのトレンド分析、組織変革や制度に関する論考、有識者へのインタビュー等を通して得られた知見をもとに、情報発信を行なっております。 --- # /authors/takafumi_endo URL: /authors/takafumi_endo name: 遠藤 崇史 / Takafumi Endo links: github: https://github.com/Gyu07 x: https://x.com/Gyu07 linkedin: https://www.linkedin.com/in/tkendou/ giselle: https://giselles.ai/author/takafumi-endo medium: https://medium.com/@takafumi.endo note: https://note.com/tkendou 遠藤 崇史(えんどう たかふみ)。東北大学大学院情報科学研究科を卒業後、株式会社日本政策投資銀行、株式会社ドリームインキュベータを経て、株式会社スマービーを創業、代表取締役CEOに就任。アパレル大手企業への同社のM\&Aを経て、株式会社ストライプデパートメント取締役CPO兼CMOに就任。株式会社デライトベンチャーズにEIRとして参画後、ROUTE06を創業し、代表取締役に就任。 --- # /authors/yoshitaka_miyata URL: /authors/yoshitaka_miyata name: 宮田 善孝 / Yoshitaka Miyata 宮田 善孝(みやた よしたか)。 京都大学法学部を卒業後、Booz and company(現PwC Strategy&)、及びAccenture Strategyにて、事業戦略、マーケティング戦略、新規事業立案など幅広い経営コンサルティング業務を経験。DeNA、SmartNewsにてBtoC向けの多種多様なコンテンツビジネスをデータ分析、プロダクトマネージャの両面から従事。その後、freeeにて新規SaaSの立ち上げを行い、執行役員 VPoPを歴任。現在、Zen and Companyを創業し、代表取締役に就任。シードからエンタープライズまでプロダクトに関するアドバイザリーを提供。ALL STAR SAAS FUNDのPM Advisor、およびソニー株式会社でSenior Advisorとして主に新規事業における多種多様なプロダクトをサポート。また、日本CPO協会立ち上げから理事として参画し、その後常務執行理事に就任。米国公認会計士。『ALL for SaaS』(翔泳社)刊行。 --- # 事業と組織 URL: /careers/info/business title: 事業と組織 summary: "ROUTE06の事業組織体制について説明します。" date: 2025-07-11 image: "/images/career/business/1.jpg" ROUTE06の事業と組織について ROUTE06は「AI × SI, Transformed.」というビジョンのもと、AI駆動開発プラットフォームとプロフェッショナルサービスを通じて、企業のデジタル変革を支援しています。この記事では、私たちの事業内容と、それを支える組織体制についてご紹介します。 1\. プロフェッショナルサービス事業本部 1.1 Acsim事業部 AI×要件定義プラットフォーム「Acsim」の開発・運営と、要件定義サービスの提供を行う部署です。上流工程の効率化と品質向上を通じて、プロジェクトの成功確率を高めています。 1.2 ProjectOps事業部 大手企業向けのコンサルティング・システム開発・運用保守を担当する部署です。最新の技術スタックと開発手法を採用しながら、エンタープライズに求められる高い品質基準を満たし、リリース後も継続的に価値を提供し続けています。 2\. SaaS事業本部 2.1 Giselle事業部 AIエージェント開発プラットフォーム「Giselle」の企画・開発・運営を行う部署です。誰もがAIを活用したワークフローを構築できるノーコードツールの提供を通じて、企業のAI活用を推進しています。オープンソース化も推進しており、グローバルにプロダクトを展開しています。 2.2 Liam事業部 データベース設計プラットフォーム「Liam」の開発・運営を担当する部署です。AIを活用した次世代のデータベース設計ツールで、開発者の生産性向上と設計品質の向上を実現しています。Giselleと同じようにオープンソース化&グローバルにプロダクトを展開しています。 2.3 社長室 経営戦略の立案と全社的なブランディングを担当する部署です。会社のビジョン・ミッションの浸透、コーポレートサイトの運営、対外的なコミュニケーション戦略の策定など、ROUTE06の成長を支える基盤づくりを行っています。 3\. 技術統括本部 3.1 OSS推進室 オープンソース戦略の推進と技術コミュニティへの貢献を担当する部署です。最新技術の調査・導入や、社内の技術力向上を支援しています。 3.2 SRE システムの信頼性とパフォーマンスを担保する部署です。インフラストラクチャの設計・構築・運用、セキュリティ対策、開発生産性向上のための基盤整備を行っています。 4\. コーポレート本部 4.1 CorporateOps部 経理・労務・法務などのバックオフィス業務を担当する部署です。AIツールを積極的に活用し、効率的で正確な業務運営に取り組んでいます。 4.2 CFO室 財務戦略の立案と実行を担当する部署です。資金調達、予算管理、投資家向けレポーティングなど、会社の健全な成長を財務面から支えています。 4.3 CRE室 IT資産管理と社内システムの運用を担当する部署です。従業員が快適に働ける環境の整備と、情報セキュリティの確保を行っています。 私たちが重視する組織のOS AI駆動開発をリードするスタートアップとして最善のパフォーマンスを発揮するため、私たちは以下の原則を組織のOSとして規定しています。 核心基準 | Mission Kernel: 事業ミッションを起点に、組織や制度を柔軟に設計しています。形骸化したルールやプロセスは迷わずリファクタリング。常に「今、最も価値を生む形」へとアップデートし続ける組織でありたいと考えています。 最少公約 | Elastic Pods: 小さなチーム(Pod)単位で動くことで、意思決定のスピードと実行力を最大化しています。少数精鋭のメンバーがAIツールを駆使し、高速で仮説検証を繰り返す。必要に応じてチーム編成も柔軟に変更し、最適なリソース配分を実現しています。 共創進化 | Scaling Mesh: GitHubを中心としたナレッジ基盤で、場所や時間を問わず、人とAIがシームレスに協働できる環境を構築しています。知識や経験を組織全体でメッシュ状に共有し、個人の成長が組織の進化につながる。そんな自律的な成長サイクルを大切にしています。 AIとともに働くことで、個人もチームも継続的に進化し続ける。そんな成長のあり方を日々模索し、実践しています。 最後に なお、私たちは成長を続けるスタートアップのため、組織図は常にアップデートされています。新しい事業の立ち上げ、新たなポジションの設置など、会社の成長に合わせて柔軟に体制を変更しています。 ROUTE06の事業や組織に興味を持っていただいた方は、ぜひお気軽にご連絡ください。「AI × SI, Transformed.」のビジョンに共感し、共に挑戦できる仲間をお待ちしています。 --- # 報酬評価と福利厚生 URL: /careers/info/evaluation title: 報酬評価と福利厚生 summary: "ROUTE06の報酬評価と福利厚生について説明します。" date: 2025-07-11 image: "/images/career/evaluation/1.jpg" ROUTE06の報酬評価制度 ROUTE06では、事業成長への貢献と個人のキャリア成長を重ね合わせていくことを推奨する報酬評価制度を運用しています、会社の方向性と自身のキャリアプランを重ね合わせ、主体的に価値を創造していく――そんなプロフェッショナルが活躍できる環境を整えています。 報酬制度の基本理念 私たちが最も重視するのは「成長への貢献」です。同時に、その貢献を通じて個人が市場価値を高め、キャリアを発展させていくことを積極的に支援します。会社の成長と個人の成長が相乗効果を生み出す――そんな関係性を、報酬制度を通じて実現しています。 社内での事業貢献はもちろん、社外での活動や市場価値の向上も評価対象とすることで、会社と個人が共に成長していく環境を創出しています。 報酬の構成 標準報酬は以下の内容になっております。 | 項目 | 内容 | |------|------| | 月額基本給 | 能力、技術、経験などを総合的に考慮して決定される基本給市場価値を常に意識し、競争力のある水準を維持 | | インセンティブ | 年2回(7月・1月)支給される臨時賞与会社・事業・チームへの貢献度、会社業績などを考慮して決定 | ストックオプションなどのエクイティ報酬は、会社の業績や資金調達の状況、個人やチームの顕著な成果に応じて付与されることがあります。 評価の仕組み 半期レビュー(6月・12月) 年2回の総合的なレビューで、月額基本給とインセンティブを決定します。役員・部長が参加し、以下の観点から評価を行います: 事業への具体的な貢献と成果 会社の方向性に沿った主体的な取り組み 個人のREADME(後述)に記載されたキャリアプランと実績 市場価値向上につながる社外活動 Call for Proposals(CfP)制度 報酬について「待つ」のではなく「提案する」文化を体現した仕組みです。CfPは部長・役員によってレビューされ、本人にフィードバックが行われます。本人だけでなく、部長・役員からの推薦も可能です。 README - キャリアドキュメント ROUTE06独自の取り組みとして、全メンバーが「README」と呼ばれる自己紹介ドキュメントをGitHub上で管理しています。これは、会社の成長戦略と自身のキャリアビジョンをどう結びつけ、どのような価値を創出していくかを明文化するツールです。事業への貢献を通じて、自身がどう成長していきたいかを主体的に設計・表現する場となっています。 | セクション | 内容 | |------------|------| | COVER LETTER | キャリアビジョン、自己PR | | RESUME | 職歴、学歴、スキル、資格 | | CHANGELOG | 期間ごとの業務内容、成果、成長の記録 | READMEは報酬評価の重要な参考資料となりますが、これだけで決定されるわけではありません。実績や市場環境なども総合的に考慮されます。 評価制度の背景 AI駆動開発の世界では、技術の進化とともに個人の能力や貢献の可能性が短期間で飛躍的に変化します。従来の階段を一段ずつ上るようなグレード制度では、この急速な成長や突出した活躍を適切に評価することが難しいことがあります。 そのため、現時点では一人ひとりの独自の強みや貢献をその時々の文脈に応じて柔軟に評価できる仕組みがフィットしていると考えています。 なお、組織の成長に伴い、より体系的な制度が必要になる可能性も認識しています。メンバーの声を聞きながら、ROUTE06にとって最適な評価制度のあり方を継続的に検討していきます。 自律的なキャリア形成への取り組み READMEによる主体的なキャリアストーリーの構築 CfP制度による自発的な成長アピールの機会 市場価値を意識したスキルアップの推奨 社外活動を通じた専門性向上の支援 ROUTE06で実現できるキャリア この報酬制度は、事業成長に貢献しながら自身のキャリアを構築していく人材を支援する仕組みです: 事業と連動したキャリア形成: 会社の成長戦略と自身のキャリアプランを重ね合わせ、相乗効果を創出 貢献を通じた成長: 事業への具体的な貢献が、そのまま個人の市場価値向上につながる環境 主体的な価値創造: 会社の方向性を理解し、その中で自身の強みを活かして新たな価値を生み出す 成果に基づく評価: 事業への貢献度を最優先に、公正かつ迅速に報酬に反映 ROUTE06が求めるのは、会社の成長と自身の成長を一体として捉え、主体的に両方を実現していく人材です。そんなプロフェッショナルが最大限に力を発揮できる評価制度を整えています。 ROUTE06の福利厚生制度 ROUTE06では、メンバーが自律的に働き、継続的に成長できる環境を整えるため、フルリモートワークを中心とした柔軟な福利厚生制度を提供しています。 | 制度 | 内容 | |------|------| | 健康保険 | 東京都情報サービス産業健康保険組合(TJK) | | 健康診断 | 年1回の定期健康診断(全額会社負担) | | 勤務地 | フルリモートワーク(リモートワーク手当あり) | | 勤務形態 | 裁量労働制による柔軟な働き方 | | 休業制度 | 産前産後休業・育児休業制度 | | 支援金 | 出産・育児支援金 | | オフィス | WeWork丸の内(商談等、業務上必要な場合のみ) | 福利厚生や評価制度は常に見直しを行っているため、最新の情報についてはお気軽にお問い合わせください。ROUTE06では、一人ひとりが自分らしく活躍し、継続的に成長していける職場環境の実現を目指しています。 --- # 採用基準とプロセス URL: /careers/info/interview title: 採用基準とプロセス summary: "ROUTE06の採用プロセスについて説明します。" date: 2025-07-11 image: "/images/career/interview/1.jpg" ROUTE06の採用基準 ROUTE06は「AI × SI, Transformed」というビジョンのもと、AIと人が協働することで社会に大きな変化をもたらすことを目指しています。私たちは次の価値観をDNAとして仕事に取り組んでいます。 私たちが大切にする組織のDNA AI駆動 | AI-Native: すべての業務の中心にAIを据え、「この業務をAIでもっと良くできないか?」と常に問い掛けながら価値を創出します。プロダクト開発から日常業務まで、AIと共に働くことが当たり前の環境です。 自律自走 | Act and Own:一人ひとりが主体的に動き、成果に最後まで責任を持ちます。課題を自ら見つけ、解決策を考え、即行動に移す――そんなプロフェッショナルな働き方を重視しています。 実装至上 | All Builders: エンジニア、デザイナー、ビジネス職など職種を問わず、全員が「つくる人」。アイデアが生まれたら即プロトタイプ――職種の壁を越えて、全員でプロダクトを育てます。 これらの価値観は選考でも重視しています。面談では、これまでの経験や今後の展望を率直にお聞かせください。どのような場面でこれらの価値観を体現してきたか、またROUTE06で何に挑戦したいか、ぜひ一緒にディスカッションさせてください。 ROUTE06ならではの経験 ROUTE06では、個人の成長と事業の成長を重ね合わせ、キャリアの可能性を最大化できます。専門性を深めながら事業創造やプロダクト開発の中核を担う、そんな多面的なキャリアを実現できる環境です。 オンリーワンのプロダクト開発 国内では数少ないAI駆動開発プラットフォーム事業に従事する経験 実践的なAI活用の最前線 最新・最先端のAIツール・技術の導入と実践機会 裁量と成果へのコミット 自分の判断でスピーディーに動き、事業成果に直結する仕事をリード 職種の壁を越えた成長機会 エンジニア・デザイナーがビジネスを、ビジネスメンバーが開発を学ぶ機会も豊富 少数ユニット型チームのスピード感 プロフェッショナル同士で切磋琢磨し、大企業では味わえない成長速度 未来の組織モデルを共創 AIと人が真に協働する新しい組織づくり ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひお気軽にご連絡ください。 ROUTE06の選考プロセス 選考ステップ ROUTE06の選考はすべてオンラインで実施します。日本全国どこからでもご応募いただけます。面談の内容や回数は部門・職種・ポジションによって異なりますが、基本的な流れは以下のとおりです。詳細は担当者にお問い合わせください。 | ステップ | 内容 | | ------------------------- | ----------------------------------- | | 1. 書類選考 | 書類選考の上、面接をご案内する場合は5営業日以内にご連絡いたします。 | | 2. 面接(複数回) | ROUTE06とのフィットを相互に確認するための機会です。各ポジションの担当者、経営陣との面接を行います。入社後のイメージを鮮明にしていただくために、ご経験、職種、仕事内容などに合わせて個別にアレンジします。| | 3. 技術面接(必要な場合) | 通常の面接に加え、口頭試問での技術面接を行う場合があります。実施可否については選考開始の段階で個別にアレンジします。| | 4. 内定 | 正式にオファーレターをお送りします。| 面接のポイント ― 相互理解を深める対話 ROUTE06では、スキル・経験に加え、あなたのライフステージや弊社の事業フェーズとのフィット感を大切にしています。面接は「お互いを知る場」として、次のようなテーマを中心にお話させていただきます。 お聞きしたいこと これまでで最も誇りに思う成果と、その原動力 ROUTE06で実現したいキャリアビジョン AIと協働する働き方への期待や考え チームで価値を生み出すスタンス 私たちからお伝えすること ROUTE06のビジョンと現在地 プロダクト/プロジェクト/働き方のリアル 組織の強みと率直な課題 お任せしたい役割と成長機会 私たちは、組織や事業とのフィット感に加え、AIを駆使して従来は実現できなかった高い効率とパフォーマンスを追求できる方を求めています。選考過程でも、AIをどのように活用したいかは重要なポイントになります。 選考を通じて実現したいこと 選考は単なる試験ではなく、互いを深く理解し合うためのプロセスと位置付けています。たとえ今回ご縁がかなわなかったとしても、ROUTE06との対話が皆さまのキャリアを考える一助となれば幸いです。 AI × SI の未来を共に切り拓く志をお持ちの方とお目にかかれる日を、心より楽しみにしております。 --- # /categories/INFORMATION URL: /categories/INFORMATION name: INFORMATION nameJa: インフォメーション description: 会社に関連するお知らせ --- # /categories/PRESS URL: /categories/PRESS name: PRESS nameJa: プレスリリース description: プレスリリースについて --- # /categories/business_model URL: /categories/business_model name: BUSINESS MODEL nameJa: ビジネスモデル description: ビジネスモデルは、企業が価値を創出・提供・収益化する枠組みを指します。ROUTE06の論考では、デジタル時代の競争力維持と持続可能な成長に焦点を当て、AI活用や新規事業立ち上げなどの実践的アプローチを提示しています。技術革新や市場変化に対応した柔軟なモデル構築の重要性を強調しています。 デジタル関連事業を中心に、企業のビジネスモデルや新規事業の立ち上げに関する論考は、現代の急速な技術進化とグローバル市場の変化に対応するために不可欠な要素です。ビジネスモデルは、企業が市場でどのようにして価値を創出し、提供し、そして収益化するかを規定する枠組みであり、技術革新や競争環境の変化に合わせて柔軟に進化させる必要があります。 ROUTE06が提供するビジネスモデルに関する論考は、企業がどのようにして市場で競争力を維持し、持続可能な成長を遂げるかに焦点を当てています。特に、デジタル関連事業におけるビジネスモデルの設計は、顧客の多様化するニーズに対応するための新しいアプローチを必要としています。ビジネスモデルの構築においては、企業が提供する価値提案、その価値を顧客に届けるためのチャネル、顧客との関係性、そして収益化の仕組みを包括的に検討する必要があります​。 ROUTE06のアプローチは、単なる理論的な枠組みを超えて、実際の事例を通じてビジネスモデルの実践的な適用を示しています。たとえば、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進において、企業がどのようにして新しい技術を取り入れ、従来のビジネスプロセスを革新しているかについて具体的な事例を紹介しています。これには、AI(人工知能)やビッグデータ分析を活用した業務効率化や、新たな収益源の開拓が含まれます​。 また、ビジネスモデルの成功には、技術やオペレーション、知的財産などの内部リソースの効果的な管理が不可欠です。しかし、それに加えて、法規制や業界特有の商習慣などの外的要因も重要な役割を果たします。ROUTE06は、これらの外的要因を考慮に入れたビジネスモデルの設計を提案しており、企業が直面する多様なリスクに対応できる柔軟な戦略を提供しています​。 さらに、新規事業の立ち上げに関する論考では、ROUTE06は市場調査やプロトタイプ開発、仮説検証を通じて、企業が迅速に市場の変化に対応し、顧客のニーズに応じた製品やサービスを提供できるよう支援しています。特に、アジャイル開発手法を取り入れることで、企業は短期間で製品を市場に投入し、顧客からのフィードバックを基に迅速に改善を行うことができます。これにより、企業はリスクを最小限に抑えつつ、革新的なビジネスモデルを構築することが可能となります​。 ROUTE06が提供するビジネスモデルと新規事業に関する論考は、理論と実践の両方を兼ね備えたものであり、企業がデジタル時代の複雑な市場環境で成功するための包括的なフレームワークを提供します。これにより、企業は競争力を強化し、持続可能な成長を実現するための戦略的な意思決定を支援することができます。 --- # /categories/case URL: /categories/case name: CASE nameJa: ケース description: ROUTE06が紹介する「ケース」は、国内外の企業におけるデジタルサービス導入やDXの成功事例を幅広く扱っています。AI活用、クラウド技術導入、新規事業支援など、多様な事例を通じて、企業のデジタル化による競争力維持と成長戦略を深く掘り下げ、読者の自社戦略策定に役立つ情報を提供しています。 ROUTE06(ルートシックス)は、顧客企業に対するデジタルサービスおよびプロダクトの導入事例や、パートナー企業の取り組みに限らず、国内外の大手企業における新規事業やデジタルトランスフォーメーション(DX)の成功事例を幅広く紹介しています。これらの事例を通じて、ROUTE06は、さまざまな業界やビジネス分野におけるデジタル化の進展とその影響を明らかにし、企業がどのようにして競争力を維持し、成長を遂げているのかを深く掘り下げています。 ROUTE06が特に注目しているのは、企業がデジタル技術を活用してどのようにビジネスモデルを革新し、新しい市場を開拓しているかという点です。たとえば、大手企業がAI(人工知能)やデータ分析を活用して業務効率を大幅に向上させた事例や、クラウド技術を導入してグローバルにビジネスを展開している事例などが紹介されています。これらの事例は、企業がDXを通じてどのようにして競争優位を確立し、持続的な成長を実現しているかを具体的に示しています​。 また、ROUTE06は、プロフェッショナルファームやベンチャーキャピタルなどの支援企業が、新規事業やスタートアップの成長をどのように支援しているかについても詳しく取り上げています。これには、資金調達のサポート、経営戦略の策定、マーケティング支援など、幅広いサポート内容が含まれます。特に、ベンチャーキャピタルによる支援は、革新的なアイデアを持つスタートアップが迅速に市場に進出し、成功を収めるための重要な要素となっています。ROUTE06は、これらの支援がどのように新たなビジネスチャンスを生み出し、企業の成長を促進しているかを具体的な事例を通じて紹介しています。 さらに、ROUTE06は政府の支援制度にも焦点を当てています。特に、各国政府が推進するDX支援政策や、企業のイノベーションを支援するための助成金制度などが紹介されています。これらの政策や制度は、企業がデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを構築し、グローバル市場での競争力を強化するための重要なリソースとなっています。ROUTE06は、これらの支援制度が企業に与える影響や、その活用方法についても詳しく解説しています​。 このように、ROUTE06のケーススタディカテゴリーは、単なる事例紹介にとどまらず、デジタル技術が企業のビジネスモデルや成長戦略にどのように影響を与えているのかを多角的に分析しています。これにより、読者は、自社のデジタル戦略を策定する際の参考とすることができるでしょう。また、ROUTE06は、国内外の最新のDX動向や、それに関連する企業の取り組みをタイムリーに提供することで、企業の競争力強化に貢献することを目指しています。 --- # /categories/commerce URL: /categories/commerce name: COMMERCE nameJa: コマース description: 「コマース」は、B2CとB2Bの電子商取引を中心とする分野で、日本の市場規模は急速に拡大しています。ROUTE06は、AI技術を活用したパーソナライズ化や効率的な企業間取引、物流最適化、グローバル展開における法規制対応など、ECビジネスの多様な側面に関する戦略的インサイトを提供しています。 電子商取引(EC)は、現代のビジネスにおいて急速に拡大し続けている分野であり、B2C(消費者向け)およびB2B(企業間取引)の両方で重要な役割を果たしています。経済産業省の「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、令和2年の日本国内のB2C-EC市場規模は19.3兆円、B2B-EC市場規模は334.9兆円に達しており、今後もさらなる拡大が予測されています。このような市場の成長に伴い、ECに関連するさまざまなテーマがビジネス戦略においてますます重要な位置を占めるようになっています。 B2C-ECは、消費者に対する直接的な販売を通じて、企業が広範な市場にリーチするための強力な手段となっています。特に、デジタルマーケティングの進化に伴い、パーソナライズされた顧客体験が可能となり、消費者の購買意欲を高めるための効果的なツールとして利用されています。例えば、データ分析を活用したターゲティング広告や、ソーシャルメディアを通じたブランドエンゲージメントの向上は、B2C-ECにおいて不可欠な戦略です。また、AI技術の進展により、チャットボットやリコメンデーションエンジンを通じて、より一層のカスタマイズが可能となり、消費者の購買体験が向上しています​。 一方、B2B-ECは、企業間取引において効率的なプロセスを実現するためのプラットフォームとして重要性を増しています。企業間の取引量が増加する中で、電子商取引プラットフォームは、注文処理の迅速化、コスト削減、在庫管理の最適化など、ビジネスプロセスの効率化に大きく貢献しています。特に、EDI(電子データ交換)やクラウドベースのソリューションが普及することで、企業はグローバルなサプライチェーンをより効果的に管理し、迅速に対応することが可能となっています。これにより、取引の透明性が向上し、企業間の信頼性が強化されています​。 電子商取引の成長に伴い、ロジスティクスとカスタマーサポートの重要性も高まっています。ECにおける物流は、製品の迅速な配送と在庫管理を確実に行うための鍵となります。特に、消費者が即日配送や翌日配送を期待する中で、効率的な物流システムの構築は、競争力を維持するために不可欠です。また、カスタマーサポートは、顧客満足度を高め、リピーターを増やすための重要な要素です。例えば、顧客からの問い合わせに迅速に対応するためのパーソナライズされたサポート体制や、購入後のフォローアップが、EC事業における成功の鍵となります​。 日本国内のEC市場が拡大を続ける中で、グローバル市場に目を向けた際の法規制や商習慣の違いも重要な考慮事項となります。例えば、各国の消費者保護法やプライバシー規制に対応するための法務的な調整が必要です。また、通貨や税制の違いもグローバルなEC事業展開において重要な要素となります。これらの要因を効果的に管理し、柔軟に対応することが、成功するグローバルECビジネスの構築に不可欠です。 B2CおよびB2Bの両面での電子商取引は、現代のビジネス環境においてますます重要な役割を果たしています。ROUTE06は、これらのEC関連のテーマについて幅広く論考を提供し、企業が直面する課題に対応するための戦略的なインサイトを提供しています。マーケティング、ロジスティクス、カスタマーサポート、法規制など、あらゆる側面での深い理解を持つことが、競争力のあるEC事業を構築するための鍵となります。 --- # /categories/company URL: /categories/company name: COMPANY nameJa: カンパニー description: ROUTE06は、大手企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するテクノロジー企業です。AIやデータ分析を活用した統合的なソリューションを提供し、自社でも最新技術を導入して業務効率化を実現しています。組織文化の変革や人材育成にも注力し、持続可能な成長を目指しています。 ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する先進的な企業として、積極的に新しいプロダクトや技術を活用し、自社の業務および組織運営においても最先端の業務効率化に取り組んでいます。単にクライアント企業のDXを支援するだけでなく、自らもデジタル技術を活用して、社内のオペレーションやプロセスを進化させることで、他の企業にとってのロールモデルとなることを目指しています。 ROUTE06は、大手企業が直面する複雑なDX課題に対して、幅広いサービスを提供しています。これには、ビジネスモデルの再構築、業務プロセスの自動化、データ分析による意思決定支援、そして顧客体験の向上などが含まれます。ROUTE06の強みは、各分野における深い専門知識と、これらを組み合わせた統合的なソリューションを提供できることにあります。例えば、AIや機械学習を活用してデータ駆動型の意思決定を実現し、企業が市場の変化に迅速に対応できるよう支援する取り組みが進行しています​。 ROUTE06は、クライアント企業に提供するソリューションを自社の業務にも適用することで、業務効率化を実現しています。例えば、社内でのプロジェクト管理においては、最新のプロジェクト管理ツールを導入し、アジャイルな手法でプロジェクトを進行させることで、迅速な意思決定とリソースの最適配分を可能にしています。また、バックエンド業務においても、クラウドベースのソリューションや自動化ツールを導入することで、従業員がより付加価値の高い業務に集中できる環境を整えています​。 テクノロジーの導入だけでなく、組織文化の変革にも力を入れています。デジタルファーストの文化を推進し、全社員が新しい技術やツールを積極的に学び、業務に活用できる環境を整えています。これにより、社員一人ひとりがDXの重要性を理解し、日々の業務で実践できるような組織風土が醸成されています。また、デジタルスキルを持つ人材の育成にも注力しており、社員向けに継続的なトレーニングやスキルアップの機会を提供しています。これにより、ROUTE06は自社のDXを推進すると同時に、クライアント企業にとっても信頼できるパートナーであることを目指しています。 ROUTE06は、デジタル技術の活用を通じて持続可能な成長を目指しています。環境に配慮したエネルギー効率の高いインフラの導入や、リモートワーク環境の整備により、業務効率を高めつつ、環境負荷の低減にも取り組んでいます。また、デジタル技術を活用したデータ分析により、長期的な経営戦略の策定に役立てています。これにより、ROUTE06は、未来志向の経営を実現し、クライアント企業に対しても持続可能なビジネスモデルの構築を支援しています​。 ROUTE06の取り組みは、最先端のデジタル技術を駆使して自社およびクライアント企業のDXを推進することにあります。業務効率化、組織文化の変革、人材育成、持続可能な成長の実現に向けた具体的なアクションを通じて、ROUTE06は他の企業にとっての模範となり、デジタル時代における企業の成功を支援しています。ROUTE06が提供するソリューションとその実践は、企業がデジタル変革を成し遂げ、競争力を高めるための貴重なリソースであり続けるでしょう。 --- # /categories/design URL: /categories/design name: DESIGN nameJa: デザイン description: 「デザイン」は、現代のビジネスにおいて製品やサービスの成功に不可欠な要素です。ROUTE06は、UIとUXの重要性、最新ツールや技術の活用、デザインエンジニアリングの進化に関する論考を提供しています。AR・VRなどの新技術も含め、ユーザー体験の向上と効率的な開発プロセスを実現するための実践的なインサイトを提供しています。 現代のビジネス環境において、プロダクトのUI(ユーザーインターフェース)デザインとUX(ユーザーエクスペリエンス)設計は、製品やサービスの成功に不可欠な要素となっています。デジタルプロダクトに限らず、物理的な製品やサービスにおいても、ユーザーとの接点であるUIや、ユーザー体験全体を設計するUXは、ブランドの印象や顧客満足度に大きく影響します。 UIデザインは、ユーザーが製品やサービスと対話する際の視覚的および操作的な要素を指し、UX設計は、ユーザーが製品やサービスを利用する際の体験全体を設計するプロセスです。これらの設計が優れているかどうかは、ユーザーの満足度に直結し、ひいては製品やサービスの成功に大きな影響を与えます。UI/UXデザインが適切に行われていない場合、どれほど優れた機能を持っていても、ユーザーはその価値を十分に享受することができません。 UI/UXデザインにおいて、最新のデザインツールや技術の進化は、デザイナーにとって不可欠なものです。例えば、FigmaやSketchなどのデザインツールは、リモートワークが増加する中でチーム間のコラボレーションを容易にし、リアルタイムでのフィードバックや修正を可能にしています。また、Adobe XDのようなツールは、プロトタイプ作成からユーザーテストまで、ワンストップで対応できる機能を備えており、デザインプロセスを効率化しています​。 さらに、Webデザインにおけるフロントエンド開発の進化も無視できません。ReactやVue.jsなどのフレームワークは、UIコンポーネントの再利用を容易にし、効率的な開発を可能にしています。これらの技術は、デザインと開発の橋渡しをするデザインエンジニアリングの役割を強化し、デザイナーとエンジニアがより密接に協力して高品質なプロダクトを迅速に市場に投入することを支援します​。 デザインエンジニアリングは、デザインとテクノロジーを統合する分野であり、ユーザーにとって直感的で魅力的なインターフェースを作り上げるために、デザイナーとエンジニアが協力するプロセスです。この分野では、技術的な知識を持つデザイナーや、デザインに精通したエンジニアが求められています。これにより、デザインと開発の間に存在するギャップが埋められ、よりスムーズなプロダクト開発が可能となります。 また、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)のような新興技術の登場により、UI/UXの世界も劇的に変化しています。これらの技術は、ユーザーとの新しい接点を創出し、これまでにない体験を提供する可能性を秘めています。特に、教育やエンターテインメント、医療などの分野では、これらの技術を活用したインターフェースが急速に進化しており、デザインエンジニアリングの重要性が一層高まっています​。 ROUTE06が提供するUIデザインとUX設計に関する論考は、最新のツールや技術、デザインエンジニアリングの進化を取り上げることで、企業が競争力を維持し、ユーザーに優れた体験を提供するための実践的なインサイトを提供しています。これにより、デザイナーやエンジニア、そしてプロダクトマネージャーは、変化する市場のニーズに対応しながら、優れたプロダクトを開発するための知識とツールを手に入れることができるでしょう。 --- # /categories/letter URL: /categories/letter name: LETTER nameJa: レター description: ROUTE06は、企業経営、事業運営、IR、CSRに関する情報を透明性を重視して発信し、株主や投資家を含むステークホルダーとの信頼関係の構築に取り組んでいます。持続可能な成長を目指し、信頼性の高い企業として価値を提供しています。 ROUTE06(ルートシックス)は、会社経営、事業運営、IR(インベスターリレーションズ)、CSR(企業の社会的責任)など、企業活動に関わる多岐にわたるテーマについて、ステークホルダーの皆様に向けての情報発信を行っています。本カテゴリーでは、株主や経営者、従業員、顧客企業、取引先、監督省庁など、多様な利害関係者に対して、ROUTE06がどのように経営を行い、事業を運営しているかについてのメッセージや案内が含まれます。 ROUTE06は、企業経営において透明性と誠実さを重視しています。このカテゴリーでは、経営陣からのメッセージや、企業の戦略的ビジョンについての情報が共有されており、株主や投資家に対して、同社の成長戦略や財務パフォーマンスについての最新情報が提供されます。また、定期的な財務報告や業績予測などを通じて、ROUTE06の経営状況や今後の見通しについて、具体的なデータに基づいた情報が伝えられます。これにより、株主や投資家は、同社の持続可能な成長に対する信頼を深めることができます​。 CSR(企業の社会的責任)は、現代の企業が社会に対して果たすべき責任としてますます重要視されています。ROUTE06は、環境保護、社会貢献、ガバナンスの強化など、CSR活動を積極的に推進しています。このカテゴリーでは、同社が取り組んでいる様々なCSRプロジェクトや、持続可能な開発目標(SDGs)に向けた活動についての情報が提供されています。たとえば、環境負荷の低減を目指した取り組みや、地域社会との連携による社会貢献活動などが紹介されており、ステークホルダーがROUTE06の社会的責任に対する姿勢を理解し、共感できる内容となっています。 IR(インベスターリレーションズ)活動は、ROUTE06が株主や投資家との信頼関係を築くための重要なコミュニケーション手段です。このカテゴリーでは、財務状況や事業戦略に関する情報を公開し、投資家が適切な投資判断を行えるようサポートしています。具体的には、株主総会の報告や、四半期ごとの業績報告書、アニュアルレポートなどが含まれています。また、経営陣のインタビューやアナリスト向けのプレゼンテーション資料なども公開されており、ROUTE06の経営ビジョンや戦略的意図を深く理解するための情報が提供されています​。 ROUTE06は、持続可能な成長を実現するために、長期的な視点で事業を運営しています。このカテゴリーでは、同社がどのようにして市場の変化に対応し、持続可能な成長を追求しているかについての戦略的アプローチが紹介されています。これには、新規事業の立ち上げや市場拡大に向けた取り組み、技術革新の推進、そして顧客との長期的な関係構築が含まれます。これらの活動を通じて、ROUTE06は、競争力を維持しつつ、ステークホルダーの期待に応える企業としての地位を確立しています​。 ROUTE06の会社経営、事業運営、IR、CSRに関する情報は、ステークホルダーとの信頼関係を深めるための重要な手段です。透明性を重視した情報発信を通じて、同社は株主や投資家、顧客、従業員をはじめとする多様なステークホルダーに対して、企業としての信頼性と持続可能な成長を追求する姿勢を示しています。これにより、ROUTE06は、社会的責任を果たしつつ、未来を見据えた経営を行う企業としての価値を提供し続けています。 --- # /categories/management URL: /categories/management name: MANAGEMENT nameJa: マネジメント description: 「マネジメント」に関して、ROUTE06は企業戦略、組織設計、意思決定プロセス、企業文化、コーポレートガバナンスなど、幅広いテーマを扱っています。大手企業からスタートアップまで、様々な業界のベストプラクティスや革新的アプローチを分析し、経営課題に対する実践的な洞察を提供することで、企業の持続可能な成長を支援しています。 国内外の大手企業からスタートアップまで、幅広い企業が直面する経営および組織運営に関する課題は、現代のビジネス環境において非常に重要なテーマです。ROUTE06では、企業戦略、組織設計、意思決定プロセス、企業文化、コーポレートガバナンスなど、組織全般に関する論考を提供し、さまざまな業界や業種にわたるベストプラクティスや革新的なアプローチを紹介しています。 経営戦略は、企業が市場で競争優位を確立し、持続可能な成長を実現するための基本的な枠組みです。ROUTE06では、さまざまな企業がどのようにして経営戦略を策定し、市場の変化に対応しているかを詳しく分析しています。たとえば、グローバル市場での競争力を高めるために、多国籍企業が採用している国際戦略や、スタートアップ企業が市場に迅速に進出するためのアジャイルな経営手法が紹介されています。これにより、企業がどのようにして柔軟に戦略を適応させ、競争環境でのリーダーシップを維持しているかが明らかになります​。 組織設計は、企業が効率的に機能し、目標を達成するための基本的な構造を提供します。ROUTE06は、さまざまな企業がどのようにして組織を設計し、効果的な意思決定プロセスを導入しているかについての論考を提供しています。例えば、フラットな組織構造を採用することで意思決定の迅速化を図り、イノベーションを促進している企業や、マトリックス型組織を導入することで複数のプロジェクトを効果的に管理している企業が紹介されています。さらに、デジタルトランスフォーメーションの進展により、データドリブンな意思決定が組織設計にどのように影響を与えているかについても詳述されています。 企業文化は、組織の成功にとって不可欠な要素であり、従業員の行動や価値観に大きな影響を与えます。ROUTE06では、企業文化がどのようにして形成され、維持されているかについても取り上げています。特に、スタートアップ企業がどのようにして強い企業文化を構築し、成長とともにその文化を維持するかについての事例が紹介されています。また、大手企業が文化変革を推進し、従業員のエンゲージメントを向上させるための施策も詳述されています。これにより、企業文化が組織のパフォーマンスに与える影響についての理解が深まります​。 コーポレートガバナンスは、企業が法令遵守や倫理的な経営を確保し、利害関係者に対する責任を果たすための枠組みです。ROUTE06は、企業がどのようにして効果的なガバナンスを実現し、リスクを管理しているかについての論考を提供しています。特に、グローバル企業が複雑な規制環境に対応するためのガバナンス構造や、スタートアップ企業が急速な成長に伴うリスクをどのように管理しているかについての事例が紹介されています。これにより、企業が透明性を確保し、長期的な持続可能性を追求するためのガバナンスの重要性が強調されています​。 ROUTE06の経営および組織に関する論考は、企業が直面するさまざまな課題に対して実践的な洞察を提供し、持続可能な成長を実現するための包括的なフレームワークを提供しています。企業戦略、組織設計、企業文化、ガバナンスなど、あらゆる側面での深い理解が、企業が市場での競争力を維持し、成功を収めるための鍵となります。 --- # /categories/marketing URL: /categories/marketing name: MARKETING nameJa: マーケティング description: 「マーケティング」に関して、ROUTE06はデジタルプロダクトの成功に不可欠な情報を提供しています。SNS活用、SEO、ASO、CRM、デジタル広告など幅広いテーマを扱い、オンラインとオフラインの連動も含めた包括的なアプローチを紹介しています。これにより、企業は効果的なマーケティング活動を展開し、競争力を維持することができます。 デジタルプロダクトのマーケティングは、現代のビジネスにおいて不可欠な要素となっており、Webサービスやネイティブアプリの成功には効果的なマーケティング戦略が欠かせません。ROUTE06では、最新のSNS活用、検索エンジン最適化(SEO)、アプリストア最適化(ASO)、CRM、キャンペーン施策、デジタル広告、その他プロモーション活動に関する論考を提供し、デジタルプロダクトの成長を促進するための実践的な知見を共有しています。 SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は、現代のデジタルマーケティングにおいて非常に強力なツールです。企業はSNSを活用してターゲットオーディエンスにリーチし、ブランドの認知度を高めることができます。ROUTE06では、企業がどのようにしてSNSを活用し、効果的なコンテンツを作成・配信しているかについての最新のトレンドや事例を紹介しています。たとえば、InstagramやXなどのプラットフォームでのビジュアルコンテンツの活用や、TikTokを通じた短編動画のマーケティング戦略が注目されています。また、インフルエンサーを活用したマーケティングも、信頼性と影響力を高めるための効果的な手法として紹介されています​。 検索エンジン最適化(SEO)やアプリストア最適化(ASO)は、デジタルプロダクトの発見性を高め、ターゲットユーザーの獲得に不可欠な要素です。ROUTE06は、企業がどのようにして検索エンジンやアプリストア内でのランキングを向上させ、より多くのユーザーにリーチしているかを詳述しています。例えば、Googleの検索アルゴリズムの変化に対応するための最新のSEO戦略や、アプリストアでの可視性を高めるためのASO技術についての情報が提供されています。これにより、企業は自社のデジタルプロダクトが適切に最適化され、競争力を持つことができるようになります。 デジタル広告は、ターゲットオーディエンスに対するプロモーション活動の中核を成します。ROUTE06では、企業がどのようにしてデジタル広告を活用し、効果的なリターンを得ているかについての具体的な戦略を紹介しています。たとえば、Google広告やFacebook広告などのプラットフォームを利用したターゲティング広告や、リターゲティング戦略が紹介されています。また、カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)を通じて、顧客との長期的な関係を構築し、ロイヤリティを高める方法についても詳述されています。これには、顧客データを活用したパーソナライズされたコミュニケーションや、顧客のライフサイクル全体を通じたエンゲージメント戦略が含まれます​。 オンラインとオフラインのマーケティング活動を連動させることは、全体的なマーケティング効果を最大化するために重要です。ROUTE06は、企業がどのようにしてオンラインデータとオフラインデータを統合し、包括的なマーケティング戦略を構築しているかについての事例を紹介しています。これには、オムニチャネルマーケティングの実践や、オンラインでの行動データを活用したオフラインでの消費者行動の予測などが含まれます。このようなデータ活用により、企業は消費者の行動をより深く理解し、効果的なマーケティング活動を展開することが可能となります​。 ROUTE06が提供するデジタルプロダクトのマーケティングに関する論考は、現代のマーケティングにおいて不可欠な要素を包括的にカバーしており、企業が競争力を維持し、成功を収めるための実践的な知識と戦略を提供しています。これにより、マーケティング担当者や経営者は、最新のマーケティングツールや手法を効果的に活用し、ターゲットオーディエンスにリーチするための新しい方法を学ぶことができるでしょう。 --- # /categories/marketplace URL: /categories/marketplace name: MARKETPLACE nameJa: マーケットプレイス description: 「マーケットプレイス」は、現代の商取引で重要な役割を果たすデジタルプラットフォームです。ROUTE06は、消費財から産業財まで多様な商材を扱うオンライン取引の進化を紹介しています。AI、ブロックチェーンなどの技術活用による効率化や、B2B市場のデジタル化進展など、最新トレンドと戦略的インサイトを提供し、企業の競争力維持を支援しています。 オンライン・マーケットプレイスは、消費財から産業財まで、多様な商材を取り扱うデジタルプラットフォームとして、現代の商取引において非常に重要な役割を果たしています。マーケットプレイスは、売り手と買い手が継続的かつ頻繁に売買を行うための取引プラットフォームであり、登録や口座開設から商談、見積、受注、決済、配送まで、商取引に必要な一連の手続きをオンライン上で行うことを可能にします。このようなプラットフォームは、消費財市場において既に普及していますが、近年ではB2B(企業間取引)のデジタル化に注目が集まり、産業財分野でも新しいマーケットプレイスが国内外で次々と立ち上がっています。 オンライン・マーケットプレイスは、インターネットの普及とともに急速に進化し、世界中の企業や消費者にとって欠かせない商取引の場となりました。特に、AmazonやAlibabaなどのグローバルプラットフォームが牽引する形で、多くの企業がオンラインでの販売チャネルを確立し、消費者は多様な商品にアクセスできるようになりました。これにより、従来の物理的な店舗に依存しない、新しいビジネスモデルが確立され、マーケットプレイスは企業にとっても消費者にとっても欠かせない存在となっています​。 B2Bマーケットプレイスのデジタル化は、特に産業財分野で大きな変化をもたらしています。従来、この分野ではフェイスツーフェイスの取引が主流であり、デジタル化の波は遅れていました。しかし、最近では産業財分野においてもオンライン取引が活発化しており、新しいマーケットプレイスの立ち上げが加速しています。これにより、企業は効率的にサプライチェーンを管理し、より迅速に製品やサービスを提供できるようになりました​。 特に、デジタルプラットフォームを通じて企業が製品を購入し、サプライヤーと直接取引を行うことで、取引の透明性が向上し、コスト削減やプロセスの効率化が図られています。さらに、マーケットプレイスは、企業間の取引を容易にするだけでなく、グローバルな市場へのアクセスを提供し、企業が新しい市場に迅速に参入できるよう支援しています。これにより、特に中小企業にとっては、規模の経済を享受し、競争力を維持するための強力なツールとなっています​。 テクノロジーは、オンライン・マーケットプレイスの進化と拡大において中心的な役割を果たしています。特に、人工知能(AI)や機械学習(ML)を活用することで、売買プロセスの自動化や、カスタマーエクスペリエンスの向上が図られています。AIを利用したリコメンデーションシステムは、顧客に対して最適な製品を提案することで、購入意欲を高める効果があります。また、ビッグデータ分析を通じて、取引のトレンドや需要予測を行い、企業がより戦略的な意思決定を行うための支援が可能となっています​。 さらに、ブロックチェーン技術の導入により、取引の透明性とセキュリティが強化されています。これにより、企業間の信頼が高まり、より安全で効率的な取引が可能となることが期待されています。ブロックチェーンを活用したスマートコントラクトは、契約条件が満たされたときに自動的に取引が実行されるため、手続きの効率化とコスト削減に貢献しています​。 オンライン・マーケットプレイスは、消費財から産業財まで、あらゆる商材の取引を支える基盤として、今後ますます重要性を増していくことが予想されます。特に、B2B市場におけるデジタル化の進展は、企業が効率的かつ透明性の高い取引を行うための新しい可能性を切り開いています。ROUTE06では、マーケットプレイスの進化とその影響についての最新のトレンドや事例を紹介し、企業がこの変化に対応し、競争力を維持するための戦略的なインサイトを提供しています。これにより、企業はオンライン・マーケットプレイスを活用して新しいビジネスチャンスを捉え、持続可能な成長を実現することができるでしょう。 --- # /categories/media URL: /categories/media name: MEDIA nameJa: メディア description: メディア掲載について --- # /categories/platform URL: /categories/platform name: PLATFORM nameJa: プラットフォーム description: 「プラットフォーム」は、デジタル技術を活用して取引やコミュニケーションを効率化し、付加価値を生み出すビジネスモデルです。ROUTE06は、ネットワーク効果の重要性、運営オペレーションの最適化、マーケティング戦略、ロジスティクスなど、プラットフォーム事業の成功に不可欠な要素に関する包括的な論考を提供し、企業の持続可能な成長を支援しています。 デジタルプラットフォーム事業は、現代のビジネスにおいて急速に成長している分野であり、デジタル技術を活用することで、売り手や買い手などのグループ間の取引やコミュニケーションにおけるコストを削減し、付加価値を生み出すビジネスモデルです。このようなプラットフォームは、企業にとって新たな収益源を創出し、エコシステム全体にわたる影響力を持つことが可能です。ROUTE06では、デジタルプラットフォーム事業に関するさまざまな論考を提供し、そのビジネス戦略や運営オペレーションについての洞察を深めています。 デジタルプラットフォームの成功には、明確なビジネス戦略が不可欠です。プラットフォーム事業は、単なる仲介者としての役割を超え、ユーザー間の取引を効率化し、さらにデータ活用による付加価値を提供することで、新たな経済価値を生み出します。たとえば、AmazonやAlibabaのような巨大プラットフォームは、売り手と買い手を結びつけるだけでなく、データを活用してパーソナライズされたサービスやリコメンデーションを提供しています。これにより、取引がよりスムーズかつ効率的に行われ、顧客満足度が向上し、エコシステム全体に利益をもたらしています​。 デジタルプラットフォームの成長において、ネットワーク効果(network effects)とネットワーク外部性(network externalities)は非常に重要な要素です。ネットワーク効果とは、プラットフォームに参加するユーザーが増えることで、各ユーザーが享受する価値が増加する現象を指します。たとえば、Facebookのようなソーシャルメディアプラットフォームでは、ユーザーが増えるほど他のユーザーにとっての価値が高まり、さらなるユーザー増加を促進します。一方、ネットワーク外部性とは、プラットフォームの一部の参加者が他の参加者に与える影響を指します。たとえば、プラットフォーム上での高品質なコンテンツの投稿が他のユーザーの価値を高めるといった事例が考えられます​。 デジタルプラットフォームの運営オペレーションは、持続可能な成長を実現するための重要な要素です。成功するプラットフォームは、ユーザーエクスペリエンスの最適化、データのセキュリティ管理、トランザクションの効率化など、さまざまな要素を包括的に管理しています。特に、プラットフォームのセキュリティは、ユーザーの信頼を維持し、プラットフォーム全体の健全な成長を促進するために不可欠です。また、効率的なトランザクション処理システムは、取引のスピードと信頼性を高め、ユーザー満足度を向上させます​。 デジタルプラットフォームの成功には、効果的なマーケティング戦略とロジスティクスの最適化も欠かせません。マーケティングにおいては、ターゲットユーザーに対して適切なメッセージを届け、プラットフォームの利用を促進することが求められます。また、ロジスティクスの最適化により、取引プロセス全体を効率化し、商品やサービスの提供速度を向上させることが可能です。これにより、ユーザーはより迅速にサービスを利用でき、プラットフォームの価値がさらに高まります​。 デジタルプラットフォーム事業は、現代の経済において不可欠なビジネスモデルとして成長を続けています。ROUTE06が提供する論考は、プラットフォーム事業に関する包括的な理解を深め、企業がこの新しいビジネス領域で成功するための実践的な知識を提供します。ネットワーク効果や運営オペレーションの重要性を理解し、効果的な戦略を構築することで、企業は競争力を高め、持続可能な成長を実現することができるでしょう。 --- # /categories/product URL: /categories/product name: PRODUCT nameJa: プロダクト description: 「プロダクト」に関して、ROUTE06はデジタル製品の立ち上げと成長戦略に焦点を当てています。プロダクトマネジメント、DevOps、KPIマネジメント、グロース施策など、幅広いテーマを扱い、企業がデジタル製品を成功に導くための実践的なアプローチを提供しています。これにより、スタートアップから大手企業まで、競争力維持と持続可能な成長を支援しています。 デジタルプロダクトの立ち上げやグロース施策は、現代のビジネス環境において極めて重要なテーマです。スタートアップ企業やメガベンチャーといったIT企業から、伝統的な大手企業まで、幅広い企業がこの分野で積極的に活動しています。ROUTE06では、これらの企業がどのようにしてデジタルプロダクトを成功に導き、成長を加速させているのかについて、プロダクトマネジメント手法やDevOps、KPIマネジメント、グロース施策に関する論考を提供しています。 デジタルプロダクトの立ち上げは、企業が市場で競争力を維持し、新たな価値を創出するための鍵となります。特にスタートアップ企業やIT企業では、迅速かつ効率的なプロダクトマネジメント手法が求められます。アジャイル開発やリーンスタートアップのアプローチは、短期間で市場に適応したプロダクトをリリースするための基本的な手法として広く採用されています。これにより、企業は市場からのフィードバックを素早く取り入れ、プロダクトを継続的に改善することが可能になります​。 DevOpsは、開発(Development)と運用(Operations)を統合するアプローチであり、デジタルプロダクトのスケーリングにおいて不可欠な役割を果たします。DevOpsの導入により、開発と運用の間のシームレスな連携が実現し、プロダクトのリリースサイクルが短縮されるとともに、品質が向上します。特に、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインの構築は、コードの自動テストやデプロイを可能にし、プロダクトの安定性とリリース頻度を高める効果があります。これにより、企業は市場の変化に迅速に対応でき、プロダクトの競争力を維持することができます​。 デジタルプロダクトの成功には、KPI(重要業績評価指標)マネジメントが不可欠です。KPIを適切に設定し、継続的にモニタリングすることで、プロダクトのパフォーマンスを評価し、必要な改善策を迅速に講じることができます。データドリブンな意思決定は、プロダクトの成長を促進するために重要であり、企業が収集する膨大なデータを活用して、ユーザー行動や市場トレンドを分析し、戦略的な意思決定を行います。このプロセスは、プロダクトのグロース施策において中心的な役割を果たし、企業が競争優位を確立するための基盤を築きます​。 グロースハックは、リソースを最小限に抑えながら、ユーザー獲得や売上向上を目指す手法です。スタートアップ企業や新規事業では、限られた資源の中で最大限の効果を得るために、グロースハックが広く活用されています。これには、A/Bテストやバイラルマーケティング、リテンション施策など、多様な手法が含まれます。これらの手法を組み合わせて実行することで、プロダクトの成長を加速させ、持続的な成功を収めることが可能になります​。 ROUTE06が提供するデジタルプロダクトの立ち上げおよびグロース施策に関する論考は、企業が市場で成功を収めるための実践的なアプローチを提供します。プロダクトマネジメント手法やDevOps、KPIマネジメント、グロース施策に関する深い洞察を通じて、企業は迅速かつ効果的にデジタルプロダクトを開発し、成長を促進するための戦略を構築することができます。これにより、スタートアップ企業から大手企業まで、すべての企業がデジタル時代において競争力を維持し、持続可能な成長を実現するための道筋が明らかになります。 --- # /categories/research URL: /categories/research name: RESEARCH nameJa: リサーチ description: 「リサーチ」に関して、ROUTE06は企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する幅広い調査レポートを提供しています。国内外の経済動向、政策・規制、技術開発、知的財産などの分析を通じ、企業の戦略的意思決定を支援しています。これにより、企業はグローバルなDXトレンドを把握し、競争力を維持するための実践的な洞察を得ることができます。 デジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルプロダクトに関連する調査レポートは、現代のビジネス環境において重要な役割を果たしています。これらのレポートは、企業が競争力を維持し、成長を促進するための戦略的な意思決定を支援する情報源として活用されています。ROUTE06では、国内外の経済動向、文化的背景、公的機関による政策や規制、特定技術領域の研究開発や知的財産に関する内容を含む幅広い調査レポートを提供し、企業がDXの成功に向けた道筋を描くための実践的な洞察を提供しています。 デジタルトランスフォーメーションは、グローバル規模で急速に進展しており、企業が競争力を維持するためには、最新のトレンドを把握し、適応することが求められています。ROUTE06の調査レポートでは、DXのグローバルトレンドについての深い分析が行われており、各国の経済動向や技術革新の状況が詳述されています。たとえば、アメリカやヨーロッパの先進市場におけるAIやIoTの導入事例、アジア市場でのモバイル技術の急速な普及などが紹介されています。これにより、企業はグローバル市場におけるDXの進展を理解し、国際的な競争力を高めるための戦略を構築することが可能になります。 デジタルトランスフォーメーションにおいて、公的機関の政策や規制は重要な役割を果たします。各国政府は、デジタル経済の成長を促進するための政策を策定し、企業が新しい技術を採用しやすくするための支援を行っています。ROUTE06のレポートでは、日本をはじめとする各国の政策動向や規制の影響について詳しく分析されています。たとえば、日本政府が推進する「Society 5.0」や「デジタル庁」設立の取り組み、EUの「GDPR(一般データ保護規則)」などが、企業のDX推進にどのような影響を与えているかが紹介されています。これにより、企業は政策や規制を考慮に入れた上で、デジタル戦略を最適化することが可能になります​。 デジタルトランスフォーメーションの成功には、特定技術領域における研究開発と知的財産の管理が不可欠です。ROUTE06では、最新の技術動向や研究開発の成果、知的財産戦略に関する調査レポートを通じて、企業が技術革新を推進し、競争優位を確立するための知識を提供しています。たとえば、AIやブロックチェーン、5G通信技術など、将来を見据えた重要な技術分野における研究開発の進展や、それらがもたらす新しいビジネスチャンスについての分析が含まれています。また、知的財産の保護と活用についての戦略的なアプローチが紹介されており、企業がイノベーションを持続可能な形で展開するためのガイドラインが示されています​。 ROUTE06が提供するデジタルトランスフォーメーションやデジタルプロダクトに関連する調査レポートは、企業が複雑なビジネス環境で競争力を維持し、成長を続けるための重要なリソースです。グローバルなDXトレンドや政策規制の影響、研究開発と知的財産の戦略に関する洞察を通じて、企業は最新の情報を基に戦略的な意思決定を行うことが可能になります。これにより、デジタル時代におけるビジネスの成功に向けた道筋を明確に描き出すことができるでしょう。 --- # /categories/spotlight URL: /categories/spotlight name: SPOTLIGHT nameJa: スポットライト description: ROUTE06の「スポットライト」シリーズは、ビジネスや技術の最前線で活躍する有識者へのインタビューを通じて、幅広い業界の実践的知見を提供しています。新規事業立ち上げや製品開発など多様なトピックを取り上げ、読者に具体的な事例と戦略的洞察を提供することで、ビジネスの課題解決とイノベーションを支援しています。 ROUTE06(ルートシックス)の「Spotlight」シリーズは、ビジネスや技術の最前線で活躍する有識者や事業企画・プロジェクト推進者へのインタビューを通じて、貴重な洞察を提供しています。このシリーズの特徴は、特定の顧客企業やパートナー企業に限定されず、さまざまな業界、職種、役職の方々を対象としている点にあります。これにより、ビジネスの課題解決やイノベーションの現場での実践的な知見が幅広く共有され、読者は多角的な視点を得ることができます。 「Spotlight」シリーズでは、大手商社のプロジェクトリーダーが語る新規事業立ち上げの挑戦や、スタートアップのプロダクトマネージャーが経験した製品開発のプロセスなど、多岐にわたるトピックが取り上げられています。これらのインタビューは、単なる知識の共有にとどまらず、具体的な事例を通じて実践的な知見を提供し、読者が自らのビジネスに適用できる洞察を得ることを目的としています。たとえば、プロジェクトリーダーが直面した課題とその解決策、新たな市場への進出における戦略など、現場でのリアルな経験が共有されています​。 ROUTE06は、単なるコンサルティングやSIer(システムインテグレーター)としてではなく、顧客企業と共に新たな価値を創出するパートナーとしての役割を果たしています。新しい「プロフェッショナルサービス」のあり方として、顧客と共にビジョンを共有し、その実現に向けて積極的に関与するアプローチを重視しています。このアプローチは、単なる受託開発や支援を超え、顧客のニーズに合わせたカスタマイズ性や、データに基づいた意思決定の重要性を強調しています。これにより、ROUTE06は、顧客企業の成長を支援し、持続可能なビジネスモデルを共に構築しています​。 「Spotlight」シリーズは、ビジネスや技術革新に関する深い洞察を提供するだけでなく、読者に新たなインスピレーションを与えることを目指しています。インタビューを通じて、業界の枠を超えた視点や、成功に至るまでの具体的な戦略が共有され、読者は自身のビジネスに応用できるアイデアを得ることができます。また、ROUTE06が培ってきた豊富な経験と知識を共有することで、ビジネスプロフェッショナルとしての成長をサポートし、さらなる挑戦を促進するための貴重なリソースとなっています​。 ROUTE06の「Spotlight」シリーズは、多様な業界や職種にわたる実践的な知見を提供し、ビジネスや技術の最前線でのリアルな経験を共有することで、読者にとってのインスピレーションと成長を促進します。ROUTE06が顧客企業と共に築き上げてきた成功事例を通じて、ビジネスの課題解決やイノベーションの現場で必要とされる戦略的なアプローチが明らかにされます。このシリーズは、ビジネスリーダーやプロジェクト推進者にとって、業界を超えた知識と経験を得るための貴重な情報源となり、今後のビジネス展開に役立つでしょう。 --- # /categories/technology URL: /categories/technology name: TECHNOLOGY nameJa: テクノロジー description: 「テクノロジー」に関して、ROUTE06はデジタルプロダクト開発の最新アプローチを提供しています。アジャイル開発、プログラミング言語選定、クラウドインフラ、AI活用など幅広いテーマを扱い、効率的で効果的な開発のガイドラインを示しています。これにより、企業は最新技術を統合的に活用し、競争力のあるプロダクトを迅速に開発できます。 デジタルプロダクトの開発に関する論考は、現代の技術主導型ビジネス環境において極めて重要なテーマです。アジャイル開発の最新アプローチ、ツールの選定、プログラミング言語やフレームワークの選択、新しいバックエンドサービスやAIをはじめとするトレンド技術の活用は、デジタルプロダクトの成功を左右する要因となります。ROUTE06では、これらの要素について深く掘り下げた論考を提供し、企業が効率的かつ効果的にデジタルプロダクトを開発するためのガイドラインを示しています。 アジャイル開発は、デジタルプロダクト開発の基盤として広く採用されており、顧客の要求に迅速に応えるための柔軟な開発手法として注目されています。ROUTE06では、最新のアジャイル開発アプローチについての論考を提供しており、特にスクラムやカンバンなどの手法がどのように進化しているか、そしてこれらがチームの効率性やプロダクトの品質向上にどのように貢献しているかを詳述しています。また、アジャイル開発におけるデジタルツールの選定も重要な要素であり、JiraやTrello、Confluenceなどのプロジェクト管理ツールがどのようにしてチームのコラボレーションを促進し、開発プロセスを最適化しているかについても触れられています​。 デジタルプロダクトの開発において、使用するプログラミング言語やフレームワークの選定は、プロダクトの性能やスケーラビリティ、メンテナンス性に大きな影響を与えます。ROUTE06では、最新のプログラミング言語やフレームワークに関するトレンドを紹介し、それぞれの技術が持つ利点や特性を比較検討しています。たとえば、フロントエンド開発においては、ReactやVue.jsのようなJavaScriptフレームワークが、開発速度やユーザーインターフェースのレスポンシブ性においてどのようなメリットを提供するかが議論されています。また、バックエンド開発においては、Node.jsやDjangoなどのフレームワークが持つ拡張性やパフォーマンスに関する分析が行われています​。 バックエンドサービスやクラウドインフラの進化も、デジタルプロダクトの開発において重要な要素です。ROUTE06では、最新のクラウドサービスやバックエンドテクノロジーについての論考を提供し、これらがプロダクトのスケーラビリティや信頼性にどのように寄与しているかを詳述しています。特に、AWS(Amazon Web Services)やGoogle Cloud、Microsoft Azureなどのクラウドプロバイダーが提供するサービスを活用することで、企業はインフラストラクチャの管理を効率化し、リソースをプロダクトのイノベーションに集中させることが可能になります。また、サーバーレスアーキテクチャやコンテナ化技術(例:Docker、Kubernetes)の導入が、どのように開発効率を高め、コスト削減を実現しているかについても触れられています​。 人工知能(AI)や機械学習(ML)の導入は、デジタルプロダクトに新たな価値を提供する重要な要素です。ROUTE06では、AIとMLがデジタルプロダクト開発においてどのように活用されているかについてのトレンドや事例を紹介しています。これには、自然言語処理(NLP)やコンピュータビジョンなどの技術がプロダクトに組み込まれ、ユーザー体験の向上や自動化の促進に寄与している事例が含まれます。たとえば、AIを活用したリコメンデーションシステムが、ユーザーに対して最適なコンテンツや製品を提供し、エンゲージメントを高める方法についての分析が行われています​。 ROUTE06が提供するデジタルプロダクトの開発に関する論考は、最新の技術トレンドや開発手法を網羅的にカバーし、企業が競争力のあるプロダクトを迅速かつ効率的に開発するための実践的な知識を提供しています。アジャイル開発からプログラミング言語の選定、新しいバックエンドサービス、そしてAI技術の導入に至るまで、これらの要素を統合的に活用することで、企業はデジタル時代において持続可能な成長を実現するための強力な基盤を築くことができるでしょう。 --- # /categories/transformation URL: /categories/transformation name: TRANSFORMATION nameJa: トランスフォーメーション description: 「トランスフォーメーション」について、ROUTE06はデジタル時代における企業変革の重要性を強調しています。顧客体験と業務プロセスのデジタル化、基幹システムの刷新、デジタル人材の育成、データ駆動型意思決定、企業文化の変革など、DXの多面的な側面を分析し、企業の持続可能な成長を支援する実践的な知見を提供しています。 デジタルトランスフォーメーション(DX)は、大手企業が競争力を維持し、ビジネスモデルを革新するための重要な取り組みです。DXは、顧客接点がデジタル化される中で、デジタルファーストな顧客体験(UX)および業務オペレーション(Ops)を構築し、企業全体のビジネスモデルや組織構造を根本的に変革することを目指します。ROUTE06では、このDXに関する論考を通じて、大手企業やスタートアップ企業がどのようにしてこの変革を推進しているか、またその成功要因について詳しく紹介しています。 DXの成功には、基幹システムやエンタープライズリソースプランニング(ERP)の新規導入やリプレイスメントが重要な役割を果たします。これらのシステムは、企業の業務プロセスをデジタル化し、効率的なデータ管理を可能にする基盤となります。ROUTE06の論考では、クラウドベースのERPソリューションや、AIや機械学習を活用したインテリジェントシステムの導入がどのようにして業務の効率化とデータ活用の高度化を支援しているかが詳述されています。たとえば、企業がどのようにしてデータを活用して業務プロセスを最適化し、リアルタイムでの意思決定を支援しているかについての具体的な事例が紹介されています。 DXを推進するためには、デジタル人材の採用と育成が不可欠です。ROUTE06では、デジタル人材をどのようにして採用し、企業内でどのように育成・配置しているかについてのベストプラクティスが取り上げられています。特に、大手企業が新しい組織構造を採用し、フラットでアジャイルなチーム編成を行うことで、迅速な意思決定と柔軟な対応を実現している事例が紹介されています。また、デジタルスキルを持つリーダーシップ層の重要性が強調されており、これがDXの推進力となることが論じられています​。 DXにおけるデータドリブンな意思決定は、ビジネスの俊敏性と競争力を高めるための重要な要素です。ROUTE06では、企業がどのようにしてビッグデータやアナリティクスを活用して、データに基づく意思決定を行っているかについての詳細な分析が行われています。これには、データウェアハウスやデータレイクの導入、BIツールを活用したリアルタイム分析、AIによる予測モデルの活用などが含まれます。これにより、企業は市場の変化に迅速に対応し、顧客ニーズを的確に捉えることが可能になります​。 DXは単なる技術導入にとどまらず、企業文化の変革も伴います。ROUTE06では、企業がDXを成功させるために必要な文化的変革とリーダーシップの役割についても詳述されています。特に、従来の業務プロセスや意思決定のスピードを向上させるために、企業文化をどのように変革し、リーダーがどのようにしてその変革をリードしているかについての具体的な事例が紹介されています。これには、イノベーションを促進する環境の整備や、従業員のエンゲージメントを高めるための施策が含まれます​。 ROUTE06が提供するDXに関する論考は、大手企業からスタートアップ企業まで、さまざまな企業がデジタル時代において競争力を維持し、成長を続けるための実践的な知識を提供します。システム開発やデジタル人材の採用、データドリブンな意思決定、そして文化的変革とリーダーシップの役割に至るまで、これらの要素を統合的に理解し、適切に実行することで、企業は持続可能な成長を実現するための強固な基盤を築くことができるでしょう。 --- # /glossary/acsim URL: /glossary/acsim name: Acsim Acsim(アクシム) Acsim(アクシム)とは Acsimは、要件定義の“思考プロセス”をAIでガイドし、As-Isの整理 → 課題抽出 → To-Be設計 → プロトタイプ生成 → 設計書出力 → 稟議(ROI算出)までを一気通貫で支援する、上流工程特化型の生成AIプラットフォームです。熟練者に依存しがちな設計業務を再現性のあるプロセスに置き換え、品質とスピードの両立を実現します。 主な機能 会話から業務フロー生成・課題特定:ヒアリング内容を構造化し、現状(As-Is)と課題を自動可視化。 改善方針・計画の提示:設計観点・論点をAIが先回り提示し、抜け漏れを抑制。 プロトタイプ自動生成:UI・機能のたたきを素早く生成し、関係者の認識合わせを高速化。 設計書・RFPの自動出力:業務フロー、ユースケース、画面・機能一覧などを共通フォーマットで生成。 稟議支援(ROI出力):定量・定性の材料を自動整備し、投資判断を加速。 導入メリット 属人性の排除:誰が担当しても一定品質の要件定義を再現。 意思決定の高速化:ROIや効果指標の自動化で稟議を短縮。 ドキュメント工数の削減:標準フォーマットで出力し、後続工程(実装・テスト・運用)まで活用可能。 ナレッジの資産化:上流工程の暗黙知を構造化データとして蓄積・再利用。 想定ユーザー 事業会社のIT部門・プロダクト/プロジェクトマネージャー SIer・コンサルタント・SE/UXデザイナーなど、上流工程に関わる実務者 典型的な活用シーン 既存システム刷新の要件定義、業務BPRのTo-Be設計 新規プロダクトの0→1要件整理、提案書・RFP作成 画面一覧/機能一覧の標準化、テスト設計へのトレーサビリティ確保 --- # /glossary/agentic-workflow URL: /glossary/agentic-workflow name: Agentic Workflow Agentic Workflow(エージェント型ワークフロー) Agentic Workflowとは? Agentic Workflow(エージェント型ワークフロー)とは、AIエージェントが主体的に判断し、タスクを実行する新しい業務プロセスの形態です。従来の自動化が「決められたルールに従って動く」ものだったのに対し、Agentic Workflowでは、AIが状況を理解し、最適な判断を下しながら、柔軟に業務を進めていきます。 例えば、顧客からの問い合わせ対応を考えてみましょう。従来の自動化では「Aという質問にはBと答える」という固定的な対応しかできませんでした。しかし、Agentic Workflowでは、AIエージェントが顧客の質問の文脈を理解し、過去の履歴を参照し、必要に応じて他のシステムと連携しながら、その場で最適な回答を生成できます。 従来の自動化との違い 1\. 適応性の違い 従来のRPA(Robotic Process Automation)は、事前に定義されたルールに基づいて動作します。一方、Agentic Workflowは状況の変化に対して動的に対応できます。予期しない状況が発生しても、AIエージェントが判断して適切な行動を選択します。 2\. 学習能力 Agentic Workflowの特徴は、経験から学習し、継続的に改善される点です。処理した案件から得られた知見を蓄積し、次回以降の処理に活かすことができます。 3\. 協調性 複数のAIエージェントが連携して、より複雑な業務を遂行できます。例えば、受注処理において、在庫確認エージェント、価格算出エージェント、配送手配エージェントが協調して働くことで、エンドツーエンドの業務プロセスを実現します。 | 特徴 | 従来の自動化(RPA等) | Agentic Workflow | |------|---------------------|------------------| | 適応性 | 事前定義されたルールのみ | 状況に応じて柔軟に対応 | | 学習能力 | なし(固定的) | 経験から継続的に学習・改善 | | 判断力 | 単純な条件分岐 | 複雑な状況を理解し判断 | | 協調性 | 単独動作が基本 | 複数のエージェントが連携 | | 例外処理 | エラーで停止 | 代替案を自律的に検討 | Agentic Workflowの主要な構成要素 AIエージェント 業務を実行する主体となる存在です。大規模言語モデル(LLM)を基盤として、自然言語での指示を理解し、判断を下し、行動を実行します。 ツール連携 AIエージェントは、データベース、API、既存システムなど、様々なツールと連携して業務を遂行します。この連携により、実際の業務環境で価値を発揮できます。 ワークフロー管理 複数のタスクの順序や依存関係を管理し、効率的な業務フローを実現します。状況に応じて処理の順序を変更したり、並列処理を行ったりすることも可能です。 企業における活用例 1\. カスタマーサポート お客様からの問い合わせに対して、AIエージェントが内容を理解し、適切な回答を提供します。複雑な問題の場合は、関連部署と連携したり、人間のオペレーターにエスカレーションしたりします。 2\. 受発注業務 注文内容の確認、在庫チェック、価格計算、納期調整など、複数のステップを含む受発注プロセスをAIエージェントが自律的に処理します。イレギュラーな要求にも柔軟に対応できます。 3\. データ分析とレポート作成 定期的なデータ収集、分析、レポート作成をAIエージェントが自動的に実行します。前回との差分や注目すべきポイントも自動的に抽出し、意思決定を支援します。 ROUTE06の取り組み ROUTE06は、3つのAI駆動開発プラットフォームを活用しながら、Agentic Workflowの実装を積極的に推進しています。 Giselle(ジゼル) Giselle(ジゼル)はAIエージェントをノーコードで構築できるプラットフォームです。専門的なプログラミング知識がなくても、ビジュアルエディタを使って複数のAIモデルやツールを組み合わせ、業務に特化したAIエージェントを作成できます。これにより、各企業の独自の業務フローに合わせたAgentic Workflowを実現します。 Acsim(アクシム) Acsim(アクシム)では要件定義の段階からAIを活用し、業務フローの可視化と最適化を支援します。現状の業務プロセスを分析し、Agentic Workflowを導入することでどのような改善が期待できるかをシミュレーションできます。 Liam(リアム) Liam(リアム)はデータベース設計をAIが支援するプラットフォームです。Agentic Workflowで扱うデータの構造を最適化し、AIエージェントが効率的にデータにアクセスできる環境を構築します。 導入のメリット 1\. 業務効率の飛躍的向上 定型的な業務だけでなく、判断を伴う業務もAIエージェントが処理できるため、人間はより創造的で戦略的な業務に集中できます。 2\. 24時間365日の稼働 AIエージェントは休憩を必要としないため、夜間や休日でも業務を継続できます。グローバルビジネスにおいても時差を気にすることなく対応可能です。 3\. スケーラビリティ 業務量の増加に対して、AIエージェントを追加することで柔軟に対応できます。繁忙期の一時的な業務増加にも効率的に対処できます。 4\. 品質の安定化 人為的ミスを削減し、一定の品質を保った業務遂行が可能になります。また、すべての処理履歴が記録されるため、監査やコンプライアンスの観点でも有利です。 今後の展望 Agentic Workflowは、企業のデジタル変革において重要な役割を果たすことが期待されています。AIの進化とともに、より高度な判断や創造的なタスクも実行できるようになるでしょう。 ROUTE06は、日本企業の実情に合わせたAgentic Workflowの実装を支援し、「構想で終わらないDX」の実現を目指しています。 Agentic Workflowは、単なる業務の自動化を超えて、AIと人間が協働する新しい働き方を実現する技術です。今後、多くの企業がこの技術を活用し、競争力を高めていくことが予想されます。 --- # /glossary/agile-development URL: /glossary/agile-development name: アジャイル開発 アジャイル開発 アジャイル開発の基本概念 アジャイル開発とは、ソフトウェア開発において、短い期間で反復的に開発を進める手法です。従来の開発手法が最初に全ての要件を固めてから開発に着手するのに対し、アジャイル開発では小さな機能単位で開発・リリースを繰り返しながら、顧客のフィードバックを取り入れて改善を重ねていきます。 2001年に発表された「アジャイルマニフェスト」では、以下の4つの価値を重視することが示されています。 個人と対話をプロセスやツールよりも重視 動くソフトウェアを包括的なドキュメントよりも重視 顧客との協調を契約交渉よりも重視 変化への対応を計画に従うことよりも重視 アジャイル開発の仕組み 1\. スプリントによる開発サイクル アジャイル開発では「スプリント」と呼ばれる1〜4週間の短い期間を設定し、その期間内で計画・開発・テスト・リリースを完結させます。各スプリントの最後には、開発チームが完成した機能をステークホルダーにデモンストレーションし、フィードバックを受けます。 2\. プロダクトバックログの管理 開発すべき機能や要件は「プロダクトバックログ」として優先順位付けされたリストで管理されます。プロダクトオーナーがこのバックログを管理し、ビジネス価値の高いものから順に開発を進めていきます。 3\. 継続的な改善プロセス 各スプリントの終了時には「レトロスペクティブ(振り返り)」を実施し、うまくいった点と改善すべき点を話し合います。この継続的な改善により、チームの生産性と成果物の品質が向上していきます。 アジャイル開発のメリット 1\. 柔軟な要件変更への対応 市場環境や顧客ニーズの変化に素早く対応できることが最大のメリットです。開発途中でも優先順位を見直し、より価値の高い機能開発にリソースを振り向けることができます。 2\. 早期の価値提供 完成を待たずに、スプリントごとに動作するソフトウェアを提供できるため、顧客は早い段階から価値を享受できます。また、実際に使用したフィードバックを次の開発に活かせます。 3\. リスクの最小化 短いサイクルで開発を進めるため、問題が発生しても早期に発見・修正できます。これにより、プロジェクト全体のリスクを大幅に軽減できます。 アジャイル開発の課題と対策 1\. ドキュメント不足への対応 アジャイル開発では動くソフトウェアを重視するため、ドキュメントが不足しがちです。これに対しては、必要最小限のドキュメントを継続的に更新し、知識の属人化を防ぐ仕組みが重要です。 2\. スコープ管理の難しさ 柔軟性が高い反面、プロジェクトの範囲が曖昧になりやすいという課題があります。明確なプロダクトビジョンを持ち、定期的にスコープを見直すことが必要です。 ROUTE06におけるアジャイル開発の実践 ROUTE06では、アジャイル開発の理念を最新のAI技術と融合させ、より効率的で革新的な開発プロセスを実現しています。 AI駆動開発プラットフォームによる支援 弊社の「Acsim」は、アジャイル開発における要件定義プロセスを大幅に効率化します。従来、プロダクトバックログの作成や優先順位付けに多くの時間を要していましたが、Acsimを活用することで: 業務フローの可視化から要件への落とし込みをAIが支援 過去のプロジェクトの知見を活用した要件の再利用 ステークホルダー間での認識合わせを視覚的に実現 これにより、アジャイル開発の「動くソフトウェアを素早く提供する」という価値をさらに高めています。 エンタープライズ環境でのアジャイル実践 大手企業では、複雑な承認プロセスやセキュリティ要件など、アジャイル開発の導入に特有の課題があります。ROUTE06は、三菱商事や三菱マテリアルなどの大手企業との協業を通じて、エンタープライズ環境に適したアジャイル開発手法を確立しています。 具体的には: アジャイルとウォーターフォールのハイブリッド型開発 規制要件を満たしながらの反復的開発 大規模チームでのアジャイル実践ノウハウ 継続的な価値提供の実現 「Giselle」や「Liam」といったAI駆動開発プラットフォームは、アジャイル開発における継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)をさらに進化させます。AIエージェントが開発プロセスの各段階を支援することで、より頻繁で品質の高いリリースが可能になります。 まとめ アジャイル開発は、変化の激しい現代のビジネス環境において、顧客価値を最大化する開発手法として広く採用されています。ROUTE06は、この手法にAI技術を組み合わせることで、日本企業のDX推進を強力にサポートしています。 「構想で終わらせないDX」を実現するには、適切な開発手法の選択が不可欠です。アジャイル開発の柔軟性と、AI駆動開発の効率性を組み合わせることで、真に価値のあるデジタルトランスフォーメーションを実現できるのです。 --- # /glossary/ai-agent URL: /glossary/ai-agent name: AI Agent AI Agent(AIエージェント) AI Agentとは AI Agent(AIエージェント)とは、人工知能技術を活用して、特定の目標達成のために自律的に思考・判断・行動できるソフトウェアシステムのことです。従来のAIツールが人間の指示に応じて単一のタスクを実行するのに対し、AIエージェントは複雑な目標を達成するために、必要な手順を自ら計画し、複数のツールやデータソースを活用しながら、段階的にタスクを遂行していく能力を持っています。 AIエージェントの仕組み AIエージェントの中核には、大規模言語モデル(LLM)と呼ばれる高度な自然言語処理技術があります。このLLMが「頭脳」として機能し、以下の3つのステップでタスクを遂行します。 1\. 目標の理解と計画立案 ユーザーから与えられた目標を理解し、それを達成するために必要なサブタスクに分解します。例えば「来月のギリシャでのサーフィン旅行に最適な週を見つけて」という依頼に対し、気象データの収集、サーフィン条件の調査、最適時期の分析といった具体的なステップを計画します。 2\. ツールを活用した情報収集と推論 計画に基づいて、外部データベース、API、他のAIエージェントなど、様々なツールを活用して必要な情報を収集します。収集した情報を統合・分析し、新たな知見を導き出します。 3\. 学習とフィードバック 実行結果とユーザーからのフィードバックを記憶し、将来の類似タスクでより良い成果を出せるよう学習します。この継続的な改善プロセスにより、AIエージェントは時間とともに賢くなっていきます。 AIアシスタントとの違い AIエージェントとAIアシスタントの最大の違いは「自律性」にあります: AIアシスタントは、ユーザーの質問に答えたり、単純なタスクを支援したりしますが、常にユーザーの指示を待ち、各ステップで確認を求めます。 AIエージェントは、一度目標が設定されれば、その達成に向けて自律的に行動します。必要に応じて複数のツールを組み合わせ、複雑な判断を下し、タスクを完遂します。 AIエージェントの種類 AIエージェントは、その能力レベルによって以下のように分類されます: 単純反射エージェント:事前に定められたルールに従って行動 モデルベース反射エージェント:過去の経験を記憶し、状況に応じて対応 目標ベースエージェント:特定の目標達成に向けて計画的に行動 効用ベースエージェント:複数の選択肢から最適なものを選択 学習エージェント:経験から学習し、継続的に性能を向上 ビジネスにおける活用例 AIエージェントは、様々な業界で革新的な価値を生み出しています: カスタマーサービス:24時間365日、顧客の問い合わせに対応し、問題を自律的に解決 業務自動化:請求書処理、在庫管理、レポート作成などの定型業務を効率化 データ分析:膨大なデータから洞察を抽出し、ビジネス上の意思決定を支援 ソフトウェア開発:コード生成、バグ修正、テスト自動化により開発生産性を向上 ROUTE06のAIエージェント活用 ROUTE06では、AIエージェント技術を企業のデジタル変革(DX)の中核に据え、以下の革新的なプラットフォームを提供しています。 Giselle(ジゼル)- AIエージェント構築プラットフォーム Giselleは、プログラミング知識がなくても、誰でも簡単にAIエージェントを設計・構築できるノーコードプラットフォームです。視覚的なノードエディタを使って、複数のAIモデルやデータソースを組み合わせ、企業固有の業務に特化したAIエージェントを作成できます。 Acsim(アクシム)- 要件定義支援AIプラットフォーム Acsimは、AIエージェントが要件定義プロセスを支援するプラットフォームです。業務フローの可視化から改善提案、プロトタイプ作成、ROI試算まで、上流工程全体をAIエージェントが自動化・効率化します。 統合的なアプローチ ROUTE06の強みは、これらのプラットフォームを組み合わせることで、構想から実装まで一貫したAI駆動開発を実現している点にあります。AIエージェントが人間の専門家と協働しながら、複雑な業務要件を理解し、最適なシステム設計を提案し、実装までをサポートします。 今後の展望 AIエージェント技術は急速に進化しており、以下のような発展が予想されています。 マルチエージェント協調:複数のAIエージェントが連携して、より複雑な課題を解決 自律的な意思決定:人間の介入を最小限に抑えた、高度な自律システムの実現 継続的な自己最適化:AIエージェントが自らの性能を継続的に改善 ROUTE06は「AI × SI, Transformed.」というビジョンのもと、誰もが「プロダクトビルダー」として活躍できる未来を目指しています。AIエージェントは単なるツールではなく、人間の創造性を最大限に引き出すパートナーとして、新たな価値創造を可能にする存在となるでしょう。 --- # /glossary/ai-driven-development URL: /glossary/ai-driven-development name: AI駆動開発 AI駆動開発 AI駆動開発の定義と概要 AI駆動開発(AI-Driven Development)とは、人工知能(AI)技術、特に機械学習アルゴリズムや自然言語処理を活用して、ソフトウェア開発プロセスを自動化・効率化する開発手法です。従来の開発手法では人間が手作業で行っていたコーディング、テスト、デバッグなどの作業を、AIが支援または自動化することで、開発スピードの向上と品質の改善を実現します。 この手法は、開発者とAIが協働する「ペアプログラミング」のような形で機能し、開発者がより創造的で戦略的なタスクに集中できる環境を提供します。 AI駆動開発が注目される背景 1\. ソフトウェア開発の複雑化 現代のビジネスにおいて、デジタル化の要求は日々高度化しています。複雑な業務要件、短納期での開発、継続的な機能改善など、開発チームへの負担は増大する一方です。 2\. 開発者不足の深刻化 経済産業省の調査によると、日本のIT人材は2030年に最大79万人不足すると予測されています。この人材不足を技術的なアプローチで補完する必要性が高まっています。 3\. 生成AIの急速な進化 ChatGPTやClaude、GitHub Copilotなどの生成AI技術の登場により、自然言語からコードを生成したり、既存のコードを最適化したりすることが現実的になりました。 AI駆動開発の主要な機能と特徴 コード生成と自動補完 AIは開発者が書いたコメントや関数名から、適切なコードを自動生成します。例えば、「ユーザーの年齢を検証する関数」というコメントから、実際の検証ロジックを含むコードを生成できます。 インテリジェントなバグ検出 AIは過去のバグパターンを学習し、コード内の潜在的な問題を事前に検出します。これにより、本番環境でのエラー発生を大幅に削減できます。 自動テスト生成 コードの仕様に基づいて、網羅的なテストケースを自動生成します。開発者が見落としがちなエッジケースも含めてテストを作成するため、ソフトウェアの品質が向上します。 ドキュメントの自動生成 コードから技術仕様書やAPI文書を自動生成し、保守性の高いソフトウェア開発を支援します。 ROUTE06のAI駆動開発プラットフォーム ROUTE06は「AI × SI, Transformed.」というビジョンのもと、エンタープライズ企業向けに特化したAI駆動開発プラットフォームを提供しています。 Acsim(要件定義支援プラットフォーム) Acsimは、AIを活用して要件定義プロセスを効率化するツールです。業務フローの可視化から、システム設計書の自動生成まで、上流工程全体をAIが支援します。これにより、従来は数週間かかっていた要件定義を大幅に短縮できます。 Giselle(AIエージェント構築プラットフォーム) Giselleは、プログラミング知識がなくても、ドラッグ&ドロップでAIエージェントを構築できるノーコードプラットフォームです。複数のAIモデルを組み合わせて、業務に特化したAIアシスタントを作成できます。 Liam(データベース設計プラットフォーム) Liamは、AIがデータベース設計を支援するツールです。既存のデータ構造を分析し、最適なテーブル設計を提案します。設計の一貫性チェックや、将来の拡張性を考慮した提案も行います。 AI駆動開発がもたらす具体的なメリット 1\. 開発スピードの劇的な向上 ROUTE06の実績では、AI駆動開発の導入により、従来の開発プロセスと比較して大幅な時間短縮を実現しています。特に、定型的なコーディング作業やテスト作成において、大幅な効率化が可能です。 2\. 品質の向上と標準化 AIは常に一定の品質基準でコードを生成するため、属人的なばらつきが減少します。また、ベストプラクティスに基づいたコード生成により、保守性の高いシステムを構築できます。 3\. 開発者の創造性向上 ルーティンワークから解放された開発者は、システムアーキテクチャの設計や、ビジネスロジックの最適化など、より価値の高い業務に集中できます。 4\. ナレッジの蓄積と共有 AI駆動開発プラットフォームは、プロジェクトごとの知見を蓄積し、組織全体で共有することができます。これにより、過去の成功パターンを新しいプロジェクトに活用できます。 導入時の注意点 セキュリティとコンプライアンス 企業の機密情報を扱う場合は、AIモデルのセキュリティ対策が重要です。ROUTE06は、エンタープライズグレードのセキュリティ基準での開発実績が多数あり、セキュリティに配慮したサービス提供が可能です。 人材育成の必要性 AI駆動開発を効果的に活用するには、開発者がAIとの協働方法を学ぶ必要があります。ROUTE06では、導入支援と併せて人材育成プログラムも提供しています。 段階的な導入アプローチ いきなり全面的にAI駆動開発を導入するのではなく、小規模なプロジェクトから始めて、徐々に適用範囲を広げていくことが推奨されます。 AI駆動開発が拓く未来 AI駆動開発は、単なる効率化ツールではなく、ソフトウェア開発の在り方そのものを変革する可能性を秘めています。ROUTE06は、日本企業の特性を理解した上で、最適なAI駆動開発環境を提供し、「構想で終わらないDX」の実現を支援しています。 エンタープライズ企業がデジタル変革を成功させるためには、技術の導入だけでなく、組織文化の変革も必要です。AI駆動開発は、その両方を実現するための強力な武器となるでしょう。 --- # /glossary/ai URL: /glossary/ai name: AI AI(人工知能) AIとは何か AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、人間の知的活動をコンピュータで実現する技術の総称です。従来、人間にしかできないと考えられていた「学習」「推論」「判断」「創造」といった知的な作業を、コンピュータが自律的に行えるようにする技術を指します。 1950年、イギリスの数学者アラン・チューリングは「機械は思考できるか」という画期的な問いを投げかけました。この問いから生まれた「チューリングテスト」は、機械が人間と区別できないほど知的な応答ができるかを判定する基準として、現在もAI研究の重要な概念となっています。 AIの発展段階 AIは、その能力によって以下の段階に分類されます: 1\. 弱いAI(特化型AI) 現在実用化されているAIのほとんどがこれに該当します。特定のタスクに特化し、限定された範囲で人間を超える性能を発揮します。例えば、チェスや囲碁のAI、画像認識システム、音声アシスタントなどです。 2\. 強いAI(汎用人工知能:AGI) 人間と同等の知能を持ち、様々なタスクを理解・学習・実行できるAIです。現時点では理論上の概念であり、実現されていません。 3\. 超知能(ASI) 人間の知能を完全に超越したAIです。あらゆる分野で人間を上回る能力を持つとされますが、これも現時点では理論上の概念です。 AIの仕組みと主要技術 機械学習(Machine Learning) AIの中核となる技術で、データからパターンを学習し、新しい状況に対して予測や判断を行います。学習方法には以下の種類があります: 教師あり学習:正解データを与えて学習させる方法(例:メールのスパム判定) 教師なし学習:データの中から自動的にパターンを見つける方法(例:顧客のグループ分け) 強化学習:試行錯誤を通じて最適な行動を学習する方法(例:ゲームAI、ロボット制御) ディープラーニング(深層学習) 人間の脳の神経回路を模した「ニューラルネットワーク」を多層に重ねた学習方法です。画像認識では物体の輪郭から複雑な特徴まで段階的に学習し、自然言語処理では文脈を理解した翻訳や要約が可能になりました。 主なニューラルネットワークの種類: CNN(畳み込みニューラルネットワーク):画像認識に優れる RNN(再帰型ニューラルネットワーク):時系列データや文章の処理に適する Transformer:現在の生成AIの基盤技術で、文脈理解に優れる 生成AI(Generative AI) 2022年のChatGPT登場以降、急速に注目を集めている技術です。学習したデータをもとに、まったく新しいコンテンツ(文章、画像、音声、動画など)を生成できます。基盤となる大規模言語モデル(LLM)は、インターネット上の膨大なテキストデータから言語の規則性や知識を学習しています。 AIがもたらす社会的インパクト AIの利点 処理速度と正確性:人間では処理しきれない大量のデータを高速で分析 24時間稼働:疲労なく一貫したパフォーマンスを維持 客観的判断:感情に左右されない論理的な意思決定 スケーラビリティ:同じAIを複数の場所で同時に活用可能 課題と考慮事項 データの偏り(バイアス):学習データの偏りが差別的な判断につながる可能性 説明可能性:AIの判断根拠が不明確な「ブラックボックス」問題 プライバシー:大量の個人データ活用に伴う倫理的課題 雇用への影響:自動化による職業の変化 AI倫理とガバナンス 責任あるAI活用のため、以下の原則が重要視されています: 透明性と説明責任:AIの判断プロセスを理解可能にする 公平性と包摂性:特定の集団に不利益を与えない設計 プライバシーとセキュリティ:個人情報の適切な保護 人間中心の設計:AIは人間を支援する存在であるべき ROUTE06におけるAI活用 ROUTE06は「AI × SI, Transformed.」のビジョンのもと、AIを活用した次世代のシステム開発を推進しています。特に、要件定義から実装までの開発プロセス全体をAIで効率化する「AI駆動開発」の実現に取り組んでいます。 代表的なプロダクトとして、要件定義を支援する「Acsim」、AIエージェントを構築する「Giselle」、データベース設計を効率化する「Liam」などを提供し、「誰もがプロダクトビルダーになれる時代」の実現を目指しています。 まとめ AIは急速に進化を続けており、私たちの生活や仕事のあり方を大きく変えつつあります。重要なのは、AIを「人間を置き換えるもの」ではなく、「人間の能力を拡張するパートナー」として捉えることです。技術的な理解を深めながら、倫理的な配慮も忘れずに、AIとの共創による新しい価値創造を目指していくことが、これからの時代に求められています。 --- # /glossary/generative-ai URL: /glossary/generative-ai name: 生成AI 生成AI(Generative AI) 生成AIとは 生成AI(Generative AI)とは、学習したデータをもとに、テキスト、画像、音声、動画、プログラムコードなど、さまざまな形式の新しいコンテンツを自動的に生成できる人工知能技術です。従来のAIが「分類」や「予測」を主な目的としていたのに対し、生成AIは「創造」という新たな領域を切り開いています。 2022年11月にOpenAIがChatGPTを公開して以来、生成AIは急速に普及し、ビジネスや日常生活に大きな変革をもたらしています。 生成AIの仕組み 生成AIの中核となる技術は「基盤モデル(Foundation Models)」と呼ばれる大規模な機械学習モデルです。これらのモデルは、膨大な量のデータから学習し、その中に存在するパターンや関係性を理解することで、新しいコンテンツを生成します。 特に重要な技術が2017年にGoogleが発表した「Transformer」です。Transformerは、文章中の単語同士の関係性を効率的に学習できる仕組みを持ち、現在の大規模言語モデル(LLM)の基礎となっています。 生成プロセスは以下のように動作します: 入力(プロンプト)を受け取る 学習したパターンに基づいて、次に来る可能性の高い要素を予測 確率分布に基づいて出力を生成 文脈に応じて調整を行い、最終的な結果を出力 生成AIの種類と用途 テキスト生成AI ChatGPTやClaude、Google Geminiなどが代表例です。文章作成、翻訳、要約、質問応答など幅広い用途で活用されています。 画像生成AI DALL-E、Midjourney、Stable Diffusionなどが有名です。テキストの説明から画像を生成したり、既存の画像を編集したりできます。 コード生成AI CursorやClaude Codeなどが、ソフトウェアエンジニアの開発効率を大幅に向上させています。 音声・動画生成AI 音声合成や動画生成の分野でも、リアルなコンテンツを生成できるAIが登場しています。 ビジネスへのインパクト McKinseyの調査によると、生成AIは世界経済に年間最大4.4兆ドルの価値をもたらす可能性があります。主な活用領域として: カスタマーサービス: チャットボットによる24時間対応 コンテンツ制作: マーケティング資料やレポートの作成 ソフトウェア開発: コーディングの効率化と品質向上 研究開発: 新薬開発や材料設計の加速 生成AIの課題と注意点 1\. ハルシネーション(幻覚) 生成AIは時として、事実ではない情報を本当のように生成することがあります。重要な意思決定に使用する際は、必ず人間による確認が必要です。 2\. バイアスと倫理的問題 学習データに含まれる偏見やバイアスが、生成結果に反映される可能性があります。 3\. 著作権とプライバシー 生成されたコンテンツの著作権や、学習データに含まれる個人情報の扱いなど、法的な課題も存在します。 4\. 計算リソースとコスト 大規模モデルの学習には莫大な計算資源が必要で、環境への影響も懸念されています。 ROUTE06における生成AIの活用 ROUTE06は「AI × SI, Transformed.」というビジョンのもと、生成AI技術をシステム開発プロセス全体に統合し、エンタープライズDXを革新しています。 AI駆動開発プラットフォーム Acsim(要件定義支援): 生成AIを活用して、複雑な業務要件を構造化し、設計書やプロトタイプを自動生成。従来は数週間かかっていた要件定義を大幅に効率化します。 Giselle(AIエージェント構築): ノーコードで複数のAIモデルを組み合わせ、企業独自のAIエージェントを構築。専門知識がなくても、業務に特化したAIソリューションを実現できます。 Liam(データベース設計): AIが既存のデータ構造を分析し、最適なデータベース設計を提案。設計の一貫性と品質を保ちながら、開発スピードを向上させます。 ROUTE06の重視するAI活用ポイント 設計品質重視: 「Quality In, Excellence Out」の思想で、高品質な設計から高精度な成果を生成 エンタープライズ対応: 日本企業特有の複雑な業務要件やセキュリティ要求に対応 人とAIの共創: AIを人間の能力を代替するものではなく、拡張するパートナーとして位置づけ まとめ 生成AIは、私たちの働き方や創造活動を根本的に変える可能性を秘めた技術です。適切に活用すれば、業務効率の向上、新たな価値創造、イノベーションの加速が期待できます。 一方で、その限界と課題を理解し、人間の判断と組み合わせて使用することが重要です。ROUTE06は、この生成AI技術を企業が安全かつ効果的に活用できるよう、包括的なプラットフォームとサービスを提供し、「誰もがプロダクトビルダーとして活躍できる社会」の実現を目指しています。 生成AIは単なる技術トレンドではなく、デジタル変革の中核となる基盤技術です。その可能性と課題を正しく理解し、適切に活用することで、組織と個人の両方に新たな価値をもたらすことができるでしょう。 --- # /glossary/llm URL: /glossary/llm name: LLM LLM(Large Language Model / 大規模言語モデル) LLMとは LLM(Large Language Model / 大規模言語モデル)とは、人間の言語を理解し、生成することができる大規模なAIモデルのことです。「大規模」と呼ばれる理由は、数千億個のパラメータ(学習可能な変数)を持ち、膨大なテキストデータで学習されているためです。 たとえば、ChatGPTやClaude、GeminiなどがLLMの代表例として知られています。これらのAIは、質問に答えたり、文章を要約したり、プログラムコードを書いたりと、さまざまな言語タスクをこなすことができます。 LLMの仕組み LLMの中核となる技術は「トランスフォーマー」と呼ばれるニューラルネットワークです。この技術により、文章中の単語同士の関係性を理解し、文脈に応じた適切な応答を生成できます。 学習プロセス 事前学習: インターネット上の大量のテキストデータ(ウェブページ、書籍、記事など)を使って、言語のパターンを学習します ファインチューニング: 特定のタスクに特化した追加学習を行い、性能を向上させます 人間のフィードバックによる強化学習(RLHF): 人間の評価を基に、より適切で安全な応答ができるよう調整します LLMができること LLMは以下のような幅広いタスクに対応できます: 文章生成: メール、レポート、ブログ記事などの作成 要約: 長い文書を短くまとめる 翻訳: 多言語間の翻訳 質問応答: 自然な会話形式での情報提供 コード生成: プログラミングコードの作成や修正 分析: テキストの感情分析や分類 企業におけるLLMの活用 現在、多くの企業がLLMを活用して業務効率化や新サービスの開発を進めています。主な活用領域として: カスタマーサポート: チャットボットによる24時間対応 コンテンツ制作: マーケティング資料の作成支援 業務自動化: 定型文書の作成や情報整理 開発支援: プログラミングの効率化 データ分析: 大量の文書からの情報抽出 ROUTE06におけるLLMの活用 ROUTE06は「AI × SI, Transformed.」というビジョンのもと、LLMを中心としたAI技術を活用して、企業のデジタル変革を支援しています。 AI駆動開発プラットフォーム ROUTE06が提供する3つの主要プロダクトは、すべてLLMを活用しています: 1\. Acsim(アクシム) 要件定義を支援するプラットフォームで、LLMが業務フローの分析や改善提案、プロトタイプの自動生成を行います。自然言語で記述された要件から、システム設計書やER図を自動生成することが可能です。 2\. Giselle(ジゼル) 複数のLLMを組み合わせたAIエージェントを構築できるプラットフォームです。企業の業務知識をLLMに学習させ、専門的なタスクを自動化できます。 3\. Liam(リアム) データベース設計を支援するプラットフォームで、LLMが既存のデータ構造を分析し、最適な設計を提案します。設計レビューやドキュメント生成も自動化されています。 実践的な価値提供 ROUTE06は、単にLLMを導入するだけでなく、日本企業特有の複雑な業務要件や承認フローに対応できるよう、LLMをカスタマイズして提供しています。 属人化の解消: 個人の経験や知識に依存していた業務をLLMで標準化 開発速度の向上: 要件定義から実装までの時間を大幅に短縮 品質の向上: AIによる自動レビューで設計ミスを削減 LLM活用の課題と対策 LLMは強力なツールですが、適切に活用するには以下の課題への対応が必要です。 1\. ハルシネーション(誤情報の生成) LLMは時として事実と異なる情報を生成することがありますROUTE06では、企業固有のデータでナレッジデータベースとしてLLMに連携させることで、精度を向上させています。 2\. セキュリティとプライバシー 機密情報の取り扱いには注意が必要です。ROUTE06では、エンタープライズレベルのセキュリティ要件に準拠した環境でのサービス提供を行なっています。 3\. 導入コスト LLMの導入には技術的な知識が必要ですが、研修導入支援を行うことによってお客様に専門知識がなくても活用できるようにしています。 まとめ LLMは、人間の言語を理解し生成する革新的なAI技術として、ビジネスの様々な場面で活用が進んでいます。ROUTE06は、このLLM技術を日本企業が実践的に活用できる形にカスタマイズし、要件定義から開発、運用まで一貫した支援を提供しています。 「構想で終わらせないDX」を実現するため、ROUTE06はLLMを単なる技術として提供するのではなく、実際の業務改善や価値創造につながるソリューションとして提供しています。これにより、技術者だけでなく、ビジネスサイドの方々も「プロダクトビルダー」として、AIと協働しながら新たな価値を生み出すことが可能になっています。 --- # /glossary/open-innovation URL: /glossary/open-innovation name: オープンイノベーション オープンイノベーション オープンイノベーションとは? オープンイノベーション(Open Innovation)とは、企業が社内の研究開発部門だけでなく、外部の企業、大学、研究機関、スタートアップ、さらには顧客や一般の人々からもアイデアや技術を取り入れて、新しい価値を創造する手法です。 この概念は、カリフォルニア大学バークレー校のヘンリー・チェスブロウ教授が2003年に出版した『Open Innovation: The New Imperative for Creating and Profiting from Technology』で提唱しました。チェスブロウ教授は「有用な知識は広く分散しており、どんなに優秀で大きな企業でも、単独では効果的にイノベーションを起こすことはできない」と指摘しています。 従来の「クローズドイノベーション」との違い 従来の企業は「クローズドイノベーション」と呼ばれる手法を採用していました。これは、研究開発から製品化、販売まですべてを自社内で完結させる方法です。企業秘密を守りやすく、知的財産を独占できるメリットがありましたが、開発に時間とコストがかかり、視野が狭くなりがちという課題がありました。 一方、オープンイノベーションには「アウトサイドイン型」と「インサイドアウト型」の2つの側面があります: アウトサイドイン型:外部のアイデアや技術を社内に取り込む インサイドアウト型:社内で活用されていない技術やアイデアを外部に提供する オープンイノベーションの主なメリット 1\. アイデアの多様性 社内だけでは思いつかなかった斬新なアイデアや解決策に出会える可能性が高まります。異なる業界や分野の知見を組み合わせることで、革新的なイノベーションが生まれやすくなります。 2\. 開発スピードの向上 複数の組織が並行して開発を進めることで、製品やサービスの市場投入までの時間を大幅に短縮できます。 3\. コスト削減 すべてを自社で開発する必要がないため、研究開発にかかる費用を抑えることができます。 4\. リスク分散 複数の組織で開発リスクを分担できるため、失敗した際の影響を最小限に抑えることができます。 オープンイノベーションの実施方法 企業がオープンイノベーションを実施する方法は多岐にわたります: イノベーションチャレンジ:特定の課題に対して広く解決策を募る スタートアップとの協業:新技術を持つスタートアップと提携 産学連携:大学や研究機関との共同研究 ハッカソン:短期間で集中的にアイデアを形にするイベント 社内起業制度:社員のアイデアを事業化する仕組み 共創ラボ:顧客や外部パートナーと共に新しい価値を創造する場 成功のための重要なポイント 明確なルール設定 知的財産権の扱い、成果の配分、機密情報の管理など、事前に明確なルールを設定することが重要です。 組織文化の変革 「自前主義」から脱却し、外部のアイデアを積極的に受け入れる組織文化を醸成する必要があります。 適切なパートナー選定 自社の強みを補完し、相乗効果を生み出せるパートナーを選ぶことが成功の鍵となります。 ROUTE06とオープンイノベーション ROUTE06は、「AI × SI, Transformed.」というビジョンのもと、まさにオープンイノベーションの考え方を体現した事業を展開しています。 三菱商事、三菱マテリアル、そごう・西武など、業界を超えた大手企業との協業を通じて、各社の強みを組み合わせた革新的なソリューションを生み出しています。これは典型的なオープンイノベーションの実践例です。 まとめ オープンイノベーションは、変化の激しい現代において企業が競争力を維持・向上させるための重要な戦略です。単に外部と協力するだけでなく、組織文化の変革、適切なルール設定、信頼関係の構築が成功の鍵となります。 ROUTE06は、AI技術を活用したプラットフォームとプロフェッショナルサービスを通じて、企業がオープンイノベーションを実践するための環境を提供しています。要件定義から実装まで、多様なステークホルダーが協働できる仕組みを構築することで、「構想で終わらせないDX」を実現し、日本企業のイノベーション創出を支援しています。 --- # /glossary/prompt-engineering URL: /glossary/prompt-engineering name: プロンプトエンジニアリング プロンプトエンジニアリング プロンプトエンジニアリングとは プロンプトエンジニアリング(Prompt Engineering)とは、ChatGPTやClaude、Geminiなどの生成AI(人工知能)に対して、望ましい回答を得るための「指示や質問の仕方」を設計・最適化する技術です。 例えば、同じAIに「レポートを書いて」と指示するのと、「マーケティング部門の新入社員向けに、2025年のSNSトレンドについて、具体例を3つ含めて800字程度でまとめてください」と指示するのでは、得られる結果の質が大きく異なります。この違いを生み出すのがプロンプトエンジニアリングの力です。 なぜプロンプトエンジニアリングが重要なのか McKinseyの調査によると、生成AIは世界経済に年間最大4.4兆ドル(約660兆円)の価値をもたらす可能性があるとされています。しかし、この価値を実現するためには、AIを効果的に活用する技術が不可欠です。 プロンプトエンジニアリングが重要な理由は主に3つあります: 1\. AIの性能を最大限引き出せる 適切なプロンプト(指示)により、AIはより正確で、より創造的で、より実用的な回答を生成できます。 2\. 業務効率が飛躍的に向上する 良いプロンプトは一度で望む結果を得られるため、試行錯誤の時間を大幅に削減できます。 3\. 専門知識がなくても高度な作業が可能になる プログラミングやデザインなどの専門スキルがなくても、適切なプロンプトによって高品質な成果物を作成できます。 プロンプトエンジニアリングの基本テクニック 1\. 明確な指示を与える 悪い例: 「売上について教えて」 良い例: 「2024年第3四半期の関東地域における自社製品Aの売上データを、前年同期比と併せて表形式でまとめてください」 2\. 役割を設定する AIに特定の専門家や立場を演じさせることで、より専門的な回答を得られます。 例: 「あなたは経験豊富なマーケティングコンサルタントです。中小企業のSNS活用戦略について、予算が限られている場合の効果的なアプローチを3つ提案してください」 3\. 段階的に考えさせる(Chain-of-Thought) 複雑な問題は、ステップごとに分解して考えさせると精度が向上します。 例: 「以下の手順で新商品の価格戦略を検討してください: まず競合他社の類似商品の価格を分析 次に自社のコスト構造を考慮 最後にターゲット顧客の価格感度を評価 これらを踏まえて最適な価格帯を提案」 4\. 具体例を示す(Few-shot Learning) 期待する出力形式の例を示すことで、AIの理解度が向上します。 例: 「以下の形式で商品説明を作成してください: 商品名:エコバッグA 特徴:軽量で丈夫、洗濯可能 メリット:環境に優しく経済的 上記の形式で、新商品『スマートウォッチB』の説明を作成してください」 ROUTE06におけるプロンプトエンジニアリングの活用 ROUTE06は「AI × SI, Transformed.」のビジョンのもと、プロンプトエンジニアリングを事業の中核に据えています。 Acsim(要件定義支援プラットフォーム)での活用 Acsimは、システム開発の要件定義フェーズにおいて、AIを活用して設計書やドキュメントを自動生成します。この際、プロンプトエンジニアリングの技術により: 曖昧な業務要求から明確な機能要件を導出 業界特有の用語や文脈を理解した上での設計書生成 ROI試算や実現可能性の評価レポート作成 これらを高精度で実現しています。 Giselle(AIエージェント構築プラットフォーム)での実装 Giselleでは、企業が独自のAIエージェントを構築する際、プロンプトエンジニアリングが重要な役割を果たします: 業務知識をAIが理解できる形式に変換 複数のAIモデルを組み合わせた高度な処理の実現 企業固有のトーンやポリシーに沿った応答の生成 プロンプトエンジニアリングの未来 プロンプトエンジニアリングは今後さらに重要性を増していきます。特に以下の分野での発展が期待されています。 1\. マルチモーダル対応 テキストだけでなく、画像、音声、動画を組み合わせた複合的なプロンプト設計 2\. 自己最適化 AIが自らプロンプトを改善し、より良い結果を生み出す仕組み 3\. 業界特化型プロンプト言語 各業界に特化した専門的なプロンプトパターンの標準化 まとめ プロンプトエンジニアリングは、生成AIの可能性を最大限に引き出すための重要な技術です。適切な指示の与え方を習得することで、専門知識がなくても高度な作業を効率的に行えるようになります。 ROUTE06は、このプロンプトエンジニアリングの技術を基盤として、企業のDX推進を支援しています。AcsimやGiselle、Liamといったプロダクトを通じて、「構想で終わらせないDX」を実現し、すべての人が「プロダクトビルダー」として活躍できる未来を創造していきます。 プロンプトエンジニアリングは、単なる技術スキルではなく、人とAIが協働する新しい時代における「共通言語」です。この言語を習得することで、私たちはAIとともに、これまで想像もできなかった価値を生み出すことができるのです。 --- # /glossary/rag URL: /glossary/rag name: RAG RAG(Retrieval-Augmented Generation) RAGとは何か RAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)とは、大規模言語モデル(LLM)の回答精度と信頼性を向上させるためのAI技術フレームワークです。簡単に言えば、AIが質問に答える際に、学習済みの知識だけでなく、外部の信頼できるデータベースや文書から必要な情報を検索して取得し、その情報を基により正確で最新の回答を生成する仕組みです。例えば、企業は技術マニュアルや社内規定などを「ナレッジベース」として活用し、カスタマーサポートや従業員研修等に活用できます。 なぜRAGが必要なのか LLMの限界を克服 ChatGPTやClaudeなどの大規模言語モデルは、膨大なデータから学習して驚くほど自然な文章を生成できます。しかし、以下のような課題があります: 情報の鮮度: 学習データには締切日があり、最新情報を反映できない 正確性の問題: 答えがわからない時に、もっともらしい誤った情報を生成する(ハルシネーション) 専門性の欠如: 企業固有の情報や専門的な業務知識への対応が困難 信頼性の証明: 回答の根拠となる出典を示せない RAGは、これらの課題を外部データベースとの連携によって解決します。 またRAGの主な利点として以下が挙げられています。 コスト効率: モデルの再学習なしに新しい情報を活用可能 即時性: 最新情報への迅速な対応 信頼性: 情報源の明示による透明性の確保 制御性: 情報源の管理による品質コントロール RAGの仕組み RAGは大きく2つのステップで動作します。 1\. 検索フェーズ ユーザーからの質問を受け取ると、まずその質問を数値表現(ベクトル)に変換します。この数値表現を使って、関連する情報を外部のデータベースから検索します。検索対象となるデータは、企業の内部文書、最新のニュース記事、専門的なマニュアルなど、用途に応じて様々です。 2\. 生成フェーズ 検索で取得した関連情報とユーザーの質問を組み合わせて、LLMに渡します。LLMは、自身の学習済み知識と検索で得た最新・専門的な情報の両方を活用して、より正確で信頼性の高い回答を生成します。重要なのは、回答に情報源を明記できることで、ユーザーは必要に応じて元の資料を確認できます。 ROUTE06におけるRAGの活用 ROUTE06は、AI駆動開発プラットフォームを通じて、企業のデジタル変革を支援しています。例えば、 Giselle(エージェントビルダー)ではRAGに対応する機能をリリースしています。Giselleは、複数のAIモデルと多様なデータソースを組み合わせてAIエージェントを構築するプラットフォームです。RAG技術により、GitHubのコード情報とAIを連携させ、コードから仕様を書き起こすなどの機能を実現しています。 まとめ RAGは、AIの「知識」と「信頼性」の課題を同時に解決する画期的な技術です。ROUTE06は、この技術を活用して企業のAI導入における「正確性への不安」「最新情報への対応」「企業固有知識の活用」という課題を解決し、実用的なAIソリューションを提供しています。 AI時代において、単にAIを導入するだけでなく、いかに企業の知識資産と組み合わせて価値を生み出すかが重要です。RAGは、その実現を可能にする中核技術として、今後ますます重要性を増していくでしょう。 --- # /glossary/requirements-definition URL: /glossary/requirements-definition name: 要件定義 要件定義 要件定義の基本を理解する 要件定義とは、システムやソフトウェアを開発する前に「何を作るのか」「どのような機能が必要なのか」を明確にする重要なプロセスです。建物を建てる際の設計図のように、システム開発における設計図を作る作業と考えると分かりやすいでしょう。 要件定義は、顧客の要求事項を体系的に収集・分析・文書化し、開発チーム全体で共有可能な形に整理する工程です。単に「こんなシステムが欲しい」という漠然とした要望を、具体的で実現可能な仕様に落とし込んでいく作業といえます。 なぜ要件定義が重要なのか ソフトウェアプロジェクトの失敗原因の大多数が要件定義・管理のミスマッチに起因しており、プロジェクト失敗の最大要因となっています。要件定義が不十分だと、完成したシステムが実際の業務に合わない、予算が大幅に超過する、納期に間に合わないといった問題が発生します。 要件定義の主要なステップ 1\. 要求の収集 まず現状の業務やシステムの課題を把握し、将来どのようなシステムが必要かを関係者から聞き取ります。ユーザーインタビュー、ワークショップ、業務観察などの手法を用いて、表面化していないニーズも含めて幅広く情報を集めます。 2\. 要求の分析と整理 収集した情報を整理し、矛盾や重複を解消しながら、実現可能な要件として構造化します。「何を(What)」「どこで(Where)」「いつ(When)」「なぜ(Why)」という観点から要件を分析し、優先順位をつけていきます。 3\. 要件の文書化 整理された要件を、開発チームや関係者が理解できる形で文書化します。要件は「明確」「簡潔」「理解可能」「曖昧さがない」「完全」「一貫性がある」「追跡可能」「検証可能」という特性を持つ必要があります。 4\. 要件の検証と合意 作成した要件が顧客のニーズを正確に反映しているか確認し、関係者全員の合意を得ます。プロトタイプやモックアップを使用して、具体的なイメージを共有することも効果的です。 要件定義で陥りやすい落とし穴 要件定義では、以下のような問題に注意が必要です: スコープクリープ:プロジェクト進行中に「ついでにこの機能も」と要件が膨らんでいく現象 曖昧な表現:「使いやすい画面」「高速な処理」など、人によって解釈が異なる表現の使用 ステークホルダーの見落とし:重要な関係者の意見を聞き漏らすことによる手戻りの発生 ROUTE06が提供する要件定義の革新 ROUTE06は、従来の要件定義プロセスが抱える「属人化」「手戻り」「長期化」といった課題を、AI技術を活用して解決しています。 Acsim:AI駆動の要件定義プラットフォーム ROUTE06が開発した「Acsim」は、要件定義プロセスを効率化・高度化するAIプラットフォームです。従来、経験豊富なコンサルタントに依存していた要件定義作業を、AIの支援により標準化・効率化できます。 Acsimの特徴: ビジュアルな業務フロー設計:複雑な業務プロセスを視覚的に整理し、改善提案まで自動生成 AIによる要件分析:過去の成功事例やベストプラクティスを学習したAIが、抜け漏れのない要件定義を支援 ROI試算の自動化:システム導入による投資対効果を自動的に算出し、意思決定を支援 実践的なアプローチ ROUTE06のアプローチは、単なるツール提供にとどまりません。豊富なエンタープライズシステム開発経験を持つ専門チームが、以下のような支援を提供します。 現状分析(As-Is):AIツール「Giselle」を活用した業務課題の可視化 将来像設計(To-Be):「Acsim」による最適な業務フロー設計 要件定義書作成:AIを活用した包括的なドキュメント生成 まとめ:要件定義の成功がプロジェクトの成功を左右する 要件定義は、システム開発プロジェクトの成否を決定づける重要な工程です。適切な要件定義により、開発の手戻りを防ぎ、ユーザーが本当に必要とするシステムを構築できます。 ROUTE06は、AI技術とエンタープライズ開発の実践知を組み合わせることで、従来の要件定義が抱えていた課題を解決し、より効率的で精度の高い要件定義を実現しています。「構想で終わらせないDX」を掲げる同社のアプローチは、要件定義を起点として、実装から定着まで一貫した支援を提供し、確実に成果につながるシステム開発を可能にしています。 --- # /glossary/saas URL: /glossary/saas name: SaaS SaaS(Software as a Service) SaaSの基本概念 SaaS(Software as a Service、サース)とは、インターネットを通じてソフトウェアを提供するサービス形態です。従来のようにソフトウェアを購入してパソコンにインストールするのではなく、Webブラウザからアクセスして利用する仕組みです。 SaaSは、クラウドベースのソフトウェア配信モデルで、個人や組織がローカルに購入・インストールするのではなく、アプリケーションをサブスクリプション形式で利用します。利用者はインターネット接続とWebブラウザさえあれば、どこからでもソフトウェアを使うことができます。 なぜSaaSが注目されているのか 1\. 初期投資の削減 SaaSでは高額な前払い費用の代わりに、利用した分だけ支払うことができます。企業は必要な機能やユーザー数に応じて柔軟にプランを選択でき、IT予算を効率的に活用できます。 2\. どこでも働ける環境の実現 SaaSは、インターネットに接続されたコンピュータやモバイルデバイスから、アプリケーションやデータにアクセスできるようにすることで、モバイルワークフォースをサポートします。リモートワークやハイブリッドワークが一般的になった現代において、この特徴は特に重要です。 3\. 常に最新の機能を利用 SaaSプロバイダーがリアルタイムでソリューションを更新できるため、企業はソフトウェアをより迅速に反復できます。つまり、顧客は新しいバージョン(より多くの機能、より少ないバグ、強化されたセキュリティを備えた)を頻繁かつ迅速に受け取ることができます。 4\. 導入スピードの向上 SaaSモデルはハードウェアを必要としないため、迅速に展開できます。ユーザーは、はるかに速くアプリケーションにアクセスできるようになり、生産性と従業員満足度を向上させることができます。 SaaSの仕組みと特徴 マルチテナントアーキテクチャ SaaSプロバイダーはマルチテナントアーキテクチャを使用します。つまり、ソフトウェアの単一インスタンスが複数の顧客にサービスを提供します。これにより、インフラとメンテナンスコストが多くの顧客に分散され、コスト効率が高まります。 技術的な運用はプロバイダーが担当 サービスプロバイダーがソフトウェアのメンテナンスを管理し、アップデート、セキュリティ、バックアップを含みます。これにより、企業のIT部門は戦略的な業務により多くの時間を割くことができます。 SaaSの具体的な活用例 ビジネス管理・運営 プロジェクト管理、CRM、会計、人事向けのクラウドベースのツールは、リアルタイムのデータアクセスを提供し、意思決定を強化し、ワークフローを合理化し、さまざまな部門全体の効率を向上させます。 コラボレーション・コミュニケーション Microsoft TeamsなどのSaaSツールは、リアルタイムメッセージング、ビデオ会議、ファイル共有、プロジェクト管理をサポートし、チームがあらゆる場所からシームレスにコラボレーションできるようにします。 データ分析・ビジネスインテリジェンス SaaSソリューションは、リアルタイムのデータ処理、視覚化、レポート作成を提供します。予測分析、トレンド分析、意思決定をサポートし、企業が洞察を発見し、業務を最適化し、成長を促進するのに役立ちます。 ROUTE06とSaaSの関係 ROUTE06は、エンタープライズ企業のDXを支援する中で、SaaSの考え方を積極的に取り入れています。 AI駆動開発プラットフォームの提供 ROUTE06が開発する「Acsim」「Giselle」「Liam」といったAI駆動開発プラットフォームは、まさにSaaS型のソリューションです。これらのツールは: Webブラウザからアクセス可能:専用ソフトウェアのインストール不要 常に最新のAI技術を搭載:最新のAIモデルや機能が自動的に利用可能 チーム全体での協働を実現:複数のメンバーが同時にアクセスし、リアルタイムで協業 エンタープライズ向けSaaS導入支援 ROUTE06は、大手企業がSaaSを効果的に導入・活用するための支援も行っています。日本企業特有の複雑な業務要件や承認フローに対応しながら、\[最適なSaaSソリューションの選定から導入、定着化まで一貫してサポートします。 ハイブリッドアプローチの実現 ROUTE06の強みは、SaaSの利便性とエンタープライズグレードの信頼性を両立させる点にあります。クラウドネイティブな開発手法を用いながら、セキュリティやコンプライアンスといった大企業の要求にも確実に応えています。 SaaSの今後の展望 将来のSaaSトレンドには、AIと機械学習の採用増加、ローコード・ノーコードプラットフォーム、強化されたセキュリティとコンプライアンスが含まれます。 特に注目すべきトレンドとして: AI統合の加速:より個別化された予測ソリューションの提供 業界特化型SaaS:特定業界のニーズに最適化されたソリューション API連携の強化:異なるSaaSアプリケーション間のシームレスな統合 まとめ SaaSは、ソフトウェアの提供方法を根本的に変革し、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速する重要な要素となっています。初期投資の削減、迅速な導入、常に最新の機能といったメリットにより、あらゆる規模の企業がより効率的にビジネスを運営できるようになりました。 ROUTE06は、このSaaSの利点を最大限に活用しながら、日本企業特有のニーズに応えるソリューションを提供しています。AI駆動開発プラットフォームを通じて、企業が「構想で終わらないDX」を実現し、真のデジタル変革を達成できるよう支援しているのです。 --- # /glossary/startup URL: /glossary/startup name: スタートアップ スタートアップとは スタートアップの定義と本質 スタートアップとは、革新的な製品やサービスを通じて急速な成長を目指す新興企業のことです。単なる「新しい会社」ではなく、創業者が市場に新たな価値を提供したいと考える製品やサービスに焦点を当てた、事業の初期段階にある企業を指します。 スタートアップは、既存の産業を破壊したり、新しい市場を創造したりすることで、短期間で大きな影響を与えることを目指しています。この点が、安定的な収益を重視する一般的な中小企業との大きな違いです。 スタートアップの特徴的な要素 1\. イノベーションとスケーラビリティ スタートアップは革新に焦点を当て、初期段階では資源の大部分を製品開発に投じます。また、市場の変化や新たな機会に適応できるよう、成長とスケーラビリティをビジネスプランに組み込んでいます。 2\. 高い成長ポテンシャル スタートアップは、大規模な市場を開拓し、独自の製品を提供し、強力なチームを構築し、収益性を達成するまで事業を維持するための十分な資本を確保することで、急速な成長を実現できます。 3\. テクノロジーの活用 技術は、新技術の開発、市場調査や顧客獲得のためのデータ活用、ビジネスプロセスの効率化など、ほとんどのスタートアップで重要な役割を果たしています。 4\. 外部資金調達 スタートアップは、家族や友人、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタル、クラウドファンディング、融資など、さまざまな資金源から資金を調達します。 スタートアップのライフサイクル スタートアップのライフサイクルは5つの段階に分かれます:アイデア創出(構想)、立ち上げ(スタートアップ段階)、成長(スケーリング)、成熟、そして出口または拡大です。 アイデア創出段階:市場のニーズを特定し、解決策を考案 立ち上げ段階:MVP(最小限の実行可能な製品)を開発し、初期顧客を獲得 成長段階:製品と市場の適合性を見つけ、事業を急速に拡大 成熟段階:安定した収益源と顧客基盤を確立 出口または拡大段階:買収やIPO、新市場への展開を検討 スタートアップが直面する課題 スタートアップは、市場競争、資金調達の確保、人材採用とチーム管理、持続可能な拡大など、さまざまな課題に直面します。特に: 激しい市場競争:他の新興企業や資源豊富な既存企業との競争 継続的な資金調達:成長を維持するための資金確保のプレッシャー 優秀な人材の獲得:限られたリソースでトップタレントを引き付ける難しさ スケーリングの課題:急成長と持続可能性のバランス ROUTE06:スタートアップからエンタープライズへの橋渡し ROUTE06自体がスタートアップとして誕生し、デジタル変革の最前線で挑戦を続けている企業です。私たちは、自らがスタートアップとして直面した課題や経験を活かし、革新的なソリューションを大企業に導入する支援を行っています。 スタートアップとしてのROUTE06の特徴 イノベーションへの情熱:最新のデジタル技術を活用し、企業の変革を支援 アジャイルな組織文化:迅速な意思決定と柔軟な対応力 成長志向:クライアントと共に成長することを目指す姿勢 エンタープライズへのスタートアップ製品導入支援 ROUTE06は、革新的なスタートアップの製品やサービスを大企業に導入する際の架け橋となってきました。この経験により、以下のような価値を提供しています: 技術評価と選定 スタートアップの革新的な技術を評価し、企業ニーズに最適なソリューションを選定 技術的なリスクと機会を適切に評価 導入プロセスの最適化 スタートアップの俊敏性と大企業の厳格な要件のバランスを取る 段階的な導入計画の策定と実行支援 文化的な橋渡し スタートアップのスピード感と大企業の慎重さを調和させる 両者のコミュニケーションを円滑化 両方の世界を理解する強み ROUTE06は、スタートアップとして始まり、多くのエンタープライズ企業と協働してきた経験から、両方の世界の言語を話すことができます。この独自のポジションにより: スタートアップの革新性と俊敏性の価値を大企業に伝える 大企業の要求水準とプロセスをスタートアップに理解してもらう 両者にとってWin-Winの関係を構築する デジタル時代におけるスタートアップの重要性 日本において、デジタルトランスフォーメーションが急務となる中、スタートアップの革新的なアプローチと大企業の資源・規模を組み合わせることが、競争力向上の鍵となっています。 スタートアップは、イノベーションを通じて市場に変革をもたらす重要な存在です。高いリスクを伴う一方で、革新を歓迎し、学習機会が豊富で、やりがいのある職場環境を提供します。 ROUTE06は、自らがスタートアップとして歩んできた道のりと、数多くのスタートアップ製品をエンタープライズに導入してきた実績を活かし、日本のデジタル変革を推進しています。スタートアップの革新性と大企業の安定性、両方の強みを理解し、それらを結びつけることで、より大きな価値を創造することを目指しています。 イノベーションに境界はありません。ROUTE06は、スタートアップスピリットを持ち続けながら、あらゆる規模の企業がデジタル時代に成功できるよう支援を続けてまいります。 --- # /glossary/vibe-coding URL: /glossary/vibe-coding name: Vibe Coding Vibe Coding(バイブコーディング) Vibe Codingとは Vibe Coding(バイブコーディング)とは、AI(人工知能)を活用して、自然な言葉で指示を出すだけでプログラムを作成する新しい開発手法です。2025年2月、OpenAIの共同創業者であるAndrej Karpathy氏が提唱したこの概念は、「コードの存在を忘れて、やりたいことの雰囲気(vibe)に身を任せる」という革新的なアプローチを示しています。 従来のプログラミングでは、開発者が一行一行コードを書く必要がありました。しかしVibe Codingでは、「ユーザーがログインできる画面を作って」「売上データをグラフで表示したい」といった自然な言葉での指示をAIが理解し、実際に動作するコードを自動生成します。 Vibe Codingの仕組みと課題 基本的な流れ 自然言語での指示:開発者が実現したい機能を日常的な言葉で説明 AIによる解釈と生成:大規模言語モデル(LLM)が指示を理解し、適切なコードを生成 実行と確認:生成されたコードを実行し、意図通りに動作するか確認 フィードバックと改善:問題があれば再度自然言語で修正を指示 実践における課題 しかし、実際のVibe Codingには大きな課題があります。それは「プロンプト(AIへの指示)の質」です。曖昧な指示では、AIも曖昧な結果しか返せません。特に企業システムのような複雑な要件では、以下の問題が顕著になります: 要件の構造化不足:「こんな感じで」という曖昧な指示では、期待する結果が得られない コンテキストの欠如:既存システムとの連携や業務フローの考慮が不十分 品質のばらつき:同じ機能でも、指示の仕方により生成されるコードの品質が大きく変わる ROUTE06が実現する「精度の高いVibe Coding」 ROUTE06は、この課題を解決する独自のアプローチを開発しました。それが、\*\*AcsimとGiselle\*\*を活用した「構造化されたVibe Coding」です。 Acsim:要件を構造化データに変換 \*\*Acsim(アクシム)\*\*は、ビジネス要件を構造化されたデータに変換する要件定義支援プラットフォームです。最大の特徴は、生成された要件をJSON形式などの構造化データとして出力できることです。 具体的な活用例 例えば、「ECサイトの注文管理システム」を作りたい場合、以下のようなことが可能になります。 Acsimで要件定義 業務フロー:注文受付→在庫確認→決済→配送手配 必要な画面:注文一覧、注文詳細、ステータス更新 データ構造:注文情報、顧客情報、商品情報の関連 構造化データとして出力 Vibe Codingのプロンプトに活用 この構造化データをAIへのプロンプトに添付することで、曖昧さのない、精度の高いコード生成が可能になります。 本件は簡略化した例ですが、実際の製品では複雑な業務フローを構造化データとして出力することができます。 Giselle:GitHubデータからプロンプト実行指示書を作成 \*\*Giselle(ジゼル)\*\*は、AIエージェント構築プラットフォームとして、GitHubリポジトリのデータ解析に強みを持っています。 プロンプト実行指示書の自動生成 Giselleは以下のプロセスで、効果的なVibe Codingを支援します。 既存コードベースの解析 GitHubリポジトリの構造を分析 コーディング規約やパターンを抽出 使用されているライブラリやフレームワークを識別 プロンプト実行指示書の作成 プロジェクトの技術スタックに適した指示形式 コーディング規約に準拠した生成ルール 既存コードとの整合性を保つためのガイドライン 実行可能な指示書として出力 本件も簡略化した例ですが、複雑なコードベースから適切な実装計画や技術スタックを指示書として生成することが可能です。 実践的なワークフロー ROUTE06のツールを活用したVibe Codingの理想的なワークフローは以下の通りです。 1\. 要件の構造化(Acsim) ビジネス担当者が自然言語で入力した要件を、Acsimが構造化データに変換。これにより、技術者でなくても正確な要件定義が可能に。 2\. 実行環境の分析(Giselle) 既存のGitHubリポジトリや開発環境を分析し、プロジェクトに最適なプロンプト実行指示書を生成。 3\. 精度の高いコード生成 AcsimのJSON出力とGiselleの実行指示書を組み合わせることで、以下が実現: 一貫性のあるコード:プロジェクトの規約に準拠 保守性の高い実装:既存コードとの調和 ビジネス要件の正確な反映:構造化された仕様に基づく実装 4\. 継続的な改善 生成されたコードはGitHubにプッシュされ、Giselleが継続的に分析。次回のVibe Codingではさらに精度が向上。 まとめ:次世代のソフトウェア開発へ Vibe Codingは、ソフトウェア開発の民主化を実現する革新的な手法です。しかし、その真価を発揮するには、適切な構造化と文脈の提供が不可欠です。 ROUTE06のAcsimとGiselleは、この課題を解決し、企業が安心してVibe Codingを活用できる環境を提供します。要件を構造化データとして管理し、既存資産との整合性を保ちながら、AIの力を最大限に活用する。これこそが、ROUTE06が提案する「AI × SI, Transformed.」の具体的な姿です。 構想を確実に形にする。それがROUTE06のVibe Coding支援が目指す、新しいソフトウェア開発の形です。 --- # デジタルでつながる都市鉱山、限りある資源が限りなくめぐる社会へ URL: /insights/1 title: デジタルでつながる都市鉱山、限りある資源が限りなくめぐる社会へ summary: "本日の記者会見およびプレスリリースにて、三菱マテリアルが運営開始するE-Scrap取引プラットフォーム「MEX」の発表が行われた。パートナー企業として私も記者会見に登壇し、三菱マテリアルの進めるデジタル化戦略「MMDX(三菱マテリアル デジタル・ビジネストランスフォーメーション)」及び「MEX」の可能性などについて説明する機会をいただいた。" date: 2021-10-26 author: "authors/takafumi\_endo.mdx" category: "categories/case.mdx" glossary: "glossary/startup.mdx" "glossary/open-innovation.mdx" cover: "/images/insights/1\_cover.jpg" 本日の記者会見およびプレスリリースにて、三菱マテリアルが運営開始するE-Scrap取引プラットフォーム「MEX」の発表が行われた。パートナー企業として私も記者会見に登壇し、三菱マテリアルの進めるデジタル化戦略「MMDX(三菱マテリアル デジタル・ビジネストランスフォーメーション)」及び「MEX」の可能性などについて説明する機会をいただいた。 ROUTE06の創業2年目にして、創業150年の伝統ある三菱マテリアルの経営陣の皆様との記者会見に同席することになるとは想像もしていなかった。参画当初は創業まもなく実績もないスタートアップ企業であったROUTE06を信じていただき、また対等なパートナーとして迎え入れて下さった三菱マテリアルの亀山CDOをはじめとしたDX推進本部の皆さま、酒井常務をはじめとした金属カンパニーの皆さま、その他関係者の皆さまには心から感謝申し上げたい。 本記事の全文はこちらのサイトをご覧ください。 --- # SaaSの誕生とSalesforce、マーク・ベニオフの革新的なマーケティング戦略 URL: /insights/10 title: SaaSの誕生とSalesforce、マーク・ベニオフの革新的なマーケティング戦略 summary: "Salesforce(セールスフォース)は、インターネットを介してソフトウェアサービスを提供するSaaS(Software as a Service)型のビジネスモデルを確立し、CRMやSFAを中心とした業務アプリケーション領域に留まらず、エンタープライズソフトウェア市場全体の裾野を大きく広げることに貢献したテクノロジー企業です。「クラウド」という言葉が存在しない時代に創業し、現在では15万社を超える顧客を抱えており、その急成長の背景として独自のマーケティング戦略が重要な役割を果たしてきました。本記事では、Salesforce創業当時の1990年代のソフトウェア業界の歴史を振り返りながら、業界の常識を覆してSalesforceが世界的企業に成長するまでにどのようなマーケティングを行ってきたのかについてご紹介します。※本記事では現行の社名:Salesforceに統一して表記します。" date: 2022-10-07 author: "authors/moe\_mizono.mdx" category: "categories/research.mdx" glossary: "glossary/saas.mdx" "glossary/startup.mdx" cover: "/images/insights/10/10-0.jpg" Salesforce(セールスフォース)は、インターネットを介してソフトウェアサービスを提供するSaaS(Software as a Service)型のビジネスモデルを確立し、CRMやSFAを中心とした業務アプリケーション領域に留まらず、エンタープライズソフトウェア市場全体の裾野を大きく広げることに貢献したテクノロジー企業です。「クラウド」という言葉が存在しない時代に創業し、現在では15万社を超える顧客を抱えており、その急成長の背景として独自のマーケティング戦略が重要な役割を果たしてきました。本記事では、Salesforce創業当時の1990年代のソフトウェア業界の歴史を振り返りながら、業界の常識を覆してSalesforceが世界的企業に成長するまでにどのようなマーケティングを行ってきたのかについてご紹介します. ※本記事では現行の社名:Salesforceに統一して表記します." SalesforceがリードしたグローバルSaaS市場 Fortune Business Insightsのレポート\[^1]によると、近年急成長しているSaaSのグローバル市場は2020年に1,140億ドルに達し、2028年までに7,160億ドルまで拡大することが予測されています。Salesforceの2020年1月期における売上高は約170億ドルであり、本レポートの数値を基準にするとSaaS市場において当社は約14%のシェアを占める計算になります。 1990年代に提供されていた業務向けのソフトウェアは、CD-ROMによるインストール型(パッケージ型)が主流でした。その頃、史上最年少VPとしてオラクルに在籍していたマーク・ベニオフ(当時35歳)は、業務用ソフトウェアをインストール型ではなく、SaaSとして提供することに事業機会を見出していました。創業の背景についてマーク・ベニオフは自身の著書\[^2]で以下のように記しています。 1999年、マーク・ベニオフはインターネット経由でCRMを提供するSalesforceを創業。企業向けソフトウェアの新時代が幕を開けました。 尚、インターネットを介したブラウザベースでのアプリケーション提供という観点でSaaSと類似形態であるASP(Application Service Provider)も1990年代から普及しはじめており、ASPが「シングルテナント」(個々のユーザーに専用の環境を提供)であるのに対して、SaaSは「マルチテナント」(複数のユーザーで共通のソフトウェア環境を共有)という違いがあります。 マーク・ベニオフが主導したマーケティング戦略「NO SOFTWARE」 創業後まもなく、Salesforceは自社の新たなサービスモデルに注目を集めるため独自のマーケティング戦略に着手します。 明確なポジショニングとブランド定義 Salesforceは自社を業界のリーダーに戦いを挑む挑戦者として位置付け、従来の効率の悪いソフトウェア提供のあり方に戦いを挑むというストーリーを作り出し、自分たちの使命を「顧客のために新しくよりよいソフトウェアを提供すること」だと定義しました。 2000年、Salesforceのサービス発表イベントでは、そのストーリーを体現する仕掛けがなされました。会場の最下層フロアを「地獄」に見立て、従来型のインストール型ソフトウェアをそこに描写し檻の中に閉じ込められたセールスマンを演ずる役者が「助けてくれ!」と叫ぶ演出に加えて、ソフトウェアのCD-ROMをトイレに投げ込むゲームや、もぐらに他のソフトウェア企業のロゴを入れたモグラ叩きゲームまで用意されていました。招待客は地獄を通り抜けた後、ハープの演奏の中にSalesforceの製品が並ぶ最上階のフロア「天国」にたどり着く仕掛けでした。創業者であるマーク・ベニオフは戦闘服を着込んで革命家を演じ、既存のソフトウェア業界との戦いを体現しました。 「ソフトウェアの終焉」キャンペーンによる差別化 ブランド戦略を考えるにあたり、マーク・ベニオフはレーガン大統領のテレビキャンペーンにも関わっていた業界トップクラスの広告マン・ブルースキャンベルに相談を持ちかけ、「ソフトウェアの終焉」という広告キャンペーンが実施されることになります。これは、「NO SOFTWARE」と大きく書かれたロゴをすべての販促物に貼り付け、これまでのソフトウェア製品と自社の違いを強く訴えるものでした。他社との徹底した差別化により、このキャンペーンはウォール・ストリートジャーナルでも取り上げられるなど大きな反響を巻き起こしました。 過激にも思えるこれらのキャンペーンですが、マーク・ベニオフはブランディングの考え方について、以下のように記しています\[^2]。 「NO SOFTWARE」を掲げたキャンペーンはその後も続き、ライバル企業のイベントを直接利用したゲリラ戦術を複数回行いました。当時CRMのマーケットリーダーだったSiebel Systemsのイベント会場であるサンディエゴ・コンベンションセンター前に大量の自転車タクシーを雇い、来場者にコーヒーと自社のマーケティング資料を手渡したり、欧州ユーザーウィークではニース空港からカンヌまでのタクシーをすべて借り切り、NO SOFTWAREのロゴを飾った社内でSalesforceの宣伝を行ったりしました。この徹底したライバル企業への不意をつくアプローチによって、Siebel Systemsは当時小さなベンチャー企業に過ぎなかったSalesforceに対してコメントをせざるを得なくなり、マスコミも2社の対立に興味を持つようになっていきました。業界のチャレンジャーとしてメディアからの支持を取り付けたSalesforceは、徐々にソフトウェア業界での存在感を高めていったのです。現在ではSaaSは当たり前のように普及してますが、当時はこれほどのキャンペーンを実施しなければ顧客に違いを認識してもらえないほど、SaaSという考え方が珍しく理解を得るのも難しかったのかもしれません。 2003年、CRMのマーケットリーダーだったSiebel Systemsは実質的なSaaSであるオンデマンド型サービスに乗り出すと発表した後、2005年にオラクルに買収されました。CRM市場の主役が、インストール型ソフトウェア企業からSaaS型ソフトウェア企業に切り替わった瞬間でした。尚、これらのライバル企業への戦術について、マーク・ベニオフはマーケティングの古典「ポジショニング戦略」を参考にしたと語っています。 ユーザーを巻き込んだコミュニティ施策 Salesforceは、成長していくにつれてライバル企業への攻撃を中心としたマーケティングからサービスの価値を訴えるマーケティングにシフトしていきました。 ファンがファンを呼ぶイベントの開催 他社ソフトウェア企業が予算を握る役員クラスをターゲットとする中、Salesforceはエンドユーザーを重視したイベントを実施します。当時、従来のインストール型ではないサービスを導入することは勇気のいる決断であり、Salesforceの顧客がさながら所属企業内での反乱軍のような存在となっていたことに着目したのです。Salesforceは自身の顧客を「Trailblazer」と名付け、イベント会場のチラシや広告に掲載し積極的に支援しました。 SaaSモデルは買い切りのソフトウェアと違い、顧客に使い続けてもらうこと、すなわちサービスを利用することによって顧客のビジネスの成功に貢献することがその本質です。創業当初から「顧客の成功」を強く意識していたSalesforceは、自社のビジネスを成功に導いた体験談をシェアすることを推奨し、実際にイベントに参加したTrailblazerのクチコミが、見込顧客への重要なアプローチとなっていきました。Trailblazerもまた、自分の取り組みをシェアしたり、ユーザー同士で交流したりするイベントへの参加を経て、Salesforceの強いフォロワーになっていったのです。 15名の参加者からはじまったSalesforceのユーザーイベントは毎年開催されている「Dreamforce」につながり、今では世界中から17万人が参加するイベントとなっています。マーク・ベニオフはこの巨大イベントのキーノートの冒頭で必ずTrailblazerの存在に触れており、SalesforceがいかにTrailblazerを大切に考えているかが伺えます。 AppExchangeによるSaaSのプラットフォーム化 2004年6月23日、SalesforceはIPOを実施したその日に54.6%の株価上昇を記録しました。このIPOは当時のCNET Japanで以下のように紹介されており\[^3]、Salesforce及びSaaSがソフトウェア業界にもたらす変化への期待が伺えます。 「このIPOは、ソフトウェア業界の再編をもたらす新しいビジネスモデルの試みとして注目されている。Salesforceは、企業向けCRMソフトウェアをサブスクリプション形式で販売する手法をとっており、この手法は企業の購買担当者間で人気が高まっている。アナリストらは、Salesforceの契約ベースモデルや類似の手法が成功すれば、SAPやSiebel Systems、PeopleSoft、Oracleなどの従来型の販売を行うソフトウェア企業に課題を突きつける可能性がある。」 創業からの数年間、SaaSモデルの価値定義に尽力したSalesforceは、次のステップとしてアプリケーションエコノミーの構築に着手します。このアプリケーションエコノミーのアイディアは、マーク・ベニオフのメンターだったスティーブ・ジョブズが発案したものでした\[^4]。 これを形にしたAppExchangeが2006年にリリースされ、他社デベロッパーが開発したソフトウェアサービスをSalesforceを通じてダウンロードできるようになりました。AppExchangeによって、Salesforceを通じて他のアプリケーションにアクセスするエコシステムが構築され、Salesforceはオンデマンド型のCRMを提供する企業からSaaSのプラットフォーマーへと進化したのです。また、SalesforceはAppExchangeを通じてどの領域のアプリケーションが顧客に必要とされているのかタイムリーに知ることができ、投資判断や機能開発においてもアドバンテージを持つことができるようになりました。 今では世界で5,000以上のアプリ及びSaaSがAppExchange上に流通しています。このエコシステムによって、社内のワークフロー構築としてSalesforceを導入する事例も生まれており、CRM以外の入り口があることが今日のSalesforceの強みとなっています。さらにAppExchangeを利用して新たに起業するスタートアップにはCVC「セールスフォースベンチャーズ」が投資する体制になっており、これらの動きを統合したSalesforceエコノミーの売り上げ規模は2026年までに全世界で1兆6000億ドルに達し、933万人の雇用が新たに生み出されると予想されています^5。 すべては「顧客の成功」のため 創業からわずか20年たらずで世界を代表するソフトウェア企業となったSalesforce。Salesforceが開拓したSaaSモデルは今やソフトウェア業界では当たり前のものとなり、前述のコミュニティ施策やAppExchangeのようなプラットフォーム構築などはあらゆるSaaS企業のお手本になっています。 2020年、Salesforceの時価総額がオラクルを追い抜いた際のインタビューにおいて、「この20年間の最大のライバル企業はどこか」という質問に対して、マーク・ベニオフは「顧客の成功以上に重要なものはない」と答えています\[^6]。少数企業しか利用できなかった不便で高価なエンタープライズソフトウェアを開放すること、顧客を成功に導くこと、この執念がSalesforceの強さを支えてきたと言えるでしょう。 \[^1]: Fortune Business Insights「The software as a service market」 \[^2]: マーク・ベニオフ「クラウド誕生」 (ダイヤモンド社) \[^3]: CNET Japan「セールスフォース、IPO初日は公募価格比56.4%超の17ドル20セントを記録」 \[^4]: Salesforce blog「How Advice from Steve Jobs Inspired the AppExchange」 \[^6]: The Market Is Opan「The Rise of Salesforce (Behind the Cloud Giant)」 --- # ZARA擁する世界最大のアパレル企業Inditexの歩みとデジタル戦略 URL: /insights/11 title: ZARA擁する世界最大のアパレル企業Inditexの歩みとデジタル戦略 summary: "世界的なファッションブランドであるZARAを展開する業界最大手のアパレル企業の1つであるInditex/インディテックスは自社で企画製造した商品を自ら小売販売するSPAモデルを代表する企業であり、類似業種のファーストリテイリングやH\&Mを抑えて売上高首位のリーディングカンパニーです。本記事ではInditexが強固なバリューポジションを築き上げるまでに実施してきた事業戦略と同社がアフターコロナの時代にどのようなデジタル戦略を進めているかについてご紹介します。" date: 2022-10-14 author: "authors/kohei\_minami.mdx" category: "categories/research.mdx" cover: "/images/insights/11/11-6.jpg" 世界的なファッションブランドであるZARAを展開する業界最大手のアパレル企業の1つであるInditex/インディテックス(正式名称:Industria de Diseño Textil, S.A.)は自社で企画製造した商品を自ら小売販売するSPA(Specialty store of Private label Apparel)モデルを代表する企業であり、類似業種のファーストリテイリングやH\&Mを抑えて売上高首位のリーディングカンパニーです。ZARAに加えて、現在ではPull&Bear、Massimo Dutti、Bershka、Stradivarius、Oysho、ZARA HOME、Uterqüeの8つのブランドを展開しています。 近年同社の主戦場である欧米各国で猛威を振るった新型コロナウイルス(COVID‑19)の影響を受けましたが、堅実なデジタル戦略の実行などが好感し、足元の時価総額は約9.3兆円(2022年9月30日時点の株価終値と為替レートで試算)と業界首位を堅持しています。 本記事ではInditexが強固なバリューポジションを築き上げるまでに実施してきた事業戦略と同社がアフターコロナの時代にどのようなデジタル戦略を進めているかについてご紹介します。 ZARAを生み出したInditexの事業戦略 ZARAは1975年にアマンシオ・オルテガ氏が創業したスペイン発のブランドです。その後1985年にInditexが設立され、ニューヨークやパリへの海外進出など本格的なブランド展開が行われていきました\[^1]。ZARAはトレンドに敏感な働く女性とその家族・パートナーをメインターゲットに据え、主にトレンドファッションを手頃な価格で販売することで顧客の心を掴むことに成功しました。現在はグローバルに88の国で約6,700店舗を展開する世界最大手のアパレル企業に成長しています(ZARA及びZARA HOMEでInditexグループ全体の売上の約7割を占めます)。 一般的にトレンドファッションに区分されるアイテムは、シーズン毎の売れ行きが変動しやすいことから、売れ残り在庫による損失や欠品による機会ロスも頻繁に発生することに加え、在庫の棚卸や評価損の算定に対応するための業務負荷も少なくありません。 それに対し、Inditexは「シーズン当初は少ロットで最低限の在庫を持ち、店頭での売れ行きや試着情報を通じて顧客が欲しいものを把握してから、需要に合わせて商品を作り足す」という、それまでの業界常識とは異なる戦略を採りました。 現在の規模に成長するまでに、Inditexは具体的に以下の取り組みに注力してきました。 1\. 商品企画の短サイクル化に現場の情報を活用 ZARAは毎週2回決まった日に欠かさずサイズの揃った新商品を店頭に並べることで、顧客の来店期待に応え、来店頻度を高めることに成功しています。その商品企画のスピードと精度を高めるために、売上やPOS等の定量データに加えて、世界中の店舗スタッフから顧客の反応等の情報がスペイン本社に集まるオペレーション構築に力を入れてきました。新商品が投入されるほど世界中の店舗からフィードバック情報が蓄積し、より顧客の意見が反映された商品の企画販売が可能になりました。 2\. スピードを重視した生産システム Inditexは相対的に人件費の低い地域よりも、スペインやポルトガル、モロッコ等の近隣地域に生産拠点を置くことで規模を拡大してきました。タイムリーに世界中の店舗へ商品を送るため、ヨーロッパ近隣諸国以外への輸送にはコストを犠牲にして空輸を利用するなど、世界中どこへでも48時間以内でのスピード輸送に取り組んできました。また、現在では導入が進んでいる自動仕分けシステムや自動ピッキングなどの仕組みも早期から取り入れるなど、コストよりもスピードを重視した生産システムを構築しました。 3\. 店頭ブランディングへの投資 店舗が最大の広告宣伝というポリシーを掲げ、特にブランドの成長過程においては、プロモーションに多額のコストをかけるよりも、グローバル都市での好立地やランドマークエリアに大型店で出店することを優先させてきました。顧客を飽きさせず、来店頻度を高めるため、店内の商品配置を頻繁に変更し、ウィンドウディスプレイや高級感のある内装などにも積極的な投資を行っています。 従来では数ヶ月単位の時間を要した企画生産のリードタイムを大幅に短縮し、約2〜4週間とも言われる短サイクルMD(マーチャンダイジング)を構築したことがInditex及びZARAの成長ドライバーであったと認識されていますが、企画から生産及び店舗運営まで一貫した実行力の高さも特筆すべき点であったと言えるでしょう。その結果として、世界最大の売上規模に成長しただけでなく、他のSPA型アパレル企業に比べて高い利益率を誇ることもInditexの特徴の一つです(2022年度1月期の営業利益率15%)\[^2]。 コロナ禍で加速したInditexのデジタル戦略 Inditexはオフライン店舗において顧客に優れた価値を提供することで、その地位を不動のものとしたプレイヤーであったため、世界的なコロナ禍はInditexにも大きな影響を与えました。 2020年にかけて、同社の主なマーケットである欧米主要都市で厳しいロックダウン・行動規制が実施されたこともあり、店舗売上は大きく落ち込み、同社の2021年1月期の決算は減収減益を余儀なくされました\[^2]。 当然コロナによるダメージは避けられませんでしたが、Inditexはコロナ禍においてデジタル戦略を加速させました。従前よりECへの投資を積極的に行ってきた結果、売上高に占めるEC比率は類似業種であるファーストリテイリングよりも高い水準を維持していましたが、コロナ禍に入った2020年以降は更に大きく成長しています\[^2]\[^3]。 2020年6月には、”Global fully integrated Store & Online”をコンセプトに、小型店舗や商圏の重複した店舗を中心とした1,000〜1,200店舗を閉鎖し、オムニチャネル戦略をより強く推進する方針を示しました。 また、2020年〜2022年の間に10億ユーロ(当時レートで約1,200億円)のDX投資を行うことを発表し、自社アプリを用いたデジタル体験の向上と、デジタル化に対応可能な大型店舗の出店強化を打ち出しています^4。 Inditex(ZARA)が足元で実施してきた主なデジタル施策は以下の通りです。 アプリによる顧客接点のシームレス化 従来のEC機能に加え、店舗ごとに商品位置を検索できる「CLICK & FIND」や試着室を予約する「CLICK & TRY」など店頭でも使える機能を次々に拡充 アプリで注文後に店頭で受け取る「CLICK & GO」(BOPIS=Buy online, Pick up in store)、モバイルペイメント機能など来店を促す施策も強化 店頭でスタッフに確認しなくても、商品情報詳細をスマホで確認できるように商品タグにバーコードやQRコードを追加 店頭業務オペレーションのデジタル化 EC専用在庫及び倉庫からではなく、店頭から直接顧客に配送できるサービスを実施。店頭とECの配送業務の一体化よる業務効率化に加え、当日及び翌日配送比率を向上 全商品においてRFID(Radio Frequency Identification)の導入を完了させ、各国店舗とECにおける在庫一元化(SINT:Single Inventory Integration)を実現、在庫効率を一層向上 インタラクティブ・デジタル・フィッティングルーム、セルフレジなど、デジタル化に対応した店舗リニューアルを推進 従来の強みであった魅力的な店舗体験やオペレーショナル・エクセレンスに加えて、オンラインとオフラインが融合したなめらかな顧客体験を実現するために、Inditexは上記のような大胆で迅速なデジタル投資を行っています。今後はInditexに限らず、このようなOMO(Online Merges with Offline)型の新しいストア形態が増えていくことが予想されています。 KPIや財務面に着目すると、同社のEC比率は2022年1月期において27%となり、当初同社が目標として掲げていた2022年末までのEC比率目標25%を1年前倒しで実現することに成功しています。また、Inditexのアプリは全世界でアクティブ会員数が1億4600万、ソーシャルメディアのフォロワーは2億2800万人にまで到達しています(2022年1月期)\[^2]。もちろんコロナ禍で店舗売上が減少したことで、分母に当たる全体の売上高が減少したためにEC比率が高く出た影響もありますが、同社の提供するオンライン体験やOMO戦略が一定の評価を受けているものと推察されます。 Inditexは2024年までにEC比率を30%以上とすることを新たなターゲットとしており、今後もデジタル戦略及び投資を積極的に行っていく方針です。 Inditexの新しい取り組みについて 前述の取り組みなどによって、Inditexはこれまで業界トップ企業でありながら長年高い成長率及び収益率を維持してきましたが、今後ファーストリテイリングやH\&Mのようなファッションアパレル企業との競争に加えて、ファッションへの本格進出を目論むAmazonなどの巨大テック企業やZ世代を中心に急成長を見せるSHEIN等の新興アパレルとの競争が激化していくことが予想されます。特にSHEINの運営会社であるRoadget Business社は企業価値がファーストリテイリングやInditexを超えるなどの急成長を遂げており、同社の今後の世界展開による競争環境の変化には注目が集まっています^5。 また、ESGやサステナビリティに対する社会的な注目も高まり続けており、生産及び廃棄プロセスの透明性など、業界トップ企業としてより複雑な問題に対処することが求められています。コロナを経て様変わりした人々のライフスタイルとファッションのカジュアル化が、ZARAのバリュープロポジションであるトレンドファッションやオフィスファッション需要に影響を与える可能性も否定できません。 こうした課題に対応するために、これまでもInditexはリサイクルされたポリエステルやリネンの使用、生産設備での再生可能エネルギーの使用、衣類のリサイクル、サプライチェーン向けプログラムの開始など、様々な取り組みを行ってきました。新しい試みとして、サステナビリティ領域におけるイノベーションを推進する目的で「Sustainability Innovation Hub」を創設し、現在までに約150のスタートアップとの協業や出資を通じて、30以上のR\&Dプロジェクトを進めています(新しい炭素回収技術を開発したLanzatech社、繊維リサイクル技術を持つCIRC社など)。 直近2021年度決算においても、Inditexが利用するエネルギーのうち再生可能エネルギー比率が91%であることに加えて、ZARAのサステナビリティ公約である「Join Life」基準での商品比率が全体の47%に達したことを強調するなど、サステナビリティに対する取り組みや情報発信を積極的に行っています\[^2]。 また、サステナビリティへの対応だけでなく、アスリート向けスポーツウェアの新コレクション「Athleticz」や、ベーシックでかつ現代的なラインである「ZARA Origins」シリーズを発表し、インテリアブランドの「ZARA HOME」とあわせて、近年はトレンドファッションブランドから、時代や人々の生活に沿ったライフスタイルブランドへとシフトする動きも見受けられるなど、事業環境の変化に対応した戦略的な投資を行っています。 これらのデジタル以外の戦略的な取り組みを土台にしながらも、オムニチャネル戦略を今後加速させていくことが予想されます。2021年により新たにInditexのCEOに就任したオスカー・ガルシア・マセイラス氏は”CEO's Statement”の中で、グローバルでの完全統合されたオムニチャネルの重要性について言及しています\[^6]。 Inditex boasts a business model capable of adapting to any environment and an international reach underpinned by a solid strategic approach. Its inspiring fashions combined with a fully integrated omnichannel offer in each region, and supported by technological innovation, has enabled us to extend our store leadership to the digital world, with online sales now accounting for one-quarter of the total. さらには、新たなデジタル体験の創出として、韓国の「Ader Error」とコラボレーションを行ってアバター作成アプリであるZEPETOによってアバターの服を展開し、同社として初めてメタバースにも参入するなど、幅広いデジタル領域でサービス拡充に取り組んでいます^7。 最先端のデジタル技術やサステナビリティ・イノベーションを通じて、Inditex(ZARA)は業界内外のDXとESGをリードする存在を目指していることが窺い知れるでしょう。デジタル戦略に限らず、今後のInditexの取り組みを引き続き注視していきたいと考えています。 本記事ではInditexの競争優位を生み出した戦略とDXへの取り組みについてご紹介しました。本記事が皆様の論点整理や戦略検討の一助になりましたら幸いです。 \[^1]: Inditex Careers / Inditex · History \[^2]: Inditex公式ホームページ及びIR information \[^3]: ファーストリテイリング IR情報 \[^6]: Inditex Annual Report 2021 CEO's Statement --- # クリエイティブとテクノロジーを繋ぐデザインプラットフォームFigma URL: /insights/12 title: クリエイティブとテクノロジーを繋ぐデザインプラットフォームFigma summary: "印象的でシンプルな図形とカラフルな配色のメンフィススタイルのグラフィックが目を惹くインターフェースデザインツールFigma(フィグマ)は、デザイナーだけでなくプロダクトマネージャーやエンジニアなどにも幅広く利用され、独自の創発的なエコシステムを構築することで、ユーザー数を急拡大してきました。本記事執筆時点でのユーザー数は約400万人を超え、GoogleやMicrosoft、New York Timesなどの大手企業でも利用されており、2022年9月にはAdobeによる200億ドル(約2.9兆円)での巨額の買収提案を受け入れたことでも話題になりました。本記事では共同創業者であるディラン・フィールド最高経営責任者(CEO)とエヴァン・ウォレス兼最高技術責任者(CTO)が生み出したFigmaのこれまでの成長の背景と今後の可能性についてご紹介します。" date: 2022-11-14 author: "authors/kaori\_nakashima.mdx" category: "categories/design.mdx" cover: "/images/insights/12/12-0.jpg" 印象的でシンプルな図形とカラフルな配色のメンフィススタイルのグラフィックが目を惹くインターフェースデザインツールFigma(フィグマ)は、デザイナーだけでなくプロダクトマネージャーやエンジニアなどにも幅広く利用され、独自の創発的なエコシステムを構築することで、ユーザー数を急拡大してきました。本記事執筆時点でのユーザー数は約400万人を超え、GoogleやMicrosoft、The New York Timesなどの大手企業でも利用されており、2022年9月にはAdobeによる200億ドル(約2.9兆円)での巨額の買収提案を受け入れたことでも話題になりました\[^1]。本記事では共同創業者であるディラン・フィールド最高経営責任者(CEO)とエヴァン・ウォレス兼最高技術責任者(CTO)が生み出したFigmaのこれまでの成長の背景と今後の可能性についてご紹介します。 世界中のデザイナーに愛されるコラボレーションツールFigmaとは Figmaはインターフェースデザインをはじめとしたプロダクト作りに関わるチーム全体の生産性を高めるためのツールであり、コンセプトデザインからプロトタイプ作成、ユーザーフィードバック収集を一気通貫で行うことができます。チームにおけるあらゆるデザインプロセス及びアウトプットをFigma上で共有することで、デザイナーとノンデザイナー間の双方向のコミュニケーションが円滑になり、ユーザーにとってより使いやすくかつエンジニアにとっても実装しやすいインターフェースデザインが可能になります。 2020年のパンデミック真っ最中の米国大統領選挙では、バイデン=ハリス政権のクリエイティブチームの活躍が話題になりました。ウェブサイト(JoeBiden.com)から選挙用飛行機、グッズ、SNSのポストに至るまですべてのアウトプットが1つのFigmaファイルで制作されており、リモート環境下で多くの関係者とスピード感のあるデザインコラボレーションが実現した背景にはコラボレーションツール、Figmaの存在がありました\[^2]。また日本国内においても、PayPayフリマがリリース当時(2019年10月)よりほぼ全ての画面をFigmaで作成しているなど\[^3]、大手企業のサービスから個人のデザインワークまでFigmaの導入事例は数多く存在します。 従来のデザインツールは、デスクトップ上の専用アプリケーションでデザインファイルの作成・編集・出力を行うものが主流であり、ファイル閲覧や簡易な編集を行うにも有料アプリケーションの購入が必要など、デザイナー以外にとって敷居の高いものであることが一般的でした。一方Figmaは、「デザインプロセスに関わるすべての人が、摩擦を起こすことなくシームレスでロスレスなやりとりができること」を目指し、新しい技術(WebGL、Operational Transforms、CRDT等)を積極的に取り入れることで、ユーザーが特別なアプリケーションを導入しなくてもブラウザ上でストレスなくデザインファイルが閲覧可能な環境を実現しています。\[^1] 「デザインはチームスポーツ。だから、コラボレーションが不可欠なんだ」\[^1] “And design is a team sport———it’s collaborative by nature.” インターネット・ネイティブなデザインツールを目指して Figmaは2012年に創業者であるディラン・フィールドの個人プロジェクトから始まりました。カリフォルニア生まれのディランは、幼い頃からコンピューターサイエンスやアート、デザインへの関心が高く、科学、技術、工学、数学などのテクノロジー教育に強みを持つマグネットスクールに進学します。その後ブラウン大学のコンピュータサイエンス学科にて、後のビジネスパートナーとなるエヴァン・ウォレスに出逢います。エヴァンはPixarでインターン経験があり、WebGL(ブラウザ上でインタラクティブなグラフィックスを実現できるJavaScript API技術)を学んでいたことが後の「ブラウザ・ファースト」なFigmaの開発にも活かされていたようです。 ディランはLinkedIn、Flipboard でのインターンを経験した後、ティール・フェローシップ(ピーター・ティールによる大学を中退した若い起業家向けの投資プログラム)への採択を経て、大学を卒業したばかりのエヴァンとFigmaを共同創業しました。ドローン用のソフトウェアやミームジェネレーターなどの様々な事業アイディアの検討を経て、最終的にPhotoshopの代替に挑戦するプロダクトを作ることを決めました。当時の記事\[^4]では「ユーザーがオンラインで創造的に自分自身を表現できるようにするテクノロジースタートアップ」と紹介されており、デザイナーのためのプロダクトであることが強調されています。 当初はプロダクトが上手く立ち上がらずFigmaベータ版の公開に数年を要しており、不満を抱いた多くのメンバーが去っていくなど順調とは言えない滑り出しでした。当時Figmaは主に無料版をエントリーモデルとして提供していましたが、マイクロソフト社のあるユーザーに「無料のスタートアップツールは信用できない」とのフィードバックを受けてプラン改定をするなど、様々な試行錯誤を行っていたようです。 その後オーストラリアのソフトウェア企業であるAtlassianから着想を得てシンプルな価格設定に変更したり、ノンデザイナー向けを重視した機能を拡充したりすることでプロダクトとしてもビジネスモデルとしても輪郭が定まり、2016年にようやく正式版がリリースされました。その後2017年にマルチプレイヤー編集を含めた革新的な機能を追加しソフトウェアの開発と改善を続け、デザイナーコミュニティが熱狂するプロダクトにまで進化を遂げました。 Figmaの成長を加速させたノンデザイナーのための「ブラウザ・ファースト」 Adobeをはじめとする競合製品はデザイナーのための素晴らしいプロダクトであり、それらを通して多くのクリエイティブが生み出されてきました。それに対してFigmaはデザイナー個人だけではなく、ノンデザイナーを含むプロジェクトチーム全員の生産性向上を重視した設計思想を持つプロダクトです\[^5]。このファイルは最新のものなのか、閲覧・編集のためにどのアプリケーションをインストールしておかなければいけないのか、デザインへのフィードバックはどこでどうやって行うべきなのかなど、デザインプロセスにおいてノンデザイナーが抱く疑問や課題にも真摯に向き合ってきました。 それを象徴するのが「ブラウザ・ファースト」な機能の数々です。従来のデザインツールではファイルの閲覧・編集を行うためには有料のデスクトップアプリケーションのインストールを求められることが一般的であったのに対して、Figmaでは共有URLをWebブラウザで開くだけで誰もがハイパフォーマンスな作業環境で、デザインファイルの共同編集をリアルタイムで行うことができます。そもそもFigmaが生まれた当時はブラウザ上で動作するWebベースのデザインプラットフォームは珍しく、またパフォーマンスを維持しながら複雑なグラフィックスをレンダリングするという体験や複数ユーザーが同時参加・編集する機能自体もそれまでのデザインツールの常識を覆すものでした。 その結果ノンデザイナーがデザインプロセスの早い段階からモックアップやクリエイティブを確認することができ、またFigma内のコメント機能によってデザインへのフィードバックのハードルを大きく下げることにも成功しています。従来のデジタルプロダクト開発においてはビジネス要件や機能要件が決定された後にデザインプロセスがスタートすることも多く、ユーザー体験及びインターフェース設計がそれらの制約を受けてしまうことも少なくありませんでした。近年ではよりユーザーファーストなプロダクトを作るためにコンセプトデザインやモックアップデザインなどがプロダクト構想の初期プロセスに組み込まれ、デザイナーがビジネスや開発のミーティングに参加する機会も増えています。 またデザインコラボレーションが容易になったことでノンデザイナーの業務内容にも変化をもたらしています。コピーライターは、デザインファイルに直接コンセプトワードを入れて見栄えの確認や完成した姿を想像することができたり、ソフトウェア開発者はデザインやマークアップが苦手であってもデザイン及びコード変換データを簡単に手に入れたりすることが可能になりました。ノンデザイナーの体験をも重視したFigmaは、デザインだけでなく開発プロセスやその他の業務を変革し影響を与えるプロダクトに発展しています。 デザインプラットフォームとしてのFigmaコミュニティ ノンデザイナーのためのコラボレーション機能だけでなく、熱狂的なファンコミュニティがあることもFigmaの大きな強みの一つです。Figmaのアプリケーションをインストールしてアカウントを開設すると同時に、Figmaの世界中のユーザーに繋がるソーシャルネットワークサービスにアクセスすることができます。 Figmaユーザーの個人や企業が自分のデザインをFigmaのコミュニティサイト上に簡単に公開することでき、共有されたデザインファイルは誰でも即座にコピーして自分のワークスペースで編集できます。オープンソースソフトウェア開発で一般的に行われていた知的資産(ソースコード)の共有と同じようなことがデザインファイルでも可能になったのです。日本でも新型コロナ対策サイトのデザインデータとして、2020年3月にFigmaのデータが公開され話題になりました^6。GitHubでも同様にソースコードが公開されており、開発者であれば誰でも改良に貢献でき、さまざまな改善策がIssuesとして寄せられていました。 Dribbbleなどのデザインポートフォリオ共有サイトは数多く存在しますが、画像ファイルのみでレイヤーやコンポーネントを含むデザインファイル全体を確認できないことは珍しくありません。UIキットやデザインシステムなどをGitHub上で公開している例も少なくないですが、GitHubはソフトウェアのソースコードの共有及び管理に特化して開発効率を向上させるプロダクトであり、Figmaが構築したコミュニティはそのデザイン版と言えるものでした。 さらにFigmaの利便性を高めるプラグインも無数に存在しており、それらの開発もFigmaコミュニティ内にて活発に行われています。例を挙げると、ダークモードのデザインを自動的に生成する、外部データを取り込んでデザインのフォーマットエラーを検知修正するなど、便利なプラグインが常に実装され続々とコミュニティユーザーたちによってリリースされています。 コミュニティ内においてデザインファイルやプラグインが盛んに公開されることで、あらゆるFigmaユーザーのデザイン業務の効率化が進み、またデザイナーだけでなくソフトウェアエンジニアやプロダクトマネージャーのような職種のユーザーが増加したことで新たなデザインファイルやプラグインの公開に繋がるという好循環型エコシステムが形成されています。Figmaは熟達したデザイナーにとって利便性の高い機能を数多く提供するだけでなく、ビギナーが先人たちの技術を学び倣う機会や居心地の良いコミュニケーション機会を提供するプラットフォームサービスとして、世界中のデザイナー・ノンデザイナーに愛されています。 デザインツールの歴史とFigmaの位置付け Figmaの買収を発表したAdobeは、1980年代にデザインの世界に革命とデジタルデザインの概念をもたらし脚光を浴びてきました。MacintoshによるDTPブームに乗じて、Adobeは「PostScript」という美しく印刷を行う画期的な技術ツールを提供する企業として名前が知られるようになりました\[^7]。Adobeは当時多くのシェアを占めていたIBM PCではなく、Apple社のMacintoshを活躍の舞台として選びその価値を高め、今日のDTPや印刷業界において絶対的な主流ブランドとして君臨し続けています。他の追随を許さず、Adobe IllustratorやAdobe Photoshopといった誰もが知っている優秀なデザイン用アプリケーションを多数リリースし、クリエイター及びデザイナー層から絶大な支持を受けるプロダクトとなりました。\[^8] そんなデザインツールの急先鋒であったAdobeに対して、2010年以降ではWebデザイン需要の急増を背景にベクター主体のデザインツールであるSketchが頭角をあらわしはじめます。SketchはMac向けに開発されたライトな操作性とmacOSの「ルックアンドフィール」に沿ったシンプルなインターフェースが特徴的であり、アプリ・Web制作に特化した新しいデザインツールです。フラットデザインの登場、SVGの台頭、レイアウト修正がしやすいなどの点から、ベクターグラフィックスの優れた操作性が注目され始めたこともSketchの成長を加速させました。ベクター描画はスケール操作において画像の歪みが生じにくく、かつ印刷の見栄えも良いことに加え、Macintosh=デザイン特化というブランドイメージも重なり、Sketchはより新しくアップデートされたデザインツールという印象づけに成功しました。またサブスクリプション型サービスに全面移行していたAdobe製品に比べ、当時買い切り型ツールだったSketchはコスト面でも優位な状況でした。現在はSketchも価格モデルをサブスクリプションに変更し、Sketch Cloudに移行することに重点を置いています。 Sketchも世界中の多くのデザイナーに愛されるプロダクトですが、Mac専用のツールであるためWindowsユーザーは対象外であり、当時はプロトタイピングをするためにInVision(プロトタイピング用ソフトウェア)等を組み合わせて利用しなければいけないなどの課題がありました。SketchもFigma同様にプラグインのインストールによる機能追加が可能であるもの、プラグイン自体はSketchが管理するソフトウェアではなく製作者が公開しているGitHubページ等から別途インストールする必要があり、特に法人で利用する場合にはプラグインのパフォーマンスや安定性、セキュリティ面などの懸念もありました。またSketchのデザインファイルを閲覧・編集するためにはどのユーザーも同じプラグインの事前インストールが必要になるなどファイルのサイズが膨大になりやすく、編集はローカルPC用のアプリケーションを利用することになるため、バージョン管理やファイル管理が論点になることも少なくありませんでした。 そのような背景のなかで、既存製品の様々な課題を解決するサービスとしてFigmaが生まれました。Figmaのユーザーは常に同じデザインファイルにアクセス出来るため、複数ユーザーの同時編集で起こるコンフリクト回避やバージョン管理のためにデザインファイルを一時的にコピーをする必要がなくなりました。デザイン、プロトタイピング、ファイル共有、開発者のハンドオフなど様々なアプリケーションを兼ね備えているため、画面遷移のプロトタイプを作成するために別のプロダクトを利用することも不要になりました。その結果として前述の通り、ノンデザイナーにとってハードルの高かったデザイン業務ツールをあらゆるプロジェクト関係者にとってのコラボレーションツールにまで進化させることに成功しています。 またFigmaは2021年よりチームのコラボレートを一層加速するため、、2つ目のプロダクトとなるデジタルホワイトボードのFigJamをリリースしています\[^1]。Figmaはビジュアルやユーザーインターフェースを作成には便利であるものの、その前段階のアイディアの整理やフローチャート作成などの用途としては、ピクセルやレイアウト設定などの機能が多すぎるという課題がありました。コロナ禍でリモートワークが増えていたという背景もあり、会議をより活発にするためのオンラインホワイトボードツールとしてFigJamが生まれました。FigmaとFigJamは一つのアプリケーション内に共存しているためコピー&ペーストでデザインをシームレスに共有することができます。対面で行うホワイトボードでのブレーンストーミングの快適さや臨場感とは異なる体験であるものの、会議を盛り上げるためのステッカーやテンプレートの機能などが充実していることも特徴的です。このようにFigmaは一貫してデザイナーとノンデザイナーの垣根を超える機会の創出に取り組んでいます。 Figmaの今後の可能性について Figmaとデザインエンジニア さまざまな領域に新しい風を吹き込んだFigmaは、デザインエンジニアというデザイナーとエンジニアの領域を跨く人材の輩出及び活躍にも貢献していると考えられます。ユーザーがオンライン上で目にする全てのWebデザインやUIデザインの背景には、フロントエンド、システムインフラ、ワークフローなどさまざまな技術の上に構成されたアーキテクチャが存在しています。デザインの背景にある多様で高度な技術はあまり注視されない部分です(キツネが星の王子さまに伝えたように、目に見えるものはとてもわかりやすいのです)。 前述の通り、多くのプロダクト開発において、ソフトウェア開発とデザインは別のプロセスとして分断されてきました。これまでは共通言語の不足やツールの壁があるなかで、仕様漏れやコミュニケーションエラー等を防ぐためには、チームのデザイナーやソフトウェアエンジニア個人による配慮や努力に依存してしまうことが少なくありませんでした。 デザインエンジニアに関する詳細は別記事でもご紹介していますが、デザインとエンジニアリングが交差する領域における問題解決の一助として、Figmaはデザインエンジニアに対してプロトタイピングをはじめとしたデザインプロセスをより円滑にするための機能を数多く提供しています。作成した画面をモックアップとして容易に動かせるだけではなく、デザインファイルからCSSやJavaScriptを出力するためのプラグイン等も存在しており、Figmaはデザインとソフトウェアの実装の差分を埋めるためのプロダクト改善を積極的に行ってきました。デザインとエンジニアリングの繋ぎ手となる人材にとっても優れたツールとして日々進化を続けており、今後ユーザーへのプロダクトの納品とアイディアの検証がより早いスパンで実現できるようになるでしょう。 "It might sound a bit silly, but I think computer programming is pretty much the closest thing we have to magic," 「ハリー・ポッター』シリーズで育ったことにちなんで、ディランは、プログラミングやテクノロジーはマグルの魔法への挑戦に似ていると話しています。\[^4] Figmaとエンタープライズ Figmaが生み出すコラボレーションは同じ会社内のチームにとどまらず、企業間においても活発に行われています。伝統的な大企業でもスタートアップでも新しいデジタルプロダクトを生み出すプロセスに何ら変わりはありません。ただ前者はスタートアップ企業に比べて新しいSaaSやツールを導入するためのハードルが高く、時間がかかることは往々にして見られる状況です。大手企業でSaaSを導入するためには一定レベルのセキュリティ水準が必須であり、ステークホルダーに対して説明可能であることが求められます。 それに対してFigmaは2020年の時点で既にSOC 2 Type1、Type2を取得しており、クラウドに保存されている顧客データの機密性をさらに強化しセキュリティ投資を行っていくと公表しています。SAML SSOプロバイダを統合したことにより、専用のアプリケーションなしでも素早いURL共有とログインが安全かつ容易にできる機能やユーザーアクセスの制御などに対応することで、エンタープライズ用途でも安心して利用できる環境が整えられています。以前からサポートされていたOkta、Microsoft Azure Active Directory、OneLoginに加え、現在ではGoogle SSO、Active Directory フェデレーションサービス (ADFS)にも対応しています。\[^9] またエンタープライズ導入という観点ではAdobeがFigmaを買収したことによって、Adobe製品というブランドが大手企業への導入を拡大する一助となることが予想されます。機能的にも、Adobeが今まで研鑽してきた多くの便利な機能が搭載される可能性もあるでしょう。 次世代のデザインツールに求められるもの デザインにおける複合的な生産性の触媒として最終的なデザインアウトプットやコンポーネントのようなアセットに加え、複雑なインタラクションやアニメーションのプロトタイプなどのスマートな創造をFigmaが促進してきたことは言うまでもなく、Figmaのコミュニティプラットフォーム以外でも今後デザインプロセスに携わるすべての人のコラボレートネットワークは拡大を続けていくでしょう。著者個人の意見としては、上位プランには既にある機能ではありますが、GitHubのbranch機能やSketch+Abstractのような差分管理システムが標準プランにも充実することに期待しています\[^10]\[^11]。また新しいデザインツールとしてPenbotが注目され始めています\[^12]。TechCrunchの記事によれば\[^13]、AdobeのFigma買収リリース後、同ツールのサインアップ数は5,600%急上昇し、オンプレミス展開は400%増加したと言及しています。Adobeによる囲い込みを懸念したデザイナーたちが、よりオープンで柔軟なコラボレーションツールを求めての行動であることが推察されます。 Figmaのような共同作業や相互運用が可能なソフトウェアツールへの需要は、今後ますます高まっていくと考えられます。デジタル時代のデザインは、基本的に目に見えるデザインアウトプットで完結するものではなく、ソフトウェア開発ともより密接に結びついていくためです。AdobeからSketch、SketchからFigmaへとデジタルデザインツールの体験がアップデートされてきたように、健全な競争が今後もなされていくことが予想されます。ディランとエヴァンが築いたムーブメントと新しい感性にAdobeが新しい息吹を吹き込むことで、デザインエンジニアリングとの結びつきやエンタープライズ展開など、Figmaはこれからも堅牢性と創造性に満ちたより良いプロダクトとして進化していくでしょう。 \[^1]: Forbes How Figma Became Design’s Hottest Startup, Valued At $10 Billion \[^2]: Youtube / Day 1 Closing Keynote - Designing the Biden-Harris campaign - Robyn Kanner (Config 2021) \[^3]: Yahoo! JAPAN Tech Blog / PayPayフリマのデザインをスムーズにするためのFigma運用フロー \[^4]: BROWN DAILY HERALD / CS undergrad wins tech fellowship \[^5]: kwokchain / Why Figma Wins \[^7]: Adobe.com / オフィス印刷と商業印刷向けソリューションを提供する最高クラスのRIPテクノロジー \[^8]: Adobe.com / Welcome to Adobe's Printing Solution! \[^9]: Figma.com / Keeping your data in Figma safe and secure: SOC 2 Type 2, SSO, and more \[^10]: Figma.com / 規模に応じたデザインプラットフォーム \[^11]: Figma.com / Guide to branching \[^12]: businesswire / Penpot Raises $8M to Keep Designers and Developers in Sync While They Build Beautiful Products \[^13]: TechCrunch / Penpot inks $8M as signups for its open source spin on Figma jump 5600% after Adobe’s $20B acquisition move --- # デジタルにより加速する排出権取引とカーボンニュートラル URL: /insights/13 title: デジタルにより加速する排出権取引とカーボンニュートラル summary: "地球温暖化の進行により気候変動や気象災害が年々深刻化する中、企業や政府による脱炭素社会の実現に向けた温室効果ガスの削減やカーボンニュートラルへの取り組みに注目が集まっています。本記事ではカーボンプライシングと排出権取引の概要と具体的な事例をご紹介するとともに、今後期待されるグリーンイノベーションに関する考察を行います。" date: 2022-12-13 author: "authors/kohei\_minami.mdx" category: "categories/research.mdx" cover: "/images/insights/13/13-00.jpg" 地球温暖化の進行により気候変動や気象災害が年々深刻化する中、企業や政府による脱炭素社会の実現に向けた温室効果ガスの削減やカーボンニュートラルへの取り組みに注目が集まっています。 2015年のパリ協定により、2030年までに世界の気温上昇を2℃以上に抑える長期目標が世界各国で合意されました。さらにIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書を受け、欧州、米国、日本などでは気温上昇を1.5℃以内に抑えるために2050年のカーボンニュートラル達成を目標とするなど、世界中で脱炭素社会の実現に向けた動きが加速しています。日本では2020年10月の菅内閣(当時)が所信演説において2050年のカーボンニュートラル達成を宣言し、グリーン社会の実現に向けて最大限注力する方針を示しました。 そうした中、カーボンニュートラルを実現する手法として、温室効果ガスの排出に負担を課すカーボンプライシングや排出権取引が注目されています。今年9月、東京証券取引所と経済産業省は再生可能エネルギー設備の導入や植林でのCO2吸収などを削減量として国が認証する「J-クレジット」を市場で売買するカーボン・クレジット市場の実証実験を開始しました。また、政府が2030年代にカーボンプライシングを本格導入する方向で調整に入ったとの報道もあります。 さらに、後述するテスラ社など排出権取引において収益を上げる事例も目立つようになったことから、足元では大手企業だけでなく、スタートアップによる市場参入も活発になりつつあります。 一方で、この分野の言葉は学術用語や類似の用語が多く(カーボンニュートラル、カーボンネガティブ、カーボンオフセット、カーボンプライシングなど)、また頻繁にアップデートや新たなルールの導入が起こるため、言葉の定義や全体像を正確に理解することは容易ではありません。本記事ではカーボンプライシングと排出権取引の概要と具体的な事例をご紹介するとともに、今後期待されるグリーンイノベーションに関する考察を行います。 カーボンプライシングとは カーボンプライシングとは、炭素に価格付けを行うことで排出者の行動変容を促す政策手法です。カーボンプライシングにはその用途に応じた様々な手法があり、代表的なものとして以下が挙げられます\[^1]。 炭素税 排出権取引 クレジット取引 炭素国境調整措置 炭素会計 排出権取引の制度と歴史 前述のカーボンプライシングの中で特に注目されているのが排出権取引に関する制度やビジネスモデルです。排出権取引について、WWFジャパンでは以下のように定義されています\[^4]。 排出量取引とは、各企業・国などが温室効果ガスを排出することのできる量を排出枠という形で定め、排出枠を超えて排出をしてしまったところが、排出枠より実際の排出量が少ないところから排出枠を買ってくることを可能にし、それによって削減したとみなすことができるようにする制度です。(中略) ちなみに英語名は"Emissions Trading"と呼ばれ、「排出権取引」「排出許可証取引」など、いくつかの訳語が与えられますが、意味は同じです。 具体的な排出権取引ではベースライン&クレジット方式と、キャップ&トレード方式という2つの制度設計に大別されます。ベースライン&クレジット方式は企業等が省エネや脱炭素に取り組むことで排出量を削減した場合、その取り組みが実施されなかった場合(ベースライン)の想定排出量との差分(クレジット)を売買する考え方です\[^5]。政府・自治体・認証機関などが、このような炭素クレジットに排出削減分の価値があることを認証しているのが一般的です。J-クレジットでもベースライン&クレジット方式が採用されています。 キャップ&テーブル方式は政府が企業に排出量の上限を割り当て、その「排出枠」を企業間で売買するものです。排出量が割り当てられた上限を超える企業は、排出枠に余裕のある他の企業から排出枠の余剰分の権利を購入することができます。排出量が多い企業はコスト削減のために積極的に排出削減に取り組む一方で、排出枠に余裕がある企業は収益獲得のためより一層の再生可能エネルギー活用や省エネ設備の導入に取り組むなど、双方に温室効果ガスの削減に向けたインセンティブを持たせることが可能となります。代表例がEU-ETSです。 排出量取引制度は2005年にはじめてEUで導入されました。米国では連邦単位ではなく州単位で制度が導入されており、温室効果ガス排出量で世界一である中国(世界のCO2排出量の28%を占める)では、2013年に北京市・上海市など一部の州や省で導入され、その後2021年7月に全国レベルで同制度が開始されました。日本では東京都や埼玉県など都道府県単位で導入されています。世界銀行によれば、排出量取引制度は日本を含む世界の約30か国で導入されています\[^6]。 J-クレジットの市場取引 2022年9月、日本取引所グループと経済産業省は冒頭で述べたJ-クレジットの市場取引の実証実験を開始しました。これまでのJ-クレジット取引に対しては相対取引を基本としていたため価格が見えにくいという批判もありましたが、本取組では市場取引主体による取引の透明化を目的としています。その結果として市場の参加者を増やし、企業の温室効果ガスの排出削減を後押しすることが期待されています。 一方で現状の市場においては参加者数や出来高の面から流動性に関する課題も指摘されています。現在の実証実験では参加は強制ではなく任意であるため、参加プレーヤーの数は限られています(9月時点で大企業を中心に約145の企業や自治体が参加)。開始初日である9月22日の取引金額は約170万円と少額であり、市場での取引規模の拡大も今後の課題と言えます\[^7]。現状の日本では排出削減量が自主目標であるため、企業が積極的に排出量を削減するインセンティブが不十分であるという指摘もあります。政府は今後個々の企業に排出枠を設定し排出削減を義務付ける欧州型の仕組みを導入するかを含めた検討を行う方針を示しています。 実際、世界の排出権取引で約9割を占めるEUでは、対象産業の企業には排出量取引制度(EU-ETS)への参加が義務付けられています。企業は事前に認められた排出量を超えると罰金を科されることから、削減量が足りない企業は市場で排出枠を購入せざるを得ず、結果として活発な市場取引(2021年の取引金額は6,825億ユーロ(約97兆円))と高い排出削減効果を実現しています\[^7]。投資マネーを上手く呼び込んでいるのも、EUで排出権取引が伸びている理由の一つです。排出枠の先物取引やオプション取引が存在し、ヘッジファンドなどのプレーヤーが市場取引に参加、上場投資信託も登場するなど金融商品としての発展も見せています\[^8]。投資マネーの流入によって排出権価格が乱高下し、企業の炭素削減戦略や取り組みに悪影響が生じるという副作用が指摘されていますが、多様な参加者が市場で取引することで市場の厚みが増し、企業の積極的な排出削減を後押ししています。 今後本格化すると考えられる日本の排出権取引においても、できるだけ多くの企業や投資家の参加を促し脱炭素社会に繋がる市場を創ることが重要である一方、すでに先進諸国の導入状況と比較して日本の検討状況が相当遅れているとの指摘も多く、スピード感を持って進めることが求められています。 テスラの収益を支えるカーボンクレジット 排出権の活用事例で有名なのが米国EV(Electric Vehicle)専業メーカーのテスラです。 EUや米国カリフォルニア州などの地域では、ゼロエミッション車(ZEV)を一定比率以上とする等の排ガス規制が自動車メーカーに課せられています\[^9]。ガソリン車主体の各自動車メーカーはCO2をほぼ排出しないEVの投入を早めることで対応を図ったものの、開発や量産には相応の投資額と期間を要するため、目標値の未達と罰金支払いが避けられない状況でした。そのような状況下でビジネス機会を掴んだのがテスラでした。テスラの販売車両は全てEV であることからテスラは重要かつ貴重な排出権の売り手であり、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)などの自動車メーカーはテスラとオープンプール(自動車メーカーで連合体を結成してCO2排出削減に取り組む制度)を結成し、同社が保有する排出権を有償で買うことで目標クリアと罰金支払いを回避してきました。テスラにとっては自社が保有する余剰クレジットを売却することで、EV販売以外の収益源を得ることに成功しています。 Tesla 10-K: Automotive Regulatory Credits\[^10] We earn tradable credits in the operation of our business under various regulations related to zero-emission vehicles (“ZEVs”), greenhouse gas, fuel economy and clean fuel. We sell these credits to other regulated entities who can use the credits to comply with emission standards and other regulatory requirements. Sales of these credits are recognized within automotive regulatory credits revenue in our consolidated financial statements included elsewhere in this Annual Report on Form 10-K なお、現行の会計基準においてクレジット収入には売上原価が存在しないため、収入の同額がそのまま利益として計上されることが一般的です。上のグラフが示すように、2019年の第4半期から2021年の第1四半期はクレジット収入が当期純利益を上回って推移しています。これは過去数四半期のテスラは、仮にクレジット収入がなければ赤字決算となっていた可能性を示しています。 CNBC: Tesla’s sale of environmental credits help drive to profitability\[^11] Without zero-emission vehicle (ZEV) and other regulatory credits, Tesla would not have been able to report a four consecutive quarters of GAAP profitability, a milestone it reported Wednesday that meets the qualifications for Tesla to join the S\&P 500. FCAなどは時に数百億円規模の排出クレジットをテスラから購入していたと言われており、大きなコスト圧迫要因となっていたのは間違いありません。何より自動車メーカーにとって、将来自社にとって脅威となるEV専業メーカーからクレジットを購入するのは経営戦略上好ましい状態ではなく、自動車メーカー各社が必死でCO2排出量を抑えるEVを増産するインセンティブになったと想像されます。 2021年以前と比較すると、現在は欧州の自動車メーカー各社を中心にEV投入を加速させたことで、自社の努力で環境基準のクリアが見えてきており、テスラがこれまで受けてきたクレジット収入のベネフィットは減っているようです。実際、2022年の第1四半期には679百万ドルのクレジット収入(Automotive regulatory credits revenue)を計上していますが、2022年の第3四半期では286百万ドルまで減少しており、同社も徐々に減少していくことを認めています\[^12]\[^13]。しかし、クレジット収入を活用して赤字フェーズを乗り切り、株主からの強まる圧力を緩和することに成功した同社の事例はカーボン・ファイナンスの成功事例と言えるのではないでしょうか。 気候テックが牽引するカーボンニュートラル カーボンニュートラルの実現、そして次世代のために地球の未来を守るという、ワールドワイドで極めて大きな課題を解決するには、ここまで紹介してきたような政府が主導するカーボンプライシングや排出量取引制度だけでは不十分であることが予想されます。そんな中、個人のサステナビリティやエシカル意識の高まり、ビル・ゲイツなど著名経営者が積極的に環境分野に取り組んでいることに加えて、近年ではスタートアップが革新的なテクノロジーやイノベーションを活用してこの課題解決に取り組む事例が多く見受けられます。金融市場のトレンドもカーボンニュートラルへの取り組みを後押ししています。昨今の機関投資家は「環境」「社会」「企業統治」の3つの観点に配慮した企業を投資対象として選別するESG投資の考え方を重視するようになりました。また大手企業においても、発電・製造・交通輸送・農業などの幅広い分野でスタートアップと協業したり、イノベーションや新規事業を創出したりする事例も数多く見受けられます。こうした気候テックの領域は、現在最もイノベーティブな人材やお金が集まる領域とまで言われるようになりました。 本章では、カーボンニュートラルの実現に向けて特に注目される領域を紹介します。 温室効果ガス排出量の可視化と管理 自社のみならず自社のサプライチェーンや顧客の温室効果ガス排出量について、近い将来における開示義務化の気運が高まっており、サプライチェーンを含む排出量の可視化と管理に対するニーズが高まっています。2022年10月にはIFRS財団で基準策定を担う国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)が、現在検討している企業への開示要求事項において、スコープ3(サプライチェーンや顧客による製品使用など)の排出量を含めたことで話題となりました。欧州、英国、米国など主要先進国の規制当局が企業に対する開示義務内容の準備を進めていますが、ISSBによる上記方針の影響を大きく可能性も報道されています\[^14]。日本でも東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コード改訂案において、プライム上場企業に対してTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく開示を求めており、すべての上場企業に対する開示義務化も検討されています\[^15]。TCFD提言ではスコープ1とスコープ2の開示義務化に対し、スコープ3については開示充実の推奨に留まりますが、こうした気候関連の非財務情報の開示要求や規制は今後さらに強まることが予想されます。 サプライチェーンの温室効果ガスの排出量を把握することは容易ではありません。現在スコープ3開示に取り組む企業の多くは、温室効果ガスの排出量を自社のサプライチェーンを構成する各社に依頼もしくは自社で収集していますが、取引先からの調査対応負担が重いことや各社の削減取り組みがタイムリーに反映されないなど課題が多いのが実態のようです\[^16]。こうしたニーズを受けて、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量をAPI連携やデータ連携を通じて収集、算定、可視化、一括管理等のサービスを提供するスタートアップが多く登場しています。将来的に開示に取り組む企業が増加することを踏まえると、今後更なる需要の増加が予想されます。またこのような可視化サービスをエントリーポイントにして、排出量削減コンサルティングやクレジットを使った相殺などのサービス展開を行うプレーヤーも多く見受けられる印象です。 代表的なプレーヤーとしてカーボンオフセットのAPIを開発する米国スタートアップPatch Technologiesが挙げられます。同社は電力消費、航空機や自動車による移動、クレジットカードの利用履歴等のデータから企業活動による排出量を算出・可視化し、併せて排出量を相殺するカーボンクレジットを提供しています。利用企業は同社のコードを組み込むことで、社員の出張フライトや移動等による自社の排出量を追跡、算出し、炭素排出を相殺するカーボンクレジットの購入・管理が可能となります。\[^17] カーボンオフセットのマッチングプラットフォーム 様々な気候変動ビジネスの中で注目されている分野が、カーボンオフセットのマッチングプラットフォームです。カーボンオフセットとは特定の場所・イベント・プロジェクト単位で排出されたCO2などの温室効果ガスに関して、必ずしもその排出量を関連企業やコミュニティ内だけで削減できなくても、温室効果ガス削減に貢献する活動に投資することで間接的に吸収しようという考え方です。 マッチングプラットフォームでは世界各地の森林再生・保存プロジェクトやCO2回収技術など、様々なオフセットプロジェクトがリストアップされています。企業は自社の努力だけでは削減し切れない温室効果ガスを相殺するため、自社にマッチしたプロジェクトが創出したクレジットを購入することができます。しかし、再植林プロジェクトの多くが仲介業者を通じて投資されているためプロジェクトの信頼性が不透明であること、カーボンクレジットが二重にカウント・販売される、森林の成長とCO2吸収量を確認する方法が確立していない等、こうしたオフセットプロジェクトの信頼性やカーボンクレジットの有効性・正確性をいかに担保するかは、大きな課題と言われてきました\[^18]。 そのような中で期待されているのが、森林由来のカーボンオフセットのマーケットプレイスを運営する米国のスタートアップPachamaです。同社は設立1年程度というフェーズにも関わらず、Microsoft創業者ビル・ゲイツが設立したファンド(Breakthrough Energy Ventures)やAmazon創業者ジェフ・ベゾスが設立したファンド(Climate Pledge Fund)など、著名経営者を含む複数の投資家から総額で1,500万ドルを調達するなど高い評価を受けるスタートアップです\[^19]。 Introducing Pachama Originals, the Next Generation of Nature-Based Projects\[^20] We started Pachama with the mission of restoring nature to solve climate change, harnessing the latest advancements in satellite data and machine learning to ensure the quality of nature-based carbon credits. (〜中略〜) With Pachama Originals, you can invest in your very own high-quality forest projects from the ground up, secure credits to reach Net Zero, and make a transformative impact on communities and ecosystems for generations to come. Pachama Originals enables real climate leaders to Go Beyond. 同社はマーケットプレイスの運営だけではなく、衛生画像やドローンで3次元データを独自の機械学習で解析し、カーボンクレジットの対象となる森林で実際にどれだけのCO2が回収されたかを算出及び検証するソリューションも提供するテクノロジー企業です。Pachamaが提供するサービスはプロジェクトの信頼性や有効性を担保することに大きく貢献しています\[^18]。世界の森林の復元と保全は大気中の温室効果ガスを減らす最もシンプルかつ効果的な方法の1つであり、この取り組みをリードする存在とも言えるPachamaは注目すべきスタートアップの1社です。同社の事業の先見性・卓越性・社会性の観点からGoogle、Meta、SpaceX、Tesla、Microsoftのようなグローバルテック企業の人材が同社に多数転身し、Microsoft、Shopifyのような大手企業も顧客になっており、今後益々の成長が期待されます\[^19]。 おわりに 本記事では脱炭素社会を実現するためのカーボンプライシングや排出権取引の全体像と具体事例をご紹介しました。国内外における法規制や会計税務面などの課題はあるものの、今後さらに世界中の政府や大手企業、スタートアップなどによるカーボンニュートラルへの取り組みが加速して行くことが予想されます。本記事が関連領域において事業検討をされている皆様の論点整理や戦略検討の一助になりましたら幸いです。 \[^1]: 経済産業省 産業技術環境局 環境経済室 / J-クレジット制度の概要と最新動向 \[^2]: 日本経済新聞 / 炭素税導入先送り、23年度税制改正 エネ高騰で \[^3]: JETRO / 炭素国境調整に向けて動き出した米国とEU \[^4]: WWFジャパン / 温室効果ガス排出量取引/入門編 \[^5]: 国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 616 / 排出量取引をめぐる動向 \[^6]: JETRO / 世界で導入が進むカーボンプライシング(前編)炭素税、排出量取引制度の現状 \[^7]: 日本経済新聞 / 東証、排出量取引で実験 初日売買170万円 \[^8]: 日本経済新聞 / 排出量取引とは 温暖化ガス削減へ企業間で排出枠売買 \[^9]: nikkei4946.com / 排出枠 きょうのことばセレクション \[^10]: TESLA, Inc. / ANNUAL REPORT ON FORM 10-K FOR THE YEAR ENDED DECEMBER 31, 2021 \[^11]: CNBC / Tesla’s sale of environmental credits help drive to profitability \[^12]: TESLA, Inc. / IR Information \[^13]: Bloomberg / テスラ、温暖化ガス排出枠の販売先を失う-業績への打撃必至 \[^14]: ESG Journal / ISSB、IFRSの気候変動開示基準にスコープ3排出量が含まれることを確認 \[^15]: Genesia Ventures / ESG金融と非財務情報開示の動向 \[^16]: 株式会社野村総合研究所 / 野村総合研究所、サプライチェーンにおける温室効果ガスの排出量把握を支援するカーボントレーシングシステムを開発 \[^17]: 知財図鑑 / 企業から個人まで、誰でもカーボンオフセットができるAPIサービス Patch(パッチ) \[^18]: GMOペイメントゲートウェイ株式会社 / 持続可能な社会の実現に向けた「脱炭素テック企業」の3つのトレンド \[^19]: TechCrunch / As concerns rise over forest carbon offsets, Pachama’s verified offset marketplace gets $15 million \[^20]: Pachama, Inc. / Introducing Pachama Originals, the Next Generation of Nature-Based Projects --- # 大手企業におけるアジャイル開発と導入時のポイント URL: /insights/14 title: 大手企業におけるアジャイル開発と導入時のポイント summary: "ソフトウェアを取り巻く環境は変化に富んでおり、それに対するニーズも当然刻々と変化していきます。このような状況下において事前に開発すべきものを詳細まで洗い出し、リリースまで変更せずに、計画的に開発を進めるスタイルでは環境やニーズから取り残されてしまい、リリースする頃には時代遅れになってしまうことも少なくありません。昨今、開発のアジリティを高く保つことが競争力の源泉の1つになっており、SquadやLeSS、SAFeなど、アジャイル開発においても拡張性に議論の焦点が集まり始めています。こうした環境を鑑み、ソフトウェアを開発していく上で、その開発手法もウォーターフォール開発からアジャイルに主戦場が移り変わってきています。本記事では大手企業におけるアジャイル開発とその導入に焦点を当て、ポイントを解説していきます。" date: 2022-12-08 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/14/14-00.jpg" ソフトウェアを取り巻く環境は変化に富んでおり、それに対するニーズも当然刻々と変化していきます。このような状況下において事前に開発すべきものを詳細まで洗い出し、リリースまで変更せずに、計画的に開発を進めるスタイルでは環境やニーズから取り残されてしまい、リリースする頃には時代遅れになってしまうことも少なくありません。昨今、開発のアジリティを高く保つことが競争力の源泉の1つになっており、SquadやLeSS、​​SAFeなど、アジャイル開発においても拡張性に議論の焦点が集まり始めています。 こうした環境を鑑み、ソフトウェアを開発していく上で、その開発手法もウォーターフォール開発からアジャイルに主戦場が移り変わってきています。本記事では大手企業におけるアジャイル開発とその導入に焦点を当て、ポイントを解説していきます。 アジャイル開発とは まず、アジャイル開発とウォーターフォール開発を比較することで、アジャイル開発の特徴を浮き彫りにし、認識を深めていきます。開発を進めていく上で、変数となる要素は大きく3つ(時間、リソース、開発要件)あります。 ウォーターフォール開発とは開発要件が決まっており、その要件を実現するために、必要なアサインを行い、スケジュールを引いて開発を進めていくものです。つまり開発の完了に焦点を当て、プロジェクトマネジメントを厳密に進めていくアプローチになります。他方、アジャイル開発では機能開発やイテレーションを進めていく上で、一定の時間とリソースが確保されており、その範囲で何を開発していくべきか考えながら、進めていくことになります。そのため、中長期的な開発計画を引くことなく、スプリントと言われる開発単位(主に1週間から1ヶ月程度)ごとに、プロダクトビジョン実現に向け、何を開発するか決め、ソフトウェアを進化させていくことになります。 上記の比較だけ見ると、状況に応じて柔軟に開発を進められるアジャイルの方が優位に捉えがちですが、そうとも限りません。環境変化に影響を受けず、事前に計画しまとまった時間とリソースを確保した上で開発を進められるのであれば、ウォーターフォール開発が適していると言えます。逆に、まだ明確な正解を見出し切れておらず、探索しながらプロダクトを進化させていく場合、一定のリソースと時間に制限を設けて、正解に近づけていくアジャイル開発の方が親和性が高いと言えるでしょう。 大手企業におけるアジャイル開発の導入 一般的に、大手企業ではIRや予算編成の制約があることが多く、事業計画を綿密に作り上げ、それに沿った事業運営が必要になります。また日本において、エンジニアを抱えて内製でプロダクト開発を行うことは少なく、社内で要件定義まで行い、開発を外注する傾向が強かったと言えます。このような背景から事前に計画を立て、実行していくウォーターフォール開発を採用するケースが多いように思います。 では、そもそも大手企業においてもアジャイル開発を導入すべきなのでしょうか。確かに、大手企業が数十年に渡って磨き込んできた基幹事業については予見可能性が高く、ウォーターフォール開発が適している可能性が高いでしょう。 他方、新規事業はいかがでしょうか。基幹事業とシナジーが生まれやすい周辺領域で事業展開するとは言え、その事業に対する解像度は基幹事業に劣ります。また、すでに収益化ができている基幹事業に比べ、これから立ち上げる事業については時間、リソースともに最小に抑えられることがほとんどです。そのため、一定の時間とリソースの範囲で、探索を進め、ソフトウェア開発を進めていく必要があり、不確実性に対して柔軟性が高いアジャイル開発の方が適切な選択と言えるでしょう。 アジャイル開発導入時のポイント 大手企業が強みとするウォーターフォール開発とアジャイル開発は大本のコンセプトや実現すべきゴールが明確に異なります。そのため、ただアジャイル開発というフレームワークを導入するだけではその本質は浸透することはないでしょう。ここでは、大手企業でアジャイル開発を導入していく上でのポイントを5つに集約し、説明していきます。 1\. 経営陣のコミットメント ウォーターフォール開発からアジャイル開発への移行は開発に対する発想を大きく変える取り組みになります。そのため、パイロット段階から経営陣の覚悟が必要不可欠になります。アジャイル開発によって実現したいことを明確にし、メンバーはもちろん、管掌する経営陣が把握し、コミットメントを示し続けることが成功に向けた第一歩になります。 2\. メンバーの最小化と専任化 組織が大きくなると、専門性が上がり、組織のサイロ化が進みます。このような組織では何を進めるにあたっても、関係者が多くなり、膨大なプロジェクトマネジメントが余儀なくされます。他方、アジャイル開発では開発プロジェクトごとに必要なメンバーを最低限に絞り、専任にするのが原則です。つまり、少人数で専任のチームを組むことで、情報格差をなくし、開発効率を上げることができるのです。 大手企業にとって既存の組織設計とは相反する思想かもしれませんが、パイロット的に導入するなどの工夫を行い、メンバーの最小化と専任化は避けては通れない道なのです。 3\. 意思決定フローの簡素化 また、組織が大きくなると、サイロ化だけでなく、ヒエラルキーも重厚長大なものになり、意思決定フローが複雑になります。このフローが複雑なままだと、仮にアジャイル開発を導入しても、本来の目的である環境変化への対応を実現できません。チーム内の意思決定は基本チーム内で完結するようにし、チームの自律性を担保することが重要です。チームを横断するような論点を扱う場合もプロダクトオーナーからのエスカレーションフローをできる限り簡素化した形で構築しておくべきでしょう。 4\. アジャイル開発は作り上げていくもの アジャイル開発は開発を回していく上でのフレームワークですが、原則は遵守しつつも、チーム内でプランニングやレトロプロスペクティブなどのプロセスを少しずつカスタマイズし、自分達にあった形にしていくことがゴールの1つです。そのため、教科書どおり導入して終わりではなく、各社、もしくはチームにあったアジャイル開発の形に進化させ、考え方を浸透させて初めて成功にたどり着くのです。 5\. アジャイル開発は万能薬ではない ウォーターフォール開発との比較で見たとおり、案件によってはアジャイル開発ではなく、ウォーターフォール開発の方が適していることがあります。時として、アジャイル開発は予見できないことを棚に上げ、計画せずに開発を進めるための言い訳に使われることがあります。そのため、全てアジャイル開発にすればよいというわけではありません。むしろ、案件によっては、大手企業が強みとしてきたウォーターフォール開発(計画を立て、予算を確保し、外注を駆使して、開発を進め、期限通りに行うこと)が生きることもあるので、注意が必要です。 まとめ ソフトウェア開発やDXを推進していく環境は変化が激しいので、アジャイル開発の活用が不可欠です。大手企業ではいきなりアジャイル開発に全て移行するのではなく、新規事業などアジャイル開発と親和性の高い案件からパイロット的に導入を検討していくとよいでしょう。ウォーターフォール開発からアジャイル開発への移行は大きな考え方の変化を伴うので、トップリーダーシップが音頭をとり、しっかりとアジャイルの本質を見極め、フレームワークだけではなく、その考え方まで組織にインストールしていくことが重要です。ただし、アジャイル開発は万能薬ではなく、ウォーターフォール開発がアジャイル開発に劣後するわけではないので、時と場合によって使い分けが必要です。 参考文献 Linkedin/ Agile's Big Problems in Big Companies signature / Top Agile Pitfalls & Why Agile Fails in Large Enterprises TechBeacon / 10 companies killing it at scaling agile Mckinsey\&Company / How to mess up your agile transformation in seven easy (mis)steps 翔泳社/ ALL for SaaS SaaS立ち上げのすべて --- # GraphQLとApollo、オープンソースソフトウェアとSaaSの広がり URL: /insights/15 title: GraphQLとApollo、オープンソースソフトウェアとSaaSの広がり summary: "昨今のWebサービスやモバイルアプリ等のプロダクト運営において、大手企業のみならず創業間もないスタートアップ企業においても、多様かつ大量のデータ処理が一般的に行われるようになりました。クラウド化に端を発した技術進化に伴い、従前に比べて特別なシステム構築や専門チームを組成しなくても、動画や音声データなどの大量かつ即応性が求めらるWebサービスや複数のIoTデバイスとのデータ連携を前提としたアプリケーションの開発及び運用が可能になりつつあります。" date: 2022-12-28 author: "authors/takafumi\_endo.mdx" category: "categories/technology.mdx" glossary: "glossary/saas.mdx" "glossary/startup.mdx" cover: "/images/insights/15/00.jpg" 昨今のWebサービスやモバイルアプリ等のプロダクト運営において、大手企業のみならず創業間もないスタートアップ企業においても、多様かつ大量のデータ処理が一般的に行われるようになりました。クラウド化に端を発した技術進化に伴い、従前に比べて特別なシステム構築や専門チームを組成しなくても、動画や音声データなどの大量かつ即応性が求められるWebサービスや複数のIoTデバイスとのデータ連携を前提としたアプリケーションの開発及び運用が可能になりつつあります。 今後5Gなどの通信技術及び規格の整備に伴い取扱データ量が上昇するだけでなく、マイクロデバイスを通じたパーソナルデータやヘルスログなどの新しいデータ種別をWeb上で高速かつ高頻度で処理する機会も加速度的に増えていくことが予想されてます。様々な外部サービスとのAPI連携や企業内部でも部門や関連会社を跨ぐシステム間連携への需要も高まり続け、ソフトウェアアーキテクチャは年々複雑化する一方です。またユーザーからのレスポンスの即応性や安定性に対する要求水準は高く、動的なコンポーネントやパーソナライズなどユーザーインターフェースの表現も高度化しており、フロントエンド/バックエンド問わずデータ処理に関する課題もそれに対応するためのソリューションも増加していくでしょう。 そのような背景のなかで、本記事では近年注目が集まっているWeb APIのオープンソース型クエリ言語であるGraphQLと、それを利用したアプリケーションプラットフォームを開発・運営するApollo Graph社について紹介していきます。データ処理技術といえば、GoogleやAmazon、Microsoftなどの大手テック企業のプロダクトや技術が一般的には注目されやすくありますが、Apollo GraphQLのような様々なオープンソースソフトウェア及び関連サービスがあらゆるWebサービスの裏側で活用されています。 Web API時代の新しいクエリ言語GraphQL GraphQLとはFacebook(現Meta)が2015年に公開したWeb API(Application Programming Interface)の規格であり、オープンソース化されたクエリ言語として世界中のWebサービスやネイティブアプリ等の開発で利用されています\[^1]。クエリ言語とはデータベースに対してデータ取得等の問い合わせをする際に一般的に使用される言語であり、代表的なものとしてSQLがあります。GraphQLは「グラフ」という新しい概念でスキーマを定義し、Webサーバーに対するデータリクエストをSQLのように宣言的に記述可能にすることで、クライアント側から必要なデータフィールドだけを選択・抽出しやすい環境を実現しました。RESTful APIに比べてHTTPリクエスト及びレスポンスの頻度やデータ量をコントロールしやすく、またエンドポイント(URIやURL等)が単一かつシンプルです。複数エンドポイント及びメソッドの設計が重視されるRESTful APIに比べて、クライアントアプリケーションの開発者が学習すべきポイントが明確であることから、より機動的な実装を行うことができるようになります。\[^1]\[^2]。 GraphQLを使用するアドバンテージの1つは、関心のあるデータをREST APIで取得しようとする場合に発生するであろうHTTPリクエストの数に関係します。例として、productを取り上げてみましょう。productのIDをもっていて、すべての商品データを取得したいとします。さらに、全商品のimages、variants、metafieldsも取得するとなると、4つのユニークHTTPコールが発生します。わたしたちのRESTでは、すべてが個別のエンドポイントとなるからです。 これで容量の10分の1を使用し、1秒ごとの回復レートが2コールなので、回復までに2秒を要します^3。 近年のモバイルアプリケーションでは、大量のネスト化されたデータや相互リンク化されたデータを扱うケースが多く、システムのパフォーマンスを高めるには特定機能(例えばニュースフィード、投稿、メッセージなど)のモジュール/ドメインに合わせて必要最低限のデータを参照・照会することが求められます。GraphQLはWebサイトやiOS/Andoridなどのネイティブアプリなどのクライアント/フロントエンドでの機能実装やデータ処理が多様かつ高速化し、またマイクロサービス化や様々なアプリケーション間のAPI連携が必要とされる時代背景から生まれた技術規格であると言えるでしょう。GraphQLは昨今ではFacebook(Meta)だけでなく、GitHub、X、Shopify、Airbnb、楽天、メルカリなどのテック企業からWalmart、Starbucks、New York Timesなど大企業に加え、世界中のスタートアップ企業の開発現場でも利用されています\[^1]\[^4]。 一方で、GraphQLはクライアント側で必要データな構造を定義しやすいなどフロントエンドの開発者体験が重視された規格であり、GraphQLサーバー間のデータの信頼性やWebアプリケーションの特性に合わせてRESTとの使い分けがなされているのが現状です。フロントエンドの実装の柔軟性を高める反面、GraphQLサーバーの設計やグラフ間のノード構造などバックエンド側の仕組みが複雑になりやすいなどの課題もあります。そもそもGraphQLはオープンソース化されたクエリ言語の仕様であり、サーバー側ではGraphQLのランタイム環境でクエリが実行される環境の構築は勿論、クエリリクエスト制御などのセキュリティ対策やデータキャッシュの仕組みなどは別途用意する必要があります。そういった課題に対応するアプリケーションプラットフォームとして近年Apollo及びその開発運営会社であるApollo Graphが注目されています\[^5]。 GraphQLのアプリケーションプラットフォームApolloとは Apollo Graphは、GraphQLに関するクライアント及びサーバーの実装を支援するための様々なアプリケーションを開発及び運営するソフトウェア企業です。彼らのプロダクトの一つであるApollo Client(フロントエンド向け)では、GrapQLによるUIとサーバーのデータ連携の実装に関わる様々なライブラリを提供しており、React.js、Swift、Kotlinなどのフロントエンドの言語にも対応しています。GraphQLはREST APIと比べてCDNによるキャッシュが比較的難しい等の課題があるなかで、Apollo Clientにはキャッシュデータの統合や状態管理を円滑にするための機能が用意されています\[^6]。またフロントエンド向けに限らず、JavaScriptサーバー上でGraphQLを実行するためのライブラリ及びアプリケーションであるApollo Serverなど、Apollo GraphはGraphQLに関する様々なアプリケーションの開発を行なっています。フロントエンドの開発者はApolloのプロダクトを活用することでGraphQL環境での各言語及びフレームワークによる実装が容易になるとともに、サーバーサイドの開発者は複雑になりがちなGraphQLサーバーやインフラその他開発環境をセキュアかつスケーラブルな状態で構築及び管理することできます。 Apollo GraphはOSS(Open Source Software)開発コミュニティでありながら、Andreessen Horowitz等の世界的なベンチャーキャピタルから高い評価を受けるユニコーン企業でもあります\[^7]。彼らのプロダクトはOSSとして一般利用可能なものから、有料のSaaSとして提供されるものがあり、近年では同様のビジネスモデルを採用するソフトウェア企業も少なくありません。2021年8月時のシリーズDラウンドにおいて、Apolloは15億ドル以上の時価総額で130百万ドルの資金調達を実施したことが公表されています。Apolloのオープンソースライブラリのダウンロードは2021年8月時点において毎月1,700万以上、クエリの実行件数は毎日60億件以上にまで成長しています\[^6]。 彼らは今後さらにオープンソースソフトウェアの開発及びコミュニティ支援を積極的に行うと共に、2022年7月には高水準のセキュリティ認証であるSOC 2 Type IIを取得するなどエンタープライズ版のプロダクト開発を強化していく方針を掲げました。Apollo Graphによれば、すでにウォルマートやスターバックスなどのFortune500の約30%の企業においてApolloのソフトウェアが活用されています。2020年にはNetflixが複数のGraphQLサーバー及びドメイン開発を統合管理するためのアーキテクチャであるApollo Federationを採用したことが話題になり\[^8]、足元ではExpediaやPayPalなど大規模かつマルチチャネルでデジタルサービスを手がける企業へのApollo製品の導入が進んでいます。 “Apollo Federation will allow us to implement our existing schema linking in a safer, declarative manner, while opening up a whole new level of broader federation opportunities across the wider enterprise”. Dan Boerner, Distinguished Product Manager at Expedia Group \[^9] Walmartは従前からBFF(Backend For Frontend)アーキテクチャを採用しており、すでにマイクロサービスかつフロントエンドフレンドリーな開発環境であったにも関わらず、Eコマースのプラットフォームを企画調査から約14ヶ月をかけてApolloを活用したGraphQLアーキテクチャに移行しています。彼らの公表資料によれば、結果としてこれまで複数存在していたカートや検索機能などが統一され、開発者体験だけでなくユーザーの利便性向上にも繋がったことが強調されています\[^10]。 OSSとエンタープライズ向けSaaSの可能性 Apollo Graphは2022年10月には複数のGraphQL API及びサーバー群を束ねる大規模なシステムのインフラ構築を支援するGraphOSを公表するなど、企業内ネットワークから外部APIサービスまで多様なマイクロサービスに繋がるデータアクセスのマーケットプレイスとなることを目指しています。今後エンタープライズ向けの機能を強化していくとともに、ネットワーク効果の期待できるプラットフォーム化戦略を推進していくことが予想されます。ApolloのSaaSとしての機能拡充に連動し、OSSの開発コミュニティへの知見のフィードバックなども期待できることから、これからもGraphQL関連の技術進化及び活用が加速していくでしょう。 ソフトウェア開発の歴史を遡ると、Apollo Graphに限らずMongoDBやGitLabなどOSSコミュニティの支援とその商用アプリケーションの開発運用を行うテクノロジー企業が数多く生まれてきました。OSSとしてはLinux、CentOS、Apache、FireFox、Androidなど無料利用可能と広く認知されるものが少なくない一方、gitに対するGitHubのようにOSSの技術起点となりながら、別の機能を有するSaaSとして開発されて普及したプロダクトも数多く存在しています。特にエンタープライズ領域においてはセキュリティ及び開発工数などの観点から商用化されたSaaSが好まれる傾向にあり、今後もGraphQLのような専門的な技術領域におけるOSSのエンタープライズ向けSaaS化が増加していくことが予想されます。本記事がGraphQL及びApollo Graphの事例研究もしくはOSSとそのSaaSに関する事業検討をされている皆様の調査の一助になりましたら幸いです。 \[^1]: The GraphQL Foundation \[^2]: 初めてのGraphQL|Eve Porcello、Alex Banks著、尾崎 沙耶、あんどうやすし訳 \[^4]: Meta|GraphQL: A data query language \[^5]: StepZen|A New Architecture for APIs \[^6]: Apollo Graph Inc \[^7]: Andreessen Horowitz|Apollo GraphQL \[^8]: Netflix Technology Blog|How Netflix Scales its API with GraphQL Federation (Part 1) \[^9]: Apollo Graph Inc|Expedia Group Transforms Product Development with Apollo \[^10]: Apollo Graph Inc|How Walmart Global Tech Redesigned and Unified their Customer Experience in Just 11 months --- # SaaSの特徴と立ち上げ方 URL: /insights/16 title: SaaSの特徴と立ち上げ方 summary: "新型コロナウイルスの蔓延により、自宅など、どこからでも作業ができるニーズが急速に高まり、国内においてもSaaSという言葉が市民権を得ました。少し歴史を遡ると、2000年前後からSalesforceを始めとするスタートアップがサブスクリプションによる事業の見通しの良さに目をつけ、SaaSが展開され始めました。当初はセキュリティ面やカスタマイズができないことから、SaaSはSMB向けのシステムと思われていましたが、徐々にその認識を変えるに至りました。そして、Adobeなどの大手ソフトウェア企業がパッケージソフトからSaaSへと移行していくことになったのです。日本でも、今ではHorizontal SaaSが一通り出尽くし、Veritical SaaSも競争を極めつつあります。このような環境を鑑み、本記事ではSaaSの立ち上げについて概略していきます。" date: 2022-12-29 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/16/00.jpg" 新型コロナウイルスの蔓延により、自宅など、どこからでも作業ができるニーズが急速に高まり、国内においてもSaaSという言葉が市民権を得ました。 少し歴史を遡ると、2000年前後からSalesforceを始めとするスタートアップがサブスクリプションによる事業の見通しの良さに目をつけ、SaaSが展開され始めました。当初はセキュリティ面やカスタマイズができないことから、SaaSはSMB向けのシステムと思われていましたが、徐々にその認識を変えるに至りました。そして、Adobeなどの大手ソフトウェア企業がパッケージソフトからSaaSへと移行していくことになったのです。 日本でも、今ではHorizontal SaaSが一通り出尽くし、Veritical SaaSも競争を極めつつあります。このような環境を鑑み、本記事ではSaaSの立ち上げについて概略していきます。 SaaSとは SaaSの立ち上げに入る前に、SaaSの定義から確認していきます。SaaSとは、「Software as a Service」の略で、ソフトウェアの提供方法を指します。 従来ソフトウェアは、パッケージソフトとして売り切りモデルで提供されてきましたが、SaaSはクラウドを通して提供され、その利用料をサブスクリプションの形式で支払うことになります。つまり、SaaSはカスタマイズこそ制限されますが、ソフトウェアのインストールが不要で、IDとパスワードでログインすれば、どこでもインターネットを介して利用可能です。また利用料もサブスクリプションになることから初期投資を大幅に削減でき、気軽に利用することが可能になりました。 少し目線を変え、プロバイダーサイドから捉えたパッケージソフトとSaaSの違いは、クラウドを通して常に最新のソフトウェアをユーザーに提供できることです。サブスクリプションは使った分だけ請求していくことになるため、売り切りモデルより売上の認識が遅れ、資金的な体力を求められます。しかし、SaaSを評価するメトリックスの進化により、売上が後からついてくることを評価できるようになり、すでに国内でも多くのベンチャーキャピタルからリスクマネーが提供されるようになっています。 SaaSの立ち上げ 本題のSaaSの立ち上げについて見ていきましょう。まず、SaaSの立ち上げは大きく4つのフェーズ(事前調査、開発、GTM戦略、リリース準備)があります。 1\. 事前調査 開発着手する前段階に対象領域における市場調査やユーザー調査などを指します。SaaSはBtoB向けに展開され、業務上利用されることが多く、まずその業務フローを詳細に知ることがプロダクト開発の初手になります。 BtoCのプロダクトに比べ、BtoB向けのSaaSは業務上利用するものであり、各種調査を通し、事前に課題やニーズを再現性高い形で把握することができます。つまり、プロダクトアウトで企画、開発を進めなくても、綿密に業務フローを理解することで、真に解くべき課題を特定し、開発要件を絞り込むことができます。 また、事前調査を経て要件定義を行うだけではなく、プロトタイプを作成し、想定ユーザーに事前に利用してもらい、フィードバックを得ることで、企画段階でプロダクトとしての完成度を高めることも可能です。 2\. 開発 プロトタイプを通して最終的な要件が決まると、具体的に開発を進めていくことになります。まず、開発に関わるデザイン、開発、QAの方針を策定していきます。例えば、開発を進めていく上で、どのようにスクラムを運営していくか、そのルールの設計などが当たります。 プロトタイプで設計した機能要件の開発を進める前に取り組むべきインフラ等の非機能要件もあります。この段階で検討漏れが発生してしまうと、後々スケジュールに影響が出てくるため、しっかりと開発案件の洗い出しを行い、進めていくことが重要です。 3\. GTM戦略 GTM戦略とは、「Go to market戦略」の略であり、開発できたプロダクトの市場投入時の戦略や戦術を指します。具体的には、いくらでどのように販売していくのか、その方針を決め、実行プランを練る過程です。 BtoCの場合、アプリを作りさえすれば、あとはApp StoreやGoogle Playなどのプラットフォームに乗せることで一定数のユーザーがダウンロードしてくれます。BtoBではそのような便利なプラットフォームは存在しないため、自ら販路を開拓していくことになります。 4\. リリース準備 GTM戦略に基づき、どのようにリリースを行うのか検討していきます。例えば、いきなり正式版リリースを行うのも一案ですし、一定数のユーザーをモニターとして抱え、彼らにしっかり使ってもらい、要件の精度を限界まで上げてからリリースを行うような手法もあります。また、課金についてもリリース当初から課金することもあれば、ユーザーの初期動向、特にChurnの数や割合を確認しながら初期は無料で展開する方法もあります。 このようにリリースという一言でも、様々な捉え方がありますし、取るべき選択肢も多種多様なのです。 まとめ コロナ禍を契機に、国内では一気にSaaSへのニーズが高まり、Horizontal SaaS、Veritical SaaSを展開するスタートアップが後を絶ちません。 事前調査、開発、GTM、リリース準備といったSaaSの立ち上げに関する知見はスタートアップを中心に蓄積され、徐々に体系化され始めています。 この体系化された手法を大手企業が取り入れることにより、大手企業における基幹事業のSaaS化が次のトレンドになる可能性を秘めています。近い将来、日本においても、AdobeのようにパッケージソフトからSaaSに大きく舵取りを行い、転換を成功させる事例が出てくることでしょう。 参考文献 翔泳社/ ALL for SaaS SaaS立ち上げのすべて 翔泳社/ ビジネスモデル構築の大転換 クラウド化する世界 --- # 大手企業におけるMVPの誤謬と導入時のポイント URL: /insights/17 title: 大手企業におけるMVPの誤謬と導入時のポイント summary: "変化が激しい現代社会において、どのようにユーザーの課題やニーズを捉え、プロダクトを創出していくべきなのでしょうか。この問いに対する強力な対応策として取り上げられるのが、MVP(Minimum Viable Product)です。スタートアップではMVPの考え方が浸透し、早くMVPを見極め、検証による学びを繰り返すことでイノベーションを手繰り寄せてきました。マッキンゼーのレポートによると、「大規模ITプロジェクトは、平均すると予算を45%超過しスケジュールを7%押している。しかも、想定していた56%も少ない価値しか出せていない」(著者翻訳)と記載されており、MVPの活用は避けて通れない王道となりつつあります。本記事ではプロダクトを創出していく上で、欠くことができないMVPの概念とその運用方法を確認した上で、大手企業で活用する際に留意すべきポイントを紹介していきます。" date: 2023-01-20 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/17/00.jpg" 変化が激しい現代社会において、どのようにユーザーの課題やニーズを捉え、プロダクトを創出していくべきなのでしょうか。 この問いに対する強力な対応策として取り上げられるのが、MVP(Minimum Viable Product)です。スタートアップではMVPの考え方が浸透し、早くMVPを見極め、検証による学びを繰り返すことでイノベーションを手繰り寄せてきました。 マッキンゼーのレポートによると、「大規模ITプロジェクトは、平均すると予算を45%超過しスケジュールを7%押している。しかも、想定していた56%も少ない価値しか出せていない」(著者翻訳)と記載されており、MVPの活用は避けて通れない王道となりつつあります。 本記事ではプロダクトを創出していく上で、欠くことができないMVPの概念とその運用方法を確認した上で、大手企業で活用する際に留意すべきポイントを紹介していきます。 MVPとは プロダクト開発の一翼を担ったことがあれば、どこかで「MVP」という言葉をお聞きしたことがあるのではないでしょうか。MVPは、生きた古典になりつつある「リーン・スタートアップ」で詳細に紹介され、現在も活用され続けています。 具体的なMVPの定義は、完璧な製品やサービスを最初から目指すのではなく、顧客が抱える課題を解決できる最低限の状態で提供するものです。このような進め方を行うことで、仮説検証に最低限必要な開発に留めるため、限られた予算で実現できます。また、新規事業やスタートアップを立ち上げる上でフォーカスエリアを明確にし、検証ポイントを絞り込むことにもつながります。 逆に、MVPの概念を敢えて後ろ向きに捉えると、MVPであることを理由にし自己防衛を行ったり、責任回避に使われる可能性もあります。しっかりとMVPの定義に遡り、どこまで実現できれば仮説検証できるのか、ユーザーにとって価値提供できるかを主目的にしViableの定義を明確にした上で、MVPを精査していくことが重要です。 MVP導入時のポイント 従来、事業を立ち上げる際、しっかりと時間をかけて様々な観点からリスクを洗い出し、対応策を考え抜いてビジネスプランに落とすような手法が取られてきましたが、MVPの概念は真逆とも言えます。そのため、MVPを導入するには、大きな発想の転換が求められるのです。その転換を5つのポイントとして紹介していきます。 1.企画時からチームにこだわる 2.MVPを通した学びに重点を置く 3.答えはオフィスにない 4.最小限のプロダクトにする 5.朝令暮改を許容する まとめ MVPは限られたリソースで仮説検証を繰り返し、学びを最大化する概念です。ただ残念なことに、組織が大きくなりサイロ化すると、社内政治などの問題から、MVPという言葉を逆手にとって言い訳に使われることも多いのが実態です。 このような使われ方にならないように、MVPの本質に立ち返り、上記5点を念頭に仮説検証に重きを置いた運用こそがイノベーションを実現させるのです。 参考文献 A Proven Methodology to Maximize Return on Risk 4 Tips for Launching Minimum Viable Products Inside Big Companies Delivering large-scale IT projects on time, on budget, and on value Using an Enterprise Minimum Viable Product Approach リーン・スタートアップ×経営【第3回】大企業における新規事業を成功へ導く処方箋 A Review Of The Minimum Viable Product Approach --- # 2023年代表メッセージ URL: /insights/18 title: 2023年代表メッセージ summary: "昨年は経済や社会情勢の前提が大きく変動した1年でした。COVID-19に対するワクチン接種などの感染対策や蔓延リスク下における生活及び事業継続のための様々な施策推進によってグローバルサプライチェーンの正常化やインバウンド需要の増加など、経済活動の改善の兆しが見られるようになりました。一方で、ロシア・ウクライナ紛争による資源価格の上昇及びそれに付随する形での消費者物価指数の上昇、各国の金融引き締め政策などが連鎖的に発生し、様々なマクロ経済指標でボラティリティの上昇が観測されました。" date: 2023-01-24 author: "authors/takafumi\_endo.mdx" category: "categories/letter.mdx" cover: "/images/insights/18/cover.jpg" 昨年は経済や社会情勢の前提が大きく変動した1年でした。COVID-19に対するワクチン接種などの感染対策や蔓延リスク下における生活及び事業継続のための様々な施策推進によってグローバルサプライチェーンの正常化やインバウンド需要の増加など、経済活動の改善の兆しが見られるようになりました。一方で、ロシア・ウクライナ紛争による資源価格の上昇及びそれに付随する形での消費者物価指数の上昇、各国の金融引き締め政策などが連鎖的に発生し、様々なマクロ経済指標でボラティリティの上昇が観測されました。 株式市場においても新興IT銘柄の下げ幅は相対的に大きく、公開市場のみならず未公開市場における資金調達環境にも影響が広がり、前年に比べてスタートアップへの投資に慎重な姿勢を見せる投資家も少なくありません。一方で、JVCAによれば2022年の国内スタートアップ全体での資金調達額は総額8,000億円超と堅調に推移しており^1、スタートアップ1社あたりの累積資金調達額及び参画株主数も増加しています。同時に未上場企業であっても上場企業に準ずるガバナンス体制や収益効率などへの期待度が高まっているように思われます。 そのような社会経済情勢にあるなかで、弊社ROUTE06では今期を企業価値を安定成長させるための土台づくりの1年とし、自社ならではの強みを再現性高く研鑽可能な体制の構築に注力する方針です。顧客企業向けのソフトウェアや各種サービスのみならず、自社の人事制度をはじめとした各種制度についても、日々の運用から得られる知見の蓄積及び改善に対して真摯に向き合う組織文化の構築に尽力してまいります。社歴の浅いスタートアップという枠を超え、これまで以上に多くのステークホルダーの皆様に信頼及び評価いただける企業へと飛躍していきたいと考えています。 自社を取り巻く市場動向 弊社を取り巻く業界動向を俯瞰してみると、経済情勢に対する不安は高まっているものの、前年以上にデジタル・トランスフォーメーションを重要戦略と位置付け、積極的なIT投資を継続する大手企業が多いように思われます。世界経済の実需は堅調に推移しており、足元の決算でも売上や利益で順調な進捗を見せる国内大手企業は少なくありません。そうした企業群が牽引する形でエンタープライズ領域のIT投資額も増加していくことが予想されます。IDC Japan社によれば国内エンタープライズIT市場は2023年には11兆9,983億円まで拡大すると予測されています\[^2]。 DXも短期的なブームを超えて、デジタル技術を活用した既存業務の効率化のみならず、ビジネスモデル転換を含有する言葉として認識されるようになりました。伝統的な大手企業が推進するDXプロジェクトにおいても、市場リサーチやAs Is/To Beの議論から具体的な「ものづくり」に進み、アジャイル型でのプロダクト開発による継続的なサービス改善及び事業成長を実現している事例を見かけることが増えました。一方で、全体を俯瞰してみるとDXにおいて重要である実践的な「ものづくり」を実現できる人材不足は年々深刻化しており、政府もそのような問題に対応すべく「デジタル田園都市国家構想基本方針(2022年6月7日閣議決定)」を掲げ、ビジネスアーキテクトやデータサイエンティスト、エンジニアやデザイナーなどの「デジタル推進人材」を2026年度末までに230万人育成を目指すことを公表しています\[^3]。現状においては社外の開発パートナーやベンダーへの依存度が高いものの、前年に比べてソフトウェアエンジニアやデザイナーなどの人材採用を積極的に行い、社内外のハイブリットチームによる推進体制の構築に注力していく大手企業も増えていくでしょう。 またDXの基盤となる様々なシステムについては、大手グローバル・ソフトウェアベンダーのSaaSやパッケージ等が依然として高いシェア及び影響力を誇るものの、大手企業のソフトウェアサービスへの需要及び受容性の変化からスタートアップ企業にもチャンスが広がっていることを感じます。エンタープライズ領域でも知名度や実績を考慮しつつも、ユーザービリティとコストのバランス、カスタマイズ性や開発チームのアジリティを加味したツール及びベンダー選定を目にする機会が増えました。社内にデジタル専門人材を抱え、様々な失敗と成功を経験した大手企業のDXチームが求める水準は高まる一方であり、デザイン、技術、ビジネスを総合したサービスレベルの向上とその改善速度がこれまで以上に問われる時代になっています。ものづくりに真摯な「デジタル推進人材」が集まり、高品質のプロダクト及びサービスを生み出すことのできる会社に、より多くのビジネス機会が集約していく流れは今後も加速していくと思われます。 今年度の指針 弊社ROUTE06は今月から新年度に入り、創業4年目を迎えます。昨年度は収益面でも組織面でも堅調な成長を遂げることができました。三菱商事様との部品調達マーケットプレイスに関する取り組み事例に始まり、シリーズAラウンドでの資金調達による新たな株主の参画、その後CTOの新設及び就任などを公表することができました。また公表実績や認知度に応じて様々な新規案件のご紹介や問い合わせをいただくなか、顧客企業の関係者の方々から他部署や他のプロジェクト、取引先や関係会社の方々などをご紹介いただく機会にも多く恵まれました。これまで弊社として実直に取り組んできたものづくりやサービス改善の積み上げが新しい機会に繋がることを実感できる一年でもありました。一方で、会社組織としても提供サービスとしても課題は多く、採用計画の見通しと実績のギャップによる機会損失なども少なからず発生しました。現状に真摯に向き合いつつも、今年度はよりステークホルダーの皆様に安定した価値を提供できるよう、以下の指針をもって会社全体の課題解決と成長促進に取り組んでまいります。 ものづくり文化 ROUTE06は「Be a disruptor / 優しい変革者であり続けよう」をコーポレートクレド(組織のあり方)とし、創業初期からチームそれぞれの個性や強みを活かすことで、大手企業のデジタル・トランスフォーメーションの実現に向け、最善を尽くしてまいりました。様々なバックグラウンドを持つメンバーが働いており、顧客企業の業種や課題も多様であるなか、変革を推進する実践的な「ものづくり」に真摯に向き合う文化が組織の共通項であり、弊社の大きな強みであると考えています。顧客向けのプロダクトやサービスのみならず、社内の人事制度からコーポレート関連の業務フローやシステムなど、組織から生まれるあらゆるプロダクト・サービス・制度づくりにおいて、自社ならではのこだわりを持って取り組んでまいりました(例:新入社員向けThe Day One Box)。エンタープライズに限らずDX領域における顧客企業を取り巻く事業環境や組織体制が絶え間なく変化する時代において、ソフトウェアサービスにかかる総合力及びアジリティの高さへの期待度は高まり続ける一方で、社員やパートナー個々人の働き方や専門分野も多様化していく構造にあります。そうした環境下で、創業初期から重視してきたリモートファーストな制度設計やソフトウェアエンジニアリングにおける分散型バージョン管理の思想を取り入れた全社ワークフロー(GitHubの全社業務での活用)の構築などの取り組みを積み重ねていくことが、顧客サービス・人材採用育成・業務効率化など様々な面での持続可能な価値創出かつ競争優位の源泉になると考えております。今年度はプロダクト開発のみならず、自社独自の目標制度(Company issues/CEO issues)や情報共有ツール(Handbook)をはじめとした様々な仕組みやツールの構築を通して、全社的な「ものづくり」文化の拡張に注力してく方針です。 サービスとソフトウェア DXの重要テーマである大手企業のデジタル事業の垂直立ち上げを実現するために、ROUTE06では実践的なアジャイル開発を支援するプロフェッショナルサービスと、基盤となるバックエンドシステムやAPIを提供するプラットフォームサービスを提供しております。プロフェッショナルサービスに関しては、これまでも社内のプロダクトマネージャー・デザイナー・ソフトウェアエンジニアが一つのチームを構成し、顧客企業のビジネスに合わせたUX及びオペレーション設計、UIデザインからシステム設計及び実装、その後のグロースフェーズまで一気通貫で支援を行ってまいりました。そのなかでも特に、複雑性を内包するB2B領域でのクイックなオペレーション設計、UIやUXだけでなくロゴなどのクリエイティブを含めたデザインサービス、データ可視化・分析による改善提案などの実践力を顧客企業にご評価いただくことが多く、今年度はそれらのサービス水準をさらに高めるための体制拡充や顧客企業に還元できる知見の蓄積に注力していきます。またプラットフォームサービスについては、自社開発SaaSである「Plain」の強化を最重要経営論点とし、CTO直下のプロダクトデベロップメント本部を新設し、エンジニアリング体制をより一層強化していく方針です。足元では大手企業のB2B取引における受発注システムやクラウドEDIなどの需要増が顕著であり、製造業や商社などで働くエンドユーザー向けの多様かつ利便性の高い機能群の拡充に加え、フロントエンドやデザインのカスタマイズ性を高めるためのアーキテクチャ設計やAPI開発に注力してまいります。Plainは今後ERPのように幅広い業界・業務に提供範囲が広がるプロダクトであるため、目の前の顧客企業の顕在ニーズに素早く対応することを大切にしながらも、社内のプロダクト開発チームの中長期的なベロシティ向上に資する取り組みを積み上げていくことが最も重要であり、これが価格・品質・速度すべての点において高い顧客価値の提供に繋がると考えております。 スケーラブルな組織 昨年度はパーパス・クレドと共に、ワークスタイルとして社員に推奨する働き方の指針(Go root / 芯を向く、Connect anywhere / リモートファースト、06-committers / チームで紡ぐ)の明文化にも取り組んでまいりました。これらは会社組織において一般的に規定されるミッション・ビジョン・バリューとは少し異なり、本記事執筆時点において目標制度・人事評価・業務ルールに直接紐づけておらず、ドキュメントの公的な位置付けも推奨ガイドラインに過ぎません。ROUTE06では業界構造・社会文化などの大きなトレンドを見据えた上でのスケーラブルな組織づくりを実現するために、チームの多様なバックグラウントとライフスタイルに対する受容性を重視しています。必ずしも業務ルール・規定・基準の詳細化及び管理を強化するのではなく、指針となるガイドラインの明文化、議論及び決定プロセスの透明性の高い開示、具体的な制度や施策などのアウトプットの一貫性によって、自立的かつスケーラブルな組織文化を構築していきます。今年度はいずれの部門においても会社運営に関わる様々な制度や施策の策定及び改善を一つ一つ実直に積み上げていきたいと考えています。また情報セキュリティ・コーポレートガバナンス・財務/管理会計などに関しては、上場企業や大手企業の水準を超えることを目指し、コーポレート体制の強化と効率的な社内システムの構築に力を入れていく方針です。 上記のような指針のもとで、ステークホルダーの皆様にとってより価値のある企業となるべく、今年度も引き続き最善を尽くしてまいります。 \[^2]: 日経新聞 / IDC Japan、国内エンタープライズIT市場予測を発表 \[^3]: 経済産業省 / デジタル人材育成プラットフォームの取組状況について --- # 大手企業、変革に必要なのは「リーダーシップ・キャピタル」|Delight Ventures 南場智子氏 URL: /insights/19 title: 大手企業、変革に必要なのは「リーダーシップ・キャピタル」|Delight Ventures 南場智子氏 summary: "デジタルの普及によって産業の垣根が低くなる中、新たな事業機会と経済価値を創出するため、これまで日本経済を牽引してきた大手企業の事業や組織に変革が求められています。大手企業が変革を進めるために必要なことは何か──そのポイントをベンチャーキャピタル(VC)のパートナーの視点から語っていただく連載「VCから見た、大手企業の変革論」。初回はデライト・ベンチャーズ マネージングパートナーの南場智子さんにお話を伺いました。南場さんは大手企業の変革には「リーダーシップ・キャピタルが必要」と言います。リーダーシップ・キャピタルとは何か。また大手企業が抱える現状の課題とデジタル化のポイントとは。南場さんの大手企業変革論に迫っていきます。" date: 2023-02-03 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/spotlight.mdx" cover: "/images/insights/19/cover.jpg" デジタルの普及によって産業の垣根が低くなる中、新たな事業機会と経済価値を創出するため、これまで日本経済を牽引してきた大手企業の事業や組織に変革が求められています。大手企業が変革を進めるために必要なことは何か──そのポイントをベンチャーキャピタル(VC)のパートナーの視点から語っていただく連載「VCから見た、大手企業の変革論」。初回はデライト・ベンチャーズ マネージングパートナーの南場智子さんにお話を伺いました。 南場さんは大手企業の変革には「リーダーシップ・キャピタルが必要」と言います。リーダーシップ・キャピタルとは何か。また大手企業が抱える現状の課題とデジタル化のポイントとは。南場さんの大手企業変革論に迫っていきます。 分子を入れ替えることで、変化に適応していける ──南場さんから見て、日本の大手企業における課題は何だと思いますか。 日本経済の特徴は依然として伝統的大手企業が主軸であるということですが、その構造自体も大きな課題ですし、大手企業のあり方も課題が多いと感じます。まず第一に人材の流動性の低さが挙げられます。今までのやり方を否定して新しいことを始めるだけのエネルギーが足りていない。ここ数年「DX」「GX」など、トランスフォーメーションという言葉を耳にするようになりましたが、それを言っているのも同じ企業で勤め上げてきた30年戦士、40年戦士ばかりが中心になっています。トランスフォーメーションとは形を変えるという意味です。古株集団で形を変えていくのはそう簡単ではありません。 私が代表取締役会長を務めるディー・エヌ・エー(DeNA)も創業から20年強経ちますが、大きな失敗や停滞は過去と同じやり方に長居した時に起こっています。「成功している」と感じ始めた瞬間から、そのやり方を疑ってかからなければ、後々痛い目に合うんだなということが分かってきました。 企業の規模が大きくなればなるほど、現状のやり方を変える難易度は上がります。過去に事例のないことを嫌い、なるべく現状維持しようとする。これだけ変化が激しい世の中で、そのスタンスではどんどん遅れをとってしまい、最終的には取り残されてしまう。気をつけなければなりません。 大事なのは、会社のカルチャーや風土は維持しつつ、人材や事業など、組織内の分子を入れ替えることです。生物学者・福岡伸一さんの著書『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』(木楽舎)には、「生物が変化する環境に適応していけるのは、体内の分子が絶えず入れ替わっているから」とありますが、これは会社という組織にも同じことが言えると痛感しています。 時代や戦略に応じて事業のポートフォリオを組み替えたり、異なるバックグラウンドの人材を幹部に大胆に登用するなど、組織の構成要素を入れ替えることが大事になる。そうしなければ、適応がどんどん遅れ、世の中の変化に取り残されてしまいます。 政府もそれを認識して、規制改革を進めようとさまざまな取り組みを打ち立てていますが、各論はなかなか進まない。そもそも日本経済は既得権益を守る仕組みになっていて、大きな変革を起こすには、膨大なポリティカルキャピタル(政治的資本)を要してしまいます。そもそも、世の中がこれだけ変化している中で、社会・政治の仕組みが「不変」をサポートするものになっているのが、日本経済の最大の問題ではないかと思っています。 ──そうした中、政府は先日「スタートアップ育成5カ年計画」を発表しました。そこには「オープンイノベーションを促進すること」も記載されています。 オープンイノベーションは、大手企業がいかにスタートアップを活用するかという視点で語られることが多いので、注意が必要だと感じています。もちろんスタートアップのためになる取り組みもありますが、現在日本経済の中軸となっている大企業たちを乗り越えるスタートアップを爆増させるという視点に切り替えることが必要です。そうでないと、日本経済の再生はかないません。分子の動的な入れ替えは、会社組織だけでなく、経済全体にも必要です。 大企業の集まりと見られている経団連もその視点に立ち、今年3月にスタートアップ躍進ビジョンを提言しました。大きく成長を遂げていくスタートアップを歓迎し、そういう存在を続々と生み出すような環境作りをすることが何より重要だと思っています。 大手企業の変革に必要なのは「リーダーシップ・キャピタル」 ──大手企業がデジタル化を進めていくためのポイントは、どこにあると思いますか。 これまでスタートアップの重要性を述べてきましたが、大手企業たちが世界における競争力を維持・強化することも重要なのはいうまでもなく、そのためにはデジタル化は不可欠です。しかし実態としてデジタル化が遅れているのは、やっぱり世代間のギャップが大きい。端的に言うと、会社の意思決定者がデジタル領域に明るくないことが多いわけです。 大手企業のデジタル化という観点においては、ターゲットとなるユーザーは現場で働く社員であるにもかかわらず、現場に決定権限がない。そうした意思決定プロセスのねじれや意思決定者の理解が遅れていることが大きな問題ですよね。 まずは自分がどれだけ頑張って勉強しても現場で働く20〜30歳下の社員のテクノロジー理解のレベルには到底追いつかないことを認識する。そして、自分の無知さが意思決定を歪ませないようにするにはどうすればいいか、を考えるのが賢明な経営者だと思うんです。 もちろん、大手企業がこのまま沈んでいくだけ、とは思っていません。日本からGAFAM級のスタートアップが出てくるには、あと10年はかかると思います。その間、日本の経済を支えていくのは大手企業だと思っていますし、日本は世界と比べたら中小企業やスタートアップよりも大手企業が元気な国。経済成長の切り札はスタートアップだと思っていますが、大手企業にはスタートアップにはない豊富なアセットがある。変化を恐れず、そうしたアセットを活用して進化を図っていってほしいなと思っています。 ──変化することを恐れない。 既存のやり方を単純にデジタル化するだけではダメで、オペレーション自体を最適化していかないといけない。そうすると、これまでのオペレーションを構築した人や守ってきた人たちが反発する可能性があります。でも、ごく一部の人たちの不幸せを避けるために、何十万人の不幸せを放置してもいいのかと言えば、そうとも限らない。「少し不満だけど我慢すればいい」と思っている人たちの声はサイレントマジョリティなので表には出てこないけれど、オペレーションを守ってきた人たちは仕事を奪われる立場だから、その人たちの声がどうしても大きくなってしまう。 そこにリーダーシップが求められる。日本の政治はポリティカル・キャピタルを毀損することを恐れて、一部の人が反発することに手をつけられないことが多いのですが、会社組織も同じです。 政治において、社会を良くするために大胆な変革を行うためには、厚めのポリティカル・キャピタルが必要なように、会社においては、十分なリーダーシップ・キャピタルを構築し、一部の人たちから不満が出ようとも会社の成功のために大胆に意思決定をする必要があると感じます。 そんな会社は少ないと信じたいですが、リーダーが"上がり"的な立ち位置になっていると、「憎まれて終わりたくない」「不穏な感じで終わりたくない」と現状維持のまま数年の任期を終えようとし、優しい雰囲気の中で衰退を続け、結果的には全体が不幸になってしまいます。 この30年間、日本経済は右肩下がりの状況が続いている。これだけ低金利を続けても景気が上向かない。やっぱり金融政策だけでは限界があり、いかに産業競争力を高められるかが重要な訳ですが、日本は一部の人から大反対されるような大胆な規制緩和ができない国。その結果、ガチガチの時代遅れになってしまっている。国でも起きていることが、会社でも起きているのだと思います。 ──大手企業の変革に最も必要なことは何だと思いますか。 どの企業も社内に尖った人、いわゆる"変人"がいると思います。その人たちにスポットを当てて、輝かせることですね。同じような考えを持っている人たちだけで物事を考えてきたことが、現在の結果を招いています。周りと違う考え方をする変わった人を企業の中枢に据えて、躍動させる環境づくりが大手企業の変革に最も必要なことなんだと思います。 撮影:大竹 宏明 --- # 「人」と「百貨」が紡ぐ小売の未来、CHOOSEBASEのはじまり URL: /insights/2 title: 「人」と「百貨」が紡ぐ小売の未来、CHOOSEBASEのはじまり summary: "先日そごう・西武とROUTE06(ルートシックス)の連名で、OMOストア開発に関するプレスリリースを発表させていただいた。ROUTE06は、西武渋谷店で本日9/2(木)にオープンした「CHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベースシブヤ)」において、AWL、hey、ロジクラをはじめとしたパートナー企業と協業し、OMO(Online Merges with Offline)の仕組みとサービスをご提供している。" date: 2021-09-02 author: "authors/takafumi\_endo.mdx" category: "categories/case.mdx" glossary: "glossary/ai.mdx" cover: "/images/insights/2\_cover.jpg" 先日そごう・西武とROUTE06(ルートシックス)の連名で、OMOストア開発に関するプレスリリースを発表させていただいた。ROUTE06は、西武渋谷店で本日9/2(木)にオープンした「CHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベースシブヤ)」において、AWL、hey、ロジクラをはじめとしたパートナー企業と協業し、OMO(Online Merges with Offline)の仕組みとサービスをご提供している。 CHOOSEBASE SHIBUYAは、"意味に出合い、意志を買う"という次世代の店舗のあり方を提案するメディア型OMOストアだ。半年ごとにストアの編集テーマが変わるのだが、初回テーマは「TIMELIMIT(タイムリミット)」。サスティナビリティに取り組む50社以上のブランド(ビューティ、ファッション、食など)が出店している。 本記事の全文はこちらのサイトをご覧ください。 --- # Webデザインとタイポグラフィ URL: /insights/20 title: Webデザインとタイポグラフィ summary: "「Webデザインの95%はタイポグラフィである」\[^1]、NHKやWikipediaなどの数多くの大手クライアントの情報デザインを手がけてきたデザインファーム iA (information Architects) のCEOかつデザイナーのオリバー・ライヒェンシュタインがデザイナーたちにそう呼びかけたメッセージをご存じでしょうか。タイポグラフィは書き手と読み手の間に介在して「読む」という体験をより向上させるための技術であり、あらゆるWebコンテンツの大部分は「言語」によって構成されています。現代では膨大なコンテンツのなかで印刷物としての活字よりも、ディスプレイの文字に触れる機会や絶対量が増加してきています。印刷に比べて使用できるフォントが少なく、表現の範囲が限られているという理由により、これまでWebタイポグラフィが専門分野として注目される機会は多くありませんでした。昨今ではさまざまな領域でのデジタルトランスフォーメーションが加速しているように、デジタルデザインに関わるテクノロジーや理論も絶えず進化しています。本記事ではテクノロジーの進化とともに重要度が増していくデジタル時代におけるタイポグラフィタの歴史とその可能性についてご紹介します。" date: 2023-02-14 author: "authors/kaori\_nakashima.mdx" category: "categories/design.mdx" cover: "/images/insights/20/cover.jpg" 「Webデザインの95%はタイポグラフィである」\[^1]、NHKやWikipediaなどの数多くの大手クライアントの情報デザインを手がけてきたデザインファーム iA (information Architects) のCEOかつデザイナーのオリバー・ライヒェンシュタインがデザイナーたちにそう呼びかけたメッセージをご存じでしょうか。タイポグラフィは書き手と読み手の間に介在して「読む」という体験をより向上させるための技術であり、あらゆるWebコンテンツの大部分は「言語」によって構成されています。 現代では膨大なコンテンツのなかで印刷物としての活字よりも、ディスプレイの文字に触れる機会や絶対量が増加してきています。印刷に比べて使用できるフォントが少なく、表現の範囲が限られているという理由により、これまでWebタイポグラフィが専門分野として注目される機会は多くありませんでした。昨今ではさまざまな領域でのデジタルトランスフォーメーションが加速しているように、デジタルデザインに関わるテクノロジーや理論も絶えず進化しています。本記事ではテクノロジーの進化とともに重要度が増していくデジタル時代におけるタイポグラフィの歴史とその可能性についてご紹介します。 タイポグラフィとは 無数の感覚と数値による技芸 タイポグラフィの理論には、数秘術、比例理論、コルビュジェのモデュロールなど、古来より一定の法則と数理体系が包含されています。タイポグラフィは個々のデザイン感覚から始まり、無数の事例と受け継がれてきた知恵によって後世に続くノウハウへと変わり、近年ではその整合性が数値によって説明可能になってきたことから学術的な研究が加速するようになりました。 グリッドを用いたデザインプロセスは、機能的で論理的、かつ美的にも優れた手段をデザイナーにもたらしました。数値による補助システムはデザインに秩序をもたらし、情報の信憑性を支え、読み手にとって視覚的な負担なく、テキストの内容の理解と記憶の補助に効果があると言われています\[^2]。一方、デザインでは視覚が理論や数値の正しさより優先されることもあるなかで、タイポグラフィの理論は錯視問題などを解決するきっかけになることがあります。 数値による比率システムは神格化され金科玉条になりやすいので、先人の素晴らしい知恵を借りながらも、最新の書体技術やデザイナー自身が得意な表現も考慮に入れながら、全体の統一感を作ることでその媒体に読み手にとってベストな体験を作り上げていく必要があります。 書体の影響力 デザイナーにとって、書体の選択は重要な仕事の一つです。媒体の持つ制約条件を理解し、文脈にフィットするフォントを選択できれば、テキストの内容に温度感や抑揚を与え、読み手の理解を手助けすることができます。 Webデザインをスピーチに例えてみましょう。会場がWebページ、テキストがスピーチ内容に相当するとして、その演説者の服装は観客にどのような印象を与えるでしょうか。 丁寧に仕立て上げられたスーツもあれば、体に合っていなくてみすぼらしく見えるものもあります。Tシャツとデニムだったとしても、清潔感があり演説者に似合うものであれば、現代的できちんとした印象を受ける場合もあります。 アメリカのタイポグラフィのコミュニケーターであるベアトリス・ウォードは1955年に刊行した自身のエッセイ『クリスタルゴブレット』にて以下のように語っています。 “People who love ideas must have a love of words. They will take a vivid interest in the clothes that words wear.”— Beatrice Warde アイディアを愛する人は言葉も愛しているに違いない、彼らは言葉がまとう服に強烈な関心を持っている 服装によって受ける印象が大きく変わるように、文章もその書体によって大きく印象を変えることもできます。書体は言葉にとっての服のようなものであり、服装がその人のセンスや好み、雰囲気を表すように、書体は特定の地域や時代感などを読み手に連想させることもできます。また別の観点で、多感覚タイポグラフィのサラ・ヒンドマンの研究により、書体の選択が料理の味にも影響を及ぼすことも実証されています。同じジェリービーンズでも、その説明テキストに丸みを帯びたフォントを採用すると被験者はより甘く感じ、固く尖ったフォントを採用すると酸っぱく感じる結果が出たそうです。これは扁桃体の機能として、経験を通じて印象と感覚の関係性が脳に保持され、繰り返されるたびに強化されていくことによって起こることが知られています。書体の選択は単に情報を伝えたり感覚、感情、情緒に影響を与えるだけでなく、信頼性やトーン、コンテンツに対する先入観や記憶をも刺激することが可能になります。 文字というインターフェース 文字の出力は手書きから木版、活字、写植、そして現在のデジタルフォントと移り変わってきました。文字はあらゆるタイポグラフィの基本であり、初期の造形文字から抽象的な記号、ゴシック体やイタリアやドイツ・ルネサンス体、現代のサンセリフ体などさまざまな書体のフォルムへ変形しながら発展しています。 ギリシア語の「CALLI(美しく)」「GRAPHEIN(書くこと)」に由来するカリグラフィも表現及び技巧として、歴史や文化の変遷とともに変形・発展してきました。ローマ時代の碑文に使用されていた「ローマンキャピタル」、写本の書きやすさを突き詰めた「アンシャル体」、書体を統一する動きから作られた小文字体「カロリンジャン」、紙が高価な時代により多くの文字を書き留めるための余白の少ない「ゴシック体」「ブラックレター」、より早く書くための「イタリック体」など、多岐にわたります。15世紀には活版印刷術が発明され、手書き文字の必要性が日常生活のなかで薄れていきますが、ジョン・ホプキンス大学の最近の研究によれば、手書きでアイデアを書き留めたり、日記を書いたりすることは、現代においても私たちの創造性や心の安定性を高めることに寄与することがわかっています。 カリグラフィとテクノロジー業界 Appleの創設者であるスティーブ・ジョブズが、大学を中退後に見たカリグラフィクラスの芸術的なポスターに惹かれて授業を受けていたことは、テクノロジーの世界に新しいクリエイティビティをもたらしました。ジョブズは、2005年のConnecting the dotsで有名なスピーチの中でカリグラフィ、もとい、タイポグラフィに関してこう述べています。 I learned about serif and san serif typefaces, about varying the amount of space between different letter combinations, about what makes great typography great. It was beautiful, historical, artistically subtle in a way that science can't capture, and I found it fascinating. セリフ体とサンセリフ体について、異なる文字の組み合わせの間のスペースの量について、何が素晴らしいタイポグラフィを作るのかについて学びました。科学では捉えられないような、美しく、歴史的で、芸術的な繊細さがあり、魅力的だと思いました。 私たちは学習する時の大部分を視覚に依存しています。時間と視覚が有限な私たちは、同じコミュニティに属する人たちから学べることも多い一方で、異業種の先人達が残した表現を見るという行為はこれまでにない自分の創造性を高めるきっかけにもなりえます。人間は誰でも創造的であり、その創造性の筋肉を鍛え、発達させることができます。タイポグラフィは最も日常的かつ頻繁に接触できる美的表現であり、最も私たちの想像性を高めてくれる美術作品になり得るのかもしれません。 「読む」をデザインする 「タイポグラフィは個人的な自己表現の一種だと誤解されることがある」と書体デザイナーのヘルマン・ツァップが主張したように、タイポグラフィは芸術や美術的価値を持つものだと考えがちですが、実際は目的と用途のある工芸デザインです。タイポグラフィが「情報を最も簡単かつ効率的な方法で広く多くの人に伝達するための手段」として認識されていることは少ないでしょう。 タイポグラフィを機能と造形の両面から独自に探求し、世界中のタイポグラファ及びグラフィックデザイナーに影響を与えたスイス・タイポグラフィの巨匠エミール・ルーダーは、1967年に著した『タイポグラフィ─タイポグラフィ的造形の手引き』\[^3]の中でタイポグラフィをこう定義しています。 タイポグラフィは文字によって情報を伝達するという明確な義務がある。いかなる議論や考察も、タイポグラフィからこの義務を解放することはできない。読むことのできない印刷物は、目的を失った制作物である。 タイポグラフィは、先人の感覚と無数の事例、受け継がれてきた知恵の上で数値化され活用されてきました。テクノロジー、精確さ、秩序に基づいた表現であり、高尚で難解なアートではなく本来は実用的なものです。読み手が興味関心の高い情報を探索・分類・解釈しやすくなるように、デザイナーは文字が組み込まれたデザインコンポーネントとページ全体のバランスを意識しながら最適な書体を選択していきます。このプロセスは印刷物のみならず、デジタルプロダクトでも同様であることを冒頭で紹介したオリバー・ライヒェンシュタインは強調しています。カスタマーレビューからレポート、メディアの記事、書籍、ソーシャルネットワークでの投稿、常に自身のスマートフォンから目に入る文字情報において読みやすさは最も重視されるべき体験です。あらゆるWebサービスにおいてユーザーが最も行うことは「読む」行為であるため、情報を効率的に人に伝達するための技術やノウハウが集約された専門分野としてタイポグラフィを学ぶことをオリバーは推奨しています。 タイポグラファが長い歴史のなかで研究し続けてきた単語の判別しやすさや文章全体の読みやすさへの知見に加え、書体の選択によるデザイン全体への印象変化に関する構成理論などは、現代のデジタルプロダクトに関わるデザイナーにとっても学ぶべき点は少なくありません。Appleが提唱するHuman Interface Guideline\[^4]、Googleの発表したフレームワークMaterial Design\[^5]など、タイポグラフィに重きを置き、全体的なグラフィックバランスを最適化しているデザインガイドラインはいくつも存在しています。ディスプレイなどのハードウェアスペックやフロントエンドエンジニアリングなど表現技術が高度化するなかで、近年ではデザイナーのみならずユーザビリティスペシャリスト、インフォメーションアーキテクトなど、Webデザインに関わる様々なプロフェッショナルの間でタイポグラフィは盛んに議論されるテーマになりました。 Webの進化による影響 読み手にコントロールを委ねるメディアへの適応 1960年代のパケット通信研究から始まったインターネット技術は現在までタイポグラフィの分野にも大きな影響を与え続けています。印刷機の発明以来、タイポグラフィに関わる用紙や書体サイズなどの規格から、美観やその用途までをデザイナーや印刷工が全体をコントロールしやすかったのに対して、Webデザインを記述するHTMLやCSSによる表現の自由度は高く、どのように表示されるかは各ユーザーが使用するブラウザやソフトウェアに一任され、最終的には読み手であるユーザーにそのコントロールを委ねることになりました。 読み手のコントロール下にあるということはネガティブにも聞こえる一方、同じメディアであってもニーズに合わせてインターフェースを調整できることは読み手にとって大きなメリットでもあります。拡大鏡が必要な方にとっては標準化された通常サイズの印刷物はベストなインターフェースとは限らないですし、また現代では見かけることも少なくなりましたが混雑した電車の中で大判サイズの新聞を広げた状況に困るシーンもあったことを鑑みると、デジタルタイポグラフィの重要性がより感じられます。 Webサイトの大部分を構成するテキストに対して書体が担う役割は、見出しを際立たせるなど書き手の主張メッセージの強弱を表現するだけでなく、その主張の非言語的な印象表現をサポートすることも含まれます。手書きの文章では書き手によってテキストのトーン、肌触りや質感が異なると読み手が感じるように、Webにおいても書体選択は読み手が受け取る印象や内容に対する受容性にまで影響を与えるものです。書体が固定化されてしまう印刷物と比べ、Webでは多くの場合読み手がブラウザやアプリケーションの設定から書体を変更することができます。書体選択に限らずダークモード設定など読み手によるユーザーインターフェースの可変性は高まる一方であり、Webでのタイポグラフィはそのような拡張性及び自由度の高いメディア環境に適応した進化を続けています。 ブラウザとWebフォント 1990年代にCSSが登場したことにより、Webタイポグラファは組版を行える環境が整い始めてきたものの、使用可能なWebフォントは少なく、更にそれ以上に対応ブラウザが少ない状態でした。また画面の解像度が低いため、読み手がフォントを見分けることも困難な環境からWebフォントの歴史はスタートしています。 Webタイポグラファにとって制約条件が多かった一方で、インターネットの登場やPC環境の普及はタイポグラフィ自体の普及に大きな影響を与えることになりました。従来の印刷環境に比べて新しい書体を制作しやすくなっただけでなく、オンラインサービスを通して多様なフォントを世界中のユーザーに販売提供することが可能になりました。 1998年にCSS2の仕様が追加され、マイクロソフトもInternet Explorer用に独自のWebフォントフォーマットを開発したものの、普及に成功したとはいえない状況でした。その後AppleのMachintoshの登場によりDTP(DeskTop Publishing)が普及し、2009年にはSafariがTTF(AppleとMicorosftが開発したWebフォント。Windowsでも標準対応しており、拡縮率に依存せずきれいな曲線で出力されるのが特徴:TrueType)とOTF(TrueTypeの拡張版として、マイクロソフト、アドビシステムズにより共同で開発された高機能のフォント形式:OpenType)をサポートしたことがきっかけとなり、他のブラウザでもWebフォント対応が拡大していきます。 2010年にWOFF(Web Open Font Format)が標準フォーマットとして登場すると多くのブラウザがすぐにサポートを開始したことで、Webフォント時代の幕開けとなりました。WOFFは、TTFとOTFのファイルを圧縮してデスクトップにインストールしなくてもブラウザ上で対象フォントがきれいに表示されるようになり、インターネット上でのタイポグラフィの表示管理が容易になりました。フォントのファイルサイズは画像やJavaScriptの複雑なコードよりは比較的軽いものの、ページのなかで複数の書体を併用していたり、Opentype機能がある書体を使用している場合などはページの読込速度にも影響します。2014年には圧縮技術を向上させた新しい標準フォーマットWOFF2が登場したことで、Webフォントの普及の勢いは更に加速していくことになりました。WOFF2ではWOFFと比べ、平均30%のデータ容量削減に成功しています\[^6]。 2016年には、新たなテクノロジーとして一つのフォントを複数のフォントのように表現を多様化できるOpenType Font Variations(一般的にはバリアブルフォントと呼ばれる)の対応が始まりました。Adobe、Apple、Google、Microsoftの4社が共同開発した技術であり、SafariやGoogle Chrome、Microsoft Edgeなどの主要なモダンブラウザ全てにサポートされています。CSSのfont-weight、stretch、styleなどの定義を工夫するだけで、「レギュラー」「ライトコンデンスト」「エクストラボールドエクステンデッド」を自由度が高い別々のフォントのように扱うことができるようになりました。また複数のスタイルを1フォントファイルで実現できることから、劇的にデータサイズが減少し、サーバーのリクエスト回数も一度で済むため、ページ全体の処理速度を向上させることが可能になりました。OpenType Font Variationsはファイルサイズを抑えるだけでなく、レンダリングされるフォントを高精度かつ詳細に調整できるため、今後より一層変化していく読み手のデバイスや環境に動的に対応できる可能性がある新しい技術です。エンジニアに親和性の高いGitHubからも力強く多用途なMona Sansとより幾何学的なアクセントがテクニカルで独特な雰囲気をもつHubot Sansの2つ、バリアブルフォントが提供されています。\[^7] タイポグラフィとコラボレーション Webタイポグラフィのみならず、どのような書体でもテキストや様々なデザインコンポーネントとの組み合わせによって、魅力的で非常に面白い価値を読み手に届けることが可能です。 印刷物に比べてテキスト情報量が多く含有されるWebデザインだからこそ、個性的な書体の活用がデザイン全体の独自性を高めることにも繋がります。 Webデザインを成功させるための重要なことは、テキスト自体もユーザーインターフェースとして扱うことです。以前記事で紹介したFigma やGoogle、eBay、YouTubeなどの多くのユーザーに愛されるWebサービスは、シンプルなインターフェースと強いアイデンティティを両立させることに成功しています。 WebデザインではグリッドやCSSを工夫することで、誰もがタイポグラファになることができます。CSSには、印刷物における組版に必要な寸法、値、プロポーションなどが異なるviewportにどう適用するか定義されているため、タイポグラフィックシステムを制作関係者は誰でも知ることができます。印刷物のプロトタイプにおいては一部のデザイナーに限られていたタイポグラフィの知見を、ディレクターやプロダクトマネージャー、エンジニア間での共通言語で表現できるようになったことによって、新しいコラボレーションが生まれるようになったことも、CSSがもたらした一つの功績と言えるのではないでしょうか。 \[^1]: iA / Web Design is 95% Typography \[^2]: ヨゼフ ミューラー=ブロックマン / グリッドシステム \[^3]: エミール ルーダー / タイポグラフィ─タイポグラフィ的造形の手引き \[^4]: Apple Developper / Human Interface Guidelines \[^5]: Google / Material Design \[^6]: リチャード・ラター / ウェブタイポグラフィ─美しく効果的でレスポンシブな欧文タイポグラフィの設計 \[^7]: GitHub / TWO VARIABLE, OPEN SOURCE FONTS from GITHUB --- # XaaSの類型とメリット URL: /insights/21 title: XaaSの類型とメリット summary: "インターネットを介してソフトウェアを提供するSaaSを皮切りに、あらゆるものがサービス化されるXaaS(Anything as a service)が近年のトレンドになっています。これまでオンプレミスで提供されていたソフトウェアとは違い、エンドユーザーはPCやスマートフォンといったデバイスを活用し、どこでもサービスを享受できるのがXaaSの特徴の一つです。本記事では、具体的にどのようなXaaSが存在するのか確認した上で、B2Bのサービスを中心にプロバイダー/ユーザー両面からXaaSのメリットを整理していきます。" date: 2023-02-20 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/21/cover.jpg" インターネットを介してソフトウェアを提供するSaaSを皮切りに、あらゆるものがサービス化されるXaaS(Anything as a Service)が近年のトレンドになっています。これまでオンプレミスで提供されていたソフトウェアとは違い、エンドユーザーはPCやスマートフォンといったデバイスを活用し、どこでもサービスを享受できるのがXaaSの特徴の一つです。本記事では、具体的にどのようなXaaSが存在するのか確認した上で、B2Bのサービスを中心にプロバイダー/ユーザー両面からXaaSのメリットを整理していきます。 XaaSの類型 既にXaaSは急速に普及し始めており、具体例を挙げようとすると、AからZまでリストアップして整理している文献まで出てくるほどです。ここでは、代表的なものをピックアップして紹介します。 ソフトウェアを提供する上での周辺環境のサービス化 SaaSの立ち上げ方とその特徴では、ソフトウェアのサービス化の類型としてSoftware as a Service、Platform as a Service、Infrastracture as a Serviceを紹介しました。他に代表的なものを2つほど紹介しておきます。 ID as a Service- ID管理を行うサービス - 例:Auth0、Okta Network as a Service- ネットワーク構築やサーバ・クライアントの設定から設置までをサポートし、ネットワークのパフォーマンスを維持するサービス 例:NTT Docomo 特徴的な手段のサービス化 分析やコミュニケーションなど、特徴的な手段がサービス化した事例もあります。こちらも主だったものを2つほど紹介します。 Analytics as a Service- クラウドを通して提供されるデータストレージや、解析、統計を行うサービス - 例:Tableau Communication as a Service- テレビ会議やチャットなどコミュニケーションに関するサービス - 例:Slack、Zoom 業界特化のサービス化 個々の業界において、特徴的なデバイスを通して提供されるサービスもあります。 Mobility as a Service- モビリティサービスの予約、決済ができるサービス - 例:Whim、Uber、Lyft Retail as a Service- 小売のサービス化を指し、蓄積してきた顧客データや販売データなどとテクノロジーを組み合わせて提供されるサービス 例:Amazon Go 上記を見てくださった方はお気づきかもしれませんが、XaaSの定義はあるものの、その分類は確立したものがありません。どちらかというと、「XXX-Tech」等と同様にマーケティングメッセージのための造語として捉える方が適切な理解かもしれません。 XaaSのメリット では、なぜマーケティングメッセージとして活用してまで、XaaSの普及に乗り出すのでしょうか。その理由をプロバイダー/ユーザーのそれぞれの視点からメリットを明らかにすることで、解明していきます。 プロバイダーとしてXaaSとして提供するメリット ソフトウェアを始め、XaaSの対象になっているようなものは、これまで売り切りモデルを採用し提供されてきました。現在、プロバイダーがXaaS化を推進する理由は大きく2つあります。 まず1つ目は、売上の予見可能性が高まることです。XaaSの多くはユーザの継続利用に対して、サブスクリプションモデルを採用します。そのため、毎月その月に売上をワンショットで計上するのではなく、前月からの継続利用によって売上の多くが担保されている状態を実現できます。このようなPLの構成は資本市場からの評価も相対的に高いものになりやすく、また比較的景気に左右されにくいビジネスモデルとも評価できるでしょう。 2つ目は、サービスを通してユーザーと継続的に関係構築できることにあります。サービスとして継続的に利用してもらうことを想定しているので、当然ユーザーから要望や不具合等のフィードバックを受け、改善していく必要があります。このような活動を通してサービスの風化を防ぎ、ユーザー満足度を維持し続けることができるのです。また、いきなりユーザーから利用停止の連絡をもらうのではなく、他社のシステムに切り替えられる前にケアする機会も担保しやすくなります。 ユーザーとしてのXaaSを活用するメリット また、サービスを利用するユーザー視点でXaaSを評価すると、4つに集約されます。 1点目は、初期投資を削減しサブスクリプションベースで費用を支払えることです。XaaSを使うことで、本来であれば発生するITインフラを削減し、データセンターで使用するサーバー、ハードディスク、ネットワーク、ソフトウェア等を内製で準備する必要がなくなります。コスト制約が強いスタートアップや新規事業にとって、XaaSは強い味方になります。また、XaaSを活用することで、投資としてではなく費用として計上できることも大きなメリットになるでしょう。 2点目は、メンテナンス等の間接費が削減できることです。本来ITインフラは、初期投資に加えてメンテナンスが必要ですが、XaaSにおいてメンテナンスはサービスに包含されることが多く、ユーザーサイドで対応する必要がありません。つまり、自社のエンドユーザーの便益に直結する業務に注力できるのです。   3点目は、スケーラビリティの高さです。例えば、急に事業拡大する必要が出た場合でも、XaaSで利用するプランをアップグレードするなどしてスピーディーに対応できることも多く、組織を大きく変えることなく対応することができます。XaaSは使える機能や頻度によってプランを分けて設定していることが多く、ビジネスニーズに応じて利用するサービスの機能や頻度を調整することができるのです。 最後に、イノベーションの促進が挙げられます。XaaSは本当に多種多様です。本来内製で実現しようとすると、社内に専門家を招聘して開発を進めることになるのですが、そのようなステップを踏まなくてもXaaSを導入することで最新のテクノロジーを活用できます。XaaSを提供する企業も自分のチームの一員として稼働し、迅速なプロダクト、事業展開が可能になるのです。 まとめ SaaSを中心に、XaaSは広く普及しはじめています。これはプロバイダー、ユーザーそれぞれにメリットがあります。プロバイダーはユーザーと継続的な関係構築を通して売上の予見可能性を高められますし、ユーザーは初期投資を最小限に抑えながら、利用した分だけ支払うことで、間接費を最小限に抑えられます。 急速に進行するXaaS化の流れは不可逆的であり、極論すればこだわりを持って自分のものとして使い続けることが想定されたもの以外はサービス化される時代がやってくるかもしれません。 このような時流において、本記事が改めて自社の製品やサービス提供のあり方を再考するきっかけになれば幸いです。 参考文献 A Proven Methodology to Maximize Return on Risk 4 Tips for Launching Minimum Viable Products Inside Big Companies Delivering large-scale IT projects on time, on budget, and on value Using an Enterprise Minimum Viable Product Approach リーン・スタートアップ×経営【第3回】大企業における新規事業を成功へ導く処方箋 A Review Of The Minimum Viable Product Approach --- # "デジタル先進国" 東南アジアに学ぶ変革のヒント。問われる「経営者の覚悟」|ジェネシア・ベンチャーズ 田島聡一氏 URL: /insights/22 title: '"デジタル先進国" 東南アジアに学ぶ変革のヒント。問われる「経営者の覚悟」|ジェネシア・ベンチャーズ 田島聡一氏' summary: "デジタルの普及によって産業の垣根が低くなる中、新たな事業機会と経済価値を創出するため、これまで日本経済を牽引してきた大手企業の事業や組織に変革が求められています。大手企業が変革を進めるために必要なことは何か──そのポイントをベンチャーキャピタル(VC)のパートナーの視点から語っていただく連載「VCから見た、大手企業の変革論」。第2回はジェネシア・ベンチャーズ代表取締役/General Partnerの田島聡一さんにお話を伺いました。田島さんは大手企業の変革には「目指す姿を明確にすること、そしてそれらを実現する経営トップの覚悟が必要になる」と言います。JVCA(日本ベンチャーキャピタル協会)の副会長及び大企業連携部会の部会長も務められている田島さんの大手企業変革論に迫っていきます。" date: 2023-02-21 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/spotlight.mdx" cover: "/images/insights/22/1.jpeg" デジタルの普及によって産業の垣根が低くなる中、新たな事業機会と経済価値を創出するため、これまで日本経済を牽引してきた大手企業の事業や組織に変革が求められています。大手企業が変革を進めるために必要なことは何か──そのポイントをベンチャーキャピタル(VC)のパートナーの視点から語っていただく連載「VCから見た、大手企業の変革論」。第2回はジェネシア・ベンチャーズ代表取締役/General Partnerの田島聡一さんにお話を伺いました。 田島さんは大手企業の変革には「目指す姿を明確にすること、そしてそれらを実現する経営トップの覚悟が必要になる」と言います。JVCA(日本ベンチャーキャピタル協会)の副会長及び大企業連携部会の部会長も務められている田島さんの大手企業変革論に迫っていきます。 ミッションと現状の差分。日本の大手企業が抱える課題 ──田島さんから見て、日本の大手企業における課題は何だと思いますか。 さまざまな大手企業のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)担当者と話をする中で感じるのは、多くの大手企業が自社のビジネスをどう変革していけばいいのかを描けていないということです。目指す姿と現状の差分が見えていない。そのため、どうしても打ち手がボヤけてしまうんです。 例えば、大手企業の変革に必要なことを「M\&Aする」「自社でプロダクトを内製する」「スタートアップと連携する」といった3つの要素に分けたとします。目指す姿が見えていないので、結果的にどこをM\&Aすればいいか分からない、どんなプロダクトを開発していいか分からない、どんなスタートアップと連携すればいいか分からないということになってしまう。この理想と現実の差分が見えていないことが、多くの大手企業における課題だと思います。 一方で、目指す姿を明確にし、そこと現実との差分を明確に把握できている企業は打ち手や対外メッセージがシャープですよね。その結果、スタートアップ側からも“選ばれる”存在になる。スタートアップにとって単なる出資者で終わるのではなく、その企業と組むことによる事業シナジーの実現に前向きになりやすいからです。そういう意味では、そのような良い循環を生み出せている大手企業とそうでない大手企業で大きな差がつき始めていると思います。 また「会社を変革していくぞ」とファイティングポーズをとっている経営陣が意外と少ないということもあります。経営陣は現場からの提案に対してジャッジするだけではなく、自分たちが率先して推進していくべきです。 過去に私が在籍していたサイバーエージェントも今では大手企業ですが、経営陣が率先して新規事業をつくりに行っています。むしろ「経営陣のミッションは企業価値の最大化であり、既存事業を育てるだけではなく、新たな事業を生み出してこそ経営陣だ」という発想です。そういう風土があると、ミドルマネジメント層を含めた組織全体の視座が上がり、会社に良い効果が生まれます。経営陣がジャッジするだけになってしまうと、誰もチャレンジしなくなる。結果的にそれが組織の停滞感につながっていくんだと思います。 ──CVCの設立という観点では、政府は「オープンイノベーション促進税制」といった取り組みも展開しています。 取り組み自体は良いものですが、「オープンイノベーション促進税制があるからCVCを立ち上げなければ」という考えでCVCを立ち上げているように見えるところもあります。CVCを立ち上げる際、まずは「自社の事業を変えていくための手段として、スタートアップとの連携を目指そう。そのためには別組織で出資機能を持っていた方がいい。だからCVCを立ち上げよう」といったように、ゴールからの逆算で手段を考えるべきなのですが、手段が目的化しているところが多い印象です。 そのような場合、スタートアップ側も「この会社とは出資以上に面白い取り組みができないかもしれない」と気づきます。やはり、スタートアップは大手企業と組む際、その企業の“色”がつくことを懸念するので、色がつく以上のリターンが見込めなければ組もうと思いません。だからこそ、大手企業の経営陣はまずは目指すべき方向性を明確にすることが大事になります。 大手企業の経営陣がどれだけ変革に対してコミットできるか。また、ビジョンをきちんと掲げて組織に浸透させていくことに本気で向き合えるか。オープンイノベーション促進税制などは変革を加速させていくためのツールでしかありませんので、それをどう使うかを考えるよりも先に、経営陣が目指す姿を明確にしコミットすることが何より重要です。 デジタル化に必要なのは「ユーザーニーズに事業を最適化する」こと ──ジェネシア・ベンチャーズは東南アジアでも投資されています。日本と比較した際、デジタル化という観点ではどのような違いがあると感じていますか。 まずは環境が大きく違います。日本は既に少子高齢化が進み、労働者人口がどんどん減っていますが、東南アジアは今がまさに日本の高度経済成長期のような状態です。そして、この勢いが今後30年、40年続いていく。ここがまず日本との大きな違いです。 もうひとつは、日本のビジネスはアナログからデジタルへとシフトしていますが、東南アジアのビジネスはデジタルベースでゼロから立ち上がっているという部分です。日本はこれまでにアナログベースで多くの産業が成熟した結果、現在はDX(デジタル・トランスフォーメーション)の必要性が叫ばれていますが、東南アジアはビジネスが日本ほどしっかり立ち上がっていないので、最初からデジタルをベースにしたビジネスがどんどん生まれています。 昔は先進国と言われていた日本が今では“デジタル後進国”と言われるようになり、新興国と言われていた東南アジアが“デジタル先進国”になりつつある。この10年で大きくパラダイムシフトが起きた。そこに対する焦りを個人的には非常に強く感じています。 ──日本は東南アジアから、どういったことを学んでいくべきでしょうか。 東南アジアで起こっていることは非常にシンプルです。純粋にユーザーニーズに向き合い、それに対して事業を最適化していくことをやり続けているだけです。 その姿勢は日本も見習うべきでしょう。ただ、日本の場合はこれまでに積み上げてきた膨大なアセットがあり、それがサンクコスト(すでに負担し、回収できない費用のこと)になってしまい切り捨てられずにいる。もっと言えば、ITリテラシーが異なるシルバー向け・若者向けの両方にビジネスを最適化する必要に迫られている。まさにイノベーションのジレンマに陥ってしまっているように見えます。 「ユーザーが求めているから」という理由で、今までのアセットに見切りをつけて新しい挑戦をしていく意思決定ができるかどうか。ユーザーニーズに対して純粋に向き合うことを徹底してやり続けることができる企業が最終的には勝ち残っていくと思います。 意識的に“差”を生み出すことで、経営陣の考え方を変えていく ──田島さんが考える、大手企業変革のカギは何ですか。 大手企業がスタートアップを選ぶ世界ではなく、スタートアップが大手企業を選ぶ世界、というのを意識的につくっていくことが必要だと思っています。デジタルの力を活用して世の中の課題を解決しているスタートアップの可能性に気づいている大手企業の方が、デジタル社会の現代では確実に成長し続けていける。そうなれば、日本経済に対して与えるインパクトは間違いなく大きいはずです。 すべて自社で開発しようとするのではなく、スタートアップと連携して新しい事業を創り出していく。その可能性に気がついていない大手企業に対して「気がつかないとダメですよ」と伝えるのではなく、その重要性に気づいている企業と気づいていない企業のスピード感やアウトプットの差は必然的に大きくなっていくため、その結果の啓蒙が今後はより重要になっていくのではないかと思います。 ──そのためにまずやるべきことは。 経営陣が自らリスクをとって挑戦する環境をつくり出すことですね。やはりトップの考え方が変わっていかなければ、会社も変わっていきません。ボトムアップで現場の人たちが変革の必要性を言い続けてもトップの考えが変わっていかなれば、そうした声は跳ね返され続け、最終的に現場でモチベーション高く働いていた人たちは別の会社に行くようになってしまいます。そういう状態のままでは、大手企業の先行きもどんどん暗くなっていくでしょう。 トップの考え方を変えるのに必要なのは「危機感」です。そういう意味では、東南アジアは“渇き”がすごい。「今のままではいけない」という危機感や、「より豊かな暮らしをしたい」という喉の渇きをモチベーションに、インターネットの可能性をフルに活用することでどんどん成長しています。一方で、日本人は何かと満たされている環境にいるので、東南アジアと比べると“喉の渇き”が生まれにくい。 ただ、今はそうも言ってられない状況です。会社として“稼ぐ”ことも大事ですが、それ以上に「どういうことを実現したい」と思っているのか。ビジョン、ミッションの先にある“目指す姿”をきちんと経営陣が示すことができれば、会社は変わっていけるはずです。 撮影:大竹 宏明 --- # GitLab – 「フルリモート」を競争優位とするコーポレートデザイン URL: /insights/23 title: "GitLab – 「フルリモート」を競争優位とするコーポレートデザイン" summary: "バージョン管理ツールやCI/CDなどモダンなソフトウェア開発に必要なDevOpsプラットフォーム「GitLab」を開発/提供する米国のテクノロジー企業GitLab Inc.(以下GitLab)は、世界で約2,000人の全社員がフルリモートで働く会社です。リモートワークはコロナ禍を契機に新しい働き方として市民権を得ました。しかし、コミュニケーションの断絶やマネジメントの難しさ、従業員のバーンアウト等の様々な課題があり、コロナウイルス感染拡大が落ち着きを見せた足元では、オフィス回帰を打ち出す企業も少なくありません。本記事では、GitLabのフルリモート・非同期での働き方を可能とするコーポレートデザインや運営手法にフォーカスを当ててご紹介し、次代の組織モデルや働き方に関するインサイトを得たいと思います。" date: 2023-04-21 author: "authors/kohei\_minami.mdx" category: "categories/research.mdx" cover: "/images/insights/23/cover.jpg" バージョン管理ツールやCI/CDなどモダンなソフトウェア開発に必要なDevOpsプラットフォーム「GitLab」を開発/提供する米国のテクノロジー企業GitLab Inc.(以下GitLab)は、世界で約2,000人の全社員がフルリモートで働く会社です。 リモートワークはコロナ禍を契機に新しい働き方として市民権を得ました。しかし、コミュニケーションの断絶やマネジメントの難しさ、従業員のバーンアウト等の様々な課題があり、コロナウイルス感染拡大が落ち着きを見せた足元では、オフィス回帰を打ち出す企業も少なくありません。 本記事では、GitLabのフルリモート・非同期での働き方を可能とするコーポレートデザインや運営手法にフォーカスを当ててご紹介し、次代の組織モデルや働き方に関するインサイトを得たいと思います。 GitLabの歩み GitLabの始まりはソフトウェアエンジニアDmitriy Zaporozhets氏(創業者)の個人プロジェクトでした。Zaporozhets氏はソフトウェア開発を行っている中で、使い勝手の良いコラボレーションツールがないことに不便を感じ、2011年に1人でオープンソースプロジェクトとして開発を始めました。 公開されているZaporozhets氏のコードの美しさに以前から感銘を受けていた同じくソフトウェアエンジニアのSid Sijbrandij氏(共同創業者 現CEO)は、Zaporozhets氏の「GitLabプロジェクトにフルタイムで取り組みたい」というツイートを見かけたことで、同氏にコンタクトしました。この2人の出会いをきっかけに、2014年に両氏はGitLab Inc.を創業するに至りました。 Sid Sijbrandij氏はGitLab上場時のS-1の中で、創業前のZaporozhets氏のことを以下のように回顧しています。 GitLab did not start in a tech incubator, garage, or Bay Area apartment. In 2011, my co-founder, Dmitriy Zaporozhets, created GitLab from his house in Ukraine. It was a house without running water, but Dmitriy felt that not having a great collaboration tool was a bigger problem than his daily trip to the communal well.\[^1] 同社の提供する「GitLab」は、バージョン管理・イシュー管理・コードレビュー・CI/CDなど、モダンなソフトウェア開発に必要なDevOpsプラットフォームです。 元々は類似サービス「GitHub」の後発でしたが、機能拡充やMicrosoftによるGitHub買収によるユーザー離反を追い風に、徐々にユーザー数を伸ばしてきました。世界的なアクセラレーターY Combinatorへの採択や複数回の調達ラウンドを経て、2021年10月には約1.2兆円(当時為替レート)の時価総額でNASDAQ市場への上場を果たしました。 現在では世界60ヶ国以上から約2,000人の従業員が参画し、3,000人以上\[^2]のCode contributorを誇る一大サービスとなりました。Goldman Sachs、NVIDIA、T Mobileなど世界的なエンタープライズ企業でも多く利用されています。\[^3] エンタープライズ向けのOSS(Open Source Software)は今後も市場拡大が期待される領域であり、同社のさらなる成長が期待されます。 GitLabの特徴的なコーポレートデザイン GitLabは自律型かつ分散型の組織を実現するため、極めて特徴的なコーポレートデザインや運営手法を持っています。本章では以下の内容を具体的に見ていきたいと思います。 All Remote - 全社員2,000人がフルリモート Handbook - すべて文書化する Internal Communication - ミーティングよりもSlackで Minimum Viable Change - 最小単位に分割し、早くフィードバックを得る Managers of One - 自分自身がマネージャー Informal Communication - 交流を誘発する様々な仕組み 1\. All Remote - 全社員2,000人がフルリモート GitLabは2014年の創業以来一貫してオフィスを持たずにAll remote(フルリモート)で運営されてきました。現在では世界60ヶ国以上から約2,000人の従業員が働いていますが、変わらずに全員がフルリモートで働いており、それはCEOをはじめとしたCクラスの経営陣も同様です。 採用やオンボーディング、社員の解雇まであらゆる活動がリモートで行われており、オフィシャルに社員がリアルで顔を合わせるのは年に1回、社員が自由参加で集まる”GitLab Contribute”(社員がオフラインで集まる数日間の合宿イベント。コロナ禍以前はギリシャやメキシコなどで開催)の時だけです。 Previous GitLab Contributes (Formerly Summits) https://about.gitlab.com/company/culture/contribute/previous/ 時差がある世界各国に従業員が分散しているため、決められた労働時間(コアタイム)がなく従業員は好きな時間に働くことが認められています。したがって、後述する社内コミュニケーションをはじめ、非同期を前提とした働き方が基本となっています。 現在の働き方の主流とも言えるオフィス勤務やオフィス/リモートのハイブリッド勤務とは異なる完全なるフルリモートを実現したことで、GitLabは居住地の制限なく世界中から優秀な人材を採用できるという大きなアドバンテージを得ました。また世界中から多様な人材を採用することで組織のダイバーシティ向上にも寄与していると考えられます。 個人の観点からも、例えば配偶者の転勤、育児や介護など個人的理由で転職や退職を余儀なくされることがなく、GitLabで継続してキャリアを積みやすくなります。同社のAll remoteは従業員1人1人のキャリアや人生を充実させ、エンゲージメントを高めることに大きく貢献していると推察されます。 そんなAll remoteを可能にしているのが、次項以降で見ていく数々のコーポレートデザインと仕組みの存在です。 2\. Handbook - すべて文書化する リモートワークを行う際にボトルネックとなりやすいのが、コミュニケーション不足によって情報やプラクティスの共有が進まない、指針やカルチャーが十分に浸透しないことです。しかしGitLabでは、全社員が閲覧・編集できる「ハンドブック」\[^4]と呼ばれるWikiのようなツールが整備されています。ハンドブックには同社のミッション・ビジョン、運営指針、仕事や会議のTips、詳細なオンボーディングガイド、給与計算、マニュアル等が網羅的かつ事細かに文書化されており、現在の総ページ数はなんと2,700ページ\[^3]を超える大作となっています。 ハンドブックはWeb上で一般公開もされており、世界の誰もが閲覧することができます。(プロダクトの)GitLabの「Merge request」を通じて更新提案も可能であり、頻繁にアップデートが行われています。ハンドブックは、同社のコアカルチャーとも言える情報の透明性やOSSの思想を象徴する存在と言えるでしょう。 実際にGitLabでは”Working handbook-first” が標榜されており、ハンドブックの存在や内容を非常に重要視しています。ハンドブックは社員が困った際や悩んだ際の判断基準や拠り所になっており、きちんとドキュメント化されていることで、新入社員や同じ疑問を持った別の社員が後日同じ質問することが避けられるなど、コミュニケーションコストの低いオペレーション実現に大きく寄与しています。 それぞれの部門やチームが設定したOKR(Objectives and Key Results)もハンドブック上でドキュメント化されており、その達成度とあわせて全社員に公開しています。これによって他の部門やチームの業務内容、考え、目指している方向性について理解が深まり、チームや部門間でのサポートやコラボレーションが生まれやすくなります。 社員がドキュメンテーションやハンドブックの整備/更新に多くの時間を取られるというデメリットはあるものの、正確かつ網羅的な情報を透明性高くオープンにしておくことで、中長期的にはワークフローの効率化やスピードアップに繋がります。このようにGitLabのハンドブックはフルリモートかつ非同期を前提とした働き方を実現する競争優位の源泉と言えるでしょう。 3\. Internal Communication - ミーティングよりもSlackで GitLabの社内コミュニケーションは非同期かつオープンな社内公開が基本です。時差などで働く時間がそれぞれ異なるため「相手が画面の前にいない前提で仕事をするスタイルが定着している」と言います。\[^5] 日常のコミュニケーションはZoom等のビデオ会議やメールではなく、社内で公開されているSlackのパブリックチャンネルを使ってテキストベース(非同期)で行うことが推奨されています。またSlackも当事者以外が閲覧できないDMは極力使わず、可能な限りパブリックチャンネルでポストすることが推奨されています。 1on1ミーティング(雑談やメンタリングの観点から1on1は推奨)は例外として、そもそもミーティングは必要か、SlackやGitLab Issueなど非同期で実施できないかを検討する習慣が根付いており、必ずしもミーティングの開催は推奨されていません。実際、ハンドブックにはミーティングの断り方も記載されています。 難しい課題にじっくりと考えたり、集中してタスクに取り組んでいる時に、頻繁にミーティングがあったり、隣の席から声をかけられると集中したフロー状態に入ることが中断されてしまい、質の高い仕事ができません。”Deep work”の観点からもGitLabでは非同期でのコミュニケーションを推奨しているのです。 An asynchronous mindset enables everyone to take a step back and assume that whatever we're doing is done with no one else online. It removes the burden of an endless string of messages you must respond to immediately.\[^4] またミーティングを行う場合は、ミーティング主催者は必ず事前にアジェンダを作成し、参加者へ事前に展開することが求められます(”No agenda, no attenda”の標榜)。参加者側もあらかじめ内容確認や質問事項を用意しておくなど、参加準備をきちんと行います。 当然ミーティングは時間厳守が徹底されています。またビデオ会議には原則Zoomを使用しますが、カメラは原則オンとされているのも興味深い点です。これはカメラがオンの方が、参加者の表情やボディランゲージを通じて入手する情報が増えること、かつ顔を出した質の高いコミュニケーションによって、その後の非同期コミュニケーションがやりやすくなることを狙ったものだと言います。\[^5] 参加できない人やタイムゾーンが異なる人のためにミーティングの録画も推奨されており、加えて議事録をしっかりドキュメントに残すことで、参加できなかった人が後で内容をキャッチアップできるようにしています。 ちなみに大量の社内ミーティング録画がYouTube上で一般公開されており、同社の徹底したオープンな姿勢には驚かされます(公開予定のミーティングについては、顧客名をはじめとしたコンフィデンシャルな情報は口に出さないように徹底されているようです)。 これら以外にもユニークなミーティングルールがハンドブックには記載されています。 ミーティング中に他のことを行うことで、ミーティングに集中できなくても構わない ランチタイム中の社内ミーティングは食事しながら参加しても構わない(ただしマイクはオフにすること) コミュニケーション活性化のため、子供やペットなどがカメラに映ることを歓迎 4\. Minimum Viable Change - 最小単位に分割し、早くフィードバックを得る テック企業であり、多くのソフトウェアエンジニアが働くGitLabではソフトウェア開発における方法や思想があらゆる仕事の進め方に根付いているように感じます。 同社のプロダクトGitLabのMerge requestを通じたコードレビューや承認プロセス、過去の変更経緯が記録に残り更新箇所が把握できるバージョン管理など、GitLabを使いソフトウェア開発の優れた仕事の進め方やプラクティスが積極的に用いられています。 GitLabでは”Minimum Viable Change”(最小単位の変化)と呼ばれる原則があります。担当者は自身が書くコードやドキュメントなどのタスクを小さな単位に分割し、時間をかけず完成する前の状態でも次の担当者やレビュアーにそれを回します。 このアプローチを採用することで、誰か特定の人の作業完了を待つことによって全体のワークフローが止まったり、停滞することが回避できます。また早いタイミングで他のメンバーが問題点を指摘できたり、幅広く知見やフィードバックを取り入れることができるため、継続的かつ効率的にプロダクトの完成度を高めることが期待できます。 GitLab Values (Iteration) “We do the smallest thing possible and get it out as quickly as possible”\[^4] 小さな単位かつ早いタイミングでコミットすることで、他のメンバーはその担当者が何に取り組んでいて、どんなことに困っているかを知ることができます。これによって作業のコンフリクトや重複を防止する効果も期待できます。さらに言えば、小さな取り組みであっても成功と前進をテンポ良く感じることで、チームに必要な自信や勢いをもたらす効果も期待されると考えられます。 5\. Managers of One - 自分自身がマネージャー GitLabのマネジメント手法も特徴的です。 フルリモート環境下にあることから、マネージャーはチームメンバーの隣で事細かに管理や指示することができません。そこで同社の社員は自らが自身のマネージャーであるというマインドを持ち、各自がリーダーシップとオーナーシップを持つことが求められます。GitLabにも組織階層は存在しておりマネージャー・ディレクター・VPといった職階も存在しますが、マネジメントの根幹は各メンバーのSelf-leadershipと自律自走にあると言えるでしょう。 また社員は労働時間の長短ではなく成果で評価されるため、1日の使い方に決まったルールはなく時間管理は個々の社員に委ねられています。マネージャーがメンバーのマイクロマネジメントを行うことは想定されておらず、「メンバーの長時間労働が懸念される場合以外は、マネージャーは労働時間について言及してはいけない」とCEOのSid Sijbrandij氏は述べています。\[^6] むしろ、GitLabのマネージャーの主な仕事はメンバーのケアや、成長を促しモチベートすること、そして非同期プロセスの円滑化にあります。同期型のミーティングを必ずしも推奨していない同社ですが、マネージャーとメンバーによる1on1については毎週1回の実施を推奨しており、1on1での相談や雑談を通じて上記を達成することを重視していることが伺えます。 一般的なマネジメントは、同期型を前提にチームメンバーに対する指示やタスク管理など、ともすればマイクロマネジメントになりがちです。しかし非同期でフルリモートであるGitLabのマネージャーの最も大事な仕事はメンバーを助けること/支援することであり、サーバントリーダーシップが求められていると感じます。 6\. Informal Communication - 交流を誘発する様々な仕組み フルリモートで働くことで懸念されるのが、燃え尽き症候群(バーンアウト)や孤立など、社員のメンタルヘルスです。GitLabではこれらを抑止するためのメンバー間の交流やインフォーマルなコミュニケーションを誘発するデザインが意識的に取り入れています。 例えば以下が挙げられます。 Coffee chat:積極的なカジュアルコミュニケーションを推奨している。またペアリングアプリDonutを使って、ランダムに社員同士のペアを作ることも可能であり、ペアを組んだ社員は1on1での雑談や自己紹介を通じて、普段交流しない人とコミュニケーションを取ることが可能 Informal Slack channel:Slackに多くの趣味やテーマごとのチャンネルが作られており、趣味やテーマに関するコミュニケーションが日常的に発生している Social hour:Zoomを使ったランチ会やピザパーティ、経営陣に自由に質問できる質問タイムなどが設けられている\[^6] Team DJ Zoom Room:ZoomにDJルームを設けている。聴いているメンバーは作業に没頭しつつも、他のメンバーと共通の音楽を聴くことで一体感やコミュニケーションを得ることができる Coworking call:決まった時間にオンライン上で集まって協働して同じタスクに取り組んだり、作業をしながら雑談を行う リモートワーク環境はどうしてもコミュニケーションが少なくなり、またオン/オフの境目も設けづらいため、コミュニケーション不足や働き過ぎが起きやすくなります。GitLabではこれらを抑止するために業務外のコミュニケーションや交流、セレンディピティを誘発するユニークな仕組みが多く見受けられます。 おわりに 2017年のインタビユーにおいて、Sid Sijbrandij氏が「全員がリモートで働くというビジネススタイルで最も大変なことは?」と質問を受けた際に「資金集め」と即答しているのは興味深い点です。当時はフルリモートで働くことで組織の成長に弊害が起きないかを懸念する投資家が多く、資金集めに非常に苦労したそうです。\[^7] Gitlab's Secret to Managing 160 Employees in 160 Locations - Y Combinator https://www.youtube.com/watch?v=e56PbkJdmZ8 コロナ禍を経てリモートワークが市民権を得た現在では当時とは受け入れられ方は違うと推察されます。しかし、GitLabの標榜するAll remoteとそれを実現するコーポレートデザインやカルチャーは、確かに誰しもが簡単に受け入れ、真似できることではないかもしれません。 例えば、社員の多くがgitやブランチの概念、GitLab(プロダクト)の一連の操作、Zoom等のコミュニケーションツールに慣れており、一定程度テクノロジーに精通していることが必要となるでしょう。実際に、MarkdownとMerge requestを組み合わせたハンドブック修正のプロセスは万人向けではないと言います。\[^5] テキストコミュニケーションが主体となることから、ドキュメントを簡潔かつ理解できるように書くライティング能力や、表現の配慮・気遣いがあらゆるコミュニケーションで不可欠となります。これも誰もが最初から簡単にできることではなく、ある程度の訓練や慣れが必要と言えるでしょう。 またマネージャーによる管理や監視が効きにくい(そもそもそれを想定していない)ため、社員はある意味でサボることが容易な環境に置かれます。個々の社員には高いパフォーマンスを発揮するために自らを律しモチベートする能力と自身の健康やメンタルヘルスを維持する自己管理能力が求められます。 GitLabのフルリモートや非同期を前提としたコーポレートデザインが、どういう形でPLやKPIに表れてくるか、競合との差別化に繋がるかは今後興味深い点です。開示が確認できる範囲では3期連続で最終赤字を計上しており、マクロ環境の逆風が吹く中で真価が問われる局面にあると言えるでしょう。(他のテック企業と同じく、レイオフ(全従業員の7%相当)を2023年の2月に発表しました\[^8]) 他方でフルリモートによる採用競争力の高さやオフィスを持たないがゆえの低コスト運営、ハンドブック等が実現する効率的なオペレーションは、競合他社が簡単には模倣できないGitLabの大きな競争優位です。実際、同社の販売費及び一般管理費(対売上高)の比率は未上場当時と比較して減少傾向にあり、さらなる浸透・改善を通じてより一層の効果が出てくる可能性もあります。今後の同社の動向については、引き続き注視したいところです。 全社員がフルリモートで働くGitLabのユニークなコーポレートデザインや運営手法をご紹介しました。本記事が次代の組織のあり方や個人のパフォーマンスを最大限発揮できる環境づくりを検討するきっかけとなれば幸いです。 参考文献 GitLab: Can “All Remote” scale? / INSEAD GitLab and the Future of All-Remote Work / Harvard Business School GitLab: work where you want, when you want / Journal of Organization Design \[^1]: GitLab Inc. / Form S-1 \[^2]: GitLab Inc. / Celebrating 3,000 wider community contributors \[^3]: GitLab Inc. / Investor Presentation Fourth Quarter Fiscal Year 2023 \[^4]: GitLab Inc. / GitLab Handbook \[^5]: Developers Summit 2022-02-18 / GitLabで学んだ最高の働き方 \[^6]: リクルートワークス研究所 / フルリモートワークを導入するためのノウハウ、マニュアルを公開 \[^7]: Gigazine / 社員全員が世界各地でリモートで働く「GitLab」はなぜ創業2年で160人まで規模を拡大できたのか? \[^8]: GitLab Inc. / An announcement from GitLab CEO Sid Sijbrandij --- # 短期的な売上よりも大切なのは「どれくらいの生涯価値を提供できるか」。大手企業に変革をもたらすSaaSの在り方 | ALL STAR SAAS FUND 前田ヒロ氏 URL: /insights/24 title: "短期的な売上よりも大切なのは「どれくらいの生涯価値を提供できるか」。大手企業に変革をもたらすSaaSの在り方 | ALL STAR SAAS FUND 前田ヒロ氏" summary: "デジタル・トランスフォーメーション(DX)をはじめとした大手企業の変革に必要なことは何か──そのポイントをベンチャーキャピタル(VC)のパートナーの視点から語っていただく連載「VCから見た、大手企業の変革論」。第3回はALL STAR SAAS FUNDマネージングパートナーの前田ヒロさんに話を伺いました。SaaS特化のベンチャーキャピタルを運営している前田さんは「SaaSは変革のきっかけを提供する存在」と言います。大手企業の変革においてSaaSが果たす役割、そしてスタートアップとの連携で意識すべきことは。前田さんの大手企業変革論に迫っていきます。" date: 2023-03-20 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/spotlight.mdx" cover: "/images/insights/24/00.jpeg" デジタル・トランスフォーメーション(DX)をはじめとした大手企業の変革に必要なことは何か──そのポイントをベンチャーキャピタル(VC)のパートナーの視点から語っていただく連載「VCから見た、大手企業の変革論」。第3回はALL STAR SAAS FUNDマネージングパートナーの前田ヒロさんに話を伺いました。 SaaS特化のベンチャーキャピタルを運営している前田さんは「SaaSは変革のきっかけを提供する存在」と言います。大手企業の変革においてSaaSが果たす役割、そしてスタートアップとの連携で意識すべきことは。前田さんの大手企業変革論に迫っていきます。 大手企業のDXを進めていくためのSaaSの役割 ──日本の大手企業のDXの現状をどう捉えていますか。 まず前提として、DXには大きく3つのフェーズがあると思っています。 「フェーズ1」は製品・サービスをデジタル上で購入できるようにすること、いわゆるオンライン化です。「フェーズ2」は社内のワークフローから紙をなくし、可能な限りの業務をデジタル化すること、そして「フェーズ3」が社内に蓄積されたデータを利活用したり、そのデータをもとに意思決定をしたりすることです。 コロナ禍がきっかけにもなり、ほとんどの企業はフェーズ1の製品・サービスのオンライン化はできており、ここ数年で一気に普及が進んだと思います。いまでは、多くの製品・サービスのオンライン購入や、予約が可能になりました。 インターネットを軸とした事業を展開している企業はフェーズ2に入っているケースも多いと思います。でも、医療や製造業など“リアルな場”で事業を展開している企業は、今も紙を使った業務が中心となっていて、少しずつワークフローをデジタルに移行しているところだと思います。 フェーズ3に関しては、デジタルファースト、クラウドネイティブで立ち上がった会社はすでに実現できていると思いますが、リアルな場を起点に事業を展開している企業のほとんどは、これからフェーズ3に向かうことを考えはじめているという場合が多いのではないかと感じています。 ──まだ、デジタライゼーションが始まっただけ、ということですね。その点を踏まえると、まだまだ課題も多いということでしょうか。 課題も多くあると思います。大手企業のDXを支援するサービスベンダーやSaaSスタートアップが、きちんと大手企業のニーズを理解した上で、適切なサポートやカスタマーサクセス、サービス設計を考えていくべきだと思いますし、ここはまだ成長の余地が十分にある領域です。 現在のSaaSは中小企業向けのものが多く、エンタープライズ向けと言っても膨大な業務の中の限られた部分をSaaS化させているという状況です。つまり、大手企業のワークフロー全体のデジタル化ニーズを満遍なく満たしているサービスベンダーやSaaSスタートアップは、まだ存在していないと言っても良いでしょう。 今後、大手企業のDXを進めていくにあたっては、より広い範囲で大企業のデジタルニーズを満たせる存在がより重要になっていくと思います。 ──ここ数年で、SaaSスタートアップが数多く立ち上がってきました。SaaSスタートアップが大手企業のDX化において果たす役割、可能性をどう見ていますか。 スタートアップの存在によって、「会社の業務の現状がどうなっていて、今後どこを改善していけばいいのか」という点を考え直すきっかけになっていると思います。また、SaaSスタートアップはたくさんのお客さまと会話をしながらプロダクトの設計や開発をしていることもあり、どんどん成功事例が蓄積されていきます。例えば、建設業界に特化しているプロダクトを提供していると、その業界ならではのワークフローがどうなっていて、多くの企業がどこに課題を持っており、それをどう解決していけばいいかが分かる。 そうしたノウハウが蓄積されていき、プロダクトにどんどん反映されていくので、お客さまにとっては最先端の成功事例が知れますし、良い部分は真似することもできる。そういう意味では、SaaSスタートアップは進化の機会を与えてくれる存在だと思います。 もしサービスの導入が上手くいけば、業務の効率化を図ることが可能です。例えば、私たちの支援先の会社でも、彼らが提供しているサービスを導入したことで作業工数が10%下がったり、利益率を2〜3%高めることができたりといった事例が実際にあります。そうすることで、社内のコミュニケーション設計に時間を割いたり、クリエイティブな仕事に労力をかけるきっかけを作ることもできますよね。SaaSスタートアップは、より良いサービスをつくるためのパートナーのような存在になれると思っています。 日本とアメリカの違い。IT人材こそ非IT領域に行くべき ──ALL STAR SAAS FUNDは、2019年6月に立ち上がっています。当時、SaaS特化のファンドはなかったと思いますが、前田さんはSaaSのどこに可能性を感じたのでしょうか。 SaaS特化のファンドを立ち上げた一番のきっかけは、SaaSが普及していく必然性を感じたからです。現在、SaaSの普及率は10〜20%ほどと言われていますが、ここ数年での勢いや市場のニーズを踏まえると、この数字が50〜70%になる可能性があると思っています。 そして、SaaSはB2Bのソフトウェアを購入する際の理想的なモデルだと強く信じているというのも大きなポイントですね。オンプレミスやパッケージソフトなど、B2Bのソフトウェアを購入する方法は様々ありますが、SaaSに代表されるサブスクリプションや従量課金をベースにした料金体系が一番矛盾がない。サービスベンダーにとっても、お客さまにとっても、SaaSのモデルが最も美しいと感じられる。僕は、このモデルが今後100年、200年存在し続けるものだと思っています。だからこそ、「この領域に100年かけてもいい」と思い、ファンドを立ち上げたんです。 ──SaaSの普及率を高めるために何が必要だと思いますか。 サービスを提供するSaaS企業側もお客さまのニーズに合わせて進化していかなければならないし、お客さま側もSaaSを使いこなせるようにならなければいけない。どちらかの課題ということではなく、両者が一緒に課題を解決していく形になってこそ、SaaSの普及率が100%に近づくのだと思います。 SaaSが会社の利益に与えるインパクトは大きいです。サービスを導入するだけで、営業利益率が数%上がる事例をこれまでも見てきました。業務効率化や売上アップにつながるサービスを導入すれば、利益率をもっと上げていくことができるでしょう。それによって新たな事業を生み出す機会も創出していけるのではないでしょうか。 ──海外と比較した際、何か違いなどはあるのでしょうか。 国によって違いはあります。アメリカにフォーカスしてお話しすると、日本との違いに「IT人材の就職先」が挙げられるでしょう。アメリカでは、多くのIT人材が飲食、製造、医療などの非IT領域に就職しているのですが、日本の場合、IT人材の多くは、IT企業に就職しています。 その結果、非IT領域におけるITリテラシーやITに関するスキルに偏りが生じ、SaaSの普及率、ソフトウェアの普及率に大きな影響を与えていると思います。そういう意味では、日本もIT人材が非IT領域にもっと入ってきていただけるようになることは重要ですね。 大手企業の変革に必要なのは「アンラーニング」 ──大手企業はSaaSを導入するだけでなく、自社でSaaSのような事業を生み出す方法も考えられます。その場合、どのようなことを考えるべきですか。 SaaSの最も重要なポイントは、1度つくって終わりではなく、プロダクト・サービス自体がお客さまと共に進化していくことです。1度プロダクトをつくって終わりというだけでは、時代の流れに追いつけず取り残されてしまったり、お客さまのニーズに合わなくなったりしていく。「SaaSは進化を続けていく、磨かれていく」という大前提のもと設計しなくてはいけません。 もうひとつは、「短期でどれだけ売上を生み出せたかどうか」ではなく、「お客さまに対してどれくらいの生涯価値を提供できるか」という視点で物事を考えるべきです。1年で1000万円の売上をあげるよりも、10年、20年かけてより大きな価値を提供できるか、社会に大きなインパクトを与えることができるかどうか。そういった考え方をもとに、サービス設計をして、料金体系も考えていくべきだと思います。 このような点を総合的に考えて、SaaSを導入するのか、または自社で生み出すのかを決定するということになるのかなと思います。長い歴史と数多くの成功体験を積み重ねてきた企業は、ときにイノベーションが生まれにくくなってしまうこともあるでしょう。そんな時、自社で新しいSaaS事業を生み出すためには、今までの成功体験を捨てて、新しいものを取り入れていく、いわゆる「アンラーニングをすること」は大事なポイントになると思います。 ──大手企業とスタートアップが連携する際に意識すべきポイントは何でしょうか。 個人的な見立てを話すと、お互いがどのようなミッションで動いているのかを理解することが重要だと思います。 スタートアップは、事業を拡大し世の中に良いインパクトを与えることに加えて、自分たちの基盤を強くしていくというミッションがあります。これらのミッションをもとに立てた戦略から外れた行動は極力したくないと考えるわけです。ですから、お客さまである大手企業との関係や協力体制の強さなどは重要になってきますよね。 上手な連携を実現するためには、何よりお互いの整合性が大事。スタートアップと大手企業の目指す方向性が矛盾なく一致していて、Win-Winの関係性をつくれていることがとても重要だと思います。どちらかが欠けていたら、基本的には上手くいきません。お互いが何を目指していて、柔軟性やコミット力などの前提条件への理解があった方が連携はスムーズに進んでいくと思います。 --- # Adobeのクラウド化に学ぶXaaS化の真髄 URL: /insights/25 title: Adobeのクラウド化に学ぶXaaS化の真髄 summary: "前回の記事 XaaSの類型とメリット で紹介した通り、XaaSはプロバイダーにもユーザーにもメリットがあり、もはやその潮流は不可逆的と捉えるのが自然でしょう。プロダクトを売り切りモデルで販売するのではなく、サービスとして提供することで、ユーザー価値の実現に重点を移していくことがXaaS化への第一歩です。" date: 2023-03-20 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/25/cover.jpeg" glossary: glossary/saas.mdx glossary/agile-development.mdx 前回の記事 XaaSの類型とメリット で紹介した通り、XaaSはプロバイダーにもユーザーにもメリットがあり、もはやその潮流は不可逆的と捉えるのが自然でしょう。プロダクトを売り切りモデルで販売するのではなく、サービスとして提供することで、ユーザー価値の実現に重点を移していくことがXaaS化への第一歩です。 XaaS化と似ているものとして、デジタル広告の課金体系が挙げられます。この20年かけて、バナー広告のようなCPI(Cost per Impression)を成果にしたものから、アプリのインストールや口座開設のような何かしらのアクションを成果にしたCPA(Cost per Action)広告へと進化していきました。さらに今ではMetaなど巨大メディア企業を中心にAIや機械学習を駆使し、oCPA(optimized CPA)広告などへと進化を遂げています。 デジタル広告と同様に、ソフトウェアを中心にユーザーが本質的に求めるものに重心を移し、ビジネストランスフォーメーションが起き始めています。本記事ではAdobeのクラウド化の事例を確認した上で、XaaS化していく上でのポイントを確認していきたいと思います。 Adobeのクラウド化 非常に短期間でXaaS化を実現し、XaaSとしての果実を勝ち取った典型的な事例として、Creative Cloudで著名なAdobeを取り上げます。 彼らがどのような課題設定の元、どのようにアプローチし、実現に向けて動き、対外的にコミュニケーションを行い、そして結果に至ったのか具体的に見ていきたいと思います。今回、Mckinsey SFのPrincipalとして従事されているKara Sprague氏によるAdobeのCFO Mark Garrett氏、VP of business operations and strategy Dan Cohen氏へのインタビュー記事 「Reborn in the cloud」 を要約する形で紹介します。 要約 Adobeの事例から学ぶXaaS化のポイント 従来のAdobeのように何かしらの製品を販売している場合、販売ユニット数が頭打ちとなり、価格改定か、新規モデルのローンチでしか売上を伸ばすことができない状況を経験した企業は少なくないのではないでしょうか。 昨今、デバイスの進化やニーズの多様化などにより、商品を提供する上で関係する市場の変化は激しくなるばかりです。この変化を捉え、クラウド化という舵取りを行った、Adobeの事例は非常に大きな学びを提供してくれています。Adobeの事例を元に、XaaS化を乗り切る上で、重要なポイントを5つに絞って紹介していきます。 1\. XaaS化は最上段のビジネストランスフォーメーション XaaS化は小手先で導入できるものではなく、最上段のビジネストランスフォーメーションと捉えるべきです。というのも、売り切りモデルで提供していた製品をサブスクリプションモデルに転換することは単純なビジネスモデルの変更に留まりません。プロダクト、エンジニアリング、ビジネスにおいて大幅な変更をもたらし、綿密なリスク評価と社内外へのコミュニケーションが不可欠となります。 XaaS化を推進する場合、体制面についても工夫が必要になります。新規事業のように、一部の専任チームを組んで、成功するものではなく、経営陣直下で関係のある部署から担当者を出し、強靭なPMOが推進することが必要だと思います。またクラウドを通して提供していく上で、大幅な変更が必要であり、社内異動だけではなく、様々なスキルを持つ人材を採用し、チーム内のスキルセットを拡張する必要があります。 2\. ユーザーと継続的な関係構築 何でもXaaS化すればよいというものではありません。まずは、売り切りモデルでは捉えきれていない真のユーザーニーズがあるのかを確認し、それをクラウドで提供する意味があるものか評価していくことになります。 この2点をクリアして初めてXaaS化する意味が出てきます。XaaS化した後も、売り切りモデルとは異なり、ユーザーと継続的な関係構築を行う必要があります。一度ユーザーニーズを捉えればよいわけではなく、ユーザー課題を絶えずキャッチアップし続け、ユーザー価値を言語化し、プロダクトを正解に近づけ続けていくことになります。 これを受けて、ユーザーとの接点を継続維持し、フィードバックを得て、プロダクトを強化していくことが競争力の源泉となるのです。例えば、ユーザーコミュニティなどユーザーとの接点を構築し、それを運営できる体制を敷く必要性がでるのです。 3\. クラウドによるプロダクト提供 ユーザーとの継続的な関係から導出されたニーズをできるだけタイムリーにクラウドで提供していくには、エンジニアリング観点でも大幅な改革が必要になります。 まず、エンドユーザーのPCにダウンロードしてもらい、ローカルで操作するのではなく、インターネットを経由し、ブラウザやアプリ上で操作してもらうことになります。これを実現するには、ユーザーの認証、利用を提供できるプロトコルが必要になりますし、セキュリティ、可用性、冗長化、DR(disaster recovery)対応などがプロバイダー側で担保することになります。 また、ユーザー価値の実現を絶えず追い求めることから開発手法もスクラムなどのアジャイル開発モデルを採用する必要があります。この手法により、開発案件ごとにプロダクトのアップデートを行い、ユーザーに追加機能や改修によるベネフィットを届けられるようになるのです。 4\. サブスクリプションへの適応 売り切りモデルからサブスクリプションモデルへの変更をビジネスの視点から見ると、収益構造の変化と捉えることができます。この変化に伴い、事業評価の中心は売上の推移ではなく、ARR(Annual Recurring Revenue)に移ります。ここ数年で、多くのSaaS企業がIPOを果たしましたが、まだARRを中心とした事業評価が普及し切ったわけではありません。そのため、大手企業がXaaS化していく際は事業内容だけでなく、どのように評価することが適切で、その評価基準を踏まえた上でどのような結果になっているのかも合わせて可視化し報告することが重要になると思います。 また、収益構造に併せて販売チャネルごとに、インセンティブ設計を見直すことになります。さらに、ユーザーの導入をサポートし、活用度をトラッキングし、それに応じた請求を行うことになります。サブスクリプションに併せたビジネスオペレーションの構築と運用も必要になるのです。 5\. リスク評価とコミュニケーション XaaS化にも当然リスクがあります。これまで売り切りモデルで提供していたものをサブスクリプションモデルで提供すると、移行期間中は売上、利益は確実に下がり、これらを受けて株価も下がる可能性が高いです。このような状況をどれぐらいのリードタイムで、どうすれば切り抜けるのか、それを実現できそうか、XaaS化の恩恵を受け、従来よりも売上、利益を向上させることができるのか、考え始めると確認したいことは山のように出てきます。これらを適切に評価するARRやUnit Economicsなどのメトリックスを準備し、透明性高く開示することが求められます。 この5点を精度高く、着実にクリアすることで初めてXaaS化を達成できるのです。そして、一時的に収益は下がりますが、売り切りモデルよりも幅広いプランを提供できることによって、より多くのユーザーセグメントに価値提供できます。例えば、エントリープランとしてフリーミアムを導入すると、ユーザーの裾野を圧倒的に広げることができます。さらに、シームレスなアップグレードの提案によりARPUの向上にもつながるのです。 決して楽なトランスフォーメーションではないですが、この過程を経ることで、サブスクリプションを通して、ユーザーとの継続的な関係構築ができ、予測可能な収益源の確保を実現するのです。 まとめ XaaSの普及は不可逆的です。これまで売り切りモデルを採用していた企業からXaaS化を捉えると、会社全体をひっくり返して、再構築するレベル感でトランスフォーメーションが必要になります。販売時点で売上を認識していたビジネスをサブスクリプションに転換する場合、短期的に間違いなく売上は下がります。もちろんAdobeのようにXaaS化を正しく捉え、トランスフォーメーションができれば、質的にビジネスを進化させることができるのです。 XaaS化はプロダクト、エンジニアリング、ビジネスそれぞれの観点で、しっかりユーザーに向き合い、価値あるサービスを提供し続けるコミットメントと実行力が求められるのです。 参考文献 Reborn in the cloud Accelerating agility with XaaS --- # 「覚悟を固めて取り組む」。新規事業立ち上げとプロダクト開発への挑戦 | 三菱商事株式会社 清田 岳人氏 URL: /insights/26 title: "「覚悟を固めて取り組む」。新規事業立ち上げとプロダクト開発への挑戦 | 三菱商事株式会社 清田 岳人氏" summary: "鉄鋼業界をはじめとした素材サプライチェーンの川中領域には、数多のバイヤーとサプライヤーの間に立ち、取引を柔軟に仲介する流通商社や問屋が多数存在します。そのような流通事業者特有の様々な取引バリエーションや、取引条件の変更・修正といったイレギュラーな業務にも対応したデジタルプロダクトとして、三菱商事株式会社(以下、「三菱商事」)により見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal」の提供が開始されました。" date: 2023-03-22 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/spotlight.mdx" cover: "/images/insights/26/00-2.jpg" 鉄鋼業界をはじめとした素材サプライチェーンの川中領域には、数多のバイヤーとサプライヤーの間に立ち、取引を柔軟に仲介する流通商社や問屋が多数存在します。そのような流通事業者特有の様々な取引バリエーションや、取引条件の変更・修正といったイレギュラーな業務にも対応したデジタルプロダクトとして、三菱商事株式会社(以下、「三菱商事」)により見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal」の提供が開始されました。 PaSS-Portalは、2023年1月、初期ユーザーである住商メタルワン鋼管株式会社(以下「MSTP」)での業務利用が開始され、現在はMSTPのサプライヤー(継手やバルブといった配管機材メーカーなど)へ共同利用のご依頼を進めています。 今回は、PaSS-Portalの開発を推進した三菱商事 清田岳人氏に、プロダクト開発を進める際に感じた苦労とその乗り越え方、MSTP各拠点への導入時の工夫や、構想からプロダクトリリースまで1年3ヶ月という早さで辿り着けた背景について、話をお聞きました。 三菱商事株式会社 総合素材グループ 素材ソリューション本部 産業素材DX部 課長 清田岳人氏 株式会社ROUTE06 プロフェッショナルサービス本部 プロダクトマネージャー 乾友輔 プロジェクト発足時は「勇気を持って、仲間と覚悟を固めた」 乾:清田さんが所属している総合素材グループは、自動車や建設インフラなどの業界向けに様々な素材の販売・取引、事業開発や事業投資を行っていらっしゃいますが、今回、流通事業者の取引における見積・受発注業務に着目してサービスを企画された背景を教えてください。 清田:総合素材グループの中でも、私の所属する産業素材DXタスクフォースは主に流通面での効率化や品質向上に資するデジタルサービスの開発・提供を行っている組織です。2021年8月に「受発注業務や取引書類のデジタル化」というテーマにアサインされたことをきっかけに、その課題について調査を始めました。 その中で、MSTPの配管機材本部に代表されるような、数多のバイヤーとサプライヤーの間に立ち、日々膨大な量の見積対応や受発注を行う「取引仲介業務」では、エクセルや手書きの作業、あるいは印刷した紙をクリアファイルで管理するといった非常に煩雑な業務が発生していることが分かり、ここは何とかデジタル化することで皆さんのためにならないかと考えたのがきっかけです。 乾:その発見から仮説を立て、実際にどのようなソリューションを仕立てるか考える中で、清田さんが悩まれたり、大変だと感じたりしたのはどんなことでしょうか。また、それをどのように乗り越えられましたか。 清田:当初苦労したのは、私が課題だと感じ取ったことを、その業務に向かい合っている皆さんが必ずしも課題と感じているわけではないという状況でした。そういった中で私が気をつけたことは、初期ユーザーとして開発プロジェクトに参画いただきたかったMSTPの皆さんには、必ずご自身の意思で参画することを決断していただくということです。デジタルプロダクトの開発は私にとっても初めてでしたし、ユーザーのニーズを徹底的に深堀してベストなソリューションを検討するためには、開発段階から初期ユーザーを巻き込むべきだと感じており、その深堀や検討に本気で取り組んでくれる仲間が必要だと考えていました。 乾:ご自身の意思で決断していただくのは簡単なことではなかったのではと思うのですが、どのように進めていかれたのでしょうか。 清田:こればかりは地道に丁寧に取り組んでいくしかないと思い、2021年10月にMSTPの配管機材本部の皆さんに初期提案に行って以来、一方的な対応とならないように意識し、双方向のコミュニケーションを丁寧に重ねてきました。こちらが「やりたいやりたい」と言うばかりではなく、そもそも普段から何に課題を感じているかであったり、開発ありきではなく既存のプロダクトを一緒に調べてみませんかという提案であったり、ある時は外部講師を招いてDXセミナーを行ったりしながら、彼らから、一緒に何かを改善しようと思っている仲間だと思ってもらえるように、とにかく一緒に考えることを心がけていました。 初期提案から4ヶ月後の2022年1月末、MSTP側から正式に「提案してもらった通り、見積・受発注をテーマとしたデジタルプロダクト開発に取り組みたい。参画を希望する10名のメンバーが出揃った」と連絡を受けたときは、本当に嬉しかったことをよく覚えています。契約内示させていただいていたROUTE06さんにも、すぐに「お待たせしました」と連絡しました。 乾:たしかに、2021年の秋頃に清田さんからROUTE06にお声掛けいただいた当初は、皆さんが一丸となって取り組むかどうか、伸るか反るかだったことはよく覚えておりまして、本当にそこからスタートしたという形でしたね。 清田:そうですね。でも、その立ち上がりの部分をきちんとやったからこそ今があるというか。「誰が誰の意思でやりたいんだっけ」ということが明確でないまま適当に走り出してしまうのではなく、勇気を持って皆の覚悟を固めるタイミングを作ったことは、今考えると悪くなかったのではないかと思っています。 プロダクトを磨き込むために、小さな声にも耳を傾ける 乾:PaSS-Portalは非常に多くの関係者を巻き込んだプロジェクトですが、ステークホルダー全員がバリューを発揮できるよう心がけたことはありますか。 清田: 二つありまして、一つはとにかくポジティブな雰囲気を作ることです。集まってくれた10名のMSTPのプロジェクトメンバーは「成果が出なかったらどうしよう」という不安を抱えていた方もいると思いますし、日々の業務の傍ら、業務フローの棚卸や工数の調査など地道な作業にとにかく一生懸命取り組んでくださったので、かなりの負荷になっていたと思います。そういった心身両方の負担に対して、「皆さんで励まし合いながら頑張りましょう!私自身も不安は尽きないですが、この不安を乗り越える経験を楽しむくらいの気持ちで頑張っていきましょう!」とモチベートすることに努めました。 二つ目は、少し硬い話ですが、関係する各社の『立場』を明確化することです。例えばMSTPは、「自社の見積・受発注業務の効率化や品質向上を最大化させたい」という立場である一方、弊社は、まずは初期ユーザーであるMSTPさんにとって最良のプロダクトに仕上げたいと思うものの、後々のユーザー拡大を目指す上では、「過度に個別具体な機能は具備させられない」という立場でした。 こういった「立場の違い」は、会社の違いのみならず、役職や、担当取引の性質の違いによるものなど数多くあり、それに起因して要件定義などの議論が白熱することもありました。それでも、プロジェクトメンバーが、お互いの立場の違いを尊重する姿勢を持ちながら、出来る限り腹落ちするまで議論することを心がけたので、最終的には関係者が納得の行くプロダクト設計ができたと思っています。 乾: 「どういう機能があるべきか」という要件定義については、議論が白熱して90分間の週次定例の時間内に収まらずということも多々ありましたね。想定利用ユーザーを巻き込みながらプロダクト設計を進めていく上で意識されていたことはありますか。 清田: 精神論ですけど、とにかくどんな小さい声でも拾うことがポイントだと思っています。 MSTPのプロジェクトメンバーの中でも、自身が課題に感じていることやその解決策となる機能を言葉にして伝えることが得意な方とそうでない方がいます。得意な方の意見に偏ったプロダクト設計になってしまうと、微妙な業務手順の違いを有するユーザーが活用できるものにはなりません。 普段は言葉数の少ないメンバーから、「そう設計すると、私の担当取引の場合、上手く回らない気がする...」と勇気を持って声をあげてくれたことに対し、時には「話がまとまりかけていたのに...」と実は思ってしまったこともありましたが、そういった小さな声を拾い向き合うように努めたことから、10名のプロジェクトメンバーが誰一人離脱せず、全員でサービスリリースを迎えられたのではないかと思っています。 乾:私は2022年2月から業務フローを開いたり、具体の要件を決めたりすることを一緒にやらせていただきましたが、プロジェクトメンバーの皆さんのマインドセットの変化が手に取るように分かるというか、清田さんが大事にされていた、一人ひとりの声に向き合ってプロダクトを磨き込んでいくということが現れているんだなというふうに思いました。 清田:彼らとしても自分の業務はどんなフローで回っていて、隣の人との違いを意識してみたことはなかったと言っていたので、開発の過程の中で得たものは大きかったのではないかと思います。 乾:プロジェクトメンバーの皆さんの多大な貢献がある一方、PaSS-Portalの導入はMSTP社全体の話になると思うのですが、PaSS-Portalを導入するか否か開発していくか否かという点について、経営層への働きかけはどのように行ったのでしょうか。 清田: ここは本当に難しい課題で、現場業務のデジタル化というテーマなので、それをどう実感して理解していただくのか、言葉の選び方から苦労するところはありました。ただ、初年度から配管機材本部全体の営業23チーム、約200名で利用するとご決断いただけたのは、私が何か特別なことをしたというよりも、プロジェクトメンバー10名の想いや新しい挑戦をしたいという姿勢が、幹部の皆さんを突き動かしたのだと思っています。 乾:実際に導入するにあたって、どのような形で進められましたか。 清田: プロジェクトメンバーと一緒に全チームを訪問してお話をさせていただきました。心がけたのは、すべてを隠さず話すことですね。考えすぎかもしれませんが、「本社の一部の人たちが盛り上がって勝手に決めたことでしょ」と誤解されないように、「皆さんの仲間が代表して取り組んでいる、皆さんのプロジェクトである」ということを強調して、知りたいことや疑問に思うことにはすべて答えるように努めました。現在MSTPの利用開始から3ヶ月弱経ち、各拠点で積極的にPaSS-Portalをご活用いただいているという状況を見て大変嬉しく思っています。 1年3ヶ月でのリリース。秘訣は「フェーズに区切ってテーマとゴールを明確化」すること 乾:清田さんは、PaSS-Portalにおけるプロダクトオーナーの役割を担っていましたが、顧客体験やユーザーインターフェースについて、こだわった部分はありますか。 清田:プロダクトの価値はなにか、他のサービスとの違いはどこか、ターゲットは誰でどんな課題を解消するのか、ということは乾さんとものすごく話し合いましたね。その中で徐々に見えてきたのは、見積、受発注、及び納品・請求といった「取引業務の始点から終点まで」をすべて網羅するという部分です。 僕自身は、「見積業務に限定して小さく始めてみよう」と考えていたのですが、プロジェクトメンバーの強い希望で「見積、受発注、納品・請求+チャット」という機能を具備したプロダクトを設計することになりました。これは非常に大きな決断で膨大な設計工数をもたらしましたが、今考えてみると、この顧客体験を提供するプロダクトをMVP(Minimum Viable Product)から搭載できたということは、PaSS-Portalにとって非常に大きな魅力の一つになったのではないかと思っています。 乾:たしかに、MVPはよく最小単位で価値が提供できるものと言われていますけど、今回は取引の始点から終点まで一気通貫でできることが最もミニマムな提供価値でしたね。MVPとしては大きめな単位で開発することになりましたが、サービス構想からリリースまで1年3ヶ月で実現できた要因は何だと思いますか。 清田:一つは、プロジェクトを「フェーズ」に区切ってテーマとゴールを設定し、ダラダラと長引かせないことを関係者の共通認識としたことでしょうか。企画構想・チーム作りをテーマとした「フェーズ0」が2021年10月~2022年1月の4か月間、構想具体化・効果試算をテーマとした「フェーズ1」が2022年2月~4月の3か月間、関係者間での開発可否の合意・決断を行った「フェーズ1.5」が同5月の1か月間といった具合に、期間とゴールを明確化しました。 もう一つは、「2023年1月より業務利用を開始したい」という要望にROUTE06さんが全力で応えてくれたことです。取引一連のすべての機能を具備したプロダクトを、テストも含め7か月で開発完了してくれたスピード感も大いに寄与しています。また、乾さんはプロジェクトメンバーから挙がった機能要求を“丸受け”するのではなく、要求の本質や影響度を深掘りした上で、複数のオプションから最適な実装方法を提案してくれました。それぞれのオプションの良し悪しや実装難易度についても丁寧に説明してくれたので、我々としても判断し易く、スピーディなプロダクト設計と開発に繋がった大きな要因であると考えています。 乾:プロジェクトメンバーや、実際に業務されている方から要求が上がってきたときに、その背景にあるものだったり、根本的に解決する方法、あるいは運用でカバーしたほうが良いものだったり、そういった議論は皆さんと一緒にさせていただいたなと思います。 清田:とにかくその積み重ねでしたよね。 乾:毎週の定例の中で、論点を洗い出しておいて、今回はこの機能、この要求についてどうしますかと。 そこで議論し尽くしたおかげで、プロジェクトメンバーそれぞれがプロダクトを自分の言葉で語れたり、清田さんご自身もなぜこの機能になっているのか深く理解できるので、妥協せずに議論して良かったなと思いますね。 サプライヤー・流通事業者・バイヤー、三位一体のプラットフォームへ 乾:プロダクトがリリースされ、現在は実運用で検証しているという段階ですが、ユーザーからのフィードバックを受けてどのような手応えを感じていますか。 清田:MSTPの全国各拠点で積極的に業務利用してくださっていて、まずは一安心しています。ユーザーの皆さんから日々機能改善要求を受け取っており、その対応に奔走しておりますが、そういった反応が上がってくるということだけで、PaSS-Portalを使ってくださっている、利便性が上がることを期待してくださっている、といったことの証左かなと思って非常にありがたく感じています。 少し予想外な反応として、「案件進捗や経緯の社内共有・蓄積に大きなメリットを感じる」という声を多く受けていることです。元々、配管機材取引は専門性の高い領域であり、「自分自身で得た経験を積み重ねてこそ一人前」という“職人気質”な方が多いのかなと勝手に想像してしまっていた中、情報共有による組織力強化や役割分担の柔軟化に価値を見出している方々が多数いらっしゃることを知り、勝手な思い込みを省みると共に手応えを感じています。 乾:今後さらにプロダクトを磨き込んでいく中で、どのような構想をお持ちでしょうか。 清田:MSTPでの利用価値向上においては、MSTPのサプライヤー様にもPaSS-Portalをご利用頂くことが目下の課題です。構想具体化に着手して以来、継手やバルブといった配管機材のサプライヤー様にもヒアリングさせていただいており、前向きな声や応援の声も多く頂戴しています。煩雑な手作業や印刷紙での管理といった課題は、MSTPのような流通事業者のみならずサプライヤー様側でも発生していると伺っており、「お互いにとって便利になる使い方」を各社様と共に見定めて、相互利用を開始するお手伝いができればと思っています。 また、MSTP同様に見積対応や受発注のデジタル化を志向されているポテンシャルユーザーの方々に広くPaSS-Portalを知って頂きご利用を検討いただきたいと思っています。もし、MSTPと同じサプライヤー様と取引を行っているようであれば、サプライヤー様側でも、MSTPから依頼されている取引案件と他ユーザーから依頼されている取引案件が案件一覧上に並びますので、相互にメリットが出るものと思います。業界や取扱商品を問わず、多くの流通事業者とサプライヤーが「PaSS-Portal」上で繋がる世界が構築されることを目指しています。 機能拡張については、現行の流通事業者とサプライヤーとの連携のみならず、バイヤー、つまり流通事業者にとってのお客様とも連携したプラットフォームへの進化を構想しています。バイヤー・流通事業者・サプライヤーが三位一体となり、ワンストップで取引を快適に推進できる場となるためには、どのような機能を具備すべきか、将来構想として検討を開始しています。 新規事業に取り組む以上は、”初心者”であることを自覚する 乾:大手企業が新規事業・新規サービスとしてプロダクトを立ち上げ、磨き込んでいく上で大事な点は何だとお考えでしょうか。 清田:企業規模というよりも、当たり前のことですが「徹底的にポテンシャルユーザーの声に耳を傾ける」ことに尽きるのかなと考えています。 弊社も長い歴史の中で数々の新規事業を立ち上げてきていますが、新規事業・新規サービスに取り組む以上、その領域では常に“初心者”であり、自分たちが作りたいものを作ってズバリ使って頂ける訳ではないことを自覚しなければならないと私は考えています。 お金を払ってでも使いたいと思って頂けるものを作ることにまずは集中すべきで、そのために最善最短の方法は「使って頂きたいと思う方々に話を聞く」ということだと思います。まずはそれを揺るがない軸として据えた上で、プラスアルファのアイディアを持って行って、「こんな機能もどうでしょう」と提案し、議論を重ねると、ポテンシャルユーザーの想定を超えるような価値の提供につながるのではないかと考えています。どんな新規サービスも、またB2CでもB2Bでも、結局はそのサービスを使うのは特定の個人であると思います。使ってもらいたい人たちの顔や行動や考え方をどれだけクリアに想像してサービス設計に落とし込めるかが大事だと感じています。 乾:清田さんは、誰に対してどんなサービスを提供するのかという価値を突き詰めること、また、使ってほしい人に実際話を聞きに行き、関係者と一緒の方向を向いて取り組んでいくことを徹底して意識されていたと私自身も感じています。 撮影:大竹 宏明 --- # 日産、資生堂を改革した「プロ経営者」からの学びを、若きリーダーたちに伝えたい|亀山満氏 URL: /insights/27 title: "日産、資生堂を改革した「プロ経営者」からの学びを、若きリーダーたちに伝えたい|亀山満氏" summary: "カルロス・ゴーン氏率いる変革期の日産自動車(以下、日産)でグローバルプロジェクトを手がけ、プロ経営者として知られる魚谷雅彦氏とともに資生堂をスピーディな意思決定ができるグローバル企業へと変革。そしてコロナの渦中で歴史ある製造業大手、三菱マテリアルのDXを推進——。日本を代表するエンタープライズ企業において、数々の本質的な改革をIT面から支えてきたのが、グロービングのシニアエグゼクティブアドバイザーでコネポジの代表を務める亀山満氏です。" date: 2023-03-24 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/spotlight.mdx" cover: "/images/insights/27/00.jpg" カルロス・ゴーン氏率いる変革期の日産自動車(以下、日産)でグローバルプロジェクトを手がけ、プロ経営者として知られる魚谷雅彦氏とともに資生堂をスピーディな意思決定ができるグローバル企業へと変革。そしてコロナの渦中で歴史ある製造業大手、三菱マテリアルのDXを推進——。日本を代表するエンタープライズ企業において、数々の本質的な改革をIT面から支えてきたのが、グロービングのシニアエグゼクティブアドバイザーでコネポジの代表を務める亀山満氏です。 亀山氏が変革を推進する上で大事にしているのは「企業や組織のありたい姿と、それを実現するために変えるべき価値軸を明快に示す」「覚悟を持って本気でやり切る」「仲間を巻き込んで一丸となって戦う」「チャレンジを応援し、失敗を責めない」ということ。亀山氏がこのような価値観を大事にするようになった背景には、どんなプロジェクト経験があり、どのようなプロ経営者からの学びがあったのでしょうか。話をお聞きしました。 改革者としてのコアが形成された壮絶なプロジェクト経験 ──亀山さんのインタビュー記事には、「覚悟」「本気」という言葉がよく出てきます。これはまさに改革者に欠かせない心構えだと思うのですが、亀山さんが最初に“腹をくくる”経験をしたのは、どのようなプロジェクトだったのですか。 最初に覚悟を試されたのは、日産時代のテレマティクスカープロジェクトですね。今では車とITの連携はあたりまえですが、私がこのプロジェクトを任された20数年前は、まだこの分野は黎明期で、サービスをイメージすることすら難しい時代でした。そんな時に、車とITを連携するプロジェクトを任されたのです。当時は自動車業界が、新たな時代に入ろうとする幕開けの時期で、さまざまなアライアンスが生まれつつありました。その一つが、米ゼネラルモーターズ(以下GM)が主導するプロジェクト。同社はオンスターという車載テレマティクスサービスを立ち上げ、そこにトヨタが参画することが決まっていました。 同じ時期、米自動車大手のフォードが同様のサービスを始めることを発表し、日産はフォード陣営と組んで車のIT化を進めることになりました。私はこのグローバルプロジェクトのリーダーに任命されたのです。このプロジェクトは、通信を受信する装置や表示のための装置を車に装備し、フォードが開発した通信センターとコミュニケーションすることで、ドライブに役立つ情報や街の情報を車内で取得できるようにする、というもの。フォードが中心となり、ルノーや日産をはじめ、さまざまな自動車会社を巻き込んだプロジェクトでした。 その中でも日産は、世界初のサービス実装会社になることを目指して、車の開発を進めていました。研究部隊や開発部隊、営業部隊と協力しながら、「まだこの世に存在しない新しいサービスで世の中を面白くしよう」という思いを胸に、さまざまな苦労を乗り切って、ようやく2002年の8月にテレマティクス対応の車を米国で発売する、というところにこぎつけたのです。 しかし、2002年に入るとフォードの経営が悪化しトップが交代し、本業に注力するという方針を打ち出したのです。この時、嫌な予感がしたのですが、6月にフォードはテレマティクスサービスの会社を清算することを決定したんです。日産のテレマティクスカーは、フォードの仕組みを前提に開発していたので、このままでは苦労して開発してきた車載機器が役に立たなくなってしまう。当時、COOだったカルロス・ゴーン氏に状況を説明したところ、「何とかしろ」というわけです。「(ライバル陣営の)GMに頭を下げて、サービスを使わせてもらえ。今日、話してこい」と、無茶なことを言うんですよね(笑)。 「ライバルだった会社に頭を下げてもすぐに対応なんて、できるわけがない。これはもう、ヤバいぞ」と思いながらも、このままだと数百億円の投資が水の泡になるし、何より仲間たちと必死の思いで開発した装置がムダになってしまう。この時は、本当に追い詰められて八方塞がりの状況でした。でも、そんな中で悲壮感に押しつぶされずにすんだのは、プロジェクトの仲間たちのおかげでした。この状況を自分の力だけで変えることなんてできるわけがない。いくら気合いを入れたところで、一人で提案なんてできないですよね。そうしたらもう、周りを巻き込むしかないわけです。 開発部隊や研究所、営業部門の人たち、外部の有識者、パートナー企業の人たち……彼らを巻き込んで一緒にやるしかない、と思ったんです。「どうしようもなく厳しい状況であることはわかっている。でも、やれることは何でもやるしかない」と覚悟を決めたのは、この時でした。それからはチーム一丸となって打開策を考えぬき、私は飛行機を乗り継いで交渉から交渉へ——という戦いの日々が続いたのです。 しかし、覚悟を持って交渉を続けたものの、最終的にはうまくいかなくて、グローバル大手とのプロジェクトは打ち切りになってしまいました。こうしてプロジェクトは失敗に終わったわけですが、この経験からは、後の仕事人としての指針になることをいろいろと学んだと思っています。一つは、「チャレンジの結果、失敗したことを責めず、そこから学ぶ」ということ。 実はこのプロジェクトが終わった時、当時、上司だったルノー出身の副社長が、私にこう言ったんです。「私たちはここで立ち止まってはいけない。これからの時代、車には必ずITが搭載されていくはずだから、私たちがやったことは決して間違いじゃない。多くの知見を得たし、チームメンバーは残っている。他のパートナーを見つけて、この取り組みを進めていこう」外野からはプロジェクトの失敗を責められることもありましたが、直属の上司はプロジェクトの本質を理解してくれていたんですね。そして「日産のこれからのためにがんばりましょう」と言ってくれた。 昨今ではよく、DXの文脈の中で「失敗から学ぶことが大事」「チャレンジは大事」という言葉を耳にしますが、それが会社のメカニズムに組み込まれているかというと、必ずしもそうではないこともしばしばです。でも、当時の日産の副社長は違った。彼の言葉がなければ、私は失敗から立ち直れなかったかもしれません。 この出来事をきっかけに、私も部下の失敗を責めず、そこから共に学ぼうと言えるリーダーになろう、と決意しました。この出来事は、ルノーとの資本提携によって日産の文化が変わり始めたことの象徴だったとも思っています。もう1つは、「覚悟を決め、パッションを持って本気でプロジェクトをやり切ることの大切さ」です。課長という肩書きのまま、グローバルプロジェクトの難しい局面での交渉をやり切ったことは、失敗に終わったとはいえ、自分の中に蓄積されたものはとても大きく、達成感がありました。このプロジェクトを経験してからは困難なプロジェクトでも、恐れず、立ち向かうことができるようになったのです。 難しいと思うプロジェクトでも、自分がやりたいと思ったら、その瞬間に「やります!」と宣言する。そこで覚悟を決めて、人を巻き込む。最初から誰もが協力してくれるわけではないですが、どう説明したら興味を持ってもらえるのかも、数々のプロジェクトを経験するうちに身についてきましたね。覚悟を決め、本気で動かなければ、困難な局面で周りを巻き込むことなどできません。進む道を明快に示し、自ら覚悟と情熱を持ってプロジェクトを進める。失敗を責めず、そこから学び、成長する——という、私が仕事を進める上で大事にしていることは、このプロジェクトで形づくられたように思います。 ──企業の文化が大きく変わる瞬間に立ち会ったことが、その後の亀山さんの仕事に対する考え方を大きく変えたのでしょうか。 そう思いますね。ルノーと資本提携をする前の日産自動車は、歴史ある日本の会社にありがちな、いわゆるヒエラルキー型の組織構造でした。例えば当時、課長だった私が何かを提案する際には、まず部長にお伺いを立てて、その次に担当取締役に上申し、それが通って経営会議に提案できたとしても、事前に役員の方々に会ってネゴシエーションして——という込み入ったプロセスが必要で、意思決定に長い時間がかかっていました。 これがルノーのマネジメントになったとたん、ガラリとかわったのです。一言でいうと、意思決定がロジカルでスピーディーになったんですね。「何のためにやるのか、どんな効果があるのか、実現に向けて何をするのか」——が明確であれば、課長だろうが誰だろうが、そのプロジェクトを一番理解している人が、提案するのが当然、という考え方なんです。 経営陣もロジックが明確で、会社の成長に貢献する提案であれば時間をとって話を聞く、という考え方で一貫していました。この時代に日産の組織文化は大きく変わり、意思決定のスピードがぐんと上がりましたね。それまで長い時間をかけて上申していたことが、電子起案したら即座にゴーンにメールが飛び、「ゴーンがやると決めた案件」については1分後には決裁される、というスピーディーな意思決定に変わったことには本当に驚きました。 こうした改革が当時の日産のV字改革につながったことは、みなさんもご存知の通りです。 変革を起こす経営者から教えられたこと ──亀山さんは、ビジネスの世界で改革者として知られるプロ経営者の方々とともに改革を推進してきました。彼らからどんなことを学んだのでしょう。 ルノー出身で日産のCOOになったゴーン氏の仕事ぶりには驚くことが多かったですね。今、思い返しても徹頭徹尾ロジカルな人でした。まず、会議には1分たりとも遅れない。30秒前には必ず席に着くんです。なぜかというと、仮に自分が会議に1分遅れた場合、会議に参加している人の時間をどれだけムダにするのか、それが会社にどれだけの損失を与えるのか、ということを常に計算しているんです。 例えば部長クラスが20人参加する会議なら、人件費と人数を計算すると、1分待たせたら10数万円の損失になる——と考えるわけです。私が知る限りでゴーン氏が会議に遅れたのは1度だけで、それも前にいた会議室の時計が遅れていたためでした。2分遅れて会議室に入ってくるなり、彼はまず頭を下げて「みんなの時間を無駄にして本当に申し訳ない」と謝罪したんです。 会議自体も、とてもムダがないものでした。最初に「今日の会議は何を決める場なのか」を確認して、会議が終わるまでには絶対に決めるんですね。決めるべきことが明確でなければ指摘するし、決めるための材料がそろっていなければ「明日決めるから、資料をそろえて出直してこい」と言うんです。ここ10年くらいで、このような会議の進め方が当たり前になってきましたが、当時はこんなロジカルな進行をする会議は見たことがなかったので、とても驚いたのを覚えています。 ゴーン氏は何をするにも、「何のためにやるのか」「誰のためにやるのか」「どんな価値を生むのか」ということを常に考え抜いていました。こうした考え方に触れているうちに、私も「課長だろうが部長だろうが関係ない、やらなければならないことに対しては、リソースとタスクを明快にしてやりきるしかないんだ」と考えるようになりましたね。 ──亀山さんは資生堂時代に、数々の企業改革を手がけたプロ経営者、魚谷雅彦氏とともに仕事をされています。どんな影響をうけましたか?。 魚谷氏の改革手法からも、学ぶことがたくさんありました。魚谷氏は、1872年創業の老舗化粧品メーカーである資生堂を「グローバルで成長できる企業にする」「100年先まで続く企業にする」というミッションを掲げて社長に就任しました。これは、企業としてのコアを守りながら、変えるべきところは変えていく——という仕事ですから、トップの手腕が問われます。 結論から言えば、魚谷氏が社長に就任してから4〜5年で、ペーパーレスが進み、英語が公用語になり、挑戦を恐れず失敗から学んでまた挑戦する、という文化が浸透しました。これは魚谷氏が、社員に対して「これからの資生堂のありたい姿」を明快に示し、常に「それを実現するためには何を守り、何を変えていく必要があるのか」を丁寧に説き、自身も実践したことが大きいと思うんです。 魚谷氏が来る前の資生堂は、チャレンジしようという文化はあるものの、できるだけ失敗しないよう、関係者の間でコンセンサスをとって着実に丁寧にプロジェクトを進めていました。もちろん、準備を重ねて丁寧に進めるのはいいことなのですが、どうしてもスピード感に欠けてしまうんですね。そこに対して魚谷氏は、CEOに就任してすぐ「まず、やってみよう、すぐ動こう」という方針を打ち出しました。紙で配っていた経営会議の資料は、CEOに就任した直後に「今日から紙はいりません。数枚のPowerPointにしてください」と言い、社内メールも「“様”はいりません、“さん”でいいです」というように、自分が実践したいマネジメントの姿を明確に示し、フラットでスピーディーな意思決定ができる組織に変えるための取り組みをスタートさせたのです。 2014年には「動け、資生堂。」をスローガンとする中長期戦略「VISION 2020」を発表するとともに、それを実現するために「トライ&エラー&トライ」の精神で行こうと社員に呼びかけました。「失敗を恐るな。挑戦して、失敗して、また挑戦することこそが大事なんだ」というわけです。 魚谷氏がすごいのは、自らこの精神で動くとともに、リーダー層の背中を押して、リーダー・実務層にどんどん挑戦させるところです。VISION 2020では、2020年に売り上げ1兆円超、営業利益1000億円超を実現することを目指しており、今まで通りのやり方ではとうてい目標を達成できない。目標達成の鍵となる「資生堂のグローバル化」、「個々人が自律的に動く風土」を成し遂げるために、変えるべき文化は変え、従業員、個々人が持っているポテンシャルを上げ、徹底引き出そうとする「People First」の取り組みなど、なんとしてでも目指す姿に到達しようとするわけです。それをやりきるための本気度が桁外れで、決して諦めない。 何かうまくいかない施策があったとしても、すぐに報告させ、一緒に課題を整理し、別のロジックで解決できると思ったらすぐ、関係者を集めて徹底的に議論して、今日明日という時間軸で対応策を決めていく——というように、とにかく動きが徹底し、意思決定が早いんです。なぜ、資生堂は変わらなければならないのか、を事実や生の声で明快に示し、社員が新たな文化を受け入れるよう背中を押し、何が何でも資生堂のグローバル化をやりきる——という魚谷氏の志には圧倒されました。 ゴーン氏と魚谷氏に共通しているのは「企業が価値軸を変えなければならない時に、その示し方が明快である」というところだと思っています。企業が成長し続けるためには、組織構造やビジネスモデルを変えなければならない時期があり、その時には「仕事をする上で大事にする価値観の軸」も大きく変わります。その価値軸の変化を、企業のありたい姿と現状を比較することでわかりやすく説明し、社員の背中を押し、組織に浸透させ、新しい文化を根付かせる——という一連のプロセスをトップダウンでやりきるところが両氏に共通するものであり、変革リーダーに欠かせない資質なのだと思います。 歴史ある会社を変えるために重要なこと ──日産と資生堂は、外から入った外資系出身の経営トップが強いリーダーシップで企業を変えていく——という形の改革ですが、亀山さんがCDOとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進した三菱マテリアルは、違う形の改革だったとお聞きしています。 そうですね。日産と資生堂は、いわば「外圧で変える」という改革スタイルでしたが、三菱マテリアルはプロパーがほとんどという役員構成のまま「中から変える」というスタイルでした。その意味では、たしかにこれまでとは違う難しさがありましたね。 ──DXプロジェクトを進める中で、これまでとは異なるどのような難しさがあったのでしょう。 経営トップや役員構成はそのままに、新たな文化を浸透させていくのは、外から来た社長がトップダウンで変革するのと比べて難しい面があります。三菱マテリアルは1871年創業という歴史ある会社ですが、2017年に発覚した品質問題をきっかけに企業改革を推進していました。DXもその一つで、私はこの「MMDX」と銘打ったプロジェクトの本部長として2020年2月に三菱マテリアルに入社し、2020年4月にDX推進本部を立ち上げたのです。 このプロジェクトは、「顧客接点強化」「プロセス連携」「経営のスピードアップ」などの視点から取り組むべきテーマを決め、6年間で400億円超を投じるという大掛かりなものでした。三菱マテリアルが長い歴史の中で培ってきたコアバリューを守りながら、これからの成長のために変えるべきところは変えていこう——という方針です。しかし、このプロジェクトを提案している最中に起こったのがコロナ禍だったのです。稼ぎ頭であるプロダクト型事業部門の主要顧客が、コロナによる影響をもろに受けた自動車業界と航空会社業界だったことから、三菱マテリアルも事業の先行きが厳しくなったんですね。 ちょうどMMDXの提案を固めている時期だったのですが、社内は次第に「このままだと決算は厳しいものになるから、7月から予算は徹底削減して、止められるものは止めないと……」という空気になってきたんです。歴史ある会社ですから、そこはとても慎重なんですね。一方で私たちDXチームは、毎週のように経営会議でDXの推進について説明していたのですが、「まだ着手していないなら止めた方がいいのでは」「400億円かけてまでやらなくても大丈夫なのでは」という声が囁かれるようになってきたんです。 DXは、これまでの企業文化を否定するようなことすらある取り組みですから、経営陣とリーダー層が同じ志のもと、覚悟を持って本気で推進しなければ変わることはできません。しかも、失敗すればせっかくの投資がムダになってしまいます。コロナのような非常事態を前に慎重になる気持ちは、とてもよくわかるのですが、だからこそ、次に同じようなことが起こっても成長し続けることができる強い組織を今、つくらなければならないわけです。まさに「価値軸を変える時」であり、それは役員の協力なしには実現できません。どうしたら全ての関係者にとって、DXが自分ごとになるのか——。ゴーン氏や魚谷氏がトップダウンでやってきたことを、今度は自分がCDOとしてやることになったんですね。 これは、歴史ある日本企業がDXで変わることのメリットを知りつくしている私にこそできる改革ですから、やり切るしかない。ものづくりに長けた一流企業が、フラットでスピード感のある組織に変わることで、どれだけ成長できるのかを、何としても知ってほしい——。ハードルは高いですが、覚悟を決めて取り組みました。なぜ三菱マテリアルにDXが必要なのかを役員たちに理解してもらうために行ったのは、ほぼ毎週の執行役会での論議と役員合宿でした。理解を深めると共に、腹を割って議論して、全員の合意のもとにDXを自分事化してもらおうという作戦です。 参加する役員全員が「DXをやりたい、やらなければならない」と思うようなシナリオを1週間かけて作成し、合宿の当日は、そのシナリオをベースに競合他社の取り組みを説明したり、他社の役員にDXについて「うちだってこれくらい取り組んでいる」と話してもらったり——という形で進めました。その日の夕方には、参加した全ての役員から「DXを推進しよう」ということで合意を得られたのはうれしかったですね。三菱マテリアルの目指す未来のために、MMDXがどのような役割を果たすのかを、明快に示すことができたと実感した。ようやく、DXのスタート地点に立てたのです。 これからのリーダーに伝えたいこと ──日本企業の改革がなかなか進まないといわれていますが、亀山さんはその理由をどのようにお考えですか。また、日本企業が改革を起こす上で欠かせないのは何だと思いますか。 改革を起こす上でのポイントは「価値軸」と「人材」だと思っています。経営者は「会社をこんなふうに変えていくんだ」「こんな新しい働き方を取り入れていくんだ」という価値軸を明快に示すことが重要です。そして、それを実行するために覚悟を示し、やりぬくことができるリーダーを増やすことが大事だと思っています。 日本企業は今でも、ヒエラルキー型の組織が少なくありませんが、その色が強くなりすぎると、部下が自身の持つ能力を存分に発揮できません。これは会社にとって大きな損失です。改革を推進するリーダーは、ただ指示を出して従わせるのではなく、部下の「こうしてみたい」「こんなことにトライしたい」という意欲を引き出し、それを企業の目指すビジョンといかに一致させていくかが大事だと思うのです。 このようにして部下の内発的動機を引き出すことができれば、自ら考え、行動する社員が増えて組織が元気になり、それがひいては会社の活性化につながるはずです。 企業の目指す姿を理解し、自分の部署がどのような形でそれに貢献できるのかを自分の頭で考えぬき、それをわかりやすい言葉でメンバーに伝え、フィードバックを取り入れながらチーム一丸となって前に進んでいく——。そんなリーダーが今、必要とされているのではないでしょうか。あとは経営トップが「ありたい姿」と、それを実現するための「価値軸」をしっかり定めていれば、会社はきっと目指す方向に変わっていくはずです。 私は、日本企業はもっともっと成長できると思っているんです。若きリーダーたちには、企業の持つ可能性はもちろん、人の可能性を本気でプラスに変えていってほしいですね。 執筆:後藤祥子 撮影:西田香織 --- # プロダクトを進化させる環境:ソフト面 URL: /insights/28 title: プロダクトを進化させる環境:ソフト面 summary: "事業の根幹をなすプロダクト、その運営を推進するプロダクト開発人材は、どのような環境を求めているのでしょうか。" date: 2023-04-06 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/28/00.jpeg" 事業の根幹をなすプロダクト、その運営を推進するプロダクト開発人材は、どのような環境を求めているのでしょうか。『マッキンゼー 新規事業成功の原則 Leap for growth』 には、McKinseyが「とある大企業の新規事業のためにCTO人材のヘッドハントを支援したときに、その企業本体に入社するのが前提なら興味がないと、面接前に断られてしまうケースが、実に半数以上を占めた」とあります。 そして、「そうした人材にとって、伝統ある企業に入って役員や部長等の肩書で活動するよりも、新会社として切り出され、独立した事業体のマネジメントの一員として腕を振るう環境の方が魅力的に映る」、つまりCTOのようなプロダクトを推進していく人材がキャリアを考える上で、報酬や肩書よりも働く環境が非常に重要な判断要素になっています。 プロダクトを中心とした事業を推進していく上で、働く環境も大きく変化し続けています。大手企業ではセキュリティ面を考慮し、なかなか導入が進まなかった各種ツールも、コロナ禍を期に導入できたものも多いのではないでしょうか。また、変化が激しいIT業界を渡り歩くために、社内の一体感を出すためにミッション、ビジョン、バリューの重要性を説き、発信し続けている企業もあります。本記事では、プロダクトの進化を支える土台と言える働く環境について、ソフト面、ハード面に分けて、前者について紹介していきます。 働く環境のソフト面 プロダクトを進化させていくには、プロダクトマネージャやUXデザイナー、エンジニアがそれぞれを独立して働くのではなく、協働することが不可欠です。ただ職能が異なるので、役割を超えて協働しあえる環境が重要です。 1.目的目標の共有 まず、目的目標の共有という観点から全社視点で、ミッション、ビジョン、バリューの共有を行います。ミッションとは企業の社会的使命や存在意義を指し示し、ビジョンとは組織や社会の将来の姿を意味します。ビジョンの方がより具体的で企業として何を実現していくのかを言語化したものになります。 最後に、バリューは企業という組織を構成するに当たって、共有すべき価値観や行動指針を指します。これらを言語化し、共有することで、役割は違えど、アライメントを担保し、プロダクトの進化を一緒に協働していく基盤になるのです。 次に、プロダクト開発の視点から全社的なミッション、ビジョン、バリューを具体化したプロダクトビジョンがあります。これは、企業全体のミッションに即した形で、プロダクトを通して対象となる業務や市場に対し、どのような価値を提供し、何を実現するのかを簡潔にまとめたものです。プロダクトビジョンを共有することで、さらに強固な基盤になります。 さらに、基盤としてだけではなく、具体的に年間や四半期などの目的目標として掲げるものとしてOKRのフレームワークを導入することにも積極的です。全社だけでなく、プロダクト開発の場ではプロダクトごとに設定することが多く、職能を超えた目標を共有することに一役買っています。 2.ユーザーファースト プロバイダーの都合で提供したいプロダクトを起点にするのではなく、ユーザが抱える課題を把握し、理想の状態を考え抜き、プロダクトに落とし込んで行くことが重要です。 ユーザーヒアリングや競合調査などを通して、市場やユーザーの課題を特定し、きちんと仮設検証が終わってなければ、企画しても開発を進められません。エンジニアとしても仮説検証が終わっていないものを開発してしまい、後から方針変更を言い渡されても、またゼロから開発した方が早いことすらありえます。そのため、企画、開発ともに仮説検証プロセスが整備され、お互いに牽制し、いいプロダクトを作る土壌があることが非常に重要なのです。 3.アジャイル 出来得る限り、事前に仮設検証プロセスを回すのですが、変化が激しいため、事前にすべてを把握し切ることはできません。正確にユーザーニーズを汲み取り続け、スピーディに企画開発を回していくアジリティの高さが求められるのです。 一般的にはスクラムを導入し、企画の精査、工数見積、優先順位付け、開発方針の策定、開発、QA、効果検証までを一連の流れとして、プロダクトマネージャやUXデザイナー、エンジニアが協働できるフレームワークとして導入されていることが多いです。 なお、アジャイル開発については大手企業が導入するときのポイントを大手企業におけるアジャイル開発と導入時のポイントで詳述しています。導入を検討する際は、ぜひ併せてご確認下さい。 まとめ プロダクトの進化にはプロダクトマネージャやUXデザイナー、エンジニアといった役割の異なる方々の協働が不可欠です。この協働を支えていく上で、全社的なミッション、ビジョン、バリューやプロダクトビジョン、OKRの導入により目的目標からしっかり共有して一緒に追い求めて行ける環境を作りあげていくことが第一歩になります。 また、プロダクトはユーザーに使ってもらい、初めて価値を創造できます。そのため、ユーザーに向き合い、課題の把握やユーザー価値に対して仮説検証をしっかり回しきって、企画を練り上げなければなりません。さらに、企画を実現していく上で、変化が激しい昨今において、高いアジリティが求められます。これら3点が揃って初めて、プロダクト開発を円滑に進められる土壌となるのです。 参考文献 マッキンゼー 新規事業成功の原則 Leap for growth --- # "長期的な視点"によって加速する、大手企業のデジタル・トランスフォーメーション|ジャフコ グループ井坂省三氏 URL: /insights/29 title: '"長期的な視点"によって加速する、大手企業のデジタル・トランスフォーメーション|ジャフコ グループ井坂省三氏' summary: "デジタル・トランスフォーメーション(DX)をはじめとした大手企業の変革に必要なことは何か──そのポイントをベンチャーキャピタル(VC)のパートナーの視点から語っていただく連載「VCから見た、大手企業の変革論」。第4回はジャフコ グループ パートナーの井坂省三さんにお話を伺いました。井坂さんは「長期的な視点を持つことが大切」と言います。大手企業においてDXを推進していくポイントは何か、そしてスタートアップ側が大手企業との連携で意識すべきことは。井坂さんの大手企業変革論に迫っていきます。" date: 2023-04-07 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/spotlight.mdx" cover: "/images/insights/29/00.jpeg" デジタル・トランスフォーメーション(DX)をはじめとした大手企業の変革に必要なことは何か──そのポイントをベンチャーキャピタル(VC)のパートナーの視点から語っていただく連載「VCから見た、大手企業の変革論」。第4回はジャフコ グループ パートナーの井坂省三さんにお話を伺いました。 井坂さんは「長期的な視点を持つことが大切」と言います。大手企業においてDXを推進していくポイントは何か、そしてスタートアップ側が大手企業との連携で意識すべきことは。井坂さんの大手企業変革論に迫っていきます。 数年後にDXは劇的に進んでいくはず ──井坂さんの考えるDXの重要性について教えてください。 日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5275万人(2021年から29.2%減)に減少するとも言われています^1。それにより、今後日本は労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小といった課題が浮き彫りになるはずです。 その課題を解決する手段として、大きく2つの選択肢があります。移民などで生産年齢人口を増やすか、もしくは一人当たりの生産性を上げることです。諸外国と違い、日本で移民の受け入れが急速に進むとは考えにくい。そうなると、一人当たりの生産性を上げていくしか道はないわけです。その生産性向上において、DXは大きな意味を果たすと思っています。 また、DXは大手企業が再び成長曲線を描いていくために欠かせないものです。私たちはベンチャーキャピタリストという仕事柄、普段はスタートアップと接する機会が多いわけですが、どれだけ彼らの勢いが良くても、それは日本全体の経済から見るとほんの一部でしかありません。日本経済を再び活性化させていくためには、大手企業が元気にならなければいけないと思っているので、その意味でもDXの重要性は高まっていると思います。 ──日本の大手企業のDXの現状をどう捉えていますか。 黎明期は超え、飛躍期になりつつあるという認識です。大手企業のDXは30〜40代の担当者が決裁権を持って推進し始めているので、ここから本格的に加速していくのではないかと思っています。ただし、DXは社内システムをオンプレミス型からクラウド型に置き換えたから終わりという話ではなく、ずっと続いていくものです。本当の意味でトランスフォーメーションしていくのは、ここからだと思っています。 ──DXを推進していくにあたっての課題は何だと思いますか。 個人的には、あと3〜4年経てば状況は劇的に変わっていく気がしています。日本のGDP(国内総生産)はまだ世界3位ですし、国内には製造業や建築、不動産、金融、医療など市場規模が大きい業界がたくさんあります。高度経済成長期に構築された仕組みやルールは当時は効率的だったのかもしれませんが、時代の流れとともに企業を取り巻く環境も変化しました。昔のやり方を続けるのではなく、今の時代のテクノロジーや技術に即したやり方に変えていった方が生産性も上がっていくはずです。 もちろん、どの企業にも特有の仕組みがあり、そこをガラッと変えていくのは簡単な話ではありません。特にさまざまな要素が複雑に絡み合う大手企業であれば、なおさらです。DXは一定時間はかかってしまうものですが、ここから変わっていくと思います。 その背景にあるのが、いわゆるミレニアル世代やZ世代の存在です。今後、デジタル技術に抵抗のない世代が生産年齢人口の過半数を占めるようになっていきます。その世代が決裁権を持つようになると、新しい選択肢に対する許容度も広がっていくはずです。 彼らはフラットな視点から「良いものは良い」と考えるはずですから、合理的な選択肢として、DXにも積極的に取り組んでいくでしょう。ですから、個人的には数年後、日本のDXに関する状況は大きく変わっていると思います。 DX推進のポイントは「長期的な視点を持つこと ──DXを推進していくためのポイントは何だと思いますか。 先ほども言いましたが、DXは社内システムをオンプレミス型からクラウド型に変えたから終わり、という話ではありません。ずっと続いていくものです。 例えば、社内のさまざまな場所に散らばっているデータを一元化したり、クラウド上にあるデータをAIに読み込ませて新しい計算結果をつくったり、今まではブラックボックス化されていた属人的なノウハウを形式化するといったことは一定の時間を要します。 しかし、大手企業では“3年間”といったような期限つきでDX担当者がアサインされることが往々にしてあります。3年が経ち、その担当者が離れてしまった結果、その後はDXが推進されていかなかった、というのは勿体ないことです。個人的には、日本経済が再び成長していくタイミングは今がラストチャンスに近いと思っているので、大手企業は「DXはずっと続くもの」という認識で、長期的な視点を持って取り組んでほしいと思っています。 ──ちなみに、ここ数年で大手企業側のスタンスに何か変化を感じられますか。 スタートアップのことを理解してもらえるようになったと思います。それこそ、ベンチャーキャピタルの存在も認知され始めた感覚があります。それは十数年も前にスタートアップを立ち上げた先人たちが、会社を大きく伸ばしていっているからこそです。その結果、ここ10年で大企業からスタートアップに転職する人たちも増えました。そうした変化によって、大手企業とスタートアップの取り組みも少しずつ増えてきた感覚があります。 ──スタートアップは大手企業と連携するにあたって、何を意識すべきですか。 大手企業はスタートアップと連携するにあたって、自分たちにどんなメリットがあるかを考えます。もちろん、相手側のメリットを考えることも大事ですが、スタートアップはそれに振り回されすぎないことは意識した方がいいと思います。相手側のメリットだけを追求した結果、自分たちが目指している方向性と違うことに多大なリソースを割いてしまい、自分たちが本当にやりたかったことができなくなってしまいます。 そうならないために、まずは大手企業側の担当者とお互いがWin-Winになる関係は何かをきちんと話し合って進めていくべきだと思います。あとは、スタートアップは決裁の仕組みや求められる品質のレベルなど、大手企業の構造を理解しておくべきでしょう。 ──最後にDX推進にあたって、スタートアップに期待することは何でしょうか。 スタートアップの良さは特定領域に集中し、一点突破でスピーディーに何かを成し遂げていく点にあります。そこに熱量の高い人たちが集まって、取り組みを加速させていく。最初は規模は小さいかもしれないですが、そういうものが世の中を変えていき、新しいスタンダードをつくっていくものです。そうしたスタートアップの姿に心が動かされると思っているので、軸はブラさずに突き進んでいくことを期待したいです。 撮影:大竹 宏明 --- # サーバーサイドKotlinの可能性 URL: /insights/3 title: サーバーサイドKotlinの可能性 summary: "例近年サーバーサイドの開発言語としてKotlinに注目が集まっています。Kotlinというプログラミング言語はAndroidのアプリ開発での活用が最も一般的に認知されていますが、サーバーサイド開発においても積極的に導入するスタートアップや大手テック企業(Adobe、AWS、Expedia等)の事例が増えています。" date: 2022-06-29 author: "authors/takafumi\_endo.mdx" category: "categories/technology.mdx" glossary: "glossary/startup.mdx" "glossary/agile-development.mdx" cover: "/images/insights/3\_cover.jpg" 近年サーバーサイドの開発言語としてKotlinに注目が集まっています。Kotlinというプログラミング言語はAndroidのアプリ開発での活用が最も一般的に認知されていますが、サーバーサイド開発においても積極的に導入するスタートアップや大手テック企業(Adobe、AWS、Expedia等)の事例が増えています。またiOSおよびAndroid双方に対応したマルチプラットフォームモバイル(Kotlin Multiplatform Mobile)SDKの提供やJavaScriptへのトランスパイルなど、Kotlinはフロントからサーバーサイドまで活用範囲が広いプログラミング言語です。弊社ROUTE06(ルートシックス)においても、サーバーサイドKotlinの検証及び導入を進めており、本記事ではサーバーサイドKotlinの可能性についてご紹介していきます。 Googleがファーストクラスに選ぶプログラミング言語Kotlin Kotlinは元々Java言語の統合開発環境として有名なIntelliJ IDEAを手がけるJetBrains社によって開発されたプログラミング言語です。Kotlinが最初に公表されたのは2011年7月ですが、GoogleがGoogle I/O 2017にてAndroid開発においてKotlinのファーストクラス採用が公表されたことで大きく話題になりました。それまでJava主体のAndroid開発においてもモダンなプログラミング言語を利用できるようになり、Googleが提供する統合開発環境のAndroid StudioにKotlinが標準搭載となったため開発環境構築の手間が削減されたこと等によって普及が加速しています。GitHubにおけるパブリックリポジトリを集計分析しているブログ及びリポジトリからKotlinの利用者が増加トレンドを確認することができます\[^1]。 Kotlinの構文や記述自体はJavaよりもシンプルで端的なものですが、コンパイル後にJVM(Java virtual machine)上で動作することが特徴です。Javaで有名なフレームワークのSpring等がKotlinをサポートしており、これまで長年Javaのエコシステムで蓄積された知見にアクセスできることがKotlinの魅力にもなっています。またKotlinは他のJVM言語よりもJavaとの互換性が高く、既存アプリケーションがJavaで開発されていたシステムにおいて新規機能部分をKotlinで記述するなど、双方のコードを共存させることが容易です。JavaからKotlinで記述されたプログラムを実行することができ、またKotlinからJavaのクラス継承やライブラリを呼び出すことができます。上記のように比較的新しいプログラミング言語でありながら、Javaでの開発経験の長い開発者にとっても受け入れやすい言語になっています。またKotlinはNull Safety仕様であり、Javaで有名なnull参照エラーを早期に発見しやすい点などもJava開発者から評価されているポイントです。 Google社でもKotlinは積極的に活用されており、Google マップ、Google Home、Google Play、Google ドライブ、メッセージなど現在60 以上のアプリケーションがKotlinで実装されています。例えば Google Home では、2020 年 6 月時点においてコード全体の約 30% が Kotlin で記述されており、新機能についてはすべて Kotlin での開発が推奨されています。新機能開発を Kotlin に移行した結果、とあるクラスの作成においてJava では 126 行の手動による記述が必要だったのに対してKotlin ではわずか 23 行の記述で済んだことに加え( 80% のコード量の削減)、前述のNull Safety仕様によってアプリクラッシュの最も大きな原因であったNullPointerExceptionsを33%低減できたなど、その実績を公表しています\[^2]。 サーバーサイド言語としてのKotlinへの注目の高まり 上記の通り、KotlinはAndroidのアプリケーション開発での活用が多いものの、サーバーサイド開発でもその活用に注目が集まっております。最大のポイントは前述の通り、Javaとの互換性及び相互運用性にありこれまでJavaで開発されてきた国内外のアプリケーションがKotlinに移行しています。海外ではAWSやAdobe、Atlassianなどのテック企業からDoorDashやING、Expediaなどの事業会社までサーバーサイドKotlinの活用は幅広く、国内でもYahooやLINEなどの大手IT企業に加えて日本経済新聞社などの大手事業会社でも活用事例が出てきているのが現状です。Kotlinコミュニティは開発ロードマップにおいて、今後もサーバーサイドKotlinのJVM対応を優先分野と位置付けており、Javaエコシステムとの互換性という面でのメリットが強化されていくことも期待されています\[^3]。 特にサーバーサイド開発ではJavaで最も有名なWebアプリケーション開発のフレームワークであるSpringを活用できることが大きな利点とも言えるでしょう。SpringはJavaコミュニティで最も有名かつ実績のあるフレームワークの一つであり、マイクロサービスアーキテクチャやサーバレスアーキテクチャなど最新のトレンドにも対応しています。Springが世界中のJava開発者達に支持される理由の一つとして、依存性注入(Dependency Injection)を容易に行えるIoC containerと呼ばれる機能があり、それを活用することで作成中のオブジェクトとオブジェクト生成及び実行を分離しやすくなるため、コード間の依存性制御によるテストシナリオを削減だけでなく、コード自体がシンプルになるためシステム全体の保守性を担保しやすくなります。モダンなプログラミング言語でありながら、世界中の開発者達によって長い年月をかけてブラッシュアップされてきたリソースを活用しやすいこともサーバーサイドKotlinの大きな魅力になっています\[^4]。 またJetBrains社のIDEであるIntelliJ IDEAをKotlin言語の開発でも活用できることも魅力の一つになっています。IntelliJ IDEAは統合開発環境としてもともとファイル/テキスト検索やリファクタリングなどに優れた機能を持っているだけでなく、Kotlin をファーストクラス言語と位置付けており、Kotlin固有のプロジェクトテンプレートやデバッグ機能など十分なサポートが得られる環境が用意されています。IntelliJ IDEAはVISA、SAMSUNG、BMW、X、Expediaなどの世界中の大手企業で利用されており、Java 開発者の 4 人に 3 人が IntelliJ IDEA を利用しているなど圧倒的なシェアを誇る統合開発環境です\[^5]。 Kotlinは大手企業のシステム開発においてJava後継となり得るのか 日本の大手企業及び大手システムインテグレータにおけるシステム開発の現場においては、現状でもJavaが最も利用されてきたプログラミング言語の一つであり、新しいアプリケーションやサービスの開発においても多くの場合Javaが採用されています。実際に大手企業においてシステム開発及び運用保守に関するRFPや各種システムテスト要件、セキュリティ診断などにおいてもJava及びJVM利用を前提としたチェック項目などがあることも一般的です。 今後大手企業においてシステム開発の内製化を進めるにあたっても、特にアジャイルに顧客体験を磨き込むことが求められるデジタルサービスにおいては、スタートアップやWeb系メガベンチャー企業に在籍しているようなソフトウェアエンジニアの採用及び類似スキルを活用できる環境などが求められるため、モダンなプログラミング言語への対応が求められます。システムの内製化対応が遅れている大手企業においては、そういった新しい開発環境への転換及び受入体制が整っていないこともデジタル人材の採用に苦戦している要因の一つになっています。 そういった現状を踏まえ、Kotlinという言語に改めて着目してみると、大企業おける開発内製化やアジャイル開発を推進していくための技術選定として、合理的な選択肢の一つであると考えられます。大手企業においてはGoやRubyなどの現行とは異なる言語及び技術思想に対応するよりも、現状のJavaリソースとも共存可能であり、近年人気が高まっているKotlinをサーバーサイド開発にも活用する方が社内外の関係者にも受け入れられやすいことが想定されます。前述の日経新聞社において日経IDの認証・認可や課金・決済といったプラットフォームの開発においてサーバーサイドKotlinが活用されていることなどからもその期待は高まります\[^6]。 滑らかなトランスフォーメーションのためのROUTE06の技術選定 Java自体が世界中の開発者コミュニティによって今この瞬間も進化を続けているプログラミング言語であるなかで、近年人気が高まってきているKotlinとある意味マイクロサービス的に繋がって共存しながら、双方のリソースやコードがマージされていくような進化を遂げているプロセスなどからは、新しい技術と従来のインフラをうまく活用することが求められるデジタル・トランスフォーメーションにおいても参考になる知見が得られるのではないでしょうか。 ROUTE06(ルートシックス)では自社で開発運営するソフトウェアサービスの技術選定においては、ソフトウェアエンジニアの採用育成及び開発効率を考えたモダンな開発言語やアーキテクチャを最も重視しているものの、今後も大手企業の既存システム及び開発ベンダーとの中長期でのシステム連携や共同開発などを視野に入れた意思決定を行なっていきたいと考えています。日本全体のエンタープライズソフトウェア開発がより発展していく観点からもサーバーサイドKotlinの可能性には注目しているため、Kotlinをはじめとした新しい技術と大手企業の開発現場の繋ぎ役となれるような情報発信や啓蒙活動なども積極的に行なっていく方針です。 \[^1]: Ranking Programming Languages by GitHub Users \[^2]: Google Home reduces #1 cause of crashes by 33% \[^3]: Kotlin Programming Language \[^4]: Building web applications with Spring Boot and Kotlin \[^5]: IntelliJ IDEA: JetBrains の人間工学に基づく高機能 Java IDE \[^6]: Spring FrameworkのKotlinサポート最新動向 (2020年版) --- # プロダクトを進化させる環境:ハード面 URL: /insights/30 title: プロダクトを進化させる環境:ハード面 summary: "前回の記事では、ソフト面を中心に、目的目標の共有やユーザーファースト、アジリティについてその重要性を説きました。本記事では、ソフト面を支えるツールなど、ハード面について紹介していきます。" date: 2023-05-01 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/30/00.jpeg" glossary: glossary/agile-development.mdx 前回の記事では、ソフト面を中心に、目的目標の共有やユーザーファースト、アジリティについてその重要性を説きました。本記事では、ソフト面を支えるツールなど、ハード面について紹介していきます。 働く環境のハード面 プロダクトを進化させていくには、プロダクトマネージャーやUXデザイナー、エンジニアがそれぞれを独立して働くのではなく、協働することが不可欠です。 この協働を支えていく上で、ソフト面で重要なポイントをおさらいすると、全社的なミッション、ビジョン、バリューやプロダクトビジョン、OKRの導入により目的目標からしっかり共有して一緒に追い求めて行ける環境を作りあげていくことが第一歩になります。また、プロダクトはユーザーに使ってもらい、初めて価値が創出されます。そのため、ユーザーに向き合い、課題の把握やユーザー価値に対して仮説検証をしっかり回し、企画を練り上げなければなりません。さらに、企画を実現していく上で、変化が激しい昨今において、高いアジリティが求められます。 ハード面では、これらソフト面を支えるツール群を組織運営上最低限必要なものと、プロダクト開発において特有なものと分けて紹介していきます。 最低限必要なツール コロナウイルスが蔓延し、長期間リモートワークが前提となったことにより急速にドキュメントやコミュニケーションなどを中心に各種ツールの導入が推進されました。 まず、Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsなどのコミュニケーションツールが挙げられます。コロナ禍をきっかけに特に普及したツールであり、社内のミーティングだけでなく、商談など社外とのミーティングでも多用されています。勉強会など一対多の形式の場での活用など、その用途は多種多様です。 次に、SlackやChatworkなどのチャットツールです。これらは社内向けのツールとして最初発展してきたものです。Slackを例に上げ、昨今の用途拡大を紹介すると、社外の方々ともチャンネルを共有しコミュニケーションができたり、目的に応じてワークスペースを準備することで社内外の方々と場を共有でき、情報交換ができるようになっています。 また、Slackはエンジニアが開発を進める上で活用するシステムと柔軟に連携できるようになっており、プロダクト開発の場でも不可欠のものになっています。 3点目はWorkplaceやQiitaなどの情報共有ツールです。ミーティングやチャット上で議論した内容をまとめ、広く共有するために使われます。例えば、ミーティングには参加しなかった同じ部署のメンバーに周知したり、全社的な連絡事項の展開にも活用されます。 最後に、Google DocsやSpreadsheetやNotionなどのドキュメントツールです。ドキュメンテーションタスクの代表例である文書作成や表計算、プレゼンテーション資料作成など、全て今ではオンラインで完結できるようになっています。 プロダクト開発特有のツール プロダクト開発に特有なツールについてはプロダクト開発の進め方を4つに分けて、紹介していきます。順に挙げていくと、ニーズの集積、企画に関する議論や整理、企画の優先順位付け、効果検証です。 1.ニーズの集積 まず1点目のニーズの集積では、既存ユーザーから頂いた要望や不具合を集積し、バックログの整理を行います。ここでは主にJiraやGitHubというツールが活用されます。 Jiraは明確にバックログの管理を主な用途とします。他方GitHubは従来コード管理ツールとして認知されていますが、昨今Issuesという課題管理機能によりユーザーからのフィードバックを管理し、その後対応や開発を紐付け、一元管理しているという事例も出てきています。 2.企画に関する議論や整理 2点目は企画に関する議論や整理です。ここではニーズを踏まえてプロダクトの企画をしていく段階で、基本的には前項で紹介したようなドキュメントツールを活用し、議論を可視化していくケースが多いです。まだ議論が曖昧で抽象度が高い段階では、ドキュメントツールではなく、より自由度の高いホワイトボードアプリ(MiroやFigJamなど)を活用することが多いです。 また、プロダクトマネージャー、UXデザイナー、エンジニアは企画段階においてUIUXを起点に議論することが多いです。というのも、ドキュメントをベースにするよりもモックや画面イメージで伝えたほうがニュアンスも含めて正確に伝えることができるからです。この用途ではFigmaが一般的になりつつあります。 2021年9月に発足したデジタル庁でも一貫したデザインや操作性でウェブサイトやアプリを提供するためデザインシステムを構築しており、その内容をFigmaを活用し、公開しています。 3.企画の優先順位付けやスプリント計画 3点目は企画の優先順位付けやスプリント計画です。企画ができたら、次はどの企画から進めるのか、計画に落としていく必要があります。この場面では、1点目で紹介したJiraやTrelloを活用することが多いです。 最終的に開発が終わりリリースできたタイミングで、仕様をドキュメントにまとめ、Confluenceなどの文書管理ツールに集約しておくことが一般的です。この集約を怠ると、ドキュメントツール上で検索をかけるか、ドキュメントが見つからない場合、直接コードを見て仕様を確認することになってしまうので、注意が必要です。 4.効果検証 4点目は効果検証です。ここでは開発した機能をリリースし、その効果を検証していくフェーズになります。ここではユーザーがリリースした機能を活用してくれているのか、そして、その利用が収益に紐付いているのか確認していきます。 手法として、ユーザーの行動ログを集計、分析し、検証していくものと、直接ユーザーにヒアリングするものが挙げられます。特に前者について分析を行う上で、Tableau、Big Queryのような分析ツールが活用されることが多いです。 最後に意外と盲点なのがデバイスです。エンジニアは開発環境が整っているMacを選択する傾向が強いです。そのため、例えばプロダクトマネージャーがWindowsを使っている場合、同じ環境でアプリやツールが使えない、もしくは使いにくいケースが出てきてしまいます。 私自身の例になるのですが、当時Windowsを利用しており、エンジニアと同じ分析環境を準備する必要が出たところ、Windowsで環境設定を行うよりもMac bookを持ってもらった方が早いということで、追加で貸与してもらうことがありました。このようなケースが多かれ少なかれ出てきてしまうので、強いこだわりが無ければ最初からデバイスを揃えてしまうのが良いでしょう。 導入の順序 スタートアップなど比較的若い企業において、プロダクト開発環境を整備していく場合、上述の各種ツールを使う傾向が強いです。他方、大手企業においてはセキュリティなどの観点から徐々に検討を進め、浸透させていく必要があります。 コロナ禍によりコミュニケーションやチャット、情報共有ツールは比較的問題なく、利用されているケースが多いです。ただし、ドキュメントツールについてはセキュリティの観点から精査され、見送ることも少なくありません。 このような場合、プロダクト開発の起点とも言えるUIUXを設計する際活用することが多いFigmaを中心に捉えてみるとよいかもしれません。Figmaを利用して設計されたUIUXは言葉で語るよりも饒舌に企画内容をニュアンスも含めて感性に直接訴えかけます。そのため、導入価値を感じやすく、代替手段も少ないことが直感的に必要性を説明することができます。 UIUXのクラウド化を起点に、ニーズの集積(JiraやGitHub)、企画の優先順位付けやスプリント計画(JiraやTrello、Confluence)にも各種ツールの導入を広げていき、同時にドキュメントツールのクラウド化を再検討するのが良いのではないでしょうか。 まとめ プロダクト開発を進める環境として各種ツールの導入はスタートアップに限らず、大手企業に置いても確実に浸透してきています。近い将来、上記で列挙したものは非常に基本的なツールと認識されるようになり、個々のフェーズに対してツールが1つでも入っていないと、違和感を持たれるようになってくることでしょう。 UIUXのような導入価値を実感しやすいツールから検討を進めて行くなど、様々な観点で試行錯誤し、プロダクト開発に最適な環境を整備していきましょう。 参考文献 デジタル庁:デザインシステムについて --- # DXの成否を占う、組織のOS URL: /insights/31 title: DXの成否を占う、組織のOS summary: "かつて隆盛を極めた⽇本のAV機器産業、モバイルインターネット産業は、2007年のiOSとAndroidの登場によって、ゲームの盤⾯そのものを覆されました。" date: 2023-04-19 author: "authors/Shunsuke\_Sagara.mdx" category: "categories/transformation.mdx" cover: "/images/insights/31/00.jpeg" “OS”こそ全て かつて隆盛を極めた⽇本のAV機器産業、モバイルインターネット産業は、2007年のiOSとAndroidの登場によって、ゲームの盤⾯そのものを覆されました。 携帯キャリアが指定したスペックに合わせて端末が開発され、その上に専⽤のサービスが載るという産業構造で⻑く恩恵を受けてきた各メーカーは、指定の要件を所与の前提としてその要件の下で最も良く機能するハードやソフトを作ることに専念していました。 象徴的な対照として描かれるのがApple vs. 日系電⼦機器メーカーの構図で、⼀部にはAppleの勝利を直感的な操作性に帰結させる向きもありますが、勝敗の要因として決定的だったのはむしろ⽇本勢がスマートフォン時代の”OS”を創ることにアンテナを張る意識が低かったことの⽅が⼤きいように思います。 ハードの性能やソフトの創造性ではむしろ上を⾏っていると整理することもできましたが、当時、日本の「次なる基幹産業」はOSで負け、その後今⽇まで続く「デジタルプラットフォーマー時代」に新たな盤⾯の上で苦戦しています。 デジタルトランスフォーメーションのOS 翻って、⼀時のバズワード期を経て冷静に成果を分析する段階に⼊った今⽇のDXを巡る状況にも、このOSのアナロジーが当てはまるのではと思います。 ソフトとしての優れたアイディアも、ハードとしての優秀な⼈材も、必要⼗分に揃っている⼤⼿企業は多く存在しますが、果たしてそれらのハードやソフトを継続的に⽣み出すための持続可能なOSにアンテナを張ることができているでしょうか。ここでいうOSとは、組織の意思決定機構を指します。優れたOSがなければ、ソフトウェアはハードウェアごとの規格差や性能差に影響されますし、ハードウェアにとってもその性能を遺憾なく発揮できるソフトウェアが限定されてしまいます。 仮に優れたOSのない状態で成果を上げる”DX”事例が⼀つ出てきたとしても、あくまで偶発的かつ⼀時的な産物であり、⼆つ⽬三つ⽬が続かないことも想像されます(多くの場合、偶然の⼀つ⽬さえ出てこないでしょう)。 DXフレンドリーな組織におけるOSの型 シード期のDXスタートアップに投資を⾏うベンチャーキャピタルとして、またスタートアップと⼤⼿企業を有機的に繋ぐプラットフォームである『STORIUM』を運営する⽴場として、数多くの⼤⼿企業と会話を重ねてきた筆者の視点では、DX(に限らないイノベーション活動)を持続的に、息を吸うように⾏っている⼤⼿企業には唯⼀にして最⼤の共通点があるように思います。 それは「経営陣がリスクのオーナーシップを取る」という単純明快な構えです。似て⾮なるものに、「経営陣がリスク”ヘッジ”のオーナーシップを取る」という構えがありますが、これこそ多くの企業の変革を妨げる真の原因ではないでしょうか。 「経営」と「現場」の間に溝を作り、現場メンバーが練りに練って考案したビジネスプランを経営サイドが⼤所⾼所から「審査」して否決可決の命を下す。さらに根深いことには、審査する経営陣がソフトウェアビジネスの勘所を持たず、当該ビジネスプランのユーザーペルソナではないという場合も多く見受けられます。イノベーションを育てるはずの仕組みが、その種を摘む仕組みになってしまっているのです。 「あした会議」という先例 今や国内最⼤級のインターネット・コングロマリットと化したサイバーエージェントのユニークな社内制度の⼀つに、「あした会議」と呼ばれる事業創造/改善機構があります。仕組みの詳細は以下の通りです。 要点は、役員が⾃ら提案チームの⻑を務め、事業⽴案や可決後の戦略実⾏、成⻑から撤退に⾄るまで全てに責任を持つというルールにあります。 社⻑がその場で決を採って即座に事業化が成される潔さも特筆すべきです。旧来産業の中からもこうしたIT先進企業の仕組みから良いところを盗み果敢に実⾏に移す⼤⼿企業が出てきているのを筆者は⽬にしており、産業や企業規模に関わらず「経営陣がリスクのオーナーシップを取る」ことは実現できるはずです。 DXは待ったなし、背に腹は変えられない状況です。かつて、Androidを買収してモバイル通信のゲームの盤⾯そのものを変えに⾏く機会は誰にでも開かれていたし、クアルコムと提携して半導体産業の構造改⾰を推し進めることは、少なくとも⻘写真としては誰にでも描けたはずだと思います。 既存の環境を無条件に是とするのではなく、所与を疑い、社内外の”OS”を主体的に創造する迫⼒に満ちた⼤⼿企業が2020年代の⽇本から多く⽣まれることを強く願っています。 参考文献 サイバーエージェントの持続的成⻑を⽀える「あした会議」 --- # 事業成長に伴い変化するプロダクトリーダーの役割 URL: /insights/32 title: 事業成長に伴い変化するプロダクトリーダーの役割 summary: "本記事では、プロダクトリーダーが活躍する母体、企業や事業のフェーズに着目し、変化するプロダクトリーダーの役割やスキル、マインドセットについて解説していきます。" date: 2023-05-19 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" glossary: "glossary/ai.mdx" "glossary/startup.mdx" cover: "/images/insights/32/00.jpeg" 近年、プロダクトマネージャーという概念が急速に普及し始め、今ではプロダクト開発における中心的な役割の1つに挙げられるようになってきています。さらに、人工知能(AI)、機械学習(ML)やBizDev、ドメイン、ピープルマネジメントなど、プロダクトマネージャーとしてどこに強みを置くかによってその役割は細分化され、組織構築やプロダクトマネージャーのキャリアを考える上で活用されています。 プロダクトリーダーと呼ばれるCheif Product Officer(以下、CPO)やVP of Product(以下、VPoP)のような役割についても同様に定義されるようになってきました。ただ、定義や期待値に沿ってアウトプットしていたのに、入社前のイメージとギャップがあったり、思うように成果がでていなかったりする様子を見かけることはないでしょうか。 本記事では、プロダクトリーダーが活躍する母体、企業や事業のフェーズに着目し、変化するプロダクトリーダーの役割やスキル、マインドセットについて解説していきます。 会社や事業の成長 会社や事業が成長していく過程は大きく創業期や新規事業の立ち上げ期、PMF(Product-Market Fit)期、グロース期、マネタイゼーション期の4つに分解できます。 まず、創業期や新規事業の立ち上げ期ではアイデアの発掘や市場調査、プロトタイピングなどを行い、ビジネスモデルの構築し、それをプロダクトとしてどう具体化するか検討し、開発します。 次に、PMF期に入ると、ユーザーからのフィードバックを元にプロダクトやサービスを改善し、市場に受け入れられるように調整していきます。グロース期では、プロダクトやサービスの追加、改善を通して既存市場への普及、新規市場への進出などを行います。 最後に、マネタイゼーション期では事業の収益化や持続可能なビジネスモデルの確立に向けて取り組みます。このように、各フェーズに応じてプロダクトリーダーは戦略や組織の両面にアプローチし、事業の成長に向けて取り組むことになります。 プロダクトリーダーの役割 創業期や新規事業の立ち上げ期 事業領域に課題感が強いCEOとCTOで創業するケースが多く、バックグラウンドに応じてどちらかがプロダクトリーダーの役割を担うことになります。この時期から専任プロダクトマネージャーがいる場合は少なく、新規事業でも事業責任者が兼務しているのが一般的です。 この時期のプロダクトリーダーの主な役割は、ユーザー課題の精査とMVPの作り込み、開発ディレクションです。CEOかCTOが兼務しており、まだプロダクトもリリースされていないので、その役割はシンプルです。 B2CとB2Bでアプローチに違いがあるので言及しておくと、B2Cではユーザーが使い続けるものが正解と捉えられます。そのため、とにかくプロトタイプを作り、ひたすらPDCAを回し、UXの磨き込みを行うことがPMFを手繰り寄せる最善の手段です。 他方、B2Bでは業務上使うツールであることが多く、ヒアリングを通して事前にユーザーの課題やニーズを正確に把握できます。そのため、事前の調査をしっかり行うことで、最小限の開発でユーザー価値を創出し、PMFを実現することが重要になります。 PMF期 プロダクトのリリースを終え、ターゲットセグメントへのPMFを追っていく過程で、1人目の専任プロダクトマネージャーを迎えることが多いです。圧倒的存在感のCEOから一部業務を巻き取っていきます。 具体的には、B2CではWeb広告を回して数万程度のMAUを確保し、ABテストを通して、UXをひたすら磨き続けます。他方、B2Bではユーザーに足繁く通い、ひたすらフィードバックをもらい、ニーズを抽象化して、プロダクトに組み込んで行きます。 気をつけるべきポイントとして、B2Bでもビジネスに強いCEOはシニアなプロダクトマネージャーを採用しに行きがちですが、B2Bではドメインを抑えてないと、プロダクトビジョンからロードマップの策定まで担うことが困難です。採用時の期待値とパフォーマンスにギャップが出やすい理由になるので、今後採用を進められる方は改めて採用要件と期待値の確認をお勧めします。 なお、まだプロダクトとしての組織がないタイミングなので、仮にCPOと名乗っていても、やるべきことは1人目プロダクトマネージャーと同じで、PMFを手繰り寄せることに集中することになります。 グロース期 ターゲットセグメントやその周辺のセグメントに対してPMFができたら、次はグロースを進めていくことになります。 このタイミングで、プロダクトを組織化し、その組織長として明確にCPO/VPoPが立ち、プロダクト全体のビジョン、戦略、ロードマップ策定に責任を持ちつつ、それを実現するプロダクトマネジメント組織の設計、その構築を行うことになります。 組織面では、グロースを推進していく上でプロダクトマネージャーの多角化を行います。B2Bでは、サインアップ、課金動線の最適化のために、分析が強いプロダクトマネージャーを採用したり、周辺プロダクトとの連携を強化するためにBusiness Developmentに強いプロダクトマネージャーに参画してもらう傾向が強いです。また、コア機能の開発が専門化していくので、より直結する経験を持つドメインスペシャリストの参画も不可欠になります。 他方、B2CではUXと分析やAI/MLの活用に注力します。というのも、かなり広範囲なユーザーに使ってもらうことが想定されるため、プロダクトをシンプルに保つことが競争力の源泉になります。また、ユーザー動向の分析だけでなく、パーソナライズなどAI/MLの活用がKPI向上に直結することが多いため、積極的に高度なユーザー解析やAI/MLを利用した機能拡張を行います。 つまり、B2Bでは様々な専門性を持つプロダクトマネージャーを幅広く擁していく必要がありますが、B2Cでは分析、UXに特化し、高度な専門性を持ったプロダクトマネージャーを中心に組織していくことになります。 マネタイゼーション期 基幹プロダクトの収益性を高めた上で、周辺領域に対して新規プロダクトを投入したり、Fintechやプラットフォーム化など、ビジネスモデル自体の変革に挑戦し、更に確固たる収益基盤を構築していくフェーズを迎えます。 戦略という観点では単にプロダクトを良くするという域を大きく出て、質的にビジネスモデルの変革を引き寄せるプロダクトを設計することになり、一気に難易度が上がります。 にも関わらず、プロダクトマネジメント組織の多様化、深化が進むため、組織マネジメントの比重がどんどん上がり、採用や異動、育成について半分以上のマインドシェアを持っていかれることになります。つまり、採用、異動を積極的に行い、多様なプロダクトマネジメントチームのポテンシャルを引き出すのがメインになっていくのです。 このフェーズになっても、B2Cでは自分がユーザーであり続けられることから、プロダクトビジョンや戦略についてオーナーシップを維持しやすいです。プロダクトが普及することで、採用候補者がプロダクトを使ってくれる可能性が高まり、自然と認知が広がり、採用サイクルが進化していきます。 他方、B2Bの場合、プロダクトが業務上使うものになるため、このフェーズになると、全体像を俯瞰し続けるのは難しく権限移譲の必要性が相対的に早く訪れます。そして、B2Cとは異なり、プロダクトが普及しても、採用候補者への認知拡大にはつながりにくく、採用効率が上げるには、別途採用広報に力を入れる必要があります。 変化に応じて求められるプロダクトリーダーの進化 フェーズごとの変化 ここまでの議論は上記のようにまとめられます。前半はドメイン、新規事業立ち上げに関するスキルがインパクトを生み、後半は多様なプロダクトマネージャーとしての経験やピープルマネジメントが重要になっていきます。つまり、プロダクトリーダーとして求められることが大きく変容していきます。 順当な会社であれば、創業期からマネタイゼーション期まで5−7年で駆け抜けることを考えると、創業期からプロダクトマネージャーとして入った場合、プロダクトリーダーは短期間でプロダクトと組織に向き合い、自分を変え続けなければならないのです。 創業者の視点に立つと、初期に1人目プロダクトマネージャーをCPOとして迎える場合は、この変容に耐えられる方なのかというポイントも採用条件の中で、かなり重要な要素の1つです。逆にマネタイゼーション期の企業でCPOを担当していた方を創業期のプロダクトマネージャーとして迎える場合、PMFを手繰り寄せるために自分で手を動かし、もう一度泥臭く進められるかが採用時の最重要事項になります。 B2C/B2B間の変化 B2CとB2Bの比較の観点では、前半は企画の力点をABテストに置くか、事前調査に置くかが大きく変わってきます。つまり、B2Cではプロトタイプやプロダクトを通してどんどんユーザーに試してもらい、ABテストを元にPDCAを回してPMFを狙います。他方、B2Bでは事前にヒアリングをできるだけ行い、開発前段階にできるだけ企画の精度を上げて、開発するものを最小限にすることがプロダクトマネージャーとしての腕の見せどころになります。 後半は、プロダクトマネジメント組織の多様性と採用候補者の認知に大きな違いが出ます。 B2Cはプロダクトがシンプルで比較的容易に全体感を維持でき、プロダクトビジョンや戦略のオーナーシップを持ち続けやすいです。また、プロダクトの認知が広がることで、採用候補者への認知が拡大します。 他方、B2Bでは業務上使うプロダクトのため、グロース、収益化していく上で、取れる打ち手の専門性が高くなり、多様なプロダクトマネジメント組織を構築しないといけません。しかも、別途採用広報を地道にやっていかないと、延々とスカウトを打ち続けることになります。 例えば、B2Cでマネタイゼーション期のCPOがB2BのCPOに転じた場合、これまで磨いてきたUXや分析スキルは相対的に重要性が低くなる中で、今まで面したことがないプロダクトマネージャーの専門性と向き合い、パフォーマンスを引き出すことが求められます。 また、採用広報の重要性が高まるので、やったことがないイベントやカンファレンスでの登壇や記事配信が求められます。逆にB2BでCPOをやっていた方がB2Cに行くと、いきなり高度なUX、分析に対してレビューすることが求められます。過去にB2Cでプロダクトマネージャー経験がなければ、非常に難易度が高いキャリアチェンジになるでしょう。 まとめ PMの普及に伴い、CPOやVPoPというロールも市民権を得つつあります。ただ、一言にCPOやVPoPなどのプロダクトリーダーと言っても、その役割は企業や事業のフェーズ、B2C/B2Bという領域によって大きく変容して行きます。 自分自身が変化に併せて成長していけるのか、最終的にどのようなPM、プロダクトリーダーになりたいのかなど、PMのキャリアプランの設計を行う際に参考になれば嬉しいです。また、採用する立場の方はプロダクトリーダーの採用やアサインを考えるときに、一助になれば幸いです。 --- # プロダクトマネージャーへのキャリアパス URL: /insights/33 title: プロダクトマネージャーへのキャリアパス summary: "プロダクトマネージャーに関するノウハウは徐々に整備されつつありますが、そのなり方について整理されたものはありません。同時に、未経験からプロダクトマネージャーへの門戸はかなり限定されているのが現状です。このような現状を踏まえ、本記事では私がこれまで協働してきたプロダクトマネージャーのバックグラウンドやプロダクトマネージャーになった背景を元に、プロダクトマネージャーへのキャリアパスの類型化にチャレンジします。" date: 2023-05-26 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/33/00.jpeg" プロダクトマネージャーはミッションやビジョンに基づき、ユーザー課題を特定し、それをプロダクトという形に落とし込み、企画を具体化します。そして、デザイナーや開発チームを巻き込みながら、開発を推進し、リリース及び効果検証も担当します。この役割を一手に引き受けるにはかなり幅広い知識や経験が求められます。 ユーザー課題に真摯に向き合い、企画を通して解決を設計できるという役割であることから、昨今プロダクトマネージャーになりたいという方は増加の一途を辿っているように思います。 しかし、今プロダクトマネージャーを名乗っている方は決して用意されたレールを進み、プロダクトマネージャーになったのではなく、いろいろ経験しているうちに、いつの間にかプロダクトマネージャーになっていた方が大半です。 そのため、プロダクトマネージャーに関するノウハウは徐々に整備されつつありますが、そのなり方について整理されたものはありません。同時に、未経験からプロダクトマネージャーへの門戸はかなり限定されているのが現状です。このような現状を踏まえ、本記事では私がこれまで協働してきたプロダクトマネージャーのバックグラウンドやプロダクトマネージャーになった背景を元に、プロダクトマネージャーへのキャリアパスの類型化にチャレンジします。 概要 プロダクトマネージャーのなり方は非常に多岐に渡ります。異動、転職、留学からのチャレンジ、さらにバックグラウンドをかけ合わせると、その経路は多種多様です。ここでは、社内異動、未経験からの転職、アカデミックからのチャレンジという3つに大きく分けて、プロダクトマネージャーへの転身を整理し、詳述していきます。 1\. 社内異動によるチャレンジ エンジニアからの異動 まず、プロダクトマネージャーと最も協働する業種としてソフトウェアエンジニア(以下エンジニア)が上げられます。プロダクトマネージャーの目線からエンジニアを見ると、技術ドリブンな方とユーザードリブンな方に別れます。 前者は企画に対してどのような技術を駆使して、実現するのかにこだわりを強く持った方を指し、後者は要件を鵜呑みにせず、ユーザー感覚を深くヒアリングし、理解してからできるだけ簡潔に作ることを意識された方です。後者の方はどう作るかだけではなく、なぜ作るのか、何を作るのかに強い関心があり、この関心が強まり、最終的にプロダクトマネージャーへの門戸を叩くことが多いように思います。 また、人工知能(AI)/機械学習(ML)を駆使したプロダクトの場合、AI/MLエンジニアの経験がなければ、プロダクトマネージャーを担うことができないということもあります。他にもログインや課金、データ基盤など、インフラ系やAPI PFといった領域は、社内のエンジニアがユーザーであることも多く、エンジニアバックグラウンドが強く求められる領域といえます。 デザイナーからの異動 企画を具体化していく上で、UI/UXは非常に強力なコミュニケーション手段です。そのため企画段階でプロダクトマネージャーはデザイナーと協働することが多いのではないでしょうか。 特にUI/UXが企画の成否を分けるようなプロダクトの場合、デザイナーからの異動が多いです。例えば、UGCを中心にしたB2Cのプロダクトが挙げられます。ECやメディアなどと比較し、UGCは一定複雑なユーザーアクションが求められますが、そのアクションを多くのユーザーに行ってもらわれなければ、プロダクトとして成立しません。そのためプロダクト成否がUI/UXが握っていると言っても過言ではないのです。 また、SaaSを中心にしたB2Bのプロダクトでは、長らくUI/UXにこだわりをもったプロダクトが少なかったと思います。そのため、UI/UXの進化が差別化を生みやすい状況になっています。この状況に気づいたスタートアップを中心に、強いこだわりのもとプロダクト開発を推進している事例を徐々に見聞きするようになって来ています。 アナリティクスからの異動 アナリティクスはプロダクト全体のビジネス進捗の把握や収益構造の理解を行うのはもちろん、ユーザー動向まで細かく分析することが求められます。プロダクトマネージャーとは、企画を進める上での事前リサーチと、リリース後の効果検証で協働することになります。 1年も分析を担当していると、時としてプロダクトマネージャーよりもプロダクトの全体像やユーザー動向に詳しくなります。場合によって、プロダクトマネージャーから仕事をもらうのではなく、プロダクトマネージャーに知見を共有し、ロードマップや大きな方針の叩きを作れてしまうこともあります。すでに状況を深く理解しているのに、自分の意思で変えられないのは歯がゆく、気づいたら企画を考えていて、後追いでプロダクトマネージャーに転じることになるのです。 私自身、過去2度ほど、アナリティクスやデータマイニングを担当していた時期があるのですが、その後2回ともプロダクトマネージャーに転じています。かなり高いモチベーションと全体感を踏まえチャレンジできるので、オススメの経路の1つです。 ビジネスサイドからの異動 B2Bではプロダクトをリリースしても、自然とユーザーが手に取り使い始めてくれることは稀有です。そのため、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスなどのビジネスサイドが分担しながらユーザーに届けてくれます。 この過程の中で、ユーザーの業務内容を深く理解し、失注要因や、導入するときのボトルネックを目の当たりにし、ユーザーニーズの把握と改善、追加機能案が出てきます。ビジネスサイドの中には、これらをプロダクトマネージャーに伝えるだけではなく、自分で企画を練り上げ、ユーザーに届けたいという思いを持った方々が出てきます。このような方々がドメインとユーザー理解を武器にプロダクトマネージャーに転じるのです。 B2Cでもメディアなどのマーケティングによりグロースしやすいプロダクトや、仕様が複雑なサインアップや課金周りなどは、それぞれマーケティングやカスタマーサポートから異動しやすい領域だと思います。 2\. 未経験からのチャレンジ メガベンチャーにおける新卒プロダクトマネージャー プロダクトマネージャーが30人以上いるようなメガベンチャーだと、トレーニングが充実し、未経験からでもプロダクトマネージャーにチャレンジする基盤ができているケースがあります。このような場合、新卒であってもインタビューの過程や内定後のインターンの場でそのポテンシャルが認められれば、プロダクトマネージャーにアサインされることがあります。素直さと地頭に学びの環境を提供できれば何にでもなれるので、プロダクトマネージャーもその例外ではありません。 ただ新卒プロダクトマネージャーに注意が必要なのは、既存のバックグラウンドがないので、自分が何系のプロダクトマネージャーなのか、迷子になる傾向が強いです。できるだけ早めにロールモデルを見つけ、どういうタイプのプロダクトマネージャーになりたいのか言語化と実践を併せて進めていくとよいと思います。 ポテンシャルドリブンなプロダクトマネージャー 新卒プロダクトマネージャーだけでなく、全くの未経験にも関わらず、中途でプロダクトマネージャーをポテンシャルだけで受け入れるケースがあります。新卒というプレミアムがないので、より門戸が狭まり、より高い地頭と素直さ、さらにコミットメントが求めれます。 少し噛み砕いて説明すると、プロダクトマネージャーは解くべきユーザー課題を設定し、ニーズを言語化した上で、ソリューションを具体化していきます。そして、プロダクトマネージャー1人ではプロダクトを作ることはできません。そのため、抽象度の高いテーマをデザイナーやエンジニアなどチームメンバーにわかりやすくコミュニケーションする必要があります。これらはプロダクトマネージャーとして最も基本的な業務ですが、高度な思考能力と素直な対応が求められるのです。これらの要件はプロダクトマネージャーに限らず、別業界や別業種にチャレンジするときに、共通して求められることかもしれません。 創業期の企業に参画したら、いつの間にかプロダクトマネージャーに 創業期のスタートアップに参画すると、一定の役割分担はありつつも明確な業務分担というより、目の前の課題をお互い拾いあって解決していくことになります。このようなフェーズで、なんらかの成果を出すと、仕事が集まってくるようになります。そして、気付いたらプロダクトマネージャーとしての役割を担っていたということが少なからずあるのです。 この経路は少し先細ってきているように思います。というのもプロダクトマネージャー自体が市民権を得つつあり、スタートアップにおける1人目のプロダクトマネージャーの採用はトピックの1つとして認識されています。このような背景を踏まえると、気付いたらプロダクトマネージャーになる前に、プロダクトマネージャーを採用してしまう傾向にあると言えるでしょう。 中途入社からいきなりプロダクトマネージャーにチャレンジ 社内異動によるチャレンジとして説明しましたが、エンジニア、デザイナー、アナリティクス、ビジネスサイドからいきなりプロダクトマネージャーに転職してしまうケースも一定数あります。 それぞれのファンクションでの経験が生きる領域については異動ではなく、転職でも可能性はるのです。ただし、もちろん社内評価を糧にチャレンジできる異動に比べ、他社に違う職種であるプロダクトマネージャーに転職することは、当然ハードルは上がります。 CEOにチャレンジ プロダクトマネージャーの役割はユーザー課題を見出し、解決することです。単なる職種ではなく手段として質的に異なりますが、起業し、会社という枠組みの中で同じことを実現することもできます。つまり、もし解決したいユーザー課題とパッションがあるのであれば、プロダクトマネージャーという職種にこだわらなくても、起業してしまえば否応がなくともプロダクトマネージャーとしての役割を担うことになるのです。 プロダクトマネージャーはmini-CEOと言われますが、この手法は名実ともにCEOとしての職責を負うので、当然かなりハードな道にはなります。ただ、企業やポジションに左右されることなくプロダクトマネージャーとしての役割を担うことができます。 3\. アカデミックからのチャレンジ 番外編として、海外だと学部でコンピューターサイエンスを専攻し一度社会人を経験した後、MBAに行ってプロダクトマネージャーに転じるケースがレールとして確立している模様です。例えば、GoogleがMBA卒をAssociate Product Managerとして受け入れ、1年間のトレーニングプログラムを提供しているのは有名な事例です。 さらに、昨今ではNew York UniversityやCarnegie Mellon UniversityでDiploma programとして、プロダクトマネジメント専攻のMBAコースが用意されています。まだ卒業生とコミュニケーションしたことはなく、その実態はつかめていませんが、有用な経路の1つになるかもしれません。 日本のプロダクトマネジメントに関するコースはまだかなり限定的ですが、海外には多岐に渡るプロダクトマネジメントに関するコースが展開されています。例えば、ライトなものだと、General Assemblyでやっているプロダクトマネジメントコースが挙げられます。また、Ivy leagueのMBAもプロダクトマネジメントのオンラインコースを提供してくれています。 私もいくつか受講しましたが、プロダクトマネジメントを体系的に学ぶにはかなり有用な手段だと思います。数万円から数十万円で受けられますし、コースによってはCertificateや単位を取得できるものもあります。MBAの教授でGAFAMの顧問等を歴任されている方に教えてもらうと、知見だけでなく、気持ち新たに取り組むきっかけにもなると思います。 ポイント プロダクトマネージャーになる経路は無数にあります。手堅く行くなら、すでにプロダクトマネージャーへの異動の実績が多い企業で、プロダクトサイド、エンジニアやデザイナーで入社し、しっかり実績を積んで、異動をリクエストしていくことが一番王道だと思います。もちろん、入社してすぐ手を挙げるのではなく、異動の場合はとにかく現ポジションでしっかりパフォーマンスすることが不可欠です。 プロダクトマネジメント人材が足りないと巷では言われているにも関わらず、なり方が確立していないので、その門戸は狭まれています。にも関わらず、プロダクトマネージャーになりたいという人は非常に多い状況です。つまりプロダクトマネージャーになりたいというだけでは他の候補者と差別化できず、その一歩として現ポジションでの実績を積み、プロダクトマネージャーの適正があることと、コミットメントを伝えていかなければならないのです。 また、未経験からのチャレンジでまとめたように、ドメインや地頭によるポテンシャルに自信がある方は、それらの強みを活かしやすい企業にプロダクトマネージャーのポジションが空いていないか逐次チェックすると良いと思います。 特にドメインとプロダクトマネジメントの双方の経験がある方は、競合企業にしかいません。そのため未経験に対する門戸が比較的広いことが多いので、すかさずチャレンジすることをオススメします。 さらに、すでに解きたい課題とパッションを持っている方や、とにかく自信がある方は、いきなりCEOやMBAから海外でプロダクトマネージャーになる道に挑戦しても面白いかもしれません。 まとめ プロダクトマネジメントという概念は普及の一途を辿っており、プロダクトマネージャーになりたい方は増加し続けています。しかし、その門戸はかなり限られているのが現状です。 ではプロダクトマネージャーにはなれないのかというそうではありません。開発やデザインの知見、ユーザー理解、ドメイン知識、ポテンシャルなど、プロダクトマネージャーに異動する糸口は無数にあります。また、異動だけでなく、未経験からのチャレンジもあります。 プロダクトマネージャーへの転身を検討するに辺り、上述の経路を1つ1つ眺め、キャリア構築の一助となれば、これほど嬉しいことはありません。 --- # SaaSにおけるプライシングの進化 URL: /insights/34 title: SaaSにおけるプライシングの進化 summary: "本記事では、XaaSの変化に応じて、ビジネス、プロダクトがどう進化してきたのかを確認した上で、プライシングについてどのような進化が求められているのか明らかにしていきます。" date: 2023-06-15 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/34/00.jpg" これまでパッケージによる売り切りが主流だったソフトウェアビジネスが、徐々に大手企業でXaaS化され始めたり、スタートアップにより新しくSaaSとして提供され始めています。海外の事例ですが、Adobeのセンセーショナルな事例をご紹介させていただいた通りです。 本記事では、XaaSの変化に応じて、ビジネス、プロダクトがどう進化してきたのかを確認した上で、プライシングについてどのような進化が求められているのか明らかにしていきます。 ビジネス、プロダクトに求められる変化 パッケージとSaaSでプロバイダーがサポートする範囲を明確にすることで、ビジネス、プロダクト両面にどのような変化があるのか確認していきます。 パッケージの場合、プロバイダーは販売まで責任を持ち、その後はメンテナンスやアフターケアを行う程度で、販売までに強い力点があるビジネスです。他方、SaaSの場合、販売の先にある利用、さらに成果が出るところまでサポートすることになります。 というのも、サブスクリプションというビジネスモデルを採用しているため、販売して終わりではなく、プロバイダーはユーザーが利用し続け、成果を感じてもらえないと解約されてしまうからです。 では、ユーザーが利用し続け、成果を実感してもらう上で、どのような変化が必要なのでしょうか。 1.ビジネス面 まずビジネス面ですが、ビジネスモデルの変容による変化とユーザーとの向き合い方に変化が必要になります。 具体的には、パッケージによる売り切りモデルは販売時点で売上のほとんどを認識するので、今期どれだけ売れたかが財務観点で評価の焦点になります。他方、SaaSの場合、サブスクリプションを採用するケースが多いため、新たにARR(Annual Recurring Revenue)やChurn Rateなどの指標を活用し、評価していく必要があります。 また、売上に連動する形で、組織、評価設計するのではなく、ARRやChurn Rateなどの目標値を置き、組織設計し、評価も期中の新規獲得ARRなどで評価することが多いように思います。 さらに、ユーザーとの接点でも変化が求められます。つまり、販売さえすればよいのではなく、ユーザーが成果を出すまでの過程を営業として捉え直す必要があります。そのため、単に営業だけでなく、ユーザーと接するビジネスサイドの体制を、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスと、ファンクションごとに設計し、バトンを引き継ぎながら、最終的にユーザーに成果を創出するのです。 この中でも特にカスタマーサクセスマネジメント(以下CSM)が新しい概念で、ユーザーと継続的なリレーションを構築し、成果を出し、利用し続けられるようにサポートする最後の砦になります。 2.プロダクト面 他方、プロダクト面ではユーザーが継続的に利用し、成果を感じられるソリューションを作り続け、正解に近づけていくことが重要になります。 そのため、まずユーザーが抱える課題とニーズを共有してもらえる関係値をユーザーと直接、もしくはCSMを通して構築する必要があります。さらに、個別のユーザーによる要望を対応しても多くのユーザーに価値を提供できないので、ユーザー課題とニーズが一定のユーザーセグメントに共通するものなのか、確認していくことになります。 この手順を踏んで開発を進めることで、売れるプロダクトではなく、成果を感じ使い続けてもらえるプロダクトを提供できるようになるのです。 また、SaaSはクラウドを通して提供されるため、ユーザーの認証、利用を提供できるプロトコルが必要になりますし、セキュリティ、可用性、冗長化、DR(disaster recovery)対応などをプロバイダー側で担保することになります。 このように、ユーザーと継続的なリレーションを構築し、ユーザーの課題やニーズに真摯に向き合い、ユーザーに使い続けてもらうことに焦点を当て、ビジネス、プロダクト双方から対応することが必要なのです。 プライシングに求められる進化 SaaSを運営していく上で、ビジネスとプロダクトに変化が求められるということは、ビジネスとプロダクトをブリッジする役割であるプライシングにも当然進化が求められます。 しかし、プライシングはビジネスやプロダクトと比肩されるべきテーマであるにも関わらず、対応が遅れがちです。本来ARRに直接貢献するテーマであるプライシングが過小評価されてしまっているようにも思います。 また、ビジネスとプロダクトをブリッジする役割であることから、プライシングの担当者、意思決定者が不明確になりやすく、結局CEOが音頭を取らないと進みにくいという特性もあります。さらに、ビジネスオペレーションに関する開発に意欲的なエンジニアが少なく、プライシングに関するプロセスの進化が後回しになりがちです。 そのため、スタートアップでもビジネスとプロダクトは対応できているが、まだプライシングに対しては進化の余地を残している企業が多いように思います。 それでは、本来SaaSにおいてプライシングはどのような進化が必要なのでしょうか。立ち上げ期、PMF期、グロース期、マネタイゼーション期に分けて確認していきます。 1.立ち上げ期 立ち上げ期はプロダクトの企画検討からリリースまでをスコープとしており、ユーザー価値を企画し、開発を進める段階です。この時期、リリースに向けGo to Market(GTM)の一貫として、プライシングの検討しますが、基本全機能が使える1プランを展開することが多いです。そのため、議論の中心は価格を決めることになります。 このタイミングでは、具体的なプラン設計やプロセス面の進化を議論するというよりは、今後のロードマップを眺めて、ユーザー価値やターゲットセグメントが変わるポイントをイメージしておき、その際に大きなプライシング変更があり得ると心構えておくと良いと思います。 2.PMF期 PMF期はプロダクトリリースから一定のユーザーセグメントにプロダクトが受け入れられるまでを想定しています。この時期、当初想定していたターゲットセグメントに合わせてプライシングを決めて販売を進めていくことになります。 リリース当初はニッチなセグメントに絞って展開していくことが一般的で、徐々にターゲットセグメントを広げていくことになります。ユーザーの事業規模や業界に多様性が出てきたら、ユーザーのペルソナと提供する価値に応じて、プライシングを分けて、複数プランを提供することになります。 まだ契約件数が少ない時期は取引先をSpreadsheetで管理し、請求書をお手製のもので作成し、送付されていることも多いです。そこから、プランが複数になってくると、プライシング周りの各種ビジネスオペレーションも確立していきます。CRMやワークフローが導入され、取引先の管理に加えて、見積や値引の承認プロセスが整備されます。 3.グロース期 グロース期はPMF期からさらに進み、複数のマーケットで導入が進んだり、さらにSMBだけでなく、エンタープライズ企業にもプロダクトが受け入れられるまでとします。 これらを実現しようとすると、これまでのプライシングをさらに様々な角度で細分化し、きめ細かい訴求が求められます。例えば、ユーザーの裾野を広げるために、トライアルやフリーミアムプラン、さらにセルフ課金による展開も考えられます。 ターゲットセグメントや質的に異なるマーケットの開拓が進むと、業界やユーザー規模に合わせたプランがメッシュ構造で設計されるようになります。階層型のプライシングだけでなく、アドオンなど、機能を追加的に利用することに課金する手法なども活用され始めます。さらに、セルフ課金に対応したクーポンやリファラルコードを活用した値引など、値引の多様化が一気に進む時期にもなります。 導入社数が伸びていくとビジネスオペレーションの進化がより強く求められます。この時期に、契約管理から決済までのフローを見直し、サブスクリプション向けのCRMや契約管理、決済などのSaaSを導入してビジネスオペレーションの確立を行うことになります。 また、プランの多様化に伴い、納品に向けた環境構築を行うツールを開発されたり、機能開発に応じてどのプランに充当するのかを検討するプロセスの構築が行われたりもします。 4.マネタイゼーション期 マネタイゼーション期は導入社数だけでなく、ARPUの最適化を行い、売上を向上させることにフォーカスした時期を指します。 この時期に入ると、収益モデルの多角化を目指し、新規プロダクトの展開、SaaS×FintechやSaaS×PFと行ったビジネスモデルの質的な変容を進めることになり、プランの多様化がより一層進みます。 ただプランを細分化していくだけでなく、商談を積み上げていく過程で価格を最適化していくことも議論されていきます。その対象はサブスクリプションだけでなく、導入支援などのワンタイムのプランに対しても多様化し、最適化が進んでいきます。 グロース期に続き、プランの数が指数関数的に増えてくるので、新規プロダクトや新しいビジネスモデル導入時のプライシングやプロダクト全体のプライシングの見直し、新規プランの作成など、網羅的にプランの意思決定をサポートするプロセスが整備され始めます。 ここまで来ると、一般的なCRMや契約管理、決済などのSaaSだけでは管理しきることが難しくなり、開発チームを組んで、多様化が進むプライシングに合わせた機能拡張を担当していくことになります。 まとめ リセッションフェーズに入ったことで、ARRに直結するプライシングは今後SaaS事業を成長させていく上で、再認識されるべきテーマだと思います。 改めて、SaaSを運営されている皆様は自社のフェーズとプライシングの現状を見比べ、先回りして進化させることが出来ているのか、それとも後塵を拝しているのか、まずはセルフアセスメントしてみてはいかがでしょうか。 プライシングを経営マターだと捉えることができれば、プロダクト、ビジネスと同等の成長エンジンに進化させていくことができるテーマなので、第三の矢として機能させ、事業成長の一端を担うきっかけになれば幸いです。 --- # フリーミアムと3つの戦略 URL: /insights/35 title: フリーミアムと3つの戦略 summary: "本記事ではSaaSにおいてフリーミアムとはどういう位置づけなのか、似た概念のフリートライアルと比較しながら確認し、プロダクト戦略上どのような意味を持つのか確認していきます。" date: 2023-06-26 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/35/01.jpg" フリーミアムという概念はB2Cのプロダクトで活発に議論され、導入されてきました。特にSNS、ソーシャルゲーム、メディアなどでは、ほとんどフリーミアムモデルを採用していると言っても過言ではありません。 B2Bを主戦場にしているSaaSでもフリーミアムは導入可能性があるのでしょうか。実はすでにProduct-led growthの文脈で、フリーミアムの検討がされるようになっており、SMB向けのプロダクトでは導入されることが増え始めています。 この状況を踏まえ、本記事ではSaaSにおいてフリーミアムとはどういう位置づけなのか、似た概念のフリートライアルと比較しながら確認し、プロダクト戦略上どのような意味を持つのか確認していきます。 フリーミアムとは まず、フリーミアムの概念を確認すると、極めて基本的なユーザーストーリーを実現できる最小限のプロダクトを期間などによる制限を行わず、無料で提供することを指します。主な目的は価格を無料にすることでユーザー獲得を最大化し、プロダクトの進化を助長することです。 フリーミアムを利用しているユーザーのニーズが高度化した時に、追加機能や、機能の利用回数やID数などによる制限を超えて利用できる有料プランを提案し、アップセルを促し、収益化することになります。 他方、似ている概念としてフリートライアルというものがあります。こちらは無料でプロダクトを利用できることはフリーミアムと一緒なのですが、基本的に利用できる機能や回数に制限がないことが多いです。その代わり、1週間から1ヶ月程度の期間による制限が付加されていることが多く、その期間のうちにユーザーがプロダクトの有用性を確認し、必要であれば期間終了後に有料プランを登録することになります。 主な目的はユーザーにプロダクトを広く試してもらい、その価値や品質を実感してもらうことで、製品やサービスに対する興味や信頼感を高め、購入につなげることになります。フリーミアムと違い、期間制限を設けているため、ユーザー獲得に重点を置いた施策になります。 Slackにおけるフリーミアムの変化 Slackは一定投稿数やストレージ容量までは無料で利用できるというフリーミアムプランを提供してきました。期間制限がなく、数量による機能の利用制限なので、文字通りフリーミアムプランです。ところが、去年9月よりこの制限を取り払い、代わりに一定期間の投稿しか履歴を残さない制限に変更しました。 Slackの利用目的は社内外とのコミュニケーションですが、その場限りのものだけでなく、まとまったものを投稿し、固定投稿にしたり、後で読むためにフラグをつけておくようなブックマーク的な機能もあります。つまり、Slackはストックとしてのコミュニケーションの場としても活用されることを想定して開発されています。 後者のストックとしてのコミュニケーションを念頭において、過去90日しか投稿の履歴を保持しないという制限は、機能制限というより期間制限に近いものであり、フリートライアルとして色彩が強い制限になります。 また、フローのコミュニケーションに対しては利用制限がないという見方ができるのですが、一定のコミュニケーションを継続的に行えず、最後の投稿から90日経ってしまうと、何も投稿がない状態になってしまいます。このような状況になると、投稿に対するハードルが一気にあがります。つまり一定のコミュニケーション量が担保できなければ、フローのコミュニケーションに機能制限はないのですが、事実上利用されにくくなるのです。 まとめると、フリーミアムプランの制限の変更は機能制限という立て付けを保持しながら、実態として限りなくフリートライアルに近い制限に変え、かなりユーザー獲得に重点を置いたプラン設計だと思われます。主たる目的をどこに置くのか、そして機能や期間をどのように捉え、それらを制限することで、ユーザーの利用動向がどのように変容するのかを勘案し、制限をきめ細やかにデザインしている事例と言えるでしょう。 フリーミアムが実現する3つのプロダクト戦略 Slackを例に取り、フリーミアムの制限に対するデザインからその戦略を考察したのですが、フリーミアムを通して実現できるもっと基本的な3つの戦略があります。ここでは、それらを1つずつ紹介していきます。 1.ネットワーク効果の創出 まず、フリーミアムによるネットワーク効果の創出が挙げられます。コロナウィルスの蔓延により一気に普及したZoomは1対1のビデオ通話に対して機能制限をしないフリーミアムプランを展開しました。これにより、もともとユーザーだった方が非ユーザーの方とビデオ通話をする際にZoomを活用することができ、コミュニケーションツールの特性を活かし、一気に非ユーザーにアプローチしました。 当時、リモートワークが余儀なくされていた環境で、企業などの団体にとってビデオ通話のようなオンラインコミュニケーションのニーズが極めて高く、各所でアトミックネットワークがまたたく間にできていったように思います。そこに、非ユーザーへのアプローチができたことで、導入可能性があるセグメントにZoomの品質やサービスを触れてもらうことができ、ネットワークがネットワークを生み出す仕組みができ、一気に普及したのです。 コミュニケーションは最たる例ですが、誰でも気軽に使い始められるフリーミアムとユーザーが増えれば増えるほど創出できる価値が向上するというネットワーク効果は非常に親和性が高く、ユーザー獲得という観点で強い武器になる可能性を秘めています。 2.ユーザープールの獲得によるエンゲージメント向上へのフォーカス 最低限のユーザーストーリーの実現には限定されますが、期間制限なく、無料で使えるフリーミアムプランは、使い始めることに対するハードルを極限まで下げてくれます。ユーザー獲得という観点では、究極のProduct-led growthと言えます。 もちろん、マーケティングとの連携やチュートリアルの磨き込みなどにより、フリーミアムを通したユーザー獲得をさらに進化させる余地はあります。ただフリーミアムを展開することで、プロダクトという最も重要な資産をユーザー獲得に対して提供していることになるので、プロダクトサイドとしてはユーザーのエンゲージメントに集中できるようになります。 また、フリーミアムを通してUI/UXに慣れたユーザーはより高度なニーズが出てきた場合、他のプロダクトも合わせて検討することになりますが、すでに一定期間利用した実績は検討をすすめる上で、非常にインパクトあるインプットになります。 具体的な事例として、Mailchimpではリーマンショック直後にフリーミアムを導入し脚光を浴びました。当時SMBのマーケティング向けにEメールの配信プラットフォームを提供していたのですが、SMBの廃業率が高く、ユーザー獲得に閉塞感が出ていたようです。 そこでフリーミアムを採用し、ユーザーが送信するメールにMailchimpのロゴを入れ、LPに誘導することで、ユーザー獲得の効率を一気に向上させることが出来ました。そこからは有料化してもらうことに焦点を当て、事業を成長させてきたようです。 3.初期からプロダクトの利用データを取得し、高い精度のロードマップを策定 SaaSの場合、プロダクトのリリース直後から一定数のユーザーに使ってもらうことは非常に難しいです。特にエンタープライズ向けのSaaSの場合、商談を何度も繰り返し、場合によって1-2年かけて導入を決めてもらうようなことも少なくありません。つまり、プロダクトをリリースしても、いきなり多くのユーザーに使ってもらうことは難しく、実際の利用データを活用して、プロダクトビジョンやロードマップの精査を行うことができないのです。 しかし、フリーミアムプランを展開することで、機能制限こそありますが、一定数のユーザーに活用してもらえます。この状況が作れれば、ヒアリングに応じてくれるユーザーも出てきますし、当然利用データも取得し、どのように使ってくれているのか、何が次の課題なのかなどについて、ユーザーの解像度を上げることができます。引いてはプロダクトビジョンやロードマップの精度を上げることに繋げられるのです。 まとめ フリーミアムはB2Cを中心に導入されてきましたが、SaaSにおいても非常に重要な戦略の1つです。期間限定で使ってもらい、課金するかどうかを迫るフリートライアルとは違い、ネットワーク効果によるユーザー獲得、エンゲージメント施策へのフォーカス、リリース初期からユーザーの解像度を挙げ、高い精度のロードマップの実現という大きく3つの恩恵があります。 マーケティング施策の一環として捉えるのではなく、プロダクト戦略上の打ち手として議論し、導入するきっかけになれば幸いです。 --- # クラウドサービスにおけるセキュリティ URL: /insights/36 title: クラウドサービスにおけるセキュリティ summary: "本記事ではクラウドサービスを提供する企業が取るべきセキュリティ対策を外観した上で、各種セキュリティ認証について説明していきます。" date: 2023-07-26 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/36/00.jpeg" SaaSを中心としたクラウドサービスの普及に伴い、セキュリティに関する問題が大きな注目を集め始めています。クラウドサービスは初期投資なしで、少額の利用料だけで使い始められ、インターネットを通じて利用できるなど、多くのメリットがあります。ただし、同時にセキュリティリスクも存在します。 本記事ではクラウドサービスを提供する企業が取るべきセキュリティ対策を概観した上で、各種セキュリティ認証について説明していきます。なお、今回のテーマについてはSkygate Technologies CEO 粟津氏にもご協力を頂き、セキュリティの実態にも即してまとめていきます。 スカイゲートテクノロジズ株式会社 CEO/Founder 粟津 昂規氏 クラウドサービスのセキュリティリスク セキュリティと言っても、ビジネスサイドやプロダクトマネージャーからはどんなリスクがあるのか、ブラックボックスになりがちです。改めて具体例を上げると、クラウドサービスには以下のようなセキュリティリスクが存在します。 データ漏洩:サーバーやストレージが外部から攻撃を受け、ユーザーの個人情報や機密情報などが漏洩すること サービス停止:システムに障害が発生した場合、サービスが停止するため、ビジネス上の損失が発生すること サプライチェーン攻撃:本来侵入が難しいセキュリティレベルの高いターゲット組織でも、比較的セキュリティレベルの低い取引先や子会社などを経由することで、ターゲット組織への侵入を可能にすること セキュリティ対策の具体的な取り組み これらのリスクに対して、クラウドサービスのセキュリティを担保するためには、以下のような具体的な対策が必要となります。 ・アクセス制御 クラウドサービスの提供にあたっては、クラウドサービスを実行するインフラやアプリケーションなどのアクセス制御を適切に行うことが重要です。ユーザーから預かったデータが不用意に外部に漏洩したり、意図せず出力されることがないように様々なレベルでアクセス制御を導入することになります。また、ユーザーに提供する機能としても、権限や共有範囲のような機能を提供することは珍しくありません。 ・ネットワークセキュリティ クラウドサービスにおいては、ネットワークセキュリティを強化することも必要です。具体的にはファイアウォールやWAF(ウェブアプリケーション ファイアウォール)などによる不正アクセスの遮断、CDNなどを用いたDDoS攻撃(不用意に負荷をかけるアクセスを大量に行うことで攻撃を行う手法)対策などがよく行われます。 ・データセキュリティ クラウドサービスにおいて、ユーザーのデータに関するセキュリティも大切です。具体的には、データの暗号化やバックアップの実施などを行うことが必要です。また、データの取り扱いについてプライバシーポリシーを策定し、ユーザーに明確に説明することはすでに広く普及していると言えるでしょう。 セキュリティ対策の定期的な見直しと改善 クラウドサービスにおいては、セキュリティ対策の見直しと改善を定期的に行うことが必要です。具体的には、セキュリティレビューの実施や、脆弱性診断・対策、セキュリティポリシーの策定などを行い、常に最新のセキュリティ技術に対応することが必要です。 改めて、プロダクトマネージャー目線で上記の具体的な取り組みをみると、これらの項目に十分な工数を避けているか、ビジネス要件から仕様を設計する上でセキュリティ要件を加味できているかなどが重要なポイントになってきます。 PMFするまで(スタートアップにおけるシード〜プレシリーズA)は、セキュリティ対応よりもユーザーへの本質的な価値創造に向けた機能開発に重点がおかれます。しかし、B2Bを主体としたクラウドサービスでは、最初からセキュリティを考慮して設計したり、開発予算を見積もっておかないと、エンタープライズに展開してもセキュリティがボトルネックになってしまい失注に直結してしまうので、注意が必要です。 粟津氏のコメント クラウドサービスが準拠する可能性のあるセキュリティ認証 クラウドサービスを提供する企業は、セキュリティに対する信頼性を高めるために、第三者機関によるセキュリティ評価を受けることが一般的になっています。クラウドサービスプロバイダーのセキュリティ認証について見ていきましょう。 ISMS(ISO27001) ISMS(Information Security Management System)は、情報セキュリティマネジメントシステムの略称で、情報セキュリティを実現するための組織内のルールや手順を策定する枠組みです。ISMSには情報セキュリティポリシーやリスクアセスメント、情報セキュリティ対策の計画や実施、監視・評価、改善などが含まれます。 ISMSはISO27001(International Organization for Standardization)に基づくものが多く、国内においてISMSといった場合、一般的にISO27001に準拠したことが認められるISMS適合性評価制度のことを指し、ISMS認証などとも呼ばれます。 この規格は、国際的なもので国内では知名度が高く、国内では多くの企業や組織が取得していますが、実はアメリカではあまり取得されていません。 例えば、SMB企業が取得する場合には、半年から1年程度の準備期間と準備にまつわるコンサルティング費用が100−150万円程度、さらに30万円ほど申請費用がかかります。取得後は年間30万程度の維持費がかかります。 基本的に会社規模と事業所数に応じてコストが上がっていきます。社内にセキュリティに詳しい人材がいる場合には、コンサルティング費用を中心に大幅にコストカットができます。 ISO 27017 ISO 27017は、クラウドサービスに特化したISMSの一種と捉えることができます。ISO 27017は、クラウドサービスプロバイダーが提供する情報セキュリティに関するガイドラインであり、一般的なISMSと異なる点としてクラウドコンピューティングに特有のリスクやセキュリティ上の課題に対処するための推奨事項が含まれている点が挙げられます。例えば、仮想化技術に関するリスクや、マルチテナントによって発生する可能性のあるセキュリティ上の課題などが含まれています。 この規格はクラウドサービスプロバイダーが情報セキュリティのリスクを適切に管理し、データの保護、アクセス制御、システムの可用性、そして法的要件の遵守を確保するための標準的な手順を提供します。これにより、クラウドサービスのプロバイダーはセキュリティ関連の懸念を軽減し、顧客に安心してサービスを提供できるようになります。 ISMSと同じく、取得は難しいものではなく、費用感も同程度です。ただし、クラウドサービスの場合、開発をオフショアしている場合やカスタマーサクセスは別会社にBPOという形で提供している場合があり、これらの場合は別途費用がかかることがあります。 ISMAP ISMAP(Information Security Management Assessment Program)は、日本政府が定めるセキュリティ要求に対してクラウドサービスがその要求を満たしているかどうか評価する制度で、2021年ころよりスタートした比較的新しい制度です。アメリカの制度であるFedRAMPという政府でのクラウドサービス利用におけるリスク管理制度を手本にしています。 この制度は、政府向けのものであり、デジタル庁など官公庁向けにサービスを提供する場合、取得が必要になってきます。官公庁の調達などでクラウドサービスを提供し契約する場合に入札の要件となったり、ISMAPに登録済みのサービスである場合にはリスク評価のプロセスが不要になるなどのメリットがあります。ISMSやISO 27017と異なり、認定を受けるための基準も多岐にわたり、なおかつ費用も高額(初年度500-1000万円程度、翌年度以降は1000万円程度)です。シリーズAやBぐらいのフェーズで運用やコストに耐えるのは難しく、それ以降の検討にならざるを得ないでしょう。 SOC(Service Organization Control) SOCは、アメリカの公認会計士協会(AICPA)が策定したサービス提供組織の内部統制に関する報告書です。SOCにはSOC1、SOC2、SOC3があり、それぞれ異なる評価項目が設定されています。すべて監査法人が発行するレポートで、例えば、SOC1、SOC2をまとめて対応してもらえることもその特徴になります。 また、監査法人が発行するレポートであり、国際的に効力があります。大手金融機関向けにクラウドサービスを提供する場合、SOCを取得していないことが、直接失注要因になります。初年度はその時点におけるセキュリティ評価を行い、費用は500-1000万程度で、翌年度以降は期間評価によりレポートを発行するため、少し費用感が上がり、1000万程度になります。なお、取得に向けた準備は1年半ぐらいはかかることが多いです。 SOC1 SOC1は、以前はSAS70(Statement on Auditing Standards No.70)と呼ばれていたものであり、サービス提供組織の内部統制に関する報告書です。SOC1レポートは企業の財務会計に影響を与える業務プロセスに関連する内部統制を評価するために使用されます。売上やARRに影響するようなマスターデータをもっている状態だと、間違いなく求められます。 具体的な使い方として、会計領域のSaaSが取得している場合、エンタープライズユーザーが監査を行う際、利用しているSaaSの部分の監査についてはSOC1のレポートで代用することになります。逆にSOC1を取得していない場合、エンタープライズユーザーは利用しているSaaSについても自身で監査を行い、評価を受けることになります。 SOC2 SOC2は、クラウドサービスの情報セキュリティ管理体制を評価するための監査基準です。サービス提供組織の情報セキュリティ、可用性、機密性、プライバシー、処理の完全性の評価に焦点を当てています。SOC2レポートの取得には、サービス提供組織の内部統制が有効に機能していることが必要であり、取得の難易度は高いと言えます。しかし、BoxやSalesforceなど、機密情報を多岐にわたって取得し、管理、利用するクラウドサービスが取得することで、情報セキュリティの観点で監査を代替できます。気密性の高い情報を扱う上場企業をユーザーに抱えるクラウドサービスは積極的な取得が推奨されます。 基本的にはSOC2もSOC1と同様の費用がかかります。ただし、SOC2の範囲(トラスト原則というのが5つあり、1つだけ準拠するのか、全ての原則に対して評価を受けるのか、その範囲を指定できます)を減らしたり、あるいは追加したりできるため、SOC2はSOC1に比べると費用感に幅が生じるのが特徴です。 SOC3 SOC3は、SOC2と同様に、サービス提供組織の内部統制に関する報告書ですが、SOC2に比べて簡素化された形式で提供されます。SOC3レポートは、一般的な顧客やパートナーなど、広範な関係者に対して提供されることが多く、社外秘の情報を含まない公開可能なレポートです。B2Bを主体として展開しているクラウドサービスにとっては、一般向けの規格になるため、取得が不要となるケースが多いでしょう。 Pマーク(プライバシーマーク) 最後に、Pマークは、個人情報を適切に管理する仕組み(PMS)に関する制度です。国内でISMSに並び知名度が高く、国内では約2万社ほどが取得していると言われます。特に個人情報を取り扱う事業では重要になりますが、情報システムやクラウドサービスに限った制度ではありません。なお、費用感はISMSと同程度になります。 各種認証取得の方針 まず、プロダクトマネージャーとして、PMFまでは機能開発に重点を起きつつも、エンタープライズへの展開が見えてくる前から意識を高めておく必要があります。いきなり取得を進めるのではなく、ユーザーとのSLAを明確にしたり、ユーザーが要求するチェックリストの回答で代替することをお勧めします。受注の増加に伴い、ユーザーからセキュリティチェックリストが共有される機会が増え、個別対応が難しくなってきたタイミングで、認証の取得を検討すると良いでしょう。 その際、まず検討すべきは会社としてISMSを検討し、次いでクラウドサービスに特化したISO27017を検討することになります。両方とも、準備や費用感から規模が小さいスタートアップでも取得でき、審査も数日で終わるからです。次いで、国際的なSOCに準拠するのが望ましいです。 とはいえ、スタートアップには準備や費用など多大なコストがかかる制度ですので、クラウドサービスの利用料とは別に、その10−20%ほどセキュリティの対応費用として負担してもらうことも1つのオプションになります。最後に、早くから上記認証を取得することはデメリットばかりではなく、組織が小さければ、セキュリティ監査の審査料も相対的に安価になるため、組織が大きくなる前に取得してしまうのも選択肢の1つと言えるでしょう。また、例えばISMS、ISO27017、双方とも一度認証を取得すれば、3年は原則として維持されます。 少しまとめると、スタートアップや新規事業にとって認証の取得に向けた準備や費用は負担になってしまうので、まずはSLAやユーザーが要求するチェックリストの回答で切り抜ける道を模索すると良いと思います。その上で、ユーザーの増加に伴い、個別対応が困難になってきたタイミングで、ISO27017、SOC1・SOC2の取得を目指すことをお勧めします。 粟津氏のコメント まとめ 本稿では、クラウドサービスを提供する場合のセキュリティについて、その重要性や対策方法、セキュリティ認証について説明してきました。ユーザー数の増加に伴い、個別対応が難しくなってきたタイミングで、クラウドサービスプロバイダーが取得することが望ましい認証として、ISO27017、SOC、SOC2の順で取得を検討するとよいでしょう。 今後のクラウドサービスの発展に伴って、セキュリティリスクにも認識が高まり、認証取得を含め、セキュリティ対策を講じていく必要が高まっていくことが想定されます。クラウドサービスのプロバイダーは、セキュリティ対策に関する情報を積極的に提供し、利用者も自らのセキュリティ対策を徹底することで、より安心してクラウドサービスを利用することができるようになり、さらなる発展に期待したいです。 --- # プロダクト戦略実現の鍵を握るプロダクトマネージャーの多様性 URL: /insights/37 title: プロダクト戦略実現の鍵を握るプロダクトマネージャーの多様性 summary: "本記事では、グロース期以降に焦点を当て、プロダクトマネージャーの多様性がプロダクト戦略の実現にどのような影響を与えるのか、プロダクト戦略を確認した上で、その重要性とメリットを探求していきます。" date: 2023-08-10 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/37/00.jpeg" SaaSの普及に伴い、B2Bでもプロダクトマネージャーの役割はますます重要になってきています。B2Bという特性から業務上活用するサービスであり、プロダクト進化の方向性が多様を極めます。特にグロース期以降のフェーズにおいて、飛躍的にその多様性が高まります。 本記事では、グロース期以降に焦点を当て、プロダクトマネージャーの多様性がプロダクト戦略の実現にどのような影響を与えるのか、プロダクト戦略を確認した上で、その重要性とメリットを探求していきます。さらに、異なるバックグラウンドやスキルを持つプロダクトマネージャーをチームに組み込む際のベストプラクティスや課題にも触れていきます。プロダクトマネージャーとしての成功に向けて、多様性の活用がいかに重要かを明らかにしていきましょう。 グロース期以降のプロダクト戦略 PMFを達成し、グロースも実現できてくると、ビジネスを非線形に成長させる強固な戦略を採用する必要がでてきます。参考として以前共著させていただいた「ビジョン実現のために押さえておきたい!SaaSプロダクトの戦略立案に使える代表的な8パターン」からグロース期以降によく上がってくる戦略を3つほど紹介します。 1.オール・イン・ワン(All-in-one)戦略 この戦略は対象ユーザーが使う、すべてのソフトウェア機能を兼ね備えた戦略パターンを指します。複数の異なるSaaSを連携するなどして、使いこなすのは簡単なことではありません。そこで周辺領域のユーザーニーズを汲み取り、差別化要素である機能を除いて、他機能は簡易なものに留まりますが、一連の流れをサポートできるようにプロダクト拡充を行っていくことを指します。 シードやシリーズAなど、PMFを達成する前からこの戦略を採用することを明言し、業界や業種にコミットし、機能拡充を行う新規事業やスタートアップもいるほど、訴求メッセージがシンプルで、メジャーな戦略の1つです。 2.APIプラットフォーム戦略 オール・イン・ワン戦略とは逆に自分たちのフォーカスエリアを明確にし、周辺サービスと連携できる柔軟性を広く許容し、むしろ推進していく戦略を指します。 強い差別化要素やユーザーの囲い込みが出来ている場合に選択することが多く、ユーザーがAPIを活用し、SaaSプロバイダーが手が届かないカスタマイズなど付加的なサービスを自社開発する際に活用されます。さらにAPIプラットフォームが強力になるにつれ、3rd party developerが参入し、APIプラットフォーム上で開発されたSaaSを販売する場合もあります。 3.他サービスとのシナジー戦略 SaaSというビジネスモデルに閉じることなく、Fintechやマーケットプレイスなど、異なるサービスと連携し、さらなる価値創造を行う戦略もあります。 SaaSを起点にユーザーを囲い込み、決済まで一連の流れで実現したり、マーケットプレイスと連携することで業務効率化だけでなく、受発注などの取引まで実現してしまうこともあります。 これらの戦略を複数採用し、同時並行で実現していくことが求められた時に、同じバックグラウンドや経験をしてきたプロダクトマネージャーばかりが集まっても、その実現は難しいのではないでしょうか。オール・イン・ワン戦略を実現しようとすると、差別化要素となるコア機能はより深さが求められ、非常に高度なドメイン知識や業界理解を持っているプロダクトマネージャーでなければ、対応できない状態になっていることでしょう。 また複数プロダクトやモジュールを展開していく上で、共通する機能は切り出され、基盤として確立させる必要があります。いわゆるコンパウンドを実現させなければならず、基盤の設計や構築には幅広いビジネス理解と深いエンジニアバックグラウンドが必要になります。 さらに、APIプラットフォームの展開はユーザーや3rd party developerに向けてエヴァンジェリスト的に展開するBusness development要素を強く求められるようになります。Fintechとの連携は決済の仕組みやセキュリティ要件が高まるため、特定の高い専門性が求められます。 少しまとめると、グロース期以降はプロダクト戦略が多様化し、さらにそれらを組み合わせを推進し、実現させていくため、以下4つの要素を実現できる布陣を構する必要があるのです。 ・基幹プロダクト ・新規プロダクト ・基盤 ・ビジネスモデル自体を変革し、非線形の成長を創出するもの プロダクト戦略実現に向けた多様なポジション では、プロダクト戦略を実現していく上で、どのようなポジションがあるのでしょうか。担当エリアとレイヤーで分けて、それぞれ確認していきたいと思います。 まず担当エリアですが、これは担当するプロダクトやプロジェクトの特性や特徴をもとにポジションを分類したものになります。 1.コア機能 グロース期に入ると、差別化を牽引する機能やモジュールは深みを帯び、プロダクトマネージャーの経験だけでは企画することが難しい領域になります。 そのため、業種、業務を直接経験したことがある方か、カスタマーサクセスマネジメント(CSM)などでユーザーと深く向き合い、プロダクトを知り尽くした人で、プロダクトマネージャーとしての素養がある方の登用が必要になります。 2.グロース PMFが一定領域で実現すると、文字通りグロースが求められます。具体的にはサインアップ導線や課金導線の最適化といった領域です。アクセス解析を武器にユーザビリティのフリクションを可能な限り取り除いていくことになります。 B2Cではお馴染みのテーマで、高度な分析能力とUIの引き出しが多い方がフィットしやすいでしょう。 3.新規プロダクト 基幹プロダクト以外に、収益性の柱の重要度が上がるのもこのタイミングです。PMFを迎えることで、基幹プロダクトの不確実性が下がり、経営していく上で蓋然性高く事業展開できるようになることも、新規プロダクトのニーズが高まる要素でしょう。 新規プロダクトを担うプロダクトマネージャーに専門性が必要なわけではなく、どんなテーマや業務に対しても形にできるコミットメントと広い経験(もしくは学習能力の高さ)が強く求められます。 4.基盤 基幹プロダクトだけではなく、複数プロダクトの展開が見据えて、3−4つ目のプロダクトを進めるに当たって、共通部分の基盤化が必要になります。 具体的には、各種プロダクトがユーザーになるような共通機能で、ログインや課金を始めとし、機能の出し分けや権限などが挙げられます。プロダクトを企画するのではなく、プロダクトがユーザー価値創出に集中できるように、共通する機能群をまとめて企画するチームになるため、一段深いエンジニアバックグラウンドが必要になります。 5.連携 最後に、APIプラットフォームや、周辺プロダクトとのアライアンス含めた交渉、プロダクト設計を行うには、社内で企画し調整するだけでは話は進みません。そこで求められるのが社外との交渉や進捗管理を行えるBusiness developmentスキルになります。 企画業務とかけ合わせて、両方できるプロダクトマネージャーは非常に少なく、分担して進めるのが多いように思います。 さらに、レイヤーはイメージしやすいと思いますが、Cレベルやマネージャーなど階層による分類になります。SaaS界隈でも、プロダクトマネジメントの専門性や重要性が高まってきており、ポジションとして認知され、普及の過程を辿っているので、ここで確認していきます。 1.CPO/VPoP 多様なエリアをまとめ、プロダクト全体のビジョンや戦略の方向性を策定することになります。 また、戦略面だけではなく、それらを実現するために、どのような組織が必要なのか設計を行います。さらにその具体的な実現方法、採用や異動、育成などに落とし込んで推進していきます。 2.Product director/Head of Product(プロダクトマネージャーのマネージャー) 担当しているプロダクト単体のプロダクトビジョンや戦略策定(AI/MLや全プロダクトのグロースなど、横串でテーマを持つケースもある)を担います。 担当プロダクトについては最も詳しい存在になるため、全体のビジョンや戦略に対してインプットを求められます。また逆に経営陣から発信されたプロダクトビジョンにアラインすることも重要な役割の1つになります。 プロダクトビジョンや戦略、ロードマップを、対となるビジネスサイドや開発陣と連携しながら策定し、その実現を推進することになります。 ロードマップ実現に向けて、組織をデザインし、採用、異動などを進めることになります。 3.Product Manager 担当領域ごとのロードマップや、仕様策定を担います。実際開発を進めていく中で、プロダクトオーナーとしてスクラムの運営を担当することもあります。 プロダクトビジョンや戦略を実現していく上で、どのようなエリアにポジションを作る必要があるのか、まず洗い出すところから始めます。その上で、規模感が5−6人までで収まるなら、2階層、それ以上となると、CPO/VPoPも擁立し、3階層以上の組織構築が必要となります。というのも、プロダクトマネージャーは純粋に1人ではなく、プロダクト開発のハブ的な存在を担い、かつ多様なバックグラウンドを持ち、担当領域も専門性が高くなることが多いことから、1人で受け持つことができるメンバーは3−5人と、他ファンクションに比べ少なくなります。 また、事業計画の検討と合せて、ゼロベースで組織設計を行うことは実は年に1度程度しかなく、期中は現状の体制をどのように改善していくのか、漸次的な進化が求められます。また採用や異動のような時期をコントロールできない要素も多く、相対するエンジニアやビジネスサイドと定期的に連携しながら、微調整を繰り返し、理想と実現可能性を行き来しながら運営することになるのです。 プロダクトマネージャー自身の多様性 もう一歩踏み込み、エリアやレイヤーに応じて、どのようなプロダクトマネージャーをアサインすれば、プロダクトビジョンや戦略の実現を手繰り寄せることができるのでしょうか。ここでは、就業経験のある職種と所属企業のフェーズや提供先で分けて、その特性を捉えていきます。 実は、新卒からずっとプロダクトマネージャーとしてのキャリアを歩んできた方は稀で、以下のような何かしらの周辺職種を経験した上で、プロダクトマネージャーに異動し、活躍している方が多いです。 ・デザイナー ・エンジニア ・アナリスト ・コンサル ・ビジネスサイド(マーケ、CS) 先日執筆した「プロダクトマネージャーへのキャリアパス」の中で、バックグランド別の特性については詳述しているので、合せてご確認下さい。幅広い守備範囲を誇るプロダクトマネージャーにとって周辺職種の経験は自分の強みに直結し、自分の存在理由になります。プロダクトマネージャーに転身しても彼ら彼女らの強みとして残り続け、一般的なプロダクトマネージャーとして同質化しないからこそ、そこに多様性が生まれ、プロダクトのイノベーションの源泉となるのです。 バックグラウンド以外に、所属企業のフェーズに応じても経験できることが異なり、プロダクトマネージャーの強みに繋がります。 1.シード、PMF期 限られた人数で職種すら関係なく、1つのプロダクトを作り上げ、ユーザーに価値創造をしなければなりません。そのため、必然的にプロダクトマネージャーという枠組みを超え、かなり幅広い知見ととにかく前にすすめるという自力が鍛え上げられ、そこに強みが形成されます。 2.グロース グロース期になると、プロダクトマネージャーの多様性が出てくるため、この時期以降のフェーズを経験していると、自分の強みがどこにあるかを自問自答し、プロダクトマネージャーとして立ち位置を明確化している方が多いのが特徴になります。 3.マネタイゼーション APIプラットフォームの展開や、Fintechやマーケットプレイスとの連携などを行い、プロダクトの質的な変化を経て、事業や組織が進化するフェーズを経験することになります。 さらに、IPOやM&Aなどのイベントも直接ではないにせよ、間接的に関与が求められることもあり、知見を向上させる上で充実したフェーズと言えるでしょう。 4.メガベンチャー マネタイゼーションを超えて、メガベンチャーや大手企業での経験は細かく分権が進んだ組織に置いて、事前調査や準備を周到に行い、企画を通しきり、実現していくプロジェクトマネジメントスキルが重要になります。 さらに、私がよく比較軸に取り上げるプロダクトの提供先、つまりB2BとB2Cでも経験できることは大きく異なります。「事業成長に伴い変化するプロダクトリーダーの役割」で記載した通り、プロダクトリーダーのレイヤーでは、B2Bの方がプロダクトを進化させていく上でのオプションが多様で、プロダクトビジョン、戦略を描き切ると同時に、権限委譲や組織設計も差別化要素になります。かたやB2Cでは自分のユーザーでい続けられることにより、戦略面のオーナーシップを維持しやすく、UXと分析を中心に専門性を高めた組織構築を行うことになります。 また、「SaaSプロダクト組織を作るなら知っておきたい、『B2BとB2Cのプロダクトマネージャー』6つの違い」で詳述した通り、根本的にはB2Bは業務上使うプロダクトであるため、事前にユーザー調査を行うことで、精度高く企画を作り上げることができます。他方、B2Cは一定のユーザーを獲得し、プロダクトアウトでユーザビリティを磨き込み、ABテストを元に正解に近づけていくことになります。B2Bはマーケット・インで事前調査に重きがあり、B2Cはプロダクトアウトで、事後のイテレーションにフォーカスして、プロダクト改善していくことになります。 アサイン プロダクトビジョンに即し、多様なポジションがある中で、就業経験のある職種と所属企業のフェーズや提供先などを元にどのような方をプロダクトマネージャーに迎え、組織設計していくのか検討していくことになります。 自分と似た人を雇用しやすいというバイアスはみんなが持っており、プロダクトマネージャーもその例外ではありません。また、組織は静的なものではなく、動的に変化していくものなので、理想から考える機会は実は少なく、足元の論点をクリアすることに目線が行きがちです。日本のような非常に被雇用者が守られている労働環境の中で、中長期的な視点を失うことはリスクに直結します。 さらに、どんな組織でも多様性はイノベーションに繋がりえますが、足元だけを見ると、コミュニケーションコストが高く、決して居心地がいい組織とは言えません。例えば、ドメインに強みがあるプロダクトマネージャーとプロダクトマネジメントの経験が10年以上で一定のキャリアを歩んで来た方とではパフォーマンスの仕方が全く異なりますし、状況によって成果にボラティリティが出やすいです。このような環境下で前提なしにコミュニケーションをしたら、あまり良い結果にはならないことは火を見るより明らかでしょう。 このように、多様性に対する懸念材料はいくらでも上げることができます。短絡的に保守的な意思決定を行うと、同質化してしまうので、注意が必要です。特にグロース期以降はプロダクトマネージャーの多様性こそがプロダクト戦略を実現に向けたオプションを増やし、引いては競争力の源泉になります。 CPOやVPoPなど組織を統括する立場の人にとっては、非常に負荷が高い要素ですが、プロダクトビジョンや戦略に与えるプロダクトマネージャーの多様性を理解を深め、足元のパフォーマンスよりも、中長期でどのようなインパクトを出したいのかを念頭において、採用、異動を行い、組織設計し、プロダクトの進化を推進していくべきです。 まとめ グロース期以降のSaaSの成長を支えるには、様々なプロダクトマネージャーが力を合わせる必要があり、その多様性こそが競争力の源泉になります。多様なプロダクトマネージャー同士の歯車が合うと、組織としてパフォーマンスすると、信じられないようなインパクトに繋がります。しかし、そのためには組織としての透明性や、多大なコミュニケーションコストに支えられるものです。このような足元のコストに惑わされず、中長期を見据えた組織設計こそが重要なのです。 --- # 機能クローズの考え方とプロセス URL: /insights/38 title: 機能クローズの考え方とプロセス summary: "本記事では、プロダクトや機能の終焉に焦点を当て、その検討プロセスや意思決定のポイントについて解説していきます。" date: 2023-08-31 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/38/00.jpeg" プロダクトを企画し、開発を進め、リリースを行い、ユーザーに使ってもらうという過程は非常に困難を伴います。そのため、一度リリースされたプロダクトや機能が市場の変化や仮説と異なり、当初の期待に反して受け入れられなかった場合でも、機能やプロダクトを閉じるという判断は回避されがちです。さらに、閉じることによってアップサイドが得られないため、やりたい人が不在ということも珍しくありません。 では、プロダクトや機能を閉じる判断をどのようにすべきでしょうか?本記事では、プロダクトや機能の終焉に焦点を当て、その検討プロセスや意思決定のポイントについて解説していきます。 コスト B2CやB2Bでもコンシューマーユースの場合、フリーミアムモデルを採用し、無料で広くユーザーに利用してもらっていることが一般的です。実は、無料で展開していても、様々なコストがかかっています。まずはプロダクトを運営していく上で、少なからずかかっているコストを確認していきましょう。 1.インフラ まずはインフラです。B2Cだと、数百万のユーザーが使う可能性があるので、サービスを提供する上で、インフラのコストも看過できません。逆にB2Bではコンシューマーユースでもない限り、あまり多くのユーザが使うことを想定していないことが多いです。ただし、Marketing Automationなど大規模なデータセットを取り扱うことを前提にしている場合があり、このケースに限っては多大なインフラコストが掛かっていることがあります。 2.セキュリティ インフラと同じく、運用という観点で、セキュリティの監視、検証のためのツールやシステムの利用料金がかかっています。 3.サポートコスト 追加開発を行わなくても、ユーザーが利用する以上、一定のサポートが必要になります。非注力になった時点で、対象となるプロダクトや機能をメインに据えたマーケティング活動を行わなくなるので、ユーザー数が増えることはあまりないのですが、サポートが全く不要になることはありません。 ユーザーからの問い合わせがあったときに、答えられるようにしておく必要があり、目に見えにくいのですが、意外とコストがかかるので注意が必要です。 4.開発コスト 追加開発をしなくても、一定のメンテナンスが発生することがあります。そのために、仕様の概要を把握し続けておく必要があります。非注力領域になり追加開発が行われなくなると、仕様を把握していた人が退職してしまうケースがあります。この際、きちんと引き継ぎを行っていないと、そもそもメンテナンスが不可避の場合、キャッチアップから行う必要が出てしまい、多大なリソースがかかってしまいます。 5.他開発への影響 非注力となったプロダクトや機能に対して、メンテナンス以外の追加開発を行うことは稀です。しかし、他の機能の開発を行う際、非注力のプロダクトや機能があることを前提に、設計を行うことになり、場合によって不必要な複雑性を産み、開発工数が膨れてしまうことがあります。 上記のように、新たなマーケティングを行わなくても、インフラ、セキュリティ、サポートは当然発生します。また、メンテンナンスや他開発案件への影響も出てしまい、場合によって多大なコストに繋がることもあります。 意思決定のタイミング コストを念頭に置いて、プロダクトや機能を閉じる意思決定のタイミングを具体化していきたいと思います。 まず、インフラによるコストが大きいプロダクトの場合、マネタイズやユーザー数増加に関する検証を進め、限界だと判断し、非注力に落とすタイミングで、合せて閉じるかどうかの議論を行うケースが多いです。というのも、明確なランニングコストと捉えられ、収益が出ないのに、続けることに意味を見出しにくいからです。 セキュリティ面ではコストも重要なのですが、これまでの対応では、セキュリティリスクが高まることがあります。他プロダクトやプロダクト全体でリスクが上がっていれば、まとめて対策を打つことになりますが、対象となっているプロダクトや機能におけるセキュリティだけが問題になっているケースの場合、メンテナンスの域を超えて対応を進めることは難しいと判断することが多いように思います。 次に、サポートコストだけにより緊急度が上がり、プロダクトや機能を閉じるという判断を迫られることは少ないです。サポートコストは、プロダクト上の要因に伴い、結果的にかかってくるコストなので、意思決定を左右する主たる要素になることは少ないと言えるでしょう。 逆に、開発リソースは事業拡張を進めていく上で非常に貴重な経営資源なので、対応に多大な開発リソースがかかる場合、プロダクトや機能を閉じてしまうという判断に繋がりやすいです。具体的にはすでに追加開発をしていないプロダクトや機能に対して障害が発生したり、明らかに改修しなければならない案件がありますが、多大な工数がかかってしまうケースです。 他にも、他開発案件を進めるに辺り、非注力プロダクトや機能が存在していること自体により、影響範囲を広げてしまい、設計を困難にし、結果開発リソースを逼迫してしまうことがあります。このように開発リソースへの影響が具体化したタイミングで、重要性をあげて対応を進めることが多いです。 上記のように、ランニングコストや介在しているリスク、開発リソースへの影響など、それぞれのコストの性質に応じて、プロダクトや機能を閉じる議論を進め、意思決定を行うことになります。 プロダクトを閉じるプロセス プロダクトや機能を閉じると、社内はもちろん、ユーザにも多大な影響がある場合が多く、閉じるプロセスは慎重に進める必要があります。 1.社内での意思決定 コストの性質を明確化し、その性質に合せてリスク、重要度、緊急度を把握した上で、まずは社内で意思決定することになります。その上で、閉じる理由、対象、影響範囲、ユーザが取りうる代替手段の有無とその内容をまとめた上で、開発工数やスケジュールを踏まえた上で、閉じる日時を決めます。 2.社外コミュニケーション そして、社内の関係者だけでなく、閉じることにより影響があるステークホルダーに広く周知を行い、社外へのコミュニケーションプランを作成します。事前にプロダクト上の告知はもちろん、場合によってプレスリリースを活用したり、対象プロダクトや機能にヘビーユーザーがいる場合は個別に説明することもあります。このとき、ユーザーから時として痛烈なフィードバックをもらうこともありますが、振り返りという観点でも、今後のプロダクト開発においても、非常に価値の高いものなので、しっかりまとめ、関係者で読み合わせを行うことをお勧めします。 3.プロダクトや機能のクローズ 最後に、プロダクトや機能を出したときと同じように、しっかり閉じたことを称賛しましょう。結果として閉じることになったとは言え、関係者は非常にタフなワークロードをこなし、リリースしたことを忘れてはいけません。そして、閉じるという作業は様々なステークホルダーからネガティブなフィードバックを受けやすく、非常に困難なプロジェクトになることが多いです。ここでしっかり称賛できないと、プロダクトや機能を閉じる意思決定ができても、実行できず、コストを垂れ流し続けてしまいます。 まとめ 多大な労力をかけてリリースした機能を閉じる意思決定を行い、具体的に閉じていくには、様々なステークホルダーによる複雑な気持ちが交錯します。その中で、冷静にコストと価値を評価し、着実に閉じることが求められます。 プロダクトマネージャーは単に機能追加をするだけではなく、時に非情に閉じる意思決定を行い、身を挺して推進することで、さらなるプロダクトの進化、プロダクトビジョンの実現を手繰り寄せるきっかけになれば幸いです。 --- # ユーザー価値原論 URL: /insights/39 title: ユーザー価値原論 summary: "ユーザーファーストを空気を吸うように、実現できている組織は多くはありません。プロダクトを企画する際に、常に思い起こされ、ユーザー課題を洗い出し、PRDを作成し、最終的にユーザーに価値あるものになっているか確認できるようになるには、高いハードルがあります。" date: 2023-09-12 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/39/00.jpeg" ユーザーファーストなプロダクト開発という標語は、プロダクトに関わる仕事していれば、一度は聞いたことがあるものだと思います。 しかし、ユーザーファーストを空気を吸うように、実現できている組織は多くはありません。プロダクトを企画する際に、常に思い起こされ、ユーザー課題を洗い出し、PRDを作成し、最終的にユーザーに価値あるものになっているか確認できるようになるには、高いハードルがあります。 これには、何個か理由が挙げられます。例えば、ユーザー課題さえ解ければ、プロダクトとして成立するのではなく、社内のアセットや強みを活かさなければ、なぜ会社をあげて取り組むものなのか不明瞭になってしまいます。逆に何らかのアセットや強みが活かされていないと、差別化に繋がりません。その結果、アセットや強みを起点に考え始めてしまい、ユーザー課題が解けているのか、その検証が後回しになってしまうのです。 他にも、プロダクトとしての差別化以外にも、事業として成立しなければならず、先に収益性に目が行ってしまうことも挙げられます。組織的な課題として、PMFを実現した組織ではチームの一体感は薄れ、プロダクトとビジネスが別組織として運営され始めます。そのため、ビジネスサイドが受けたユーザーからのフィードバックをダイレクトにプロダクトに反映されるプロセスが構築できていないことも散見されます。 仮にプロセスが構築できていたとしても、プロダクトとビジネスでは目標に掲げているものがプロダクトを通したビジョンの実現とユーザー価値の実現と売上目標の達成とで異なります。理論的に中長期的には目標は一致するのですが、目標のリードタイムが大きく異なり、すり合わせるには困難が伴います。 このようにユーザーファーストと一言にその重要性を説いても、実際構造的な課題が存在し、実現することは簡単ではないのです。 ユーザー課題の発見から価値創出までのプロセス もう少しユーザー価値というものに焦点を当てて、実現までのプロセスの構造化に迫っていきたいと思います。 まず、ユーザー課題とはユーザーの状況に応じた主観的な課題を指しており、普段ユーザーと接しているビジネスサイドにより言語化されます。そして、プロダクトマネージャーが企画を進める前段階として、取り組むテーマについて数十社分の課題を集めて、一定のユーザーセグメントに分けた時に、共通項として見られる客観性の高い課題を見出していくことになります。 次に、課題を課題で終わらせるわけではなく、客観性の高い課題に対して、プロダクトを通してユーザーに価値を提供できないか、検討を進めていくことになります。このとき、プロダクトマネージャーは個別具体的な課題を念頭に起きますが、あくまで客観性の高い課題に対して検討を進めることになります。 これに対して、最終的なユーザー価値とは、ユーザーが個別具体的にそのプロダクトを利用した時に、実質的な価値があるかです。プロトタイプを通して直接ユーザーに利用してもらい、その価値を確認したり、ベータ版として販売し、テストマーケティングを行うことで検証を進めていくことになります。 ここまでの流れを主体(ビジネスサイド、プロダクトサイド)と対象(課題と価値)の2軸で整理し、そのプロセスをプロットすると下記のようになります。 ユーザー課題や価値と言ったときに、ユーザーの個別具体的な課題からプロダクトを通した価値の実現までには、主体と対象を変えながら、上記のプロセスを踏むことになります。どのピースが欠けても、最終的にユーザー価値を実現することには繋がらず、一つずつ丁寧にクリアしていく必要があるのです。 実務における有用性 上記プロセスに沿うことで、どこで認識に飛躍があるのか、バトンの受け渡しができておらず、最終的なユーザー価値導出のボトルネックになっているのか把握することができます。 例えば、②課題の抽象化ができていなければ、ユーザーの個別具体的な課題と客観的な課題の整合性が薄く、個別具体的な課題に対してプロダクト企画することになるので、企画されたプロダクトの汎用性はかなり低いですが、特定のユーザーには刺さりやすいものになります。 ただし、課題の抽象化が甘いので、プロダクトビジョンと照らし合わせると、対象範囲が小さく、実現に対してインパクトはなかったと判断されやすくなります。プロダクトマネージャーは抽象化した課題だけをPRDにまとめていくのではなく、ユーザーフィードバックの一覧やインタビューメモなど、ユーザーの生の声はそのまま関係者に連携すべきです。こうすることで、課題の抽象化に飛躍がないか確認しあえるようになります。 次に、③客観的な課題に対してプロダクト企画ができていない状態とは、ユーザーの課題ベースではなく、自社のアセットや強みをベースに企画が進められている場合を指します。業界に対する知見や会社としてのアセットや強みが多い企業に取られやすい企画手法ですが、課題をベースにしていないことから提供方法がプロダクトアウトであり、リリースしても、結果ユーザーがついてこなかったり、全く売れないことが多いです。 この対策として、PRDは冒頭に背景やユーザー課題を明記することにしておくと、課題ベースの企画になりやすいです。人は方法を考えるのが好きなので、課題に対する意識は落ちやすく、できるだけシンプルに、そして自然に課題から考え始められるような工夫が効果的です。 さらに、②課題の抽象化、③課題に基づいた企画ができていますが、④個別具体的なユーザーに対して価値を提供できていない場合も考えらます。これは、たしかに②、③を個別に見ると実現できているが、最終的にユーザーにプロダクトを使ってもらったときに、ユーザー個別の課題を解けておらず、価値創出に繋がっていないことに指します。 例えば、②を行う際にユーザーセグメントを広くとりすぎてしまい、論理的に筋は通っているが、抽象度の高いプロダクトになってしまい、個別具体的なユーザーが利用する際、活用できないものになってしまっているのです。 この論点は、②、③にも通じるところがあるので、まずユーザーに接しているビジネスサイドにプロトタイプのレビューをしてもらい、一部のユーザーにも同様に利用してもらうとよいでしょう。またα版やβ版のようにリリースを段階的に行い、都度ユーザーフィードバックをもらうのも効果的です。 また、このタイミングでビジネスサイドと連携できていると、目標感のすり合わせにも効果的です。企画の大小によりプロトタイプのレビューまでできないケースもあると思いますが、デモを動画にとって連携したり、最終的なPRDを連携しておくだけでも一定の効果が見込めます。 上記の通り、①課題の把握と②課題の抽象化、②課題の抽象化と③ユーザー価値の企画、③ユーザー価値の企画と個別具体的なユーザー価値の創出と、それぞれの連関をしっかりと確認することで、最終的にユーザーファーストが実現するのです。 まとめ ユーザーからの課題認識を起点に、主体(ビジネスサイド、プロダクトマネージャー)と対象(課題と価値)を通して、バトンリレーされ、最終的にユーザーファーストなプロダクトや、ひいては文化が醸成されていきます。この過程は思っている以上に、見ている目線や目標が異なるので、それぞれの連関が失われやすいです。 ユーザーファーストという標語を掲げるだけで、実現できるものではなく、ユーザー課題を起点に個々の連関をこだわり抜いた企業だけが手にできる果実なのです。 --- # デザインエンジニアリングへの注目の高まり URL: /insights/4 title: デザインエンジニアリングへの注目の高まり summary: "近年ソフトウェア開発においてデザインエンジニアリングという言葉を目にする機会が増えています。従前では工業デザインの分野として対象製品の製造や建築にかかる関係者が多く、工程も多岐に渡るものづくり過程において、ユーザーにとっての利便性及び効用の追求と、製造工程のリードタイム短縮やロス効率の最大化を両立させるためのアプローチとして議論されていたようですが、足元ではそのスコープがソフトウェア開発領域にも広がってきています。" date: 2022-06-29 author: "authors/takafumi\_endo.mdx" category: "categories/design.mdx" glossary: "glossary/agile-development.mdx" cover: "/images/insights/4\_cover.gif" 近年ソフトウェア開発においてデザインエンジニアリングという言葉を目にする機会が増えています。従前では工業デザインの分野として対象製品の製造や建築にかかる関係者が多く、工程も多岐に渡るものづくり過程において、ユーザーにとっての利便性及び効用の追求と、製造工程のリードタイム短縮やロス効率の最大化を両立させるためのアプローチとして議論されていたようですが、足元ではそのスコープがソフトウェア開発領域にも広がってきています。 デザインエンジニアリングの定義 ソフトウェア開発におけるデザインエンジニアリングの定義についても諸説ありますが、InVision社が公開する「DesignEngineeringHandbook」\[^1]では以下のように定義されています。 Design engineering is the name for the discipline that finesses the overlap between design and engineering to speed delivery and idea validation. From prototyping to production-ready code, this function fast-tracks design decisions, mitigates risk, and establishes UI code quality. The design engineer's work encapsulates the systems, workflows, and technology that empower designers and engineers to collaborate most effectively to optimize product development and innovation. デザインエンジニアリングとは、デザインとエンジニアリングが交差する領域における問題解決を行い、プロダクトの納品とアイデアの検証を素早く実施するための指針となるものです。デザインエンジニアリングの役割は、プロトタイピングから本番リリース可能な状態に至るまで、デザインの意思決定を加速させるとともにリスクを軽減し、UIにかかるコードの品質を向上させることです。デザインエンジニアの仕事は、プロダクト開発とイノベーションのプロセスを最善化するために、デザイナーとエンジニアとの最も効率的なコラボレーションを実現し、システム、ワークフロー、技術をカプセル化することです。(筆者訳) 「DesignEngineeringHandbook」内においては、大手テック企業やスタートアップ企業においては渇望されがちなUIデザインからフロントエンドのマークアップだけでなくサーバーサイドのコーディングも一部実装できる何でも屋になることを推奨しているわけではなく、InVison社の定義するデザインエンジニアリングはより組織的な汎用性を企図するものであり、デザインとエンジニアリングを繋ぐための新しい業務や役職をつくる必要性が示唆されています。 デザインとエンジニアリングを繋ぐ役割への期待の高まり ROUTE06(ルートシックス)においても、プロフェッショナルサービスとして様々な企業のデジタルプロダクトのデザイン構築をご支援させていただくなかで、デザインと開発のスムーズな連携の必要性については日々実感するところです。特に顧客企業の担当者と弊社のプロダクトマネージャー、デザイナー、ソフトウェアエンジニアが目線を共通化するためのワイヤーフレームやモックアップの作成するシーンは多く、実際のソフトウェア開発に入る前にどれだけ関係者間で実用的かつ実装可能なUIデザインを構築できるかによってその後の開発効率が大きく変わります。近年ではFigmaなどのデザインプラットフォームの普及によってモックアップからPRD(プロダクト要求仕様書 / Product Requirements Document)等の作成効率が大幅に向上しており、ツールの進化によってデザイナーの活躍の幅が広がっていることも、デザインエンジニアリングが注目されるようになってきた背景の一つと言えるでしょうか。 デザインエンジニアリングの業務内容 プロダクト開発おけるデザインエンジニアリングの業務内容としては、前述のInVsion社のドキュメントによれば主に以下のプロセスに分類されます。 1.バリュー: プロダクトがユーザーに提供する価値、または解決する課題は何か 2.ユーザービリティ: プロダクトをどう利用するかユーザーにとって明確であるか 3.実現可能性: エンジニアが限定された期間、リソース、技術のなかで、必要な機能を実装することできるか 4.ビジネスにおける実行性: そのソリューションは事業に便益をもたらすか またデザインエンジニアはコードを書くべきかという論点については、上記のプロセスにおける観測効果を最大化することを主目的であるため、コードを書くデザイナーでもそうでないデザイナーでも活躍できることが示唆されています。前者についてはUIエンジニアリングとして、実装効率とデザインの美しさを両立させたプロダクション(本番環境)水準のフロントエンドのコードを記述するだけでなく、フレームワークやツール選定等を行うことが期待されます。後者においてはデザインテクノロジストとして、チーム全体のプロトタイピングの高速化に貢献するようなストーリーティングや、ドキュメンテーション、ユーザーリサーチやA/Bテストなどの環境を整えることが期待されています。 デザインエンジニアに求められる要件 デザインエンジニアはチーム開発において実践的なプロトタイピングを推進する役割として、大前提としてユーザーの課題解決に情熱を持ち、プロダクトチーム全体の文化やプロジェクトマネジメントに貢献する姿勢が求められます。エンジニアリング面ではJavaScript、React、Gitを使った実装力及びフレームワーク活用やコードレビューの実務経験など、デザイン面ではクリエイティブやUIのチーム制作の実務経験に加えてユーザーリサーチやデザイン原則の理解及び実行力などが期待されます。HTML/CSSなどによるマークアップを行う機会も多いものの、チームで汎用的なプロトタイピングを実施可能な状態にするためのコンポーネント単位での設計力が求められる機会も少なくありません。個人でそれらの要件を網羅する人材は少なく、Figmaなどのプロタイピング/デザインツールなどを共通スキルとしつつ、チーム内でのデザインテクノロジストやUIエンジニアなどの役割分担やコラボレーションを行える体制づくりが重要になります。一方でデザインエンジニアリングはまだまだ新しい業務領域及びキャリアパスであり、企業やチームに応じて求められる要件や役割が異なっているのが現状です。 デザイナーにコーディングスキルは求められるのか 従前から活発に議論されてきたものではありますが、デザインエンジニアにおいてもコーディングスキルの要否については頻繁に語られる論点です。前述の通り、チームの役割に応じて必ずしもコードを書くことが求められないものの、HTML/CSSだけではなくJavaScriptライブラリやサーバーサイド言語での実装スキルがあるほどプロダクト開発の現場で重宝される機会は多く、個人のキャリアにおける選択肢もますます広がっていくことが予想されます。一方でコーディングの実装経験が長いほど、実現可能なフレームワークやコンポーネントを前提としたインターフェースを設計する場合も多く、それが必ずしもユーザーにとって最適なデザインになるとも限りません。コーディング経験の少ないデザイナーの方がシステムによる潜在的な制約条件を意識せず、自由にデザインの可能性を広げやすいと考えることもできます。デザインエンジニアリングもユーザー志向かつチーム開発を重視する過程から生まれた考え方であり、コーディング未経験であってもチーム開発への貢献に情熱を持ち、エンジニアリングチームにインスピレーションを与えるデザイン等を生み出せるデザイナーであれば、コードを書けるデザイナーと同等に活躍できる機会が増えていくと筆者は考えます。JavaScriptライブラリ等のフロントエンドの実装技術にしても、デザインのトレンド及びツールにしても、デザインエンジニアリング領域における変化のスピードは早く、いずれの立場においても常に新しいことを学び続ける学習力や多様な思想やバックグラウンドのチームと協業できる柔軟性が求められる点に変わりありません。 Admiral Grace Hopper: "The most dangerous phrase in the language is: We've always done it this way." おわりに デジタルプロダクト開発においてデザインとエンジニアリングを繋ぐ役割としてデザインエンジニアリングの必要性は高まりつつあるものの、業務内容やスキル要件などを明記している企業はまだまだ少なく、今後より議論が活発になっていくことが予想されます。ROUTE06においてもプロトタイピングを通じてプロダクトデザインの受容性、実装可能性及びビジネスインパクトを最大化できるような環境や体制を構築することは重要な経営論点であり、顧客企業からの期待も高いテーマでもあるため、今後も関連分野のリサーチや情報発信なども積極的に行っていきたいと考えています。 \[^1]: Natalya Shelburne, Adekunle Oduye, Kim Williams, Eddie Lou,and Caren Litherland Design Engineering Handbook --- # Vertical SaaSとHorizontal SaaSの作り方の違い URL: /insights/40 title: "Vertical SaaSとHorizontal SaaSの作り方の違い" summary: "本記事では、Horizontal SaaSとVertical SaaSの違いに着目し、それがプロダクト開発を進める上で、どのように差分を生んでいるのか1つずつ確認していきます。" date: 2023-09-21 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/40/00.jpeg" Horizontal SaaSとVertical SaaSの紹介 Horizontal SaaSとVertical SaaSについて改めて確認すると、Horizontalとは「水平」を意味する単語です。その意味の通り、勤怠管理やMAツールのような業界・業種に関係なく「人事向け」や「マーケティング向け」など特定の職種が使用するSaaSを指します。具体例として、Intuitが運営する会計SaaSのQuickBooksや、CRMの代表格のSalesforce、Maketing Automation を主軸に展開するHubSpotなどが挙げられます。 VerticalとはHorizonalの対義語で「垂直」を意味する単語です。Horizontal SaaSとの違いは業種ごとに特化した機能を持つ点です。その特性から「業界特化型SaaS」とも呼ばれます。例えば、バイオテクノロジー、医療機器メーカーなどのライフサイエンス産業に特化したSaaSを提供するVeevaや、建設業界向けに開発された建設プロジェクト管理SaaSのProcoreが挙げられます。 Horizontal SaaSとVertical SaaSから見たプロダクト開発 1.市場 まず、市場についてですが、Horizontal SaaSとVertical SaaSとあるように文字通りターゲットとする市場に違いがあります。Horizontal SaaSは人事やマーケティングなどの業種をターゲットにしますが、Vertical SaaSは製造業や物流など業界でターゲットを限定しています。この違いから2つほど、プロダクト開発に影響するポイントがあります。 1点目はプロダクトマネージャーとしての適正です。市場の違いから、Horizontal SaaSは業界横断で機能する「問い」の設定に重点を置くことになります。つまり業務を進めるに当たり、問題点や課題に焦点を当て、それらの原因を深く追求し、解決策を見つける「問題志向型」アプローチを採用することになります。 他方、Vertical SaaSは業界を限定しているため、より業務課題を解消する「アクション」に焦点を当てます。もちろん、Horizontal SaaSと同じく問題点や課題を特定することから始めるのですが、それらを解決する具体的なアクションやプラン、ソリューションに重きを置いており、「解決志向型」アプローチと言えるでしょう。 あくまで相対的な話ですが、このようなアプローチの違いからプロダクトマネージャーの素養も変わってきます。Horizontal SaaSは課題を深く分析し、洞察できる論理的思考ができ、客観的な視点や冷静さを持っている方があっていると言えます。Vertical SaaSは変化に柔軟で、想像力を持ってアイデアを出し、粘り強く実践できる方が向いています。 2点目はユーザー獲得なのか、リテンションなのか、どちらに力点があるかです。Horizontal SaaSは業種でこそ絞りますが、業界に対しては横断的に導入可能性があり、ユーザー獲得に重点を置いて展開します。他方、Vertical SaaSは業界を絞るため、対象となるユーザーが絞られます。そのため一度導入してもらえたユーザーの重要度が高く、リテンションに力点を置いて、プロダクト開発を進めることになります。 2.競合 次に、競合ですが、Horizontal SaaSには業種を囲い込んだ大型プレイヤーがいることが多く、さらに周辺プロダクトのM\&Aを進めていく展開を王道とします。他方、Vertical SaaSは国内で業界を限定すると、TAMが限定的でそこまで大きなプレイヤーが出現しにくいです。 この競合環境の理解から、Horizontal SaaSでは、まだプレイヤーがいない業種を探し当てるか、すでに大型プレイヤーが提供している中から1つテーマを選び出し、より精度高く、うまく提供できるプロダクトを作りきるか、この2つが大きなプロダクト戦略の方針となります。Vertical SaaSはドメインを持っていることが前提になるため、参入障壁が高いです。そのため、じっくりプロダクトを作る時間があり、深く、そして広く作り込んでいくことになります。 3.ユーザー 3点目はユーザーに着目します。Horizontal SaaSは業界横断で使ってもらえるものになるので、規制などのルールが整備されており、必然性が高い環境が前提となることが多いです。他方、Vertical SaaSは業界に深く入り込み、プロダクトとして提供する範囲が広くなるがゆえ、フロント業務からバックオフィスへの連携まで提供することになります。特に、フロント業務の自由度が高くなります。 業務としての必然性が高い領域と自由度が高い領域という違いはどのようにプロダクト開発に影響するのでしょうか。規制やルールなど、業務としての必然性があれば、基本的にそれらを裏返せばプロダクトの設計になります。逆に必然性がなく、自由度が高い領域ではいきなりプロダクトの設計を行うことは難しく、まず理想の業務フローを考え、定義する必要があります。 また、Vertical SaaSを作るとき、業界個別のニーズは細かい仕様を生み出し、商品やサービスを表現しきれるデータベースの設計が根幹になります。つまり業務全体を俯瞰し、設計でき、かつ愚直に丁寧に積み上げていく開発を推進できるプロダクトマネージャーが向いていると言えます。 4.ソリューション 最後に、Horizontal SaaSは1テーマに研ぎ澄まし、業界横断で使ってもらえるプロダクトを志向するケースが比較的多く、プロフェッショナルサービスをオプションとして持っている企業は相対的に少ないです。 他方、Vertical SaaSは業界を決め、価値提供を行うため、そのスコープも広く、プロフェッショナルサービスの提供も厭いません。例えば、Vertical SaaSではプロフェッショナルサービスという名のコンサルティングを展開し、その中で実現した価値をプロダクトで実現していくという流れもあります。導入後、運用を代行することもあります。このように、Vertical SaaSではプロダクトだけでなく、プロフェッショナルサービスとの組み合わせによりユーザー価値の幅が広いのが特徴と言えるでしょう。 まとめ Horizontal SaaSとVertical SaaSは同じSaaSと言っても、市場や競合の捉え方によって大きくプロダクトの方針が変わります。また、対象としている業務の範囲の広さや種類によっても、作り方が変わってきます。 SaaSのプロダクトマネージャーになると一言に言っても、Horizontal SaaSとVertical SaaSでは価値の出し方やプロダクトマネージャーとしての発想の仕方が変わってきます。本記事がSaaSの理解に留まらず、プロダクトマネージャーとしてのキャリア選択など、広く参考になれば幸いです。 --- # レセプトデータ×ECで拓く、セルフメディケーションの推進と医療費適正化|ホワイトヘルスケア株式会社 平井良樹氏 URL: /insights/41 title: "レセプトデータ×ECで拓く、セルフメディケーションの推進と医療費適正化|ホワイトヘルスケア株式会社 平井良樹氏" summary: "ホワイトヘルスケアは、2023年4月、OTC医薬品・常備薬販売サイト「あなたの薬箱」をリニューアルオープン。「あなたの薬箱」は健保を通じて健保加入者(以下、組合員)に提供され、レセプトデータを活用しながら組合員に合った市販薬(OTC医薬品)個別に提案することで、組合員の健康とセルフメディケーションをサポートするECサイトです。今回は、「あなたの薬箱」提供の背景やその狙いについて、平井良樹氏に話をお聞きしました。" date: 2023-09-22 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/spotlight.mdx" cover: "/images/insights/41/00.jpg" 近年、医療費の高騰により、健康保険組合(以下、健保)の財政悪化・解散危機といった社会課題が話題となっています。企業健保の約8割が財政赤字を抱えており、また、協会けんぽの保険料率10%を上回る「解散予備軍」と呼ばれる企業健保も増えています。 2008~2021年度の間に111の企業健保が解散しており^1、解散した健保の協会けんぽ移行によって国費負担は年120億円増加する可能性があるという試算もあります\[^2]。 そのような社会課題の解決を目指し、患者自身の医療参画を促し、最適な医療を選択できるようにすることで、医療費の適正化を実現することをミッションに、三菱商事と東京海上ホールディングスの合弁会社として、2020年にホワイトヘルスケア株式会社が設立されました。 ホワイトヘルスケアは、2023年4月、OTC医薬品^3・常備薬販売サイト「あなたの薬箱」をリニューアルオープン。「あなたの薬箱」は健保を通じて健保加入者(以下、組合員)に提供され、レセプトデータを活用しながら組合員に合った市販薬(OTC医薬品)を個別に提案することで、組合員の健康とセルフメディケーション^4をサポートするECサイトです。今回は、「あなたの薬箱」提供の背景やその狙いについて、平井良樹氏に話をお聞きしました。 ホワイトヘルスケア株式会社 保険者事業部 部長 平井良樹氏 株式会社ROUTE06 プロフェッショナルサービス本部 プロダクトオペレーションマネージャー 馬場大佳 「あなたの薬箱」概要 日本の医療財政の課題 馬場:ホワイトヘルスケアは三菱商事と東京海上ホールディングスの合弁会社として設立されましたが、平井さん自身はどのような立場で関わってこられたのでしょうか。 平井:ホワイトヘルスケアは健保向けの事業と保険薬局向けの事業の二つを展開しており、私は前者の事業の責任者をしています。 元々、三菱商事のヘルスケアの事業部に在籍し、東京海上ホールディングスと日本の社会課題である医療財政逼迫の解決に繋がる事業提携の検討を進めておりました。その中で、出てきた事業構想をもとに生まれたのがホワイトヘルスケアです。 そういった経緯もあり、創業メンバーとしてこの会社の事業構想時点から創業メンバーとして携わってきました。 馬場:まさに会社の立ち上げメンバーということですね。新規事業のアイディアを形にするために設立されたとのことですが、具体的にどのような事業を行っていますか。 平井:健保向けの事業と保険薬局向けの事業、どちらも「医療費の適正化に取り組む」というのが共通した価値観になっています。 健保の立場に代わって、データやデジタルツールの活用を通じて、薬局や患者の医薬品使用の適正化、ひいては医療費の適正化を目指す事業を複数のテーマで進めています。 馬場:この記事のメインテーマである「あなたの薬箱」も、健保向け事業の一環として「医療費の適正化」を目指して開発されましたね。このバックグラウンドにある課題感は何でしょうか。 平井:健保の立場と、患者の立場、双方に課題感がありますが、健保の立場では、国内における医療財政の逼迫という話が背景にあります。 医療に関わる人々には、医療従事者、病院、患者、医療機器や製薬メーカー等の色々なプレイヤーがいますが、極端な話ですが、医療費を適正化するインセンティブが最も働くのは、健保です。 事業や収益の構造を見ると、医療機関は患者が増えることが収益増加につながりますし、製薬や医療機器メーカーも同様です。患者さんも医療費支出を抑制したいというよりは、同じ保険料を払っているのだったら出来る限り良い医療サービスを受けたいと思う方もいると思っています。 皆さんが払っている健康保険料を見てみると、平成20年の企業健保の平均保険料率は7.4%でしたが、現在9.3%まであがっています。この15年で保険料率は約2%上がっていることになります。月収に対しての2%と考えるとインパクトは大きいですよね。 中小企業が加入している協会けんぽで考えると、現在の保険料率は平均10%でその半分を会社が負担しているので、個人の手取りから保険料として5%程度が引かれている計算になります。 このようにみなさんのお財布にもインパクトがある健康保険料ですが、基本的に給与天引きで納付を行うため、なかなか認識しづらい点も大きな特徴です。 医療費が逼迫して国民負担が増加している中、医療費を適正化させたいというモチベーションが一番高いのは健保をはじめとする保険者です。一方で、特に比較的小規模で運営している企業健保は、医療費をコントロールするための十分なリソースや医療・医薬品に関する専門知見をお持ちでないことがほとんどです。 そこで、医療費適正化のために必要なソリューションをサービスとして提供するのがホワイトヘルスケアの事業になっています。 組合員に直接届けるECで、患者の医療参画を 馬場:「あなたの薬箱」は、どういった形で医療費の適正化に貢献することを描いているのでしょうか。 平井:先ほど会社の価値観として医療費の適正化についてお話ししましたが、それに加えてもう一つ、「患者の医療参画」を企業のミッションとして掲げています。 患者さん自身が医療のことをもっとよく理解したり、適切なナビゲーションを受けたりすることによって、自分の症状や健康状態に合わせて最適な医療サービスを選べるようになることを「患者の医療参画」と呼んでいます。患者の医療参画が進んでいくことで、費用対効果の高い医療サービスが選択されるようになり、結果的に医療費も適正化されていくと考えています。 「あなたの薬箱」というサービスも、患者の医療参画を促すことと医療費の適正化を同時に実現することがゴールです。OTCの医薬品をうまく活用できるような環境を、健保様を通じて提供することで、軽度な疾患や体調不良に対して患者さんが自分で最適な医療を選べるようにするための補助となるサービスを拡充していきたいと思っています。 馬場: 患者さん自身が医療に参画する、つまりセルフケアできるようになるために、「あなたの薬箱」はどのような特徴を持っているのでしょうか。 平井:「あなたの薬箱」は、B2B2C(もしくはB2B2E)のプロダクトとして健保様を通じて組合員の皆さんにサービス提供することに特徴があります。 健保様を通じて、サービス提供を行うことのメリットの一つに、健保様が持つ組合員の医療データであるレセプトデータを活用して、取組の効果最大化や効果検証を行うことが出来る点があります。 OTC医薬品の価値を広めたいというだけであれば一般向けのサイトでやればいいのですが、レセプトデータを活用することで、「こういう傾向のある人は市販薬の活用によって、最適な治療方法を選択出来るのではないか?」という分析と、ユーザーである組合員に向けたお薬の提案を同時にやっています。 常備薬のECサイト自体は、既にあるサービスですし、レセプトデータの分析も行なわれていますが、レセプトデータの分析とリアルな医薬品の販売を組み合わせて提供しているのは私たちが初めてで、大きな価値の一つであると考えています。 私たちの事業展開の根底には健保様のお役に立つソリューション提供を行いたいという気持ちが常にあります。 事業開始当初は健保様の持っているデータを活用して、削減できる医療費についてコンサルティングするイメージを考えていましたが、データ分析による課題抽出だけではなく、本当にその課題を解決していく為に、健保の組合員の方の行動変容にまで関わるサービスを作るべきだと考えるようになりました。 私たちのサービスは、実際に組合員の皆様に、OTC医薬品というモノを届けることが出来るという部分をとても大事にしています。 セルフメディケーションによる医療費の適正化効果が大きいという仮説があり、厚生労働省や健保様とも問題意識を共有することができたこともあり、保険診療の代替手段として、OTC医薬品を安く提供できたり、自分に合わせた薬を便利に選べたりするサービスを開発していくこととなりました。 組合員の行動変容を起こすため、健保の情報発信を後押し 馬場:健保さんを通してユーザーである組合員向けに販売するという座組のプロダクトを開発する上で、常に意識してきたことはどんなことでしょうか。 平井:一番大きいのは、ECサイトという事業ではありながら、単純に売上だけではなく「ユーザーの行動変容に繋がるかどうか」を、事業の目的として最重視した点です。ECサイトなのでモノが売れることは大事ですが、組合員の方にとって、OTC医薬品の活用可能性について意味のある情報を持ち帰ってもらうためにどういった設計ができるか。工夫の必要なところでした。 健保様としても、このECを通じて売上をあげたいわけではないのです。組合員の皆さんに「みなさんが病院と薬局でもらっている薬の中には、市販薬で買える医薬品があるんだよ」とか「OTC医薬品を賢く使うことが出来れば、ちょっとした体調不良にも対応出来るんだよ」という有益なメッセージを伝えたいと思っているんです。 一方で、組合員の方はその情報だけを受け取ってもあまりピンとこないことも多いと思います。「薬を買う」といった日常生活における行動をフックに、健保様が発信したいメッセージを組合員の方に提供することができる仕組みを用意することで、行動変容に繋げることを意識してきました。 加えて、私たちは健保様と取り組んでいるセルフメディケーションの保健事業によって、医療費の適正化効果がどのくらいあったかということを国に報告して補助金を頂いています。そういった意味でも、「あなたの薬箱」を通じた医療費の適正化効果は意識していますね。 馬場:どのようにして医療費適正化の効果を測っているのですか。 平井:一義的には、実際の健保が負担する医療費の請求データであるレセプトデータから測定しています。「あなたの薬箱」を使ってもらい、お薬や健康に対するリテラシーが高まった結果として、本当に患者の受診行動が変化しているかをレセプトデータから検証しています。組合員約1万人超の健保様で、弊社サービスを導入頂いた結果、数百人程度の行動変容を認めることが出来ました。 実際に、デプスインタビューで話をすると、「病院でもらうお薬と同じ成分のお薬がここで買えるんだ!」とスイッチOTC医薬品の存在や効果をこれまで知らなかった患者さんに、新しい選択肢を提供出来ていることも分かってきています。 実は、セルフケア・セルフメディケーションというのも、日本では昔から馴染みのある概念でもあります。家に常備薬の薬箱を置くという文化は日本に元々あったと思います。最近では医療も高度化し、医療へのアクセスも向上しましたが、自分の体調に合わせて市販薬を使用することや、自分に合った薬選びが出来るようになっておくことは、変わらず重要なことだと思っています。 馬場:「あなたの薬箱」がやろうとしているのは、すごく遠い距離の話ではなく、元々やっていたことに別の新しい形で近づけていくような取り組みですよね。今回の「あなたの薬箱」のプロダクト開発において、どんなところに難しさを感じましたか。 平井:売上をあげることが目的のECサイトではなく、組合員のリテラシーを高め、行動変容を促すような売り場を作りたいという健保様のご要望に応えながら、プロダクトを作っていくことはとても難しさがありました。物を売るだけではないECサイトの価値をどう考えていくか、薬を選ぶというプロセスや体験をどのように変えることが出来るかという点をたくさん議論しながら、プロダクトを開発していくことになりましたね。 馬場:販売主体というか、お薬を持っている場所は別にあるし、という立て付けですよね。 その体制をどうシステムに落とし込んでいくかは苦労しましたね。今回、ECとして商材が豊富にある、CSや発送体制ができているというのも前提としてありつつ、いかにホワイトヘルスケアさんが健保さんと良い関係を築くかがプロダクトの成否にかかってくるように感じていました。 平井:そうですね。「あなたの薬箱」は健保様が、このシステムの導入にメリットを感じてらえるかということと、実際にユーザーである組合員の方々が利用して購入してもらえるかという2段階になっていて。まずは健保様にこれは組合員に提供したい!と思ってもらうことが大前提でした。 本人にメリットのある医療データ活用 馬場:「あなたの薬箱」について、今後どのような構想をお持ちですか。 平井:単なるECサイトだけではなく、健保様の持つデータを活用することで、一人一人の健康課題に合わせた情報発信や、健康課題の解決につながる商品・プロダクトとの連携を進めていきたいと思っています。 OTC医薬品以外でも、例えばオーラルケア商品等をサイトで扱うといった取扱テーマの拡大なども考えています。ただ良い歯ブラシを売るだけではなく、その前段である特定の健康課題を持つ人をデータから抽出して、 それに合った情報を発信して役に立つ商品を提案するということとセットでできれば、健保の方々、組合員の方々どちらにとっても良い取り組みになると思っています。 馬場:一気通貫のデータの流れを作ってユーザーの方々が行動変容を起こすことで、大元の目的である医療費の適正化に繋げることができると良いですよね。 平井:医療データの活用方法については、国も企業も様々な流れや意見もありますが、ユーザーの日々の生活に具体的、わかりやすいメリットをもたらす活用事例をしっかりと作っていきたいと思っています。医療費の7割を負担し、組合員の健康を預かる健康保険組合の立場だからこそ出来ることであり、我々も健保様を通じて、新しい価値提供を支援していきたいと思っています。 \[^2]: 第196回国会 厚生労働委員会 第25号 撮影:大竹 宏明 --- # SaaSにおけるマルチプロダクト戦略 URL: /insights/42 title: "SaaSにおけるマルチプロダクト戦略" summary: "本記事では、ターゲットとする業界、業種やユーザーのペルソナによって、どのようなマルチプロダクト戦略を取るべきなのかについて、整理を進めていきたいと思います。" date: 2023-10-06 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/42/00.jpeg" 国内でも、Horizontal SaaSについで、Vertical SaaSと徐々にプレイヤーが揃い、PMFを獲得しつつあります。その過程で、いつ、どんなプロダクトを2つ目、3つ目のプロダクトとして展開していくべきか、という議論をよく耳にするようになってきました。 これは、言語や商慣習の障壁が高い国内において、市場が限定的であることから、USを中心としたグローバル・マーケットを対象としたSaaS企業よりもかなり早いタイミングで検討されているからです。特に、Vertical SaaSの場合、業界を限定するため、PMF前の段階から考え始められている印象さえあります。 そこで本記事では、ターゲットとする業界、業種やユーザーのペルソナによって、どのようなマルチプロダクト戦略を取るべきなのかについて、整理を進めていきたいと思います。 マルチプロダクト戦略とは SaaSにおけるマルチプロダクト戦略は1つのSaaS企業が複数の異なるプロダクトを提供する戦略です。これにより異なるセグメントやユーザー層のニーズに対応し、収益を多角化します。 SaaS企業が1つの主力プロダクトに依存せず、新たな成長ドライバーとして新規プロダクトを展開し、複数のプロダクトの組み合わせによって事業を向上させていくアプローチになります。 類型と具体例 では、マルチプロダクト戦略にはどのようなタイプがあるのでしょうか。第2、第3のプロダクトと一言に言っても、その狙いや位置付けは様々です。 ここでは、メインプロダクトと第2、第3のプロダクトの関係性(周辺なのか、全く別プロダクトなのか)と、それぞれのプロダクトのバイヤーの関係(同じバイヤーなのか、異なるバイヤーなのか)の2軸で整理し、4つのマルチプロダクト戦略に分類します。 具体的には、下記図にあるように、アドオン型、スイート型、ターゲット型、カテゴリー型という4つの戦略を導出し、それぞれ具体的に確認していこうと思います。 アドオン型マルチプロダクト この類型ではコアプロダクトに対して、追加のモジュールや機能を提供することでユーザーのニーズに合わせたカスタマイズを実現するモデルです。顧客は必要な機能を選択して導入することができます。 SaaS企業はコアプロダクトがスコープとする業務の周辺領域の課題を解消する追加モジュールや機能を企画し、徐々にそのスコープを広げていくことになります。いわゆるAll in One戦略を実現する1つの手段になります。 例えば、Vertical SaaSが受発注領域だけでなく、請求書や決済までアドオンとして補完することや、業務フローの実現だけでなく、意思決定に資するダッシュボード機能の提供などが挙げられます。 この類型は、Vertical SaaSだけでなく、Horizontal SaaSでも利用され、SMB、エンタープライズともに適用されます。カスタマイズ性をアドオンにより実現できるため、どちらかというと、業務への装着性を高く求めれるエンタープライズの方が適正があるといえるでしょう。 例えば、レストラン向けSaaSのToastはPOSなどの機能を主軸に据えつつ、モバイルオーダーやシフト管理、労務管理などのアドオンを展開し、レストランの様々な業務を包括的にサポートしています。 スイート型マルチプロダクト スイート型マルチプロダクトは、同じ業務領域に関連する複数のプロダクトを1つのスイートとしてまとめて提供する戦略です。たとえば、マーケティングオートメーション、CRM、顧客分析など、顧客関連のプロダクトを1つのスイートで提供することで、一貫性のあるソリューションを提供します。この形式もAll in One戦略の一翼を担います。 この類型は、Horizontal SaaSだけでなく、Vertical SaaSでも利用されますが、個々のプロダクトを個別に展開するだけのTAMの大きさが必要になるため、Horizontal SaaS向けの戦略といえるでしょう。 また、SMBにもエンタープライズ向けにも取りうる戦略ですが、機能要件が低いSMBの方がこの戦略を早期に選択し、展開していくことになります。 例えば、Gmail、Googleドキュメント、Googleスプレッドシート、Googleカレンダー、Google Meet、Google Driveなど、ビジネスに必要なさまざまなツールを提供するGoogle Workspaceや、Photoshop、Illustrator、InDesign、Premiere Proなど、クリエイティブ制作を様々な角度からサポートするAdobe Creative Cloudなどが挙げられます。 ターゲット型マルチプロダクト ターゲット別マルチプロダクトは、その名の通り、異なるユーザーセグメント向けに異なるプロダクトを提供する戦略です。たとえば、SMB向けとエンタープライズ向けに異なる機能を持つプロダクトを提供することで、幅広い市場に対応していきます。 このマルチプロダクト戦略の採用についてはよく議論されます。特にユーザーセグメント別に組織設計した際、検討の頻度や強度が高まります。これは、担当したセグメントにいかに価値提供するかに焦点が当たり、そのセグメントだけのプロダクト展開をすれば、きめ細やかな機能拡充が実現し、ユーザー価値創出に繋がりやすいからです。 ただし、一般的にこの戦略は諸刃の剣で、プロダクトを分けた瞬間から2倍に近い開発リソースが必要になります。またこの意思決定は不可逆的で、一度分けたプロダクトを統合するのはビジネス観点でも開発観点でも非常に強い痛みを伴うことになります。そのため、基本的にはユーザーセグメント別に機能をバンドリングし、プランを分けて提供することで代替することがほとんどです。 また、少しニーズの捉え方を変え、freeeでは主力の会計とは異なる法人登記前のニーズに対して、設立登記などのシーンで活用できるプロダクトを展開しているようなケースもあります。 カテゴリー型マルチプロダクト カテゴリー別マルチプロダクトは、異なるカテゴリーのプロダクトを提供することを指します。たとえば、プロジェクト管理ツールとカスタマーサポートツールなど、異なる業務領域に特化したプロダクトの提供などです。 この類型の実現はM\&Aか、内製で全く別の領域の新規事業を展開していくことになります。前者のM\&Aを採用しようとすると、一定の資金的余力が必要になるため、市場が業界によって限定されないHorizontal SaaSの方が親和性が高いでしょう。 SMBかエンタープライズ向けSaaSかで評価すると、より参入障壁が低く、プレイヤーが多いSMBの方がM\&Aの機会が多いという意味で、この戦略を採用し易いと言えます。 後者の別領域における新規事業はSaaSの類型やユーザーセグメントに関係ないことが多いです。例えばOCRやAIなどの技術スタックに強みがあり、それらを生かしたプロダクト展開を行うケースやベンチャースピリッツあふれる企業文化のため、新規事業人材を豊富に抱えており、別領域での事業展開が可能となるケースなどが挙げられます。具体的には、HubspotはSalesやMarketingなど別領域にプロダクトを展開しており、この類型の1つと言えるでしょう。 マルチプロダクトの類型とターゲット ここまでの議論をHorizontal SaaS/Vertical SaaSとエンタープライズ/SMBの2軸でマルチプロダクトの類型をプロットすると、下記のようになります(プライシングによる展開が多いターゲット別マルチプロダクトは割愛しています)。 アドオン型はVertical×エンタープライズ、スイートはHorizontal×SMB、カテゴリー別はHorizontal全般のSMB寄りを中心に採用される傾向にあると言えます。 まとめ Horizontal SaaSだけでなく、Vertical SaaSもPMFを勝ち取り始め、Growthフェーズに入ってきたプレイヤーが増えてくる中で、マルチプロダクト化は大きなテーマの1つとなりつつあります。今回、Horizontal SaaS/Vertical SaaSとエンタープライズ/SMBにわけて、マルチプロダクトの類型との親和性を確認していきました。 今後SaaSの展開として、マルチプロダクトを検討する場合の一助になれば幸いです。 --- # プロダクトマネジメントの進化を担うProduct Ops URL: /insights/44 title: "プロダクトマネジメントの進化を担うProduct Ops" summary: "本記事では、国内でも徐々に検討が進められ始めているProduct Opsという組織に着目し、その役割や実際の運用で気をつけるべきことを確認していきます。" date: 2023-12-12 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/44/00.jpg" プロダクトマネジメントの考え方が普及し、大手企業にもDXと名前を変えて浸透し始めています。その中で、数十名規模以上のプロダクトマネージャー組織を持ち始めている企業も出てきています。 どのような組織でも1部署で20-30名を超え始めると、仕組み化やプロセス化のニーズが高まってきます。プロダクトマネージャー組織でも例にもれず、20-30名になると、Product Opsというチームの組成を検討し始め、組織のスケーラビリティの向上に取り組んで行くことになります。 本記事では、国内でも徐々に検討が進められ始めているProduct Opsという組織に着目し、その役割や実際の運用で気をつけるべきことを確認していきます。 Product Opsとは Product Opsとは、プロダクト企画や開発のオペレーションを設計、構築し、運営しながら、最適化を目指す役割を指します。プロダクトマネジメント組織のサポートを中心に据えつつ、デザイン、エンジニアリングとの連携や、ビジネスサイドとの連携も含め、様々なオペレーションを担当することが多いです。 つまり、プロダクトマネージャーがプロダクト企画や開発に集中できるように、業務フロー設計やその運用を引き受け、企画、開発リソースの効率的活用を目指します。社内のプロダクトマネージャーをユーザーとし、プロダクト企画や開発の業務フローをスコープにしたプロダクトマネージャーと言えるかもしれません。 国内だと、まだ少なくProduct Opsを担う方々のバックグラウンドはバラバラだと思いますが、海外だと抽象度の高い業務を型化していく点に着目し、コンサル出身者の割合が高いように思います。コンサルというと、戦略面ばかりが強調されますが、オペレーションの構築にも戦略的思考は相性が良いからだと思います。 プロダクトマネージャーとの比較 プロダクトマネージャーは担当領域におけるプロダクトビジョンから効果測定まで行い、プロダクト自体の進化を担います。他方、Product Opsはプロダクト企画や開発における業務フロー設計から運用までを担当し、会社全体の企画、開発リソースの効率化を担います。 つまり、視点とスコープが大きく異なります。プロダクトマネージャーはあくまで自分の担当領域の中でプロダクトを通してユーザー価値の創出を検討しますが、Product Opsではプロダクトマネジメント組織全体の効率化を担います。そのため、Product OpsはCPOやVPoPと同じ視点で考え、アウトプットを求められるのです。 また、プロダクトマネージャーはプロダクトを通したユーザー価値の創出をスコープとしますが、Product Opsは直接ユーザー価値を創出を担うのではなく、その基盤となる業務フロー設計と運用をメインで担当します。 Product Opsが担う具体的な役割 Product Opsはプロダクト企画や開発に関する業務フロー設計と説明していきましたが、その業務内容は非常に多岐にわたります。ここでは、戦略面と組織面にわけて詳述していきます。 1.戦略面 経営陣とのコミュニケーションの最適化 経営陣と連携し、プロダクトビジョンやロードマップを整備し、実行計画を策定・管理 ビジネスサイドとの連携 リリーススケジュールやユーザーへの公開開始など、ビジネスサイドにプロダクトに関する情報を連携する際のルールの設計と運用 ビジネスサイドが得たユーザーからのフィードバックをプロダクトマネージャーに連携し、それをプロダクト開発に活かすプロセスを設計・最適化 日々の運用のフォーマット化 PRDなどの主要ドキュメンテーションのフォーマット化や、PRDなどの主要ドキュメンテーションのフォーマット化や、場合によってSaaSの導入検討も含む プロダクト間、ビジネスユニット間における各種調整 NPSなど、ユーザーサーベイの設計や評価 プロダクトのバンドリングやチャージモデルの選定、最終的な価格感の策定 特許など、プロダクト横断テーマの運営 予算策定、予算管理業務 プロダクト戦略を実現する上での人員計画や、リサーチや各種ツールの予算、採用や異動に伴う育成計画の設計 予算決定後、各種支出状況の管理や運営 2\. 組織面 採用やチーム内の異動を調整・管理 プロダクト戦略を元に、人員計画の策定をサポート 採用枠を元にJDを作成し、採用の目標管理、採用プロセスの最適化を行う 各種カンファレンスへの登壇や社外向けにブログ等の配信など、採用ブランディングの企画、運営 オンボーディングメニューの設計、運用 入社した方や異動してきた方向けに、会社全体ではなく、プロダクトマネージャーとして、すぐ立ち上がれるようなコンテンツの設計と運用 コミュニケーションの設計 All handsやSlack、ミーティングなどの設計と運営 上記の通り、プロダクトマネージャーの業務をかなり広く把握し、課題感の抽出を行い、業務フロー設計、フレームワーク化、場合によって自ら入って行って調整を行うことになります。 Product Opsの立ち上げと運用 まず、Product Opsを立ち上げる上で、どのような方をアサイン、採用していくかが大きな論点となります。当然まで国内で普及しているロールではないので、親和性の高い職種からの異動、採用を行うことになります。Product Opsは、その役割からプロダクトマネージャー向けの業務フローコンサルに近いので、マネジメントコンサルやITをコンサル出身者がスキルや知見という意味ではフィットし易いです。その中でも、スタートアップやベンチャーに近いプロジェクトの経験があると、より適性が高まります。オペレーションとは、目的やゴールを明確化し、それまでのクリティカルパスの設計とインプリを行うことになるため、実はコンサルが武器にする戦略的思考と相性が良いです。ただし、国内ではオペレーションという言葉自体がやや弱いので、CPO室、プロダクト戦略室などと打ち出し、Product Opsに求められる視座の高さや、スコープの広さ、そして戦略面での役割をしっかり訴求していくことが重要だと思います。 次に、Product Opsが立ち上がると、業務スコープの広さからプロダクトマネージャーからいろいろ相談を受けることになります。プロダクトマネージャーは、その業務の性質上、プロダクトビジョンや戦略に対する意識が高い人が多く、プロダクトマネージャー組織全体に向けた各種仕組み化などを後回しにしてしまいがちです。そのため、Product Opsが立ち上がると、自分の担当領域外のことを引き取ってもらえないか相談しに来るのです。しかし、Product Opsはただ引き取るのではなく、引き取ることで業務フローを整備し、プロダクト企画や開発の運用効率が上げられないと、あまり意味はありません。あくまで目標はプロダクト企画や開発の効率化であり、プロダクトマネージャーのアシスタントではありません。 Product Opsはプロダクトマネージャー陣から業務を巻き取る側面だけではなく、各種業務フローを設計し、実際プロダクトマネージャーに運用してもらう必要もあります。そのため、CPO/VPoPなど経営レイヤーからの強いサポートが不可欠になることもあります。彼らに新しい業務フローの価値を組織全体に説明してもらい、普及を促進したりします。もちろん、トップダウンで落とすだけではなく、モニター的に個々のプロダクトマネージャーをサポートして、ある程度型化できたタイミングで、プロダクトマネージャー組織全体に展開するという流れもあります。 プロダクトマネージャー組織内において、Product Opsは業務を集約するアウトソーシングチームではなく、プロダクトマネージャー組織の効率化を主眼に掲げたチームであり、CPO/VPoPやプロダクトマネージャーと良きパートナーであることが重要なのです。 まとめ 国内のプロダクトマネジメント関連の記事を追っていると、戦略や意思決定に関する話が多いです。Product Opsの役割で記載したことが組織の規模やプロダクトのフェーズに応じて進化していないと、想像以上にリソースを割くことになってしまいます。にも関わらず、プロダクトの進化というイノベーションを主軸に抱えるプロダクトマネージャーからは、仕組み化、プロセス構築という業務は後回しにされがちです。 そこで、Product Opsを立てて、プロダクトマネージャーのパートナーとしてプロダクト企画や開発における業務フローの構築と運営を最適化していくことで、次なるプロダクトマネジメントの進化を担う一手となりうるでしょう。 --- # PMFを勝ち取るステップ URL: /insights/45 title: "PMFを勝ち取るステップ" summary: "ECやSNS、ソーシャルゲームが隆盛を極めた後、2010年代を中心に日本でもSaaSというビジネスモデルが表出しました。Horizontal SaaS、Veritical SaaSと順を追って、新しいプレイヤーが続々と出てきました。ローンチを経たプロダクトの最初の登竜門として、PMF(Product Market Fit)が最初のマイルストーンになります。本記事では、改めてPMFについて可能な限り深掘りを行い、探求したいと思います。" date: 2024-01-04 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/45/00.jpeg" ECやSNS、ソーシャルゲームが隆盛を極めた後、2010年代を中心に日本でもSaaSというビジネスモデルが表出しました。Horizontal SaaS、Veritical SaaSと順を追って、新しいプレイヤーが続々と出てきました。ローンチを経たプロダクトの最初の登竜門として、PMF(Product Market Fit)が最初のマイルストーンになります。本記事では、改めてPMFについて可能な限り深掘りを行い、探求したいと思います。 PMFの周辺概念 PMFの深掘りを行う前に、周辺概念を整理しようと思います。Founder Problem Fit、Problem solution fit、Product Market fitという3つの概念があります。 1.Founder Problem Fit Founder Problem Fitとは、創業者や新規事業の旗振り役自身が解決したい課題に深く動機づけられていることを指します。事業を立ち上げようとすると、様々な困難が立ちはだかります。それらに打ち勝つには、創業者や新規事業の立ち上げの責任者が取り組んでいる課題や立ち上げようとしている事業に深い動機づけが必要になります。この動機づけが全ての原動力になり、様々なハードルを突破していきます。 この概念の提唱者であるRoelof Botha氏はFPFを確認する上で、創業者に以下のような質問を行うようです。\[^1] Founderとあるように創業者の方はほとんどの方が持っているように思いますが、社内で新規事業推進をされているイントレプレナーの方は一度自問してもいいかもしれません。 2.Problem Solution Fit Problem Solution Fitとは、ユーザーが特定の業務上なんらかの課題を持っていることを把握できており、その課題を解消するソリューションを企画できている状態を指します。このタイミングで利用し始めるユーザーは非常に課題意識が強く、プロダクトだけでなく、自らの想像力も働かせ、プロダクトの足りない部分を補完してくれます。まだユーザーがソリューションを購入する理由や確証はない状態ですが、初期ユーザーの想像力に掻き立てられ、MVP(Minimum Viable Product)を定義していくフェーズになります。 3.Product Market Fit(PMF) プロダクトがユーザー課題を解決し、実際にユーザーが望む価値を創出している確証を得ることを指します。つまり、販売したいプロダクトと買いたいターゲットセグメントが明確で、それをつなぐ訴求メッセージが確立している状態のことを指します。最初の検証から、爆発的にプロダクトが販売できることは少なく、何度も商談履歴を見直し、セグメンテーションを変えたり、様々な角度から評価をし直し続けることで、PMFをたぐり寄せていくことになります。 この後は、Growth期を迎え、リソースを拡充し、ターゲットセグメントへのアプローチを強めて行くことになります。Horizontal SaaSでは周辺セグメントにもターゲットを広げ、少しずつPMFしているか確認しながら、PMFした業界を増やしていくことになります。Horizontal SaaSだけでなく、Vertical SaaSでもより規模の大きい企業への提案を強化していきます。というのも、リリース当初はまだ業務要件が少ないSMBを主たるマーケットとして捉え、一定PMFしたら、少しずつ大きな規模の企業の比率を上げていく傾向が強いです。 また、上記3つの定義を確認したところ、Founder Problem Fitだけがプロアクティブに自ら作り出すものであり、他の2つはPMFを含めリアクティブに検証していく作業になります。つまり、持てと言われて、最も持つのが難しいのが、Founder Problem Fitになります。 PMFを勝ち取るためのアプローチ Problem Solution fitのタイミングとは異なり、PMFでは、実際のプロダクトがローンチされており、ユーザーフィードバックの解像度が一気に上がります。これまでα版やβ版を利用していたユーザーからすると、既存のシステムやExcelなどからデータ移行を行い、正式版に業務フローを構築していくことになります。ここで起点になるのは、バリュー・プロポジションです。これはプロダクトがユーザーに提供する差別化要素やユーザー価値を明確に示したものになります。 ターゲット市場の特定 ターゲットセグメントにおける課題やニーズの所在 プロダクトを通して行われる具体的なユーザー価値提供 プロダクトを競合と比較したときに、独自性と差別化 これは、実際の商談や導入支援時のユーザーからのフィードバックを元に、定期的に棚卸しし、追記修正を経て、強度が増していくような感覚です。 PMFの注意点 漠然とPMFしたかどうかを議論しても仕方ありません。バリュー・プロポジションに応じて、個々の仮説が実現しているか確認していくことになります。 PMFの定義を演繹的に議論しても学びは薄く、どのようなターゲットセグメントがどの機能についてPMFしているのかなど、ターゲットセグメントとプロダクトについて分析的に行うべきでしょう。というのも、PMFの対象をプロダクト全体にしてしまうと、リリースしてから2-3年も経つと、様々な機能が追加され、ユーザーストーリーを実現できる状態になっています。このような状況下において、プロダクト全体を対象にした議論は曖昧なものになってしまいます。そこで、 ユーザーストーリーをユースケースごとに分けて、その成否を問う必要が出てくるのです。 また、ユーザーサイドも同様で、検証のためのリード獲得が中心だが、商談が一定数を超えると、当初狙っていなかったリードも来てしまい、エッジケースが生まれることもあります。特徴的な1社を例に上げて、あの企業が入っているという事実だけで、他の企業にも販売できそうと展開することはかなり論理的な飛躍をはらんでいます。 もちろん、n=1をできるだけ深掘り、なぜそのユーザーセグメントなのに、イレギュラー的に使ってもらえているのかを深掘りすることは有用です。このポイントを深く読み解くことで仮説が生まれるし、場合によってそのユーザセグメントを攻略する糸口になるかもしれません。ただし、特徴的なユーザセグメントの企業が1社だけ使ってくれたという事実だけを過大評価してはいけません。 まとめ PMFの他に、Problem Solution Fitはよく耳する一方、Founder Problem Fitしているかどうかはあまり議論されていませんが、非常に重要な概念ですので振り返りの機会に繋がれば幸いです。 PMFについて議論する際、PMFの定義や、PMFしているかどうか?という状況証拠だけを探し、次のアクションが見えない議論が多いように思います。本質は、プロダクトがマーケットにフィットしているかどうかであり、プロダクト全体や、マーケットが多岐にわたるのであれば、分析的に評価していくべきでしょう。どのユースケースに置いて、どの機能群がしっかり使ってもらえているのかこそ、議論の焦点にすべきです。 \[^1]: FourWeekMBA 「Founder-Problem Fit」 --- # Product Mindset URL: /insights/46 title: "Product Mindset" summary: "プロダクトを中心に据えた企業にとって、ユーザーニーズを的確に、そして、深く捉え、それに基づいてソリューションを設計し、ユーザー価値を創出する姿勢(プロダクトマインドセット)が事業の土台になっています。しかし、市況感やフェーズの変化によりコストプレッシャーが強くなったり、売上偏重になったりすると、プロダクトマインドセットはつい見落とされがちになってしまいます。例えば、需要は伸びているものの、株式市場においてSaaSの評価は厳しく、利益や成長を強く求めれるようになってきています。このような市況感だからこそ、改めて見直すべき論点であり、立ち返るべき原点の1つとして本記事でプロダクトマインドセットについてまとめていきます。" date: 2024-01-17 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/46/00.jpeg" プロダクトを中心に据えた企業にとって、ユーザーニーズを的確に、そして、深く捉え、それに基づいてソリューションを設計し、ユーザー価値を創出する姿勢(プロダクトマインドセット)が事業の土台になっています。しかし、市況感やフェーズの変化によりコストプレッシャーが強くなったり、売上偏重になったりすると、プロダクトマインドセットはつい見落とされがちになってしまいます。 例えば、需要は伸びているものの、株式市場においてSaaSの評価は厳しく、利益や成長を強く求めれるようになってきています。このような市況感だからこそ、改めて見直すべき論点であり、立ち返るべき原点の1つとして本記事でプロダクトマインドセットについてまとめていきます。 プロダクトマインドセットとは 1.プロダクトを通したユーザー価値の創出 売上や利益を起点にするのではなく、ユーザー課題やニーズを的確に捉え、プロダクトを通してユーザー価値を創出することに起点を置きます。 2.目的のデザイン 目的が決まっていて、そこに到達するまでのリソースやスケジュール設計を行い、プランニングを行うプロジェクトマネジメントと、プロダクトマインドセットは真逆の発想になります。ユーザー課題やニーズは常に移り変わるため、どのようなユーザー価値創出を行うべきか、常に考え続ける必要があります。そのため、目的自体を再定義し続け、与えられたリソースや時間の中でいかにゴールに近づけていくかという発想を持つことになるのです。目的自体が可変であることは時として革新的なアイデアを生む環境になることがあります。 例えば、プロジェクトマネジメントでは、雨天が多く、傘を100本作るという目的が決まっていたら、後はどのようなスキルを持った人が何人月ずつ必要か考え、制作していく上でのフローを設計し、実際に作っていくという発想になります。一方、プロダクトマインドセットはそもそも雨天の状況が季節によって変わるのか、どの程度の雨量なのかという現状把握を綿密に行い、実は季節によっては小雨が多く、傘ではなく簡易なレインコートやフードでカバーできれば問題ないことを検証します。このように、そもそもの目的の解像度を上げ、ユーザー価値の方向性を変えてしまうのです。そのため、時としてこのような発想は大きなイノベーションの源泉になりえるのです。 3.中長期目線 短期的にユーザー価値を創出できることは少なく、中長期目線で考えることが重要です。短期的な目線で開発ロードマップを策定したり、優先順位を捉えたりすると、個別対応的な差し込み案件を多く受け入れることになり、本質的なプロダクト開発にリソースを避けない状況に陥ってしまいます。また売上や利益を中心に添え、スピードを重視した開発を進めると、技術負債がたまり、ベロシティに応じた開発ROIが低下していき、身動きが取れない状況になってしまいます。 上記のように、プロダクトマインドセットはプロダクトを通したユーザー価値の創出を土台にし、目的から考え、中長期目線で取り組んでいくことが大きなポイントになります。このマインドセットは、プロダクトマネージャーだけが持つべきものではなく、プロダクト開発に関わる人はもちろん、マーケターやセールスなどビジネスサイドの方も持つべきもので、会社全体で持つべきカルチャーの1つと捉えるべきです。プロダクトの論点はプロダクトサイドだけで完結するものではなく、事業全体の根幹の1つです。ビジネスサイドもプロダクトマインドセットを持つことで、例えばユーザーフィードバック1つ取っても変化があります。 単にユーザーから受けた要望をプロダクトマネージャーに伝えるだけではなく、個々の要望から抽象的なユーザーニーズを考え、プロダクトサイドと連携し、今後の開発ロードマップを策定を意識した議論に繋がっていきます。 プロダクトマインドセットを阻む大きな2つの壁 プロダクトマインドセットを維持し続ける上で、大きく2つの超えるべき壁があります。1つはPMF(Product Market Fit)後のGrowth期に訪れ、もう1つはIPO後のIRを開示し、より数字に対するコミットメントが上がったときに来ます。 1.PMF後 PMFまでは、20人から、多くても50人程度のスタートアップ、もしくは新規事業としてプロダクト運営を行っていることが多いです。この時期、組織の風通しもよく、お互い顔を見て仕事を進めることができ、PMFに集中できる状況です。しかし、PMFを獲得しGrowthフェーズに入ると、今の勝ち筋を突き進み、売上、導入社数ともに上げるべく、グリップを握り直す機会が訪れます。同時に、B2Cだと大型のCM案件やWeb広告も予算の桁が変わり、コミットしていく中で、いつの間にかユーザではなく、数字に焦点が集まり始めます。B2BでもセールスやCSM(Customer Success Management)などビジネスサイドのリソースが拡張され、売ること、導入し切ることに焦点が集まります。そして、ユーザが増えるに連れて、組織を大きくしていくために、各ファンクションの専門化が進み、サイロ化していきます。そのため、調整コストが上がり、業務のプロジェクト化が進み、プロダクトマインドセットが薄れていくのです。 2.IPO後 IPOを行うと、IRにより外部に目標を公開し、セグメント別のPLを発信することになります。もちろん、社内目標は公開している目標よりもアグレッシブな設定にし、バッファを持つことが一般的ですが、IPOを契機に、目標に対するコミットメントが上がることになります。その外圧の中で、Growth期に見た状況がより色濃く出てきます。というのも、Growth期からさらにScale期を経てIPOを行うわけで、その過程でより組織は大きくなり、サイロ化し、プロダクトマインドセットは減退していきます。組織が大きくなると、調整してやり切ることだけでも大きな仕事になり、達成感が出てしまいます。しかし、調整した事自体に成果が紐づくことはなく、その後、ユーザーに届いてこその成果です。 プロダクトマインドセットを維持する打ち手 大きく対応策は3つあります。 1.カルチャー化 まず、「プロダクトマインドセットとは」の最後にも記載したのですが、ユーザーを中心に添えたアプローチをカルチャーに入れ込んで行くことが、1つ目のアプローチになります。むしろ、このアプローチこそが主軸であり、真っ先に検討すべきものです。カルチャー化していく上で、まず取り掛かるべきものは言語化です。どのような価値観を大事にしたいのかを言語化し、一言一句こだわり、組織に浸透しやすい形にしていきます。形になったら、組織への伝え方を検討します。会社のコアバリューに追加したりし、定期的な研修等に組み込んで行ったりすることが考えられます。 ただ伝えるだけではなく、フィードバックの仕組みを入れるべく、行動規範として人事評価の基準にも組み込まれるケースもあります。非常に強制力が強いアプローチになりますので、まずは評価という形ではなく、業務を進める上でのフィードバックに組み込んで行くことから進めていくとよいかもしれません。 2.リーダーシップによるサポート 人はKPIに大きく思考や行動が制限されます。目線を上げて下さいと頼むだけでは、何も変わりません。そのため、ビジョンに立ち返り、その制約を超え、なんのためにやっているのか、再度検討する機会が必要になるのです。個人の意識で制約を超えることは難しく、リーダーシップがビジョンをしっかり伝え続け、現場が解釈し、プロダクトに反映していく、このプロセスの確立が重要です。 3.チーム間のコラボレーション プロダクト開発の現場において、チーム間のコラボレーションは不可欠です。異なるファンクションのメンバーや、他のプロダクトを担当しているチームなどと連携することで、お互い支え合う事ができますし、時としてピアプレッシャーとして機能することもあります。何もしないと、組織がサイロ化し、連携がなくなっていくので、意味ある連携の設計が肝になります。例えば、ミッション、ビジョンの読み込みなど、チーム横断で行っていることを一同に集めて実施したり、ロードマップの共有会など、起点となる情報の共有、さらに、ワークショップやトレーニング、海外のカンファレンスなどの参加などを何か共通のテーマを取り上げ、お互いの視点で感じたことを共有し合うことが挙げられます。 まとめ 悪い燃料でも車は走るように、プロダクトマインドセットが整備されていなくても、プロダクトは運営できます。しかし、近い将来、事故が起きてしまいます。プロダクトマインドセットを持ち続け、ユーザー価値に焦点を当て続けられるかが、プロダクトの進化の土台になります。その上で、PMFとIPOの後は特に維持するのが難しい時期になるので、その前までにカルチャー化を中心にプロダクトマインドセットの蓄積をしていくことをおすすめします。 --- # プロダクト組織の設計と意思決定 URL: /insights/47 title: "プロダクト組織の設計と意思決定" summary: "プロダクト自体の特性やフェーズ、競争環境において、プロダクト組織のあり方は変化します。では、プロダクトとしての組織設計をどのように捉え、行っていくべきなのでしょうか。本記事では、フェーズごとのプロダクト組織を確認しながら、意思決定への影響を軸にその解像度を上げていきたいと思います。" date: 2024-02-06 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/47/00.jpeg" プロダクト自体の特性やフェーズ、競争環境において、プロダクト組織のあり方は変化します。では、プロダクトとしての組織設計をどのように捉え、行っていくべきなのでしょうか。本記事では、フェーズごとのプロダクト組織を確認しながら、意思決定への影響を軸にその解像度を上げていきたいと思います。 中央集権型と自律分散型によるプロダクト組織への影響 まず、一般論として組織における権限や意思決定の構造には、中央集権型と自立分散型という大きく2つのアプローチがあります。 中央集権型は意思決定や権限が経営陣や中央の管理者に集中している構造を指します。権限に併せて、階層ごとに情報共有も設計されていて、意思決定までのエスカレーションルールによって一定の手続きが要求されるので、全体感を維持できますが、逆にスピード感は出にくくなります。 他方、自律分散型の場合は意思決定や権限が分散し、各部門やチームが独立して判断し、推進していく構造を指します。権限に併せて情報共有を行いますが、細かく設計しても運用に耐えられないため、広く共有しているケースが多いです。そのため、随所でタイムリーに意思決定でき、実行に移せますが、全体的な統制や全社的に取り組む場合、かなりの調整コストが要求されます。 この説明だけだと、プロダクト組織は自律分散型が良いと思われがちですが、もちろん両者にそれぞれメリット、デメリットがあります。 まず、中央集権型を採用した場合、経営陣がプロダクトビジョン、ロードマップ、リソース配分について確認し、意思決定することになります。そのための下準備として、プロダクトマネージャーはプロダクトビジョンを咀嚼し、ロードマップのドラフト作成を行います。無事経営陣からお墨付きを得られたら、PRDの作成、開発ディレクション、効果検証を進めていきます。 この構造では、プロダクトマネージャーは抽象度の高い意思決定から解放されます。そのため、ジュニアメンバーを採用し、育成する余地ができます。中途採用頼りの組織構築ではなく、プロダクトマネージャーの育成プログラムを拡充し、成長を促す基盤構築が組織における差別化要素になります。 次に、自立分散型を採用した場合、経営陣は会社全体のミッション、ビジョン、バリュー(以下、MVV)の策定に止め、プロダクトマネージャー陣によるアウトプットを元に、CPOやVPoPがプロダクトビジョンをまとめていく形になります。経営陣から提起されたMVVを元に担当エリアのプロダクトビジョン、ロードマップの策定を主体性を持って行っていきます。 担当領域の意思決定を各プロダクトマネージャーが行うので、会社全体の状況を俯瞰でき、全社視点で担当領域の意思決定ができることが求められます。個別最適にならないように、自分の視点を上げることは想像以上に困難を伴い、かなり採用要件を上げてしまうことになります。そして、ここまで要件が上がってしまうと誰でもできるようになるわけではないので、育成よりも、中途採用に力を入れ、組織構築することになるでしょう。 このように、中央集権にすることでプロダクトマネージャーとしての権限は一部制限されるものの、組織構築のオプションは広がります。他方、自立分散だと権限は広く、プロダクトマネージャーとしてのやりがいは訴求しやすいですが、その分採用できる幅を狭めてしまいます。 また、プロダクト組織だけで決められる論点でもないため、会社全体としてどちらの構造なのか見極める必要があります。経営陣のバックグラウンドなどにより、得意なテーマは比較的中央集権型ですが、他は自律性が担保されているようなこともあります。 組織設計が権限や意思決定に大きく影響を与えるポイントですので、しっかり見極め、自分が何を求められているのか考え、アウトプットすべきでしょう。 フェーズ別プロダクト組織の構造 プロダクトや事業の進捗などのフェーズに応じて、プロダクト組織の構成はフラット組織、ファンクショナル組織、事業部組織の3つがあります。その特徴を確認した上で、意思決定のあり方について詳述していきます。 1.フラット組織 まず、フラット組織とはスタートアップ設立時や新規事業の展開初期によく見れられる形式で、経営陣と従業員という2階層しかなく、レポートラインをシンプルにし、上下関係の調整を排除した組織構造を指します。とにかく生産性に焦点を当てて、プロダクトローンチやPMFに集中するために活用されます。 自律分散型組織の原理を極限まで高めた組織で、非常に高い自律性を求められ、マインド、スキルともに最高クラスの人員でしか成立し得ない組織構造です。 この組織が維持できるのは、20−30人までと言われており、組織を構成する人員が増えるに連れて、経営陣の調整コストが指数関数的に上がってきます。そのため、どのタイミングで、次に説明するファンクショナル組織に移行するのか、事前に検討し、遅滞なく移行することが重要です。 2.ファンクショナル組織 プロダクトマネージャーだけいてもプロダクトを進化させることは難しく、エンジニアやデザイナーと協働することになります。このファンクションに着目し、組織設計を行ったものが、ファンクショナル組織になります。スキルや専門性などのファンクションを部門として認識できるようにし、各部門の責任者として、CPO/VPoP、CTO/VPoE、CDO/VP of Product designなど各部門に責任者を立てることになります。 この組織を採用すると、中央集権型なのか、自律分散型なのかによって権限の幅がグラデーションしていきます。つまり中央集権型であれば、プロダクトの方針は事業に直結することから、プロダクトビジョンやロードマップの意思決定はCEOを中心とした経営陣で持つことになります。逆に、自律分散型であれば、個々のプロダクトマネージャーがMVVを念頭に置いた上で、自身の担当領域に対して権限を持つことになります。またこれらの中庸として、プロダクトの責任者であるCPO/VPoPが主体的に決めていく権限を持つこともあります。 意思決定を中央に寄せれば寄せるほど、調整コストが上がり、意思決定までの時間がかかりますが、その分全体像を俯瞰し、大きい意思決定ができるというメリットがあります。また、権限を分散させればさせるほど、採用要件が上がり、組織としてスケールすることが難しくなってきます。 レイターステージになればなるほど、自分の裁量を意識するシニアなプロダクトマネージャーの採用が難しくなっていくため、なんらかの形で権限を寄せて、ジュニア層の採用を担保する必要が出てきます。 3.事業部制組織 事業部制組織とは、社内に自己完結型のビジネスユニットを構築している組織を指します。個々のビジネスユニットが持つ権限や責任を完遂できるように設計されます。昨今のIT企業だと、基幹プロダクトのPMF直後から新規プロダクトの検討が始まったり、Fintechなど金融関連ビジネスを行うため、子会社を設置するなど、かなり早いタイミングから部分的に事業部制組織が導入されることがあります。 文字通り、複数の事業部を立てて、独立に動くことを前提にすると、200−300人以上の従業員規模が必要になります。感覚的ですが、500−1000人ぐらいの規模になって初めてしっかり移行する企業が増えてくるように思います。さらに、事業部制の場合、どのような軸で事業部を分割していくかによって、タイプがわかれます。具体的には、プロダクト/機能別、ユーザーセグメント別、KPI別などで編成することになります。 A.プロダクト/機能別 プロダクト、機能別はその文字の通り、プロダクトまたは機能ごとに事業部を編成します。そのため、プロダクト、機能ごとに1人以上のプロダクトマネージャーを配置し、ユーザーリサーチ、データ分析、機能の企画を担当します。そして、ビジネスサイドと連携しながら、目標達成に向け、推進していくことになります。 この組織設計は、幅広いプロダクトラインナップがあり、様々な場所に開発拠点がある場合などで、採用されることが多いです。独立したプロダクトや機能ベースで組織することで、他の事業部とのカニバリが少なくなりやすいです。 しかし、他事業部と独立で組織編成し、連携の必要性が低いため、同じ論点を違うタイミングで取り組む可能性があり、事業部を超えた情報共有が全く無くてよいわけではありません。また、プロダクト全体に共通する問題を議論するために、異なる事業部のプロダクトマネージャーが互いにコミュニケーションをとることも重要になります。 B.ユーザーセグメント別 ユーザーセグメント別に事業部を組織することで、特定のユーザーセグメントにとって、関心の高いプロダクトや機能を開発でき、特定の顧客のニーズを深く満たすことに繋がります。このような組織設計を行う企業では、ニーズやペインポイントの理解、開発優先順位、施策の企画など、プロダクトマネージャーが行うすべての業務はユーザを中心とした価値創造に焦点が自然と当たります。 プロダクトを使うユーザーに焦点を当てているがゆえ、複数のユーザーセグメントに影響がある機能拡張を行う際、事業部を超えて調整を行う必要ができてしまいます。この組織設計は必ず、そのセグメントに併せた独立のUIを設計したいという企画が走り出します。この企画を一度リリースすると、基本的に不可逆的な意思決定であり、UIのメンテナンスコストが2倍以上になり続けるため、相当慎重に検討を行う必要があります。 C.KPI別 最後に、主たるKPIをチームの目標とし、それを向上させるために、事業部を編成する設計があります。これ設計は売上などを起点にKPIツリーを設計でき、最も細かいKPIが特定のユーザアクティビティに直結するケースに置いて効力を発揮します。具体的にはソーシャルゲームなどB2C系のプロダクトと相性がよいです。ただし、事業部として切り出す以上、ある程度の安定性を持ったKPIが不可欠であり、B2Cでもプロダクトとしての型が見えた後の採用になります。 逆にSaaSのように機能をバンドルしてユーザーに提供している場合、ビジネスインパクトとユーザーアクティビティが紐付きにくいため、KPI別の組織設計の採用は部分的にならざるを得ません。例えば、サインアップや課金導線の最適化など、施策がビジネスインパクトに直結する部分のみ切り出して採用する形になることが多いです。 1つずつ組織設計を行う際の軸を確認してきましたが、どれか1つの軸をベースに組織構成を行い切るのではなく、部分的にプロダクト、ユーザセグメント、KPIを組み合わせて設計することも多いです。例えば、買収したてのスタートアップがまだPMI(Post Merger Integration)していない時期はプロダクト別にならざるを得ないですし、新規事業なども切り出して進められる傾向が強いです。プロダクト横断で取り組むべき特徴的なユーザセグメントだけ切り出すこともありますし、KPIも確立したものだけ、KPI別に組織化することもあります。むしろ、何か一つを軸にきれいに組織設計されることの方が稀かもしれません。 意思決定という観点では、これらの事業部制を採用する場合、独立のビジネスユニットとしての運営が求められるため、予算、採用に関して権限を持つことになります。CEOを中心とした経営陣は、ビジネスパフォーマンスの確認と事業部を横断したリソースの調整、全事業部横断のプロダクトビジョンの策定など、抽象度の高い業務に焦点を当てることになります。 まとめ フェーズごとのプロダクト組織の変遷を確認しながら、その中でどのような意思決定の特徴があるのか順を追って見ていきました。プロダクト組織は、フェーズによっても、プロダクトの特性によっても、その最適な形は変化し続けます。常に最適な組織設計を考えながら、スクラップアンドビルドし続けることが答えかもしれません。 --- # マルチプロダクト戦略、コンパウンド、All-in-Oneの関係 URL: /insights/49 title: "マルチプロダクト戦略、コンパウンド、All-in-Oneの関係" summary: "本記事では、マルチプロダクト戦略、コンパウンド、All-in-Oneを体系的に整理し、戦略のあり方を議論する上での土台の提供に挑戦します。" date: 2024-03-08 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/49/00.jpg" マルチプロダクト戦略と一言に言っても、その類型は様々で、SaaSとしての類型やターゲットにより適したものが変わってくることを過去の記事である「SaaSにおけるマルチプロダクト戦略」で確認しました。実は他にも似たような概念として、コンパウンドやAll in One(End to End)などがあります。国内でSaaSを展開していく上で、複数プロダクトを出していくことの重要性を物語るように、様々な角度から議論されていることがわかります。 本記事では、マルチプロダクト戦略、コンパウンド、All-in-Oneを体系的に整理し、戦略のあり方を議論する上での土台の提供に挑戦します。 マルチプロダクト戦略 まず最初にマルチプロダクト戦略のおさらいをしましょう。SaaSにおけるマルチプロダクト戦略は1つのSaaS企業が複数の異なるプロダクトを提供する戦略です。これにより異なるセグメントやユーザー層のニーズに対応し、収益を多角化します。SaaS企業が1つの主力プロダクトに依存せず、新たな成長ドライバーとして新規プロダクトを展開し、複数のプロダクトの組み合わせによって事業成長を後押しするアプローチです。 マルチプロダクトはHorizontal SaaSでも、Vertical SaaSでも展開されており、メインプロダクトと第2、第3のプロダクトの関係性(周辺なのか、全く別プロダクトなのか)と、それぞれのプロダクトのバイヤーの関係(同じバイヤーなのか、異なるバイヤーなのか)の2軸で下記のように整理ができます。 上記のように4つの類型があり、アドオン型、ターゲット型、カテゴリー型、スイート型として定義できます。正確な定義と具体例については、「SaaSにおけるマルチプロダクト戦略」をご参照下さい。プロダクト間の関係性とバイヤーなど、プロダクト戦略を語る上で、重要な2点で分岐が起きていることから、プロダクトの設計やマーケティングではなく、戦略視点での定義と言えるかもしれません。 コンパウンド 次にコンパウンドです。マルチプロダクトは、文言通り、複数のプロダクトを提供することを指します。その中で、複数のプロダクトで共通する基盤的な要素を切り出し、進化させることで、統合的なUXや認証、課金、データ、権限周りなどを一括で開発し、アプリに供給することをコンパウンドと呼びます。 つまり、マルチプロダクト展開を行う上で、共通のプロダクト基盤をコンパウンドとして確立している状態のことを指し、下図のようにマルチプロダクトの一類型と捉えることができます。 また、各プロダクトとプロダクト基盤の関係を図示すると以下のように、プロダクト基盤を土台に各種プロダクトが立ち上げられ、運用されている状態になります。 さらに、コンパウンドの捉え方には、大きく2のパターンがあります。1つ目はプロダクトに重きがある場合であり、もう1つはプロダクト基盤に重きがある場合になります。前者は基幹プロダクトを展開し、適したマルチプロダクトの類型を採用し、領域を広げていきます。この過程で、共通部分を基幹プロダクトから切り出し、基盤として認識し進化させて行きます。 逆に後者の場合は、iPaaSや経営基盤など、APIやデータの集約にプロダクトしての根幹があるケースです。この場合、基盤の上に乗っているアプリよりも、基盤として確立していること自体が、競争力になり、この設計や拡張性が差別化要素となります。 このように、コンパウンドはマルチプロダクトを実現していく上でのプロダクトの構成に着目した概念と言えるでしょう。 All in One 最後に、All in Oneです。この概念が最もよく使われており、プロダクト戦略、プロダクトの構成やマーケティングなど、様々な視点から使われ、非常に多義的なものです。 まず、プロダクト戦略とプロダクトの構成の2側面に着目し、整理をしていきます。そうすると、Allとは機能やプロダクトを指し、Oneは基盤となるプロダクトやプラットフォームを指します。プラットフォームという言葉は様々な類型がありますが、ここでは複数のプロダクトを提供するときに基盤として成立しており、共通部分が切り出されたものとします。つまり、複数プロダクトを1プラットフォームで提供するとき、プラットフォームとコンパウンドは同義という解釈になります。 なお、プラットフォームという言葉は多義的で、APIを提供する際、3rd Partyに公開されたAPI群をAPIプラットフォームと言ったり、受発注業務を処理できるSaaSだけではなく、実際に発注、受注できる機能まで提供することがあり、この機能がマッチングプラットフォームと呼ばれることもあります。 AllとOneの組み合わせを紐解くと、そのパターンは2つしかありません。1つ目は複数の機能を1つのプロダクトとして提供したものであり、マルチプロダクト戦略で言うアドオン型を意味したり、そもそもマルチプロダクトではなく、シングルプロダクトとして複数機能を搭載しているものを指します。2つ目は複数のプロダクトを1つのプラットフォーム上で提供したものであり、これは、マルチプロダクト戦略で言うスイート型、カテゴリー型に該当します。ただし、スイート型、カテゴリー型の場合、プロダクト共通基盤がなく、完全独立でマルチプロダクトを展開している可能性もありえます。All in Oneというには何らかのプラットフォームが必要であり、完全に独立したマルチプロダクトの場合は何からのプラットフォームが機能していること(コンパウンドであること)が前提となります。 少し目線を変え、マーケティングをベースにAll in Oneを捉えると、ユーザーへの訴求として使われることもあります。つまり、ユーザーニーズを広く実現できるプロダクトであることを訴求する意味で使われます。この意味でのAll in Oneの対比として、ベスト・オブ・ブリードが挙げられ、こちらもユーザー視点での概念で、特定の分野や機能ごとに最適なプロダクトを選定し、組み合わせて使うことを指します。 このように、All in Oneはプロダクト戦略、プロダクトの構成以外にも、マーケティングの意味合いでも使われることがあり、使う人によって解釈の幅が非常に広い概念と言えます。このような概念は使われているのを見聞きする場合も、使う場合も誤解を生みやすいので、注意が必要でしょう。 まとめ 国内においてTAM(Total addressable market)が限定されることから、マルチプロダクト戦略やコンパウンド、そしてAll in Oneなどが広く採用され、打ち手の細分化、最適化が進んで行くことが予想されます。ターゲットセグメントに対して、どのマルチプロダクトの類型で戦うべきか、コンパウンドさせる上で重きをどこにおくかなど、実際検討され、プロダクト開発を進めている話を毎月のように聞くようになっています。今後、マルチプロダクト戦略やコンパウンド、そしてAll in Oneなどを採用していく上で、議論の土台になれば幸いです --- # デジタル新規事業立ち上げにおける着眼点 URL: /insights/5 title: デジタル新規事業立ち上げにおける着眼点 summary: "業界業種に関わらず大手企業の新規事業において、昨今では新しいデジタル技術の活用が前提となっている事例も少なくありません。SaaSなどのツールを活用することで短期間かつ低コストで運用可能なオペレーションを構築することに加え、取引先や生活者などのエンドユーザーにとって直感的かつ使いやすいユーザーインターフェースを実現するための手段や手法などが盛んに議論されるようになりました。" date: 2022-06-29 author: "authors/takafumi\_endo.mdx" category: "categories/product.mdx" glossary: "glossary/saas.mdx" "glossary/ai.mdx" "glossary/startup.mdx" cover: "/images/insights/5\_cover.jpg" 業界業種に関わらず大手企業の新規事業において、昨今では新しいデジタル技術の活用が前提となっている事例も少なくありません。SaaSなどのツールを活用することで短期間かつ低コストで運用可能なオペレーションを構築することに加え、取引先や生活者などのエンドユーザーにとって直感的かつ使いやすいユーザーインターフェースを実現するための手段や手法などが盛んに議論されるようになりました。AI/機械学習を活用したヘルスチェックやブロックチェーンを活用したセキュアかつ短期間で実施できる海外送金など、新しい技術によってこれまでには実現できなかった体験やサービスも日々生み出され続けています。 またモバイルデバイスの普及によって、新しいサービス・製品・ブランドを初めて認知するきっかけがリアルなメディアやTVCMなどの広告ではなく、SNSや動画サイト等のオンラインサービスというケースが当たり前になりつつあります。店頭や対面などリアル接点とスマートフォンやパソコンなどのデジタル接点では、同じ商品・サービス・ブランドであってもユーザーが抱く印象は異なり、双方のチャネルで同じメッセージやクリエイティブでマーケティングを実施したとしてもその反響が異なることは少なくありません。実際に同じ品揃えでもリアル店舗での売れ筋商品とECサイトでの売上ランキングが一致しないことも一般的です。 従来のリアルチャネルを主軸に事業を展開してきた伝統的な大手企業においても、B2C/B2Bに関わらずデジタルチャネルが商品及びサービスの最初のブランド認知の場となる、もしくはリアルチャネル利用もデジタルチャネルを経由して行われる機会(例 BOPIS:Buy Online Pick up In Store、ECサイトで購入した商品を店頭で受け取るサービス)が増加していくことが予想されていくなかで、デジタルファーストでの商品及びサービス設計、販促マーケティングプラン等への対応がより求められていきます。そのような背景のなかでデジタルサービスを基軸とした新規事業を起案する際に指針となり得る着眼点についてご紹介します。 対象市場におけるデジタルネイティブ層とは デジタルネイティブとは対象市場において「相対的に新しいデジタルツールを活用した情報収集を積極的に行う傾向にあり、かつ情報発信力のある顧客」を想定しています。例えばコンシューマー市場においてモバイルアプリの活用や決済などは当たり前に行われているため、その市場においてはデジタルネイティブならではのアクティビティとも言えませんが、伝統的な製造業において受発注の仕入取引において契約手続きにDocuSignなどのモバイルアプリを活用している企業やビジネスパーソンは現時点では相応に少なく、対象市場においてはデジタルネイティブ層と言えるでしょう。そのような顧客属性の方々は新しい技術を活用したツールやデジタルサービスなどを積極的に利用してくれるだけでなく、周囲のコミュニティへの情報伝達力が高く、特別なマーケティングリサーチやプロモーションなどを行わなくても、新しい事業やサービスにおける初期の仮説検証を実施しやすい傾向があります。大手企業で新規事業を考える際などは、既存取引先などの程度売上シェア等の大きい顧客を初期顧客として優先的に議論されやすいケースが多いものの、デジタルファーストな新規事業を検討するのであれば初期の主要顧客がデジタルネイティブ層であるかどうかはその後のGo To Market戦略に大きく影響する論点です。既存の取引や商材を制約とせず「デジタルネイティブ」という関連から情報収集や企画検討することは新しい発想にも繋がりやすく、初期のリサーチ段階でおすすめしたい着眼点の一つになります。 対象技術が最も便益を提供し得る顧客と用途とは 話題の技術や新しいツールを活用したユースケースを検討する際、どの業界・市場においても従来の手段と比べて最も大きな便益を与えることができる手段と対象顧客は誰なのかというのは重要な論点です。当然新しい市場創出を目指すのであれば相応のペインの解消もしくはゲインの提供が求められるため、従来の業務や生活の延長線上での課題解決や改善・改良だけでなく、実現可能な最大便益の観点で事業アイディアの範囲を広げてみることも有用です。例えば、機械学習を活用した画像解析によってカメラを向けるだけで体温を測れる技術があるとして、それだけでも多くの事業アイディアを検討することができます。体温計の代替というアイディアは比較的容易に考えられるものですが、その体温測定の速さや精度が統計的にいかに優れていたとしても、体温計という製品の長い歴史による実績と物理的に検温する行為への信頼感を代替できるような便益を顧客に提供することは簡単ではないとも考えられます。一方で、精度に多少問題があったとしても女性の生理周期の推定や子供や高齢者の見守りなどで体温を半自動的に定点観測できるサービスには需要があるかもしれません。工場や発電所などで働く従業員の方々の体調管理の手段になる可能性もあります。少し視点を変えてみると、集団の体温をカメラで測れる技術はライブやスポーツ球場での盛り上がり状況を把握する手段として、意外な用途やニーズがあり得るかもしれません。これらはあくまで例ではありますが、類似技術であっても用途や顧客によって市場機会が大きく異なる可能性が高く、技術起点での事業アイディアを考える場合には便益観点で着想を広げてみることもおすすめしたいアプローチです。 今このタイミングで最も適切な市場選択とは 新しい技術を活用したサービスに対して顧客の需要があることが検証できたとしても、市場参入のタイミングが事業及びサービスの成長速度に影響を与えることがあります。例えばスタートアップ企業においてはその時のトレンドによって資金や人材の集まりやすさ等が変わるため、市場参入のタイミングがより分かりやすく事業の成否にも影響しますが、大企業の新規事業においても同様にタイミングの議論は重要になります。例えば米Gartner社が公表しているテクノロジーのハイプ・サイクルでは、特定技術を1.黎明期、2.ピーク期、3.幻滅期、4.啓発期、5.安定期のフェーズに分けてマッピングしており、2021年8月時点のハイプ・サイクルではNFT、データ・ファブリック・分散型アイデンティティなどがピーク期を迎えておりこれから幻滅期に入っていくと予想されています^1。同じ技術であって黎明期とピーク期ではそれぞれ社内外からの印象が異なり、関係者の説明コストにも影響するため、事業リソースの確保しやすさという点だけでも大きく違いが出ることがあります。またデジタル関連事業領域においては、主要プレイヤーの顔ぶれやオンラインマーケティングのROI等の前提で数年で変化することもあり、数年前と現在では事業の競争環境が大きく異なることも珍しくありません。実際に事業を開始するにあたって社内外のステークホルダーに対してなぜ今このサービスを始めるべきなのか説明を求められる機会は多く、適切な市場参入時点はいつなのかという観点について少なからず仮説を持っておくことが重要になります。市場のタイミングにおいてはPEST分析の4つの観点(政治Political、経済Economic、社会文化Socio-cultural、技術Technological)も初期の思考の整理として役に立つことがあります。 おわりに 本記事ではデジタル関連の新規事業の着眼点をテーマとしていますが、既存事業の変革を目的とする「デジタルトランスフォーメーション」においても上記は重要な論点です。新規事業においても既存事業のデジタルトランスフォーメーションにおいても、プロダクトやサービスを短期間でリリースし、顧客と向き合うことを通して事業アイディアの検証や発掘を行うことが理想ではありますが、大手企業においては一つの事業やプロジェクトのリリースまで年単位の時間を要するも珍しくなく、PoCなどのプロジェクトであっても関係者が多く大掛かりなものになってしまうこともあり、スタートアップのように短いサイクルでの仮説検証が難しい場合も多いのが現状です。そのような環境において事業を検討及び推進されている皆様にとって、本記事が論点整理やアイディア検証のなどの一助となりましたら幸いです。 --- # PLGの成果を引き寄せる鍵、PQLの重要性 URL: /insights/50 title: "PLGの成果を引き寄せる鍵、PQLの重要性" summary: "本記事ではPLGに焦点を当て、その成長の鍵を握るProduct Qualified Lead(以下、PQL)の取り扱い方について紹介していきます。" date: 2024-03-15 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/50/cover.jpg" SaaSを中心としたBtoBのプロダクトが普及し、新たにProduct-led Growth(以下、PLG)という概念が浸透しつつあります。これまでBtoCのプロダクトでは、マス向けのプロダクトが多く、できるだけシンプルなユーザストーリーに留め、プロダクト起点でGrowthしていくことが前提でした。この概念がBtoBで発展し、PLGとして認知され始めています。本記事ではPLGに焦点を当て、その成長の鍵を握るProduct Qualified Lead(以下、PQL)の取り扱い方について紹介していきます。 PLGの類型の解説 PLGとはSaaSを中心としたBtoBプロダクトにおけるGo to Market戦略の1つで、ユーザ獲得、アクティベーション、リテンションをプロダクトそのものが担うことを指します。具体的には、フリーミアム、フリートライアル、デモの3つの主要な類型が存在します。 フリーミアムとは、製品の基本機能が無料で提供され、ユーザーのニーズに応じて追加機能やサポートを活用する時に初めて課金される仕組みのことを指します。フリートライアルは一定期間プロダクト全体を無料で利用でき、この期間にプロダクトを試し、その後、ユーザーは有料プランに移行するかどうかを判断してもらうことになります。最後に、デモです。最も想起しやすいのはSalesが見込み顧客に対して個別にプロダクトの紹介を行うことです。他にもプロダクト紹介のWebinarや動画を準備することもありますし、HP上にプロダクトの一部を操作できるように組み込むこともあります。 どの類型にも共通するのは契約前段階で、プロダクトを試すことができ、その上で契約するかどうかを判断できる余地を顧客に留保していることにあります。 また、獲得観点だけでなく、Customer Success Management(以下、CSM)の取り組みをチュートリアルとしてプロダクトに組み込むことで、プロダクト起点でChurn Rateを低く留めることもできます。 PLGに対して、Sales-led Growthという概念があり、これは従来通り、Salesにより商談を行い、受注するプロセスのことを指します。PLGに対して、Salesが対応することでより高価なプロダクトを販売することができます。また、Salesの説明を介在することでまだ市場として確立していない領域の開拓が可能になります。 他方、PLGは高いACVは見込みにくいですが、広くターゲット顧客にリーチすることができます。特に市場として認知されている場合、効率的にLead獲得ができます。 PQL(Product Qualified Lead)の定義と重要性 SaaS業界が盛り上がり、SaaS企業が増えていくと、当然競争が熾烈になり、顧客の獲得コストが向上していきます。また、顧客にも変化が見られます。各社がホワイトペーパーを提供したり、Webinarなどの展開により、顧客が自ら学び、比較できるような素地が整ってきました。さらにPLGの普及によりフリーミアムやフリートライアルができるプロダクトが増え、購入を決める上で、非常に強いインプットになってきています。 そこで、PQLという概念が出始めています。これはプロダクトを事前に試し、価値を理解したLeadを指します。MQL(Marketing Qualified Lead)や、SQL(Sales Qualified Lead)と同様に基本的な顧客情報を取得できます。逆にMQLとSQLと全く異なるポイントとして、実際のプロダクトの利用動向を確認できることが挙げられます。つまり、これまで通りターゲットセグメントかどうかを判別し、さらにプロダクトの利用動向から課金に繋がりやすいか分析を通して判別することができるのです。 エンタープライズ向けのプロダクトではなく、SMB向けのプロダクトで、より潜在顧客数が多いHorizontal SaaSで、特に相性がよいです。というのもフリーミアムを展開することで広くリーチでき、その上でプロダクトの利用動向から特に購入意欲が高い顧客を見出し、優先的にアプローチすることできるからです。 SQLとPQLの比較 SQLとPQLを比較すると、以下のように整理できます。 当たり前のことですが、SQLは営業が介在することで、より難しい業務課題を抱えている顧客に当たったり、新しい市場を作りに行くようなプロダクトを説明し、訴求することができます。そのため、ACVは比較的高くなりやすいですが、逆にLead獲得しにくく、営業を重ねることでしか受注を蓄積できません。 他方、PQLはフリーミアムやフリートライアルで展開し、顧客によるセルフ課金、セルフサーブを前提とすることも少なくなく、あまり複雑なプロダクトや新規性が強いプロダクトを訴求することは難しく、ACVが低いプロダクトでしか展開が困難になります。その分、Lead獲得しやすくなり、プロダクトの利用動向も踏まえ、社内で解析を行うだけで受注確度が高い見込み顧客から当たることができるのです。 PQLと顧客獲得戦略の統合 PQLを導入していく上で、ただPLGの前提となるフリーミアムやフリートライアルをProduct-sideが提供すればよいだけではありません。 フリーミアムやフリートライアルがLead Generatorとなるべく、Marketingと連携し、どこまでフリーミアムとして提供するのか、どの程度期間トライアルしてもらうのかを設計した上で、ターゲットに訴求するメッセージングを一緒に検討していくことになります。Marketingだけでなく、営業ともProduct-sideは連携することになります。PQLからユーザーとしての利用動向を得られるため、PQLから上がってくるユーザーフィードバックは今後のプロダクト改善をしていく上で重要なインプットとなります。 さらに、CSMがサポートしている内容を定型化し、チュートリアルとして置き換えることができれば、究極的にはプロダクトだけで導入を進められるようになります。より導入しやすいプロダクトを目指す上で、CSMとの連携は不可欠でしょう。 まとめ PLG、PQLと相性の良いHorizontal SaaSの領域はTAMが大きく寡占できると、強いプレイヤーが生まれやすく、周辺領域をM\&Aや新規事業展開で拡張を進めていきます。しかし、そのような領域は基幹プロダクトと比較すると、手薄になりがちで、熱意のこもったStartupによるワンポイントソリューションが十分ひっくり返すポテンシャルを持っています。 国内のTAMはあまり大きくないことから、PLGの導入が本格化していないように思います。しかし、Horizontal SaaSの領域に新しいプレイヤーが出始めています。彼らがもう一度、フリーミアムやフリートライアルを通して獲得できるPQLを見直すことで、寡占プレイヤーとの競争優位を築く1つの手法になるかもしれません。 --- # 物流DX - AI活用と海外先進企業の挑戦 URL: /insights/51 title: "物流DX - AI活用と海外先進企業の挑戦" summary: "本記事ではPLGに焦点を当て、その成長の鍵を握るProduct Qualified Lead(以下、PQL)の取り扱い方について紹介していきます。" date: 2024-03-14 author: "authors/nahoko\_imamura.mdx" category: "categories/research.mdx" glossary: "glossary/ai.mdx" cover: "/images/insights/51/cover.jpg" 日本では物流業界を取り巻く環境は年々厳しさを増し、宅配便取扱個数は2015年以降増加の一途をたどる一方、その配達の担い手である道路貨物運送業就業者数は横ばいで推移しており、担い手不足が続いています。また、担い手の77%が40歳以上であるという中高年層に強く依存した業界構造になっており、高齢化が今後進むに連れて人材不足は更に深刻化することが予測されます。 そして、今年2024年4月1日から自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)が改正され、タクシー・ハイヤー運転者、バス運転者、トラック運転者の時間外労働時間や、勤務間インターバルに規制が掛かります。所謂2024年問題と言われ、危惧されている「物が運べなくなる事態」は正に現実味を帯びてきているのです。 この問題は2024年に限った問題ではなく、物流量が右肩上がりで増加していく一方で、配達可能キャパシティが減少していくという今後も変わらない状況に接し、我々は根本的な解決策を求めていかねばなりません。ITやロボット等の活用による極限まで配達プロセスの短縮と効率化。これらの課題は日本だけに限らず、世界中で起こっています。今回は、世界中で起こっている物流革命を追います。 世界で求められるオペレーションの自動化 米国における物流業界の改革は、労働者によるデモやストライキといったより強硬的な手段から進んできました。米アマゾンの倉庫労働者による労働条件や給与の改善や、解雇の取り消しを求めて複数回行われたデモは、Prime Dayなどの大型セール期間にも行われ、アマゾンのサービス継続を脅かし続けています。同様に米United Parcel Service(UPS)の配達ドライバーや倉庫作業員を代表する労働組合と企業側との間では、労働条件や賃金に関する交渉が継続して行われており、常にデモやストライキが起こり得る状況が続いています。 企業目線で見ると、オペレーションにおいて人による作業が介在する程、サービスの不安定化やコスト上昇のリスクを抱えることになります。特に、人による配達・配車という労働提供がサービスのコアとなっているUber EatsやDoorDashなどのフードデリバリー事業、及びUberやLyftなどのライドシェア提供事業においてはその影響は顕著です。 これらの企業の事業モデルは元々、労働者の隙間時間にその労働力を提供してもらうことを想定し、個人事業主としての配達・配車業務の担い手(ドライバー)との間で業務委託契約を締結し、単発の業務を依頼する形で労働力を確保するというものでした。しかし、ドライバーたちの労働環境改善を求めた声により、2019年米カリフォルニア州で、AB5として知られる法案がUberやLyftなどの配車サービス企業に対して、ドライバーを従業員として扱うように義務付けたことを皮切りに(※)、2021年に英ロンドンの最高裁判所においても、Uber等の配達・配車プラットフォーマーはドライバーを従業員と見做す必要がある、との判断がくだされました。 その結果、配達・配車プラットフォーマー各社は英国だけでなく、欧州広域において従来の業務委託契約を変更し、ドライバーに対し有給休暇、国民生活賃金(National Living Wage)、年金制度等の導入を開始しました。 人による作業を伴うサービスの運営は物流業界に限ったことではありませんが、安定したサービス提供とコスト低減において、人による作業を極力取り除いたオペレーション自動化の確立は最優先の課題であるのです。 AI・データ分析を活用した海外事例 このような世界共通の課題に対して、新たな取り組みが次々と開始されています。先ず、倉庫作業の効率化における策として英Ocadoの事業をご紹介します。英Ocadoはオンライン食料品小売業者で、傘下のOcado Solutionsを通じてオンライン食料品小売業務に使用される技術プラットフォームやソリューションを世界各国の食料品小売大手に販売しています。 特徴は、 顧客注文の受付、在庫管理、ピッキング、配達スケジューリングといった注文受付から配達まで全プロセスを一貫してプラットフォームで繋げ、自動で情報処理することが可能なこと。 ピッキングは全てロボットにより行われ、その処理速度は一分間に約10点。また、商品の入庫作業も検品完了後は自動で行われます。 また、AIやデータ分析機能を活用し、顧客の嗜好や購買パターンを理解し、効果的な販売戦略の策定を支援する機能が搭載されています。 そして最後に、商品を入れたバスケットや、そのバスケットを搭載するフレームを統一し、バスケットをフレームの指定位置に載せると、後はフレームを押すだけで各種配達トラックに移動できる仕組みになっており、人の作業負担が極力低減される仕組みとなっています。 同時に、各顧客に商品を配達する際にも、配達するバスケットの位置が表示され、配達先住所や最適な配達ルートも自動で表示される為、人による調査・検索時間も削減されています。 次に配達時の効率化に役立つ技術として、先述の米UPSのORION(On-Road Integrated Optimization and Navigation)をご紹介します。ORIONは高度なルーティングアルゴリズムで、交通パターン、パッケージのサイズ、配達の優先順位などを考慮して燃料節約と配達時間の観点から最適なルートをドライバーに提案しています。2012年に導入が開始され、既に10年以上運用されているシステムでありますが、その有効性は運用期間が長い程顕著になっていると言えます。と言うのも、AIやデータ分析機能において重要な点は、その頭脳であるアルゴリズムと、分析対象であるデータです。 現在、高度なアルゴリズムが続々と創り出されていますが、実際にサービスインする際に問題となるのは、有効なデータの量です。米UPSは従業員54万人(2021年時点)、一日の配達個数は約2,500万個と言われています。このような規模で日々運営される配達情報を10年以上に亘り蓄積していることはルーティングの正確性を高めるデータベースとして、事業における大きなアドバンテージをもたらしています。 分析対象となるデータに関する事業を少し補足します。独DHLが提供しているResilience360というサプライチェーンリスク管理システムがこれに当たります。Resilience360はデータ分析とAIを活用して自然災害、地政学的イベント(イベント、デモ、事故等)、サプライヤーの障害などのリスクにプロアクティブに対処するのに役立つ情報提供をしています。既述のORIONにおける蓄積データの重要性に関連し、ルーティングアルゴリズムに分析させる対象としてこのような外部データを活用していくことも有効です。少し話が横道に逸れましたが、次に所謂ラストワンマイルと呼ばれる、顧客への配達自体を代替する技術革新はないか、という点に触れたいと思います。 “ラストワンマイル” 配達自動化の現在地 アマゾンの創始者ジェフ・ベゾスが初めて個々の荷物を空から届けると発表したのは約10年前ですが、残念ながら未だ実現していません。英ケンブリッジ市での実証実験は突如中断され、米国内での実証実験も100回を以って中断しました。これには安全性の確保と規制の緩和というハードルと共に、コスト効率性の問題があると言われています。現在ドローンで配達するコストはアマゾンによると一パッケージ484ドルと試算されていますが、今後はそれを2025年までに63ドルにまで削減するという目標を彼らは改めて公表しました。アマゾンのドローンによる空からの配達の実現について期待が高まります。 一方、地上における配達では、多くのベンチャー企業が、時に大企業と協力しながら自動運転配達ロボットなどの自律型車両の開発を進めています。自動運転には人の介在度に応じてレベルがあり、SAEインターナショナル(Society of Automotive Engineers International)によって定められていますが、配達業務において導入が現実化してきているのがレベル4です。 2018年にエストニアと米国に本社を置くスタートアップStarship Technologiesが、英ミルトン・キーンズで自動運転ロボットによる商品配達を開始し、その後、英米の主に大学内における各種パッケージの配達を担っており、これまでに600万以上の配達を完了し、数千のStarship(自動運転ロボット)が毎日稼働しています。 米スタートアップNuroはWalmart、Seven\&Eleven、Domino’sなどの食料品小売大手や宅配ピザ大手とのパートナーシップ締結と実証実験の開始を皮切りに、2022年には米Uberと10年間のパートナーシップ契約を締結し、自動運転車が実際に公道を使って、注文されたフードを顧客に届ける取り組みが開始されています。米テキサス州ヒューストンと、米カリフォルニア州マウンテンビューという、企業や大学、そして住宅が犇めく両地域でのサービスが順調に進めば、今後更にその活用地域が広がることが期待できます。 中国でも自動運転ロボット開発は進んでおり、Neolix、Alibaba Group、京東集団(JD.com)などがそれぞれ自動配達ロボットを開発し、配送センターなどの屋内はもちろん、大学や病院内の屋外私道での活用を開始しています。 日本では、スタートアップのZMPやHakobotが宅配ロボットの実証実験を進めていると共に、楽天・西友・パナソニックの三社が横須賀市や藤沢市、そしてつくば市において、地域のお店の商品をロボットが指摘の場所までお届けするロボットデリバリーの実証、及び一部事業化を実現しました。2023年12月にサービスは終了しましたが、今後の展開が期待されます。 人の介在を前提とした倉庫運営の高度化 ここまで、物流事業においていかに人による作業を削減するか。削減の為の新たな技術革新を追ってきましたが、取り扱う商品や倉庫形状、そしてコストの問題など様々な要因から人の介在を完全に排除することが出来ないケースは依然存在します。従って、最後に人が継続して作業することを前提とした場合に役立つ物流運営の高度化の事例について触れたいと思います。 住友商事株式会社が開発・サービス提供をしている倉庫運営高度化システム「スマイルボードコネクト」は、物流センターにおける個々の従業員の作業進捗を可視化し、その実績データを収集・蓄積・分析することにより作業効率性を上げたり、身体的負担となっている作業の改善に繋げたりと言った成果を生み出しています。注目すべき点はその活用の仕方です。住友商事では当該システムをSaaSとして一般に提供していますが、同時に自社の物流倉庫の現場でも活用しています。そこではロボットではない人だからこそ発生する、作業の「得意」「不得意」を見極め、配置転換をするという際に活用されていると言います。不得意な作業よりも得意な作業に転換する、それは個々人の作業効率性改善につながると同時に、精神的負担の軽減・幸福に繋がるものです。また、効率性の向上は個人の賃金上昇に繋げることも可能にします。 まとめ 物流現場では、長時間、単純・反復、過重な労働になる傾向が高く、就業希望者は不足し、高い離職率が続く業界となっています。しかし、物流業界は経済活動を支えている業界であり、この業界の衰退は、人々の生活を崩壊させると言っても過言ではありません。このような業界を安定して支え、携わる人々を幸せに出来るような技術革命が今後も生み出されていくことを期待し、その過程を引き続き追っていきたいと思います。本記事が関連領域で事業検討をされている方の新たな発想の展開や、課題整理に少しでも役立ちましたら幸いです。 (※)その後、Uber、Lyft、Instacart、DoorDashなどの企業は、アプリベースの労働者を独立請負業者として扱うことを許可するProp 22 (Proposition 22) の成立に1.8億米ドルを投下し、大規模なキャンペーンを展開しました。その結果、カリフォルニア州ではProposition 22が2020年に可決され、UberやLyftなどの企業は一定の条件下でドライバーを独立した契約業者として扱うことが認められました。 参考文献 令和4年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法 日本のトラック輸送産業 現状と課題 2023 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示) |厚生労働省 As Amazon Prime Day pushes the latest deals, these striking workers want a share of the profits - The Big Issue. How likely is a UPS workers strike and how would it affect shipping? | US unions | The Guardian Parcel delivery giant UPS avoids first strike in 25 years - BBC News Uber UK business model change Uber and Lyft 'likely broke law' by classifying drivers as contractors, court rules | California | The Guardian Uber and Lyft now can handle drivers as contractors Ocado Group Resilience360 Annual Risk report highlights top 10 risks for the new decade | Delivered | Global DHL RESILIENCE 360 ‘ORION’ delivers success for UPS | ORMS Today UPS To Enhance ORION With Continuous Delivery Route Optimization | About UPS Amazon delivery drones: how the sky could be the limit for market dominance Starship Technologies Press | Nuro 自動配送ロボット、中国で「爆発的拡大」の予兆 小売配送、自動運転技術の実用化が続々!日米中で(特集:自動運転が巻き起こす小売革命 第4回) Rakuten Drone 物流業界地位向上に、現場のDX改革で挑む住友商事 | LOGISTICS TODAY --- # 「冷たい」が広げる新物流市場(前編) URL: /insights/52 title: "「冷たい」が広げる新物流市場(前編)" summary: "クール便という言葉が浸透しているように、日本では常温での配達に加え、冷蔵、あるいは冷凍の状態でモノが届くことは今や当たり前になっています。しかし、世界の状況は異なります。「冷たい状態でモノを運ぶ」ということは大革命であり、巨大市場を開拓するのです。今回は、冷たい状態でモノを運ぶ物流網:コールドチェーンがアフリカでもたらしている新たな市場と、それを可能にしている技術について紹介します。" date: 2024-04-02 author: "authors/nahoko\_imamura.mdx" category: "categories/research.mdx" glossary: "glossary/startup.mdx" cover: "/images/insights/52/cover.jpg" 「冷たい」がもたらすメリットとは クール便という言葉が浸透しているように、日本では常温での配達に加え、冷蔵、あるいは冷凍の状態でモノが届くことは今や当たり前になっています。しかし、世界の状況は異なります。「冷たい状態でモノを運ぶ」ということは大革命であり、巨大市場を開拓するのです。今回は、冷たい状態でモノを運ぶ物流網:コールドチェーンがアフリカでもたらしている新たな市場と、それを可能にしている技術について紹介します。 コールドチェーンの有無はその地域の生活水準、経済性を大きく左右します。コールドチェーンを確立することで得られる主なメリットは4つに大別できます。 1\. 食品の品質と安全性の維持 コールドチェーンを確立することで、食品や医薬品などの商品の品質と安全性を確保することができます。適切な温度管理により、食品の腐敗や微生物の繁殖を防ぎ、製品の新鮮さと品質を保つことができます。 2\. 食料品の安定供給 コールドチェーンを利用することで、季節や気候の影響を受けにくくなります。これにより、食料品の安定供給が確保され、飢餓や食料不足のリスクが軽減されます。 3\. 延長された保存期間 コールドチェーンを使用することで、食品や医薬品などの商品の保存期間を延長することができます。適切な温度と湿度の管理により、商品の劣化や変質を抑制し、在庫のロスを最小限に抑えることができます。 4\. グローバルな市場アクセスの拡大 コールドチェーンの確立により、食品や医薬品などの商品がより遠くの地域や国々に輸送されることが可能になります。これにより、農産物や水産物などの新鮮な商品が世界中で市場に供給され、需要に応えることができます。 これらの観点から生活品質や経済的な豊かさに大きな差が生じるのです。特に、水・電気・ガス、インターネット、舗装された道路といったインフラが未だ十分に整っていない地域においては、コールドチェーン確立の難易度は高いと言えます。しかし、これらのインフラが整うことを待っていては当該地域の経済発展に時間が掛かってしまう為、大企業からスタートアップまで、様々な企業が既存のやり方に囚われない方法でコールドチェーン網を築こうとしています。先ずは、アフリカを中心としたこれらの動きをご紹介します。 アフリカの事例 ケニアではVegpro Groupが冷蔵技術を活用して、花や果物、野菜などの生鮮食品を欧州や中東などの国際市場に輸出する道を開拓しました。同社は30年以上に亘ってケニアの地で農業の近代化に貢献し、雇用を生み出してきました。各顧客からの要求に合わせた輸出農産物の生産、収穫、選別、加工、包装そして輸送、これらを一貫して自社で行っています。 Vegpro Groupの貨物輸送子会社であるFreightwings Ltdは、ケニアの国際空港Jomo Kenyatta International Airport敷地内に温度管理が可能な巨大倉庫を構え毎週約550トンもの農産物を欧州や中東各地に輸出しています。欧州や中東の要求基準を満たす、良い状態の農産物を届ける体制を構築することで、安定して外貨を獲得し、ケニア経済に貢献することが出来るようになったのです。同国の1990年の農業水産業事業GDPは77百万米ドル、それが2020年には155百万米ドルと倍増しました。全てがVegpro Groupに拠るものではありませんが、同社がケニア国内にてコールドチェーンを構築し、輸出食品の品質を高め、それを標準化させたことが一次産業の進展に大きく貢献したことは間違いありません。 モロッコやセネガルなどの国々では、冷蔵インフラへの投資により水産業が成長しました。日本もその恩恵にあずかっている国の一つであり、例えば日本に輸入される真タコの2〜3割はモロッコ産です。冷凍技術の導入により、これらの国々は高品質の魚介類を国際市場に輸出することに成功し、2015年に16百万米ドルであった魚介類の輸出額規模は2022年には28百万米ドルに成長しています。 仏ComanavやComaritといった企業がモロッコ国内の市場から水揚げされたばかりの鮮魚を買い付け、国内を冷蔵輸送し、アガディールやカサブランカなどの沿岸都市に建設した加工・冷蔵・冷凍施設にて加工した上で、温度管理が可能な自社の海上輸送船にて欧州各地に移送・販売することで、これらの市場を拡大させています。しかし、モロッコのGDPに占める漁業の割合は1.5%でしかなく、また、このうち53%が依然として缶製品であることから、今後未だ伸びしろがあると考えられます。 2020年に国際協力機構(JICA)より発表されたレポートによると、冷蔵・冷凍保存設備へのアクセスは一部企業に限られており、コールドチェーンの欠如により現在でも40%が流通過程において廃棄されていると言います。鮮魚需要の高い欧州・中東各国、そして米国東部へのアクセスの良さという地の利を活かし、コールドチェーンの更なる拡大による市場拡大が期待されます。 その他にもウガンダ、タンザニア、ルワンダなどの国々では、冷蔵技術の導入により乳製品セクターが成長しました。Heifer InternationalがリードするEast Africa Dairy Developmentプロジェクトは、冷蔵施設と冷蔵輸送システムを導入して、地域の乳製品産業の成長を支援しています。これらの国々では小規模酪農家が多く、個々の農家で大規模な冷却施設や品質管理施設などを保有することは困難でした。しかし、個々の農家から生乳を集め、品質チェック、滅菌・冷却処理をワンストップで行い、更に納品先に温度管理が可能な車両で輸送する。これらを実現することで安定した生乳の品質と量を確保し、彼らが集団として主要な乳製品会社への価格交渉力を持つことを実現させました。 また、都市部における冷蔵倉庫施設の設立は、食品小売業や流通業の成長を促進しました。たとえば、ナイジェリアではColdHubsなどの企業が、同国内において太陽光発電冷蔵ユニットを展開し、小規模な農家が生鮮食品を効率的に保存・販売できるようにしました。これにより、雇用機会が創出され、収穫後の損失が削減され、食料安全保障が向上しました。冷蔵倉庫が無いままでは、収穫後の農作物のうち45%が腐敗により廃棄され、農家は約25%の年間収入を失っていました。 そして、コールドチェーンの革命はアフリカ全土にワクチンや血液製剤の、安全で素早い輸送を実現させています。米Ziplineはガーナやルワンダなどの国々において、自社開発をしたドローンを使って空から医薬品を届ける事業を行っています。温度管理が重要なこれらの医薬品を輸送することは道路整備が十分にされていない国において非常に困難なことでした。また電気や冷蔵設備が十分に整っていない病院においてこれらの医薬品を長期に在庫することも難しく、それは即ち、人々の命を助けられるかの結果に直結していました。Ziplineは温度管理が必要な医薬品を自社倉庫で貯蔵し、医師からの依頼に基づいて即座に必要な量だけ届ける事業をガーナ、ルワンダ、ケニア、ナイジェリア、アイボリーコーストにて展開しており、カバーする医療機関の数は10,000施設超、1,500万人以上にサービスを提供しています。陸路で4時間半も掛かる道のりをZiplineは空路でたったの15分で届けることを可能にするのです。 ビル&メリンダ・ゲイツ財団の資金提供による調査によれば、2019年の運用開始以来、ガーナにおいてワクチンの在庫切れを60%削減し、必要な患者がワクチンを受ける機会の損失を42%削減しました。また、重要な医療用品が不足している日数を21%削減し、それらの施設での薬品やその他の在庫の種類を10%増加させました。同様にルワンダでも67%の血液製剤の廃棄率を減らし、産後の出血による妊産婦の死亡率を51%削減しました。 このような事業には日本の企業も注目しています。豊田通商株式会社はアフリカにおける事業を多岐に亘って展開しています。2018年6月にシリーズC資金調達ラウンドにおいてZipline社に資本参画すると同時に業務提携を締結し、豊田通商グループの医薬品輸入卸販売事業会社であるGokals-Laborex Limitedが取り扱う医薬品をZipline社がガーナ国内の医療機関に届ける体制を築きました。 また、同社は、人口密度の低いアフリカ諸国や、米国の一部地域だけでなく、今後は日本の離島や過疎市域などへの空路を使ったスピーディなコールドチェーンの展開をZipline社の技術を用いて展開することを見据えており、2022年4月に長崎県五島市にて最初の医療用医薬品のZipline社製ドローンでの輸送サービスを開始しました。Zipline社のドローンには幾つかのタイプがありますが、Platform2というモデルにおいては着陸の精度が2 feet (60.96 cm)となっており、今後は都市部も含めて様々な場所に、温度管理が必要な商品を運ぶ手段として事業展開が期待できます。 最後に ここまで、コールドチェーン構築がアフリカの地域にて生み出した様々な経済発展の事例を見てきましたが、「冷たい状態でモノを運ぶ」ことがもたらすインパクトは、そこに生きる人々を病から救い、食生活を豊かにし、経済的潤いを与え得る大革命であることが見て取れます。まだ、志半ばの事業や地域もあることから、今後の更なる事業拡大を期待してやみません。また、従来の考え方に囚われていると陸路でのトラックによる冷蔵・冷凍輸送や、飛行機を使っての同様の輸送を実現しようと考えますが、道路や給油所、そして空港設備など莫大なインフラ敷設コスト・時間を要する輸送手段ではなく、ドローンによる輸送にてコールドチェーン網構築を実現するという事例にはアフリカ地域における更なる事業展開はもちろんのこと、その他の国々において顕在化しているラストワンマイル輸送手段の代替として活用に大いに期待できます。 今後もアフリカ諸国におけるコールドチェーンの事業展開、並びに新たなドローンを活用した輸送の展開について注目していきたいと思います。本記事が同地域、及びコールドチェーン構築における事業検討をされている方々の参考になりましたら幸いです。 参考文献 The world bank data\_Kenya Vegpro Group Freightwings Morocco Exports By Category Moroccan Seafood Exports Hit New Record of $2.5 Billion in 2021 World Bank Report Outlines Approach to Improve Morocco’s Fisheries Morocco aims to double value of seafood exports by 2020 | SeafoodSource. Morocco to review its fisheries partnership with EU | Reuters モロッコで日本の水産品鮮度保持技術が注目を集める | 事例・参考情報 モロッコ王国 高度冷蔵保存技術導入による水産品の高度付加価値化に向けた普及・実証事業 業務完了報告書 CMA CGM | Refrigerated Cargo East Africa Dairy Development Project | Heifer International ColdHubs アフリカで医薬品をドローン配送 日本では豊田通商に技術提供 Zipline – TECHBLITZ Zipline drones deliver one million COVID vaccinations in Ghana Technology | Zipline Drone Delivery & Logistics 日本市場でのZipline International Inc.との戦略業務提携~ドローン物流サービスの社会実装に向けて~ | 豊田通商株式会社 豊田通商によってジップラインのドローンが本格参入 --- # DX観点で見るEDIとその未来 URL: /insights/53 title: "DX観点で見るEDIとその未来" summary: "本記事では、EDIの定義や歴史から、国内外のEDI活用を通して、未来にどんなEDIが求められるかについて探求したいと思います。" date: 2024-04-01 author: "authors/minwoo\_jang.mdx" category: "categories/research.mdx" cover: "/images/insights/53/cover00.jpg" 昨今企業にDX(Digital Transformation)が求められる中、 改めてEDIが注目を集めています。本記事では、EDIの定義や歴史から、国内外のEDI活用を通して、未来にどんなEDIが求められるかについて探求したいと思います。 EDIの過去と現在 EDIはElectronic Data Interchangeの略称で、日本語では電子データ交換と訳されます。これは、企業間で取引に関するデータを電子データでやり取りする仕組みです。今はインターネットとEDIが結びついているかもしれませんが、EDIはコンピューターが登場する前から存在していました。その歴史は冷戦時代まで遡ります。1948年米国陸軍曹長エド・ギルバート氏が西ベルリンに230万トンの物資を配送する計画を立てた際に、貨物情報を管理するためにシステム化したのがEDIの前身\[^1]です。1968年、米国で設立されたTransportation Data Coordinating Committee(TDCC)が物流業界におけるEDIの標準規格の開発を開始、1980年代に標準規格「ASC X.12」が米国で制定されました。同時期、日本では流通、銀行や製造業界でEDIの標準化に向けたルールを整備しました。現在使われているEDIは、1990年代以降に開発されたインターネット回線を用いたWeb-EDIであり、これは物流、製造、ヘルスケア、小売などあらゆる業界企業間取引の基盤となりました。 長年の歴史の中で使われてきた技術でもあり、消滅するとも予測されていましたが、EDIは現在でも世界中の企業に使われています。直近ではCOVID-19によりDXへの取り組みが加速されており、中でもサプライチェーンは最も影響を受けた分野です。EDIはeコマース(Electronic Commerce)でも大きな役割を担うほか、ヘルスケアも引き続き重要な業界とされており、2023年の約39億ドル(≒約5,600億円)から2028年には約63億ドル(≒約9,000億円)に成長すると予測\[^2]されています。 EDIの種類 EDIは大きく3つに別れ、ダイレクトEDI、VAN(Value-Added Network)、Web-EDIがあります。ダイレクトEDIはポイント・ツー・ポイントEDIとも呼ばれることもあり、2つのパートナーが直接接続します。ダイレクトEDIを利用するには、取引先と同じ通信方法やプロトコルを利用し、インターネットを通して直接接続する必要があり、合意されたプロトコルをすべて利用できるソフトウェアパッケージを購入する必要があります。費用的に負担はありますが、大量の取引先に対して頻繁にデータを交換する場合に効果的であるため、大手企業で多く使われています。 VAN(Value-Added Network)は、インダイレクトEDIとも呼ばれ、ダイレクトEDIの代わりとしてサードパーティのサービスプロバイダーであるVANを利用するEDIです。VANはダイレクトEDIで複数の取引先と直接繋げずにVANサービスプロバイダーに単一の接続することで、複数の取引先とデータを交換することが可能です。VANプロバイダーがメールボックスとなって、メールボックスを特定の取引先と共有するようなイメージです。お互いにメッセージを送受信する際、通知するアラートサービスも提供します。 Web-EDIはインターネット・ブラウザを通してEDI取引を行います。高度なハードウェアやソフトウェアの要件がないため、特に中小企業にとっては費用対効果が高い選択肢です。ユーザーはWebブラウザを使用して、EDIドキュメントを生成、送信及び受信ができます。また、Webブラウザを使用するため、ITやEDIのスキルが限られている取引先との協業にも良い選択肢の一つです。 では、ここからは米国と日本でどのようにEDIを活用しているか、その差は何かについて取り上げていきます。 米国と日本におけるEDIの変化 米国のEDIにおいて、最も注目したいのはiPaaS(Integration Platform as a Service)です。iPaaSとは、2008年にBoomy\[^3]が初めて主張した概念であり、クラウドベースの統合プラットフォームです。iPaaSを利用すると、2つ以上のシステム、SaaS、クラウドアプリケーション、データを1つの中央Hubに繋げることが可能です。何故米国では、EDIそのものではなく、iPaaSが注目されているのでしょうか。大きく2つの観点で解説したいと思います。 1つ目は、地域や業界によってEDIの標準規格が異なるためです。一般的に取引先との取引条件としてEDIの利用を要求されることはよくある話です。つまり、企業間の関係性を維持するためには、EDIを利用することがほぼ必須となっています。EDIは地域や業界で異なる標準規格を使用しているため、パートナーや顧客ごとに異なるEDI標準規格を利用する必要があります。iPaaSはクラウドベースの統合プラットフォームとして、API(Application Programming Interface)連携を通して、異なる地域や業界のパートナーとシームレスに接続でき、より業務の簡素化が進められます。 One global manufacturer routinely exchanges about 55 different document types with nearly 2,000 partners.(あるグローバルメーカーは、約2,000のパートナーと約55種類の異なるEDIドキュメントを定期的に交換しています。) \[^4] 2つ目は、業務の統合です。商流EDIを想定してみましょう。商流EDIでは、受発注、出荷・納品、請求・支払の流れを企業間で何度も繰り返しながらデータを交換しますが、同時に物流のデータを交換しながら取引を行います。更に、企業間で取引したデータは社内のERPやeコマース・プラットフォームなど様々なところで利用されます。2023年調査によると米国の1つの組織でSaaSを利用している数が平均180個であるのに対して\[^5] 、日本の大手企業で10個以上のSaaSを利用する割合は30%程度に留まっています\[^6]。これらの調査結果を見ると、米国でiPaaSの活用することは自然の流れかもしれません。 日本の状況はどうでしょうか。2024年のISDN(ISDネット、デジタルモード)サービス終了に伴い、EDIの運用事業者はシステム変更を行う必要があります。また、2023年10月より適格請求書等保存方式(インボイス制度)の対応に伴い、受発注や請求にかかる電子文書の仕様が国際規格である「Peppol(ペポル)」をベースとした日本におけるデジタルインボイスの標準仕様JP PINTが策定されました\[^7]。 これらを背景に、自社基準の業務内容やルールの見直しが必要となり、企業のDXへの取り組みを加速させるきっかけとなりました。 政府は2023年を目途に中小企業の電子受発注システム導入率約5割\[^8]を目指していましたが、直近の結果は4割程度であり、受発注のデジタル化が目標通りに進められてない状況です。2018年より中小企業共通EDI標準を公開し、何度もバージョンアップを行なってきましたが、既存の業界標準EDIと業界横断的な標準規格との間の相互運用性を確保する必要があり、まだ課題は存在しています。また、国主導で受発注のデジタル化が進められていますが、現時点では国内に限った話となっているため、将来的には海外企業とのデータ交換を積極的に進めるためにどうするべきなのかも視野に入れる必要があります。 DXとEDIの関係性 日本企業のDXの成功の鍵はEDIにあると言っても過言ではありません。経済産業省のDXの定義を見ると以下のように表現されています。 DXとは、デジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと。また、そのためにビジネスモデルや企業文化の変革に取り組むことが重要となる。 \[^9] DXの成功がデータやデジタル技術を使って、新たな価値を創出することだとすれば、EDIを導入することで、DXが成功する可能性は高いと思います。しかし、EDIも約60年の歴史があり、提供しているサービスも様々あります。自社にとってどんなEDIが適しているかや新しい価値を創出するためのEDIとはどんなものかをよく考える必要があります。ここからは未来のEDIにどんな姿が求められるか探究したいと思います。 未来のEDIに求められる姿 未来のEDIに求められる姿はどんな姿でしょうか。重要なキーワードは3つ、拡張性、安全性、可視性です。 1つ目の拡張性は、既に米国のiPaaSの説明でも書いていますが、EDI単体で考えず、EDIから広がる業務まで拡張して考える必要があります。例えば、請求・支払業務をEDIを通して行なったとしてもその後振込や仕訳の必要があり、社内で使っている会計ソフトへの手入力が必要になります。確かにEDIを導入するだけでも十分業務の効率化やコストの削減は実現できますが、半分だけのDXになります。そのため、拡張性の答えのひとつとして、iPaaSがあります。iPaaSはEDIだけに留まらず、データ、アプリケーションなどを統合することで、一画面で業務を行うことが可能となります。 iPaaSの代表的な会社にMulesoftがあります。同社は2006年に設立され、2018年からSalesforce傘下となりました。異なった環境化にある複数システムをAPI連携するクラウド型の統合プラットフォームを提供しており、親会社であるSaleforceをはじめ、SAP、Oracle、NetSuiteなどとのシナジー効果が見込まれます。なお、世界のiPaaS市場規模は年平均35.2%で成長し2028年には434億2000万米ドルに達すると予想されており、今後も拡大が期待されます\[^10]。 キーワードの2つ目は、安全性です。EDIはそもそも暗号化されたデータを特定のプロトコルや標準規格で交換するため、高い安全性を確保しています。しかし、昨今Web-EDIの利用が拡大しており、特に中小企業の間でもコストのハードルが低く、Webブラウザを介してEDIが使えることが多いですが、逆にハッキングリスクも高まりつつあります。Web-EDIの移行で各社セキュリティ対策のために定期的な脆弱性診断やログの監視などは行なっていますが、特に注意したいのは、従業員に対するセキュリティ教育と取引先のセキュリティ対策の確認です。Web-EDIを提供している企業は、事業を継続的に運営するための努力はしている一方、自社におけるセキュリティポリシーの策定や従業員教育、アクセス権限管理、取引先のセキュリティ対策の確認は形骸化する可能性もあります。将来的にEDIを継続的に使い続けるために、自社の安全性確保は必須です。 3つ目は、可視性です。一般的には、目に見えることや視界を意味しますが、サプライチェーンでの可視性とは、輸送中の様々な商品や製品を追跡することであり、在庫や商品や製品の動きを把握することで、サプライチェーン全体を管理が可能になります。まさにEDIにはサプライチェーンの可視性が必要になります。企業がEDIを利用する理由は企業間データ交換を通して、意思決定を行うためです。意思決定を行うためにはありとあらゆる情報の可視性を高い状態にすることが大切です。可視性を高めるためには、必要な情報を必要なタイミングで、必要な人(担当/役割)に表示することでより効果的な意思決定が行えるようになります。既に多くのダッシュボード及びBIツールは存在しますが、一つのプラットフォームの情報を複数の権限を持つメンバーがそれぞれの権限ごとに情報が閲覧できる状態にするとより可視性の高いEDIになれるのではないかと思います。 まとめ EDIが1948年物資の配送のために作られた概念から現代においても大きく変わらないのは、意思決定するために相手と情報を安全に交換することです。既に国内外にはEDIに関わる様々なサービスがありますが、どんなサービスが自社及び取引先にとって適切かは、正確なデータを安全に交換できる事とそれらのデータを基に意思決定者が判断しやすい環境を作ることが重要なポイントです。未来のEDIに求められる姿は、セキュリティが担保されている状態で、あらゆるデータを一つのプラットフォームに繋げ、意思決定者に可視性の高い「管制塔」を提供することかもしれません。 \[^1]: aimtec/ Without EDI, Industry Would Not Be Where It Is Today \[^2]: Mordor Intelligence / ヘルスケアEDI市場規模と市場規模株式分析 - 成長傾向と成長傾向予測(2024年〜2029年) \[^3]: Boomy / iPaaS vs ETL : What Do They Offer and How Are They Different? \[^4]: IBM / What is electronic data interchange (EDI)? \[^5]: Better Cloud / The 2023 State of SaaSOps Report \[^6]: Techtouch株式会社 / 【2023年度SaaS活用実態調査、導入増加に伴う「休眠SaaS」の課題とは】 \[^7]: デジタル庁 / JP PINT \[^8]: 中小企業庁 / 中小企業共通EDI \[^9]: 経済産業省/デジタルガバナンス・コード 実践の手引き \[^10]: Mordor Intelligence / Integration Platform-as-a-Serviceの市場規模と株式分析 - 成長傾向と成長傾向予測 (2024~2029年) --- # ARPA最大化の鍵、Pricing Team URL: /insights/54 title: "ARPA最大化の鍵、Pricing Team" summary: "今回はARPAを上げる上で、最も直接的なアプローチであるPricingの見直しなどを推進するPricing Teamに着目し、どのように企業全体の収益を最適化していくのか確認していきます。" date: 2024-04-03 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/54/cover.jpg" 昨今の状況を加味し、ARPA(Average Revenue Per Account)の最適化に取り組み、Pricingの見直しをし始めている企業は多いのではないでしょうか。ARRを上げていく上で、導入社数を上げていくアプローチと並んで重要なのが単価です。ARPAを上げるには基本的に以下3つのアプローチしかありません。 エンタープライズへのアプローチを増やす プロダクト数を増やしたり、アドオン機能の展開などにより、アップセルを訴求する Pricing自体を見直す そこで、今回はARPAを上げる上で、最も直接的なアプローチであるPricingの見直しなどを推進するPricing Teamに着目し、どのように企業全体の収益を最適化していくのか確認していきます。 Pricing Teamを導入する背景 そもそもなぜPricing Teamの導入を検討しなければならないかと言うと、2点ほど大きな理由があります。 1点目は部門横断的な様々なデータを活用し、Pricingの設計を行う必要があるからです。Pricingを決めていく上で、市場関連のデータはもちろんのこと、MarketingからSales、CSM(Customer Success Management)を推進していく上でCRM(Customer Relationship Management)に蓄積されたデータも活用します。さらにSaaSの場合、クラウドを通して提供することによりユーザーの利用ログを取得できます。どのような機能がどの程度使われているのかを把握することで、ユーザーペルソナを定量的に定義し、個々のペルソナに合わせたプランを設定していくことになります。 2つ目はSaaSビジネスの複雑性が挙げられます。これまでソフトウェアはパッケージとして販売されてきましたが、SaaSでは様々な課金体系が存在し、しかも毎月、毎年など定期的に請求が発生します。Flat Feeのように毎月定額のものからSaaSの利用量に応じて請求額が決まる従量課金などもあり、請求業務を遅滞なく適格に行うことは難易度が高く、専任者が必要です。 Pricing Teamの構成 Pricing Teamは大きく3つの役割に分解できます。順を追って確認していきましょう。 1.Pricing Strategy まず、Pricing Strategyです。これはPricing Teamを導入する背景の1点目である部門横断的なデータを活用し、ユーザーペルソナを定義し、どの機能を使えるようにするのか決め、最終的に課金ロジックと金額を決めていくことになります。また、SaaSは永遠のβ版と言われるように、常に機能拡充されます。拡充された機能がどのプランで使えるようにするのかなどの判断も行うことになります。 これらを進めていく上で、MarketingからSales、CSMはもちろんのこと、PM(Product Manager)やPMM(Product Marketing Manager)など、ほぼ全社が関係者になるプロジェクトを進めていくことになります。値付けは経営と言われるように経営陣との連携も不可欠であり、非常に重要な役割と言えるでしょう。 様々なデータやユーザーからのフィードバックを元に、ユーザーペルソナの定義からプランの策定を行い、全社にアナウンスし、新しいPricingの導入を行うことになります。具体的には、データ分析と複雑なプロジェクトの推進能力が求められます。そのため、戦略コンサルティングファーム出身者などが適性に近いです。 2.Pricing Ops 次に取り上げるPricing OpsはPricing Strategyが決まったら、それを実現しなければなりません。そこで、SaaS向けの販売管理システムの導入やCPQ(Configure, Price and Quote)を実装し、主にBisiness-sideの運用に乗せていくことになります。ユーザーごとに契約したプランを正しく設定し、請求まで回す必要があります。会計システムと連携し、入金まで確認する必要があります。これ以外にも、決済手段の拡充など、課金基盤に関する企画、開発推進なども役割に含まれます。エンタープライズ向けのSaaSであれば、ユーザー数もそれほど多くならず、簡易なシステムで問題ないケースもありますが、SMB向けのSaaSでユーザー数が非常に多い場合は、請求まで自動化する必要性が高く、高度なPricing Opsが求められます。Pricing OpsはSaaSの販売管理フローの構築を行うため、かなり複雑なオペレーションの確立スキルが求めれます。エンタープライズ向けのERPなど、かなり要件が多岐にわたり、関係各所との調整を進められる必要があります。 3\. Deal Desk 最後に紹介するDeal Deskは営業活動を行う上で、通常の値引きだけでは締結までこぎつける事ができない複雑な案件を成就させる最後の砦的な役割を担います。特にエンタープライズ向けの販売で、複数の製品やサービス、カスタマイズ、または長い販売サイクルを伴う複雑で大型な取引を扱います。Salesから連携を受け、営業に必要な顧客情報(売上規模、新規or既存、ネームバリュー、タイミング)を元に、Deal Desk内のガイダンスに沿って提案していきます。Deal Deskはエンタープライズ営業の中でも、最も難しい案件の調整を行います。そのため、過去の取引の調整を把握し、これまでの取引を踏まえた上で細かい間隙を縫いつつ、筋の通った提案作成能力が求められます。 Pricing Teamの所属組織 上記のPricing Teamは非常に多岐の部署と連携することが多く、そのあり方は会社によって様々です。PricingをSalesの1要素と捉える企業では、営業企画的な立ち位置として、Sales組織内に置くことになります。他にもBusiness Side全体への影響を考え、CRO(Cheif Revenue Officer)直下に置くこともあります。少し思考を変え、中長期的なPricing Strategyの妥当性を考え、PMやPMMに近いProduct Sideに配置されることもありますし、経理やファイナンスとの連関を重視し、経営管理に置かれることもあります。企業のフェーズやPricingを安定的に運用したいのか、積極的にPricing Strategyを変更していきたいのかなど、Pricingにより実現したいことによって、Pricing Teamのあり方は変わります。 まとめ 昨今のようなビジネス環境においてARPAの向上は急務です。エンタープライズへの導入やプロダクトの追加はもちろん有用な手段ですが、即効性がありません。そこでPricingやビジネスサイドのプロセスを全体的に俯瞰し最適化することは今からでもできますし、非常にROIが高いファンクションの1つと言えるでしょう。 参考文献 Price to Scale --- # SaaSにおけるプライシングの設計と運用 URL: /insights/55 title: "SaaSにおけるプライシングの設計と運用" summary: "本記事では、SaaSにおける価格設定の基本から日々の運用までを解説します。" date: 2024-04-04 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" glossary: "glossary/saas.mdx" cover: "/images/insights/55/cover.jpg" ダウンサイドの市況感が続く中、SaaS業界にもARPA(Average Revenue Per Account)向上の機運が高まってきています。Horizontal SaaSでもVertical SaaSでもSMBからエンタープライズへのシフトは起こっており、ARPAを向上させる大きなトレンドの1つです。 直接ARPAに貢献するのは、プライシングです。昨今の市況感を踏まえ、Per User課金から質的な転換を図る事例が相次いでいます。カスタマーサクセスツール「Intercom」はアドオンの導入を行い、ビジネス用メッセージングアプリ「Slack」は利用の障壁を下げるために、Active課金を導入しています。本記事では、SaaSにおける価格設定の基本から日々の運用まで解説していきます。 プライシングの位置付け SaaSにとって、プライシングは2つの視点から非常に重要な位置付けになっています。 まず、ユーザーとのコミュニケーションの観点で、SaaSはユースケースに併せて機能をバンドリングし、複数の価格設定を行います。ユーザーは何がどこまで使えるのかを確認しながら、それに対する費用を把握し、営業を受け、導入を検討します。最終的に、発注なのか、検討に留まるのか判断を行います。 つまり、SaaSというプロダクトはバンドリング、プライシングにより提供物自体が可変であり、それらを通してユーザーからフィードバックを受けることになります。バンドリングとプライシングはユーザーとの対話を行う媒介なのです。 また、SaaS企業内に目を向けると、プライシングはプロダクトとビジネスの架け橋となっていることに気づきます。プロダクトサイドはプロダクトを通してユーザーへの価値創出を企画し、開発を進めていきます。他方ビジネスサイドはプロダクトを直接ユーザーに届け、実際の価値創出を担います。つまり、ユースケースを元に機能をバンドリングし、プライシングしていくことはプロダクトサイドとビジネスサイドが手を取って行うべきものであり、製品が事業になる起点になるのです。 プライシングはユーザーとの対話の起点の一翼を担い、社内でもプロダクトとビジネスの架け橋という非常に重要な役割を担っているにも関わらず、プライシングに真摯に向き合い、取り組んでいる企業は多くはありません。ソフトウェアをパッケージで販売していたときは、固定価格にならざるを得ませんでした。しかし、SaaSは流動的なユーザーのニーズを踏まえ、Agility高くプロダクトを進化させることに競争力があります。そのため、硬直的なプライシングを採用することはSaaSであるメリットの片翼を使わずに飛んでいるようなものです。 どこか日本には安さを維持することに美徳感があります。もちろん企業努力により生産コストを抑えることは重要ですが、プロダクトが提供している価値が上がっているのであれば、きちんとユースケースを言語化し、プライシングを設定し直すべきでしょう。 バリューベースとコストベース プライシングを設計していく上で、大きな分水嶺になるのが、バリューベースとコストベースという考え方です。読んで字のごとく、バリューベースはプロダクトを活用する上で創出されるユーザー価値をベースにプライシングする考え方です。 後者のコストベースはプロダクトを導入することで、業務改善による効果をベースに設計されます。 例えば、プロジェクト管理系のプロダクトを例に取って説明すると、プロジェクトの進捗やリソースの管理をタイムリーに行うことで、インバウンドで問い合わせがあった時、即座に受注できるかどうか、受注すべきかの判断ができれば、売上向上が見込めます。何もSaaSを導入していないと、運用しているSpreadsheetの稼働状況が最新かどうか聞いて回って、なんとか回答することになり、顧客を逃してしまう怖れがあります。この売上向上をベースに価格算定するのがバリューベースになります。 他方、コストベースの考え方では、専任を1名立てて、顧客管理、案件の管理を行い、勤怠情報から勤務時間を抽出し、個々の従業員にプロジェクトごとの稼働割合を提出してもらい、稼働状況を把握していたとします。SaaSを導入することで、この専任で集計を行っている方のコストがどの程度浮くことになるのかを起点にプライシングすることを指します。 当然ですが、ビジネスの判断基準として導入の意思決定はバリューベースで行うべきで、プライシングもそれに併せてバリューベースで行う方が高く設定でき、USを中心に採用されている考え方になります。しかし、どれだけ売上向上に効くかは推測の域を出ず、保守的な意思決定を行うと、コストベースで行ったほうが堅実といえます。そのため、国内ではまだまだコストベースでプライシングしている企業が多いように思います。 チャージモデルと価格 プライシングの構成要素として、チャージモデルと価格が挙げられます。前者のチャージモデルは課金するときの手法を定義したものになります。価格は文言通り、金額を設定したものになります。 具体的にチャージモデルには、大きく5つの手法があります。Flat Fee、Stairstep、Per User、Tiered、Volumeの5つです。 1\. Flat Fee Flat Feeは、SaaSの中でも最も馴染みがあるチャージモデルの1つで、定額課金を指します。利用している期間、月額、年額いくらのような形で、毎月定額利用料金をもらう形式になります。 2\. Stairstep Stairstepは、Flat Feeを少し進化させた形式で、何かしらの機能の利用量をレンジに分けて、各レンジで定額課金する形式です。例えば、請求書関連のSaaSで、請求書何通まで月額いくらというような課金の仕方を指します。 3\. Per User Per UserもFlat Feeと並んで、一般的なチャージモデルです。その名の通り、ユーザー数に応じて課金する形式を指します。事前に枠を購入し、導入企業においてIDを割り振っていく形式と、毎月利用したユーザー数に応じて課金を行うActive課金の2種類があります。 4\. Tiered / 5. Volume TieredとVolumeは混同しやすいので、一緒に説明します。双方とも、Stairstepと同じく何かしらの機能の利用量をレンジに分けて、それぞれのレンジで課金する形式を変えるものになります。Tieredは利用した量をレンジごとに分割し、各レンジの単価を掛けあわせて、総和を請求額とします。逆にVolumeは利用量の総額に当てはまるレンジの単価を掛けて請求額とします。 例えば、以下のように利用量に応じて価格が設定されていたとします。 利用量が300の場合、Tieredでは、100×10,000+100×9,000+100×8,000=2,700,000になります。他方、Volumeでは300×8,000=2,400,00になります。 このように、Tieredの方が、何個買っても、最初の方は高い単価になるため、収益性が高くなります。Volumeは個数に応じて単価が決まることから、多くの数量を販売しやすくなります。上のグラフの通り、レンジの境目では利用量を増やしたほうが価格が安くなってしまうケースが出てくるので注意が必要です。 価格設定方法 個別の価格を設定するための分析手法にフォーカスを当てるのではなく、プロダクトとプライシングは、プロバイダーとユーザーをつなぐコミュニケーションです。 そのため、①誰に対して ②何を提供したときに ③どんなチャージモデル、④いくらなのかを一連の流れで捉え、決めていくことが何よりも重要です。 複数業界や複数のユースケースに対応したプロダクトの場合、まずは実現しているユーザーストーリーを整理しなければなりません。まずは、①誰に対して ②何を提供するのかを主軸に整理していきます。その後、定性、定量調査を掛けていくことになります。プライシングの分析といえば、PSM分析やコンティンジェント分析が有名ですが、BtoBの場合、ターゲット企業数が少ないことが多く、ある程度セグメンテーションして集計していく必要があるため、厳密に優位差を担保し調査を進めるには、かなり高額な分析費用がかかる可能性があります。そのため、インタビューを主体に設計することの方が多いです。 インタビューでは、主にWillingness to Pay(WTP)を確認し、その背後にあるアンカリングしているものを具体化していくことになります。まず、WTPとはユーザーがそのプロダクトにいくらまでなら払う意志があるかということです。一通りプロダクトの説明を終え、率直に使ってみたいか、現状の業務課題を解決しそうかを確認した流れで、WTPを問いかけていくことになります。 そして、WTPとして示された金額には何かアンカリングした対象があります。競合や周辺サービスの金額感や、自社プロダクトの価格感、アルバイトに業務を任せている場合はその方のアルバイト代などに、アンカリングされることになります。アンカリングされている対象を超えて高い価格を訴求したいのであれば、機能やユーザー価値の側面で勝る必要が出てきます。WTPを基準にターゲットユーザーを様々な軸でセグメンテーションし、最終的に3−4つ以下のプランに落とし込んで行くことになります。金額の多寡を決めるに当たって、1点注意すべきことは、インタビューという形式ゆえ、インタビュイーはせっかく呼んでもらえたし、いいことを言わないとというバイアスを持っていることが多いように思います。また、実際プロダクトの導入を喫緊検討していればいいのですが、今後検討する予定ぐらいだと、競合の機能や価格感を抑えていなかったり、前提知識がない状態での回答になります。そのため、いいことを言ってもらえたとしても7掛けぐらいで割り引いて捉えていたほうがよいでしょう。 なお、BtoBの中でもHorizontal SaaSで、SMB向けのプロダクトの場合はかなり多くのターゲットユーザーがいる可能性があるので、この場合に限って、先にPSM分析やコンティンジェント分析を活用する余地があります。またABテストを行い、実際のユーザーの反応を見て決めることも検討できます。 運用 運用面を語る上で、本当にプライシングは後回しにされがちです。冒頭でも記述した通り、ARPAに直結する重要な要素であり、感覚的ですが、プロダクトロードマップと同等レベルで取り組んでもよいぐらいの重要度だと思います。 新規プロダクトのリリースやプライシング全体の見直しについては、価格設定方法で示した手順に沿って進めていくことになります。ただし、プロダクト開発は暫時的に行われており、毎週、毎月新しい機能開発が行われています。そのため、新しい機能が出たときに、どのプランにバンドリングするのかを検討することになります。その際、プロダクトマネージャーは機能の企画を行っており、できるだけ多くのユーザーに使ってほしいので、できるだけ下位プランにバンドリングすることを提案しがちです。他方、ビジネスサイドが検討すると、各プランの価値を向上していきたいので、できるだけ上位プランに入れがちです。このように短期的にはわかりやすく利害相反するので、1−3年後のARR最大化や、個々のプランにおけるユースケースや意図を解釈し機能を評価したり、中長期的な目線に立って、議論することが必要です。 プライシングの運用は、主体となる人も企業によって差があります。営業、プロダクトマーケティングマネージャー、プロダクトマネージャーの3つが挙げられます。営業起点だと、ユーザーに最も近く、ユーザーからのフィードバックを強く反映できます。プロダクトマネージャーの場合は中長期目線でユーザー価値に焦点を当て検討を進めます。プロダクトマーケティングマネージャーは営業とプロダクトマネージャーのいいとこ取りです。 まとめ SaaSという提供手法を採用する上で、プライシングは1つの強みになります。変わりゆくユーザーニーズに併せて開発を進め、バンドリング、プライシングを常に変え続けることで、ユーザーとコミュニケーションしていくことこそ、SaaSの醍醐味の1つです。 昨今、ダウンサイドの市況感を迎え、プライシングは見直されるべきテーマであり、この状況を打開できるポテンシャルを秘めています。本記事がプライシングを捉え直すきっかけになれば、幸いです。 参考 SaaSプライシング戦略|SaaS事業に適した価格戦略 SaaS Pricing Trends That Will Create Headlines in 2023 Pricing software products in a down market How we de-risked our SaaS pricing strategy Pricing Your Product Calculating Customer ROI For SaaS Sales --- # 企業の「らしさ」を表現する香りのデザイン|Scenting Designer 深津恵氏 URL: /insights/56 title: "企業の「らしさ」を表現する香りのデザイン|Scenting Designer 深津恵氏" summary: "香りでブランドや空間をデザインするとはどんなことなのか、それはどのようなプロセスで生み出されるのか、香りは人に何をもたらすのか——。深津さんが香りを仕事にするまでのストーリーとともにお伺いしました。" date: 2024-04-05 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/spotlight.mdx" cover: "/images/insights/56/cover.jpg" オフィスやショールーム、空港のラウンジに入った時に、ふわりと漂ってくる香りに癒されたことはありませんか?香りは人の記憶に密接に結びついて強い印象を残すことから、企業のブランディングの手段として使われることも少なくありません。 そんな香りを使ったブランディングや空間デザインを長年、手がけているのがScenting Designerの深津恵さんです。深津さんはこれまで全日本空輸(ANA)、ルイスポールセン、トヨタの高級車レクサスなどのブランドを表す香りの制作や、香りを使った空間デザインのプロジェクトに多数参画してきた香りの第一人者として知られています。ROUTE06が新たに入社する従業員向けに提供している「The Day One Box」の第2弾として制作した「ROUTE06の企業理念を表現したアロマオイル」も、深津さんの手によるものとなっています。 香りでブランドや空間をデザインするとはどんなことなのか、それはどのようなプロセスで生み出されるのか、香りは人に何をもたらすのか――。深津さんが香りを仕事にするまでのストーリーとともにお伺いしました。 深津恵氏 プロフィール 仕事のストレスを癒してくれた“ 香り”の力に魅せられて ──“香り”を仕事にするようになったきっかけはなんですか。 働き始めて何年か経ったある時、香りの持つ力を再発見するとともに、実は自分が故郷で“香りの英才教育”を受けていたことを思い出したのがきっかけでした。大学を卒業して最初に働いたのは航空会社で、お客様にとって心地よいおもてなしをすることに、とてもやりがいを感じていました。しかし、空の上という閉ざされた空間の中で人工的なものに囲まれ、多くのお客さまと接することに疲れてしまった時期があったんです。 ちょうどその頃、アロマセラピーという香りを使った自然療法が欧州から日本に入ってきて、ちょっとしたブームになっていたんです。香りが人を癒すという発想に惹かれて興味を持つようになりました。セラピーには植物から抽出した精油を使うのですが、小さな瓶のふたを開けた時、ものすごくいい香りがふわっと広がったんです。その力強さに本当に驚いて……。植物の精油一つひとつに異なる効果があるのも、とても興味深かったですね。ほっとしたり、落ち着いたり、やすらいだり、元気が出たり……。そうやって自分自身が香りに元気づけられたり癒されたりしているうちに、すっかり、香りの虜になってしまったんです。 中でも私は、木の香りをかぐととても気持ちが安らいだんです。これは私が、故郷である大分県日田市の実家で、木の香りに包まれて育ったからなんですね。父が林業を営んでいたこともあって、家にはいつも心地よい木の香りがしていました。常に自然の香りが空間にあることの効果について、しらずしらずのうちに英才教育を受けていたんです。その効果を、アロマセラピーや精油の香りを通じて再発見したのです。 ──それを一生の仕事にしようと思ったのは。   初めは趣味で楽しんでいたのですが、次第にこれが天職なのかもしれないと思うようになったんです。これから先のキャリアを考えた時に、自分がずっと続けたくて、自分にしかできない仕事は本当に航空会社の仕事なのか、というのが頭の中にあって。一方で香りの仕事は、小さい頃からいつも木や草花の香りが身近にあったおかげで鼻がよかったですし、何より生涯をかけて取り組みたい、探求したいと強く思ったんです。   ──アロマセラピストではなくアロマ空間デザイナーを選んだのは。 最初はアロマセラピーを学んでいて、セラピストを目指していました。英国の国際ライセンスを取得するために勉強したのですが、カリキュラムの半分くらいを解剖生理学が占めているんです。人の体についてとても本格的に深く学ぶんですね。それを学ばないとアロマセラピーを学ぶことができないんです。人の心と体について、また、香りがもたらす効果について、深く学んだ1年でした。 ライセンスを取得してから、アロマセラピストとして施術をしていたのですが、次第に課題が見えてきて……。一人の人にトリートメントを施すことで、その方が回復していくのを目の当たりにするのは、とてもやりがいがあることなのですが、もっと多くの人に香りでアプローチできないか、と思うようになったんです。オフィスや駅、商用施設など、多くの人が集まる空間に香りがあれば、より多くの人に香りの良さや効果を知ってもらえますよね。“ デザインされた香りを空間にしつらえる”ということが、まだあまり知られてなかったこともあって、「香りの未知の領域にチャレンジしてみたい」と、強く思うようになりました。   ──メソッドが確立していない中でのチャレンジだったのですね。 たしかに当時、空間に合わせて香りをデザインするためのメソッドはなかったですね。香りを専門とする方々に必要な要素ごとに教えていただきながら、香りで空間をデザインすることの意味や、どうやったらそれができるのかを考えて知識を蓄え、経験を重ねていきました。そうするうちに、次第にそれを形にできるようになりました。 香りについて教えてくださった方々、空間に安定的に香りを展開するための設備を一緒に開発してきたアットアロマ社……さまざまな方々の協力があって、今があると思っています。   ──空間には多くの人がいて、人の香りの好みは多種多様です。“ すべての人にとって心地よい香り”をデザインするのは難しいのではないでしょうか。 みんなが良いと思うかな、大丈夫かな、という気持ちはゼロではなかったですね。でも、たとえば四季折々の花が咲く森の中に行って、その香りを感じた時に、多くの方はそれをプラスにとらえると思うんです。植物からとれた自然の香りであれば、きっと多くの方々が心地よく感じてくれる――。そんな確信があったからこそ、これまでこの仕事を続けられたと思っています。人が日々の暮らしを営む中では、疲れたり体調が悪かったり、という日もありますよね。そんなときに空間に漂う心地よい香りで、「ちょっと元気が出てきた」「もうちょっとがんばってみよう」と、ポジティブな気持ちになっていただけたらうれしいですね。 アロマで空間をデザインするということ ──アロマで空間をデザインすることで、深津さんは何を表現しようとしているのでしょうか。 そこにつながるお話だと思うのですが、実は一時期、香りのアーティストであるべきか、デザイナーであるべきか迷った時期があるんです。 たとえば、ある空間に「こういう香りがいいでしょう」という形で自分の作風をベースに提案をするのか、あるいは空間という場とそこにいる人に合わせて、私というフィルターを通して香りを提案するのか――。仕事を続けるうちに、私が手がけていきたいのは、空間と香りに対するニーズや要望、必要性を理解してそれに合った香りを提供する「香りのデザイン」だと思うようになりました。   ──香りをデザインする上で大事にしていることはありますか。 香りの元になる素材や原料を深く知り、理解することをとても大事にしています。香りには原料になる植物があり、樹木や木の葉、木の幹、果皮などから香りの成分を抽出するのですが、産地や生産された年によって、香りが少しずつ違うんです。さらに、育った場所、誰がどのような方法で抽出するかによっても変わってきます。それぞれが生き生きとした有機的なものであり、異なるメッセージを送っているように思えるんです。 レストランの料理でも、シェフが食材の産地に愛着が持っていると、生かし方が違ってきますよね。それと同じような感覚だと思います。原料となる植物との出会いが楽しくて、「アロマプランツハンター」を名乗って、国内外を旅しているんです。いつか情熱大陸に出たいな、なんて思いながら(笑)。   ──プランツハンティングをする中ではどんな発見がありますか。 さまざまな植物の産地を旅して思うのは、世の中にはまだ、未活用のものがたくさんある、ということですね。「良い部分だけ使ってあとは捨てているのがもったいない」「形は悪いけれど香りは関係ないから、処分せずに使えたら農家の方々の副収入になるかもしれない」といったことが多々あって、こうした未活用の植物から香りを抽出できないかと考えています。 あとは、産地の方々との関わりですね。良い香りを抽出できる植物をつくるにはどうしたらいいかを一緒に考えたりすることはとても多いです。生産者の方々とおつきあいさせていただくと、感謝の気持ちでいっぱいになります。香りの仕事は原材料あってこそできることなので、自然と人とが良いバランスで共生していかなければ成立しません。 空間に香りがあることで、そこにいる方々がいかにハッピーな気持ちになれるか――。それをより良い形で実現するためには、生産者の方々も私もハッピーでなければなりません。そんな思いで、常に一緒に何ができるかを考え続けています。   ──空間を香りでデザインすることのやりがいは。 香りによる空間デザインは、香りができてそれが空間に広がったところがスタート地点なんですね。時間帯や季節によって感じ方は変わるので、いかにして変化していく環境や人の気持ちに寄り添うことができるか、という挑戦がそこから始まります。それがやりがいであり、楽しみでもありますね。 企業やブランドを香りで表すということ ──深津さんはレクサスのショールームやANAのラウンジなど、企業やブランドを「香りで表現する」仕事も手がけています。どのようなきっかけだったのですか。 ある時期、「香りを使ったマーケティング」が世界で大きなブームになったんです。香りと記憶はとても密接に関わっていることから、それをブランド認知に活用しようという企業が増えたんですね。ホテルなどのホスピタリティを大事にする業界を中心に、自分たちらしい香りとはどのようなものなのかを考え、それを空間にしつらえておもてなしする、ということがブームになりました。それに伴って、自社やブランドを香りで表現したいというご要望が増えて、私のところにも依頼が来るようになりました。   ──「企業やブランドを表す香り」はどうやってデザインするのでしょう。 まずはどんな企業、ブランドなのかを知るために、関係者に話をお聞きします。香りで企業やブランドを表現する際に欠かせない「リサーチ」のプロセスですね。お話をお聞きする中で、会社として大事にしているところをキーワード化して書きとめます。そのキーワード――たとえば誠実、幸せ、信頼、前進、オープンマインドなどといった言葉を香りで表現するために、どんな香りが最も意味があるのか、それを表現するためのどんな方法があるのか、といったところを考えます。 こうしたワークをするうちに、次第に「この企業やブランドを表す香りはどのようなものなのか」というところが見えてくるので、それを具体的な香りに落とし込んでいきます。これはイメージを言語化する作業に似ているかもしれません。この言語化するところを香りで表現しているという格好です。   ──昨年はエンタープライズ向けにプロダクト開発を行うスタートアップ企業、ROUTE06の香りをデザインされました。ROUTE06の香りをつくる上でコアとなるものはなんだったのでしょう。 ROUTE06さんには当初、3種の香りの試作品をお渡しするはずだったのですが、偶然にも社名と同じ6種類の試作品をお渡しすることになりました。6つの香りの要素として入っているのは、社員の方々からよく聞く言葉――未来、多様性、ワクワク、幸せ、自然体などといったものでした。こうして出てきたワードを絞り込むことはせず、すべてに盛り込んだイメージですね。違う言葉同士で6パターンあるような感覚です。   ──実際に出来上がった香りはどのようなものなのでしょう。 前進、ワクワクといったポジティブな言葉には柑橘系の香り、実直、集中、優しさを表したキーワードにはラベンダー系の香りを使っています。社員の方々とお会いした時に感じた信頼、実直、安定、安心といった雰囲気には、シダーウッドやローズマリーを合わせました。ヒアリングの中で出てきた、個性豊かで多様性があるROUTE06の方々がチームをつくって社会に関わる仕事をする中で何かを紡いでいく――という言葉に共感して、コミュニケーションやつながりをイメージした香りは、フレッシュなオレンジで表現しています。   試作の香りから1つに絞り込む、というのではなく、すべてを選んだ点が、ROUTE06さんらしいと思いました。   人が心地よく生きていくための香りをデザインし、伝える ──香りの魅力をどのように伝えていきたいとお考えですか。 香りがあることで、人が幸せな気持ちになったり、ポジティブになったり――というように「心地よく生きていくこと」につながれば、と思ってデザインしていますし、香りにはそういう力があると思っています。 本物の植物の香りには、それぞれ存在する意味があると思っていて、私はそれを探り、必要な人に届けるための案内人という役割を担っているように感じています。香りの案内人として、そしてプランツハンターとして、人の暮らしや感性に寄り添っていきたいですね。 執筆:後藤祥子 撮影:大竹 宏明 --- # 「冷たい」が広げる新物流市場(後編) URL: /insights/57 title: "「冷たい」が広げる新物流市場(後編)" summary: "コールドチェーン構築が、そこに生きる人々の生活をどのように豊かにし、そして安全にしてきたかについて、「冷たい」が広げる新物流市場(前編)にてアフリカの事例を見てきました。今回は後編としてアジア地域におけるコールドチェーンの状況について見ていきます。" date: 2024-04-30 author: "authors/nahoko\_imamura.mdx" category: "categories/research.mdx" cover: "/images/insights/57/cover.jpg" コールドチェーン構築が、そこに生きる人々の生活をどのように豊かにし、そして安全にしてきたかについて、「冷たい」が広げる新物流市場(前編) にてアフリカの事例を見てきました。今回は後編としてアジア地域におけるコールドチェーンの状況について見ていきます。 求められるアジアのコールドチェーン拡張 まず、アジア地域各国においてコールドチェーンがどの程度浸透しているか把握するため、横軸に一人当たり名目GDP規模(米ドル)の規模、縦軸に一人当たり冷蔵貯蔵庫容量(㎥)を取り、アジア地域における人口規模上位8か国、あるいは名目GDP規模上位8か国のいずれかに該当する国をプロットしたものが図1です。\[^1] ^2 図1 一人当たりの冷蔵・冷凍貯蔵容積は韓国が最も高く、次点は日本。そしてトルコ、インド、中国、ベトナム、フィリピン、インドネシアと続きます。先進国を含めた世界でのCold Warehouse Capacity Per Urban Resident(都市部の居住者1人当たりの冷蔵倉庫容量 )は2020年時点で0.152㎥と試算されている^3ことを考慮すると、韓国及び日本は既に十分な冷蔵・冷凍貯蔵設備が整っている状態、トルコが必要最低限の設備容積が整っている状態、その他の国は未だ必要容積が十分に整っていない状況と言えます。一人当たりGDPが増加するほど、一人当たり消費可能額は増え、より豊かな食生活、高度な医療を求める国民が増加するという今後の流れを踏まえると、図1にプロットされる国々は今後、韓国や日本の位置に向かっていく、即ち、冷蔵・冷凍貯蔵設備の需要を急激に伸ばしていくことが予想されます。 さらに留意すべき点はCold Warehouse Capacityは主に事業用の冷蔵・冷凍貯蔵施設の容量であり、輸出品貯蔵のための容積が含まれているため、国内需要にどこまで応えられているかを反映しません。下記の図2は2020年の冷蔵・冷凍貯蔵容積数トップ20か国のランキングですが、米国、インド、中国の三か国で世界全体の冷蔵・冷凍貯蔵容積の61%を占めています。このようにインドと中国は共に保有容積の絶対数としてトップクラスでありますが、国外需要(輸出向け)を優先させた結果であり、かつこの二カ国の要する巨大な人口をカバーするには必要容積は未だ不足している状況です。そのため、国内需要拡大を踏まえた実際の冷蔵・冷凍貯蔵施設需要は、図1で示された以上のものと言えます。 図2 オーストリアの民間リサーチ企業であるWorld Data Lab社データによると\[^4]インド、中国、インドネシア、ベトナム、フィリピン、トルコ等のアジア地域における中間層の数(定義:年間消費額が年間4,380米ドル以上)は急速に拡大しており、2024年単年で約1.1億人が中間層の仲間入りを果たすとのことです。現在アジア地域におけるこの変化は、世界のどの地域にも見られない大規模な経済的変化であり、これらの人々の新たな食・安全へのニーズを満たすには従来のやり方に囚われないコールドチェーンの拡張方法の検討が必須となっています。 アジア各国の事例 ここからは、各国の状況を見ていきます。 中国 中国のコールドチェーン物流市場規模は、2024年に858億2,000万米ドルと推定され、2029年までに1,386億6,000万米ドルに達し、予測期間(2024年から2029年)の間に年平均成長率(CAGR)10.07%で成長すると見込まれています。現在中国は、世界の野菜総生産量の約60%、果物と肉の生産量の30%、卵と水産物の40%を占めており、それだけでもいかにコールドチェーン需要が高いか推測できますが、今後、中国国内の中流階級とアッパー中流階級の可処分所得の増加に伴い、多種多様で新鮮な食品、そして高度な医療に対する需要がさら拡大することを予測し、中国政府(国務院)は2021年12月にコールドチェーンロジスティクス構築の為の5か年計画を承認し、スマートな仕分け機器、物流ロボット、温度管理モニターシステム、5Gなどのスマート技術に投資することを発表しました。同時に、2025年までに中国全土の消費地である都市と農作物生産地である農村を網羅し、さらには国際市場と連携する冷蔵物流ネットワークを構築することを発表。その為の道路やインターネット、上下水道といったインフラの強化も宣言しました。国を挙げて冷蔵・冷凍物流網の構築に乗り出した形です。 しかし、中国の冷蔵物流を担う企業は地域ごとに断片化されており、また、冷蔵倉庫と冷蔵輸送の両方に従事するプレーヤーが少ないのが特徴で、このような状況が保管、輸送、配送を一貫して管理することを困難にさせ、食品や医薬品の品質管理を難しくしています。保管、輸送、配送を一貫して担う統合型冷蔵・冷凍物流企業のリーディングカンパニーとしては、Sinotrans Limited, SF Express, Beijing Ershang Group, Jinjiang International Co.Ltd., NICHIREI CORPORATIONなどがありますが、、この5社合計の市場シェアは15%未満であり、非常に分散した市場であると言えます。このような市場環境から、新規参入企業数はさらに増加しており、より激化した競争状況となっています。 そのような中で日系企業が展開する事業を一部ご紹介します。丸紅株式会社は中国のロジスティクススタートアップであるG7と2019年に合弁会社を設立し、中国国内での冷凍・冷蔵トレーラーのリースおよびレンタル事業を開始しました。G7社は中国国内において、商用車向け物流IoTサービスを約6万社、計112万台超の商用車に提供している大手サービスプロバイダーです。車両の運行情報(走行距離、加速度、急ブレーキ、エンジン温度等のデータ)を車載デバイスで収集・分析し、情報サービスとしてリアルタイムに顧客へ提供することを通じ、運行の効率改善や安全性向上等、貨物輸送全体の最適化を図っています。 また、NIPPON EXPRESSは中国国内における医薬品関連の物流ネットワーク構築に注力しており、日系企業で唯一GDP認証(医薬人の適正流通基準)を取得しています。外資規制の為に独自事業展開が不可能な医薬品(生物系医薬品、生物サンプル、治験薬等)物流の業務領域をカバーする為、上海生生物流有限公司との業務提携にも踏み込み、中国における医療分野の網羅的な物流ネットワーク構築を進めています。このように、食品冷蔵・冷凍化事業、及び保管、そして冷蔵・冷凍物流車両リース・レンタルや、医薬品の物流ネットワーク構築まで、日系企業の躍進は続きます。しかし、中国におけるコールドチェーン市場はまだまだ拡大途中であり、今後も多くの日系、その他外資企業の参入が期待されます。 インド インドのコールドチェーン市場は2021年に190億ドルに達し、その後2027年には439億ドルに達すると予測されています。しかし、足元ではインドで稼働している冷蔵トラックは2022年時点で約1万台であり、インドで流通している野菜・果物のわずか2%の輸送キャパシティに留まっている状況です。また、トラック保有数が1~4台の零細輸送業者が同市場の5割超を占める構造であることから、大規模投資を伴う技術導入が行われ難い状況となっています。こういった事態をインド政府は課題として認識しており、コールドチェーン事業そのもの(貨物輸送業・倉庫・保管事業)はもちろんのこと、コールドチェーン構築に必要な空港・港湾・道路の敷設などインフラ構築事業についても100%外国資本での投資を歓迎しています。また、インド食品加工産業省(MoFPI)は、コールドチェーン構築に関わるインフラ投資に専用の補助金・助成金を提供するプログラムを開始しました。 こういった環境を踏まえ、米Goodrich GroupやAmazon、日本冷凍食品などが同国での冷蔵・冷凍倉庫の建設・運用や、冷蔵トラックの運用、そして温度管理システム事業などに追加投資しました。また、日本の商社である三井物産株式会社はインドでコールドチェーン物流事業を手掛けるTCIコールドチェーン・ソリューションズに出資し、生鮮食料品や医薬品、化学品、ファストフードなどの各業界で必要とされる温度管理輸送・保管サービスに本格参入しました。世界各国で培った納期と温度管理を厳守する物流サービスの経験と技術をインドで活かし、事業を拡大させていく方針です。 フィリピン フィリピンにおけるコールドチェーンを取り巻く環境はこれから拡張基調という状況です。マニラを中心に輸入農産物・食品の需要は伸びており、安全性の観点からウェット市場と呼ばれる所謂開放市場からではなく、モダントレードと呼ばれる温度管理がされた店舗内で袋詰めされた状態で販売される食品を選ぶ消費者が増えています。しかし、冷蔵・冷凍品の取り扱いに関する基準は未だ十分に浸透していないことから、温度を一定に保ち、それが途切れない物流の必要性をまず事業者が理解する必要がある段階です。また、高品質な物流であるからこそ実現可能な安全性を消費者が理解し、それに対する適正な対価を許容すること、これがコールドチェーン網構築における先進諸国が、フィリピン政府を巻き込みながら推進している活動です。日本では国土交通省がフィリピンにおける日系物流企業の事業拡大を後押しすべく、政府間でのコールドチェーン品質基準の策定、同事業領域における投資優遇制度の拡張を支援しています。高温多湿、且つ島嶼国であるフィリピンは全土におけるコールドチェーン構築の難易度が高いと言えますが、ここは類似する国土を有する日本の経験と技術が正に活きる事業領域であるため、日系企業の事業拡大を狙いたい分野です。 ベトナム 一方、ベトナムは既述の諸国と少し様相が異なります。国民の食生活はウェット市場に依存しており、発泡スチロール製の保冷箱に保冷剤を入れた簡易な保存形態が広く活用されています。ホーチミンやハノイなどの都市部では、日本のAEONをはじめ外資系の小売事業者の参入もあり、モダントレード事業が行われていますが、未だ国内の食品全体取引量の一割強に留まっています。このような状況の為、コールドチェーンは主に輸出食品向けに構築された一部を除き、未発達と言えます。ベトナム政府の動きとしてもコールドチェーンに関する法律や規制、そして品質に関する規格も存在しておらず、現時点で議論が進んでいない状況です。そのため、冷蔵・冷凍品の取り扱いに十分な注意を払うことなく事業を行っている未熟な業者が横行しており、それにより品質の落ちた食品を経験した消費者の冷蔵・冷凍食品離れが起きてしまっています。 日本の事業者としては、鴻池運輸株式会社、SGホールディングス株式会社、名糖運輸株式会社、双日株式会社、国分グループ本社株式会社などが参入していますが、未熟な業者との価格競争に晒され、十分な知識と技術・事業経験を持った日系の物流事業者が事業展開がし難い事態が発生しています。日本政府としては、拡大余地のある当該国市場における日系企業の事業機会を拡大すべく、継続してコールドチェーンにおける国際規格の導入とインフラの整備、投資優遇制度の新たな設置に注力しています。 まとめ 前編としてアフリカ地域、後編としてアジア地域に分けて「冷たい」が広げる新物流市場について見てきましたが、この事業領域における市場成長スピード、その規模は凄まじく、事業発展の可能性を検討するにおいて非常に楽しみであります。一方で、国毎に異なる国土環境、気候、インフラ環境、国民の消費力、そして政策に合わせて事業検討をする必要があり、他国での経験がそのまま適用できないところが難しさでもあります。今後もこの市場において新たに生まれる事業に注目していきたいと思います。 \[^1]: The World Bank / World Development Indicators (July 25,2023), United Nations / World Population Prospects 2022 \[^4]: Visual Capitalist / 113 Million People Will Join the Global Middle Class in 2024 参考文献 China announces plan for the future of cold-chain logistics 中国コールドチェーン物流市場規模と市場規模株式分析 - 成長傾向と成長傾向予測 (2024 ~ 2029 年) Overview of cold chain development in China and methods of studying its environmental impacts 2020 GCCA Global Cold Storage Capacity Report GDP by Country China’s fresh food cold supply chain is still at under half of its market potential China Cold Chain Logistics Market Size & Share Analysis - Growth Trends & Forecasts (2024 - 2029) Jun 25, 2019 Marubeni Corporation Establishment of a Joint Venture with G7: Providing Refrigerated Trailer Leasing and Rental Service キーマンインタビュー | 日通国際物流(中国)有限公司 中国日通、生生物流と医薬品物流に関する業務提携覚書を締結 ~医薬品物流への取り組みを強化〜 インド物流市場の概況と市場参入のポイント INDIA NEEDS A ROBUST COLD CHAIN NETWORK 三井物産、コールドチェーン物流事業に参入(インド) 日本式コールドチェーン物流サービス規格のASEAN地域への普及を推進します~フィリピン及びベトナムにおけるアクションプランを策定 --- # エンタープライズにおけるプロダクトマネジメントの広がり URL: /insights/58 title: "エンタープライズにおけるプロダクトマネジメントの広がり" summary: "本記事ではエンタープライズ企業に焦点を当て、DXを推進していく上で、起点となるプロダクトマネジメントのあり方についてまとめていきます。" date: 2024-05-29 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" glossary: "glossary/agile-development.mdx" cover: "/images/insights/58/main.jpeg" 国内において、DX(Digital Transformation)という言葉を起点に、1つのムーブメントが形成されています。組織やビジネスの基本的な運用やプロセス、価値の提供方法などを、デジタル技術を活用して大幅な変革が様々な場所で展開されています。社内のプロセスだけでなく、このトレンドは今までの製品やサービスにも適用され、質的な変化がもたらされ始めています。開発の外注から脱却し、内製化というトレンドが出てきていることも端緒の1つでしょう。 本記事ではエンタープライズ企業に焦点を当て、DXを推進していく上で、起点となるプロダクトマネジメントのあり方についてまとめていきます。 プロダクトマネジメントの必要性 変化の激しい状況下において、ユーザーの課題やニーズも漸次的に変化します。これらを的確に捉え、ミッション、ビジョンを掲げ、製品やサービスも刻々とその形を変え続けなければならない時代になりました。さらに、製品やサービスを支える技術においても、Generative AIを中心に様々な技術革新が席巻し、ソリューションの変革スピードも日に日に早まっています。 このような状況において、例え一定のペネトレーションを保持しているエンタープライズ企業であっても、そのシェアの維持、さらに向上していくためには絶え間ない企業努力が必要です。これらを支える中心的な考え方にプロダクトマネジメントがあります。 これまで業務を進める上での主体であったプロジェクトマネジメントとは、ゴール設定とデリバリーの観点から対極的な考え方になります。プロジェクトマネジメントではゴール設定を明確に行い、最短で実現できるリソースや期間を設計し、ゴールに向かって各種調整などを行いながら進めていき、完遂します。他方、プロダクトマネジメントはそもそもユーザーが抱える課題、ニーズ、提供するソリューション自体が流動的です。そのため、ゴール自体を常に見直し、定義しながら、与えられたリソースでできうる限りゴールに近づけていくことになります。 従来は比較的ゴール設定し易い状況下において、プロジェクト計画とその実行が差別化要素になっていました。しかし、昨今はゴールを常に見直し定義できる思考と、限られたリソースを活用し、流動的な目標に対して常に最適解を推進できるアジリティの高さこそが重要です。 プロダクトマネジメントにおけるエンタープライズの挑戦 プロダクトマネジメントを導入していく上で、エンタープライズ企業は超えなければならない壁が3つあります。それらは、アジリティの向上、フルスタック人材の創出、課題ベースのプロダクト設計です。 1.フルスタック人材の創出 エンタープライズ企業にまで上り詰めるには事業を分けたり、役割を細分化し、採用難易度を下げ、育成環境を整えていく必要があります。その過程で習熟という意味でもできるだけ同じ役割を担ってもらったほうが効率がよいので、スタートアップに比べサイロ化が進みます。 このような状況下において、プロダクトの成功に責任を持つプロダクトマネージャーのような業務ドメインをこだわらず、比較的広範囲にパフォーマンスを求められる職種は立ち上がりにくくなります。特に新規事業を推進できるようなフルスタックなスキルセットを持った方を育成、採用することが最初の第一歩になります。 2.課題ベースのプロダクト設計 次に、エンタープライズ企業には強固な基幹ビジネスがあり、当然のように周辺プレイヤーとの協業が進んでいたり、時には業界を超え認知されていることも多いでしょう。そのため、何か新規事業を立ち上げようとすると、ユーザー課題やニーズに焦点を当てるのではなく、プロダクトアウトなソリューションをGo to market戦略で売上を立てるようにしがちです。 もちろん、業界を超えた認知や周辺プレイヤーとの連携実績は資産として貴重です。スタートアップ界隈からすればどれも喉から手が出るほどほしいものでしょう。しかし、強みであるがゆえ、どうしてもGo to market戦略の議論が多くなり、何にユーザーが困っているのか、どうすれば課題を解消できるのか、という問いへの向き合い方が相対的に弱くなりがちです。コンサルやリサーチ会社に市場調査を頼む前に、自分で100社ヒアリングするなど、一次情報として頭に叩き込む必要があります。 3.アジリティの向上 最後に、アジリティの向上です。これは前Chapterの「プロダクトマネジメントの必要性」でも少し触れたのですが、昨今ユーザー課題、ニーズ、そしてソリューションを構成する技術などは非常に漸次的に変化します。そのため、これら3つを不変なものとして捉え、プロダクトやサービスを提供していくことが非常に難しい状況になりました。そのため、変わっていくことを前提として捉え、今あるリソースでできうる限り、その瞬間理想として考えているゴールに近づけていくかが重要になります。つまり変化に対する柔軟性を高める必要があるのです。 エンタープライズにおけるプロダクトマネジメントの導入戦略 エンタープライズ企業では、組織も大きく、ガバナンスが強固でオペレーションが整備されていることが多いです。そのため、現場から徐々にムーブメントを起こすというアプローチもあるかもしれませんが、トップが状況を正しく認識し、プロダクトマネジメントの導入を牽引し始めることがキードライバーになります。ここで言うトップとは経営陣だけを指しているのではなく、事業責任者や新規事業の立ち上げを行う方など、何かしらの事業に対して責任を持っており、一定の予算、リソース配分に関する権限を持っている方をイメージしています。 彼ら、彼女らによりプロダクトマネジメントのエッセンスを取り入れるようなオペレーションの拡充、例えばPRDや開発ロードマップのフォーマット化を行い、ユーザー課題やニーズからしっかり思考し、ソリューションを設計していくプロセス構築が良いと思います。エンタープライズ企業におけるオペレーションエクセレンスは新しい概念を学習し、導入していく上で非常に強みになります。 最後に今まで構築してきた基幹事業に対して新しい思想を導入することは様々な不安や懸念を抱くかもしれません。もちろん基幹事業にこそ導入が必要だとは思いますが、全社的に導入を足並みそろえて行う必要はなく、新規事業など導入しやすい事業から導入を行い、肌感を掴んでから全社導入していく手法もあります。スタートアップ界隈では、まずCPOクラスから採用し、プロダクトや組織の構築を進めていきますが、エンタープライズ企業にはエンタープライズ企業に合った進め方がありますので、無理に同じアプローチを取る必要はないのです。 AdobeのSaaS化 「Adobeのクラウド化に学ぶXaaS化の真髄」という記事でも確認した通り、Adobeは従来のパッケージソフトウェアの販売を2年程度でクラウドにシフトすることに成功しました。 Adobeのクラウド化のポイントは以下5点です。 XaaS化は最上段のビジネストランスフォーメーションとして捉え、経営直下プロジェクトとして強固に推進 パッケージとは異なり、ユーザーとの継続的な関係構築により、課題、ニーズの特定をキャッチアップし続けられる体制の構築 クラウドで提供することにより、セキュリティや可用性、DRなどの技術的な対応項目だけでなく、ユーザー価値実現に向け常にプロダクトを進化し続けれるようにアジャイル開発を導入 サブスクリプションに併せたビジネスオペレーションの構築 最後に、クラウド化することにより財務観点におけるリスク評価と社内外へのコミュニケーション このように、Adobeのクラウド化でもエンタープライズ企業がプロダクトマネジメント導入時のハードルとなる課題ベースのプロダクト設計(ユーザーとの継続的な関係値構築)やアジリティの向上としっかり向き合って、導入していることがわかります。また、Adobeも大きな組織ゆえか、エンタープライズ企業の導入戦略同様、トップダウンで一気に変えに行っていることも確認できます。 エンタープライズにおけるプロダクトマネジメントの将来展望 アメリカなどソフトウェア先進国では、Adobeと同様にプロダクトマネジメントは完全に民主化しています。2018年に私はNYでプロダクトマネジメントに関するトレーニングを受けたのですが、受講者はソフトウェア企業ではなく、証券、コンサルなど他業界、他業種の方が8割を占めていました。当時、日本でロジカルシンキングが民主化したように、アメリカではプロダクトマネジメントが一般教養のように扱われていました。 おそらく日本でも近い将来、同じような状況になると思っています。最近、プロダクトマネジメントに関するイベントやカンファレンスに行くと、5年前には全く参加していなかった企業の方々が来るようになってきているように感じます。名刺交換をすると、プロダクトマネジメントに関する部署がすでにあったり、プロダクトマネージャーを名乗る方々も徐々に増えてきていることを肌で感じています。 これまではスタートアップ界隈が既存産業に入り、テクノロジーを駆使して、イノベーションを起こすことが多かったように思います。しかし、これからはエンタープライズ企業のプロダクトマネジメントを理解し、導入し始め、イノベーションを埋める土台を構築し始めているように思います。もう一歩進むと、スタートアップへのプレッシャーにもなり、お互い強みを磨きながら、良いライバル関係が構築されていくように思います。 まとめ DXという言葉を超えて、エンタープライズもユーザーの課題やニーズに向き合い始めています。これはプロダクトマネジメントの端緒だと思います。今後、エンタープライズ企業がプロダクトマネジメントを理解し、浸透し始めると、一気に形成が変わっていくポテンシャルを秘めています。 これまでスタートアップ界隈の専売特許だったプロダクトマネジメントもその形を変え、広くソフトウェアビジネスに浸透していくターニングポイントかもしれません。 --- # 国内SaaS市場の次なるステップ:Growth期に求められるプロダクト戦略 URL: /insights/59 title: "国内SaaS市場の次なるステップ:Growth期に求められるプロダクト戦略" summary: "本記事ではシリーズA-B辺りで、一定のターゲットセグメントに対してPMFを獲得したスタートアップや新規事業のProduct leaderが考えておくべきことを列挙し、解説していこうと思います。" date: 2024-06-10 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/59/cover.jpg" Horizontal SaaSが普及し、Vertical SaaSも出始めて、各業界の一定のプレイヤーがPMFを獲得し始めているのが国内のSaaS界隈の状況でしょう。 この状況下において、SaaS業界ではPMF関連については非常に厚く議論されてきました。ただその後のGrowth期についてはこれから議論されていく領域だと思います。そこで、本記事ではシリーズA-B辺りで、一定のターゲットセグメントに対してPMFを獲得したスタートアップや新規事業のProduct leaderが考えておくべきことを列挙し、解説していこうと思います。 Growth期とは そもそもGrowth期とはスタートアップや新規事業を進めていく上で、どのようなフェーズなのでしょうか。 上図で示した通り、コアとなるターゲットセグメントにおいてPMFが実現した後に迎えるものになります。そのため、一定の受注率、導入率を担保した上で、マーケティング、体制を強化し、シェアの獲得を狙うタイミングになります。 ProductにおけるGrowth期とは このGrowth期において、プロダクトとして何を担保しなければならないのか、プロダクトビジョン、プロダクトの展開と基盤、プロダクト組織の3つに分けて説明していきます。 1.プロダクトビジョン 最初に、プロダクトビジョンです。抽象度が高い概念ゆえ、様々な視点からクリアすべき要素があります。 MVV起点で、Growth期を乗り切れるプロダクトビジョンができていること Growthしていく上で、十分なTAMが言語化できていて、ソリューションの方向性が見えていること(向こう2−3年やらないこととコアが明確か) Biz leaderとその方向性が擦り合っていること Growthに適したプライシングになっていること 最初に、MVV(Mission, Vision, Value)起点で、Growth期を乗り切れるプロダクトビジョンができていることが挙げられます。会社として資本的にも人的にも踏み込み、Growthに乗り出すことになるため、組織として一段高いアラインメントが求められます。プロダクト観点で言うと、Growth期を乗り切れるだけのプロダクトビジョンの言語化ができているかが最初のチェックポイントになります。 単にプロダクト組織においてアラインメントが取れていればよいわけではなく、Growthしていく上でBusiness-sideとの連携が不可欠です。Growthしていく上で、十分なTAMが言語化できていて、ソリューションの方向性が見えていること(向こう2−3年やらないこととコアが明確か)を確認する必要があります。当然ですが、Biz leaderとこの方向性がしっかり擦り合っており、一蓮托生で取り組むことができている必要があるでしょう。 さらに、この方針は開発ロードマップやソリューションの設計というレベル感だけではなく、ユーザーに提供していく上で、プライシングも包含します。Growthを狙う上で、高すぎず、安すぎず、WTP(Willingness To Pay)に即したプライシングができていることを確認することになります。 上記の通り、プロダクトビジョンがMVVとの整合性、十分なTAMの捕捉、Business-sideとのすり合わせ、最後にプライシングにまで反映されていること、この4点がチェックポイントになります。 2\. プロダクトの展開と基盤 次に、一定のユーザーセグメントにおいてPMFが確認できると、複数プロダクト展開や他業種への展開を並行して模索することになります。Growthを維持していく上で3つのポイントがあります。 複数プロダクト展開する場合、どこまで基盤化すれば良さそうか議論し、優先順位の考え方がドラフトされつつあること Horizontalなら攻めるべき業界などのセグメントが明確で、埋めるべき機能差分が見えていること(複数プロダクト展開なら上に同じ) Growthしていく上で、極端なユースケースやユーザー数に耐えられる準備がプロダクトとしてできていること まず、複数プロダクト展開する場合、どこまで基盤化すれば良さそうか議論し、優先順位の考え方が明確にする必要があります。単に2つ目、3つ目のプロダクトを展開していくという考え方もありますが、データを中心にプロダクトの共通部分を基盤化していくことが一般的です。 2点目は、Horizontalなら攻めるべき業界などのセグメントが明確で、埋めるべき機能差分が見えていること(複数プロダクト展開なら上に同じ)です。Vertical SaaSでもよりエンタープライズな企業に提供していこうと思うと、一定の機能拡張が必要になりますが、Horizontal SaaSの場合、業種を超える必要があり、追加要件が出てくる可能性が高いです。その要件を補足し、しっかりロードマップに乗せ、開発を進めていくことが不可欠です。 最後に、Growthしていく上で、極端なユースケースやユーザー数に耐えられる準備がプロダクトとしてできていることが挙げられます。これは、上記2点に比べると、見落としがちですが、ユーザーセグメントを広げていく上で、今まで想定していなかった極端なユースケースが出てきます。定期的にパフォーマンスなどを確認しておくべきでしょう。 3.プロダクト組織 最後に、組織面です。Growth期になると、プロダクト戦略が多様化します。戦略に応じて組織を拡張していく必要があり、PMF期と打って変わって組織構築に向けたアクションが必要になり始めます。 プロダクト戦略実現に向け、差分となるProduct Managementチームのcapabilityを明確にし、採用、異動のアクションが取れていること ジュニア層が入ってくることを想定し、ユーザフィードバックの収集プロセス、ロードマップやPRDのフォーマットができていて、運用できていること この時期忙しくなるProduct leaderが非線形の成長や新しいことを考え、試せる余裕があること Growth期になると、PMF期のようにCEOやCTO、エースPM(Product Manager)が一人頑張って、ブレークスルーを出せばよいという話ではなく、組織として機能させ、Growthを手繰り寄せる必要が出てきます。特にSaaSの場合、Growthさせていく手段が多く、PMの多様性が求められ始めます。プロダクト戦略実現に向け、プロダクトチームの現状と理想を明確にし、そのGapをどのように埋めていくのか考え、具体的にアクションしていくことになります。 またGrowth期には一定のリソースが必要になるため、全員シニアなPMで揃えられる企業は少ないでしょう。そのため、ジュニアPMが入ってくることを想定し、主要なドキュメントのフォーマット化や、予算やロードマップのような定期的に策定しなければならないものをきちんとプロセス化しておくことも重要です。 最後に、Growth期に入ると、CPOやVPoPにタスクが寄ってしまい、ボトルネックになってしまうことが多いですが、新しいことを始める起点でもあるので、常に権限委譲を行っていくこともGrowthを維持していく上で忘れてはならないポイントです。 実際SaaSをサポートしていて思うこと 改めて書き出して見ましたが、1.プロダクトビジョンのプライシングや3.組織周りの論点が後回しになる傾向が強い気がします。プライシングは営業企画やPMMが考えるだけではなく、バンドリングとの連関も深いため、PMも関与すべきでしょう。 また、プロダクトマネージャーはプロダクトを通して価値創出したい人が多い傾向にありますが、Growth期は一歩引いて組織、仕組みの重要性が高まるタイミングです。一点突破でPMFを狙い、実現するのとは異なり、基盤やパフォーマンスなども拾いきり、Growthしていく上でのボトルネックを潰していくアプローチの重要性が高まります。そのため広く、ディフェンシブな視点で戦略を構築し、それを実現していく組織を作り上げていく必要があるのです。 まとめ 国内のSaaSにおいて議論の焦点はPMFにありますが、当然その後Growthも重要であり、同等以上の検討、試行錯誤が必要です。 このタイミングでは一点突破型の思考よりもディフェンシブでもれなくしっかり対応仕切るという視点の重要度が高まり、対応の網羅性や実現する上での組織構築が主要な論点となります。Product Leaderの役割が質的に変化し、その手腕が問われるタイミングかもしれません。 --- # 全社ワークスペースに「GitHub」を選んだ理由と利用状況について URL: /insights/6 title: 全社ワークスペースに「GitHub」を選んだ理由と利用状況について summary: "ROUTE06では2022年1月から全社ワークスペースをGitHubへ移行しています。全社員がGitHubアカウントを保有し、コーポレートやマーケティングなどの業務においても、GitHub上で議事録や業務ガイドラインなどの文書作成及びタスク管理などが日常的に行われています。" date: 2022-04-27 author: "authors/takafumi\_endo.mdx" category: "categories/company.mdx" cover: "/images/insights/6\_cover.gif" ROUTE06では2022年1月から全社ワークスペースをGitHubへ移行しています。全社員がGitHubアカウントを保有し、コーポレートやマーケティングなどの業務においても、GitHub上で議事録や業務ガイドラインなどの文書作成及びタスク管理などが日常的に行われています。 プロダクト開発に関連した業務以外でも、GitHubの全社利用を始めてから社内の情報共有のあり方が変わったという前向きな意見も多く、特段のトラブルもなくNotionからの切り替えが進んでいる状況です。 本記事の全文はこちらのサイトをご覧ください。 --- # 温室効果ガス削減に向けたルーリングの歴史と日本企業の取り組み【前編】 URL: /insights/60 title: "温室効果ガス削減に向けたルーリングの歴史と日本企業の取り組み【前編】" summary: "コールドチェーン構築が、そこに生きる人々の生活をどのように豊かにし、そして安全にしてきたかについて、「冷たい」が広げる新物流市場(前編)にてアフリカの事例を見てきました。今回は後編としてアジア地域におけるコールドチェーンの状況について見ていきます。" date: 2024-07-16 author: "authors/nahoko\_imamura.mdx" category: "categories/research.mdx" cover: "/images/insights/60/cover.png" 地球温暖化を食い止めるための世界の取り組みは、科学的な気候変動の影響が明らかになるにつれて、徐々に進展してきました。しかし削減に向けた具体策はまだまだ発展途上であり、市場規模も今後更なる拡大が必要です。企業や人々の善意により取り組まれる策ではなく、温室効果ガス排出削減活動がいかに経済的なメリットをもたらし、取り組まないことがデメリットを伴う仕組みに出来るか。これまで先進国と途上国双方が自国への影響を考慮しながら試行錯誤をしてきました。 今回は、温室効果ガス排出削減における様々なルールとその問題点、今後の温室効果ガス排出削減を巡る日本政府や企業の課題についてご紹介します。 温室効果ガス削減に向けた世界のルーリング まず、温室効果ガス削減^1に向けた世界のルーリングの主なマイルストーンをおさらいします。 ①1992年 【 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択】 1992年、国連総会で採択されたこの条約は、気候変動への対処を目的としています。各国は、温室効果ガス排出量削減目標を設定することに同意しました。 ②1997年 【京都議定書】 この議定書は、工業化された国々(OECD諸国、市場経済移行国等)に対して温室効果ガス(GHG)の削減目標を設定しました。工業化された国にのみ目標設定がされたのは、1) 開発途上国における一人当たりの排出量は先進国と比較して依然として少ないこと、2) 過去及び現在における世界全体の温室効果ガスの排出量の最大の部分を占めるのは先進国から排出されたものであること、3) 各国における地球温暖化対策をめぐる状況や対応能力には差異があることなどの理由からです。各国は法的拘束力のある数値目標として1990年の排出量を基準として5%以上の削減目標を定めました。これらは結果として各参加国に排出削減目標が設定された初めての国際的な枠組みとなりました。しかし、途中でアメリカが締結を拒否・離脱し、ロシアも締結に二の足を踏んだことから、2005年にようやく発効される運びとなりました。 ③2015年 【パリ協定】 パリ協定は、気候変動の緩和に関する国際的で、包括的な枠組みの第二弾であり、2021年以降の温室効果ガスの排出削減目標を定める重要な役割を担っています。京都議定書で定められた義務対象は先進国のみですが、パリ協定では世界中の参加国が削減義務を負うことになりました。主要な目標は、地球温暖化を2°C以下に抑え、可能な限り1.5°Cまで温度上昇を抑えるというものです。国毎の事業や能力に応じた国別自主目標の提出が参加各国に求められ、その後の進捗報告義務が課せられました。 ④2021年【COP26】 グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)は、パリ協定の目標を達成し、気候変動に対処するための国際的な枠組みを強化することを目的として開催されました。各国がパリ協定よりも野心的な脱炭素目標を提出し、実行に向けた行動計画を策定しました。また、開発途上国への技術支援や財政支援の増加も同意されました。 このように30年超を掛けて、温室効果ガス排出削減の重要性が認識され、具体的な削減目標設定がなされてきました。 京都メカニズム 1990年代、先進国が京都議定書における排出削減目標を達成するために、他国と協力して経済的に温室効果ガスを削減する三つの仕組みが認められました。それらは京都メカニズムと呼ばれ、京都議定書の締結国が、決められた方法で温室効果ガスの排出量を算出し、それを毎年規定の方法で遵守委員会に提出するなど、一定の条件を満たした場合に参加することが出来る最初の経済的仕組みでした。このメカニズムは3種、①JI(共同実施)、②CDM(クリーン開発メカニズム)、③ET(排出量取引)というものです。いずれも先進国が途上国に対して資金や技術を移転し、温室効果ガス削減事業を世界規模で拡大させることを意図した仕組みです。 ①JI(Joint Implementation:共同実施) 先進国同士が共同で温室効果ガス削減プロジェクトを実施し、達成された温室効果ガス削減分の一部を先進国が自国の削減量として充当できる制度。 ②CDM(Clean Development Mechanism:クリーン開発メカニズム) 先進国が技術や資金を提供し、途上国で温暖化対策事業を行い、その事業によって排出削減されたクレジット(CDMの場合は認証排出削減量:CERs/Certified Emission Reductionsと呼ばれるクレジット)を、事業の投資国(先進国)と事業の投資先国(途上国)とで分け合う制度。事業は、事業の受け入れ国となる途上国の持続可能な発展を助ける目的で行われなければなりません。 ③ET(排出量取引) 京都議定書の削減目標をもつ国の間で、排出割当量の一部を取引することができる制度。日本は先進国の立場であり、国として温暖化効果ガスの排出枠にキャップができ、削減活動無しには排出枠内に排出量を抑えられない状況となりました。 CDMプロジェクトの取り組みと問題点 日本企業の中でも、総合商社各社は先陣を切って主にCDMプロジェクト、そして一部ETへの取り組みを開始しました(先進国間で排出権を融通するJIは実質的にほとんど認められず、機能していませんでした)。案件発掘からファイナンスの取り付け、環境許認可取得、工事事業者手配にその管理まで、CDMに伴う様々な業務は世界各国で様々な大型インフラ事業を手掛けてきた総合商社にとっては得意分野であり、手掛ける分野はバイオマス・バイオガス発電所、風力発電所、水力発電所、地熱発電所、燃料転換、廃棄物メタンガス回収など多岐に渡りました。 しかし、CDM事業では通常のプロジェクトとは異なる問題が存在しました。それは、国連によるクレジットの承認です。この承認がCDM理事会(運営組織)を構成するメンバーにより影響を受けること、表向きに説明される判断基準も変わること、承認プロセスが一貫していないこと、また、その処理スピードが年々長期化しプロジェクトの採算に影響を与えること等、挙げると枚挙に暇が無く、携わる各社を悩ませました。また、CDMにおいて、排出権販売国となるのは中国 (50%)・インド (14%)・ブラジル (9%) で約75%を占め、一方、購買国としては、イギリス(27%)・日本(20%)・オランダ(14%)・イタリア (10%)、カナダ (7%) で約75%を占めました。このような限られた販売国と複数の購買国という構図の中で、販売国は購買国の足元を見る恰好となりました。 中国はいち早くCDMプロジェクトにおける自国内の制度を設定し、プロジェクトへの51%以上の外資の出資は認めないこととしました。実際には15%程度も認めず、事実上プロジェクトへの共同出資を不可能としたことで、先進国はプロジェクトを整備するコストを負担した上、さらに排出権購入のため資金を払うことになりました。しかも、中国は排出権の価格を国が管理しており、価格を一定水準以上に維持するという対策も取り、参画商社のプロジェクト採算は悪化の一途をたどりました。 また、インドでもプロジェクト実施権利を国際競争入札方式で実施することが頻発し、参加企業・参加諸国のコストは増大しました。当時の途上国では表向きの道理では決まらない商習慣も存在し、対応しかねる日本企業を悩ませました。CDMは開発事業者のリスクが非常に高く、各商社にとって採算の良いプロジェクトとはなりませんでした。 2012年に京都メカニズムとして運用されてきたCDM事業はついに破綻をきたします。EUにおけるCERの利用禁止政策の開始と、日本の京都議定書上の数値目標からの離脱判断からです。主な理由は、米国の制度不参加による両地域の企業競争力の低下に加え、EUは独自の排出権市場の価格維持政策のため、そして日本は2011年に発生した東日本大震災による原子力発電所の停止事態からでした。需要者が居なくなり、価格が付かなくなったCERは無価値となり、CDM事業への信用力は失墜しました。2013年からはCDM理事国が創設した任意償却制度の元、その清算作業が開始され、CER在庫12億トン(CO2)は緩やかに償却されていきました。CDM事業へ投資してきた商社や、ETにて先物取引を手掛けた邦銀や一部商社は損失を計上しました。 そして現在でも未だ排出権においてCERに代わるような、国際的に共通した方法で承認され、そして流通するクレジットは登場しておらず、国際的なクレジット承認ルール作りが議論されています。2021年グラスゴーで行われたCOP26においてクレジットの二重計上を巡る問題に結論が付けられるなど、一歩ずつ進められています。 日本の現在地と今後の展望 現在、欧州のEU-ETSを筆頭に、キャップ&トレードの原則^3に基づいてカナダや、中国、韓国、米国の一部の州などでは排出権取引市場が成立していますが、日本では排出削減分のみをクレジットとして取引するJ-クレジット制度が導入されるなど、国際的に共有したルールで経済活動を行う土台が整っていません。パリ協定で合意した削減目標を各国が達成するためには、国際的に共通したルールの制定は不可避であると考えられます。ただ、国連が主体となり、一部の理事国がクレジット承認をする仕組みとなっていたCDMの失敗を繰り返さぬよう、日本政府や企業がルール作りから存在感を示し、持続的な仕組みの運営主体として参加出来ることを期待します。 一方、企業は排出権に直接関わる事業懸案だけでなく、ESGの観点からも一定の基準を満たす経済活動を行っていないとファイナンスが出来ない、競争入札に参加出来ない、取引を開始出来ない等の厳しい条件に対応する必要があります。。これらは投資家・公的民間両銀行・企業、そして市民等の監視の目であり、彼らが企業活動を監視し、評価し、それに紐づいたアクションを起こした結果であり、日本だけでなく世界的に企業は自身の身の振り方を変える必要に迫られています。 例えば、商社各社は保有する炭鉱の売却、石炭火力発電所の売却や燃料変換、そして自然エネルギーを用いた発電所の運営や、それらエネルギーの水素化やアンモニア化による大規模輸送など、新たなエネルギー事業の展開を進めています。後編では、これら新エネルギー事業についてご紹介していきます。 参考文献 京都議定書目標達成計画 過熱する排出権争奪戦−−温暖化ガス削減ビジネスの実態 京都メカニズム 京都議定書CDM事業の破綻とその波及-「炭素恐慌」が残したもの 京都メカニズムの仕組み --- # 温室効果ガス削減に向けたルーリングの歴史と日本企業の取り組み【後編】 URL: /insights/61 title: "温室効果ガス削減に向けたルーリングの歴史と日本企業の取り組み【後編】" summary: "この記事では、急ピッチに進められている排出量削減に向けた総合商社各社の事業事例を一部ご紹介します。" date: 2024-08-15 author: "authors/nahoko\_imamura.mdx" category: "categories/research.mdx" cover: "/images/insights/61/cover.png" 前編では、温室効果ガス排出権を巡る国際的な情勢の変化と日本企業の事例について触れてきました。2020年下半期から2021年上半期の間に、商社各社は相次いで脱炭素を宣言し、実現に向けたロードマップを発表しました。それは第26回気候変動枠組条約締結国会議(COP26)の英グラスゴーでの開催を直後に控え、各国内でより積極的な数値目標と具体的アクションの策定に向けた活発な議論がなされている最中でした。 商社各社は、炭鉱や石炭火力発電所を企業として保有していることが、その他事業の資金調達や取引開始にも影響を与え、脱炭素に向けた企業意思を内外に早急に示す必要がありました。その象徴的な出来事として2021年1月に三菱商事はベトナム南部ビントゥアン省に建設予定であった石炭火力発電所への事業参画を断念しました。これは脱炭素への関心の高まりを受けて英HSBCが融資団から撤退し、事業計画の実現性が不透明になったことによるものでした。 世界で脱炭素の流れが急速に進む中、総合商社各社もそれぞれの強みを生かした新エネルギー事業に進出していきます。この記事では、急ピッチに進められている排出量削減に向けた総合商社各社の事業事例を一部ご紹介します。 総合商社の各社事例 1\. 三菱商事、カーボンニュートラル社会へのロードマップ 三菱商事は2021年10月に「カーボンニュートラル社会へのロードマップ」を発表しました。大きな柱は、①GHG(グリーンハウスガス)排出量を、2020年度対比で2030年度には半減させ、2050年にはネットゼロとする、②その実現のため、EX(エネルギートランスフォーメーション)関連事業に2030年度までに2兆円規模を投資する、③EX・DX一体推進による「新たな未来を創造する」の3つです。 三菱商事はEX関連事業として、再生可能エネルギー事業の拡大、電化を支えるベースメタル・レアメタルの再利用や、安定確保、次世代エネルギーサプライチェーン構築などに取り組み、低・脱炭素エネルギーの安定供給と次世代エネルギーへの転換準備を行っています。それと同時にDXによってサプライチェーンの最適化やデータの相互連携による最適サービスの提供を行っていき、エネルギーや資源の無駄をなくしていくというものです。このロードマップに即した各グループの具体的な取り組みを一部ご紹介します。 電力ソリューショングループは2020年に中部電力と共に買収した蘭総合エネルギー事業会社Eneco社を拠点に、欧州の再生エネルギー開発案件を次々と手掛けています。Eneco社の再生エネルギー保有持分容量は480万KW超(2022年時点)。中でも洋上風力開発案件に強みを持ち、内製化した開発部隊の経験とサプライヤーとの関係値等による強みは欧州案件開発だけでなく、日本を含む他地域の洋上風力案件開発でも活かされています。その他にも浮体太陽光発電開発、欧州最大級の蓄電設備の運営、直近では風力で生産した電力を用いて電気分解した水素を地中に貯蔵し、電力不足時にエネルギー転換をしてグリッドに供給するプロジェクトを独で開始しました。 地球環境エネルギーグループでは、持分保有しているLNGプラント隣接地にプロジェクト操業時に排出される二酸化炭素を地中に貯留するプロジェクトや、直接空気中から二酸化炭素を回収するDAC(Direct Air Capture)技術の商用化に関わる実証実験への参画。また、クリーンな代替燃料となる水素を回収した二酸化炭素と合成してメタンを生産したり、MCH(メリルシクロヘキサン)、アンモニアに変換するなど、輸送の安全性、コスト、エネルギー効率などの観点から最適な水素サプライチェーンの構築に向けたプロジェクトをアジア、中東、北米、豪州、欧州など広域で行っています。 従来、原料炭を最大の収益源としてグループ収益の7割超を占めていた金属資源グループは、カーボンニュートラルな企業へという大きな方向転換後、2023年10月に豪クイーンズランド州にある製鉄向けの原料炭鉱の一部売却を発表しました。全部で七つある炭鉱のうち、二酸化炭素の排出量が高い石炭が出る炭鉱二つがその対象です。今後は高品位の原料炭、鉄鉱石の供給に絞り、同時に電炉の拡大に役立つ直接還元鉄や、蓄電池の原料となるリチウムなど、クリーンな電化社会を支える金属資源の安定供給に注力するとしています。 その他、三菱商事は、ビル・ゲイツ氏が2015年に設立し、革新的な脱酸素技術の社会実装を加速させる為に個別投資やメンター等を行ってきているプロジェクトBreakthrough Energy にCatalystとして参画し、全世界的な課題であるカーボンニュートラル社会の実現に不可欠な新技術とイノベーションを発掘し、社会実装への導いていく役割を担っています。鉄鋼・航空・金融・エネルギーなど様々な分野を代表する企業・団体等とグリーンテック分野における議論とアクションを続けています。 2\. 三井物産、資源ポートフォリオ改善とLNG事業拡大 三井物産では2020年5月発表の中期経営計画に、低・脱酸素に向けた方針が織り込まれており、2023年5月発表の次期中期計画にもその進捗及び、更なる推進の意思が示されています。三井物産の低・脱炭素に向けた方針は、①資源・発電ポートフォリオの良質化による企業としての排出量の削減、②世界の環境負荷低減に貢献するLNG事業等による燃料転換促進、③エネルギーソリューション領域等の気候変動対応を機会とする事業拡大を通じた排出量削減です。 資源・発電ポートフォリオの良質化に関連し、2021年6月にはインドネシアのパイトンにある石炭火力発電所の持分売却を発表。次いで、2022年8月には製鉄用原料炭を産出する豪炭鉱の持分売却を発表しました。一方、2022年4月にはアイルランドのダブリンに本社を置く再エネ開発会社Mainstream Renewable Power Limitedへの新規出資や、インド大型再エネ事業(風力発電所、太陽光発電所、蓄電施設)への出資参画を発表し、資源・発電ポートフォリオの良質化に早速舵を切り出しました。その後もメキシコ湾沖合の油田事業の持分売却、多様な自然エネルギー発電事業への新規投資を行うなど、継続したポートフォリオの低・脱炭素化を進めています。 LNG事業等による燃料転換促進においては、石炭や石油燃料からガスへの燃料転換を現実解と捉え、米テキサスのシェールガス/タイトガス開発への参画(2023年4月)、ベトナム Block Bガス田開発(2024年3月)など、ガス資源の確保、及び発電施設等の利用地までのパイプライン敷設、トレーディング事業による資源流動性の向上を進めると同時に、水素・アンモニア・メタノール等の次世代燃料の混焼や専焼、還元鉄の導入など、よりクリーンなエネルギーへの事業転換を進めています。 新エネルギーソリューション導入加速による排出量削減については、ゴミ埋め立て地から発生するメタンを活用したクリーン水素や圧縮天然ガス生産事業会社への出資、再生可能ディーゼルやSAF(持続可能な航空燃料)の生産事業への出資、圧縮水素タンク・システム・バッテリーの車両インテグレーション事業など、新エネルギー生産の開発や、その周辺領域への事業参画を進めています。また、原生林再生事業によるカーボンクレジット事業を行う豪Climate Friendly社への新規出資と森林アセットマネジメント事業者である豪New Forestsへの追加出資を発表など、排出権取引市場を拡大させることによる実世界での排出量削減をリードしていく姿勢を見せています。 3\. 丸紅、脱炭素目標を前倒し:2025年に石炭火力発電容量半減を目指す 丸紅株式会社は早い段階から企業として脱炭素に向けた指針を発信してきました。2018年9月に「石炭火力発電事業及び再生可能エネルギー発電事業に関わる方針」として、①2018年度末見通しの石炭火力発電容量(約3GW)を2030年までに半減させること/保有発電資産の効率化・環境負荷の軽減に取り組むこと、②新規石炭火力発電開発には取り組まないこと、③再生可能エネルギー発電事業割合を2023年までに全保有資産容量の現10%から20%に拡大することを宣言しました。 この上で、2021年に改めて発表した「気候変動長期ビジョン」では、2050年までにGHG排出をネットゼロとすること、事業を通じた低炭素・脱炭素化への貢献を宣言し、先に発表した石炭火力発電容量(約3GW)の半減達成を2030年より前倒し、2025年とすることも発表しました。その後、2022年発表の中期経営戦略においても、「グリーン事業の強化」「全事業のグリーン化推進」としてこの方針は踏襲されています。 エネルギー供給サイドの事業としては、再生可能エネルギー電源事業、及びその小売り事業への参画、水素・アンモニアなど代替エネルギー事業への参画、分散型エネルギーシステムの構築、EVインフラ・バッテリー関連事業への参画を挙げており、数々の再生可能エネルギー電源事業への参画、日豪間のグリーン水素サプライチェーン構築実証実験やアンモニアサプライチェーン構築事業化調査への参加、米テキサスからカーボンニュートラル化されたエチレン海上輸送サービスの開始、次世代蓄電技術を持つエストニア国企業への出資、UAEドバイでのSAF生産に向けた調査開始、大容量再生可能エネルギー受入れの阻害要因の一つとなっている送電容量の不足に即座に対処し得るソリューションを有する米LineVision社への出資など、再生可能・次世代エネルギー生産及び輸送事業自体への参画だけでなく、その周辺技術への参画も加速しています。 エネルギー需要サイドの事業としては、電池の回収と再利用関連事業への参画、炭素の回収や貯蔵技術への投資の他に、省エネ素材や製品・サービスの供給や、モーダルシフトへの対応などが挙げられており、2021年に使用済みEVバッテリーを活用した電力需給調整と系統負担の緩和を可能にする技術を持つ米スタートアップB2U Storage Solutions, Incへ出資。その知見を活かし、2023年にはベトナム初の自動車メーカーVinFast社とEVバッテリーを二次利用した事業の共同開発を開始。その他にも、2023年にカナダ・アルバータ州にて二酸化炭素回収・貯留事業を開発中のBison Low Carbon Ventures Incに出資し、2024年の商用化を目指すなどしています。尚、丸紅の特徴としては、一般炭権益を保有していない為、石炭権益の売却などは不要な状況でした。 まとめ 今回、商社三社の温室効果ガス排出量削減に向けた指針・戦略・実際の事業活動を見てきましたが、再生可能エネルギー、及び次世代エネルギーの生産事業自体への投資を加速させている点では共通しているものの、その周辺領域、特に必要エネルギーを減らすというソリューション事業に対しては、その関心領域が大きく異なり、各社の強みが反映された事業選択を非常に興味深く感じます。 三菱商事は2022年度に過去最高連結純利益を叩きだし、2023年度も過去二番目となる利益水準を維持。三井物産も同様に2022年から連続して一兆円を超える連結純利益を出すなど、好調を維持しています。両社ともに高品位原料炭価格が高騰したことや、LNG価格が高い水準を維持していることが影響しており、それは保有資源資産ポートフォリオの改善が功奏した結果と言えます。しかし、商社各社が現在投資を進め、種まきをしている新エネルギー分野の事業が利益貢献をしていくのは主に2027年度以降と各社想定しており、各社の新たな事業ポートフォリオ構築の結果が顕在化していくのはこれからと言えます。 今後も商社各社が世界中の事業パートナーと開拓していく温室効果ガス排出量削減に向けた事業に大きな期待を寄せると共に、更なる展開をウォッチしていきます。 参考文献 カーボンニュートラル社会へのロードマップ|三菱商事株式会社 中期経営計画2026|三井物産株式会社 石炭火力発電事業及び再生可能エネルギー発電事業に関わる方針|丸紅株式会社 気候変動長期ビジョン|丸紅株式会社 --- # 生成AI時代におけるDatabricksの戦略 URL: /insights/62 title: "生成AI時代におけるDatabricksの戦略" summary: "本記事では、Databricksの成り立ちや、最新のAI戦略について解説します。" date: 2024-07-24 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/research.mdx" glossary: "glossary/generative-ai.mdx" "glossary/ai.mdx" "glossary/llm.mdx" cover: "/images/insights/62/cover.png" 近年、データとAIの活用は企業の競争力を左右する重要な要素となっています。その中でも、ビッグデータプラットフォームのリーダーとして注目されているのがDatabricksです。本記事では、Databricksの成り立ちから現在の状況、そして将来の展望について探ります。 データ分析プラットフォームDatabricks Databricksは、2013年にオープンソースフレームワークであるApache Sparkの共同開発者のAli Ghodsi氏と他の6人の創設者によってカリフォルニア州バークレーで設立されました。彼らのビジョンは、ビッグデータをより簡単かつ効率的に処理できるプラットフォームを提供することでした。特に、機械学習とデータサイエンスの分野での応用を重視しており、多くの企業が直面するデータ分析の課題を解決することを目指しています。Databricksは創業からApache Sparkを中心としたオープンソースソフトウェアの開発と普及に注力し、短期間で急成長を遂げました。 SnowflakeとDatabricksは共にデータプラットフォームとして広く認知されていますが、そのアプローチには違いがあります。Snowflakeはデータウェアハウスとしての機能を強化しており、構造化データの効率的な管理とクエリ処理に優れています。一方、Databricksはデータレイクのコンセプトを採用し、構造化データだけでなく、半構造化および非構造化データの処理も得意としています。この違いにより、Databricksは機械学習やデータサイエンスのニーズにより適したプラットフォームとなっています。 Databricksは急速に成長しており、最新の資金調達ラウンドでは5億ドル以上を調達し、企業評価額は430億ドルに達しています。また、年間経常収益(ARR)は24億ドルを超え、顧客数も増加し続けています。Databricksは数多くの主要企業とパートナーシップを結び、彼らのデータ分析基盤として活用されています。AT\&T、Adobe、Heineken、国内ではToyota、ANA、エーザイなどの企業がDatabricksを導入し、ビジネスプロセスの最適化や新製品の開発に役立てています。 成長の背景にあるオープンソースコミュニティ Databricksは、そのオープンソース戦略を事業の核心に据えています。この戦略は、革新を促進し、業界内での競争力を強化し、広範なエコシステムを構築するための重要な手段として位置付けられています。 Apache Spark Databricksの成功の背景には、Apache Sparkという強力なオープンソースプロジェクトの存在があります。Apache Sparkは、大規模データ処理のための高速なエンジンとして広く利用されており、Databricksのプラットフォームの中核を成しています。この技術は、データの迅速な処理と分析を可能にし、企業が大量のデータを効率的に活用できるようにしています。 Dollyプロジェクト Dollyプロジェクトは、Databricksが主導する生成AIのオープンソースプロジェクトです。Dolly 2.0は、商用利用が可能な最初のオープンソースLLMであり、12億パラメータを持つモデルです。Databricksの社員が作成したオープンソースのデータセットで微調整されており、そのデータセットは誰でも使用、修正、拡張できるように公開されています。企業は自社のニーズに合わせたAIモデルを自由に利用できるようになり、データ分析の可能性がさらに広がります。企業が独自のAIソリューションを構築しやすくすることで、データ駆動型のイノベーションを促進しています。 また、オープンソースコミュニティとの協力を通じて、Dollyプロジェクトは急速に進化し、AI技術を発展させています。 MLflow MLflowは、機械学習モデルのライフサイクル管理を容易にするためのプラットフォームです。データサイエンティストはモデルのトレーニング、デプロイ、管理を一元的に行うことができ、効率的なワークフローが実現します。MLflowは、オープンソースであることから多くの企業や研究機関に採用されており、Databricksの提供するソリューションの一部として広く利用されています。 Databricksのオープンソース戦略は、技術革新、コミュニティとの連携、プラットフォームの拡張性、商業製品とのシナジー、イノベーションの加速、市場拡大と認知度向上といった複数の要素から成り立っています。これらの取り組みにより、同社は競争力を維持し、顧客に対して高品質なソリューションを提供することができるのです。オープンソース戦略は、Databricksの成長と成功において欠かせない要素となっています。 生成AI時代におけるDatabricksの戦略の最前線 Databricksは生成AIの分野でも積極的に取り組んでおり、特に自然言語処理(NLP)や画像認識などの分野での応用が進んでいます。これらの発展により、企業はより高度なデータ分析や予測モデリングを実現できるようになります。加えて、Databricksが注力している技術領域には、リアルタイムデータ処理、高度な機械学習モデル、そしてデータガバナンスがあります。これらの技術は、企業が迅速かつ正確な意思決定を行うための基盤となります。 足元ではDatabricksが開発したオープンソースの大規模言語モデル(LLM)であるDBRXが注目を集めています。DBRXの大きな特徴の一つは、細粒度のMixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用している点です。このアーキテクチャにより、効率的なトレーニングと高速な推論が可能となり、LLaMA2-70Bと比較して推論速度が2倍になります。特にプログラミングと数学の分野では、専門モデルを上回る結果を出しており、総合的なパフォーマンスでも他のオープンモデルやGPT-3.5 Turboに匹敵する能力を発揮すると言われています。さらに、DBRXのベースモデルとファインチューニングモデルは、Hugging Faceでオープンライセンスで提供されており、Databricksの顧客は独自のモデルをゼロからトレーニングすることも、提供されているチェックポイントを使用して継続トレーニングすることも可能です。Databricksは生成AIにおいても、オープンソース戦略を重視しています。 Databricksは戦略的なパートナーシップやM\&A(合併・買収)を通じて技術力を強化しています。最近では、ニューラルネットワークの専門知識を持つオープンソースのスタートアップ企業MosaicMLを13億ドルで買収しました。その他に、データガバナンスプラットフォームOkera、ローコード・ノーコードプラットフォームの8080 Labsを買収することで、データサイエンスの専門知識を持たないユーザーでも高度なデータ分析が可能となる環境を整えました。 Databricksはグローバル展開を進めており、日本市場にも積極的に参入しています。日本の企業は、Databricksを活用してビッグデータ分析の効率化を図り、新たなビジネス価値を創出しています。例えば、製造業や金融業など、データ活用が競争優位の鍵となる業界での採用が進んでいます。製造業では、Databricksのプラットフォームを利用して生産プロセスの最適化や品質管理の向上を図ることができます。金融業では、顧客データの分析を通じて、新たな金融商品やサービスの開発が進んでいます。 さらに、Databricksは教育分野にも力を入れており、データサイエンスやAIに関するトレーニングプログラムを提供しています。これにより、企業の従業員が最新の技術を習得し、実践に活かすことができるようサポートしています。教育プログラムはオンラインで提供されており、世界中の企業や個人がアクセス可能です。 まとめ Databricksの成功要因は、その技術力とオープンソースコミュニティとの連携にあります。多くの企業が高度なデータ分析を実現し、競争力を強化しています。また、生成AIや機械学習の分野でのリーダーシップも重要な要素です。これにより、Databricksは単なるデータプラットフォームに留まらず、イノベーションの推進役としての地位を確立しています。 今後、Databricksはさらに成長し、企業のデータ戦略において重要な役割を果たすと期待されます。特に日本の大手企業においても、Databricksのプラットフォームを活用したデータ駆動型のビジネス変革が進むでしょう。これにより、企業はより迅速かつ正確な意思決定を行い、競争力を一層高めることが可能となります。Databricksの取り組みは、データとAIの未来を切り開く重要な一歩であり、今後の展開に注目です。 参考文献 Databricks Reuters-Databricks raises over $500 mln at $43 bln valuation TechCrunch-Rerethinking Databricks’ valuation in a more conservative startup market Forbes-Databricks’ New Open Source LLM TechCrunch-Databricks acquires 8080 Labs to extend its low-code/no-code capabilities TechCrunch-As Databricks reaches $800M ARR, a fresh look at its last private valuation TechCrunch-Databricks picks up MosaicML for 1.3B TechCrunch-Snowflake and Databricks are putting the data stored in their services to work TechCrunch-Databricks open sources a model like ChatGPT, flaws and all CNBC-Databricks tells investors annualized revenue will reach $2.4 billion at midway point of year Databricks spent $10M on new DBRX generative AI model Announcing DBRX: A new standard for efficient open source LLMs Introducing DBRX: A New State-of-the-Art Open LLM (最終更新:2024年7月29日) --- # ベクトルデータベース:加速するAI時代の企業データ活用 URL: /insights/63 title: "ベクトルデータベース:加速するAI時代の企業データ活用" summary: "人工知能(AI)と機械学習の急速な発展に伴い、データの保存と検索の方法も劇的に変化しています。その中で注目を集めているのが、ベクトルデータベースです。従来のリレーショナルデータベースやNoSQLデータベースとは異なり、ベクトルデータベースは高次元のデータを効率的に保存し、類似性に基づいて検索することができます。この新しいタイプのデータベースは、AIアプリケーションやコンテンツ推薦システムなど、さまざまな分野で革新的なソリューションを提供しています。" date: 2024-07-31 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/research.mdx" glossary: "glossary/ai.mdx" "glossary/rag.mdx" cover: "/images/insights/63/cover.png" 人工知能(AI)と機械学習の急速な発展に伴い、データの保存と検索の方法も劇的に変化しています。その中で注目を集めているのが、ベクトルデータベースです。従来のリレーショナルデータベースやNoSQLデータベースとは異なり、ベクトルデータベースは高次元のデータを効率的に保存し、類似性に基づいて検索することができます。この新しいタイプのデータベースは、AIアプリケーションやコンテンツ推薦システムなど、さまざまな分野で革新的なソリューションを提供しています。 ベクトルデータベースの核心は、データをベクトル(多次元の数値の配列)として表現し、保存することにあります。これにより、テキスト、画像、音声などの複雑なデータを数学的に表現し、効率的に比較することが可能になります。例えば、「猫」と「犬」という単語は、従来のデータベースでは単なる文字列として扱われますが、ベクトルデータベースでは、それぞれの単語の意味や関連性を反映した多次元ベクトルとして表現されます。 この表現方法により、ベクトルデータベースは「意味的な検索」を実現します。ユーザーが「ペット」について質問すると、システムは「猫」や「犬」に関連する情報を高速かつ正確に抽出できるのです。これは、従来のキーワードベースの検索とは一線を画す革新的なアプローチです。 ベクトルデータベースは、特に機械学習や人工知能(AI)アプリケーションで重要な役割を果たします。近年の技術進化により、膨大なデータを高速に処理し、リアルタイムでの検索や分析が求められるようになりました。ベクトルデータベースは、これらの要件を満たすための強力なツールとして注目されているのです。 ベクトルデータベースとRAGの違い ベクトルデータベースとRetrieval-Augmented Generation(RAG)は、いずれもAIや機械学習分野で利用される技術ですが、その目的と機能には大きな違いがあります。ベクトルデータベースは、データのベクトル表現を用いて類似性検索を行うためのデータベースシステムです。一方、RAGは自然言語生成モデル(例えばGPT-3など)と検索エンジンを組み合わせた技術であり、生成されたテキストに関連情報を組み込むことを目的としています。 ベクトルデータベースは、高次元空間におけるデータの類似性検索を効率的に実行することに特化しています。例えば、画像検索では、ユーザーがアップロードした画像と似た画像を迅速に見つけ出すことができます。また、テキストデータの場合、文書の意味的な近さを計測して関連文書を提供することができます。この技術は、特に検索エンジンやレコメンデーションシステムで利用されています。 一方、RAGは、生成モデルによって生成されたテキストに対して、外部のデータベースから関連情報を引き出し、回答を生成する技術です。例えば、ユーザーが質問を入力すると、生成モデルは回答の骨子を作成し、その後、外部データベースから具体的な情報を取り込んで最終的な回答を提供します。このプロセスにより、RAGはより正確で豊かな回答を生成することができます。 RAGとベクトルデータベースは、組み合わせて利用されることもあります。例えば、RAGの検索部分でベクトルデータベースを使用することで、より精度の高い関連情報を迅速に取得することが可能になります。これにより、ユーザーに提供される回答の質が向上し、より有用な情報を提供することができます。 ベクトルデータベースの主要プレイヤー 多くの企業やオープンソースプロジェクトが参入しており、それぞれが独自の技術や特徴を持っています。以下に、主要なプレイヤーを紹介します。 Pineconeは、クラウドベースのベクトルデータベースサービスを提供しており、高速なANN検索とスケーラブルなデータ管理が特徴です。ユーザーはAPIを通じて簡単にベクトルデータを管理し、検索することができます。Pineconeは、リアルタイムのデータ更新や自動スケーリング機能も備えており、大規模データの処理に適しています。2023年4月に1億ドルのシリーズBラウンドを調達し、評価額は7.5億ドルに達しています。 Weaviateは、オープンソースのベクトルデータベースで、AIと統合された高度な検索機能を提供しています。特に、知識グラフとベクトル検索を組み合わせることで、より豊かな検索体験を実現しています。ユーザーは、GraphQLを用いて柔軟にデータをクエリし、ベクトル空間での類似性検索を行うことができます。 Milvusも高性能なオープンソースのベクトルデータベースであり、大規模データセットの処理に優れています。分散アーキテクチャを採用しており、クラスタリングやパーティショニング機能を活用することで、数十億のベクトルデータを効率的に管理・検索できます。また、異種データソースとの統合も容易で、多様なユースケースに対応しています。 スタートアップだけでなく、大手企業もベクトル検索技術の開発や導入に力を入れています。Vespaは、Yahoo!が開発したオープンソースの検索エンジンで、ベクトル検索機能も備えています。大規模なリアルタイム検索と推薦システムに強みを持っており、複雑なユースケースにも対応します。Faissは、Facebook AI Researchが開発したベクトル検索ライブラリで、特に高速なANN検索アルゴリズムに定評があります。大規模データセットに対しても高いパフォーマンスを発揮し、研究機関や企業の間で広く利用されています。FaissはC++で実装されており、Pythonバインディングも提供されています。 これらのプレイヤーは、それぞれ独自の技術やアプローチを持っていますが、共通して高速な類似性検索、スケーラビリティ、そしてAIアプリケーションとの統合のしやすさを追求しています。市場の成熟に伴い、各プレイヤーは特定の領域やユースケースに特化したり、より高度な機能を提供したりすることで差別化を図っています。 技術進化とビジネスへの応用 ベクトルデータベースの技術進化は、ビジネスアプリケーションの可能性を大きく広げています。特に注目されているのは、パーソナライゼーションと推薦システムの分野です。 Eコマースプラットフォームでは、ユーザーの過去の購入履歴や閲覧履歴をベクトル化し、類似する商品をリアルタイムで推薦することが試みられています。個々にパーソナライズされたサービスを提供することによってユーザーエクスペリエンスが向上し、従来のレコメンドシステムよりも購買率の上昇につながることが期待されています。 動画配信プラットフォーム、音楽ストリーミングサービスなどのコンテンツプラットフォームでも、動画や曲の特徴をベクトル化し、ユーザーの好みに合った新しい曲を推薦することにベクトルデータベースが利用されています。 企業の内部システムにおいても、ベクトルデータベースの導入が進んでいる例が見られます。例えば、大規模な文書管理システムでは、ドキュメントの内容をベクトル化することで、キーワード検索では捉えきれない関連文書を効率的に検索できる可能性があります。これは、法務部門や研究開発部門など、大量の文書を扱う部署で特に有用です。 金融業界では、不正検知システムにベクトルデータベースが活用されることが議論されています。取引パターンをベクトル化し、異常な取引を高速に検出することで、より効果的な不正防止が期待されています。 さらに、ヘルスケア分野では、患者データや医療画像をベクトル化することで、類似症例の検索や診断支援に役立てられる可能性があります。これにより、医療従事者の意思決定支援や、個別化医療の実現に貢献することが考えられます。 ベクトルデータベースの応用は、これらの分野にとどまりません。自然言語処理、画像認識、音声認識など、AIの様々な分野での利用が取り組まれており、その可能性は日々拡大しています。例えば、自動運転車の開発では、センサーデータをベクトル化して保存し、類似シナリオの高速検索に役立てられる可能性があります。 ビジネスへの応用において、ベクトルデータベースがもたらす最大の利点は、「意味的な検索」と「スケーラビリティ」です。従来のキーワードベースの検索では捉えきれなかった微妙なニュアンスや文脈を考慮した検索が可能になり、より精度の高い情報抽出や意思決定支援が期待されています。また、大規模データセットにおいても高速な検索が可能なため、リアルタイム性が求められるアプリケーションにも適しています。 ベクトルデータベースの今後の展望 AI技術の進化と共に、その重要性はますます高まっていくと予想されます。特に、大規模言語モデルやマルチモーダルAIの発展に伴い、テキスト、画像、音声など、さまざまな形式のデータを統合的に扱える環境が求められています。ベクトルデータベースは、こうしたニーズに応える理想的なソリューションとなるでしょう。 しかし、ベクトルデータベースが既存のデータベースを完全に置き換えるかというとそうではなく、むしろ、既存のデータベースと共存し、それぞれの強みを活かした補完的な関係になると考えられます。例えば、トランザクション処理や構造化データの管理には従来のリレーショナルデータベースが引き続き使用され、非構造化データや類似性検索にはベクトルデータベースが活用されるといったようにハイブリッドデータベースシステムの構築が進み、それぞれのデータベースの強みを活かした統合的なデータ管理が実現されるでしょう。 今後の課題として、セキュリティとプライバシーの問題が挙げられます。ベクトルデータベースに保存されるデータには、個人情報や機密情報が含まれる可能性があります。これらの情報を適切に保護しつつ、効率的な検索と活用を両立させることが求められます。また、ベクトル表現の解釈可能性や説明可能性の向上も重要な研究テーマとなるでしょう。 まとめ ベクトルデータベースは、AI時代のデータ管理と検索に革命をもたらす技術として注目を集めています。その高速な類似性検索能力と意味的な検索機能は、パーソナライゼーション、推薦システム、不正検知、医療診断支援など、幅広い分野で革新的なアプリケーションを可能にしています。 ベクトルデータベースの登場は、単なるデータベース技術の進化にとどまらず、AIと人間のインタラクションの在り方を根本から変える可能性を秘めています。膨大な情報の中から、文脈や意味を理解した上で最適な情報を抽出し提供する能力は、知識労働の生産性を飛躍的に向上させる可能性があります。 一方で、この技術の発展に伴い、データの倫理的な取り扱いやAIの公平性など、新たな課題も浮上しています。ベクトルデータベースを含むAI技術の発展と並行して、これらの課題に対する社会的・倫理的な議論を深めていくことが重要です。 参考文献 The Rise Of Vector Databases Understanding Vector Databases: The Foundation of Modern AI Applications How To Use A Vector Database What is a vector database? Understanding Vector Databases Vector database is not a separate database category Announcing Our $100M Series B Funding to Build Long-Term Memory for AI --- # オープンソースLLMの展望 URL: /insights/64 title: "オープンソースLLMの展望" summary: "この記事では、オープンソースLLMについて、主要プレイヤーや今後の展望について詳述します。" date: 2024-08-07 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/technology.mdx" glossary: "glossary/llm.mdx" "glossary/ai.mdx" "glossary/generative-ai.mdx" cover: "/images/insights/64/cover.png" はじめに 近年、人工知能(AI)の発展は目覚ましく、その中でも特に注目されているのが大規模言語モデル(LLM: Large Language Models)です。これらのモデルは、膨大なデータを基に自然言語処理を行う能力を持ち、様々なビジネス領域で革新的な変化をもたらしています。特に、オープンソースのLLMはその透明性と柔軟性から、多くの企業で採用が進んでいます。本記事ではオープンソースLLMの動向とその事例について解説します。 オープンソースLLMとは 大規模言語モデル(LLM)とは、膨大なテキストデータを学習し、自然言語の生成や理解を行うモデルのことです。これらのモデルは、従来のルールベースのシステムや小規模なモデルとは異なり、非常に多くのパラメータを持ち、複雑な言語のニュアンスや文脈を理解する能力を持っています。例えば、クローズドソースLLMであるGPT-3は1750億のパラメータを持ち、非常に高度な自然言語処理を実現しています。 オープンソースLLMは、その技術をオープンソースとして公開することで、誰でも自由に利用・改良できるようにしたものです。これにより、研究者や企業は自分たちのニーズに合わせてモデルをカスタマイズし、独自のソリューションを開発することが可能になります。 オープンソースLLMの利点と課題 オープンソースLLMには以下のような利点があります。まず、オープンソースで提供されるため、高価なライセンス料が不要です。また、既存のモデルを基にカスタマイズすることで、開発コストを大幅に削減できます。次に、オープンソースであるため自社のニーズに合わせたカスタマイズが容易で、特定の業界や業務に特化したモデルを開発することができます。さらに、オープンソースプロジェクトには多くの開発者が参加しており、活発なコミュニティが形成されています。これにより、最新の技術情報やサポートを迅速に得ることができます。 | 項目 | オープンソースLLM | クローズドソースLLM | | -------------------- | ---------------------------------------------- | -------------------------------------------------------------------------- | | ソースコード | 公開されており、誰でもアクセス可能 | 非公開であり、プロバイダーのみがアクセス可能 | | カスタマイズ性 | 高い。自由に改良・拡張が可能 | 制限あり。提供されたAPIやツールの範囲内でのみ可能 | | ビジネスユースケース | 業務自動化、カスタマーサポート、データ解析など | 顧客インタラクション、パーソナライズドマーケティング、高度なデータ解析など | 一方で、オープンソースLLMにはいくつかの課題も存在します。オープンソースであるがゆえに、誰でもコードにアクセスでき、悪意のあるコードが含まれるリスクがあります。そのため、オープンソースLLMの適切な選定とセキュリティ対策が必要です。また、高度なカスタマイズを行うには、専門的な知識とスキルを持った開発者の育成やトレーニングが求められます。さらに、オープンソースプロジェクトは急速に進化することから、常に最新の状態を保つことが難しい場合があります。また、コミュニティの活動が停滞すると、サポートが得られなくなる可能性もあります。 主要なオープンソースLLMプロジェクト オープンソースLLMの世界では、様々なプロジェクトが進行しています。Metaは、Llamaシリーズを通じてオープンソースLLM分野に大きな影響を与えています。Llama3.1は、GPT-4o、Claude 3.5 Sonnetなど最先端のモデルのと競合し、いくつかの分野ではトップに立つ性能を記録していると報告されています。GoogleもオープンソースLLMの重要なプレイヤーです。BERTの公開を皮切りに、T5、PaLMなど、多くの革新的なモデルをオープンソースで提供しています。これらのモデルは、検索エンジンの性能向上から機械翻訳まで、幅広い応用分野で活用されています。 オープンソースLLMは非営利団体でも開発が進められています。Stanford大学のCenter for Research on Foundation Models(CRFM)も、Alpacaモデルの公開など、学術研究の観点からオープンソースLLMの発展に貢献しています。彼らの研究は、モデルの倫理的側面や社会的影響にも焦点を当てており、責任あるAI開発の方向性を示しています。EleutherAIは、GPT-NeoXシリーズを通じて、大規模なオープンソースLLMの開発に取り組んでいる研究者たちのコミュニティ主導の組織です。彼らの取り組みは、AIの民主化と知識の共有を推進する重要な役割を果たしています。 Hugging Faceは、自然言語処理のためのオープンソースライブラリとModel Hub(コミュニティのメンバーが自分のモデルのチェックポイントを簡単に保存、検索、共有できる場所)として知られています。彼らのTransformersライブラリは、BERTやGPTなど、多くの最先端LLMを簡単に利用できるインターフェースを提供しています。また、Model Hubを通じて、研究者や開発者が自身のモデルを共有し、コミュニティ全体でAI技術を発展させる場を提供していることが特徴です。 オープンソースLLMのビジネス応用 オープンソースLLMはすでに様々な業界で活用されて始めています。ヘルスケア分野では、医療記録の自動化や患者との対話システムの開発に利用されており、医療従事者の業務効率向上や患者満足度の改善への貢献が期待されています。金融業界では、取引データの解析や顧客サポートに活用されており、投資判断の精度向上に寄与すると言われています。製造業では、生産プロセスの最適化や予知保全に利用されて、その効率向上とコスト削減を実現した事例も今後増えていくでしょう。 これらの事例から推察できるように、オープンソースLLMの導入によるROIの向上が期待されており、業務プロセスの自動化による人件費削減や効率向上、データ解析能力の向上によるビジネスインサイトの精度向上など、様々な面でポジティブな影響が予想されます。 ただし、オープンソースLLMをビジネスで応用する際には、いくつかの論点を考慮する必要があります。まず、ハルシネーションのリスクです。大規模言語モデルは、時折誤った情報を生成することがあります。これがビジネスの重要な意思決定に影響を及ぼす可能性があるため、モデルの出力を慎重に検証するプロセスが必要です。次に、データの品質とバイアスです。モデルが学習するデータが偏っている場合、生成される出力にもバイアスが反映される可能性があります。これを避けるためには、多様で高品質なデータを使用し、バイアスを検出・修正するメカニズムを導入することも重要となります。 また、セキュリティとプライバシーの確保も不可欠です。オープンソースLLMの活用に際しては、データの取り扱いや保存に関するセキュリティ対策を強化し、プライバシー保護を徹底することが求められます。さらに、法的・倫理的な観点も考慮する必要があります。AIの利用に関する法規制や倫理的な指針に従い、責任あるAIの運用を心掛けることが、企業の信頼性を維持するためには不可欠です。これらの論点を十分に検討し、適切な戦略と対策を講じることで、オープンソースLLMをビジネスに効果的に応用することができるでしょう。 オープンソースLLMの展望 オープンソースLLMの技術は日々進化しています。モデルの性能向上やトレーニングプロセスの効率化により、より高度な自然言語処理が可能になると予想されます。また、新たなアルゴリズムやアーキテクチャの開発により、応用範囲が拡大すると期待されています。 オープンソースLLMの発展は、ビジネス環境に大きな変革をもたらす可能性があります。今後5年間で、オープンソースLLMは様々な産業で標準的なツールとして採用され、特に、カスタマーサービス、コンテンツ生成、データ分析の分野で大きな進展が見込まれます。また、多言語対応や文化的コンテキストの理解が向上することで、グローバルビジネスにおけるコミュニケーションの障壁が低くなると予想されています。同時に、エッジコンピューティングとの統合により、よりリアルタイムで効率的なAI処理が可能になると期待されています。これにより、製造業やIoT分野での応用が加速する可能性があります。 ビジネスリーダーは、これらの技術進歩を注視し、自社のデジタル戦略にオープンソースLLMを組み込むことを検討する必要があります。同時に、データプライバシーやAI倫理に関する課題にも適切に対応することが、持続可能なAI活用の鍵となるでしょう。 まとめ 技術の進化に伴い、LLMの活用範囲は今後さらに拡大すると予想されます。企業はこの技術を効果的に活用することで、業務効率の向上や新たなビジネスチャンスの創出を実現できる可能性があります。ただし、具体的な成果や影響は個々の企業や導入方法によって異なるため、慎重な評価と戦略的な導入が重要です。 参考文献 What is an open source LLM? Open Source AI Is the Path Forward Choosing an LLM: The 2024 getting started guide to open-source LLMs 3 Reasons an Open-Source LLM is an Easier Path for your Business Open-Source Text Generation & LLM Ecosystem at Hugging Face Cohere AI's $500 Million Series D How Companies Are Using Meta Llama --- # OSSスタートアップのライセンス選択 URL: /insights/65 title: "OSSスタートアップのライセンス選択" summary: "。本記事では、OSSスタートアップが直面する主要なライセンスの論点について解説し、適切なライセンスの選択が企業の成功にどのように寄与するかを考察します。" date: 2024-08-13 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/research.mdx" glossary: "glossary/startup.mdx" cover: "/images/insights/65/cover.png" オープンソースソフトウェア(OSS)は、近年、多くのスタートアップ企業にとって重要な技術基盤となっています。OSSは、コスト削減、イノベーションの促進、コミュニティの支援など、さまざまなメリットを提供しますが、一方で、OSSライセンスに関する法的な論点も存在します。これらのライセンスは、ソフトウェアの使用、改変、再配布に関する法的枠組みを提供し、企業のビジネス戦略に直接的な影響を与えます。本記事では、OSSスタートアップが直面する主要なライセンスの論点について解説し、適切なライセンスの選択が企業の成功にどのように寄与するかを考察します。 OSSライセンスの基本概念 OSSライセンスは、ソフトウェアの利用条件を定める法的文書であり、著作権者が他者にソフトウェアを使用する権利を与える際の条件を規定しています。OSSライセンスは、ソフトウェアの使用、改変、再配布に関するルールを定め、著作権者と利用者の間の法的関係を構築します。これにより、OSSの自由な利用可能性と商業利用や独占的な改変に対する制約がバランスされています。 OSSライセンスは一般的に著作権法に基づいており、ソフトウェアのコードがどのように使用されるかを定義します。著作権は、ソフトウェアのコードを保護するための法的手段であり、ライセンスはその著作権の範囲内でソフトウェアを利用するための許可を与えるものです。 OSSライセンスの主な種類とその特徴 OSSライセンスにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる利用条件や制約があります。ここでは、スタートアップが特に注意すべき主要なライセンスについて説明します。 MITライセンス MITライセンスは、OSSライセンスの中で最もシンプルで広く使用されているものの一つです。このライセンスは、ソフトウェアの自由な利用、改変、再配布を許可しており、商用利用も含まれます。MITライセンスの特徴は、その短さとシンプルさにあります。ライセンスの条件は、著作権表示とライセンス通知の保持を要求するのみで、その他の制約はほとんどありません。 多くのスタートアップは、この自由度の高さを評価してMITライセンスを選択しています。例えば、LLMを活用したアプリケーションを開発するためのフレームワークLangChainは、MITライセンスのもとで開発されています。 Apache 2.0ライセンス Apache 2.0ライセンスは、特許権の明確化や再配布に関する要件が特徴的なライセンスです。このライセンスは、特許権侵害のリスクを回避するための保護策を提供しており、特許の明示的なライセンスを含んでいます。また、ソフトウェアの再配布時には、元の著作権表示やライセンス情報を保持することが求められます。 Apache 2.0ライセンスは、多くの企業やプロジェクトで採用されており、エンタープライズ環境での利用にも適していると言われています。例えば、Hugging Face Datasetsは、Apache 2.0ライセンスのもとで提供されており、その柔軟性と法的保護が評価されています。 AGPL 3.0ライセンス AGPL 3.0ライセンス(GNU Affero General Public License)は、GPLライセンスの一種で、特にネットワーク経由での利用者に対してもソースコードの公開を義務付ける点でユニークです。このライセンスは、SaaS(Software as a Service)やWebサービスの提供者にとって重要であり、ソースコードの利用と配布に厳格な条件を課します。 AGPL 3.0ライセンスは、SaaSビジネスモデルを採用しているスタートアップにとって特に注意が必要です。例えば、Maybe FinanceはAGPL 3.0ライセンスを使用しており、その結果、ソフトウェアの利用者に対してもソースコードの公開義務が生じています。 デュアルライセンス デュアルライセンスモデルは、同一のソフトウェアに対して異なるライセンス条件を適用することで、ユーザーに柔軟な選択肢を提供するアプローチです。このモデルでは、オープンソースライセンスと商用ライセンスの二つのライセンス形態が一般的に利用されます。例えば、オープンソースライセンスで提供しつつ、商用ライセンスで商用サポートやエンタープライズ向けの機能を提供することが可能です。 デュアルライセンスの利点は、広範なユーザーベースを確保しつつ、収益化の機会を確保できる点にあります。オープンソースコミュニティの支援を受けながらも、商業的な価値を最大化するための手段として、多くのスタートアップがこのモデルを採用しています。例えば、データベースソフトウェアで有名なMySQLは、デュアルライセンスモデルを使用して、オープンソース版と商用版を並行して提供しています。 一方で、デュアルライセンスの課題として、ユーザーにとってのライセンス選択が複雑になる可能性や、商用ライセンスの価値を十分に伝える必要がある点が挙げられます。そのため、スタートアップがデュアルライセンスモデルを選択する際には、明確なライセンスポリシーと効果的なマーケティング戦略が必要です。 <ROSS Index 2Q/2024 上位10社のOSSライセンス(筆者作成)> | No | 企業 | 製品 | 国 | 設立 | ライセンス | | :-- | :------------- | :--------------------------------------------- | :--------------- | :--- | :--------------- | | 1 | Zed Industries | マルチユーザー向けのコードエディタ | アメリカ | 2021 | AGPL-3.0, Others | | 2 | All Hands AI | オープンソースの自律型AIソフトウェアエンジニア | アメリカ | 2024 | MIT | | 3 | Maybe | ファイナンシャルプランナーおよび資産管理ツール | アメリカ | 2021 | AGPL-3.0 | | 4 | Puter | プライバシー重視の個人向けクラウド | カナダ | 2022 | AGPL-3.0 | | 5 | SubQuery | Web3インフラストラクチャ | ニュージーランド | 2021 | GPL-3.0 | | 6 | Stition AI | Pre-agiセキュリティリサーチ | インド | 2023 | MIT | | 7 | HPC-AI Tech | ディープラーニング拡張プラットフォーム | シンガポール | 2021 | Apache 2.0 | | 8 | MyShell | AIネイティブアプリプラットフォーム | アメリカ | 2023 | MIT | | 9 | Jan | AIネイティブフレームワーク | シンガポール | 2023 | AGPL-3.0 | | 10 | Astral | 次世代のPythonツール | アメリカ | 2023 | Apache 2.0,MIT | OSSライセンスに関連する法的論点 OSSライセンスには、その法的強制力に関しても重要な論点があります。ライセンス違反が発生した場合、その違反がどのように法的に扱われるか、そして誰がそれを強制できるのかについては、近年の裁判例や法的議論においても注目されています。 例えば、2021年にカリフォルニア州で提起されたSFC対Vizioのケースでは、OSSライセンスの強制力が法的にどのように解釈されるかが争点となりました。非営利組織であるSFCは、VizioのスマートTVに組み込まれたSmartCast OSがGPLv2およびLGPLv2.1ライセンスに違反しているとして、第三者受益者の立場で訴訟を提起しました。従来、OSSライセンスの強制は著作者やライセンサーが行ってきましたが、SFCはGPLライセンスが公衆のために作られたものであるとして、OSSライセンスの受益者としてソースコードの開示を求める権利があると主張しています。 このような訴訟が成功すれば、OSSライセンスの第三者受益者による強制が広がり、OSSを含む製品やサービスの購入者が、販売者に対してソースコードの開示を求める訴訟を起こす可能性が出てきます。また、AI技術の進展により、OSSの使用状況を検出する能力が向上し、OSSライセンスの不遵守リスクが増大することも予想されます。 そのため企業はこのリスクに対処するため、OSS使用に関するポリシーの策定、従業員や契約者への教育、ライセンスの事前承認プロセスの導入、OSS使用状況の継続的なレビューなどの対策を講じることが推奨されます。特に、OSSライセンスの要件を理解し、法的および契約上の義務に注意を払うことが重要です。 スタートアップにおけるOSSライセンス選定の戦略 スタートアップにとって、OSSライセンスの選定は単なる技術的な決定ではなく、ビジネス戦略の一部として重要な役割を果たします。ビジネスモデルとOSSライセンスの相性を理解し、適切なライセンスを選択することで、法的リスクを回避しながら、オープンソースコミュニティとの良好な関係を築くことができます。 たとえば、SaaSモデルのスタートアップがAGPL 3.0ライセンスを選択する場合、ソースコードの公開義務が生じるため、それをビジネス戦略の一部としてどう組み込むかが重要です。一方で、オンプレミスソフトウェアやデータプロダクトを提供するスタートアップにとっては、Apache 2.0ライセンスのような特許保護が強化されたライセンスが適している場合があります。 さらに、オープンソースコミュニティとの関係構築も重要です。コミュニティに貢献することで、スタートアップはエコシステムの一部となり、信頼と支持を得ることができます。このようなコミュニティとの連携は、技術的な支援だけでなく、ビジネスの拡大にも寄与します。 OSSライセンスの未来とスタートアップの成長 OSSライセンスの未来は、スタートアップの成長と密接に関連しています。OSSが提供する自由な利用可能性とコミュニティによるサポートは、スタートアップにとって重要な資産です。成功を収めたOSSスタートアップの事例を分析することで、ライセンス戦略の重要性が浮き彫りになります。例えば、RunaCapitalがまとめた「Awesome OSS Alternatives」や「ROSS Index」には、OSSを採用して成功した企業やプロジェクトが紹介されています。これらの事例から、OSSスタートアップのライセンス選定やビジネスモデルに関する知見を得ることができるでしょう。 a16zのレポート「Open Source: From Community to Commercialization」では、OSSの商業化が進む中で、スタートアップがどのようにOSSを活用し、ビジネスを成長させているかが述べられています。OSSは、当初はコミュニティによるコラボレーションとイノベーションの手段として生まれましたが、現在では商業的な成功を目指すスタートアップにとっても不可欠なツールとなっています。 多くのスタートアップは、オープンソースプロジェクトを通じてユーザーベースを拡大しつつ、SaaS版を提供するビジネスモデルを採用しています。このモデルは、HashiCorpやConfluentなどの成功事例に見られるように、OSSを基盤としながらも商業的な成功を収める可能性を示しています。特に、OSSコミュニティでの信頼と支持を得ることが、スタートアップのエコシステム内での競争優位性を高める鍵となります。 OSSの商業化に伴い、新しいライセンスモデルも登場しています。例えば、デュアルライセンスモデルやSaaS向けの特殊なライセンスが挙げられます。これらのライセンスは、オープンソースの理念を維持しながらも、企業が収益を上げる手段を提供するものです。 また、ライセンスの改訂や新しいライセンスの登場により、企業はライセンスの適用範囲や条件を再評価する必要があります。特に、AI技術の発展やクラウドサービスの普及に伴い、OSSライセンスが新しい技術分野にどのように適用されるかが重要な課題となっています。スタートアップは、このような変化に迅速に対応し、自社のビジネスモデルに最適なライセンスを選択することが求められます。 投資家の視点から見ると、OSSスタートアップは投資先としての魅力が高まっています。OSSの広範な採用とコミュニティの支持は、製品の信頼性と市場適応性を高める要因となります。また、OSSを活用するスタートアップは、他の企業やプロジェクトとのコラボレーションが容易であり、エコシステム全体の成長に寄与することが期待されます。 ただし、投資家はOSSスタートアップが持つ法的リスクにも注意を払う必要があります。特に、ライセンス違反による法的な問題や、商業化におけるライセンスの制約がスタートアップの成長を妨げる可能性があるため、適切なライセンス管理とリスク対策が不可欠です。 まとめ OSSライセンスは、スタートアップのビジネス戦略の一部として、今後も重要な役割を果たし続けるでしょう。OSSの商業化が進む中で、スタートアップはライセンスの選定と管理を戦略的に行い、ビジネスの成長とコミュニティとの関係を両立させることが求められます。 OSSライセンスの未来は、スタートアップがどのように技術とビジネスを融合させ、エコシステム内での地位を確立していくかにかかっています。変化し続けるOSSの世界で、スタートアップは柔軟に対応し、ライセンスの選択を慎重に行うことで、持続的な成長を実現できるでしょう。 投資家にとっても、OSSスタートアップは高いポテンシャルを持つ投資先として注目されており、適切なライセンス管理と法的リスクの軽減が、スタートアップの成功を左右する重要な要素となります。 スタートアップがOSSを活用する際には、法的な論点とビジネス戦略を十分に理解し、未来を見据えたライセンス選定を行うことが、企業の成功への鍵となるでしょう。 参考文献 Open Source: From Community to Commercialization | Andreessen Horowitz The Legal Side of Open Source Top open source licenses and legal risk for developers The MIT License Apache License, Version 2.0 GNU Affero General Public License v3 (AGPL-3.0) zed/LICENSE-GPL langchain/MIT License OpenVoice/MIT License huggingface/datasets/Apache-2.0 License supabase/Apache-2.0 License maybe/AGPL-3.0 license twenty/AGPL-3.0 license Open Source Software Licenses: Novel Case Explores Who Can Enforce Them AI and data infrastructure drives demand for open source startups awesome-oss-alternatives Top trending open-source startups in Q2 2024 ROSS Index: the top trending open-source startups, every quarter Dual-Licensing Models Explained, Featuring Heather Meeker 免責事項 本記事は、オープンソースソフトウェア(OSS)ライセンスに関する一般的な情報提供を目的としており、法的助言を構成するものではありません。記事内の情報は、執筆時点での一般的な理解に基づいていますが、法律や状況は常に変化する可能性があります。具体的な法的問題や疑問については、必ず資格を持つ弁護士にご相談ください。 --- # Fair Source:新たなソフトウェアライセンスモデル URL: /insights/66 title: "Fair Source:新たなソフトウェアライセンスモデル" summary: "オープンソースソフトウェア(OSS)は、1970年代後半から1980年代初頭にかけて、商業ソフトウェアに対する対抗手段として登場しました。当初から、OSSはソフトウェア開発における透明性、協力、共有という理念に基づいていました。1983年にリチャード・ストールマンがGNUプロジェクトを立ち上げ、1989年には最初のGPL(General Public License)がリリースされ、OSSの発展が急速に進みました。" date: 2024-08-16 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/research.mdx" cover: "/images/insights/66/cover.png" オープンソースソフトウェア(OSS)は、1970年代後半から1980年代初頭にかけて、商業ソフトウェアに対する対抗手段として登場しました。当初から、OSSはソフトウェア開発における透明性、協力、共有という理念に基づいていました。1983年にリチャード・ストールマンがGNUプロジェクトを立ち上げ、1989年には最初のGPL(General Public License)がリリースされ、OSSの発展が急速に進みました。 オープンソースの最大の魅力は、その無償性と透明性にあります。開発者はソースコードにアクセスでき、それを改変し、再配布することができます。このモデルは、技術革新を促進し、コミュニティの協力による継続的な改善を可能にしました。しかし、このモデルには、商業的に利用される一方で、開発者や企業が持続的に利益を得る手段が欠けているという課題も抱えています。 OSSの登場は、透明性や協力、共有を促進することで技術革新を加速させましたが、近年の商業利用の拡大に伴い、開発者や企業が持続的な利益を確保することが難しくなってきています。この課題を解決するために、新たなライセンスモデルとして「Fair Source(フェアソース)」が提案されました。 Fair Sourceとは Fair Sourceとは、ソフトウェアを一般公開しつつ、権利主のビジネスモデルを保護するために設計されたライセンスモデルです。このモデルでは、ソフトウェアが最初はプロプライエタリライセンス(著作権者がその使用、改変、配布に制限を設けるライセンス)でリリースされ、後にオープンソースとして公開される「遅延オープンソース公開(Delayed Open Source Publication, DOSP)」という手法が採用されます。これにより、企業は一定期間、自社のコードを商用利用者に限定して提供し、収益を確保した後にコミュニティに公開することができます。 Fair Sourceは、OSSと商用ライセンスの中間に位置し、両者の利点を融合させた新しいモデルです。Fair Sourceの特徴は、ソフトウェアの使用が一定のユーザー数や収益額に達するまで無償で利用できる点にあります。それを超えた場合、ユーザーは使用料を支払う義務が発生します。これにより、企業や開発者はソフトウェアの提供を続けながら、開発コストを回収し、さらに新たな開発への投資を行うことが可能になります。 たとえば、あるソフトウェアがFair Sourceライセンスのもとで提供されている場合、ユーザー数が100人未満であれば無償で利用できます。しかし、ユーザー数が100人を超えると、使用料を支払う必要が出てきます。この条件は、ライセンス提供者によって設定され、柔軟にカスタマイズ可能です。 従来のOSSライセンス(例:MIT、GPL)は、ソフトウェアの自由な利用、改変、再配布を許可していますが、商業利用に対する制約がありません。これに対して、Fair Sourceは無償利用の範囲を制限し、商業利用者に対して使用料を求めることで、開発者に対する報酬を確保します。一方、商用ライセンス(例:Proprietary、BSL)は、ソフトウェアの利用に対して明確な使用料を設定し、ユーザーに制限を課します。 Fair Sourceは、商用ライセンスと異なり、無償利用の範囲を設けつつ、商業利用者に対してのみ使用料を徴収するハイブリッドモデルを採用しています。これにより、より広範なユーザー層にアプローチできる点が特徴です。 Fair Sourceの事例 Sentryはエラーモニタリングとパフォーマンス管理のツールで、OSSコミュニティにおいても広く知られています。2018年にBSD-3ライセンスからBusiness Source License (BSL)へ移行し、2024年からFair Sourceの下でFunctional Source License (FSL)を採用しています。SentryがFair Sourceを採用した背景には、オープンソースソフトウェアのコミュニティと企業の間で長年続いていた緊張関係がありました。Sentryでは、買収したCodecovを「オープンソース」と表現したことでコミュニティ内で議論が加熱したこともあり、ソフトウェアライセンスに関する価値観と権利を明確にする必要がありました。 Sentryが新たに採用したFunctional Source License (FSL)は、SaaS企業向けに最適化されたライセンスであり、ソフトウェアの使用自由度と開発者の持続可能性を重視しています。FSLでは、ソフトウェアの商業利用を制限する一方で、内部使用、修正、および改善提案は自由に行えます。FSLの主な特徴は次の通りです。 1.公開から2年間の非競争期間: 商業的に競合する目的での利用を制限する期間が2年間に設定されています。この期間は、企業に対する保護とコミュニティへの貢献をバランスさせるためのものです。 2.Apache 2.0への移行: 非競争期間終了後、ソフトウェアはApache 2.0の下でオープンソースとして再公開されます。これにより、ユーザーは特許に関する保護やその他の利点を享受できます。 3.追加使用許可の排除: 複雑な追加使用許可条項がなく、許可された使用目的(Permitted Purpose)として、競合しない範囲での利用が明確に定義されています。 また、CodeCraftersやGitButlerもSentryと同様にFSLを採用していますが、将来的にはMITライセンスへ移行する計画です。MITライセンスへの移行は、より広範なOSSユーザーへの開放を意味し、最終的にはすべての利用者が自由にソフトウェアを利用できるようになる可能性があります。 【Fair Source Companiesリスト】 (2024/8/14 筆者作成) | 企業 | 事業概要 | 公表日 | ライセンス | | ------------ | -------------------------------------------------------- | -------- | ----------------------------------------------------------------- | | Codecov | コードカバレッジのレポートツール | 2024/8/6 | Functional Source License, Version 1.1, Apache 2.0 Future License | | CodeCrafters | プログラミング教育のプラットフォーム | 2024/8/6 | Functional Source License, Version 1.1, MIT Future License | | GitButler | Gitリポジトリの管理ツール | 2024/8/6 | Functional Source License, Version 1.1, MIT Future License | | Keygen | ソフトウェアライセンス管理のプラットフォーム | 2024/8/6 | Fair Core License, Version 1.0, Apache 2.0 Future License | | PowerSync | データ同期と統合のソリューション | 2024/8/6 | Functional Source License, Version 1.1, Apache 2.0 Future License | | Sentry | エラーモニタリングとパフォーマンス監視のプラットフォーム | 2024/8/6 | Functional Source License, Version 1.1, Apache 2.0 Future License | | Ptah.sh | 開発者向けのツール | 2024/8/9 | Functional Source License, Version 1.1, Apache 2.0 Future License | Fair Sourceのメリットとデメリット Fair Sourceライセンスは、ソフトウェア開発者や企業にとって新たな収益化モデルとして、いくつかの重要な機会とリスクを提供します。これらの要素を理解することは、Fair Sourceを成功裏に導入するために不可欠です。 機会 1.持続可能な収益化モデルの構築 Fair Sourceライセンスは、ソフトウェア開発者や企業が持続的な収益を得る手段を提供します。例えば、無償利用の範囲を設定することで、小規模な利用者には無料でソフトウェアを提供し、商業利用者には適切な使用料を徴収することが可能です。このアプローチにより、OSSコミュニティの精神を維持しつつ、開発者への報酬を確保できます。 2.柔軟なライセンス条件 Fair Sourceは、ユーザーの規模や収益に応じた柔軟なライセンス条件を設定できる点で、従来のOSSライセンスや商用ライセンスに対して優位性を持ちます。例えば、企業は、利用者がソフトウェアを無償で使用できるユーザー数の上限や、収益額に基づいた使用料を自由に設定することが可能です。これにより、ビジネスモデルに適合したライセンス条件を柔軟に設計できます。 3.技術革新とコミュニティの成長 Fair Sourceライセンスは、OSSの透明性や協力の理念を保持しつつ、技術革新を促進する手段として機能します。開発者が自らの技術を公開しつつも、商業利用者からの収益を得ることができるため、コミュニティの成長と持続可能な開発を両立させることができます。 リスク 1.オープンソースコミュニティからの反発 Fair Sourceは、OSSコミュニティにおいて従来の「自由な利用」の理念から逸脱していると見なされる可能性があります。このため、Fair Sourceを採用する企業や開発者は、コミュニティ内で批判や反発に直面する可能性があります。特に、OSSの精神に反すると感じる一部の開発者やユーザーからの不信感が懸念されます。 2.技術的および法的な課題 技術的には、使用料の徴収方法を正確に追跡する仕組みの構築が必要です。また、法的には、国際的な利用者に対してライセンスがどのように適用されるか、各国の法制度に対応するための調整が求められます。これらの課題は、特にグローバルな企業にとって重大なリスクとなる可能性があります。 3.市場競争の激化 Fair Sourceモデルは、他の収益化戦略を採用している企業との間で競争を引き起こす可能性があります。特に、Fair Sourceを採用する企業が既存のOSSプロジェクトや商用ライセンスのソフトウェアと競合する場合、市場でのシェア獲得が困難になることがあります。また、他の企業が類似のライセンスモデルを採用することで、差別化が難しくなるリスクも存在します。 Fair Sourceは、OSSの持続可能性を確保し、収益化を図るための新たなライセンスモデルとして、多くの企業や開発者にとって魅力的な選択肢となる可能性があります。しかし、その導入にはオープンソースコミュニティとの関係性を慎重に扱い、技術的および法的な課題に対処する必要があります。Fair Sourceが広く受け入れられ、成功するためには、企業や開発者がこのモデルの潜在的なリスクを理解し、適切な戦略を採用することが不可欠です。 オープンソースの未来とFair Sourceの可能性 オープンソースは、技術革新の原動力として重要な役割を果たしてきました。今後も、多くの企業や開発者がOSSを採用し、コミュニティ主導の開発が進むでしょう。その中で、Fair Sourceのような新しいライセンスモデルが、OSSの持続可能性を確保しながら、さらに進化を促進する可能性があります。 Fair Sourceは、OSSの持続可能性を確保するための新たなアプローチとして注目されていますが、その成功は、コミュニティの受け入れと適切な実装にかかっています。Fair Sourceが広く受け入れられることで、OSSのエコシステム全体がより健全で持続可能なものになる可能性があります。 しかし、Fair Sourceが成功するためには、開発者や企業がこのモデルをどのように採用し、どのようにコミュニティとの関係を築いていくかが重要です。また、このモデルがOSSの基本理念にどのように影響を与えるかも考慮する必要があります。 Fair Sourceの導入が広がることで、OSSエコシステム全体に新たなビジネスモデルが浸透し、持続可能なソフトウェア開発が促進される可能性があります。これにより、OSSの未来がより明るいものになるかもしれません。 まとめと今後の展望 Fair Sourceは、OSSの持続可能性を確保するための新たなアプローチとして注目されています。このライセンスモデルは、従来のOSSモデルの課題を克服し、開発者に対する公平な報酬を提供する手段を提供します。 今後、Fair Sourceが広く受け入れられることで、OSSエコシステム全体が進化し、さらに多くの企業や開発者がこのモデルを採用する可能性があります。しかし、Fair Sourceが成功するためには、コミュニティとの良好な関係を維持し、適切なライセンス条件を設定することが重要です。Fair Sourceは今後のOSSの進化における一つの選択肢として考慮することができるでしょう。 参考文献 About Fair Source Fair Source Licenses Functional Source License (FSL) The Historical Case for Fair Source The Future of Open Source GitButler is now Fair Source Introducing the Functional Source License: Freedom without Free-riding Sentry is now Fair Source Sentry/Functional Source License, Version 1.1, Apache 2.0 Future License Fair License Meet the Fair Core License MariaDB Business Source License (BSL) オープンソースとは? その定義とは? – Open Source Group Japan – オープンソース・グループ・ジャパン OSSスタートアップのライセンス選択 免責事項 本記事は、Fair Source及びオープンソースのライセンスに関する一般的な情報提供を目的としており、法的助言を構成するものではありません。記事内の情報は、執筆時点での一般的な理解に基づいていますが、法律や状況は常に変化する可能性があります。具体的な法的問題や疑問については、必ず資格を持つ弁護士にご相談ください。 --- # 植物ベースフードの可能性と未来の選択肢 URL: /insights/67 title: "植物ベースフードの可能性と未来の選択肢" summary: "この記事では、急成長する植物ベースフード市場の可能性とその影響について詳しく解説します。" date: 2024-08-16 author: "authors/nahoko\_imamura.mdx" category: "categories/research.mdx" cover: "/images/insights/67/cover.png" 過去10年間で植物ベースのあらゆる食材が爆発的に増加しています。1980年代に用語として初めて使われた「Plant-based foods(植物ベースフード)」ですが、約10年前までは特に注目されることはありませんでした。しかし、世界中で気候変動や食料確保への危機感、動物愛護の観点、個々人の健康に対する不安、そしてファッションアイコンが発信する新しいライフスタイルの影響など、さまざまな理由から植物ベースの食事への関心が急速に高まっています。 民間調査会社StatistaやBloombergによると、植物ベースフードの世界市場規模は2020年の3億ドルから、2030年には16億ドル規模になると予想されています。実際に、パッケージ製品の中で植物ベースフードを謳っているものの数は2018年から2022年までに302%増加し、その後も益々増えています。植物ベースフードは今や日々の食卓に溶け込み、ライフスタイルの選択肢の一つとなっています。この記事では植物フードの市場と課題、今後の展望について詳述します。 植物ベースフードとは? 植物ベースフードとは、植物から派生したあらゆる食品を指します。主に果物、野菜、穀物、豆類、ナッツ、油、種子、スパイス、植物由来の抽出物などです。近年では、菌類や藻類も注目され、これらを使った様々な食材が開発されています。植物ベースフードの近年のイノベーションの核は、肉や魚などの畜産物、水産物の食感・味の再現性の高さです。植物由来の原材料を使用し、肉・魚・卵・ミルク・バター・チーズなどの代替となる加工食品が作られ、それをまるで本物のように食すことができます。 これにより、今まで「ヴィーガン」「ベジタリアン」「フレキシタリアン」といった個人の信条や宗教的な考えに基づいて食材を選択する人々のみが主な対象であった植物ベースフード市場が、その裾野をより広く、多くの人々へと広げる契機となりました。「より高タンパクで、低カロリー、そしてなにより食感や味が本物と変わらないのであれば、「植物ベースフードを選ぼう」という人たちが増えています。 ドイツでは、16~24歳の7割以上が定期的に植物ベースフードを選択していると回答し、アメリカでは6割の家庭が植物ベースフードを2022年に購入し、そのうち6割がリピート利用をしていると回答。中国でも消費者の1割以上が植物ベースの飲料を毎日摂取しているというデータがあります。日本においても大豆ミートを利用した冷凍食品や、アーモンドパウダーを利用したパスタソースなどが一般のスーパーで気軽に手に取れるようになりました。 市場の課題 しかし、この市場も陰りが無いわけではありません。植物ベースフード市場全体は成長を続けているものの、植物ベースミルクに次ぐ市場規模を持つ植物ベースの代替肉の消費が2021年のインフレの影響で減少に転じました。植物ベースの代替肉はその拡張性の高さから市場を今後牽引するカテゴリーと目されていますが、現状では動物性のものよりも平均67%価格が高く、経済的な不安を抱える個人消費者が進んで取る選択肢とは言えない状況です。 英国で実施された1,000人への聞き取り調査では、植物ベースフードを購入するかの最大の決め手は66%が味、しかし僅差で62%の人がその価格と回答しています。日常生活で取り入れるか否かの決定要素として味と価格が大きな割合を占めるのです。 ビヨンドミート社の事例 植物由来の人工肉を開発・製造する米ビヨンドミート社は、正にこの二つの壁を越えきれずにいる企業の一つと言えます。2022年から経営不振に陥っており、現在株価は2019年7月の最高値更新時から比較すると、なんと3%にまで下落してしまいました。この企業については製造過程において衛生面での問題が指摘されたことなども経営状況に悪影響を及ぼしたとされていますが、2021年から実施した米マクドナルドでの試験販売が、正に味と価格双方のバランスの観点から不採用となったことなどが大きな転換点となったと言われています。 今後の展望と課題 今後の世界的な人口増加、富裕者層の増加、そして地球温暖化の影響により、肥料価格や農業資材費、光熱費等の高騰は避けられない状況であり、動物由来の肉の価格は中長期的に上がっていくことが予想されています。一方で、植物ベース代替肉の価格の低減に向けてはまだまだ改善の余地が多く残されています。 保存状態と保存期間 現在、植物ベース代替肉の63%は冷凍、34%は冷蔵での保存が必要で残りの3%のみが常温保存が可能です。流通コストの低減や廃棄量削減を目指すにあたっては、保存期間をどこまで延長できるかがキーになってきます。パン業界では既に、保存期間延長のために緩衝酢や発酵酸、天然ソルバート源などの活用が進んでいます。このような他業界の先例も参考にして今後も開発が進んでいくことを期待します。 添加物の削減 植物ベース代替肉のパッケージを見ると、多くの添加物が入っていることがわかります。それぞれ味、食感、色を動物性のものに似せるために必要なものです。しかし、添加物が多いほど価格は上がります。例えば、ゲルや乳化剤(メチルセルロースなど)は植物ベースの肉製品に広く使われており、重要な機能を持っていますが、これらは全体のコストの10~15%を占めることがあります。 一部の企業はメチルセルロースの代替品を開発していますが、まだ高価です。現在、酵素ソリューション、トランスグルタミナーゼに基づくものの利用が開始されています。これらは時間と熱を必要としますが、少量の利用でゲルや乳化剤と同様の効果があるため、コスト削減の観点から活用が期待できます。また、既存の成分の機能性をより深く理解することで、植物タンパク質の持つ天然の乳化、発泡、ゲル化特性を活用できるというレポートもあります。できる限り添加物の少ない、天然素材で作られた代替肉の開発は続いています。 肉質感 食品において食感は非常に重要な要素の一つであり、特に何かの代替品としての需要を考慮した場合、食感が似ていないと、それはノックアウトファクターとなります。植物ベースの代替肉においては、押出成形プロセスの研究が多く行われています。植物濃縮物から高品質な代替肉を生産する際に、押出成形プロセスがその食感を左右します。成形プロセスによって、例えばチキン、ビーフ、ラム、またはポークの塊、ストリップ、ピースなど多くの種類の代替肉を生み出すことが可能になります。 次に、植物濃縮物のカット技術の開発が急務です。その焦点はハンバーガーやソーセージと言ったものよりも、ビーガンベーコンなどのスライス品において重要となります。この技術の進歩が、利用すべき食品添加物の量も減少させるため、食感のみならずコスト削減の観点からも重要な技術革新と言えます。 副産物を活用した食品ロスの削減 タンパク質が濃縮されると何かが必ず残ります。これらを活用することが、より安価な肉代替品を作る鍵となるはずです。既に乳製品業界などで広がっているチーズ生産後に大量に廃棄されていたホエイのブラウンチーズへの再加工や、直接食せない動物性脂肪を溶かして食用油脂や石鹸などにするレンダリングなどがその実例です。副産物の活用は、コストを下げ、動物由来の肉と食材として互角に競争するために不可欠です。現在、植物ベースの副産物の利用を増やすためのいくつかのプロジェクトが研究段階にありますが、これらの早急な進捗を期待します。 多様な農作物の活用 最後に、植物ベース代替肉の原料の多様化の必要性について触れます。現在の植物タンパク質は、大豆、エンドウ豆、小麦が中心となっており、収穫地から複雑な供給チェーンを辿って長距離を移動することが多いという現状があります。これでも依然として動物性の肉よりも環境に良いことが多いですが、理想的な状況とは言えません。各地で入手可能な多様な農作物を利用した植物性タンパク質の生産は、原材料の安定確保、コスト低減の観点から大きなメリットがあると言えます。 例えば、英国ではソラマメが重要な作物ですが、ほとんどが輸出されたり、動物飼料として使用されています。これらは大豆や黄色エンドウ豆ほど植物性代替肉に変換しやすくなく、風味の課題があるため敬遠されていましたが、押出成形技術とマスキング技術がこの問題を解決する可能性があります。 おわりに 今回、「植物ベースフードの可能性」と題し、その正体と急速な市場拡大の背景、課題、それを踏まえた業界における技術革新を追ってきました。「すべての人の食料の確保」という地球規模で人類が抱える課題の一つの解としてだけでなく、人生を豊かにする一つの選択肢として、多くの人が既に生活に取り入れていることは既述の通りですが、今後の技術革新により、より多くの人の選択肢となるよう今後の植物ベースフードの可能性に大きな期待を寄せます。 参考文献 Emerging Trends in the Plant-Based Industry Plant-based Foods Market to Hit $162 Billion in Next Decade, Projects Bloomberg Intelligence Plant-based food market value worldwide 2030 プラントベースフードってなに?代替肉ってなに? Plant-based retail market overview 2022 Retail Sales Data — Plant Based Foods Association Price Parity: 6 Steps to Make Plant-Based Meats Cheaper Than Conventional Meat. Vegan Burger Meat, Crumbles, & Sausages McDonald’s ends its plant-based test in the U.S. Now what? Beyond Meat Review | Why We Don't Think It's Healthy – Illuminate Labs --- # ローコードツールのプロダクト開発 URL: /insights/68 title: "ローコードツールのプロダクト開発" summary: "本記事では「ノーコード」や「ローコード」による開発を支えるプラットフォームの開発について、従来のSaaSなどの一般的なソフトウェア開発と比較しながら、その違いを浮き彫りにしていきます。" date: 2024-08-19 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" glossary: "glossary/saas.mdx" cover: "/images/insights/68/cover.png" 様々な業界や業種でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、企業は外注に頼らず、「ノーコード」や「ローコード」を活用した開発を取り入れるようになっています。本記事では「ノーコード」や「ローコード」による開発を支えるプラットフォームの開発について、従来のSaaSなどの一般的なソフトウェア開発と比較しながら、その違いを浮き彫りにしていきます。 ローコードとノーコードの違い まず、ローコードとノーコードを支えるプラットフォームは、アプリケーションの開発を簡素化するためのものです。それぞれの違いを以下に示します。 ノーコード 概要: コーディングスキルを持たないユーザーでもアプリケーションを開発できるプラットフォーム 対象: 主にビジネスサイドを中心にしたユーザー 特徴: コードを使用したカスタマイズが困難で、プリビルトコンポーネントとテンプレートに依存 代表例: Airtable、Zapier ローコード 概要: アプリケーションの開発を簡素化するためのプラットフォームで、最小限のコーディングを必要とする 対象: 主に開発者やITプロフェッショナルで、ある程度のコーディングスキルを持った方が対象 特徴: コードを追加してカスタマイズすることが可能で、各種テンプレートの活用もできる 代表例: Microsoft PowerApps、Outsystems、Mendix さらに、ローコードには大きく2つの種類があり、個別のアプリケーション全体を設計できるものと、とあるアプリケーションに対して、GUIで一部のモジュールを設計できるものの2つに分類できます。ここからはローコードに重きを置いて、ローコードとSaaSを比較しながら、ローコード自体の開発のあり方を浮き彫りにしていきます。 ローコード自体の開発における企画思想 ローコードとはユーザーがコードの知識がほとんどなくてもアプリケーション開発ができるプラットフォームを指します。つまり、決まったユースケースや業務フローに対応できるシステムを構築するだけでなく、柔軟にユースケースに対応できることが必要になります。 他方、SaaSは一定の業界業種における業務フローの一部を完遂できるシステムであり、ローコードに比べ、柔軟性は求められていないと言えるでしょう。また、上記柔軟性の有無により、ローコードはプロダクトマネージャーや開発者、情報システム部門の方々などが活用することが多く、SaaSは具体的な業務担当者による活用が想定されています。 ローコード自体の開発において、特徴的なのはユースケースに対する柔軟性であり、システムとして拡張性の高さを担保することにあります。例えば、Salesforceではプロンプトビルダーを活用することで、Salesforce上のデータを元に顧客に特化した営業メールを生成できることができます。営業だけでなく、マーケティングなど他のユースケースにも対応できるような柔軟性をプロンプトを活用することで担保していると言えるでしょう。 気をつけないといけないポイントは様々なユースケースに対応できるように柔軟性を上げるべく、プロダクトとしての抽象度を上げすぎると、ローコードとしての意図や対応できるユースケースの想起が難しくなり、導入や活用が困難になります。対応すべきユースケースをある程度絞り、最低限の要件を定義しつつ、今後他のユーザーセメントやユースケースへの展開を念頭に置いた上で最終的な開発要件を決めていくことになります。 ローコード自体の企画の進め方 先にSaaSの企画の進め方を確認すると、ターゲットセグメントに当たる想定ユーザーにヒアリングし、業務フローを確認するところから始めます。その後、業務フローを元に、どこに課題があるか見極め、プロダクトのアイデアを検討していきます。そして、ユーザーストーリーを洗い出し、優先順位を受けて、プロトタイピングを行っていきます。さらに、プロトタイプを想定ユーザーに見せ、課題を解決し、ユーザー価値を創出するものになっているか確認し、問題なければ、実際の開発に駒を進めていきます。 ローコード自体の企画は上記のSaaSの企画の進め方と大きく変わるところはありません。幅広いユースケースに対応できるローコードですが、企画段階では一定の業界業種、ユースケースに絞り、業務フローの確認から、プロトタイピングまで進めていきます。 1点、SaaSの企画に追加して行うこととして、幅広いユースケースに対応できるように、企画段階で、アーキテクトに相談をしっかりと行い、プロダクトとしての拡張性を確認します。 また、一度SaaSとして開発を進め、より広いユースケースに対応できるように、一部ローコードによるカスタイマイズを許容できるように機能拡張を進めることもあります。当初SaaSとして展開していたが、エンタープライズを意識したときに、1ユーザーごとにカスタマイズして、SIをこなしていると、スケールが難しいので、この文脈でローコードを導入するという考え方もあります。 単にSaaSのデモだけで販売し切るのが難しいケースでも、ローコードを通して実現できることを併せて提案することで、売りやすくなることがあるのです。 ローコード自体の企画の困難さ 上述の通り、SaaSの企画と基本的には同じ進め方をするのですが、3点ほど企画を困難にするポイントがあります。1点目はプロダクトの拡張性を担保するために一歩深い基盤レイヤーの企画をアーキテクトと議論しながら進めるため、その分企画の難易度があがります。 SaaS業界でトレンドになっているコンパウンドという創業時から複数プロダクトを展開していく戦略を実現する過程と似ていると言えるでしょう。コンパウンド戦略でもデータや認証、課金などを共通基盤として構築し、複数プロダクトで活用できるように開発を進めていきます。コンパウンドの開発と違うのは、社外のユースケースに対応することであり、さらに難易度の高いものと言えます。 2点目はユーザーからの要望が上がってきた時にローコードとして実現するものと捉えるべきか、ユーザーが開発することで実現するものと捉えるべきかの線引を行うことです。もちろん目の前のユーザーから上がってきた要望をプロダクトとして実現できれば、ユーザー価値は向上しますし、それだけ高いARPAを期待できます。しかし、ローコードという性質上、ユースケースが限定的であれば、その趣旨に反します。 このバランスを取りながら、プロダクトの改修を行っていくのは一段難易度が上がる要素といえます。 最後に、2点目にも通じるのですが、様々なユーザーから多種多様な要望が上がってきます。そのため、なかなか直接は比較しにくい企画の優先順位をつけ続けなければなりません。ただ、優先順位をつけるだけではなく、その結果をプロダクトサイドはもちろん、ビジネスサイドにも連携していくことになります。 まとめ 初めてローコード自体の企画を進めようとすると、どこから手をつけてよいものかと戸惑うことも多いかもしれません。しかし、本記事で確認した通り、基本的な流れはSaaSと同じく、スコープを決めて、ユーザーニーズを明確化していくことから始まります。 ただし、様々なユーザに使ってもらえるように拡張性を担保するためにアーキテクトとの企画検討や、どこまでプロダクトとして実現するのか、また開発の優先順付とコミュニケーションにローコードならではの難しさをはらんでいると言えます。 これらを丁寧に対応していくことで、ローコードの企画が進み、より広いユースケースの対応や、さらにはエンタープライズ開拓の一手となれば幸いです。 --- # ローコード導入におけるオーナーシップ URL: /insights/69 title: "ローコード導入におけるオーナーシップ" summary: "本記事では、ローコードの導入サポートを確認した上で、ユーザーによる導入におけるアメリカと日本の違いを意識しながら解説していきます。" date: 2024-08-20 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/69/cover.png" 様々なシーンで、ローコード活用が散見されるようになってきましたが、ローコードを導入すること自体が目的になることはありません。まず社内で実現したいことを明確にすることから始めることが重要です。その上で、SaaSなどカスタマイズを要しないシステムを活用するか、ローコードやノーコードを導入するか、さらにコーディングして拡張するかを順を追って検討することが求められます。 本記事では、ローコードの導入サポートを確認した上で、ユーザーによる導入におけるアメリカと日本の違いを意識しながら解説していきます。 ローコードの導入サポート 前記事「ローコードツールのプロダクト開発」の「ローコード自体の開発における企画思想」で解説した通り、ローコードは一定の開発スキルを要求することから、プロダクトマネージャーや開発者、情報システム部門の方々などが活用することが多いです。そのため、ローコードの提供企業からのサポートはSaaSと同じくヘルプページやチャットによる対応など、基本的に同じですが、ローコードの特性である拡張性の高さから随所に違いが出てきます。 基本的なヘルプページの内容は前提となる概念の説明や背景から入り、機能の目的、機能の具体的な内容、実際の使い方などを主要画面のキャプチャや動画を織り交ぜながら解説するものが多いです。ここまではSaaSのヘルプページと特段違いはありません。 ただ、その量に差があります。なぜならローコードを導入して、実際の作業者が直接利用できるわけではなく、一定の要件に併せてプロダクトマネージャーや開発者、情報システム部門の方々が設計し、準備を整える必要があります。そのため、システムとしてSaaSよりも一段深いレイヤーの活用からサポートしていく必要があり、提供するコンテンツの量が多くなるのです。 また単にヘルプページやチャットだけではなく、実際にローコードを導入する上で必要になるため、より情報量の多い動画配信やコミュニティの運営にも積極的です。 さらにイベント等でハンズオンセッションを開催し、数日間ローコードを活用できる環境を準備し、セッションの中で一緒にローコードを通して一定のシステムを構築するようなものまであります。 導入の過程で、カスタマーサクセスが受けきれないテクニカルな課題が出てきた際、ローコード自体を企画しているプロダクトマネージャーが出向いて、サポートすることまであります。これは一般的なSaaSではあまりないことで、拡張性の高いローコードならではと言えるのではないでしょうか。プロダクトマネージャーはこのサポートを通して、当該ユースケースに対してどのような実現方法があるのか確認し、今後の開発を検討していく上でのインプットとして位置づけていくことになります。 国内におけるローコード導入 当たり前なことを行っているかもしれませんが、アメリカではローコードを導入する際、導入する企業自体にオーナーシップがあり、社内の情報システム部門の方々などが導入を推進していくことになります。社内で活用するシステムに対して内製カルチャーを持っている企業が多いのが特徴です。大掛かりなシステム導入を行う際は総合ファームではなく、戦略ファームがその方針をサポートし、実際の導入は自社で行うことが一般的なようです。 他方、日本では内製よりも外注を活用し、社内システムを構築してきた歴史があります。そのためローコードのような抽象度の高いシステムを導入するにはSIerなどのパートナービジネスと共創することが不可欠で、パートナーを無視して提案しても進みにくい企業が多いのが実情と言えるでしょう。 つまり、日本がローコードを採用する際はアクセンチュアや会計Big4のような総合ファームがコンサルティングを行い、必要に応じてSIerを巻き込み、導入する流れがあるのです。 日本でもオーナーシップを持てるのか? アメリカと日本という大きな対比をしましたが、日本にも当然、社内システムに対してオーナーシップを持っている企業もあります。例えば、IT企業などでは創業から内製文化である企業が多く、ローコードのような新しいシステムに対してもキャッチアップが早く、必要に応じてエンジニアを中心に導入を進めている印象が強いです。このようにプロダクトマネージャーや開発者、情報システム部門を中心に社内に一定のITリテラシーが根付いている企業ではアメリカと似た状況になっていると思います。 その他の企業が、このような企業に変革していくにはローコードのような抽象度の高いシステムであっても、社内で必要性について議論できるITリテラシーと、コンサルからの提案ありきではなく自ら主導していくスタンスの情勢が不可欠だと思います。内容の難易度は高いことは否めませんが、ローコードはその抽象度の高さゆえ、サポート内容は充実していると言えます。この状況を鑑み、最低限社内で検討を進められる状態に持っていくことが初手になるでしょう。 もちろん、日本で確立したパートナーと共創していくことも1つの選択肢だと思います。すでに確立したエコシステムを無視するのではなく、コンサルやSIerからの提案を実質的に見極め、ローコードのような拡張性の高いシステムに対しても意思決定に足るキャッチアップを行うことも有用です。 まとめ ローコードを運営している企業はそのプロダクトの抽象度の高さからSaaSよりも導入サポートの発信量や質が高いのが特徴的です。アメリカと異なり、日本ではIT企業などITに対するリテラシーの高い企業を除き、コンサルやSIerなどのパートナー企業の存在が大きく、ややユーザーサイドが受動的になりやすい構図があります。 ローコードのような拡張性の高いシステムの導入を主導していくには、商談資料やホームページ上の情報に留まらず、ヘルプページやハンズオンセッションを通して実際に導入するイメージが持てるか、課題を抱えているユースケースに対してソリューションとなりうるか肌感覚を持つことが第一歩になるでしょう。 --- # 大手企業によるデジタルプラットフォームへの取り組み URL: /insights/7 title: 大手企業によるデジタルプラットフォームへの取り組み summary: "インターネット網の整備とパソコン、スマートフォン、その他IoTデバイスの普及によって数多くのデジタルプラットフォーム企業が台頭してきました。プラットフォーム企業はデジタルサービスを通して圧倒的なコンテンツ数とユーザー規模に急成長し、従来のスタンドアローン型のプロダクトやサービスを提供する企業に比べて資本市場から高いこともマルチプルで評価されています。" date: 2022-06-29 author: "authors/takafumi\_endo.mdx" category: "categories/platform.mdx" cover: "/images/insights/7\_cover.jpg" インターネット網の整備とパソコン、スマートフォン、その他IoTデバイスの普及によって数多くのデジタルプラットフォーム企業が台頭してきました。プラットフォーム企業はデジタルサービスを通して圧倒的なコンテンツ数とユーザー規模に急成長し、従来のスタンドアローン型のプロダクトやサービスを提供する企業に比べて資本市場から高いこともマルチプルで評価されています。フランスのMirakl社の調査によるとヒルトンホテルが61万の客室を提供するまで約93年の年月がかかった一方で、スペースシェアのAirbnbはシェアリングという手段を用いてたったの4年で65万室を確保するまでに成長しています\[^1]。WalmartやTargetなどの大手小売企業の時価総額の合計よりも、Amazonは大きな時価総額にまで成長しています。またここ数年で話題になることが多いユニコーン企業(時価総額10億ドル以上の非上場企業)と呼ばれるスタートアップの約6割がプラットフォーム型企業であると言われています\[^2]。 デジタルトランスフォーメーションとプラットフォームビジネス 元来プラットフォームビジネスはインターネットサービスに限られたものではなく、百貨店やショッピングモールなどの商品やテナントと消費者をマッチングさせるマーケットプレイス事業、加盟店舗が増えるほど顧客の利便性が高まる決済代行事業、ホテルや交通サービスと旅行希望客を仲介業する代理店事業などもプラットフォーム型ビジネスと言えます。そういった場や機会をインターネットサービスを通じて提供するものが「デジタルプラットフォーム」と呼ばれており、Amazon、Alibaba、Googleなどの巨大プラットフォームから小規模なマッチングサイトまで、そのサービスや規模は多種多様であり、デジタル技術の進化とインフラの低コスト化が進み続けている昨今においては、常に新しいデジタルプラットフォームが生まれ続けています。 日本国内の大手企業においてもプラットフォームビジネスの新規立ち上げや既存事業のプラットフォーム転換は重要な経営論点の一つとして、これまでも盛んに議論されてきました。国内でも楽天やYahoo!、LINE、PayPay、メルカリなどテック企業を中心にメガプラットフォームが複数生まれてきましたが、伝統的な大企業においても昨今のデジタルトランスフォーメーションへの注目の高まりのなか、システム開発の内製化及びアジャイル開発対応などの論点にも関連し、各社でプラットフォーム事業の立ち上げに関する取り組みが加速しています。また「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が2020年6月3日に公布されるなど、国内でも大手数社のみが対象となる法律ではあるものの、多方面からデジタルプラットフォーム提供者企業に対する注目が高まっているのが現状です。 足元ではエッジコンピューティングやAIなどの先端技術の進化及び汎用化によって、従来では取得困難であったオフラインデータの分析及び管理制御が可能になるだけでなく、オンラインデータとの組み合わせによって新たなサービスを提供するプラットフォームビジネスの台頭が期待されています。OMO(Online Merge with Offline)やスマートシティなどはその一例と言えます。また仮想空間やブロックチェーンを活用したNFTマーケットプレイスをはじめとした従来にはないコンテンツの消費・生産・取引活動が生まれ始めており、今後デジタル経済圏がグローバルに拡大していく中で、テック企業のみならず伝統的な大手企業にとってデジタルプラットフォーム展開はより重要な事業テーマへとなっていくことが予想されます。 商取引におけるデジタルプラットフォームの価値 デジタルプラットフォームの定義は諸説ありますが、筆者は「デジタル技術の活用によって、売り手や買い手のような複数グループ間での取引やコミュニケーションにかかる費用及び機会損失を大幅に削減するとともに、データを活用した付加サービスを提供するによって、新たな市場経済圏を創造するビジネスモデル」であると考えています。プラットフォームにおいて常に重要になる論点は「1. 利便性向上による取引摩擦の逓減」「2. プラットフォーム参加者及びコンテンツの増加に応じたネットワーク効果」「3. データ活用による付加サービス及びマネタイズ」です。 1\. 利便性向上による取引摩擦の逓減 経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によれば、現状国内のB2B取引(約353兆円)の7割以上はオンライン化されておらず、企業間取引はまだまだデジタルプラットフォーム化による利便性向上の余地が大きいと言えます。これまで電話やメール、Faxや紙による情報伝達が中心であった商談や契約手続きが、Webサービスやオンラインアプリケーションを介してなされる状態になることがわかりやすいユースケースです。またB2CやC2Cであっても、フリマアプリのように既にオンライン化されていると一般的に思われていた市場取引であっても、スマホファーストなUXとして再構築されたことで新しく数千億円規模の市場が創出された事例なども少なからず存在します。そのような大きな市場創造は、デジタルサービスのUIデザインやUX設計の良し悪しの問題だけではなく、デバイスやバックエンドシステムの大きなパラダイムシフトとともに起こることが多く、昨今IoTやVRに注目が集まる理由の一つにもなっています。 2\. 規模によるネットワーク効果及び収益逓増 デジタルプラットフォームを論じる上で外せないのがネットワーク効果(又はネットワーク外部性)です。例えば決済サービスにおいては加盟店や利用者が増えるほど支払・送金・引落などの利便性が飛躍的に向上するため、仮に特段の機能追加やサービス改善がなかったとしてもユーザーのリテンション率やLTV(Life Time Value)などの各KPIが上昇する傾向にあります。ECサイトなどにおいても、例えばサイト内での販売商品数が増えるほど、ユーザーにとってそのサイトを定期的に訪問するきっかけや合わせ買いをする理由が明確に増えるだけでなく、掲載コンテンツ数に応じてSEO(Search Engine Optimization)が強くなる傾向にあるため、結果として検索エンジン経由での集客数が増えるなどの効果が期待できます。また前述のフリマアプリにおいても、出品者が増えるほど商品が増えるという分かりやすいメリットだけでなく、出品者は売上金を元手にフリマアプリ内の商品を購入する割合(売手と買手の転換率)が相応に高く、通常の売買プラットフォームに比べてより強いネットワーク効果が生まれているのが特徴です。 3\. データ活用による付加サービス及びマネタイズ デジタルプラットフォーム事業者にとって、あらゆる商取引プロセスやユーザーの行動データを取得・分析・活用できることは大きな強みとなります。データはプラットフォームのサービス改善や新規機能追加に使えるだけでなく、サードパーティ事業者に開放することによって、デジタルプラットフォーム参加者の利便性をより高めるような活用をすることも可能です。例えばECモールなどでは、OMS(Order Management System)や在庫連携システム、WMS(Warehouse Management System)等の外部システムとAPIやFTPサーバー経由でのデータ連携を容易にすることで、出店者の業務負担を減らす取り組みが行われてきました。昨今ではShopifyのようにサードパーティベンダー向けのアプリマーケットプレイスを構築するプラットフォーマーも増えており、データ販売や広告収入だけでなく、新たなマネタイズ手段が次々と生まれています。 大手企業が取り組むデジタルプラットフォーム事業 日本の製造業を中心とした大企業においては自社グループや主要取引先によって確立された強固な流通バリューチェーンを管理するパイプライン型/スタンドアローン型の事業展開が主流であり、それらの改善の積み上げの結果として優れた製品やサービスを無数に輩出してきました。従来の垂直統合型バリューチェーンに対して、自社の取引先ネットワーク拡大や周辺サービスの拡充が期待できるデジタルプラットフォームを接合できれば、収益性・成長性・安定性という面でより従来よりも強固なエコシステムを構築できる可能性があります。特に日本においては伝統的に製造業、卸・仲介業の大企業が数多く存在し、B2Bの商取引おいて今でもメールや電話やFax等での情報伝達プロセスが存在することから、一連のプロセスをデジタル化及び再構築することで、取引費用を低廉化させるとともに新しい収益機会に溢れているのが現状です。 また今後は国内外の競合他社や新興企業などが自社のビジネス領域においてプラットフォーム戦略を推進してきた場合のリスクを考慮する機会が増えることが予想されます。一度プラットフォーム内で構築されたデジタル商圏のなかで取引の仕組みが確立されてしまえば、前述のネットワーク効果やスイッチングコストによって参入障壁が高まってしまうため、プラットフォーマーに奪われたビジネス機会を取り返すことは容易ではありません。 GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)やBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)などのメガプラットフォーマーだけではなく、創業から数年という短期間でベンチャーキャピタルから数百億円単位の資金調達を実施してユニコーン企業(時価総額$10B以上の未公開企業)となるスタートアップ企業も将来の競合(もしくは提携)候補としてリサーチに注力する伝統的な大手企業も増えており、近年コーポレートベンチャーキャピタルの組成や大手ベンチャーキャピタルファンドへのLP出資などが増加していた理由の一つでもあります。 一方で、デジタルプラットフォームの構築には鶏と卵問題に代表されるようなハードルがいくつも存在します。前述のネットワーク効果が十分に働く規模に達するまでには、相応の集客費用やコンテンツ獲得費用がかかるだけでなく、対象業界パートナー企業やプラットフォーム参加者との信頼関係を築くにも相応の時間を要します。また昨今ではインターネットだけで完結するデジタルサービスによる差別化が激しくなっており、店舗・倉庫・工場設備などのオペレーショナルアセットとのデータ連携や運用知見が求められる事例も増えており、デジタルプラットフォーム事業においてもソフトウェアの実装力や資金力のある大手テック企業が必ずしも有利とは言えない状況です。そのため、ハードウェアや工場設備や不動産などの有形資産や、IP(Intellectual Property /知的財産権)や取引先ネットワークやブランド価値などの無形資産を長い年月をかけて蓄積してきた伝統的な大企業がデジタル事業においても、相対的競争優位になるケースも増えていくと考えられます。 最近ハードウェアやIPなどの自社の強みを活かし、デジタルプラットフォームによる自社エコシステムの強化に成功した分かりやすい事例としてNintendo Switchがあります。任天堂はデバイスに依存せずクロスプラットフォーム対応の方針を打ち出し、Nintendo Switch Onlineというマーケットプレイスを開設するなどのデジタルプラットフォーム戦略を強化した結果、ソフト販売におけるデジタル比率も2022年度には42%にまで成長しています。また2021年10月時点においてハードウェア販売台数9,000万台に対して、有料オンラインアカウント数3,200万人以上とハードウェア購入台数に対して約36%のサブスクリプションユーザーが存在しており、子供からシニアまでより幅広い世代の顧客獲得にも成功しています\[^3]。ここでは一般的にイメージしやすいB2C領域の事例として任天堂を取り上げましたが、B2Cで一般化された機能やユーザーインターフェース等はB2B領域でも活用されることも少なくありません。B2C/B2B問わず今後も大手企業によるデジタルプラットフォーム事業の事例が増加してくことが予想されます。 おわりに 日本企業のデジタルトランスフォーメーションにおいては、業務効率化・プロセス改革などの「守りのDX」が先行しておりますが、デジタルプラットフォームのような顧客接点・ビジネスモデルの抜本的改革などの「攻めのDX」への取り組みも今後増加していくと考えられます。IPA( 独立行政法人 情報処理推進機構)が500社以上の企業を対象に行なったアンケートにおいて「デジタル事業を行っており、デジタル事業の売上を低利用的に把握できている」と回答した日本企業は10.5%と米国企業の49.1%に比べると低水準であり、まだまだ成長の余地が大きいと考えられます\[^4]。総務省統計局のデータによれば日本国内の大手企業グループの売上高は795兆円(4,809社)であり、そういった企業グループが既存の商流や自社の伝統的な強みを活かしたデジタルプラットフォーム事業を創出することによる期待経済効果は相応に大きいことが予想されます\[^5]。これから大手企業のデジタルトランスフォーメーションがより具体的な実践フェーズへと進むなかで本記事がデジタル事業戦略の立案や改善の一助になれば幸いです。 \[^1]: Mirakl 「Marketplaces: The Platform Revolution (as of 12/30/2016」 \[^2]: プラットフォームビジネス -- デジタル時代を支配する力と陥穽」マイケル A.クスマノ (著), アナベル ガワー (著), デヴィッド・B.ヨッフィー (著), 青島 矢一 (監修, 翻訳) \[^3]: 任天堂株式会社 2022年3月期第2四半期決算説明会兼経営方針説明会、2022年3月期決算説明会 \[^4]: IPA 『DX白書2021 日米比較調査にみるDX戦略、人材、技術』 \[^5]: 総務省統計局『我が国の「企業グループ」の状況について -経済センサス‐基礎調査の集計結果から- 』掲載の売上高100億円以上の企業グループのデータを当社集計 --- # ローコードを活用した開発と運用 URL: /insights/70 title: "ローコードを活用した開発と運用" summary: "本記事ではローコードユーザーの類型を整理した上で、ローコードに導入に関する課題と対策の提案を行っていきます。" date: 2024-08-20 author: "authors/yoshitaka\_miyata.mdx" category: "categories/product.mdx" cover: "/images/insights/70/cover.png" ローコード開発は少ないコーディングでアプリケーションを開発できる手法として注目を集めています。特に企業が迅速に市場ニーズに対応する必要がある現代において、その需要は高まっています。しかし、ローコードは本当に万能な解決策なのでしょうか?本記事ではローコードユーザーの類型を整理した上で、ローコードに導入に関する課題と対策の提案を行っていきます。 ユーザーの類型 まず、ローコードを導入するユーザーはローコードを導入する目的の解像度と開発ノウハウ、リソースの有無により分類することができます。 前者については文字通り、ローコードを導入して実現したいことが整理され、明確になっているユーザーと、そもそも目的が不明確で、ツールを入れること自体でなにかを実現しようとしているユーザーに分類できます。 後者の開発に関するノウハウ、リソースの有無により、導入可能性の幅が変わってきます。開発ノウハウやリソースを持っていない企業ですと、ノーコードを中心に検討が進みますし、逆に社内に抱えている企業であれば、ローコードだけでなく、内製での開発も含めた検討も進められます。 | | 導入の目的が不明瞭 | 導入の目的が明確 | | -------------------- | ------------------------------------------------------------------------ | ------------------------------------------------------------ | | 開発ノウハウなし | 目的が不明瞭の中、ノーコードに対する期待が強い | ノーコードに近いツールを活用し、目的を実現を模索する | | 開発ノウハウあり | 導入するオプションがローコードまで幅が広がるが、ツールの導入が目的化する | ローコード、更にはハイコードによる開発も交えて、実現に向かう | ローコード導入の前提における問題 システム導入はそれ自体が目的になることはありません。なんらかの目的が必要で、その実現のための手段となります。ただ、ローコードの場合はシステムとしての拡張性が高く、機能要件の確認を行うことよりも、ローコードに過度の期待を寄せてしまい、システムの導入自体が目的化してしまうことも少なくありません。 また目的は明確でローコードの導入を決めましたが、結局プロダクトマネージャーや開発者、情報システム部門の方々のリソース確保ができず、導入が進まず、そのまま放置されてしまうこともよくあります。SaaSなどのように、直接担当者導入支援を受け、活用し始めるわけではなく、ローコードを活用したシステム構築を行って初めて、最終的なエンドユーザーが活用できる環境が整うことになります。 この拡張性の高さから、実際にユーザー価値を実現するまでのフローが長く、導入自体は決めたものの、その後活用自体がなかなかされないまま放置されることがあるのです。 ローコード導入における課題 ローコード自体の制約条件として以下4つの問題が起きえます。 1つ目はローコードの導入に当たり、情報システム部門とビジネス部門の連携の難しさがあります。ローコードは導入主体である情報システム部門と、利用主体であるビジネス部門が異なり、ローコードを導入する上で、両者の連携は不可欠です。 導入へのコミットメントはビジネス部門が強く、ローコードへの理解は情報システム部門が長けていることが多いでしょう。そのため、スタンスやナレッジにギャップがあり、かなり丁寧にコミュニケーションを行い、導入の目的と実現することをお互い共有し合わない限り、ローコードを導入したが、結局使われないという自体になってしまいがちです。 2つ目は、ローコードの拡張性の高さから、どこまでローコードで実現できるのか一見わかりにくかったり、そもそも使い方がわからないケースがあります。このような問題に対して、「ローコード導入におけるオーナーシップ」の「ローコードの導入サポート」で記載した通り、ローコードの提供会社は発信量や質を上げ、サポートを行っています。単純なSaaSとは差分があるので、しっかりとサポートを活用して行くべきでしょう。 3つ目は当初の目的を元にローコードで実現しましたが、その後社内の業務フローや体制の変化などに伴い、拡張が必要になるケースの方が一般的です。このような状況下において改修がローコードが提供している機能に制限されることがあります。現状のニーズだけでなく、今後起こりうる機能拡張も踏まえて、ローコードの選定を行っていく必要があります。 4つ目はローコードというプラットフォームの上でシステムを構築を起こっている関係から、パフォーマンスの担保が難しくなることがあります。これは構造上ある程度仕方ない論点であり、何かしらのプラットフォームに乗っかる以上、プラットフォームになにか起きた際は一蓮托生になってしまいます。もちろん、ローコードの活用の仕方などを確認した上で、ローコード上の問題なのか、ローコードを活用して開発されたシステムの問題なのかはできるだけ分けて、原因究明を行い、対策を講じるのが一般的です。 まとめ ローコードは一見様々なユースケースに対応できる夢のようなプロダクトに見えがちです。しかし、ローコードを実際導入しようとすると、情報システム部門とビジネス部門の連携やローコードの拡張性の高さから機能要件が把握しにくいことなどがハードルになります。 まずは、何を成し遂げたいのか目的を明確化した上で、ローコードを選定し、どのように活用し、システムを構築するのか決めていくことが重要です。最終的にビジネス部門が活用するまで、情報システム部門としっかり連携し、当初掲げた目的とソリューションに齟齬がないように導入を進めて行く必要があるのです。 --- # AI時代のプラットフォーマー:Hugging Faceの成長戦略 URL: /insights/71 title: "AI時代のプラットフォーマー:Hugging Faceの成長戦略" summary: "本記事では、Hugging Faceのこれまでの歩み、成長戦略、そして今後の展望について探ります。" date: 2024-08-27 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/platform.mdx" glossary: "glossary/ai.mdx" "glossary/llm.mdx" "glossary/generative-ai.mdx" cover: "/images/insights/71/cover.png" 人工知能(AI)技術が急速な発展を見せる昨今において、その中心的な存在として注目を集めているのがHugging Faceです。絵文字のロゴが印象的なHugging Faceは、世界中の開発者や企業から高い支持を得ており、生成AI時代における新たなプラットフォーマーとして、AIや機械学習の民主化とオープンソースソフトウェアを体現する存在でもあります。 本記事では、Hugging Faceのこれまでの歩み、成長に向けたユニークな戦略、そして今後の展望について探ります。 目指すのは「機械学習のGitHub」 Hugging FaceはClément Delangue、Julien Chaumond、Thomas Wolfの3名によって2016年に創業されました。創業初期にはAIを活用したティーンエイジャー向けのAIチャットボットアプリの開発を行っていましたが、その過程で自然言語処理(NLP)のためのオープンソースライブラリを無料公開したところ、開発者から高い支持を得たため、AIコードリポジトリ・モデル・データセットなど、多くのAI開発ツールを提供する開発プラットフォームの提供へピボットを行いました。CEOのDelangue氏は当時を「自分たちでも驚くほど爆発的な支持を獲得した」と振り返っています。 Hugging Faceは「機械学習の民主化」というミッションのもと、AIの力を解放し、誰もが簡単にAIにアクセスして活用できるようにする世界を目指しています。Hugging Faceは、AIの進歩が特定の企業や研究機関だけでなく、世界中の開発者やリサーチャーによって推進されるべきだと考えているのです。 Hugging Faceの中核サービスはAIモデルとデータセットであり、このプラットフォームでは、世界中の開発者や研究者が自作のモデルやデータセットを公開し、他のユーザーがそれらを自由に利用・改良できる環境を提供しています。特に自然言語処理の分野で強みを持ち、BERT、GPT、T5などの最先端のLLMモデルが利用可能です。 Hugging Faceとコミュニティによって提供されているオープンソースのライブラリ「Transformers」は、最新のNLPモデルを簡単に実装できるツールとして広く利用されており、PyTorchやTensorFlowなどの主要な機械学習フレームワークとシームレスに連携が可能です。さらに、モデルのトレーニングや推論を行うためのクラウドインフラストラクチャも提供しており、これにより、個人や小規模な開発チームでも大規模なAIプロジェクトに取り組むことが可能になりました。 Hugging Faceは1万以上の顧客、プラットフォーム上には5万以上の組織が存在し、モデルハブは100万以上のリポジトリをホストしていると言われます。同社はAI・機械学習の領域において、ソフトウェア開発のプラットフォーム「GitHub」のような圧倒的ポジションを築くことを目指しています。 技術的/戦略的な優位性がもたらす価値 Hugging Faceが世界中の開発者から圧倒的な支持を得ている理由は、その技術的優位性にあります。 まず、Transformersライブラリの使いやすさと柔軟性が挙げられます。このライブラリは、複雑なAIモデルの実装を数行のコードで可能にし、開発者の生産性を大幅に向上させることに寄与します。また、モデルのバージョン管理や再現性の確保が容易なことも大きな強みです。Gitベースのバージョン管理システムを採用することで、モデルの進化を追跡し、必要に応じて過去のバージョンに戻すことが可能となっています。 Hugging Faceの優位性は、単一の技術やサービスにとどまりません。むしろ、オープンソースコミュニティからの強力なサポート、最新の研究成果の迅速な実装、そして使いやすいAPIとツールの提供という、複数の要素が相乗効果を生み出しています。Hugging Faceが最新のAI研究動向をキャッチアップし、新しいモデルやアーキテクチャをいち早くプラットフォームに取り入れることで、ユーザーは常に最先端の技術にアクセスが可能となります。 Hugging Faceのアプローチと著しい成長は、投資家からも非常に高い評価を受けています。2023年8月には、Salesforce Venturesをリード投資家として2億3500万ドル(1ドル150円換算で約350億円)のシリーズDラウンドを行い、バリューションは45億ドル(約6,750億円)を超えたと報じられました。この資金調達には、Alphabet (Google)、Amazon、Nvidiaなどのテクノロジー業界のメガプレイヤーが複数参加しており、その注目度の高さを示しています。 この45億ドルのバリュエーションは、Hugging Faceの売上高の約150倍相当にも上ると報じられており、非常に高い水準にあります。足元の多くの上場SaaS企業のPSRが5〜10倍程度であることを鑑みると、Hugging Faceの将来性と成長期待は相当高いものがあります。また他の未上場AIスタートアップと比較しても、その評価は高く、例えば同じくAI分野で注目を集めるPerplexityの直近評価額が約25〜30億ドルであることを踏まえると、Hugging Faceの評価の高さが分かります。 なお投資家には、前述の大手テクノロジー企業に加えて、Sequoia Capital、Coatue Management、Lux Capitalなどの著名VCも名を連ねています。彼らがHugging Faceに投資する理由も足元の収益性だけでなく、機械学習の民主化という大きなビジョンへの共感と、それを実現する技術力と戦略があるためと推察されます。 Hugging Faceの成長戦略 Hugging Faceの成長戦略の根幹は、開発者コミュニティの支持獲得にあります。短期的な売上高よりも開発者からの根強い支持を得ることに注力するこのアプローチは、短期的には収益化を遅らせるものの、中長期的には強力なネットワーク効果を生み出し、持続可能な成長をもたらすことが期待されます。 加えて、オープンソースへの全面的なコミットメントは、Hugging Faceの重要な柱になっています。自社開発のツールやライブラリをオープンソースとして広く公開することで、世界中の開発者や研究者が自由に利用や改良できる環境を整えています。この結果、コミュニティ主導でイノベーションが促進され、プラットフォームとしての価値が継続的に向上する好循環を作ることに成功しています。 一方で、GAFAMを含む大手テクノロジー企業との戦略的なパートナーシップも見逃せません。例えば、Microsoftとの提携により、Azure上でHugging Faceのモデルを簡単にデプロイすることが可能となっています。またAmazonとは、AWS Marketplaceを通じてHugging Faceのサービスが提供されるようになりました。 こうしたクラウドプロバイダーとのパートナーシップは、Hugging Faceに幅広い顧客基盤へのアクセスを提供すると同時に、大手企業の持つ膨大なリソースやインフラストラクチャを活用する機会をもたらしています。一方で、こうしたテクノロジー企業にとっても、Hugging Faceが持つAI技術や活発なデベロッパーコミュニティへのアクセスは大変魅力的なものです。 Hugging Faceは売上と利益の成長を加速させるためのビジネスモデルを構築しており、企業向けに一部有償サービスを提供する一方で、個人開発者や小規模チーム向けを中心に多くの機能を無料で提供し続けています。このバランスのとれたアプローチにより、コミュニティと企業の成長を両立させています。 また、Hugging FaceはAI教育にも力を入れており、Webサイト上でAIに関する充実したドキュメンテーションやチュートリアル、学習コースを無償提供することで、新たな開発者の参加を促し、コミュニティの拡大と多様化を図っています。これは、中長期的にはAI人材の育成にも貢献し、業界全体の発展にも寄与する取り組みと言えるでしょう。 広がる領域と今後の展望 Hugging Faceの今後の戦略は、AIの利用領域をさらに拡大し、より多くの産業・分野・製品でAIの力を活用できるようにすることにあります。その一環として、2023年5月にはServiceNowと共同で、オープンソースのコード生成AIモデル「StarCoder」をリリースしました。このモデルは、80以上のプログラミング言語に対応し、コーディングタスクを支援する強力なツールとなっています。 また、Hugging Faceは生成AIの倫理的な開発と使用にも注力しています。AI技術の発展に伴い、プライバシーや公平性、透明性などの課題がクローズアップされていますが、Hugging Faceはこれらの問題に積極的に取り組んでいます。例えば、バイアスの少ないデータセットの作成や、AIモデルの判断プロセスを説明可能にする技術の開発などの取り組みに力を入れています。 さらに、マルチモーダルAIの開発にも注力しています。テキストだけでなく、画像や音声、動画などを統合的に理解し処理できるAIモデルの開発を進めており、これによりAIの応用範囲がさらに広がることが期待されています。 Hugging Faceは、機械学習の民主化というミッションをさらに推し進めるため、利便性の高いツールやプラットフォームの開発にも力を入れています。例えば、コーディングスキルがなくてもAIモデルを作成・トレーニング等できるノーコードソリューション(Hugging Face AutoTrain)の開発などが進められています。 まとめ Hugging Faceは、機械学習・AIの民主化とオープンソースソフトウェアの中心的な存在として、著しい成長を遂げています。そして、これまで見てきたように、その中心にあるのは、開発者コミュニティを中心に据えた戦略と、最先端のAI技術を誰もが使いやすい形で提供するというミッションです。 高い技術力と使いやすさを併せ持ったプラットフォーム、活発なコミュニティ、オープンソースへのコミットメント、大手企業との戦略的パートナーシップなど、Hugging Faceの強みと先行優位は多岐にわたります。これらの要素が生成AI活況の時代と相乗効果を生み出し、高い企業評価につながっています。 今後、Hugging FaceはマルチモーダルAIの開発、NVIDIAと提携して展開するスーパーコンピューティングなど、新たな領域にも積極的に進出していく方針を示しています。同時に既にAIエコシステムにおいて大きな存在であるからこそ、倫理的なAIの開発と使用にも注力し、技術の進歩と社会的責任のバランスを取りながら成長を続けることが期待されています。 Hugging Faceの成功は、コミュニティの支持とオープンソースいうアプローチがAI時代においても、引き続き重要であることを示しています。AI技術の発展と普及の中で、Hugging Faceが果たす役割は今後ますます大きくなっていくと共に、同社がAIの時代をどのように形作っていくのか、今後も注目していきたいと思います。 参考文献 What is Hugging Face? The AI Community's Open-Source Oasis Open-Sourcing the Future of AI AI開発に革命を起こすプラットフォームHugging Faceを生んだ起業家 Salesforce Leads Financing of AI Startup at More Than $4 Billion Valuation Hugging Face raises $235M from investors including Salesforce and Nvidia The AI 100: The most promising artificial intelligence startups of 2024 Perplexity is raising $250M+ at a $2.5B-$3B valuation for its AI search platform, sources say HuggingFace Statistics The Hugging Face Ecosystem Hugging Face and ServiceNow release a free code-generating model NVIDIAがHugging Faceと提携。AIモデルを選んでそのままNVIDIA DGXクラウドで学習可能に --- # 生成AIとGDPR: データプライバシーの新たな課題 URL: /insights/72 title: "生成AIとGDPR: データプライバシーの新たな課題" summary: "EUでは、GDPR(General Data Protection Regulation)が生成AIを扱う企業にとって重要な指針となっています。この記事では、生成AIサービスを提供する企業がGDPRにどのように対応すべきかを解説します" date: 2024-08-27 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/management.mdx" glossary: "glossary/generative-ai.mdx" "glossary/ai.mdx" cover: "/images/insights/72/cover\_gdpr.jpg" 生成AIの急速な発展は、ビジネスや公共セクターにおけるデジタル変革を劇的に加速させる可能性があります。この革新的な技術は、自然言語処理や画像生成など、さまざまな分野で新たな可能性を提示してくれました。しかし、同時にデータプライバシーと規制遵守という課題も浮き彫りにしています。特にEUでは、GDPR(General Data Protection Regulation)が生成AIを扱う企業にとって重要な指針となっています。この記事では、生成AIサービスを提供する企業がGDPRにどのように対応すべきかを解説します。 GDPRとは 2018年5月、欧州連合(EU)は個人データ保護を目的としたGDPR(EU一般データ保護規則)を施行しました。この規則は、デジタル時代におけるEU市民のプライバシー権を強化するために設計されており、EU内外を問わずEU市民のデータを扱うすべての企業に適用されます。GDPRは個人データの処理に関する厳格な基準を定めており、違反した場合には厳しい罰則が科される可能性があります。 GDPRにおける「個人データ」とは、特定の個人を直接または間接的に識別できる情報のことです。これには名前、識別番号、所在地データ、オンライン識別子(IPアドレスやクッキーIDなど)、クレジットカード情報、パスポート情報に加え、個人の身体的、心理的、経済的、文化的、社会的な特徴に関連する要素も含まれます。 GDPRでは、個人データをEEA(欧州経済領域)内からEEA域外の第三国に移転する場合、特定の法的要件を満たす必要があります。これは、データが域外に移転された場合でも、EEA内と同様の厳格なデータ保護を確保することを目的としています。 EEAは、EU加盟国に加え、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーを含む地域で、共通の市場を形成しています。この地域内では、GDPRに基づく統一されたデータ保護基準が適用されます。GDPRにおける「処理」とは、データの収集、保存、利用など、個人データに対して行われるすべての操作を指します。 EEA域外への個人データの移転に際しては、まず移転先が欧州委員会による「十分性認定」を受けているかどうかを確認します。十分性認定を受けた国では、EEA内と同等のデータ保護基準が維持されていると見なされ、特別な措置なしでデータ移転が可能です。 十分性認定を受けていない国へのデータ移転の場合は、適切な保護措置を講じる必要があります。これには標準契約条項(SCCs)や担保措置(BCRs)が含まれます。また、データ主体の同意がある場合や、特定の契約履行が必要な場合などには、例外的に移転が認められることもあります。 またGDPRでは、個人データの取り扱いに関わる立場として、データを有する「データ主体」に加え、「管理者」と「処理者」が定義されています。 管理者は、個人データの収集・使用方法を決定する主体です。つまり、データの処理目的や手段を決める責任者のことです。例えば、企業が顧客情報を収集してマーケティングに利用する場合、その企業が管理者となります。管理者には、GDPRに従ってデータを取り扱い、データ主体に対して透明性を保ち、必要な情報を提供する義務があります。 一方、処理者は管理者から委託を受けて個人データを処理する主体です。処理者は管理者の指示に従ってデータを扱いますが、そのデータの利用目的や処理方法を決定する権限は持ちません。例えば、企業が顧客データの処理を外部のクラウドサービスに委託する場合、そのクラウドサービス提供者が処理者になります。処理者は、管理者の指示に基づいてデータを処理し、その処理がGDPRに準拠していることを確保する責任があります。 このように、管理者と処理者はそれぞれ異なる役割を担い、データ保護に関して異なる責任を負っています。両者はGDPRの遵守において重要な役割を果たしており、データ主体の権利保護を確実にするために協力して取り組む必要があります。 GDPRの基本原則 GDPRには、個人データの処理に関していくつかの基本原則が設定されています。以下はその主要な原則であり、情報の管理者はこれらの遵守とその説明責任が求められます。 | 原則 | 概要 | | ---------------------- | ---------------------------------------------------------------- | | 合法性、公正性、透明性 | 合法的、公正、透明なデータ収集・処理。明確な説明義務 | | 目的限定 | 特定された合法的目的のみでの使用。目的外利用の禁止 | | データ最小化 | 必要最小限のデータ収集・処理。目的に応じた適切性 | | 正確性 | データの正確性と最新性の維持。不正確データの速やかな修正・削除 | | 保存制限 | 必要期間内でのデータ保持。目的達成後の削除・匿名化 | | 完全性と機密性 | 適切なセキュリティ対策によるデータ保護。不正処理・損失からの防御 | データ主体の権利 GDPRはデータ主体がデータ管理者に対して行使できるいくつかの権利を保障しています。これらの権利は、個人のプライバシーと自己決定権を強化するために不可欠です。生成AIを利用する企業も、これらの権利を尊重し、適切に対応する体制を整える必要があります。 | 権利 | 概要 | | ------------------------ | -------------------------------------------------------------------------- | | 情報の通知を受ける権利 | データ主体への個人データの収集・処理の用途に関する説明  | | アクセス権 | 自身のデータ処理に関する情報取得。処理目的・カテゴリー・期間等の開示要求 | | 修正権 | 不正確なデータの訂正要求。迅速な対応義務 | | 削除権(忘れられる権利) | 特定条件下でのデータ削除要求。不要データ・同意撤回時の適用 | | 処理の制限権 | 特定条件下でのデータ処理制限要求。正確性争議・違法処理時の適用 | | データポータビリティ権 | 構造化・一般的形式でのデータ受取・移転権。デジタルサービスでの重要性 | | 異議権 | 特定状況下でのデータ処理への異議申立。正当利益・マーケティング利用時の適用 | | 自動化処理への異議権 | プロファイリングを含む自動化されたデータ処理への異議申立 | GDPRに違反した場合、企業は厳しい罰則を受ける可能性があります。罰金は違反の重大性に応じて決定され、最大で年間売上高の4%または2,000万ユーロのいずれか高い金額が科される可能性があります。このため、企業はGDPRの要件を厳守し、違反を避けるための包括的なコンプライアンス体制を確立する必要があります。 生成AIと個人データ 生成AIは、大量のデータを学習し、テキストや画像、音声などを生成する技術です。この過程で、個人データの利用が避けられないことがあります。例えば、ユーザーが入力したテキストに個人情報が含まれている場合、そのデータがAIモデルの訓練に使用される可能性があります。 生成AIはディープラーニング技術を基盤としており、大量のデータセットを用いてモデルを訓練します。この訓練プロセスにおいて、データの質と量がモデルの性能に直接影響します。しかし、これらのデータセットには個人データが含まれている場合があり、GDPRの規制を遵守するためには特に注意が必要です。 GDPRでは、データ収集には明確な目的が必要です。生成AIを活用する企業は、データ収集のプロセスにおいてGDPRに準拠し、データ主体に対して明確な説明を行う義務があります。また、データ処理の正当な理由が必要です。 生成AIのデータ処理において、データの匿名化はプライバシー保護の重要な手段です。しかし、完全な匿名化は難しく、データの一部から個人が特定されるリスクが残る場合もあります。そのため、識別可能性に関するリスク評価が重要です。 生成AIとGDPRのコンプライアンス 生成AIを提供する企業にとって、GDPRに準拠することはビジネスの信頼性を維持するために不可欠です。GDPRは、データ主体に対して処理の透明性を提供することを義務付けています。生成AIを活用する企業は、ユーザーに対してデータがどのように処理されるかを明確に説明する必要があります。これには、プライバシーポリシーの作成やデータ処理に関する情報提供が含まれます。 GDPRにおけるデータ処理の正当性は、データ収集や処理が合法的に行われるための基盤です。生成AIを扱う企業は、ユーザーの同意、契約の履行、または正当な利益に基づいてデータ処理を行う必要があります。これには、データ処理の目的を明確にし、その目的に必要な最小限のデータのみを扱うことが求められます。 GDPRはデータ主体に多くの権利を保障しています。生成AIを活用する企業は、これらの権利を尊重し、適切に対応する体制を整える必要があります。具体的には、データのアクセス権、修正権、削除権、データポータビリティの権利が含まれます。 生成AIの開発や運用には、しばしばサードパーティが関与します。GDPRは、データ処理者としての責任を明確に定めており、企業はサードパーティとの契約において、GDPRに準拠したデータ処理を保証するための措置を講じる必要があります。 具体的な事例と教訓 2024年初頭、イタリアのデータ保護当局であるガランテ(Garante)は、OpenAIの「ChatGPT」がGDPRに違反していると指摘しました。Garanteは、ChatGPTがGDPRの第5条、第6条、第8条、第13条、第25条に違反している可能性があるとし、特にAIモデル訓練のための個人データの処理に適切な法的根拠がないことを問題視しています。この問題の背景には、ChatGPTが膨大な量のデータをインターネットから収集し、個人のデータを含む情報を利用して開発されたことがあります。違反が確認された場合、OpenAIは業務の変更を余儀なくされるか、EU加盟国の一部でサービスを停止することを強制される可能性があります。 GDPR施行以来、いくつかの大手テクノロジー企業が巨額の罰金を科された実績があります。これらの事例は、生成AIを提供する企業にとっても重要な教訓となります。例えば、Metaは2024年にEU域外にユーザーデータを不適切に移転したことにより12億ユーロの罰金を科されました。GDPRは、EU域外へのデータ移転に厳格な規制を設けており、企業は適切なデータ保護措置を講じる必要があります。また、2021年にはAmazonがプライバシーに関する規制違反で7億4600万ユーロの罰金を科されました。このケースは、データ処理においてユーザーの同意を得ることの重要性を強調しています。 一方で、生成AIを提供する企業の中には、GDPRに準拠するために積極的な取り組みを行っている例もあります。マイクロソフトは、生成AIを含むAIシステムの開発において「プライバシーバイデザイン」というアプローチを採用しています。プライバシーバイデザインでは、システムの設計段階からプライバシー保護を組み込むことを重視しており、データ処理の全過程でプライバシーリスクが最小限に抑えられるよう設計されています。 Googleは、データ処理において高度な匿名化技術を採用しており、個人データを特定不可能な形に変換することでプライバシー保護に取り組んでいます。この技術は、生成AIのトレーニングやデータ分析において、個人を特定できないデータを利用するために不可欠です。具体的には、データの識別可能性を排除するために、IPアドレスやクッキーIDなどの個人識別情報を削除または変換し、元の個人情報に遡ることができないようにしています。 これらの事例から、生成AIを提供する企業がGDPRにどのように対応すべきかの具体的な指針を学ぶことができます。透明性の確保、ユーザー権利の保護、データ移転の適正化、そしてプライバシーバイデザイン等の対策の採用がGDPR遵守において重要になるでしょう。 今後の展望とリスク 生成AIとGDPRの関係は、今後も進化し続けると考えられます。EUは、AI技術の安全性と倫理的な利用を確保するために、AI法(AI Act)の導入を進めています。AI Actは、EUが提案している新しい法案で、AI技術の開発と利用に関する包括的な規制を目指しています。この法案は、AIシステムが引き起こしうるリスクを管理し、ユーザーの基本的な権利や安全性を保護することを目的としています。 AI Actは、GDPRと共に、AI技術の規制を補完するものです。GDPRが個人データの保護に焦点を当てているのに対し、AI Actは、AIシステムがもたらす広範なリスクに対応するための枠組みを提供します。生成AIを開発・提供する企業は、GDPRに加え、AI Actの要件も満たす必要が出てくるため、より厳格なコンプライアンス体制が求められます。 たとえば、高リスクと分類される生成AIシステムには、透明性の確保や説明可能性、データの公正な使用を担保するための追加措置が求められるでしょう。これにより、生成AIの安全で倫理的な利用が推進される一方で、企業はこれらの要件をどのように満たすかを慎重に計画する必要があります。 また、ディープラーニング技術の進展により、生成AIの性能が向上する一方で、プライバシーリスクも高まっています。特にデータの再識別リスクやバイアスの問題が深刻化しており、これらの課題に対処するためには、継続的な技術革新と規制の調和が求められます。 GDPRはEU域内での規制ですが、生成AIのグローバルな展開に伴い、他国のデータ保護規制との調整が必要になります。特に、アメリカやアジア諸国の規制との整合性を図ることが、今後の重要な課題となるでしょう。 まとめ 生成AIは、データ処理に革命をもたらす画期的な技術として注目を集めています。しかし、その発展と同時に、GDPRに代表されるプライバシー保護法との調和が不可欠となっています。企業は、この新技術を活用しつつ、個人情報を適切に保護するという難しい課題に直面しています。 この課題に対応するため、企業はGDPRに準拠した明確な戦略を立てる必要があります。その戦略の核心は、技術革新とプライバシー保護のバランスを取ることにあります。具体的には、データ処理の透明性を高め、必要最小限のデータのみを扱うデータ最小化を実践し、ユーザーの権利を尊重することが求められます。さらに、適切なセキュリティ対策を講じ、特にリスクの高い処理活動に関しては、データ保護影響評価を実施することも重要です。 生成AIとGDPRの共存は、技術と法律の両面から継続的に取り組むべき課題です。マイクロソフトが実践しているプライバシーバイデザインのアプローチは、この課題への一つの解決策を示しています。システムの設計段階からプライバシー保護を組み込むこの方法は、GDPRへの準拠をより効率的に達成する可能性を秘めています。 企業は、イノベーションを推進しながらも、個人の権利とプライバシーを守るという、一見相反する目標のバランスを取ることが求められます。この分野は急速に進化しているため、最新の動向を常に把握し、必要に応じて専門家のアドバイスを求めることが重要です。 生成AIがもたらす潜在的な利益を最大限に活用しつつ、個人のプライバシーを守る責任ある技術革新が実現することが期待されます。そのためには、企業、法律家、技術者、そして利用者が協力し、継続的な対話と改善を重ねていく必要があるでしょう。 参考文献 Generative AI and the EUDPR GDPR and Generative AI What is GDPR, the EU's new data protection law? OpenAI's hunger for data is coming back to bite it ChatGPT is violating Europe's privacy laws, Italian DPA tells OpenAI ChatGPT's 'hallucination' problem hit with another privacy complaint in EU The 10 largest GDPR fines on Big Tech The impact of the General Data Protection Regulation (GDPR) on artificial intelligence The AI Act's debiasing exception to the GDPR Generative AI: The Data Protection Implications AI Act Eight GDPR Questions when Adopting Generative AI GDPRなど欧州のデータ保護関連の法規制はAIに及ぶのか 生成AIのプライバシー侵害リスクと規制 免責事項 本記事は、GDPRに関する一般的な情報提供を目的としており、法的助言を構成するものではありません。記事内の情報は、執筆時点での一般的な理解に基づいていますが、法律や状況は常に変化する可能性があります。具体的な法的問題や疑問については、必ず資格を持つ弁護士にご相談ください。 --- # HubSpot:インバウンドマーケティングとCRMプラットフォームが描く未来 URL: /insights/73 title: "HubSpot:インバウンドマーケティングとCRMプラットフォームが描く未来" summary: "本記事では、HubSpotの成長を実現したインバウンドマーケティングやマルチプロダクトを中心とするGo-to-Market(GTM)戦略を紹介します。" date: 2024-08-30 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/marketing.mdx" cover: "/images/insights/73/cover.png" 企業向けの顧客関係管理(CRM)やマーケティングオートメーション(MA)の領域で確固たる地位を築いているのが米国のHubSpot, Inc.(以下、HubSpot)です。 HubSpotはマーケティング、営業、カスタマーサービスなどの事業活動を管理するソフトウェア・プラットフォームを提供しており、時価総額は約3.9兆円(1ドル150円で換算)にも上る大手B2B SaaS企業です。 本記事では、HubSpotの成長を実現したインバウンドマーケティングやCRMを中心としたマルチプロダクト戦略によるGo-to-Market(GTM)戦略を紹介します。 HubSpotの歩み HubSpotは企業のマーケティング、営業、カスタマーサービスなどの活動やコンテンツを管理するソフトウェアを提供しており、同社が提供するCRM、MA、SFAなどのプロダクトは、特にSMB企業を中心として高い人気を誇ります。 HubSpotは2006年、MITの同窓生であるBrian Halligan氏とDharmesh Shah氏によって米国ボストンで創業されました。2人は消費者自身が主導権を持って情報を探すという当時の新しい購買行動に着目し、マーケティング担当者にだけ焦点を当てマーケティングを受け取る側を無視した旧来のアウトバウンドマーケティング(例:大量のメール、コールドコール、広告)ではないインバウンドマーケティングという新しいマーケティングカテゴリーをつくり、これを支援するためのソフトウェアを開発しました。 後段で詳述するようにHubSpotの製品群は、CRMやMAを中心に、営業支援(SFA)、カスタマーサポート支援、オペレーション、B2Bコマースなど多岐にわたり、企業の成長を支援する様々なソリューションを提供しています。創業後はMAなどのマーケティングソフトウェアで成長を果たし、2014年にニューヨーク証券取引所への上場を果たしました。上場前後でCRMやSFA等のプロダクトリリースによるプラットフォーム化と海外展開によって成長を加速し、現在では全世界で約228,000社の顧客に利用されるまでの規模に成長を遂げました。 GTMを実現した4つのピース 1\. SMBフォーカス HubSpotの特徴がSMB事業者にフォーカスしたプロダクトやGTM戦略です。創業当初から、HubSpotはリソースの限られた中小企業がマーケティングと営業活動を効率化するためのツールを提供してきました。特に後述するインバウンドマーケティングは、広告費や人材の限られた中小企業にとって魅力的な選択肢となり、顧客の自発的な購買行動を促すための強力な手段として機能しました。 HubSpotは、マーケティングオートメーションやCRMツールなど、必要な機能を一つのプラットフォームに集約し、使いやすいインターフェースを提供することで、特に中堅・中小企業が自社のリソースを最大限に活用できるようサポートしています。また、無料ツールやフリーミアムモデルの提供を通じて、企業がリスクを抑えつつ製品を試用し、その価値を理解する機会を提供しました。これにより、HubSpotはSMB市場での信頼とブランドロイヤリティを築くことができました。 さらに、HubSpotはSMB向けに特化した販売チームとサポート体制を整え、中堅中小企業が直面する特有の課題に対応しています。このような包括的なアプローチにより、HubSpotはSMB市場での存在感を高め、持続的な成長を実現しています。 2\. インバウンドマーケティング HubSpotが世界的に注目を集めるきっかけとなったのが、先に述べたインバウンドマーケティングという新しいマーケティング概念/手法の提唱です。 従来のマーケティングが広告や電話営業など企業からの一方的なメッセージ配信に依存していたのに対し、インバウンドマーケティングは、消費者自身が能動的に情報を探し出し、興味を持つことで購買に繋がるという考え方に基づいています。 インバウンドマーケティングのプロセスは、「Attract(惹き付ける)」「Engage(関係を築く)」「Delight(満足させる)」の3つのフェーズに分かれます。最初の「Attract」フェーズでは、ブログやSNS、SEO対策を通じて、見込み顧客を自社サイトに誘導します。ここで重要なのは、見込み顧客にとって価値のあるコンテンツを提供し、自発的に訪問してもらうことです。この段階での成功は、後のフェーズにおけるエンゲージメントやリテンションに大きな影響を与えます。 次に「Engage」フェーズでは、Eメールマーケティングやチャットボット、CRMツールを活用し、見込み顧客との関係を築いていきます。HubSpotのCRM機能は、顧客の行動データを蓄積・分析し、個別にパーソナライズされたアプローチを可能にします。これにより、顧客は企業との対話に対する価値を感じ、ブランドロイヤリティを高めることができます。 最後に「Delight」フェーズでは、顧客が製品やサービスに満足し、さらにはファンとなるようにすることが目指されます。このフェーズでの成功は、リピーターの獲得やポジティブな口コミによる新規顧客の獲得につながります。HubSpotのマーケティングオートメーションツールは、このフェーズでの顧客体験を最適化するために、適切なタイミングで適切なコンテンツを提供し、顧客の満足度を高めることに貢献します。 このように、インバウンドマーケティングは、消費者が情報を主体的に探し出し、価値を感じることで購買行動に繋がる現代の消費行動により則したアプローチと言えるでしょう。HubSpotは、当時は一般的でなかった本手法を理論化すると共に、これを実践するためのソフトウェアを提供することで、特にマーケティングに関する十分な人材やノウハウを持たないSMB企業が効果的かつ効率的にマーケティング活動を行うことを支援しました。 もちろんインバウンドマーケティングの力をHubSpot自身も実践しており、同社の集客、リード、受注という一連のファネル上でも豊富なブログ記事や事例紹介をはじめとするコンテンツやデジタルマーケティングが大きく貢献しています。実際、HubSpotの基本プラン(Starter Plan)のうち約85%は、人による営業経由ではなくオンライン経由(セルフサーブ)で受注に至っており、効率的な顧客獲得を実現していることが伺えます。 3\. CRMプラットフォームとマルチプロダクト HubSpotの成長を支える重要な柱がマルチプロダクト戦略です。 創業後しばらくはマーケティングを支援するシングルプロダクト企業でしたが、顧客のニーズに応えるため、着実に製品ラインを拡充してきました。これによって、HubSpotのプロダクトはマーケティングツールを提供するベンダーから、営業やカスタマーサクセスをはじめとする企業のビジネス活動をCRM上で一元管理するビジネスプラットフォームへと進化を遂げました。 HubSpotのプロダクトポートフォリオは、以下のように多岐にわたります。 Marketing Hub:マーケティング活動を支援するためのツール。SEO、ブログ、ソーシャルメディア管理、メールマーケティング等の一元管理や自動化とアナリティクスを可能にし、顧客の集客からコンバージョンまでを支援 Sales Hub:営業支援ツール。CRMを中心に、営業チームの生産性向上を目指した機能が多数搭載されており、リードの追跡やパイプライン管理が可能 Service Hub:カスタマーサービスの効率化を図るツール。顧客サポートチケットの管理、ナレッジベースの構築、カスタマーフィードバックの収集など、顧客満足度を高めるための機能が充実 CMS Hub:コンテンツマーケティングの作成や管理を支援するツール。直感的なインターフェースによってノーコードでのウェブサイト構築を実現。SEO対策も簡単に行えるため、マーケティングと連携したサイト運営が可能 Operations Hub:データ同期や自動化をサポートするツール。異なるシステム間のデータを統合し、業務プロセスを効率化 Commerce Hub:B2B取引の支援ツール。決済リンク、請求書、見積り、サブスクリプション管理、自動化、収益レポートなどの充実したコマース機能を搭載 各プロダクトはそれぞれ独立した機能を持ちながらも、HubSpotのエコシステム内でシームレスに連携するよう設計されています。これにより、企業は単一のプラットフォーム上で幅広い業務を管理できるため、業務効率が向上し、データの整合性を保つことできます。 CRMを中心としたマルチプロダクト戦略と実行により、HubSpotはより広範な企業や部署のニーズに応えられるようになり、企業の成長ステージや業界を問わず柔軟に対応できるようになりました。小規模なスタートアップからエンタープライズまで、異なる規模の企業がそれぞれのニーズに応じて製品を選択し、組み合わせて利用することができます。HubSpotは顧客のライフサイクル全体にわたって価値を提供できることで、新規顧客の獲得と既存顧客へのクロスセルを通じた顧客当たりの年間契約額(ACV)の増加やリテンション率の向上など重要な役割を果たしています。 このように、CRMプラットフォームと複数のプロダクト群は、HubSpotがB2B市場でのリーダーシップを維持しつつ、さらなる成長を実現するための鍵となっています。 4\. フリーミアム HubSpotは価格戦略としてフリーミアムプランを採用しています。フリーミアムを採用することで、ユーザーは無料で基本的な機能を試すことができるため、顧客層を広げ、顧客獲得のハードルを下げる効果があります。特にSMB市場においては、限られたリソースでマーケティングや営業活動を行う企業が多いため、基本的な機能を使うことができるHubSpotの製品は大きな魅力となっています。 HubSpotはフリーミアムモデルを通じて、幅広い企業に自社製品の価値を直接体験してもらうことができ、顧客の製品への信頼感やスティッキネスを高めることが可能です。無料で基本的な機能を提供しながら、顧客のビジネスの成長に伴って必要となる高度な機能や追加のサポートが必要になると、自然と有料プランへのアップグレードが促されます。このようなアップセルの仕組みにより、HubSpotは顧客の成長ステージ全体を通じて収益を最大化することができるのです。 また、フリーミアムは顧客獲得コスト(CAC)の抑制にも寄与しています。無料版から有料版への移行によって、HubSpotはマーケティングや営業にかかる費用を最適化し、効率的な成長を実現していますす。この戦略により、HubSpotは広範な顧客基盤を築くことに成功しました。 まとめと今後の展望 HubSpotのGTM戦略は、同社の財務指標にも顕著に表れています。 HubSpotの直近12ヶ月売上高は24億ドルに達し、YoY+23%というこの規模でも高い成長率を維持しており、市場におけるリーダーシップをさらに強固なものにしています。顧客数は順調に成長しており顧客の離脱も少なく、Gross Revenue Retention(GRR)は安定傾向にあります。一方で売上高は顧客数の増加率(YoY+23%)と近い水準にあり、Net Revenue Retention(NRR)は100%を少し超える水準にあるため、不透明なマクロ環境によってSMB企業中心の顧客が追加のソフトウェア投資に慎重な姿勢を見せていることを示唆しています。ACVや顧客当たり平均サブスクリプション売上(Average Subscription Revenue per Customer)は、顧客がより上位のプランや追加プロダクトを購入することで上昇しますが、これも大きな上昇トレンドは見られていません。 HubSpotのCACは、インバウンドマーケティングやフリーミアムによって低い水準に抑えられているものと推察されます。それでも売上高に占めるS&M費用は約40〜45%と高い水準にあり、どこかのタイミングで低減が必要になるかもしれません。実際にHubSpotはS&M比率を長期的には30〜35%に引き下げていく目標値を示しています。 HubSpotは、NRRやACVを向上させるための戦略を着々と進めています。その1つがエンタープライズ向けの強化です。これまで見てきたように同社はSMB市場を主要な顧客としてきましたが、最近はより規模の大きい企業向けの製品やサービスラインナップを強化しています。また自社での営業だけではなく、パートナー企業と連携したエンタープライズ導入を戦略的に進めており、エンタープライズ向けの機能拡充やクロスセルを促進することで、新たな収益源を獲得する意図がありそうです。 また、HubSpotはAI機能の搭載にも注力しており、AIによるWebサイト作成、コピーライティング、SNS投稿生成などを早速プロダクトに取り入れています。2023年に行われたB2BデータプロバイダーのClearbitの買収は、同社が保有する企業の連絡先やアカウント等の豊富なデータを活用して、HubSpotのAIプラットフォームの強化を目的としたものと報じられています。Clearbitの買収による精度の高いターゲティングやパーソナライゼーションの提供を通じて、HubSpotの利用顧客のマーケティングや営業活動の効果と効率を向上させることが期待されています。 HubSpotは顧客を惹きつけてやまないプロダクトとマーケティングによって力強く成長し、CRMを中心としたB2Bソフトウェアの領域で確固たる地位を築きました。今後のさらなるエンタープライズ展開や進化を続けるAIを通じて、HubSpotはさらなる成長を目指しています。 本記事では、HubSpotの成長エンジンとなったGTM戦略について紹介しました。本記事が皆様の事業の立ち上げやGTMを検討する際の一助となれば幸いです。 参考文献 HubSpot Customer Platform - Grow better with HubSpot What is inbound marketing? Get Started With HubSpot HubSpot wants to be Salesforce.com for small business Benchmarking Hubspot's S-1 - How 7 Key SaaS Metrics Stack Up Staying in the Neighborhood How HubSpot Grew a Billion Dollar B2B Growth Engine 5 Interesting Learnings from HubSpot at $2.4 Billion in ARR Hubspot Quarterly Investor Presentation Q2'24 HubSpot 2023 Analyst Day HubSpot Quarterly Results HubSpot picks up B2B data provider Clearbit to enhance its AI platform --- # Zapier:独自のコンテンツマーケティングが築いた自動化プラットフォーム URL: /insights/74 title: "Zapier:独自のコンテンツマーケティングが築いた自動化プラットフォーム" summary: "Zapierの成功の背景には、彼らが創業初期から注力し続けた独自のコンテンツマーケティングの存在がありました。本記事では、Zapierの成長の原動力となったコンテンツマーケティングを紹介します。" date: 2024-09-13 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/marketing.mdx" cover: "/images/insights/74/cover.png" Zapierは2011年に設立され、7,000以上のビジネス・アプリケーション間の自動化を可能とするプラットフォームを提供するスタートアップです。ユーザーはZapierを利用することでタスクの自動化をはじめとしたビジネス活動や業務の効率化が可能となり、またノーコードでワークフローを生成・自動化できるため、同社のプロダクトはプロシューマーやSMBを中心に高い評価を得ています。 API時代のニーズに応えたプロダクトによってZapierは成長を遂げ、ユーザー数は300万人、ARRは2.3億ドル(約350億円:1ドル150円換算)にまで規模を拡大しました。2014年以降は毎期黒字を継続し、実質的にブートストラップ(資金調達はシードラウンドでの130万ドルのみ)で成長を続ける稀有なスタートアップであり、直近のセカンダリー取引では50億ドル(約7,500億円:1ドル150円換算)という高いバリュエーションで評価されました。 そして、こうした成功の背景には、彼らが創業初期から注力し続けた独自のコンテンツマーケティングの存在がありました。本記事では、Zapierの成長の原動力となったコンテンツマーケティングを紹介します。 戦略的なSEO活用 Zapierのグロースエンジンとなったのは、SEO(検索エンジン最適化)を活用した効果的かつ効率的なユーザー獲得戦略です。Zapierは、ユーザーが検索する特定のニーズに対して、的確で実用的なコンテンツを提供することに注力しました。例えば、「SalesforceとGmailを連携させる方法」や「SlackとGoogle Sheetsの自動化」といった具体的なユーザーの課題に対する解決策を提供する記事やチュートリアルを多く作成しました。 こうしたコンテンツは、特定の検索キーワードを狙い撃ちし、検索エンジンで上位に表示されるように最適化されています。これにより、ユーザーが検索エンジンで関連するキーワードを検索した際に、Zapierのコンテンツが上位に表示されるため、自然検索経由で多くのトラフィックを獲得しました。特に自社が提供する「自動化ツール」関連のキーワードでZapierが第一想起を獲得したことは、Zapierのビジネスとマーケティングにおいて非常に強力な追い風となりました。 また、ZapierはAPIが盛り上がりを見せる時代において、万能な「Switchboard」としてのポジションを早期に確立することに成功しました。利用者が様々なSaaSツールと連携する場合に開発やその後のメンテナンスに頭を悩ませることなく、Zapierとだけ連携すれば済む、というメッセージは強力なGTMフックとなりました。Zapierを利用することで企業は自社のコアとなる業務と成長に注力できるようになりました。こうした巧みなポジショニングによって、Zapierは市場での存在感を増すことに成功したのです。 スケーラブルなコンテンツ作成 Zapierは、SEOに依存するだけでなく、魅力的なコンテンツ作成とその規模の拡大にも力を入れています。これには、ユーザーが自らZapierのプラットフォーム上で作成した「Zap」(自動化のワークフロー)に基づいた成功事例や、Zapierを利用することで業務をどのように効率化したかといった具体的なストーリーが含まれます。たとえば、ある中小企業のオーナーが、Zapierを活用して数十時間かかっていた手動のデータ入力作業を完全に自動化し、その結果、ビジネスの成長に集中できるようになった等の顧客事例が多くありました。 このようなユーザーの実体験をもとにしたコンテンツは、新規ユーザーにとって大きなインスピレーションになると同時に、Zapierのプラットフォームがどれほど多様なニーズに対応できるかを示す何よりの証拠となりました。また、Zapierのコンテンツは製品そのものに焦点を当てるのではなく、顧客がどのように製品を利用して成功を収めたかという点によりフォーカスしています。こうしたコンテンツは顧客自身をヒーロー/ヒロインとすることで、顧客により強いプロダクトへの愛着をもたらすと同時にリピーターを増やすことに貢献しました。 さらに、ZapierはLP(ランディングページ)を細かく設計し、それぞれのページで具体的なユースケースを強調しました。これは、ZoomやSlackなどの人気ツールとの連携方法を紹介することで、ユーザーが直面する課題に即した解決策を提示するためです。多くのアプリパートナーがいるZapierには70,000以上のLPがあると言われており、異なるアプリ間の自動化の可能性を示すことで幅広い検索クエリを捉えています。こうしたスケーラブルなコンテンツ生成プロセスによって、月間アクセスの多くがオーガニックによるものと言われています。 データ駆動型のアプローチ Zapierのコンテンツマーケティングにおける重要な点は、そのデータ駆動型のアプローチです。Zapierは、ユーザーの行動データや検索データをもとに、どのようなコンテンツが最も効果的かを分析し、改善を繰り返しました。このプロセスにより、コンテンツの精度が向上し、ユーザーのエンゲージメントやKPIは大きく向上しました。 特に、特定の業種や業務プロセスに特化したコンテンツを作成することで、当該ターゲットセグメントに的確にリーチすることができました。例えば、法律事務所向けに特化した「Zap」の使用例や、eコマースビジネスにおける売上データの自動化事例など、具体的なニーズに合わせたコンテンツを提供することで、より精度の高いターゲティングが可能となり、コンバージョン率の向上に繋がりました。 また、ZapierはA/Bテストやユーザーインタビューも積極的に実施し、どのコンテンツが効果的か評価することを重視しました。実際に、ある時期に実施されたA/Bテストでは、タイトルに具体的な数値を含めたコンテンツがより高いクリック率を達成したことが明らかになり、その後のコンテンツ戦略に反映されました。このようなデータに基づく改善の積み重ねが、Zapierのコンテンツマーケティングの鍵となっています。 フリーミアムと連携したコンテンツ Zapierの成長において、フリーミアム戦略も重要な役割を果たしました。Zapierは、ユーザーが無料で基本機能を利用できるようにする一方で、高度な機能や追加のサービスについては有料で提供しました。フリーミアムモデルとして、ユーザーはZapierの価値を実際に体験することができるため、これに教育や紹介コンテンツを掛け合わせることで、無料ユーザーを有料ユーザーへとコンバートする流れを加速させることができました。 具体的には、Zapierは無料ユーザーに向けて、製品の高度な利用方法や有料機能の価値を紹介するコンテンツを配信し、彼らが有料プランにアップグレードする動機を与えました。無料ユーザーに対して、Zapierを使って複雑なワークフローを自動化する方法を解説するウェビナーを開催し、その中で有料プランの利点を紹介することで、ユーザーのLTVが向上し、成長へと繋がったのです。 なお、Zapierは初期のβ版を無料ではなくあえて有償で提供したという興味深いエピソードもあります。機能が十分に揃っていない製品にあえて100ドルという比較的高額の料金を設定したことで、時間と手間を惜しまない真剣で質の高い少数のユーザーを惹きつけました。この結果、Zapierは高品質なフィードバックを顧客から得ることができ、プロダクトマーケットフィット(PMF)の検証を早期に行うことができました。これは比較的多くのβ版プロダクトが無料や低価格で提供されることが多い中で、非常に対照的なアプローチでしたが、その効果は大きなものでした(その後は徐々に値下げし、現在の価格となっています)。 コミュニティが支えるコンテンツ Zapierのマーケティング戦略の柱は、コミュニティとの密な関係や連携にあります。Zapierは、自社のブログやコミュニティを通じて、ユーザーが自身の経験や「Zap」の利用方法を共有できる場を多く提供しました。こうしたコミュニティ主導のコンテンツ生成により、ユーザーはZapierのサービスをさらに深く理解し、自身の業務にどのように活用できるかを学ぶことができました。 例えば、Zapierにはユーザーが自身の「Zap」を他のユーザーと共有し、その設定方法や使用ケースについてコメントしたりディスカッションする場が設けられています。あるユーザーが「Zap」を使用して人事管理システムを自動化し、その成果を他のユーザーと共有したことで、多くのユーザーが同様のプロセスを導入するきっかけとなりました。このようなコミュニティ内でのノウハウや体験の共有が、Zapierのサービスの価値を高める原点となっています。 Zapierはこうしたユーザーによるコンテンツを活用して、公式のチュートリアルやガイドラインを強化しました。例えば、ユーザーがフォーラムで提案した新しい「Zap」のアイデアを公式ガイドに追加し、さらに多くのユーザーがその価値を享受できるようにしました。こうした連携によって、ユーザーがより効果的にZapierを活用できるようサポートし、彼らの成功体験を増幅させました。 また、Zapierはパートナーマーケティングにも力を入れています。Zapierは綿密なパートナープログラムを用意しており、そのエコシステムには非常に多くのアプリパートナーが存在します。Zapierは新しいパートナー向けにテンプレート化されたLPをプログラムで自動生成し、パートナーにLPコンテンツの作成を推奨するなど、パートナーと積極的な共同マーケティングを行っています。パートナーが作成する質の高いコンテンツは、アプリパートナー自身のユーザー数の増加とZapierのプラットフォームとしての価値向上に繋がっています。 まとめ Zapierは未来の成長も見据えています。連携するアプリケーションを増やしプラットフォームとしての価値を高めることを大事にしつつ、足元ではAI機能を搭載したβ版をリリースしています。ユーザーは自然言語でのプロンプトをチャットボットに入力することでワークフローを生成することが可能となり、ノーコードxAIによる更なるプロダクト体験の向上が図られています。 これまで見てきた通り、Zapierの成長において、ユニークで戦略的なコンテンツマーケティングとその実行は大きな成長エンジンとなりました。SEOを戦略的に活用しオーガニックでの流入を最大化、データに基づいたコンテンツでユーザーエンゲージメントを高めることで、Zapierはマーケティング費用を抑えながら、効率的かつ力強い成長を実現しました。 今後もZapierはプロダクトやコミュニティを中心にユーザーに高い価値を提供し続け、さらなる飛躍を遂げることが期待されています。その中でも、Zapierのコンテンツマーケティングは引き続き重要な役割を果たしていくでしょう。 参考文献 Zapier - Automate as fast as you can type Zapier blog Zapier Hits 3m Subscribers, Doubles Customer Lifetime Value in 18 Month Sequoia Buys Shares in Elusive Startup Zapier at Multibillion-Dollar Valuation How Zapier Grows: Automating Growth The Not So Cookie-Cutter Approach to Company Building — 8 Lessons from Zapier How Zapier Built a $5 Billion Empire With a Killer Marketing Strategy 6 Things I Love About Zapier’s SEO Strategy: A Case Study How This Zapier SEO Strategy Boosted Their Site Visits to 6.3 Million Zapier’s CEO Reveals How His Automation Startup Reached A $5 Billion Valuation Without Jumping On The VC ‘Hamster Wheel’ How Zapier’s Freemium Strategy brought a Paradigm Shift in SaaS Marketing Zapier - Partner Program Zapier’s Unusual Path to Profitability --- # CCPAコンプライアンス: 米国でのデータプライバシー戦略と対応 URL: /insights/75 title: "CCPAコンプライアンス: 米国でのデータプライバシー戦略と対応" summary: "本記事では、企業が遵守すべきCCPAの概要とその影響を解説し、今後の規制強化に向けた対応の重要性を説明します。" date: 2024-09-13 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/management.mdx" cover: "/images/insights/75/cover.png" デジタル時代において、ユーザーの個人情報は企業にとって貴重な資産である一方、その取り扱いに対する規制はますます厳格化されています。特にカリフォルニア州ユーザープライバシー法(CCPA)は、ユーザーのデータ保護に関する権利を強化し、企業に対してデータの透明性や管理体制の厳格な基準を求めています。本記事では、企業が遵守すべきCCPAの概要とその影響を解説し、今後の規制強化に向けた対応の重要性を説明します。 CCPAの概要と背景 CCPAは、2018年に成立し、2020年に施行されました。この法律の誕生は、ユーザーが自身のデータが無断で収集・利用されることに対する懸念の高まりが背景にあります。特に、FacebookのCambridge Analyticaスキャンダルや、頻発する大規模なデータ漏洩事件がユーザーのプライバシー保護に対する関心を強め、個人情報がいかに不正に利用され、ユーザーにどれほどの影響を与えるかを社会に示しました。 カリフォルニア州は、アメリカ国内で特に厳格なプライバシー保護規制を持つ州として知られ、CCPAはユーザーのデータに対する管理権限を強化するために導入されました。CCPAの目的は、ユーザーが自身の個人データに対してより強いコントロールを持ち、企業がデータ処理において透明性と説明責任を果たすことです。 CCPAはユーザーに以下の権利を提供します: | 権利 | 概要 | | ------------------ | -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | | 情報開示の権利 | ユーザーは、自分の個人情報がどのように収集・使用されているかを企業に開示するよう求める権利があります。企業はユーザーからの要請に応じて、収集したデータの種類や使用目的を明確に説明しなければなりません。 | | データ削除の権利 | ユーザーは、企業に対して自分の個人情報を削除するよう要求する権利を持っています。企業は特定の例外を除き、この要請に応じなければなりません。 | | オプトアウトの権利 | ユーザーは、自分の個人情報が第三者に販売されることを拒否する権利を持っています。企業は、ユーザーがオプトアウトできるリンクをウェブサイトに設置し、簡単に利用できるようにする必要があります。 | | 差別禁止の権利 | ユーザーがCCPAに基づく権利を行使しても、企業はそのユーザーに対して価格やサービスを差別的に扱うことはできません。 | CCPAは企業に対して以下のような影響やリスクを及ぼすため、専門家や社内のデータ/知財/法務部門との連携を含め、その正しい理解と適切な対策が不可欠となります。 さらに、2023年1月に施行されたカリフォルニア州プライバシー権法(CPRA)は、CCPAをさらに強化するものとして導入されています。CPRAは、ユーザーに対する新たな権利の提供や、企業に対するデータ管理の要件を一層厳格にしています。これにより、企業はセンシティブな個人情報の取り扱いや、データ漏洩に対するセキュリティ対策をより強化する必要が生じています。 ビジネスへの影響 CCPAは、カリフォルニア州内のユーザーデータを扱うすべての企業に適用されるため、アメリカ国内だけではなく国外の企業にも影響を及ぼします。デジタル時代において、ユーザーデータは企業にとって重要な資産であり、データの適切な管理が競争力の維持に直結しています。しかし、CCPAへの対応を怠った場合、企業は法的リスクやブランド価値の損失、ユーザーからの信頼低下といった影響を受ける可能性があります。 法的リスク CCPAに違反した場合、企業は多額の罰金を科されるリスクがあります。各違反につき最高2,500ドルの行政罰金、または各故意の違反および未成年ユーザーの個人情報に関わる各違反につき最高7,500ドルの行政罰金が科されます。また、ユーザーデータの漏洩が発生した場合には、ユーザーから損害賠償を求められる可能性があり、企業にとって大きな財務的リスクとなることがあります。 CCPAの最終規則の執行の一例として、Sephora事件があります。ユーザーに個人情報の販売を開示していなかったSephoraは、是正を求める司法長官室からの通知に従わず、2022年8月に120万ドルの罰金を支払うとともに、個人情報の販売を行っている点をプライバシーポリシーなどで表明するといった条件の下で和解しました。この事件は、米国におけるプライバシー保護の重要性を強調し、日本企業を含むグローバルに展開する企業にとって、データ管理の遵守が重要であることを示しています。 ブランド価値とユーザー信頼 CCPAに適切に対応することは、ユーザーからの信頼を築くために重要です。企業がユーザーデータの取り扱いに透明性を保ち、プライバシー保護を重視している姿勢を示すことはブランド価値の向上に繋がります。一方でコンプライアンスを怠ると、ユーザーはその企業に対する信頼を失い、競合他社に顧客が流れるリスクが高まります。 他のコンプライアンスとの比較 データ保護が国際的に重要視される中、企業は各国の規制に対して包括的な対応が求められています。特に、アメリカのCCPAとヨーロッパのGDPR(一般データ保護規則)は、データプライバシーにおける代表的な規制として注目されています。それぞれの違いを理解し、適切に対応することが、グローバルに事業を展開する企業にとって不可欠です。以下では、CCPAとGDPRを中心に、他のコンプライアンス要件の比較とその対応策について解説します。 CCPAとGDPRの比較 企業がグローバルにビジネスを展開する際、CCPAとヨーロッパのGDPRとの整合性を確保することが重要です。両者は個人データ保護を目的としていますが、その要件にはいくつかの違いがあります。GDPRは、ユーザーからの明示的な「同意」を必要とし、より広範な権利をユーザーに提供しますが、CCPAはデータの「販売」に焦点を当てており、ユーザーにオプトアウトの権利を提供する点が特徴です。 企業は、CCPAとGDPRの双方に準拠するために、統一されたプライバシーポリシーを策定する必要があります。プライバシーポリシーには、データの収集目的や方法、第三者との共有先、ユーザーの権利行使手段など、明確かつ詳細な説明を含めるべきです。 また、CCPAやGDPRに加え、日本の個人情報保護法(APPI)やブラジルのLGPDなど、各国のデータ保護法にも対応が求められます。企業は、地域ごとの規制に対応できるコンプライアンスチームを編成し、グローバルなデータ管理戦略を導入することが重要です。 CCPAとCPRAの比較 CPRAは、CCPAを拡張・強化した法律です。主な違いとして、対象企業の基準の拡大が挙げられ、CCPAでは5万件以上のユーザーデータを扱う企業が対象でしたが、CPRAではこれが10万件に引き上げられました。また、CPRAはセンシティブな個人情報(健康情報や財務情報など)の保護を強化し、企業に対してこれらのデータの使用制限や事前同意の取得を義務付けています。さらに、ユーザーに対しては不正確な個人情報の訂正権が新たに追加されました。CPRAの施行により、企業はより厳格なデータ管理とセキュリティ対策が求められるようになり、合理的なセキュリティ対策を怠った場合には、ユーザーがデータ漏洩に対して訴訟を提起できるようになります。 企業に求められる戦略と対応 CCPAに適切に対応するため、企業は包括的なコンプライアンス戦略を構築する必要があります。これには、データ管理の透明性を確保するデータガバナンスの強化、リスク管理の徹底、そして全従業員がデータ保護に関する規制を理解するための教育が含まれます。また、プライバシー保護ツールや監査ソフトウェアを導入し、効率的にコンプライアンスを管理することも重要です。以下では、これらの要素に基づいた具体的な戦略について説明します。 データガバナンスの強化 CCPAへの準拠を実現するためには、データガバナンスの確立が不可欠です。データガバナンスとは、データの収集、保存、共有、使用に関する企業全体の管理プロセスを指し、透明性とセキュリティを確保するために必要です。企業は、データインベントリを作成し、収集したデータの種類、保存期間、共有先を明確にすることで、データ処理の透明性を高めます。 リスク管理と内部監査 定期的なリスク評価と内部監査は、CCPAの対応や維持に欠かせません。データ漏洩や不正アクセスに対する対策を強化し、内部監査を通じて、企業のデータ管理が適切に行われているかを定期的に確認します。また、プライバシーポリシーの見直しも重要であり、CCPAに準拠した透明性のあるプライバシーポリシーを策定し、ユーザーにデータ管理方法を明確に伝えることが求められます。監査結果に基づき、コンプライアンスギャップを特定し、改善を図ることが重要です。 従業員教育の強化 従業員教育は、CCPAの対応において重要な役割を果たします。すべての従業員がCCPAの基本要件を理解し、データ保護の重要性を認識することが必要です。特に、ユーザーデータを直接取り扱う部門の従業員には、プライバシー保護に関する高度なトレーニングが求められます。 ツールとテクノロジーの活用 CCPAへの遵守状況を効率的に管理するためには、適切な技術ツールの導入が有効です。プライバシー管理ソフトウェアやデータセキュリティツールを利用することで、ユーザーのデータリクエストに迅速に対応し、データの透明性を高めることが可能です。また、内部監査ツールを導入することで、定期的なコンプライアンス監査を効率化し、企業のデータ管理状況を常にモニタリングできます。 今後の展望とまとめ CCPAおよびCPRAは、アメリカにおけるデータプライバシー保護の重要な一歩に過ぎません。今後もアメリカ国内ではプライバシー法規制が強化されることが予想されます。バージニア州やコロラド州での規制導入に加え、カリフォルニア州のAI技術に関する新たな規制、SB1047も注目されています。SB1047は、AI技術の開発や運用において、透明性、説明責任、倫理的な規制を強化する内容が含まれており、特にデータの収集と使用に関する厳しい基準を課しています。これにより、企業は新たな法的要件への対応が求められ、リソースやコスト面での負担が大きくなる可能性があります。また、AI技術の規制強化は国際市場での競争力にも影響を与える可能性が指摘されています。企業は、こうした法的動向に備え、柔軟なコンプライアンス戦略を強化する必要があります。 さらに、変わりゆく規制に対応するためには、データガバナンスの強化やグローバルなコンプライアンス体制の整備が求められており、CCPA対応と同様に、GDPRをはじめとする国際的なプライバシー規制にも適応できる柔軟な戦略や情報収集体制が企業の成長と競争力を支える重要な要素となるでしょう。 CCPAへの遵守は、企業が持続的な成長を目指し、ユーザーとの信頼関係を維持するために欠かせません。ユーザーのプライバシー保護が世界的に重要となる中、企業はデータガバナンスの強化やリスク管理、従業員教育、技術的ソリューションの導入といった多角的なアプローチを取り入れる必要があります。また、企業には規制への準拠を果たすだけでなく、データプライバシーに関する透明性の高い経営体制を構築することが今後ますます求められていくと考えられます。 参考文献 California Legislative Information「California Consumer Privacy Act (CCPA)」 個人情報保護委員会「CCPAの規定概要」 W3Techs「Content Management Systems Technology Overview」 個人情報保護委員会「海外における個人情報保護制度」 米カリフォルニア州のAI規制法案に多方面から反対表明 European Commission -GDPR 米カリフォルニア消費者プライバシー改正法の最終規則に基づく執行、2024年3月29日まで延期 California Legislature. "Senate Bill No. 1047." Accessed September 6, 2024. JETRO「GDPR・CCPA・CPRAの主要論点比較」 免責事項 本記事は、CCPAに関する一般的な情報提供を目的としており、法的助言を構成するものではありません。記事内の情報は、執筆時点での一般的な理解に基づいていますが、法律や状況は常に変化する可能性があります。具体的な法的問題や疑問については、必ず資格を持つ弁護士にご相談ください。 --- # デジタル社会の実現に向けた重点計画2024:ビジネスの競争力強化とデジタルトランスフォーメーションの未来 URL: /insights/76 title: "デジタル社会の実現に向けた重点計画2024:ビジネスの競争力強化とデジタルトランスフォーメーションの未来" summary: "本記事では、デジタル社会の実現に向けた重点計画が日本のビジネス環境に与える影響と、企業がデジタルトランスフォーメーションをどのように活用すべきかを解説します。" date: 2024-09-30 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/transformation.mdx" glossary: "glossary/ai.mdx" "glossary/saas.mdx" cover: "/images/insights/76/cover.jpeg" 2024年に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」は、日本のビジネス環境を大きく変革する政策です。この計画は、デジタル技術を活用し、持続可能な成長と国際競争力を強化することを目指しています。デジタル化による経済成長のポテンシャルを最大化し、企業が競争力を高め、持続的な発展を遂げるための道筋を示すものです。この記事では、重点計画が日本のビジネス環境に与える影響と、企業がデジタルトランスフォーメーションをどのように活用すべきかを解説します。 デジタル社会のビジョンと経済成長の関係性 「デジタル社会の実現に向けた重点計画2024」は、日本のデジタル化を加速させ、経済成長とビジネス革新を推進するための重要な政策枠組みです。この計画は、デジタル技術を効果的に活用し、国民や企業にとってより効率的で便利な社会を実現するための具体的な方針を示しており、政府はデジタル化による持続可能な成長と、国際競争力の強化を図ることを目標に掲げています。 前年度との比較 2023年6月に閣議決定された前回の重点計画と比較すると、2024年版では国際的な協力体制やデータの活用が特に重視されています。前回は主にマイナンバー制度の拡充や行政サービスのデジタル化が中心でしたが、今年度はデジタル産業基盤の強化やデータの連携を通じた競争力向上が具体的に取り上げられていることが特徴です。また、DFFT(信頼に基づく自由なデータ流通)の促進が、国際的なビジネス環境での競争力を高める重要な施策として位置づけられています。 デジタル化と経済成長の関係 デジタル化が経済成長に及ぼす影響は多岐にわたります。特にDXは、企業の競争力を高めるために不可欠な戦略です。クラウド、AI、ビッグデータの導入により、コスト削減や業務の効率化が進み、新たなビジネスチャンスが広がります。さらに、デジタル技術は地域の活性化を促進し、医療、教育、防災などの公共サービスの改善への貢献も期待できます。これらの取り組みは、持続的な成長を実現する鍵となるでしょう。 また、政府は少子高齢化や人口減少といった国内における喫緊の課題に対しても、デジタル化を地域間格差の是正や新たな雇用創出の手段として活用しようとしています。特にAIやデータ分析を用いた産業イノベーションは、グローバルな市場での競争力維持と、持続可能なビジネスモデルの構築に大きく貢献すると考えられます。 「デジタル社会の実現に向けた重点計画2024」記載の政策サマリ | 政策 | 概要 | タイムライン | | -------------------------------------- | ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | | マイナンバー制度の推進 | 社会保障制度、税制、災害対策分野以外の行政手続でもマイナンバーの利用を推進。各事務での利用可能性を網羅的に調査し、法案提出を目指す。 | 2024年夏まで:各事務における利用可能性の網羅的調査2025年通常国会:法案提出目標 | | マイナンバーカードと健康保険証の一体化 | 現行の健康保険証の新規発行を終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行。 | 2024年12月2日:健康保険証の新規発行終了 | | 地方公共団体情報システムの統一・標準化 | 基幹業務システムを利用する全ての地方公共団体が、標準準拠システムへ移行。 | 原則2025年度まで:全地方公共団体の標準準拠システムへの移行 | | デジタルマーケットプレイス | SaaSなどを国・地方公共団体が迅速・簡易に調達するカタログサイトを利用した新しいソフトウェア調達手法の本格稼働。 | 2024年度後半:本格稼働目標 | | 防災デジタルプラットフォーム | 新総合防災情報システム(SOBO-WEB)を中核とし、各防災情報関係システムのデータを自動連携等で集約し、災害対応機関等で共有するプラットフォームを構築。 | 2025年まで:防災デジタルプラットフォームの構築 | | サイバーセキュリティ強化 | レッドチームテストの実施に向けた検討、横断的なアタックサーフェスマネジメントによる脆弱性把握、プロテクティブDNSによる情報収集などの新たな取り組みを開始。 | 2024年度から:新たな取り組みの開始 | | 補助金申請のデジタル化 | 事業者向け補助金の電子申請対応を原則とし、電子申請率の向上を図る。 | 2025年度以降:補助金の電子申請対応の原則化 | | 住所・所在地関係データベース | 地方公共団体の協力を得て、関係省庁と連携し町字情報を整備。 | 2024年度中:町字情報の整備 | | デジタル庁の体制強化 | デジタル庁を当面1,500人規模の組織とすることを目安とし、継続的に必要な体制整備を行う。 | 継続的に実施 | | デジタル庁の在り方検討 | デジタル庁設置後10年を経過した際、デジタル庁の在り方を検討し、必要な措置を講ずる。 | デジタル庁設置後10年経過時:検討と必要な措置の実施 | | 出生届のオンライン化 | マイナポータルから戸籍情報連携システムを介したオンライン届出を実現。 | 2024年8月中を目途:マイナポータルを用いた出生届のオンライン届出の実現2026年度を目途:全自治体でのオンライン化目標 | | 電子カルテの標準化 | オンライン資格確認等システムを拡充し、電子カルテ情報共有サービスを構築。 | 2024年度中:先行的な医療機関等での運用開始2030年:概ね全医療機関での導入目標 | | 保育業務のデジタル化 | 給付・監査等の場面における保育士等や自治体担当者の事務負担軽減のため、様式・通知等の見直しを進める。その後、施設管理プラットフォームを整備し、全国展開を進める。 | 2025年度まで:様式・通知等の見直し2026年度以降:全国展開の推進 | デジタル基盤整備とプロジェクト管理の革新 上述の通り「デジタル社会の実現に向けた重点計画2024」は、企業の競争力を高めるためのデジタル基盤整備の強化を掲げています。特に「制度・業務・システム」の三位一体改革は、デジタル技術を導入するだけでなく、制度改革や業務フロー全体を見直し、効率性を追求するもので、企業の事業活動に大きな影響を与えることが予想されます。 「制度・業務・システム」の三位一体改革が企業に与える影響 三位一体改革は、企業が新たなデジタルツールやクラウド技術を迅速に採用できるようにするだけでなく、業務全体の透明性と効率性を向上させます。具体例として、地方自治体の基幹業務システムを2025年までにガバメントクラウドへ移行する取り組みが進行中です。これにより、行政手続きのオンライン化が加速し、企業のプロジェクト管理やデータ共有がシームレスに行えるようになることが期待されています。 また、デジタル庁を中心に進められるこのガバメントクラウドの導入は、自治体と国が同じデジタル基盤を共有することで、コスト削減と迅速な業務運営が実現可能となります。この共通基盤により、地方自治体や企業の間での迅速なデータ連携がなされ、ビジネスの意思決定にもポジティブに働くでしょう。 共通デジタル基盤がもたらすビジネス機会の拡大 国と地方自治体が協力して進める共通デジタル基盤の整備は、企業にとって大きなビジネスチャンスです。ガバメントクラウドを利用したシステムの標準化により、地方自治体との連携が容易になり、新たな事業展開も見込まれます。たとえば、デジタル庁が提供する「窓口DX SaaS」を活用した「書かないワンストップ窓口」の導入により、住民サービスの効率化だけではなく、民間企業との連携による新しいビジネスモデルの創出が期待されています。 この基盤整備は、地方のデジタル化を加速し、地域経済の活性化にもつながります。企業は、地方自治体と協力して地域課題の解決策を提供することで、事業機会を拡大できます。さらに、デジタル田園都市国家構想による地方自治体のデジタル基盤強化も進んでおり、これにより新たな市場開拓や競争力強化が見込まれます。 デジタル技術とデータ戦略によるビジネス競争力の強化 現代のビジネス環境は、急速に進化するデジタル技術とデータ活用によって劇的に変化しています。特に、AI、クラウド技術、そしてデータ戦略は、企業の競争力を強化し、新たな成長機会を提供する重要な要素です。日本政府も2024年の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」によって、企業のデジタル化を推進する政策を展開しています。 デジタル化による企業競争力の向上 「デジタル社会の実現に向けた重点計画2024」は、日本のビジネス環境に大きな変革をもたらすものであり、企業のデジタル化は、業務効率だけでなく、企業の競争力を飛躍的に強化し、持続可能な成長を支える戦略的な要素として期待されています。特に、AIやデータの活用は、企業の意思決定や顧客対応の質を向上させ、リアルタイムで市場動向を把握することを可能とします。また、AIによる自動化は反復作業を効率化し、人的リソースをより創造的な業務に集中させることで、ビジネスの柔軟性を向上させ、迅速に対応できる体制を強化します。ビジネスの柔軟性と迅速な対応力を高めます。 クラウド技術によるコスト削減と生産性向上 クラウド技術の導入は、企業がリソースを効率的に管理し、コスト削減を実現するための重要な手段です。クラウドを活用することで、企業は大規模なITインフラの運用費用を抑えつつ、リモートワーク環境の整備などを通じて生産性の向上を図ることができます。特に十分なリソースを持たない中小企業にとって、初期投資を抑えながら高度な技術にアクセスできるクラウドの利用は大きな利点です。 データ戦略と国際競争力の強化 データ戦略の推進も競争力強化の重要な柱です。DFFTは、データの国際移転を円滑に進める枠組みとして、グローバル市場での競争力を高める基盤となります。たとえば、複数国にまたがるサプライチェーンの可視化/効率化や、データを活用した精度の高い市場分析は、企業に新たな成長機会を提供します。政府のデータエコシステム構築も進行中であり、官民一体となったデータ活用が企業のビジネスイノベーションを加速させます。 セキュリティとサイバーリスク管理の重要性 デジタル社会の進展に伴い、セキュリティリスクとサイバー攻撃の脅威が増大しています。特に、デジタル化が進む中、企業や政府機関が攻撃対象となるケースが増加しており、セキュリティ強化はビジネス継続に不可欠です。「デジタル社会の実現に向けた重点計画2024」では、「セキュリティ・バイ・デザイン」の概念に基づいたセキュリティ対策が強調され、企画から運用まで一貫したセキュリティ体制の構築が求められています。 デジタル化の進展に伴うセキュリティリスクとその管理の必要性 デジタル技術の急速な発展はビジネスや日常生活に変革をもたらしていますが、同時にサイバー攻撃のリスクも急増しています。特にランサムウェアやサプライチェーンを狙った攻撃が増えており、企業はこれらの新たな脅威に対応する必要があります。政府はセキュリティリスク管理を国家戦略の一環として位置付け、企業や自治体もサイバーセキュリティ対策を強化しています 。 セキュリティ対策は単なる防御ではなく、ビジネス成長や競争力強化の一環として捉える必要があります。例えば、情報漏洩やシステム障害が発生すると、企業は信頼を失い、甚大な影響を受ける可能性があります。リスク管理やセキュリティ対策は企業戦略の最優先事項となっています。 サイバー攻撃への対応とデジタル基盤強化におけるセキュリティの役割 また、サイバー攻撃はますます巧妙化しており、特に国家の安全保障に影響を及ぼしかねない攻撃や重要インフラを標的とする攻撃が増加しています。これに対抗するため、政府は官民一体でセキュリティ訓練を行い、セキュリティ基盤を強化しています。デジタル庁やNISCが主導するGSOCの強化により、リアルタイムでの脅威分析や情報共有が可能になり、2024年度からはアタックサーフェスマネジメントやプロテクティブDNSによる情報収集も開始される予定です。こうした対策を通じて、政府機関や企業はサイバー攻撃のリスクを最小限に抑え、デジタル基盤の安全性を確保することが求められます。企業はセキュリティ・バイ・デザインを徹底することで信頼性を高め、持続的な成長を支える基盤を構築する必要があります。 まとめ 「デジタル社会の実現に向けた重点計画2024」は、日本の経済成長を支える重要な指針です。企業が持続可能な成長を達成するには、政府のデジタル化戦略にアンテナを広げ、事業の革新に取り組むことが不可欠です。特にAIやデータ活用は、ビジネスや意思決定の迅速化・効率化と新たな価値創出に貢献します。今後、企業はこうしたデジタル化の流れを活用しながら、国際競争力を高めるための戦略的なデジタル投資が求められています。 参考文献 デジタル社会の実現に向けた重点計画 デジタル社会の実現に向けた重点計画(2024年6月21日閣議決定) デジタル庁:デジタルの活用で一人ひとりの幸せを実現するために「デジタル社会の実現に向けた重点計画」紹介資料 デジタル社会の実現に向けた重点計画(2023年6月9日閣議決定) 免責事項 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の状況や個別のアドバイスを提供するものではありません。掲載内容の正確性や完全性については万全を期していますが、その正確性、信頼性、適時性を保証するものではありません。この記事に基づいて行われた行動に対して、当社および執筆者は一切の責任を負いません。専門的な助言やアドバイスが必要な場合は、適切な専門家にご相談ください。また、掲載された情報は予告なく変更される場合があります。 --- # Okta:企業のデジタルトランスフォーメーションを支えるイノベーションと成長戦略 URL: /insights/77 title: "Okta:企業のデジタルトランスフォーメーションを支えるイノベーションと成長戦略" summary: "本記事ではOktaの成功を実現した戦略やプロダクトを解説していきます。" date: 2024-12-10 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/transformation.mdx" glossary: "glossary/saas.mdx" cover: "/images/insights/77/cover.jpeg" Oktaは、クラウドアイデンティティおよびアクセス管理(IAM)市場のリーダーとして、企業がデジタルトランスフォーメーションを実現する上で重要な役割を担う企業の一つです。 2024年現在、Oktaは3.5億ドルを超える年間経常収益(ARR)を達成し、顧客基盤も拡大を続けています。クラウドやSaaS、マルチクラウド環境が一般化する中、企業のセキュリティ要件に応じた革新的なアイデンティティソリューションを提供し、「誰もが安全にどの技術でも利用できる世界を創る」ことを目指して、Workforce Identity & Access Management (IAM)とCustomer Identity Cloud powered by Auth0という2つの主要な柱を中心に製品を展開しています。 Oktaの成功の背後には、将来を見越したアイデンティティ管理分野への早期参入、革新的なプロダクトの提供、戦略的なパートナーシップと市場拡大のための買収など様々な戦略的要因がありました。これらによって、Oktaは急速に変化するデジタルセキュリティのニーズに適応し、優れたアイデンティティ管理ソリューションを顧客へ提供することで、市場におけるリーダーとしての地位を築くことに成功しています。 本記事ではOktaの成功を実現した戦略やプロダクトを解説していきます。 Oktaの成長の軌跡 Oktaの成長は、クラウドの普及とアイデンティティ管理分野での著しい技術発展に後押しされました。同社は2009年にTodd McKinnon氏とFrederic Kerrest氏によって創業されました。McKinnon氏は創業前はSalesforceでエンジニアリング部門で副社長を務めていましたが、クラウドアイデンティティの可能性に確信を持ち、自ら会社を設立するというリスクを取る決断を下しました(彼のこの決断は、経済危機と新たに始まった家庭生活の中で簡単なものではなく、妻に理解を得る必要があったと言います​) Oktaの初期のミッションは、企業がクラウドベースのサービスに容易にアクセスできるようにするシングルサインオン(SSO)ソリューションを提供することでした。当時、多くの企業はオンプレミスのMicrosoft Active Directoryに依存しており、クラウドアイデンティティの必要性はまだ広く認識されていませんでしたが、Oktaは将来の需要と変化を見越して先手を打ちました。 その後2017年にIPOを果たしましたが、それ以降もOktaの企業価値は上昇を続けました。中でも、OktaのクラウドやSaaSアプリケーションに対応したアイデンティティ管理プラットフォームは、特に企業のIT部門の業務効率化に大きなインパクトを与えました。このプラットフォームは、堅牢なセキュリティを確保しながら、従業員や顧客がどこからでもアプリケーションにアクセスできる環境を実現するための重要なツールとなっています。 Oktaのプロダクトと革新性 Oktaは、Identity as a Service(IDaaS)市場において、革新的なプロダクトを展開しています。同社の主力製品であるOkta Identity Cloudは、企業が労働者や顧客に対するアイデンティティ管理を一元的に行うための強力なツールを提供します。このプラットフォームは、Workforce Identity & Access Management (IAM)とCustomer Identity Cloud powered by Auth0という2つの主要ソリューションで構成されており、どちらもクラウド上で提供されるため、高い柔軟性と拡張性を誇ります。 Workforce Identity & Access Management (IAM) Workforce Identity & Access Management (IAM)は、企業の従業員やパートナーが複数のSaaSアプリケーションやクラウドサービスにシームレスにアクセスできるようにすることを目的としています。このプラットフォームは、SSO、多要素認証(MFA)、およびユーザープロビジョニングなど、現代のビジネス環境に不可欠なセキュリティ機能を包括的に備えています。たとえば、OktaのSSO機能は、従業員が一度ログインするだけで、さまざまな業務アプリケーションにアクセスすることを可能とし、これによって生産性の向上に寄与します​。 また、MFAはセキュリティの強化に欠かせない機能です。Oktaの多要素認証は、パスワードに加えて、ユーザーのデバイスや生体認証情報などを活用することで、従来の認証システムに比べて安全性を飛躍的に向上させています。このように、Oktaは常に最新のセキュリティプロトコルに対応し、エンタープライズのニーズに応じたセキュリティ対策を整備しているのです​。 Customer Identity Cloud powered by Auth0 Oktaのもう一つの主要なプロダクトであるCustomer Identity Cloud powered by Auth0は、企業が提供する顧客向けアプリケーションのセキュリティとユーザー管理をサポートするものです。このクラウドソリューションは、開発者が短期間で安全なアプリケーションを構築できるようにAPIを通じた支援を行っており、Oktaのプロダクトはこの市場においても強い存在感を見せています​。 たとえば、Oktaのプロビジョニング機能は、新しいユーザーを迅速に追加し、必要なアクセス権を適切に付与するプロセスを自動化します。これにより、エンドユーザーがシームレスかつ迅速にサービスにアクセスできるようになり、企業の顧客満足度の向上に繋がっています。また、Customer Identity Cloud powered by Auth0は、セキュリティの強化に加えて、ユーザーエクスペリエンスの改善を追求しており、サインインやアカウント管理のプロセスを簡素化しています​。 Okta Integration Network(OIN) Oktaの強みの一つであるOkta Integration Network(OIN)は、優れた統合機能を提供するプラットフォームです。OINは7,000以上の外部クラウドサービスやSaaSアプリケーションと連携が可能であり、OktaユーザーがさまざまなクラウドサービスやSaaSにシームレスかつ安全にアクセスできる環境を実現しています。例えば、Microsoft 365、Slack、Salesforce、Amazon Web Services(AWS)、Google Workspaceといった主要なアプリケーションやサービスとも容易に連携可能で、企業の業務アプリケーションを統合的に管理できるのが大きな特徴です。 Oktaの連携は、単なるSSOにとどまらず、ユーザープロビジョニングやセキュリティモニタリング機能も提供しており、企業のIT部門が管理作業を効率化できる仕組みを備えています。例えば、ユーザープロビジョニングでは、新たなアカウントの作成からアクセス権限の割り当て、ユーザー削除までを一元管理し、不要な手作業を減らすことが可能です。また、セキュリティモニタリング機能は、不正アクセスの検知やリアルタイムのアクティビティ監視を行い、万が一のインシデントにも迅速に対応することができます。これにより、Oktaは顧客企業のIT管理を強力にサポートし、セキュリティリスクを低減しつつ効率的な運用を支えています。 OINはAPIベースのアプローチにより、ユーザーが求めるカスタマイズ性を実現しています。開発者や企業は、APIを活用して必要に応じた拡張機能を作成し、企業固有のニーズに対応したアプリケーション統合を可能にします。この柔軟性は、多様なエコシステムに適応し、企業のデジタル戦略に沿ったカスタマイズを実現するうえで大きな強みとなっています。 このような多機能かつ拡張性のあるプロダクトにより、OktaはIDaaS市場でのリーダーシップを一層強固なものとしています。Oktaは単なるユーザーIDやパスワードなどを管理するツールにとどまらず、包括的なアイデンティティプラットフォームとして、企業が直面する多様な課題に応える存在となっているのです。 Auth0買収による市場の拡大とさらなる成長 2021年、Oktaは65億ドルという巨額の資金を投じて、アイデンティティ管理ソリューションを提供するAuth0を買収しました​。この買収は多くの注目を集めましたが、背後には市場拡大という戦略的な狙いがありました。OktaとAuth0は、異なるアプローチで市場を攻略しており、Oktaはエンタープライズ企業が複雑なIT環境で従業員や顧客のアイデンティティを管理するためのソリューションを提供していました。一方で、Auth0は主に開発者をターゲットにし、アプリケーションの構築に必要なシングルサインオンや認証機能を簡単に統合できるAPIを提供していました。Oktaはこの買収によって、これまでの主戦場であったエンタープライズ市場だけでなく、開発者向けの市場においても強力なプレゼンスを確立することに成功しました。 両者の異なる市場とアプローチが、買収後のOktaの成長を支える大きなポイントとなりました。OktaはAuth0の技術を統合することで、より広範な市場に対応できるようになり、特にAPIベースのソリューションを求める開発者向けのニーズにも応えることができるようになったことで、Oktaは新たな市場に進出し、開発者とエンタープライズの両方にとって魅力的なプラットフォームを構築することに成功したのです​。 OktaとAuth0の統合効果 OktaとAuth0の統合によって、OktaはIAM市場での競争力を一段と強化しました。Auth0の技術は、Oktaの製品ラインに対する優れた補完的な役割を果たしており、特に顧客アイデンティティ管理の分野で大きな成長が期待されています。Auth0は開発者フレンドリーなツールを備えており、これによりOktaは、企業が独自のアプリケーションにセキュリティを組み込むための柔軟なAPIを活用できるようになりました。 この統合により、Oktaは従来のエンタープライズ向けアイデンティティ管理と、開発者向けツールの両方を担う「ワンストップソリューション」としての地位を確立しました。この戦略は、顧客がアイデンティティ管理を効率化し、セキュリティを強化するためのより包括的な選択肢を得られるようになっています。さらに、Auth0の買収によって企業の成長を支える基盤を強化し、急速に変化する市場環境にも柔軟に対応できるようになっています。 戦略的なパートナーシップによる影響力の拡大 Oktaは、自社のキャパシティによる成長だけではなく、戦略的なパートナーシップを通じて顧客の獲得や市場での影響力を拡大しています。同社は、獲得可能な最大市場規模(TAM)を800億ドルと見積もっており、その広大な市場を開拓するために、パートナーシップを重要な柱と位置づけています​。 その一環として、Oktaはパートナーシップを以下の6つの主要カテゴリー(システムインテグレーター(SIer)、ディストリビューター、リセラー、クラウドサービスプロバイダー(CSP)、テクノロジーパートナー、マネージドサービスプロバイダー(MSP))に分けて展開しています​。これによって、Oktaは多様な業界に対応できる柔軟なエコシステムを構築しパートナーとの協業によってOktaの製品・サービスは幅広い地域や業界に展開されることを可能にしています​。 テクノロジーパートナーとの統合 Microsoft、Google、AWSをはじめとする大手テクノロジー企業との連携は、顧客がアイデンティティ管理ソリューションを多様なSaaSやクラウドサービスと連携して利用できるようにするための重要なポイントとなっています。この連携によってOktaの顧客はさまざまなSaaSやクラウドサービスへシームレスかつ安全にアクセスすることができ、これらのサービスを効率的に管理する環境が整います。 大手テクノロジー企業とのパートナーシップにより、Oktaは顧客に対してスムーズなセキュリティ管理とアクセス制御を提供し、例えばMicrosoft 365やGoogle Workspace、AWSなどのプラットフォーム上での安全性を確保しています。これにより、Oktaの顧客は全アプリケーションとデータに対するアクセス権を統一して管理することができ、セキュリティリスクが低減され、IT運用の効率化も図ることができます。 さらに、Oktaはこれらの大手企業のみならず、エンドポイントセキュリティやクラウドセキュリティなど特定分野に強みを持つセキュリティベンダーとも提携しています。こうした連携により、Oktaの顧客はアイデンティティ管理とその他のセキュリティ機能を統合し、さまざまなサイバー脅威に対して多層的な防御を施すことが可能です。 また、Oktaはテクノロジーパートナーと定期的な情報交換や共同トレーニングを実施しており、急速に進化するサイバーセキュリティ分野における新たな脅威に迅速に対応する体制を築いています。こうした協力体制により、Oktaのプラットフォームは他のツールやシステムと互換性を高め、顧客がすでに導入しているIT環境とも円滑に統合できる仕組みが整っています。 世界各国のSIやリセラーとの協業 Oktaは、グローバル市場での成長を目指し、世界各国のシステムインテグレーター(SI)やリセラーとの協力も積極的に進めています。幅広い地域での市場拡大を推進し、各国のローカルパートナーとの提携を通じて地域特性に合わせた柔軟なアプローチを行うことで地域に応じた顧客ニーズに対応することが可能になっています。 Oktaのグローバルパートナーシッププログラムでは、リセラーに対して特別なバッジを付与する施策を導入しています。要求基準を満たしたパートナー企業に与えられるこのバッジは、Oktaのソリューションを効果的に提供できる能力の証明となり、顧客は信頼を持ってサービスを受けられるようになります。パートナー企業にとっても、Oktaの高い技術力と信頼力を活用して、グローバルでアイデンティティ管理ソリューションを提供できる体制が整います。Oktaのパートナーシップ戦略は多様なアプローチにより国際的な影響力を広げ、企業に効率的なデジタルセキュリティとアイデンティティ管理の包括的なソリューションを提供しています。これにより、Oktaはエンタープライズ市場での顧客基盤を強化し、さらなる成長を目指しています。 まとめ Oktaは、IDaaS市場において確固たる地位を築き、企業のセキュリティとデジタルトランスフォーメーションを支える重要な役割を果たしてきました。Workforce Identity & Access Management (IAM)とCustomer Identity Cloud powered by Auth0という2つの柱を中心に、企業の複雑なニーズに応える包括的なアイデンティティソリューションを展開しています。 2021年に行ったAuth0の買収により、Oktaはデベロッパー向け市場にも進出し、より広範な市場にアプローチすることができるようになりました。また、Oktaはパートナーシップを積極的に活用し、システムインテグレーターやクラウドプロバイダーとの連携を強化することで、技術的な統合の幅と深さをさらに高め、競合他社との差別化を図ることにも余念がありません。 今後Oktaは市場の変化に対応し、さらなる成長を目指すために継続的なイノベーションを実現する必要があります。サイバーセキュリティの脅威がますます複雑化する中、Oktaが展開する高度なアイデンティティソリューションは、企業のデジタルセキュリティにおいて引き続き重要な役割を果たすことが期待されています。今後も同社はR\&Dに注力し、より多くのクラウドサービスやアプリケーションとの連携機能によって市場でのリーダーシップを維持し、さらなる成長を実現することが求められます​。 本記事では、Oktaの成長を実現した主要な戦略を紹介しました。本記事が皆様の事業戦略やその実行を検討する際の一助となれば幸いです。 参考文献 How Okta’s CEO convinced his wife in 2008 that he should leave Salesforce to start a company How Success Happened for Todd McKinnon, Co-Founder and CEO of Okta Q2 FY25 Investor Presentation 5 Interesting Learnings from Okta at $2.5 Billion in ARR 800億ドル市場に挑むOktaのパートナー戦略:6つのカテゴリーとバッジ付与施策 Making sense of the $6.5B Okta-Auth0 deal Okta CEO opens up about Auth0 acquisition, SaaS slump and Lapsus$ attack Okta、成長の加速戦略はパートナープログラム。来日したSVPビル・ハスタッド氏に訊く。 Okta's Todd McKinnon on Innovation and Growth Oktaの強みとは? Secure your tech stack with rich integrations --- # プロダクト開発におけるこれからの要件定義 URL: /insights/78 title: "プロダクト開発におけるこれからの要件定義" summary: "要件定義は、プロダクト開発の成功を左右する重要なプロセスです。効率性や柔軟性を追求し、DX時代の価値創造を支える新しい視点を探ります。" date: 2024-11-15 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/transformation.mdx" glossary: "glossary/requirements-definition.mdx" "glossary/agile-development.mdx" cover: "/images/insights/78/cover.jpeg" エンタープライズ領域のデジタルトランスフォーメーションにおいて、プロダクト要件の定義と管理は、これまで以上に重要な課題となっています。IDC Japanによれば、国内エンタープライズIT市場は2023年には11兆9,983億円規模まで拡大すると予測されています。このような市場拡大の中で、要件定義の巧拙がプロジェクトの成否を分ける重要な要素となっています。 特に注目すべきは、要件定義の失敗によって生じる開発プロセスの非効率性です。後の段階で問題が発見されるほど、修正には大きな負担がかかり、コスト面やリソースの無駄が拡大します。開発予算の40%以上が非効率な要件管理に起因する修正に費やされているという分析結果も存在します。 この記事をお読みの方の中には、プロジェクトの初期段階での要件定義の成否が、システム開発の予算超過やスケジュールの遅延につながった経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。初期段階での適切な要件の把握と管理がプロジェクト全体の成功を左右します。 要件定義に今求められる3つの視点 デジタルトランスフォーメーションの進展により、プロダクト開発における要件定義の在り方も大きな変革を迎えています。従来のビジネス要件、機能要件、品質要件という枠組みでのドキュメンテーションでは、今日の市場環境とテクノロジーの急速な進化に十分に対応できなくなっているようにも感じています。そのような背景のなかで、私たちのこれまでのDXプロジェクトの経験から、より実践的な3つのアプローチが効果的であると考えています。 1\. ビジュアルモデリングによる要求の可視化 デジタルプロダクトの価値は、優れたユーザー体験を通じて実現されます。そのため、要件定義の初期段階から、具体的なビジュアルとインタラクションを通じて価値を検証することが重要です。実際のユーザーインターフェースを模したプロトタイプを早期に作成し、エンドユーザーからの直接的なフィードバックを収集することで、机上の議論では見えてこない課題や改善点を特定することができます。 特に企業向けのプロダクトでは、業務プロセス全体を俯瞰的に可視化することが重要となります。業務フローの図式化と、コンポーネントベースのデザインシステムの活用により、要件定義からデザイン、実装までのプロセスを大幅に効率化することが可能ですこれらの手法の組み合わせにより、要件定義の工数と開発後の手戻りを最小限に抑えることにも成功した事例も少なくありません。 2\. オン/オフバランス型のアーキテクチャ設計 競争優位性のあるデジタルプロダクトを構築するためには、将来の拡張性を見据えた技術基盤の設計が不可欠です。近年のエンタープライズシステムでは、マイクロサービスアーキテクチャなどの新しいアプローチも盛んに議論されていますが、それぞれが必ずしも汎用的な解になるわけではなく、状況に応じた最善手を模索し続ける必要があります。 AWS、GCP、Azureなどのクラウドプラットフォームを活用し、負荷変動への対応やグローバル展開を見据えたインフラ設計も一般的に行われるようになってきました。システム全体の複雑性が高まり続けるなかで、内部システム間の連携や外部サービスとの接続を見据えたAPI戦略の策定も、ますます要件定義の重要な論点になっています。ノンコアオペレーションに係る技術は外部SaaSを活用することがROIを高めるために必須であり、その目利きも要件定義フェーズから求められるようになっています。 3\. 実行可能な改善体制からの逆算 近年スタートアップのプロダクト開発においては「プロダクトマーケットフィット(PMF)」という言葉が一般的になりました。ターゲットとなるユーザー層を探索し、機能追加・改善を重ねながら、最終的にセールスやマーケティングのアクセルを全開にできる状態を目指す考え方です。PMFの状態に至るまでは相応の期間と予算が必要になり、そのための現実的かつ持続可能な改善体制と、事業の成長を見据えたグロース期間を考慮したプロダクト要件の設計が重要となります。 また、OKR(目標と主要な成果)やKPI(重要業績評価指標)を事前に適切に設計することも、このプロセスを支える重要な要素です。これにより、事業がPMFに到達するまでの具体的な道筋を描き出し、必要なリソースを見積もることが可能になります。結果として、最初に何を作るべきかを明確化し、その判断が事業全体の成功に直結するような戦略的アプローチが実現されます。 カイゼンのプロセスを支える要件定義 要件定義は単なるドキュメント作成ではなく、プロダクトの価値を最大化するための継続的な改善活動です。特に、アジャイル開発を前提とした現代のプロダクト開発では、市場環境やユーザーニーズの変化に柔軟に対応できる要件定義の仕組みが不可欠となっています。 この文脈において、日本のものづくりの強みである「カイゼン」の考え方は、デジタルプロダクト開発においても重要な示唆を与えてくれます。異なる専門性を持つメンバーの有機的な連携、データに基づく客観的な判断、そして変更を前提とした管理の仕組みが、成功の鍵となるでしょう。 例えば、ビジネスオーナーとの対話においては、単なる要件のヒアリングではなく、ビジネス課題の本質に迫る対話を重視する必要があります。定期的なワークショップやレビューセッションを通じて、要件の背景にある真の課題を掘り下げることで、より価値の高いソリューションを導き出すことができます。 また、変更管理の体系化も重要な要素です。要件の変更は、プロダクト開発において避けられない要素であり、むしろ価値向上のための重要な機会として捉える必要があります。GitHubやGitLabなどのプラットフォームを活用し、要件の変更履歴を明確に記録・追跡することで、プロジェクト全体の知識基盤を構築することができます。 エンタープライズDXにおける戦略的考慮点 大規模なデジタルトランスフォーメーションにおいて、要件定義は単なる技術的な仕様の確定以上の意味を持ちます。特に日本の大手企業では、長年培われた業務プロセスや組織文化との調和が求められ、より戦略的なアプローチが必要となります。 組織変革との連動は、その中でも特に重要な要素です。既存の業務プロセスを単にデジタル化するのではなく、デジタル時代にふさわしい新しい働き方を定義する必要があります。現場のオペレーターを巻き込んだワークショップを通じて、理想的な業務フローと実現可能な移行ステップを明確化し、部門間の連携や意思決定プロセスの再設計まで踏み込んで検討する必要があります。 同時に、チェンジマネジメントの視点も欠かせません。新しいシステムの導入は、必然的に組織の変革を伴います。主要ステークホルダーの特定と影響分析、部門横断的なコミュニケーション計画の策定、さらには教育・研修プログラムの要件定義まで、包括的な変革管理の枠組みが必要となってきます。 これからの要件定義に求められるもの テクノロジーの急速な進化と市場環境の変化により、要件定義の在り方も新しい局面を迎えています。特に、生成AIの実用化は、プロダクト開発のアプローチそのものを変革しつつあります。従来の文書中心の要件定義から、より体系的で再利用可能なデザインシステムとしての要件定義への移行が進むとともに、AI時代に適応した新しい要件定義の形が求められています。 1\. デザイン・モデリングシステムの進化 UI/UXパターンのライブラリ化や業務フローのモジュール化、さらにはマイクロサービスを前提とした機能定義など、コンポーネント化された要件定義の重要性が増しています。特に注目すべきは、これらのデザインアセットがAIモデルの学習データとしても活用可能な形で構造化されていく点です。デザインシステムは単なる再利用可能なコンポーネント群ではなく、AIとの協調を前提とした知識基盤として進化していくことが予想されます。 2\. ステークホルダー間の新しい協調モデル AIの導入により、開発チームの役割と責任の再定義が必要となってきています。プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアに加え、AIスペシャリストやデータサイエンティストなど、新しい専門性を持つメンバーとの協働が不可欠となっています。特に重要なのは、AIの可能性と限界に対する共通理解を形成し、人間とAIの適切な役割分担を設計することです。 またAIの活用方針についても、早期段階からステークホルダー間で認識を合わせる必要があります。例えば: どのような判断をAIに委ねるのか どの程度の精度が求められるのか どのようなリスクが許容されるのか といった点について、明確な合意形成が求められます。 3\. AI運用を見据えた技術基盤の設計 AI時代の要件定義において特に重要なのは、構造化されたデータの確保とAI運用基盤の整備です。開発初期段階から、以下のような点を考慮した要件定義が必要となってきています。 データの品質と構造の標準化 AIモデルの学習・評価・更新サイクルの設計 モデルのバージョン管理とA/Bテストの仕組み パフォーマンスモニタリングと異常検知の体制 さらに、プロダクト開発においてAI Opsを実現するための技術スタックと人材の確保も重要な要件となります。継続的なモデルの改善と運用を可能にする体制づくりが、プロダクトの競争力を左右する要素となってきています。このように、AI時代の要件定義は、より広範な視点とより深い専門性の両方が求められます。しかし、最も重要なのは、テクノロジーの進化に振り回されることなく、本質的な価値創造の視点を保ち続けることでしょう。AIはあくまでも手段であり、目的はユーザーへの価値提供にあるという原点を、常に意識する必要があります。新しいテクノロジーや手法を取り入れながら、真に価値あるプロダクトを生み出すための実践として、要件定義は今後も進化を続けていくことでしょう。その過程において最も重要なのは、テクノロジーの進化と人間の創造性を高次元で統合していく視点なのではないでしょうか。 おわりに デジタル時代の要件定義において求められるのは、テクノロジーとビジネスの両面での高度な専門性と、それらを統合する視点です。同時に、人間中心の価値創造という本質的な目的を見失わないことも重要です。 要件定義は、顧客価値を具体化し、それを確実に実装可能な形に変換するプロセスとして、今後さらに重要性を増していくでしょう。市場環境の急速な変化に対応するため、要件定義自体も柔軟性と拡張性を備えたものとなる必要があります。アジャイル開発やDevOpsの実践と整合性のとれた要件管理の仕組みが、この適応力を支える基盤となっていくはずです。 新しいテクノロジーや手法を取り入れながら、真に価値あるプロダクトを生み出すための実践として、要件定義は今後も進化を続けていくことでしょう。その過程において最も重要なのは、テクノロジーの進化と人間の創造性を高次元で統合していく視点なのではないでしょうか。 免責事項 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の状況や個別のアドバイスを提供するものではありません。掲載内容の正確性や完全性については万全を期していますが、その正確性、信頼性、適時性を保証するものではありません。この記事に基づいて行われた行動に対して、当社および執筆者は一切の責任を負いません。専門的な助言やアドバイスが必要な場合は、適切な専門家にご相談ください。また、掲載された情報は予告なく変更される場合があります。 --- # Shopify:成功を支える収益モデルとエコシステムの進化 URL: /insights/79 title: "Shopify:成功を支える収益モデルとエコシステムの進化" summary: "本記事では、Shopifyの収益モデルや戦略、エコシステムの全貌を解説し、企業の規模や業種を問わず、多様なビジネスに柔軟に対応できるそのプラットフォームの価値と、その成功事例について考察します。" date: 2025-03-11 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/transformation.mdx" glossary: "glossary/saas.mdx" cover: "/images/insights/79/cover.jpeg" 電子商取引(EC)は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、企業の成長戦略において欠かせない要素となっています。特に、パンデミックを契機にオンライン取引が急増し、多くの企業がデジタルチャネルへの移行を加速させました。その中で、Shopifyは単なるECプラットフォームを超えた存在として、企業の規模や業種を問わず、ビジネスの成功を支える包括的なサービスを提供しています。 Shopifyの強みは、「Sell Everywhere」というビジョンに基づき、オンラインストア構築だけでなく、実店舗、マーケットプレイス、ソーシャルメディアなど、あらゆる販売チャネルを統合的に管理できる環境を提供する点にあります。本記事では、Shopifyの収益モデルと戦略、そのエコシステムを解説し、企業の規模や業種を問わず、多様なビジネスに柔軟に対応できるそのプラットフォームの価値について考察します。 多様なビジネスに対応する柔軟性と拡張性 Shopifyは2006年、カナダで創業され、オンラインストアを構築するためのシンプルなツールとしてスタートしました。しかし、その後の進化は目覚ましく、現在では世界175か国以上で数百万のマーチャント(販売者)に利用されるグローバル企業へと成長しました。その特徴は、あらゆるビジネス規模や業種に対応できる柔軟性と拡張性にあります。 エンタープライズ市場向けに提供される「Shopify Plus」は、大規模なカスタマイズや拡張が可能で、多国籍企業の複雑なニーズにも対応しています。たとえば、NestléやMattelなどの大手企業がShopify Plusを採用し、膨大な商品データや高度な物流要件を処理しています。Shopify Plusは、企業規模が拡大する中で必要となる柔軟なスケーラビリティを提供し、成長に伴う負担を軽減します。 Shopifyの提供する機能は、オンラインストア構築だけに留まりません。マーケティングオートメーション、在庫管理、支払い処理、物流管理、さらにはAI駆動型のパーソナライズ機能まで、ECビジネスを運営する上でのあらゆる側面を包括しています。このような包括的なアプローチにより、マーチャントは業務効率を向上させると同時に、顧客体験の質を高めることが可能になります。 持続可能な成長を支える柱 Shopifyは、急成長するEC市場において、収益構造と運営モデルを多角的に構築することで競争優位性を維持しています。同社の収益は大きく「サブスクリプションソリューション」と「マーチャントソリューション」に分類され、この2つが企業の成長を支える主要な柱となっています。それぞれのセグメントは、収益の安定性と拡大性を兼ね備えており、特に2024年第4四半期には、売上高が前年比24%の成長を記録しました。 以下では、これらの収益モデルの特徴を詳述し、Shopifyの成長可能性について考察します。 1\. 安定収益を支える基盤 「サブスクリプションソリューション」は、月額課金を基本とした収益モデルであり、特に「Shopify Plus」のプレミアムプランは収益増加に大きく寄与しています。2024年第4四半期には、このセグメントの収益は6億4,800万ドルを記録し、サブスクリプションソリューションの売上総利益率は82.7%と非常に高い水準を維持しました。これは、同社が提供するShopify Plusやオンラインストア構築ツール、ビジネス運営支援ツールなどの付加価値の高さを示すものであり、マーチャントが簡単に導入できる使いやすさとスケーラビリティが評価されていることを物語っています。 さらに、月次定期収益(MRR)も前年同月期に比べ28%増加し、1億8,300万ドルに達しました。このうち、Shopify PlusがMRR全体の32%を占めており、多くのエンタープライズ企業からの信頼を集めていることが分かります。エンタープライズ市場向けのプラットフォームとして、Shopify Plusは高い利益率と収益の安定性を実現しており、同社の収益基盤を強化しています。 2.成長エンジンとしての決済サービス Shopifyの収益モデルにおいて、「マーチャントソリューション」は全体収益の72%を占める重要なセグメントです。このセグメントでは、Shopify PaymentsやShopify Fulfillment Networkなど、マーチャントがビジネス運営を効率化するための包括的なサービスを提供しています。 2024年第3四半期のデータによれば、Shopify Paymentsの決済取扱高(GPV)は65億ドルに達し、前年同期比30%の増加を記録しました。特に、Shopify Paymentsは、マーチャントが外部の決済サービスを利用する際に発生する追加の取引手数料が免除される点で高く評価されています。この手数料回避により、マーチャントに経済的なメリットを提供しつつ、Shopify自身も収益を獲得する仕組みが確立されています。 加えて、Shopify Paymentsはエコシステム全体のサービス利用を促進する役割も果たしています。たとえば、Shopify Fulfillment NetworkやShop Payとの連携により、マーチャントの運営効率をさらに向上させるとともに、プラットフォーム全体へのエンゲージメントを高めています。この相乗効果が、Shopifyの収益成長を持続的に支える原動力となっています。 3.コンバージョン率を高めるShop Payの役割 Shopify Paymentsの成長をさらに後押ししているのが、ワンタップチェックアウト機能「Shop Pay」です。このサービスは、購入者がわずか数クリックで支払いを完了できる利便性を提供しており、特にモバイル環境での購入プロセスを迅速化する効果があります。これにより、購入者の離脱率が低減し、マーチャントの売上向上につながっています。 さらに、Shop PayはYouTubeやInstagramなどの主要SNSプラットフォームとの連携を進めており、ソーシャルコマースの分野でも重要な役割を果たしています。これらの取り組みは、Shopify Paymentsの決済手数料収益の拡大だけでなく、ブランド力やエコシステム全体の成長にも貢献しています。 収益モデルの課題と対応策 Shopify Paymentsが収益拡大を牽引する一方で、いくつかの課題も存在します。特に、競争が激化するEC市場において、他の決済プロバイダーとの差別化を維持するためには、さらなる機能の強化とコスト競争力の向上が求められます。また、国際市場における規制や法的要件への対応は、グローバル成長を実現するための重要な課題です。 これらの課題に対し、Shopifyは戦略的な施策を講じています。たとえば、AIを活用したリスク管理や詐欺防止機能の導入により、取引の安全性と信頼性を確保しています。また、物流ネットワークの最適化や新しい決済手段の導入を進めることで、競争優位性をさらに強化しています。 Shopify Paymentsを中心とした決済手数料収益は、Shopify全体のエコシステムを支える中核的な役割を果たしています。特に、エコシステム全体との統合やサービス間の相乗効果によって、同社の収益モデルはさらなる成長を見込むことができます。 今後、グローバル市場での拡張や新たな付加価値サービスの導入を通じて、Shopify Paymentsは持続可能な成長を牽引する重要な要素として機能し続けるでしょう。 グローバル展開と現地のニーズに対応した柔軟な戦略 Shopifyは、グローバル市場での存在感を強化するために、現地のニーズや規制に対応した柔軟なアプローチを積極的に展開しています。2024年第4四半期には、国際市場での取扱総額が前年同期比で30%以上増加しました。この成長の背景には、ローカライズと地域ごとの規制やニーズに対応する柔軟なアプローチがあります。 たとえば、Shopifyはマーチャントが実店舗で非接触型決済を受け付けることを可能にする「Tap to Pay」機能を複数の国で導入し、実店舗での支払いプロセスを簡素化しました。また、地域ごとの税務処理や配送ネットワークの統合を進め、新市場への迅速な参入を可能にしています。大手会計ファームEYの調査では、Shopifyを活用したマーチャントが販売対象国を平均83%拡大し、海外売上が40%以上増加したことが報告されています。 さらに、国際市場での成功を支える重要な要素として、Shopifyが提供する多通貨対応や多言語サポートが挙げられます。これらの機能は、エンタープライズ企業が異なる市場にスムーズに参入・適応するための基盤を提供しています。 Shopifyエコシステムの価値 Shopifyのエコシステムは、単なるプラットフォーム以上の価値を提供するものです。その中核をなすのが、アプリストアとパートナープログラムです。アプリストアには数千種類のアプリが揃っており、マーチャントは業務効率化や販売促進のためにカスタマイズ可能なツールを利用できます。SEO最適化ツールやマーケティングオートメーション、在庫管理アプリなど、様々な選択肢が用意されています。 また、パートナープログラムは、開発者やデザイナー、コンサルタントがShopifyエコシステムに参加するための枠組みを提供しています。この仕組みにより、マーチャントは高度な専門知識やカスタマイズサービスを利用することが可能です。特に、Shopify Plusを利用するエンタープライズ企業は、自社のビジネス規模や特有の要件に応じて、プラットフォームを柔軟にカスタマイズできます。たとえば、複雑な商品管理や多国籍市場への対応といった高度なニーズに合わせて、専用の機能を開発したり、既存のアプリやサービスを組み合わせたりすることが可能です。 さらに、Shopifyはコミュニティ形成にも注力しています。オンラインフォーラムやイベントを通じて、マーチャント間の情報交換やパートナーとの連携を促進しています。このエコシステム全体が、マーチャントの成功を促進し、Shopify自身の成長を支える重要な基盤となっています。 Shopifyがもたらす実践的な成果 Shopifyを活用した成功事例は数多く存在します。それぞれの企業が直面する課題に対応し、具体的な成果を上げています。以下に、代表的な事例をいくつか紹介します。 Allbirds:サステナブルなシューズブランドであるAllbirdsは、Shopify Fulfillment Networkを導入することで、物流プロセスを効率化し、配送コストを15%削減しました。この成果により、配送速度が向上し、顧客満足度の向上にも寄与しています。 Heinz:食品業界の大手Heinzは、パンデミック期間中にShopifyを活用し、オンライン販売を強化しました。同社は、従来の店舗中心の販売チャネルが制限される中でも、オンライン売上を40%以上増加させることに成功しました。 Nestlé:多国籍企業であるNestléは、Shopify Plusのスケーラビリティを活用し、複雑な事業要件に対応しました。たとえば、国ごとに異なる商品ラインナップや物流要件を統一的に管理できる仕組みを構築し、グローバル市場での競争力を強化しました。 Venus et Fleur:高級フラワーブランドのVenus et Fleurは、Shopifyを活用してデジタルと実店舗の小売業務を統合し、成長を促進しました。これにより、顧客ロイヤルティが向上し、全チャネルでシームレスな高級体験を提供しています。 SilkSilky:シルク製品ブランドのSilkSilkyは、Shopify Plusプランにアップグレードした後、売上が680%増加しました。 これらの事例は、Shopifyが企業規模や業種を問わず、顧客に高い価値を提供するプラットフォームであることを示しています。 まとめ Shopifyは、柔軟性と拡張性を持つプラットフォームを通じて、マーチャントの成功を支える収益モデルとエコシステムを構築しています。サブスクリプションソリューションによる安定した収益基盤と、Shopify Paymentsを中心としたマーチャントソリューションの成長エンジンは、企業規模を問わずに顧客に大きな価値を提供しています。 また、Shopifyはグローバル市場への対応やAI活用、エコシステムの拡張を通じて企業のデジタルトランスフォーメーションを強力に支援する存在です。Shpify Plusの提供等を通じてエンタープライズ企業の信頼できる成長パートナーとなっています。 今後も、Shopifyは高度な機能や新たなサービスの導入を通じて、企業の収益性や運営効率を向上させ、グローバル市場での競争力を確保する戦略的な基盤として重要な役割を果たし続けるでしょう。 参考文献 Shopify Q4 2024 Financial Results - Press Release Shopify Q4 2024 Financial Results -Financial Supplemental Shopify.Enterprise Lemkin, J. 5 Interesting Learnings from Shopify at $8 Billion in ARR. SaaStr. Tamir, M., & Seseri, R.How Shopify Implements AI Across Sales and Product. SaaStr. All Star SaaS.SaaS Weekly Vol. 115. All Star SaaS.SaaS Weekly Vol. 91. Kubix Media.The History of Shopify. BuiltWith.Shopify Trends. BuiltWith.Shopify Country Trends (United States) Shopify.Shopify Case Studies. Shopify.Case studies Sanket Teekher.Shopify’s Marketing Strategy. --- # ステークホルダーの皆様へ URL: /insights/8 title: ステークホルダーの皆様へ summary: "この数年間でデジタルトランスフォーメーションというキーワードがメディアや資料で取り上げられる機会が急激に増えました。業界規模に関わらず、あらゆる企業で多様なDXへの取り組みが推進されるなかで、足元では業務効率化の観点だけでなく、新しい事業や売上を創出するためのデジタル技術の活用についての議論も活発になっています。" date: 2022-06-30 author: "authors/takafumi\_endo.mdx" category: "categories/letter.mdx" cover: "/images/insights/8\_cover.jpg" この数年間でデジタルトランスフォーメーションというキーワードがメディアや資料で取り上げられる機会が急激に増えました。業界規模に関わらず、あらゆる企業で多様なDXへの取り組みが推進されるなかで、足元では業務効率化の観点だけでなく、新しい事業や売上を創出するためのデジタル技術の活用についての議論も活発になっています。デジタルソリューションやソフトウェアサービスを提供するベンダー企業にとってもビジネス機会が大きく広がっており、スタートアップから大手企業までベンダー各社は人員増強に向けた投資を加速させています。 インターネット及びテクノロジー銘柄を中心とした新興株式市場の動向が不安定ではあるものの、各社のデジタルトランスフォーメーションの取り組みは未だ道半ばであり、本格的なシステム実装に取り掛かり成果が見え始めるのはまだまだ といった状況です。弊社においても2020年の創業以来、顧客企業におけるDXパートナーとしてデジタル事業づくりをご支援させていただいており、その変化を日々現場でも実感しています。 資金調達/シリーズAラウンドの背景 そのような事業環境のなかで、本日ROUTE06では、ALL STAR SAAS FUNDをリード投資家として、ジャフコ グループ、デライト・ベンチャーズ、ジェネシア・ベンチャーズ、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタルを引受先とする約15億円の第三者割当増資(シリーズAラウンド)を行いました。より顧客企業に利便性の高いサービスを提供するために、エンタープライズ向けビジネスAPIプラットフォーム「Plain」の開発及び社内の組織体制を強化するための投資を積極的に行っていく方針です。 また株主各社との連携を強化することで大手企業からスタートアップまでより幅広い企業群とのネットワークを構築し、特定企業グループのみならず、多様なパートナーとの協業による事業創造をはじめとした機会創出を行っていくことも、私たちがステークホルダーの皆様に提供できる価値の一つであると考えています。創業初期の弊社シードラウンドにおいて、デライト・ベンチャーズ及びジェネシア・ベンチャーズから資金調達を実施した時点では、エンタープライズシステム領域においては老朽化した基幹システムにかかる「2025年の崖」問題が一つの重要な論点ではありましたが、引き続きそのような課題の解決にベンダー各社が向き合いつつも、足元ではユーザー企業とベンダー企業のパートナーシップのあり方など、より具体的な推進体制の議論にも注目が集まっています。 経済産業省の公開する最新の「DXレポート2」(デジタル産業の創出に向けた研究会の報告書)においては、「ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進」の必要性が強調されています。ベンダー企業の在り方としてもラン・ザ・ビジネス型(保守運用)主体からバリューアップ型へ、アジャイル型の開発等によって事業環境の変化への即応を追求することで、ユーザー企業とベンダー企業の垣根が無くなっていくという産業の未来について提起されています。そういった状況こそ、弊社が目指す世界であり、新しい株主の皆様のご協力を得ながらも、その流れを加速させられるよう、尽力していきたいと考えています。 ROUTE06のこれから プロダクトについて 「Plain」とはB2C及びB2Bに関わらず、オンライン・マーケットプレイスをはじめとした様々なデジタル事業の垂直立ち上げ及び継続的なサービス改善に貢献するバックエンドシステムです。フルスクラッチのシステム開発よりも低コストかつ短期間で実装できると共に、ノーコード/ローコードのソフトウェアサービスよりも柔軟性のUX及び業務設計が可能であり、アジャイル開発を前提とした機能群及びインフラが用意されています。昨今ではエンタープライズソフトウェア領域においてもUXの優先度が高まっており、より良い顧客サービスを提供するためには業務フローや体制が柔軟であることが求められるため、そういった大手ユーザー企業の需要や体制の変化に対応するために生まれたプロダクトです。 1.ヘッドレスアーキテクチャ / Headless architecture ビジネス用途や顧客価値に応じて自由なユーザー体験及び業務フローを設計できるだけでなく、デザイン性の高いユーザーインターフェースを実装可能 2.オーケストレーション / Orchestration 複雑かつ個別性の高い事業ドメインにおけるデジタルサービスでも、運用及び関連業務の遂行に必要なシステムインフラからユーザーインターフェースまでワンストップで構築可能 3.データプラットフォーム / Data platform システムリリース直後から高度なデータサイエンスやマーケティングオートメーションなどに活用可能なデータ基盤及びビジネスインテリジェンス機能を利用可能 オンラインマーケットプレイス(B2C/B2B)、受発注プラットフォーム、OMOストア、クラウドEDI、ビジネスマッチングプラットフォームなどの複雑な業務オペレーションやデータ連携が求められるデジタル事業において導入メリットが大きくなっています。店舗や工場施設のようなリアルアセットを活用したデジタルプラットフォームサービスを立ち上げたい小売・製造・不動産業や国内外での取引先ネットワークを活用したマッチングプラットフォーム事業を立ち上げたい流通・仲介業など、様々な業界の事業DX案件でPlainの導入及び検討が進んでいます。今後データ基盤を中心として機能拡充や業界固有の機能カスタマイズへの対応などに力を入れていくことで、顧客企業におけるデジタル事業立ち上げのスピードや改善速度の改善に貢献していきたいと考えています。「Plain」の事業としては今後5年間で契約数100件以上を目指します。 組織について ROUTE06では創業3年目に入った節目として会社のミッション・バリューを刷新し、新たにパーパス(会社の存在意義)及びクレド(組織のあり方)を策定しました。パーパスを「Define the route / 未来への道筋を描く」と定め、複雑な事業課題の解決に向き合う大手企業の変革者のDXパートナーとして、最新のデジタル技術及びシステムインフラの提供とデジタル事業立ち上げのプロフェッショナルチームによる支援を通して、大手企業の既存資産を活用した新しい事業機会と経済価値の創出にチャレンジしていくことを明文化しています。またクレドについては「Be a disruptor / 優しい変革者であり続けよう」とし、あらゆるステークホルダーに対して優しくなめらかに変革の熱量を伝搬させられるような組織となることを目指しています。 そのような前提のもとで、社員及び取引先関係者の方々がこれまで以上に各々の強みを発揮でき、また成長機会にあふれる環境を構築するために、シリーズAラウンドでの調達資金を積極的に投資していきます。より良い顧客サービスを提供するだけでなく、デジタル人材が不足している業界環境のなかで、一人でも多くのプロフェッショナル人材を輩出できるような企業となることも弊社が目指すべきミッションの一つであると考えています。 1.非同期で働きやすい環境 全社ワークスペースとしてGitHubを活用し、SlackやFigmaなどのオンラインコラボレーションツールを駆使することで非同期を前提とした働きやすい環境構築を追求します。入社時に付与する20日の年次有給休暇のほか、SickLeave、リラックス休暇や育児休業給付金上乗せ手当など、制度を活用することで最もパフォーマンスが発揮される働き方を自ら選択できるように設計しており、それぞれの人生を妥協しないための制度を今後も拡充していきます。 2.人材育成 新卒採用を視野に入れ、プロダクト開発の技術向上をはじめ、個々人が今後のキャリアに生かせるような学びの機会を後押しする研修支援等を拡充します。また、オンボーディングを含めた各種ガイドラインやプロジェクトを通して得られた学び・知見などの社内ドキュメントをGitHub上に資産化し、誰もが必要なタイミングで必要な情報を得られることはもちろん、フラットに改善提案を行うオープンソース文化の推進と能動的に学び合える組織環境を目指します。 3.セキュリティ 設立初年度より上場企業水準の信頼性とスタートアップ水準のアジリティの両立を目指し、モバイルデバイス管理(Jamf Pro)等を導入するなど情報管理体制に力を入れてきました。今後もコーポレートエンジニアリングチームの体制強化に取り組むほか、2022年度内にISMS認証等の取得に加え、将来的なSOC2+報告書水準の内部統制の実現に向けた投資を行っていきます。 今後5年で現在の約7倍にあたる200名規模の組織となることを目線としながら、リモートファーストな体制構築にこれまで以上に力を入れていくことで、国内外からより多様な人材が集まる土台を構築していきます。海外ではGitLab社のように数千人規模の従業員を要しながら、リモートファーストでのエンタープライズソフトウェア開発を実施している会社も散見されるようになりました。ROUTE06では大手企業の先進的なDX案件を支援する会社である以上、自分たち自身が最もDX化された組織を目指し、会社全体の思想や仕組みをアップデートし続けるべきであると考え、新しい働き方にも積極的に挑戦していく方針です。 上記の通り、今後プロダクト及び組織への投資を加速させることによって、ステークホルダーの皆様にとってより価値のある企業となるべく、引き続き最善を尽くして参ります。 --- # プロセスマイニングとRPAの融合:Celonisで実現する次世代のビジネスプロセス改革 URL: /insights/80 title: "プロセスマイニングとRPAの融合:Celonisで実現する次世代のビジネスプロセス改革" summary: "本記事では、この分野のリーディングカンパニーであるCelonisに焦点を当て、プロセスマイニングとRPAの融合がもたらす次世代のビジネスプロセス改革について詳しく解説します。" date: 2025-03-10 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/transformation.mdx" glossary: "glossary/ai.mdx" cover: "/images/insights/80/cover.jpeg" デジタル化が加速する現代のビジネス環境において、企業は複雑化する業務プロセスの効率化と最適化に直面しています。この課題に革新的なソリューションを提供しているのが、プロセスマイニングとロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)の融合技術です。本記事では、この分野のリーディングカンパニーであるCelonisに焦点を当て、プロセスマイニングとRPAの融合がもたらす次世代のビジネスプロセス改革について詳しく解説します。Celonisの革新的なアプローチが、どのように企業の業務効率を劇的に向上させ、競争力を強化しているのか、その実態と将来展望に迫ります。 Celonisとは: ビジネス変革のエンジン 現代の企業は、複雑化するビジネスプロセスと膨大なデータの中で、効率的な運営を求められています。この状況下で急速に台頭しているのが、ドイツ発のソフトウェア企業「Celonis」です。Celonisは、企業の業務プロセスを可視化し、自動化と改善を推進する革新的な技術を提供しており、彼らの「Execution Management System (EMS)」は、企業内の膨大なデータをリアルタイムで分析し、パフォーマンス向上に貢献することを目指しています。 Celonisのプラットフォームは、単なるデータの可視化ツールに留まりません。プロセスマイニング技術を駆使して、企業の非効率なプロセスを自動的に検出し、具体的な改善策を提示する強力な能力を持っています。例えば、企業が日常的に処理する膨大なトランザクションデータを分析し、ボトルネックや無駄を見つけ出すだけでなく、具体的な解決策まで導き出します。これにより、経営層は即座に問題に対処し、組織全体のパフォーマンスを最適化することが可能となるのです。 特に注目すべきは「Process Intelligence Graph」と呼ばれる技術です。この技術は、複雑な業務フローを視覚的に表現し、問題点を直感的に理解させることができます。これにより、各部門の責任者がより迅速に適切な判断を下し、効率的な業務遂行が可能となります。さらに、Celonisの強力なアルゴリズムは、過去のデータ分析に留まらず、未来のリスクを予測し、最適な行動を推奨します。このようなプロセスマイニング技術の進化は、企業にとって戦略的な意思決定を大幅に加速させる手段となっています。 Celonisはプロセス改善だけでなく、組織内の業務自動化も推進しています。彼らのEMSは、企業が抱える膨大なデータをリアルタイムで処理し、効率化のためのアクションを自動的に実行することが可能です。これにより、人為的なミスを減らし、時間とコストを大幅に節約することができます。 Celonisは、プロセスマイニングと自動化を統合することで、企業がより効率的に運営できるよう支援しています。ビジネスプロセスの可視化から始まり、リアルタイムでの改善と自動化を通じて、企業は競争優位性を高めることが可能です。今後も、AIやRPAと連携することで、さらなる進化が期待されます。Celonisの技術は、ビジネスの変革に欠かせない要素となり、企業の未来を切り開く鍵となるでしょう。 未来を見据えたプロセスマイニング: Celonisの先駆的アプローチ Celonisは、プロセスマイニングの分野を超えて、企業の業務を自動化し、最適化する技術で革新を続けています。同社のEMSは、業務データをリアルタイムで分析し、企業が直面するプロセス上の問題を可視化するだけでなく、自動化によってそれらを解決することが可能です。2022年には、追加で10億ドルの資金を調達し、企業価値は130億ドルに達しました。これは、Celonisの技術と市場での地位が高く評価されていることを示しています。 Celonisは、大手企業とのグローバルなパートナーシップを強化し、複雑なプロセスを視覚化する技術を進化させ続けています。特に2022年には、「サブウェイスタイルマップ」と呼ばれる革新的な機能を発表しました。この機能は、複数の業務プロセスをマッピングし、企業の複雑なワークフローを直感的に可視化する技術を提供します。これにより、企業は多面的なプロセスの相互関係を明確に把握し、より効率的な運用が可能になります。この進化により、Celonisは単なるプロセスマイニングのツールから、ビジネスプロセスの総合的な最適化ソリューションへと成長しています。 さらに、CelonisはIBMなどの大手企業と戦略的提携を結び、グローバルにその技術を展開しています。これにより、多くの企業がCelonisの技術を活用し、業務の効率化やコスト削減に成功しています。特にIBMとのパートナーシップは、プロセスマイニングを企業の中核システムに組み込み、さらに多くの自動化ソリューションを提供するための重要なステップとなりました。 Celonisは、今後もAIやRPAとの融合を進めることで、企業のビジネスプロセスをさらに高度に最適化し、業務の効率化を支援することが期待されています。この取り組みにより、企業は複雑化する市場環境において、より迅速かつ効果的に対応することが可能になるでしょう。 プロセスマイニングとは: ビジネスの裏側を可視化する次世代ツール プロセスマイニングは、企業の業務プロセスを可視化し、データに基づいて改善策を提案する次世代技術です。この革新的なアプローチは、ビジネスプロセスの各ステップを、ERPやCRMなどのシステム内で発生するイベントログデータとして捉えます。プロセスマイニングは、このデータを分析し、実際の業務フローの全体像をリアルタイムで把握することができます。これにより、組織は非効率な部分やボトルネックを特定し、業務を最適化するための具体的な手段を講じることが可能になります。 プロセスマイニングの特筆すべき特徴は、従来のプロセスマッピングとは異なり、実際に行われている業務の「真の姿」をデータに基づいて明らかにすることです。理論上の業務フローと現実に起こっているフローにはしばしばギャップが生じ、このギャップがプロセスの非効率性を生む原因となっています。Celonisのプロセスマイニングは、このギャップを埋め、プロセス全体を可視化することで、企業が迅速かつ的確に業務改善を行うための重要なツールとなっています。 具体的な事例として、Deutsche Telekomの成功があります。彼らは、支払いプロセスの分析を通じて、重複した請求書を特定し、将来的な問題を未然に防ぐ仕組みを導入しました。このような取り組みにより、キャッシュフローの改善と業務の効率化が実現されています。 さらに、プロセスマイニングはRPAと組み合わせることで、業務の自動化にも大きく貢献します。Celonisは、RPAを通じて単純なタスクの自動化だけでなく、複雑な業務プロセス全体をデータドリブンで改善するためのプラットフォームを提供しています。これにより、組織は迅速かつ効率的にビジネスプロセスを最適化し、価値を最大化することが可能になります。 プロセスマイニングは、単なる業務の可視化に留まらず、データに基づく事実に基づいて戦略的な意思決定を支援する強力なツールです。ビジネスプロセスの透明性を高め、業務効率を向上させるこの技術は、今後も企業の競争力向上に不可欠な存在となっていくでしょう。企業がデジタル化を加速させる中で、プロセスマイニングは意思決定の質と速度を向上させ、市場での競争優位性を確立するための重要な武器となることが期待されます。 RPAとの融合: プロセスマイニングで自動化の未来を切り開く プロセスマイニングとRPAは、現代のビジネスにおいて重要な役割を果たす技術であり、両者を組み合わせることで、企業の自動化と効率化の可能性が飛躍的に広がります。RPAは繰り返し行われるルーチン作業を自動化する技術で、人間の介入を最小限に抑え、エラーを削減し、コストを大幅に削減することが可能です。しかし、RPAだけではどのプロセスが自動化に適しているかを判断するのは困難な場合があります。ここでプロセスマイニングが重要な役割を果たします。プロセスマイニングは、ERPやCRMなどのシステム内のイベントログデータを利用し、業務データを基にプロセス全体をリアルタイムで視覚化します。これにより、非効率な部分やボトルネックを特定し、自動化が適用可能な領域を明確に示すことができます。 Celonisはこの技術を駆使して、企業が自動化プロジェクトをより迅速かつ効果的に進められるよう支援しています。CelonisのプロセスマイニングとRPAの融合は、企業がデータ駆動型のアプローチで自動化を進めるための強力な基盤となります。プロセスマイニングが業務フローを「X線」のように透視して問題点を浮き彫りにする一方で、RPAはその問題に対する自動化のソリューションを提供します。この組み合わせにより、プロセス改善がリアルタイムで行われ、業務全体の効率化が実現します。また、プロセスマイニングの分析結果を基にRPAの適用領域を最適化することで、自動化によるコスト削減や業務効率化がさらに進みます。 このアプローチは、単なる個別業務の自動化にとどまらず、企業全体のプロセスを包括的に最適化することを可能にします。結果として、企業はデータに基づいた迅速な意思決定が可能となり、業務の効率化とコスト削減を実現します。今後、AIや機械学習との統合が進むことで、プロセスマイニングとRPAの効果はさらに拡大し、企業のビジネスプロセス改革に大きな影響を与えることが予想されます。この技術の進化は、企業が市場の変化に迅速に対応し、競争力を維持・向上させるための鍵となるでしょう。 Celonisの導入事例: 成功へのプロセスを描くグローバル企業の革新 Celonisのプロセスマイニング技術は、複雑な業務プロセスを分析し、効率化することで、多くの大手企業に目覚ましい成功をもたらしています。ここでは、PepsiCo、GEヘルスケア、Accenture、Uberの導入事例を中心に、Celonisがどのように企業のパフォーマンスを向上させたのかを詳細に解説します。 PepsiCoの事例: 大規模なプロセス変革とコスト削減 PepsiCoは、複雑な供給チェーンと財務プロセスの効率化を目的にCelonisを導入し、業務の透明性を向上させました。アカウント処理と支払業務の改善により年間1,000時間の節約を実現させました。その後、9つのプロセスに拡大導入し、不良債権の削減や業務フロー全体の透明性向上を実現しました。同社はCelonisによる詳細な業務洞察を高く評価しています。 GEヘルスケアの事例: キャッシュフローの劇的改善 GEヘルスケアはCelonisを導入し、財務プロセスとキャッシュフローを効率化。1年以内に13億ドル以上のキャッシュフローを確保し、受注から現金回収プロセスを最適化、納期を2週間短縮しました。また、サプライチェーンの可視化とリスク管理強化により、納期遵守や顧客満足度の向上を実現。今後も業務効率化のさらなる推進を予定しています。 Accentureの事例: 調達から支払までのプロセス最適化 AccentureはCelonisを活用し、調達から支払までのプロセスを最適化。年間3,500万ドルの資金確保やサイクルタイム50%削減、請求書承認時間30%短縮など、業務効率を大幅に改善しました。また、プロセスの透明性向上によりサプライヤーとの関係を強化し、業務信頼性を向上。同社はCelonisを高く評価し、その技術が大規模組織でも有効であることを示しています。 Uberの事例: 顧客サービスの効率化 UberはCelonisを活用して顧客サービスプロセスを改善し、ボトルネックを特定して迅速に対応することで、顧客満足度とサービス信頼性を向上させました。この成功は、Celonisのプロセスマイニング技術が業務可視化にとどまらず、具体的な改善アクションを提供する強力なツールであることを示しています。PepsiCoやGEヘルスケア、Accentureなどの大企業も同技術を活用し、効率化やコスト削減を達成しており、今後も多くの企業での導入が期待されています。 グローバルパートナーシップ: Celonisが描く未来のビジネス地図 Celonisは、IBM、Accenture、マッキンゼーなどの大手企業と戦略的なパートナーシップを結び、ビジネスプロセス改革を推進しています。IBMはその専門知識とCelonisのプロセスマイニング技術を融合させ、サプライチェーンや財務プロセスの効率化を支援し、迅速な意思決定と改善策の実施を可能にしています。 Accentureは、プロセス分析と最適化のための「センター・オブ・エクセレンス」を設立し、複雑な調達プロセスや財務プロセスの改善を通じて年間数百万ドル規模のコスト削減を実現しました。マッキンゼーは、業務効率化やサプライチェーン最適化のコンサルティングにプロセスマイニングを積極的に取り入れ、顧客企業の競争力向上を支援しています。これらのパートナーシップは、Celonisが描く未来のビジネスプロセス改革の中核を成し、効率化や持続可能な成長を実現するための基盤を提供しています。今後も、この戦略を通じて、Celonisはより多くの企業にその技術を浸透させ、グローバルなビジネス環境の変革を加速させることが期待されます。 プロセスマイニングの未来を切り開く: Celonisが示す次のステージ プロセスマイニング市場は今後も大きな成長が見込まれており、Celonisはその分野において先駆的な役割を果たし続けています。2025年以降、プロセスマイニングの技術はさらに進化し、AIや自動化といった最先端技術との融合によって、新たなビジネス価値を生み出すことが期待されています。 AIからサステナビリティまで プロセスマイニングの未来は、AIや機械学習の活用による高度な予測や問題解決の提案、ハイブリッドインテリジェンスの進化による人間と機械の協働、そしてデータ主導型経営の推進によって大きく変革されつつあります。Celonisは、プロセスインテリジェンスグラフを通じてAIの精度を向上させ、より正確な分析と提案を可能にし、人間の直感と機械の分析力を組み合わせることで柔軟かつ効果的な業務改善を実現しています。また、シミュレーション分析を活用した将来予測と戦略立案の支援や、関連ツールとの連携を強化するエコシステムの拡大と業界標準化の進展も、プロセスマイニングの次なるステージを形成しています。さらに、プロセスマイニングは、資源利用の最適化や環境負荷の低減といったサステナビリティへの取り組みにも寄与しており、企業の持続可能な成長を支える重要な役割を果たしています。これらすべての要素が相互に作用し、プロセスマイニングは企業の競争力強化と未来のビジネスプロセス改革を牽引する存在となるでしょう。 Celonisが描く未来のビジネスプロセス 今後のプロセスマイニング市場では、AIや自動化技術との統合がさらに進み、企業にとってより高度なプロセス改善と効率化の手段が提供されると予想されます。Celonisは、この分野での技術革新をリードし、企業が持続可能な成長を遂げるための道筋を描いていくでしょう。 Celonisの技術は、単なる業務効率化ツールを超えて、企業の戦略的意思決定を支援する不可欠なプラットフォームへと進化しています。AIとの融合、ハイブリッドインテリジェンスの活用、データ主導型経営の推進、そしてシミュレーション技術の高度化により、Celonisは企業の競争力強化と持続可能な成長を全方位的にサポートする存在となっています。 さらに、グローバルパートナーシップの拡大により、Celonisの技術はより多くの企業に浸透し、様々な業界でのプロセス革新を加速させることが期待されます。IBMやAccenture、マッキンゼーといった世界的企業との協力関係は、Celonisの技術が企業のデジタルトランスフォーメーションにおいて中核的な役割を果たすことを示しています。 プロセスマイニングとRPAの融合、そしてAIとの統合が進むにつれ、企業はより高度な自動化と効率化を実現し、競争力を強化していくことができるでしょう。Celonisが提供する包括的なソリューションは、企業が複雑化する市場環境に適応し、持続的な成長を実現するための強力なツールとなります。 Celonisの技術がサステナビリティへの取り組みを支援する点も注目に値します。環境負荷の低減と経済成長の両立が求められる現代において、プロセスマイニングを通じた効率化は、企業の社会的責任の遂行にも大きく貢献することでしょう。 Celonisが切り開くプロセスマイニングの未来は、企業のビジネスプロセスを根本から変革し、より効率的で持続可能な経営を可能にします。この技術革新は、企業が直面する複雑な課題に対して、データに基づいた迅速かつ効果的な解決策を提供し続けるでしょう。Celonisの進化とともに、ビジネスの未来はより透明で効率的なものへと変貌を遂げていくことが期待されます。 参考文献 Celonis - Web site TechCrunch - With a $13B valuation, Celonis defies current startup economics TechCrunch - Celonis Raises $1B to Expand Capabilities TechCrunch - Celonis secures another $1B to find and fix process problems in enterprise systems TechCrunch - Celonis snares $1B Series D on $11B valuation TechCrunch - Celonis announces significant partnership with IBM to sell its process mining software TechCrunch - Celonis pushes beyond process mining into automated workflow tooling IBM - Process Mining Overview UiPath - Process Mining and RPA Forbes - Process Mining and Data Optimization Forbes - Celonis Company Profile AiMultiple - RPA vs Process Mining Automation Anywhere - RPA and Process Mining Accenture - Purchase to Pay Success Story PepsiCo - Process Transformation GE Healthcare - Cash Flow Process Mining Uber - Customer Service Process Mining McKinsey and Celonis Partnership Accenture - Titanium Partner IBM - Titanium Partner Celonis Blog - Expert Predictions on Process Mining Trends for 2024 and Beyond --- # Anthropicによる「人間中心のAI開発」が描く未来 URL: /insights/81 title: "Anthropicによる「人間中心のAI開発」が描く未来" summary: "本記事では、Anthropicの設立背景、技術的な取り組み、そして実際の導入事例を通じて、同社がAI業界や社会に与える影響を深掘りし、信頼性あるAI活用の実現に向けた意義を考察します。" date: 2025-04-01 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/transformation.mdx" glossary: "glossary/ai.mdx" "glossary/ai-agent.mdx" "glossary/llm.mdx" "glossary/generative-ai.mdx" cover: "/images/insights/81/cover.jpeg" AI(人工知能)は、業務効率化や新たな価値創出を通じて、多くのエンタープライズ企業にとって欠かせない要素となりました。しかし、その急速な進化は、企業や社会に対して深刻な課題も突き付けています。たとえば、AIによるバイアスの影響、データプライバシーの侵害、そして予測不能な動作のリスクが挙げられます。これらのリスクに対応するためには、安全で透明性のあるAIの開発が不可欠です。 こうした中、AnthropicはAIの「安全性」と「倫理性」に焦点を当てた研究開発を行い、業界をリードしています。本記事では、Anthropicの設立背景、技術的な取り組み、そして実際の導入事例を通じて、同社がAI業界や社会に与える影響を深掘りし、信頼性あるAI活用の実現に向けた意義を考察します。 Anthropicの概要:設立から現在までの歩み Anthropicは、2021年にダニエル・アモディ(Dario Amodei)とアリエル・ハーバー(Arianna Simpson)によって設立されました。設立の背景には、創業者たちがOpenAIでの研究を通じて抱いた「AIがもたらすリスクへの懸念」があります。 具体的には、大規模AIモデルが意図しない形で誤作動を起こす可能性や、透明性の欠如による制御の難しさが課題として挙げられていました。 これらの課題に対応するために設立され、「人間中心のAIの開発」という明確なミッションを掲げました。その結果、設立当初から「安全性」「透明性」「倫理性」を軸にした研究開発を推進しています。 Anthropicは、設立以来急速に成長を遂げており、その成長を支える大規模な資金調達を継続的に実施しています。2025年3月、AnthropicはシリーズEラウンドの資金調達を実施し、評価額は約615億ドル(日本円で約9.2兆円)に達したことを発表しました。 この調達ラウンドは、同社の技術開発の加速とエンタープライズ市場へのさらなる浸透を目的としており、業界においても大きな注目を集めました。 ​Anthropicは、AIの安全性と倫理性を強化する研究や、業界別に最適化されたソリューションの開発に注力しています。また、APIの信頼性と安全性を高めるためのツールやガイドラインを提供するなど、ユーザーが安心してAIを活用できる環境づくりにも取り組んでいます。 Claude 3.7 Sonnet:次世代のAIモデル 2025年2月、Anthropicは最新のAIモデルであるClaude 3.7 Sonnetを発表しました。​このモデルは、従来のAIが持つ限界を超え、ユーザーのニーズに応じて迅速な応答と詳細な推論の両方を提供できる「ハイブリッド推論モデル」として設計されています。​これにより、ユーザーは質問の性質や必要性に応じて、モデルの応答時間や深さを調整することが可能となり、AIとのインタラクションがより柔軟かつ効率的になりました。​ ハイブリッド推論の特徴 Claude 3.7 Sonnetの最大の特徴は、ユーザーがモデルの「思考時間」を制御できる点にあります。​例えば、簡単な質問には即座に回答し、複雑な問題には時間をかけて深く考察することが可能です。​これにより、速度と精度のバランスをユーザー自身が調整できる柔軟性が生まれました。​さらに、APIユーザーはモデルの推論に費やすトークン数を細かく設定でき、最大で128Kトークンまでの出力が可能です。​この機能により、ユーザーは応答の質と速度を具体的なニーズに合わせて最適化することができます。​ Claude 3.7 Sonnetによるコーディング支援の進化 Claude 3.7 Sonnetは、ソフトウェア開発において極めて高い性能を発揮するAIモデルです。ソフトウェアエンジニアリングのベンチマークであるSWE-bench VerifiedやTAU-benchにおいて他のモデルを上回る結果を示しており、コードの設計、バグ修正、大規模なリファクタリングなど、開発の全工程に対応できる柔軟性と精度を備えています。また、最大128Kトークン相当の情報を一括で処理できるため、複雑なコードの生成やプランニングにも強みを持ちます。 さらに、このモデルの登場に合わせて、Anthropicは新たに「Claude Code」というコーディング支援ツールのリサーチプレビューを発表しました。このツールは、開発者がターミナルから直接AIに作業を依頼できるエージェント型のシステムであり、コードの検索、編集、テストの実行、さらにはGitHubへのコミットといった多様なタスクをサポートします。これにより、開発者はAIと協働しながら、より効率的かつ精度の高いソフトウェア開発を実現できるようになっています。 多様な利用ケースと柔軟な応答 Claude 3.7 Sonnetは、コーディング以外にも多岐にわたるタスクで優れた性能を発揮します。​データ分析、コンテンツ生成、計画立案などの分野で、複雑なデータから洗練された分析や洞察を引き出す能力を持ちます。​また、視覚情報の抽出やカスタマーサポートエージェントとしての利用にも適しており、ユーザーの指示に忠実に従い、エラーの自己修正や高度な推論を行うことができます。​さらに、APIユーザーはモデルの応答時間を細かく制御でき、タスクの性質に応じて速度と精度の最適なバランスを設定することが可能です。 導入事例:Anthropicがもたらす実践的な活用例 AnthropicのAI技術は、単に業務の効率化や自動化を目的としたものではなく、安全性と倫理性を最優先に設計されています。近年、企業がAIを導入する際の重要な要件として、データの透明性、バイアスの排除、誤った情報の抑制といった倫理的課題が浮上しており、Anthropicの技術はこれらの課題を解決するために開発が進められています。その結果、多くの企業がAIを安心して導入し、信頼性の高い形で活用できるようになっています。以下では、実際にClaudeを導入し、安全性と倫理性を重視した活用を行っている事例を紹介します。 Perplexity AI:信頼性の高い検索エンジンの実現 Perplexity AIは、Claudeを活用して検索エンジンの精度を向上させるだけでなく、ユーザーが得る情報の信頼性を確保することにも重点を置いています。従来の検索エンジンでは、AIが生成する情報が誤った内容を含むことが課題となっていましたが、Claudeは「信頼できる情報源に基づいた回答を提供する」ことを目的に最適化されています。この技術により、ユーザーが誤解を招く情報を受け取るリスクを最小限に抑え、検索結果の品質を大幅に向上させることができます。Perplexity AIは、情報の透明性と安全性を重視し、企業や個人ユーザーが安心して活用できる検索体験を提供しているのです。 DoorDash:顧客対応における倫理的AIの活用 DoorDashでは、AIをカスタマーサポートに活用する際、倫理的なガイドラインを厳格に適用しています。従来のAIチャットボットでは、ユーザーの意図を誤解し、不適切な対応を行うケースがありました。しかし、Claudeを導入することで、ユーザーの感情やニーズをより正確に把握し、倫理的に適切な対応を実施できるようになりました。たとえば、クレーム対応や返金リクエストの処理において、AIがユーザーの不満を適切に汲み取り、問題をエスカレーションするか、自動対応で解決できるかを判断することが可能になっています。このように、倫理的配慮を備えたAIが顧客対応の品質を向上させ、企業のブランド価値を守る役割を果たしているのです。 Scribd:デジタルコンテンツ管理と著作権保護 Scribdは、デジタルライブラリの検索機能を強化するためにClaudeを導入しました。特に、著作権を尊重しながら適切に情報を分類し、ユーザーが求めるコンテンツを提供する点において、AIの倫理性が求められます。Claudeは、コンテンツの出所を明確にし、著作権侵害のリスクを抑えながら、正確な情報を提供する役割を担っています。さらに、ユーザーが求める資料を最適な形で推薦する機能を持ち、単なる検索精度の向上だけでなく、コンテンツの適正利用を促進する仕組みを実現しているのです。 安全性と倫理性を最優先に設計するためのテクノロジー AnthropicのAIテクノロジーは、単なる業務の効率化や自動化を目的としたものではなく、AIの「安全性」と「倫理性」を最優先に考慮し設計されています。従来のAIシステムは、その意思決定の透明性が低かったり、学習データに起因するバイアスを含んでいたりすることで、誤った判断を下すリスクを伴っていました。この問題を解決するために、Anthropicは「AIのアライメント」「バイアス抑制技術」「誤情報の抑制とハルシネーション制御」「憲法AI(Constitutional AI)」といった複数のアプローチを統合し、安全で倫理的なAIの開発を進めています。 AIのアライメント:人間の価値観に基づいた意思決定 AnthropicはAIが「人間の意図や価値観と整合する形で動作する」ことを保証するための研究を進めており、これを「AIのアライメント(Alignment)」と呼んでいます。AIのアライメント技術では、AIが人間の倫理基準や社会的価値観に従って適切な判断を行うように調整することが目的とされます。Anthropicはこの技術を「憲法AI(Constitutional AI)」という独自の手法を通じて実現しており、AIのトレーニング段階で倫理的なガイドラインを設定し、それに基づいてAIが自己調整するメカニズムを取り入れています。 通常のAIモデルでは、膨大なテキストデータを学習する過程で、必ずしも人間の価値観に沿った出力をするとは限りません。しかし、憲法AIでは、事前に「望ましい行動」と「望ましくない行動」を規定し、AIがそのルールに従って判断を下すように設計されています。例えば、AIがヘイトスピーチやデマ情報を含む発言をしないように制御し、かつ中立的で客観的な情報を提供するように訓練されます。これにより、従来のAIに比べて倫理的なバランスが取れた出力が可能になり、企業が安全にAIを活用できる環境が整えられているのです。 バイアス抑制技術:公平性を担保するデータ処理 AnthropicのAIは、データバイアスの影響を最小限に抑えるための特別なアルゴリズムを採用しています。従来のAIは、学習データに存在する社会的偏見をそのまま反映してしまうことがあり、これが不公平な意思決定につながるケースが多かったのです。例えば、過去の採用データを基にしたAIが、特定の性別や人種に対して不利な判断を下してしまうといった問題が報告されています。Anthropicの技術では、AIのトレーニングデータを精査し、偏った情報が学習されないようにするだけでなく、AIが出力する情報に対してもバイアスチェックを行うプロセスが導入されています。 具体的には、AIの出力に対して「バイアス検出フィルター」を適用し、不適切な判断が含まれていないかをリアルタイムで評価する機能が備えられています。さらに、AIが出力する結果に関してフィードバックループを設け、長期的に公平性を確保する仕組みも組み込まれています。このような技術により、企業がAIを導入する際に、意図しない差別的な判断や不適切な出力を防ぐことが可能となるのです。 誤情報の抑制とハルシネーション制御 AIが生成する情報の中には、事実と異なる「ハルシネーション」と呼ばれる現象が発生することがあります。これは、AIが確固たる根拠がないにもかかわらず、それらしい回答を作り出してしまう問題であり、特にエンタープライズ企業では誤情報の流布が重大なリスクとなる。Anthropicは、AIが信頼できる情報源に基づいて判断するようにするため、独自の「情報精査アルゴリズム」を採用しています。 この技術では、AIが生成するすべての情報に対し、「情報の信頼度」を評価するプロセスが含まれています。AIが何かの事実を述べる際、それがどのような情報源に基づいているのかを明示し、信頼性の低い情報を除外する仕組みが組み込まれています。また、ユーザーがAIの回答の正確性を確認できるように、情報の出典を提示する機能も開発されている。このような技術により、誤情報のリスクを大幅に軽減し、企業がAIを安心して利用できる環境が整えられているのです。 モデルの透明性と説明可能性の向上 AIの意思決定プロセスがブラックボックス化されることは、エンタープライズ市場において大きな懸念事項です。企業がAIを利用する際、AIがどのように結論を導き出したのかを説明できることが求められます。Anthropicは、「Scaling Monosemanticity」という技術を用いて、AIの各ニューロンがどのような意味を持ち、どのように意思決定を行うのかを解析する研究を進めています。この技術により、AIの判断の透明性が向上し、企業がAIの決定の根拠を確認できるようになっているのです。 さらに、企業向けにAIの監査機能を強化する取り組みも進められており、AIの出力をリアルタイムでモニタリングし、問題が発生した際には即座に修正できるシステムが開発されています。これにより、AIが自律的に不適切な出力を検出し、リスクを最小限に抑えることができるのです。 規制とガバナンスへの対応 AI技術が急速に発展し、社会に広く浸透する中で、企業はその利用に伴う倫理的責任や法的リスクに直面しています。特にエンタープライズ市場では、データプライバシーや公平性、説明責任といった要素が、AI導入の大きな判断基準となります。Anthropicはこうした課題に対して、単なる技術提供者ではなく、AIの規制とガバナンスに関する議論にも関与し、AIが適切に活用される環境づくりに取り組んでいます。同社は、AIの透明性向上や倫理的基準の策定を進めることで、AIが社会に及ぼすリスクを低減し、企業が安心して導入できる技術の開発を目指しています。 Anthropicは、AI技術の発展と社会的リスクの管理を両立させるために、リスクベースの規制アプローチの必要性を提唱しています。従来のAI規制には、技術の開発や利用を広範に制限するものも存在しますが、リスクが低い技術まで一律に制限すると、イノベーションの妨げになる可能性があります。Anthropicは、特定のリスク領域やユースケースに応じた規制が必要であると主張し、AIが適切に活用される環境を整えることに尽力しています。このアプローチは、規制当局や業界関係者との連携を進めながら、企業が倫理的にAIを運用できるようにするためのものと考えられます。特に、エンタープライズ企業にとっては、適切な規制のもとでAIを導入することが、リスク管理の観点からも重要な課題となるでしょう。 国際的な規制の枠組みに関しても、Anthropicはその動向に注目し、企業が異なる規制環境のもとでもAIを活用しやすい仕組みを構築することを目指しています。AIは国境を越えて利用される技術であるため、各国で異なる規制が適用されると、企業にとって導入の障壁となる場合があります。例えば、欧州連合(EU)ではGDPR(一般データ保護規則)に基づく厳格なデータ保護が求められる一方、米国では州ごとに規制の内容が異なります。Anthropicは、政府機関や国際機関との対話を通じて、こうした異なる規制に適応しやすいAIの設計や運用方法を模索しています。これにより、企業が地域ごとの規制の違いに対応しつつ、安全で倫理的なAIを導入しやすくなることが期待されます。 規制とガバナンスへの対応は、今後のAI市場の発展において欠かせない要素であり、Anthropicの取り組みは企業にとって有益な指針となるものと考えられます。倫理的に設計されたAIを導入することは、法的リスクの低減につながるだけでなく、企業の信頼性向上にも寄与すると考えられます。Anthropicのアプローチは、企業がAIを活用する上で求められる信頼性と透明性を確保することを目的としたものであり、今後のAI技術の発展において、企業と社会の双方にとって価値をもたらすものになるでしょう。 今後の展望 Anthropicは今後さらなる技術革新と市場拡大を進めると同時に、AIの規制や倫理基準の策定にも積極的に関与し、AI規制や倫理基準の議論に積極的に関与しています。また、持続可能なAI開発に取り組むことで、エンタープライズ企業が直面する課題の解決にも貢献していくことが期待されています。 技術面では、Claudeシリーズのさらなる改良を進め、Claudeシリーズの最新モデルでは、大量の情報を一度に読み取り文脈を保持できる大容量のコンテキスト処理が可能であり、より複雑なタスクに対応しています。これにより、企業は運用コストを抑えながら、様々な局面でAIの活用を実現することが可能になります。 エンタープライズ市場では、企業の業務プロセスや業界特有の課題に対応したAIソリューションの開発が重要視されるようになっています。Anthropicは、エンタープライズ用途向けのAI機能を強化し、幅広い業界での利用を想定しています。さらに、導入企業が迅速にAIを活用できる環境を整備することで、高額な初期投資が不要となり、より多くの企業が柔軟にAIを導入できるようになることが期待されます。 同社はAIの規制や倫理的課題にも積極的に取り組んでおり、技術革新を阻害しない形でのルール策定を推進しています。特に、リスクの高い技術やユースケースに焦点を当てたリスクベースの規制アプローチを支持し、特定のリスク領域に対する規制の必要性を議論しています。AIの自由な発展と社会的リスク管理のバランスを取ることを目指しています。さらに、AIの意思決定プロセスを透明化するため、外部専門家や監査機関と連携し、AIの透明性向上のため、倫理的ガイドラインの策定に取り組んでいます。また、国際的な規制環境に適応するため、規制議論に関与し、政策形成の動向を注視しています。 今後Anthropicは技術革新、エンタープライズ市場の拡大、規制と倫理の枠組み作りという三つの領域で影響力を強め、AI業界におけるリーダーシップをさらに確立していくでしょう。エンタープライズ企業にとっては、AI導入のリスクを抑えながら競争力を向上させるための強力なパートナーとなり、持続可能な成長を支える重要な役割を果たすことが期待されています。 参考文献 Anthropic, "Claude AI Overview," Anthropic, 2024. Anthropic, "Anthropic Enterprise Solutions," Anthropic, 2024. Anthropic, "Research Papers and Technical Reports," Anthropic, 2024. Anthropic, "Legal & Privacy Policy," Anthropic, 2024. Anthropic raises Series E at $61.5B post-money valuation TechCrunch, "Anthropic Claims Its Latest Model is Best in Class," TechCrunch, June 20, 2024. TechCrunch, "Anthropic Raises an Additional $4B from Amazon, Makes AWS Its Primary Cloud Partner," TechCrunch, November 22, 2024. TechCrunch, "Google is Using Anthropic's Claude to Improve Its Gemini AI," TechCrunch, December 24, 2024. AWS, "Perplexity AI Uses Claude on Amazon Bedrock to Deliver Trusted AI-Powered Answers," AWS Case Studies, 2024. AWS, "DoorDash Uses Amazon Bedrock and Anthropic’s Claude for Scalable AI-Powered Customer Support," AWS Case Studies, 2024. Anthropic, "Perplexity AI: Using Claude to Enhance Search Capabilities," Anthropic Customers, 2024. Anthropic, "Brian Impact Foundation: AI for Social Good," Anthropic Customers, 2024. Anthropic, "Scribd: Enhancing Digital Libraries with Claude," Anthropic Customers, 2024. Anthropic, "Scaling Monosemanticity: Unlocking AI Model Interpretability," Anthropic Research, 2024. Anthropic, "Many-shot Jailbreaking: Testing AI Model Security Against Adversarial Inputs," Anthropic Research, 2024. Anthropic, "Measuring Model Persuasiveness and Its Implications," Anthropic News, 2024. ArXiv, "Interpreting Large Language Models: A Theoretical Perspective," ArXiv Preprint, December 2024. --- # 世界中の成長企業が選ぶ理由:Stripeが提供する次世代の金融基盤 URL: /insights/82 title: "世界中の成長企業が選ぶ理由:Stripeが提供する次世代の金融基盤" summary: "本記事では、Stripeがどのようにしてその地位を確立したのかを紐解きながら、プロダクトの技術的優位性、サービス拡張戦略、顧客導入事例、競合との比較評価、さらにはAIやサステナビリティへの取り組みまで、同社が描く「次世代の金融基盤」としての全体像を多角的に解説します。" date: 2025-05-12 author: "authors/research\_team.mdx" category: "categories/transformation.mdx" glossary: "glossary/saas.mdx" "glossary/startup.mdx" cover: "/images/insights/82/cover.jpeg" インターネットを基盤とする経済活動が加速するなかで、決済は単なる取引処理を超え、企業の成長戦略や顧客体験の中核を担う領域へと進化しています。なかでも注目されているのが、世界中の成長企業に採用されている決済インフラ「Stripe」です。 本記事では、Stripeがどのようにしてその地位を確立したのかを紐解きながら、プロダクトの技術的優位性、サービス拡張戦略、顧客導入事例、競合との比較評価、さらにはAIやサステナビリティへの取り組みまで、同社が描く「次世代の金融基盤」としての全体像を多角的に解説します。 インターネットのGDPを増やすという使命 Stripeは、2010年にコリソン兄弟によって創業された決済インフラ企業です。シリコンバレーのスタートアップからグローバル企業まで、幅広い事業者が導入しており、オンライン決済の常識を覆した存在として注目を集めています。現在、Stripeは「インターネットのGDPを増やす(Increase the GDP of the Internet)」というミッションを掲げており、決済にとどまらず、インターネット上の経済活動全体の成長を支えることを目指しています。 創業当初は、オンラインで決済機能を実装するには複雑な手続きと高い開発コストが伴っていました。Stripeはその課題を解決し、数行のコードで導入可能なAPIを開発しました。これにより、エンジニアが短時間で安全かつ柔軟に決済機能を導入できるようになりました。その後、ShopifyやLyft、Kickstarterといった企業が次々にStripeを採用し、同社は急成長を遂げていきました。 現在では、決済サービスにとどまらず、請求書管理、税務対応、資金管理、法人設立支援、さらにはAIを活用した不正検知までを含む、包括的な金融インフラとしての地位を築いています。2024年時点での年間決済総額は1.4兆ドルを超え、評価額は650億ドルに達しています。Stripeはそのビジネスモデルを通じて、グローバルなインターネット経済の発展に継続的に寄与しているのです。 創業から現在まで:Stripeの進化と組織文化 Stripeの創業ストーリーは、シリコンバレーの華やかな創業神話とは異なり、実直かつ課題解決志向の姿勢に貫かれています。アイルランド出身のコリソン兄弟、パトリックとジョンが、「オンライン決済の導入があまりにも煩雑で非効率である」と感じたことが、Stripe誕生のきっかけでした。 彼らは2010年にStripeを設立し、翌年にはY Combinatorでプロダクトを公開しました。ShopifyやKickstarterといった初期ユーザーの採用に成功して以降、AmazonやSalesforceなどの大手企業へと導入が広がっていきました。2024年時点での評価額は650億ドルに達し、従業員数は7,000人を超えています。 Stripeの組織文化において特徴的なのは、「外部向けPRよりもプロダクトとドキュメントで語る」という姿勢です。たとえば、開発者向けのエラーメッセージやAPIレスポンスの設計においても、Stripeは一貫してユーザー体験を重視しています。また、Stripe Pressという独自の出版事業を通じて、思想や価値観を世に問う姿勢も印象的です。 Stripeの創業理念には、ソフトウェアの力で金融の構造を再設計するというビジョンが根底にあります。それは、単なる「決済の簡略化」にとどまらず、ビジネスそのものの起点に働きかける試みであり、現在もその姿勢は変わっていません。 このような組織文化と思想が、Stripeを「決済会社」ではなく、「インターネット経済の中核を担う企業」へと押し上げているのです。 プロダクト構成と技術的優位性 Stripeの競争優位性の中核を成すのは、その包括的かつ拡張性の高いプロダクト群です。なかでも中核となっているのが「Stripe Payments」であり、これはオンラインおよび対面での支払いを安全かつ高速に処理するための統合決済プラットフォームとして設計されています。 Stripe Paymentsは、クレジットカード、Apple Pay、Google Pay、銀行振込、コンビニ決済など100種類以上の支払い手段に対応しています。グローバルに展開する事業者にとっては、現地に適した支払い手段を簡単に導入できる実用的な選択肢と言えるでしょう。導入企業は、195カ国以上の顧客から支払いを受け付けることが可能であり、越境ECや国際サービス展開において大きな利点となります。なお、Stripeのアカウント開設が可能な国・地域は50カ国強に限られているため、サービス提供国数とは異なる点には注意が必要です。このようなグローバルな決済対応力は、国境を越えるビジネスにとって極めて重要な要素となっています。 また、Stripeは開発者向けの体験(Developer Experience)にも強くフォーカスしています。APIは直感的で扱いやすく、豊富なドキュメント、明確なエラーメッセージ、テストツールが整備されており、導入のハードルを著しく下げています。不正検知機能「Radar」では機械学習が活用されており、リアルタイムでリスクを検知・排除することができます。これにより、オーソリ成功率(支払い承認率)を最大化しながら、不正決済のリスクを最小限に抑えることが可能になっています。 さらに、ユーザーインターフェースの洗練度も非常に高いです。Stripe Dashboardでは、トランザクションのステータス、顧客ごとの履歴、アラート通知、請求のステータスなどを一元的に確認できます。このように、ビジネスの成長と安全性を両立させる設計思想が、Stripeの全プロダクトに一貫して反映されているのです。 顧客起点で拡張されるサービス Stripeが他の決済サービスと一線を画す理由の一つは、「決済のその先」を見据えたサービス設計にあります。たとえば「Stripe Billing」はその代表例であり、サブスクリプション型ビジネスや使用量ベースの課金を行う企業に対して、柔軟かつ自動化された請求管理機能を提供しています。特に、プロダクトバンドルの組み合わせや従量課金のモデル対応、利用者ごとの細かな請求ロジックの構築など、成長ステージに応じた最適な運用が可能です。 また、「Stripe Connect」はマーケットプレイス型の事業者向けに設計されており、支払いの分配や各国におけるコンプライアンス対応を支援します。UberやShopifyといった大規模なプラットフォーム企業がこの機能を採用しており、Stripeの信頼性と拡張性を裏付ける実績となっています。さらに、法人設立支援ツール「Atlas」や、資金管理ソリューション「Treasury」なども提供されており、企業のライフサイクル全体を包括的に支えるプロダクト構成が用意されています。 これらのサービスは、それぞれが単体で機能するだけでなく、相互に連携することでより高い付加価値を生み出します。たとえば、BillingとPaymentsを組み合わせることで、使用量に基づいた請求と決済処理を一貫して管理することが可能になります。このような一貫性ある設計思想は、Stripeが「金融のOS」として機能するための根幹であり、プロダクトの統合的進化を実現する基盤となっているのです。 顧客導入事例に見るStripeの価値と実践課題 Stripeの導入効果をより具体的に理解するには、Accentureの事例が非常に示唆に富んでいます。インド市場における少額決済インフラの構築にあたり、Accentureは迅速なプロトタイピングと国際的な決済手段の統合が必要でした。Stripeの選定理由は、グローバルな決済手段の網羅性、APIベースの柔軟性、そして導入スピードの3点です。 Stripeを採用することで、同社はわずか数週間でマルチチャネル決済インフラを構築することに成功しました。従来であれば数カ月かかっていたインテグレーション作業が大幅に短縮され、タイム・トゥ・マーケットが改善されただけでなく、運用コストの削減にもつながったと報告されています。ユーザー体験の面でも、支払い手段の多様化と高速な処理能力によって、エンドユーザーの離脱率が低下したとの評価を得ています。 一方で、事例から浮かび上がる課題も存在しています。例えば、Stripe Billingの一部設定項目については、他社の請求システムと比較してカスタマイズの自由度に制限があると感じる声もあります。また、税務機能との連携についても、特にグローバル展開を行う企業にとっては、さらなる改善が望まれる分野となっています。 それでもなお、Stripeの最大の強みは、開発者文化に根ざしたプロダクト哲学と、それを支える優れたドキュメントやテスト環境の存在にあります。顧客企業が自ら手を動かし、検証と導入を繰り返しながら段階的に機能を拡張できる構造は、変化の激しいビジネス環境において極めて有用です。Stripeは単なる決済ツールではなく、成長戦略の一環として選ばれる金融インフラであると言えるでしょう。 導入企業が語るStripeの実力と改善余地 Stripeのプロダクトは、幅広い企業に採用されており、その背景には開発者に配慮されたUX設計と、スピーディーな導入を可能にするプロダクト構成があります。たとえば、グローバルコンサルティング企業であるアクセンチュアのインド法人では、現地のデジタル決済プラットフォーム立ち上げにあたり、Stripeを導入しています。 インド市場特有の決済ニーズや法制度に対応する中で、StripeのAPIと請求管理機能は、柔軟性と開発スピードの両立を実現したと報告されています。プロジェクトを率いたSulabh Agarwal氏は、「従来なら数カ月かかる立ち上げが、Stripeにより数週間で完了した」と述べています。Stripe PaymentsやBillingのモジュールは、クレジットカードだけでなく、UPI(インドの即時送金システム)や銀行振込などのローカル手段にも対応しており、現地ユーザーの多様な決済ニーズを満たしてきました。 さらに、管理画面の視認性やAPIレスポンスのわかりやすさが、現地エンジニアチームの自走を支援した点も高く評価されています。ただし、導入後の運用において課題がまったくないわけではありません。アクセンチュアからは、「各国の税制に対する自動対応は、Stripe Taxの更なる進化が必要である」との指摘もあります。また、エンタープライズ特有の複雑な請求フローや、複数部門をまたぐ会計処理に関しては、追加開発が必要となる場面もあったとのことです。 これらの声を踏まえると、「Stripeは初期導入のしやすさと柔軟な拡張性に強みがある一方、エンタープライズ領域では慎重な設計と補完的な対応が不可欠である」と言えるでしょう。導入事例は、製品の成熟度だけでなく、企業のステージや業務要件に応じた適材適所の判断を促しています。 Forresterが評価したStripeの強みと選択のポイント 2025年2月に発表されたForrester Researchの「The Forrester Wave™: Recurring Billing Solutions, Q1 2025」では、Stripeは主要13社の中で「Strong Performer」と位置付けられ、技術的完成度、戦略の明瞭さ、開発者体験において高い評価を獲得しています。 同レポートでは、StripeがBillingとPaymentsを高度に統合している点に着目し、Stripe Paymentsとの連携により、決済データと請求処理の一貫性が高まり、業務の自動化やデータレポーティングの効率化が実現されていると評価しています。さらに、堅牢なアーキテクチャに加え、エラー通知やAPIドキュメントが充実していることから、「開発者から最も支持されているプロダクト」と評しています。 一方で、料金設定の柔軟性やエンタープライズ向けパートナーエコシステムといった側面では、ZuoraやBillingPlatformといった老舗企業に軍配が上がる場面もあります。例えばZuoraは、メディアや通信業界などの業種特化型モデルにも適応可能な複雑な価格設計機能を有しており、大企業の要件に対して高い拡張性を備えています。 StripeのISV(独立系ソフトウェアベンダー)との連携は発展途上であり、エンタープライズ環境における全方位的なエコシステム整備という観点では、今後の成長が期待されます。レポート全体としては、「Stripeはスタートアップや成長企業には極めて高い価値を提供しているが、業界特化型の複雑なニーズには追加検討が必要である」という中立的なスタンスを取っています。 この評価は、SaaSやD2Cビジネスのように市場投入のスピードとスケーラビリティを重視する企業にとって、Stripeが最適解となる場面が多いことを裏付けています。 今後の展望:AI・サステナビリティ・金融OSへの進化 Stripeは現在、決済インフラの枠を超え、インターネット上の「金融OS」としての地位を確立しようとしています。その鍵となるのが、AI技術との連携強化と、サステナビリティ分野への戦略的な取り組みです。 まずAI領域においては、StripeはOpenAIと連携し、ChatGPTの商用化を支援するプラットフォームを提供しています。具体的には、ChatGPTの有料版ユーザー向けにStripeの決済基盤を用いてサブスクリプション管理を実現しています。さらに、Stripe自身のプロダクト群においても、AIは既に実用段階にあり、特に不正検知機能「Stripe Radar」では機械学習が導入されており、リアルタイムでリスク判定と防御を行っています。 開発者体験の向上にもAIが活用されています。StripeのAPIドキュメントやエラーメッセージは非常に整備されており、自然言語処理を用いた検索補助やエラー分析支援などが実装されています。これにより、開発者は迷うことなく実装作業を進められる環境が整っており、Stripeが「開発者に選ばれる理由」として確かな説得力を持っています。 一方で、Stripeは気候変動対策にも積極的に関与しています。Stripe Climateという取り組みでは、ユーザー企業が収益の一部を炭素除去プロジェクトに寄付する仕組みが整備されており、既に数千社がこのプログラムに参加しています。Stripe自身も、科学者や技術者と連携しながら、再生可能なカーボンリムーバル技術の選定と資金提供を行っています。このようなアプローチは、単なるCSRを超えた「インフラとしての倫理的責任」の姿勢を表しています。 加えて、法人設立をサポートする「Stripe Atlas」や、企業の資金管理を支援する「Stripe Treasury」など、決済の枠を越えた包括的なサービス提供も進んでいます。これにより、Stripeは起業からグロース、決済、請求、会計処理、資金運用まで、企業のライフサイクル全体を支援するポジションへと進化しています。 これらの取り組みを通じて、Stripeは決済に留まらず、ビジネス全体の土台となる「金融OS」としての役割を強化しています。今後、より多くのSaaS企業、EC事業者、スタートアップが、Stripeを単なる決済手段ではなく、「ビジネスの中核を支える戦略的パートナー」として選択していくでしょう。 まとめ:なぜStripeは「次の金融のOS」として注目され続けるのか Stripeは、金融の複雑さを抽象化し、開発者にもビジネスにも扱いやすい形で提供するという思想を一貫して追求してきました。これにより、決済インフラとしての機能にとどまらず、請求、税務、資金管理、さらにAIやサステナビリティといった将来を見据えた領域にまで対応する、包括的なビジネス基盤へと進化を遂げています。 とりわけ際立っているのは、開発者体験に対する徹底したこだわりです。わずか数行のコードで支払い処理を実装できるシンプルなAPI構造、明快なドキュメント、エラー通知の分かりやすさなど、あらゆる面で開発者に寄り添った設計がなされています。このような技術的な強みは、2025年のForresterレポートにおいても高く評価されており、Stripeが今後のSaaS市場やD2C市場において引き続き存在感を示していくことは確実です。 また、StripeはAIの活用や気候変動対策といった社会的な課題への取り組みにも積極的であり、単なる決済サービスにとどまらず、ビジネスと社会の両面において持続可能な価値の提供を目指しています。法人設立支援、資金管理、サブスクリプション管理といった機能を相互に統合し、成長企業のあらゆるフェーズをサポートできる点も、他の決済プラットフォームとは一線を画しています。 今後もStripeは、決済という枠組みを超えたサービスの拡張を通じて、企業活動の根幹を支える存在として進化を続けるでしょう。デジタルプロダクトを開発・提供する企業にとって、Stripeを選択することは単なる決済手段の導入にとどまらず、自社の成長と可能性を広げる重要な経営判断の一つになるはずです。 このように、Stripeは「金融のOS」として、技術的な優位性、柔軟なサービス設計、そして社会的責任を兼ね備えながら、世界中の企業にとって新たな選択肢と価値を提供し続けているのです。 参考文献 Stripe公式サイト – Stripe Payments 製品ページ Stripe公式サイト – Customers: Accenture 導入事例 Stripe公式ニュースルーム – ForresterにおけるRecurring Billing Solutions評価 Stripe GitHub – stripe-android レポジトリ Stripe公式ニュースルーム – 2024年度 年次報告アップデート 2024 年度の年次報告書 Startup Grind – The Collison Brothers and the Story Behind the Founding of Stripe Forrester Research – The Forrester Wave™: Recurring Billing Solutions, Q1 2025 --- # 新感覚イヤホンambie(アンビー)に学ぶ「ものづくり」と新規事業 URL: /insights/9 title: 新感覚イヤホンambie(アンビー)に学ぶ「ものづくり」と新規事業 summary: "昨今のCOVID-19の影響によってリモートワークやオンラインレッスン等が一般化するなか、ZoomなどのオンラインWeb会議システムの普及に加え、イヤホンなどの音響機器の需要も拡大してきました。富士キメラ総研の調査によれば、特にAirPodsやBeatsをはじめとしたワイヤレスイヤホン製品の成長が顕著であり、2020年のワイヤレスイヤホン及びヘッドホンの世界市場規模は3億1,100万台と前年比148%に増加、また2026年には7億7,600万台にまで拡大することが予測されています" date: 2022-08-31 author: "authors/takafumi\_endo.mdx" category: "categories/research.mdx" cover: "/images/insights/9/9\_cover.jpg" 昨今のCOVID-19の影響によってリモートワークやオンラインレッスン等が一般化するなか、ZoomなどのオンラインWeb会議システムの普及に加え、イヤホンなどの音響機器の需要も拡大してきました。富士キメラ総研の調査によれば、特にAirPodsやBeatsをはじめとしたワイヤレスイヤホン製品の成長が顕著であり、2020年のワイヤレスイヤホン及びヘッドホンの世界市場規模は3億1,100万台と前年比148%に増加、また2026年には7億7,600万台にまで拡大することが予測されています\[^1]。 足元でも機能・価格・デザインなどにおいて様々な製品が生まれておりますが、今後はよりスマートフォンやコネクテッドカーとの連携によるユースケースの多様化が見込まれており、音響機器の枠を超えたIoT/ウェアラブルデバイスとしての需要拡大なども織り込まれている状況です。そのような成長市場において、本記事では耳をふさがず「ながら聴き」というユニークなバリュープロポジションによって注目を集める「ambie(アンビー)」の製品概要、創業経緯、プロダクト戦略等についてご紹介します。 耳をふさがない「ながら聴き」イヤホンambie(アンビー)とは ambie(アンビー)はソニービデオ&サウンドのエンジニアであった三原良太氏(現ambie株式会社 代表取締役)が発起人となって生み出されたプロダクトです。音質やバッテリー技術の進化によってイヤホンは長時間利用されるシーンが増えた一方、周りからの呼び掛けや音に気づかず困ることがあったり、ノイズキャンセル機能に疲労を感じてしまうなど、ユーザーの抱える課題やニーズも少しずつ変化してきました。またフィットネスや移動の最中にイヤホン/ヘッドフォンで耳を塞いでしまう行為に対する安全面での懸念についてはウォークマンが登場した1980年代から変わらず議論されている論点です。 そのような課題に対して、耳を塞がず、ながら聴きができるイヤホンとして開発されたのがambieです。イヤーカフのように耳の窪みに装着するイヤホンのため、マスクや眼鏡をかけていたとしても着脱しやすく、骨伝導タイプとは異なり、音声ユニットから物理的に音が出る仕組みになっています。ソニーで長年研究されてきた特殊な音響技術を活用することで、音漏れにも強く、耳への負担も少ない「ながら聴き」というユーザー体験が実現されました。 またambieは「生活にBGMを添える」をコンセプトに掲げており、そのデザインにもこだわりがあります。丸みを帯びたハードウェアの形状とカラーバリエーションの多さが特徴であり、新しいガジェット好きからファッション性を重視する方々まで、幅広く支持を集めています。最初の製品が販売された2017年当初では耳を塞がないイヤホンといえば骨伝導式が主流であり、多機能な製品の多かったイヤホン市場においてambieの提案する新しいユーザー体験とシンプルな製品がデジタルネイティブ世代の間で話題になり、初期生産ロットは4日間で完売しています\[^2]。 2018年にはワイヤレス対応製品の販売を開始し、AirPodsなどの競合製品が数多く存在するなか、3週間で在庫切れとなりました\[^3]。その後2021年には当初から目指していた現在の主力商品である完全ワイヤレスモデル「AM-TW01」を市場に投入するなど、順調に商品ラインナップを拡充しています。当時はデジタルネイティブ世代を中心にSpotifyやApple Musicなどの音楽ストリーミングサービスの普及が加速していたことに加え、ハードウェアとしてもワイヤレススピーカーから小型のハンズフリーイヤホンへとトレンドが変化していた時期でもあり、そのような背景などを的確に捉えたマーケットエントリー戦略であったとも言えるでしょう。 ソニーの音響技術を活用したオープンイノベーション 前述の通り、ambieは元々ソニー社内で始まったプロジェクトではありますが、運営母体となる会社は大手ベンチャーキャピタルのWiLとソニーが共同出資するかたちで設立されました。設立当初から発起人かつ製品開発の責任者でもある三原氏をはじめとしたソニーからの出向者とWiLの事業支援チームが主体となって製品の企画・開発・販売などが行われています。ソニーとWiLのジョイントベンチャーとしてはスマートロック「Qrio Lock」に続き2社目ではありますが、2017年当時ではジョイントベンチャー等への出向事例は珍しく、ambieはソニーから出向制度や就業規則なども含め、新しく作り上げられたオープンイノベーション型企業です。 ambieのプロダクト開発は、洗練された技術を持ちながらも必ずしも技術ありきではなく、消費者ニーズを的確に捉えるためのMVP(Minimum Viable Product)として最初の製品を販売開始し、機能面でもデザインメインでもブラッシュアップされた製品を次々に市場投入していく点などはスタートアップらしいアプローチと言えます。一方、初期の製品開発で100以上の試作品を作るなど、妥協を許さずこだわり抜くところなどはソニーらしくもあり、スタートアップと大企業の長所を融合させた「ものづくり」を実践しているユニークな企業です。また完全ワイヤレスモデルの開発に際しては、ソニーが保有する構造設計手法や様々な技術を踏襲するなど伝統的な大企業のリソース活用も積極的に行なっており、大手企業グループから新たにイノベーティブなプロダクトを生み出すための最適解の一つとも言えるかもしれません^4。 共同設立者でもあるWiLは日本を代表する大手企業がLP(Limited Partner)として参画するベンチャーキャピタルであり、スタートアップの立ち上げのノウハウや資金の提供だけでなく、大手企業とのネットワークを活かしたバリューアップ支援や人材採用支援などにも強みを持つファンドです。ソニーの世界的な音響技術をルーツに持ち、またソニーにとって自社の既存製品と将来的に競合する可能性のある製品を、ベンチャーキャピタルとの協業をきっかけとして生み出すことができた事例であり、今後も類似のスキームにて新規事業やスピンアウトベンチャーを創業する大企業が増えていくことが予想されます。 ライフスタイル提案に「尖った」ブランドマーケティング ambieの立ち上げストーリーからはプロダクト開発のみならず、ブランドマーケティングという観点でも興味深い点が多々ありますが、主に以下の3点について言及していきます。 1\. シンプルなプロダクト体験と機能群 初期のambieは有線タイプで音楽の再生・停止等ができるだけの機能的には非常にシンプルな製品であったのにも関わらず、「ながら聞き」という新しい体験とそのプロダクトデザインの訴求を重視した情報発信がデジタルネイティブ世代の共感を呼び、特別なプロモーションをせずとも販売直後から受注が殺到し、一時期は予約販売も停止するような状況でした。またその結果として有名Youtuberやインフルエンサー等の目にも留まり、国内トップクラスのチャンネル登録者数を誇るヒカキン氏のYouTubeチャンネル(HikakinTV)でも紹介され、2022年7月末現在まで330万視聴されるほどの反響がありました\[^5]。もちろん製品力やコンセプト次第ではあるものの、ambieのようにバリュープロポジションが明確であればSNS等で共感の連鎖が起きやすく、自社ECサイトを中心にオンラインでの販売規模を大きく伸ばすことも可能になります。 2\. ライフスタイル提案を重視した販路選択 ambieは初期の販売チャネルとして家電量販ではなく、自社ECとライフスタイルショップを主軸に展開しています。通常のソニー製品であれば主要販路となる家電量販店をあえて選択しなかった背景として、ambieの提案する新しいコンセプトの伝えやすさを重視したことが挙げられます。そのため、当初はビームスやロンハーマン、蔦屋書店などのライフスタイル提案型のセレクトショップを中心に販路を拡大していきました。またビームスや蔦屋書店向けには別注/限定モデルを製造販売するなどのコラボレーションも実現しており、そういった製品も先行予約で完売するなど好評を得ています。販売開始初期の段階からストーリー訴求にこだわった結果として前述のようにSNS等で話題になり、「耳をふさがない」という製品ジャンルの認知度を高めることができたと言えるでしょう。そういった過程を経た上で、現在では家電量販店や大手ECモールなどにも販路を拡大しています。 3\. パートナーシップと新たなユースケース提案 「耳をふさがない」という独自の体験及び技術を活かし、イヤホンの新たなユースケースの創造にも取り組んでいます。ポケモンGoの開発で話題になったナイアンテック社と連携し、ambie製品のARゲームでの活用などにも挑戦しています。AR/VRのゲームやツールにおいては視覚が制限されることによる安全面での懸念があるなか「耳をふさがない」ambieは外部の音声が自然に聞こえるだけでなく、ゴーグルなどの他のウェアラブルデバイスとの併用しても邪魔にならないなどのメリットがあります。AR/VRのみならず、バスケットのBリーグやJリーグサッカーなどのスタジアムにおいて実況解説を聞きながらスポーツ観戦を楽しめる体験の提供に取り組むなどエンターテイメント領域での活用の幅を広げています。また視覚障がいの方向けの副音声の配信デバイスとして利用されていたり、エンターテイメント領域に留まらず、日常生活の様々なシーンやビジネスにおいて新しいユースケースの創出が期待されるプロダクトでもあります。 大手企業に求められる新しい事業創出のあり方 大手企業においては期待される売上成長規模のハードルが高かったり、既存販路や製品との棲み分けの議論が複雑化するなどによって、新しい技術活用や製品開発をスピード感を持って進めることが難しい場合も少なくありません。クレイトン・クリステンセン氏が提唱する「イノベーションのジレンマ」は常に現場で起きている問題であり、ジョイントベンチャーなどの設立を検討及び実施する事例も出てはいるものの、まだまだ参考になる先行事例が少ないのが現状です。一方で、昨今ではWiLのようなオープンイノベーションに知見の深いベンチャーキャピタルの増加やエンタープライズ領域に特化したスタートアップ企業の台頭などにより、大手企業グループ社内だけでは立ち上げが困難であった事業やサービスであっても、従来とは異なるチームやパートナーシップ体制及びインセンティブスキームにて実現できる土壌が整いつつあるように思われます。大手企業グループのなかで新しい技術を活用した製品開発やGo-To-Market戦略に苦心している皆様にとって、本記事が論点整理や仮設立案などの一助となりましたら幸いです。 \[^1]: 富士キメラ総研「2021 ワールドワイドエレクトロニクス市場総調査」 \[^2]: ambie「発売4日で初回生産分が完売した、耳を塞がない新感覚「ながら」イヤホン「ambie sound earcuffs」店舗・ECサイトでの販売を再開」 \[^3]: AV Watch「耳を塞がないambieワイヤレスイヤフォン、5月10日から家電量販店で販売。初回完売」 \[^5]: HikakinTV「【超人気】耳を塞がないイヤホンがあるだと!? 【ambie】」 --- # 会社設立 URL: /news/1 title: 会社設立 summary: "2020年1月24日に株式会社ROUTE06 (ルートシックス)を設立しました。" date: 2020-01-24 category: "INFORMATION" displayedHistory: true 2020年1月24日に株式会社ROUTE06 (ルートシックス)を設立しました。 --- # DXパートナーのROUTE06、15億円の資金調達を実施 〜エンタープライズ向けAPI開発及びリモートファーストな体制構築に投資〜 URL: /news/10 title: DXパートナーのROUTE06、15億円の資金調達を実施 〜エンタープライズ向けAPI開発及びリモートファーストな体制構築に投資〜 summary: "シリーズAラウンドにて総額15億円の資金調達を行ったことを発表します。" date: 2022-06-30 category: "PRESS" glossary: startup agile-development supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス 【報道関係のお問い合わせ】 株式会社ROUTE06 広報担当 Mail:pr@route06.co.jp " displayedHistory: true 株式会社ROUTE06(本社:東京都渋谷区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、シリーズAラウンドにて総額15億円の資金調達を行ったことを発表します。 ALL STAR SAAS FUNDをリード投資家として、ジャフコ グループ、デライト・ベンチャーズ、ジェネシア・ベンチャーズ、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタルの計7社を引受先とする第三者割当増資を本日付で実施しました。 ROUTE06は2020年の創業以来、そごう・西武様や三菱マテリアル様をはじめとした大手企業のデジタル事業の立ち上げ及びグロース支援に注力してきました。 この度調達した資金は、これまでの取り組みをさらに加速させ、商取引のデジタル・トランスフォーメーションをあらゆる産業で実現するために、エンタープライズ向けビジネスAPIプラットフォーム「Plain」の開発、リモートファーストな体制の構築や人材育成に投資します。また、情報セキュリティや内部統制などの社内インフラの拡充及び業務効率化にも力を入れていきます。 ROUTE06の事業背景 デジタル技術の進化によって世界中で新たなプラットフォーマーが次々と台頭し、各国の経済を牽引するとともに社会的課題の解決に挑戦する人材やスタートアップ企業が数多く生まれています。その一方で、日本国内の伝統的な大企業ではこれまで日本経済を支えてきた従来型企業システムへの課題が目立ち始め、経済社会の先行きに対して悲観的な議論が度々展開されてきました。 そのような背景からスタートアップ企業やアントレプレナーに相対的に注目が集まりやすくなっているものの、伝統的な大手企業の有する世界有数の設備資産・知的財産・人的資本等を活用し、大きな社会的課題を解決するために挑戦を続けているイントレプレナーは数多く存在しています。 イントレプレナーは必ずしも最新のデジタル技術に精通しているわけではなく、また社内でもデジタル領域での事業開発、デザイン及びエンジニアリングに長けた人材が不足していることも少なくありません。ROUTE06は、そのような挑戦者達のDXパートナーとして、最新のデジタル技術及びシステムインフラの提供とデジタル事業立ち上げのプロフェッショナルチームによる支援を通して、大手企業の既存資産を活用した新しい事業機会と経済価値の創出にチャレンジしています。 エンタープライズ向けビジネスAPIプラットフォーム「Plain」 プロダクト概要 「Plain」は、あらゆる商取引のデジタル・トランスフォーメーションを実現するためのビジネスAPIプラットフォームです。B2C及びB2Bに関わらず、オンライン・マーケットプレイスをはじめとした様々なデジタル事業の垂直立ち上げ及び継続的なサービス改善に貢献します。デジタルプロダクト開発の体制が十分に整っていない伝統的な大手企業でも、「Plain」を活用することによってシステム開発期間が大幅に短縮されるとともに、社内外の開発パートナーとのアジャイル開発や日々の業務オペレーションを円滑に行うことができるようになります。バックエンドシステムは大手企業の求めるセキュリティ水準に対応しており、各種レポートティングやモニタリング機能を充実させることで、顧客企業が安心してユーザー体験の向上や業務改善に注力できる環境を構築します。 特に、オンラインマーケットプレイス(B2C/B2B)、受発注プラットフォーム、OMOストア、クラウドEDI、ビジネスマッチングプラットフォームなどの複雑な業務オペレーションやデータ連携が求められるデジタル事業において、「Plain」は導入メリットの大きいバックエンドサービスです。リアルタイム性の高くかつ正規化されたデータ取得及び統合管理に強みを持つため、柔軟なユーザー体験の 設計とその継続改善を実現し、新しいビジネスデータを活用した新しい顧客サービス及びマネタイズ手段の構築にも貢献します。 すでに、様々な業界の事業DX案件で「Plain」の導入が進んでおり、店舗や工場施設のようなリアルアセットを活用したデジタルプラットフォームサービスを立ち上げたい小売・製造・不動産業や、国内外での取引先ネットワークを活用したマッチングプラットフォーム事業を立ち上げたい流通・仲介業での支援実績があります。大手企業を中心に今後5年間で契約数100件以上を目指します。 「Plain」の名前に込めた思い ”Plain”という言葉には元々、平らで、見通しの良く、飾りのない台地という意味があります。このプロダクトはあくまで土台となるものです。「Plain」という「平野」に事業主体となる顧客企業や様々なパートナーが集い、新しいサービスや事業を共創していくことで、その景色は多様に移り変わり、また時間と共に発展・拡大していく可能性を持っています。 このプロダクトを活用することによって生まれたデジタルサービスは一つとして同じものはありません。 「Plain」は、必ずしもデジタル技術に長けていない人や企業でも各々の個性や強みを十二分に表現することができ、また新たな成長機会やきっかけを掴む舞台となれるようなプロダクトでありたいと考えています。 サービス提供体制 ROUTE06社内のプロダクトマネージャー、エンジニア、デザイナー等によるプロフェッショナルチームが「Plain」の導入支援に加え、デジタルプラットフォーム事業の垂直立ち上げに必要なサービスを提供します。顧客価値に応じたUX設計及びUIデザイン、デジタルファーストな業務フローの構築、データプラットフォーム機能を活用した各システムへのデータ連携・分析・可視化など、アジャイル型での実践的な事業支援を行います。 「Plain」導入に関するお問い合わせ ROUTE06 プロフェッショナルサービス事業部 info@route06.co.jp までお問い合わせください。 ROUTE06の目指す組織について ROUTE06は"Be a disruptor / 優しい変革者であり続けよう"を行動指針に掲げています。新しい事業機会と経済価値の創出には、顧客の事業と組織に「変革」をもたらす力が求められます。あらゆるステークホルダーに対して優しくなめらかに熱量を伝搬させられるような組織となるために、社内体制の構築や人材育成にも投資します。今後5年で現在の約7倍にあたる200名規模の組織となることを目指します。 リモートファーストな体制構築への取り組み <非同期で働きやすい環境> 全社ワークスペースとしてGitHubを活用し、SlackやFigmaなどのオンラインコラボレーションツールを駆使することで非同期を前提とした働きやすい環境構築を追求します。入社時に付与する20日の年次有給休暇のほか、SickLeave、リラックス休暇や育児休業給付金上乗せ手当など、制度を活用することで最もパフォーマンスが発揮される働き方を自ら選択できるように設計しており、それぞれの人生を妥協しないための制度を今後も拡充していきます。 <人材育成> 新卒採用を視野に入れ、プロダクト開発の技術向上をはじめ、個々人が今後のキャリアに生かせるような学びの機会を後押しする研修支援を拡充します。また、オンボーディングを含めた各種ガイドラインやプロジェクトを通して得られた学びや知見を社内ドキュメントとしてGitHub上に資産化し、誰もが必要なタイミングで必要な情報を得られることはもちろん、フラットに改善提案を行うオープンソース文化の推進と能動的に学び合える組織環境を目指します。 <セキュリティ> 設立初年度より上場企業水準の信頼性とスタートアップ水準のアジリティの両立を目指し、モバイルデバイス管理(Jamf Pro)等を導入するなど情報管理体制に力を入れてきました。今後もコーポレートエンジニアリングチームの体制強化に取り組むほか、2022年度内にISMS認証等の取得に加え、将来的なSOC2+報告書水準の内部統制の実現に向けた投資を行っていきます。 投資者よりコメント ■ ALL STAR SAAS FUND マネージングパートナー 前田 ヒロ氏 ■ ジャフコ グループ株式会社 パートナー 井坂 省三氏 ■ 株式会社デライト・ベンチャーズ プリンシパル 永原 健太郎氏 ■ ジェネシア・ベンチャーズ Investment Manager 相良 俊輔氏 ■ みずほキャピタル株式会社 投資第6部 インベストマネージャー 園田 利弥氏 ■ SMBCベンチャーキャピタル株式会社 投資営業第一部 部長代理 渡辺 雄太氏 ■ 三菱UFJキャピタル株式会社 投資第三部次長 篠原 健氏 --- # Digital transformation (DX) partner ROUTE06 raised 1.5 billion yen in funding ー Investment in enterprise API development and building a remote-first environment URL: /news/11 title: Digital transformation (DX) partner ROUTE06 raised 1.5 billion yen in funding ー Investment in enterprise API development and building a remote-first environment summary: "ROUTE06, Inc. (headquarters: Shibuya-ku, Tokyo, Founder / CEO: Takafumi Endo, hereafter: ROUTE06) has announced that it has raised a total of 1.5 billion yen in Series A round funding." date: 2022-6-30 category: "PRESS" supplement: "#### About ROUTE06, Inc. ROUTE06 is a digital transformation (DX) partner supporting large enterprises in changing their business models. ROUTE06 contributes to realizing the creation of business transaction platforms and creating new corporate values through providing enterprise software infrastructure and agile development support. Incorporated: January 24, 2020 URL: https://route06.co.jp Location: 9F Marunouchi Kitaguchi Building, 6-5 Marunouchi 1-chome, Chiyoda-ku, Tokyo 100-0005 Representative: Takafumi Endo Description of business: enterprise software services, professional service " displayedHistory: false ROUTE06, Inc. (headquarters: Shibuya-ku, Tokyo, Founder / CEO: Takafumi Endo, hereafter: ROUTE06) has announced that it has raised a total of 1.5 billion yen in Series A round funding. As of today, ROUTE06 has implemented third-party allocation of shares to a total of seven companies: ALL STAR SAAS FUND as the lead investor as well as JAFCO Group, Delight Ventures, Genesia Ventures, Mizuho Capital, SMBC Venture Capital, and Mitsubishi UFJ Capital. Since its establishment in 2020, ROUTE06 has focused on supporting the launch and growth of digital businesses of large enterprises such as Sogo & Seibu and Mitsubishi Materials Corporation. The funds raised will be invested in the development of the business API platform for enterprises known as Plain, building a remote-first environment, and human resources development in order to further accelerate our efforts to date and realize the digital transformation of business transactions in all industries. We will also focus on expanding our internal infrastructure, including information security and internal controls, as well as improving operational efficiency. Business background of ROUTE06 The evolution of digital technology has led to the emergence of new platforms one after the other around the world, driving the economies of various countries and giving rise to many human resources and startup companies that are taking on the challenge of solving social issues. On the other hand, challenges are becoming apparent for the conventional corporate system that has supported the Japanese economy until now at large traditional companies in Japan, and pessimistic discussions about the future of society and the economy have often been held. While this background has made it relatively easier to focus attention on start-up companies and entrepreneurs, there are many intrapreneurs who are taking on the challenge of solving major social issues by leveraging the world-class facilities assets, intellectual property, human capital, and other assets of large traditional companies. Intrapreneurs are not necessarily well-versed in the latest digital technology, and there is often a shortage of human resources within companies who are skilled in business development, design, and engineering in the digital domain. As a DX partner for these intrapreneurs, ROUTE06 tackles the challenge of creating new business opportunities and economic value by leveraging the existing assets of large companies through our provision of the latest digital technology and system infrastructure as well as support from a team of digital business startup professionals. Plain, a business API platform for enterprises Product overview Plain is a business API platform for the digital transformation of all business transactions. It contributes to the vertical launch and continuous service improvement of various digital businesses, including online marketplaces, whether they are B2C or B2B. Even for large traditional companies that do not have a well-developed digital product development system, Plain can significantly shorten system development time and facilitate agile development with internal and external development partners as well as day-to-day business operations. The back-end system meets the security standards required by large companies, and by providing a full range of reporting and monitoring functions, builds an environment in which client companies can focus on enhancing user experience and business operations with peace of mind. Plain is a backend service that offers significant benefits particularly for digital businesses that require complex business operations and data integration, such as online marketplaces (B2C/B2B), order receipt platforms, OMO stores, cloud EDI, and business matching platforms. Its strengths in real-time, normalized data acquisition and integrated management enable flexible user experience design and continuous improvement, and contribute to the creation of new customer services and monetization methods that leverage new business data. Plain has already been introduced in DX projects in various industries. Our track record includes support for retail, manufacturing, and real estate businesses that want to launch digital platform services utilizing real assets such as stores and factory facilities, as well as distribution and intermediary companies that want to launch matching platform businesses utilizing domestic and international business connection networks. We are aiming for more than 100 contracts over the next five years, mainly with large companies. The concept behind the name “Plain” The word “Plain” is defined as a flat, unadorned stretch of land with good visibility. Our product “Plain” is ultimately a foundation. By bringing together client companies and various partners who are the main business stakeholders to co-create new services and businesses with Plain, the landscape changes in diverse ways and has the potential to develop and expand over time. None of the digital services created by utilizing this product will be the same. We would like Plain to be a product that enables people and companies that are not necessarily skilled in digital technology to more than fully express their individuality and strengths, and to provide a stage for grasping new chances for growth and opportunities. Service provision structure A professional team of product managers, engineers, designers and others within ROUTE06 supports the introduction of Plain and provides the services necessary for the vertical launch of a digital platform business. We provide agile and practical business support, including UX design and UI design according to customer value, construction of a digital-first workflow, and data linkage, analysis, and visualization to each system using the data platform function. Inquiries about introduction of Plain Please send inquiries to the ROUTE06 Professional Services Division at info@route06.co.jp ROUTE06’s aspirations as an organization ROUTE06’s guiding principle is “Be a disruptor.” The creation of new business opportunities and economic value requires the ability to beneficially “disrupt” our clients’ businesses and organizations. In order to become an organization that can gently and smoothly spread its passion to all stakeholders, we will invest in building internal structures and human resource development. In the next five years, we aim to increase the number of employees to 200, about seven times the current number. Initiatives to establish a remote-first environment An environment that is asynchronous and easy to work in We will pursue the creation of an asynchronous and easy-to-work-in environment by utilizing GitHub as the company-wide workspace and fully leveraging online collaboration tools such as Slack and Figma. In addition to the 20 days of annual paid leave granted upon joining the company, we use our systems that also allow sick leave, rest and relaxation leave, childcare leave allowance, and more so that employees can choose the way of working that allows them to achieve optimum performance. We will continue to expand and improve systems to ensure that each employee’s life is not compromised by their work. Human resources development With an eye on hiring new graduates, we will expand training support and other programs that encourage learning opportunities for individualized career development, such as improvement of product development skills. In addition, we will create assets on GitHub of internal documents such as various guidelines for onboarding and other matters as well as knowledge gained through projects to aim for an organizational environment in which everyone can obtain essential information when necessary, as well as to promote an open source culture where people can propose improvements in a flat manner and actively learn from one another. Security Since our first year of operation, we have focused on our information management system, including the introduction of mobile device management (Jamf Pro), in order to achieve both the reliability of a listed company and the agility of a start-up company. In addition to continuing to strengthen our corporate engineering team, we will obtain ISMS certification and other certifications by the end of FY2022, and invest toward achieving SOC2+ report level internal controls in the future. Comments from investors \*\*\*ALL STAR SAAS FUND Hiro Maeda, Managing Partner\*\*\* JAFCO Group Co., Ltd. Shozo Isaka, Partner Delight Ventures, Inc. Kentaroh Nagahara, Principal Genesia Ventures, Inc. Shunsuke Sagara, Investment Manager Mizuho Capital Co., Ltd. Toshiya Sonoda, Investment Manager, 6th Investment Department SMBC Venture Capital Co., Ltd. Yuta Watanabe, Deputy Department Manager, Investment and Sales Department 1 Mitsubishi UFJ Capital Co., Ltd. Ken Shinohara, Deputy Department Manager, Investment Department 3 --- # 「取引業務基盤、短納期で」日経産業新聞でROUTE06が紹介されました。 URL: /news/12 title: 「取引業務基盤、短納期で」日経産業新聞でROUTE06が紹介されました。 summary: "2022年6月30日付で発表した資金調達に関して、日経産業新聞に掲載されました。ROUTE06の提供するビジネスAPIプラットフォーム「Plain」を活用した大手企業のプラットフォーム事業支援の特徴について紹介されています。" date: 2022-07-21 category: "MEDIA" displayedHistory: false 2022年6月30日付で発表した資金調達に関して、2022年7月21日付の日経産業新聞に掲載されました。ROUTE06の提供するビジネスAPIプラットフォーム「Plain」を活用した大手企業のプラットフォーム事業支援の特徴について紹介されています。 --- # ROUTE06、新入社員向けに「The Day One Box」を提供開始〜第一弾はリモートファーストをテーマに「ambie」「竹尾」とコラボレーション〜 URL: /news/13 title: ROUTE06、新入社員向けに「The Day One Box」を提供開始〜第一弾はリモートファーストをテーマに「ambie」「竹尾」とコラボレーション〜 summary: 株式会社ROUTE06(以下ROUTE06)は、新しく入社する従業員向けに「The Day One Box」の提供を開始したことを発表します。「The Day One Box」には、耳をふさがない'ながら聴き'イヤホン「ambie(アンビー)」のROUTE06別注モデルや、国内外で約9,000種類の紙を取り扱う紙の専門商社「竹尾」特製のウェルカムチケットが封入されています。また「The Day One Box」を包むブックボックスはオリジナルグッズ制作の実績豊富なインドア社と協業し、新入社員が入社日に受け取ってから箱を開けるまでの体験にもこだわって制作しました。 date: 2022-08-05 category: "PRESS" glossary: startup supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス 【報道関係のお問い合わせ】 株式会社ROUTE06 広報担当 Mail:pr@route06.co.jp " displayedHistory: false 株式会社ROUTE06(以下ROUTE06)は、新しく入社する従業員向けに「The Day One Box」の提供を開始したことを発表します。「The Day One Box」には、耳をふさがない“ながら聴き”イヤホン「ambie(アンビー)」のROUTE06別注モデルや、国内外で約9,000種類の紙を取り扱う紙の専門商社「竹尾」特製のウェルカムチケットが封入されています。また「The Day One Box」を包むブックボックスはオリジナルグッズ制作の実績豊富なインドア社と協業し、新入社員が入社日に受け取ってから箱を開けるまでの体験にもこだわって制作しました。 「The Day One Box」制作の背景 ROUTE06は、一人ひとりが主体となり、それぞれの個性や熱量が物語のように紡がれていくナラティブな組織であることを大切に考えています。新しく入社した従業員にこのチームを選んでくれた感謝と歓迎の気持ちを伝えるために、そして、これから始まる新たな物語の1日目を祝福するために「The Day One Box」を制作しました。 「The Day One Box」のコンセプト ROUTE06は設立当初からフルリモートに対応した組織として、国内外の様々な場所に居住する従業員が働いています。物理的な接点を持ちにくいからこそ、新しく加わった仲間がこれから始まる物語にわくわくできるような「ROUTE06の表現する物理的で上質な『もの』」を詰め込みました。 「The Day One Box」は変化していく環境や組織に合わせて柔軟にテーマを選び、お届けする内容も変わっていきます。今回は第一弾として「リモートファースト」をテーマにグッズを選定し、快適なフルリモートワークをサポートするプロダクトや、リアルな体験を後押しするウェルカムチケットを同封しています。 「The Day One Box」の内容 耳をふさがない“ながら聴き“で、人生にBGMを添える「ambie」 ソニーでイヤホンやヘッドマウントディスプレイを手がけてきたエンジニアの三原良太氏がソニー社内の新規事業からスピンオフして設立したambie株式会社。2021年9月に発売された完全ワイヤレスモデル「ambie AM-TW01」は、耳をふさがずケーブルにも縛られない装着スタイルで、スポーツ、ビジネス、ホームなどON/OFF問わず多様なシーンで使用できます。 今回は、ROUTE06のコーポレートカラーであるクラシックブルーで同製品を別注(限定製作)。フルリモートでの業務に必要不可欠なイヤホンをアップデートして、特別感のある体験を日常的に楽しめます。ambieはこれまでBEAMSや蔦屋家電等との別注モデルの実績がありますが、ブランドや販売店を持たないスタートアップ企業とのコラボレーションは初の取り組みとなります。 手元に届く、新しい航路へのスペシャルチケット これから始まる物語を「ドラマティックな航海」として印象づける、シックな色合いとマットな紙質で選定した3枚のオリジナルチケット。 フルリモート組織のROUTE06では、創業期からいる従業員同士でさえ直接顔を合わせたことがないことも珍しくありません。そこで、本人の希望に合わせてオフラインでも気軽に交流できる機会を設けるために特別なチケットを用意しました。 カジュアルにランチ会を開催する「ウェルカムランチ」、遠方に住む従業員でも好きな時にオフィスに来れる「ウェルカムオフィス」、そして創業者を身近に感じてほしいという思いからROUTE06の代表といつでも食事に行けるチケットの3種類です。 これらのチケットはいつも新入社員を迎えるエントランスであるコーポレートチームのアイディアから起用されたもので、プレイヤーであるエンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーだけではなく、全社からの歓迎の気持ちが輪郭を成して出来あがりました。 収納インテリアとしても活用できる特製ブックボックス 「The Day One Box」は、ROUTE06代表の執筆記事「ナラティブな組織から生まれる変革力」 からインスピレーションを得て、「入社=仕事という色で人生を彩っていく物語が始まっていくこと」というコンセプトを軸に置き製作しました。 特製ブックボックスも例外ではなく、古書を思い起こさせる風合いの紙の選定や、少し掠れた細やかなあしらいなども試作を重ねこだわり抜いたポイントです。見た目は洋書風になっており、受け取った後には見せる収納やインテリアのアクセントとしても使うことができます。リモートワーク中に雑然としがちなデスクの上にある眼鏡や充電器などのコード類、無機質な文具なども目隠しでき、すっきりミニマムなお部屋の雰囲気作りにも役立ちます。 コメント ■ ambie株式会社 ディレクター 高松奈未氏 ■ 株式会社竹尾 ペーパープロダクト事業部 亀田訓佳氏 ■ 株式会社インドア 吉村達也氏 --- # ROUTE06はRubyKaigi 2022にスポンサーとして協賛します URL: /news/14 title: ROUTE06はRubyKaigi 2022にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06は、2022年9月8日 (木) から9月10日 (土) に開催されるRubyKaigi 2022にスポンサーとして協賛します。 date: 2022-08-24 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス " displayedHistory: false RubyKaigiは、プログラミング言語Rubyに関する世界最大級の国際カンファレンスです。コロナ禍におけるオンライン開催を経て、本年は3年ぶりの RubyKaigi として三重県総合文化センター (およびオンライン) にて開催され、Ruby の作者まつもとゆきひろ氏をはじめ国内外から多くのスピーカーが登壇する予定です。 https://rubykaigi.org/2022/ ROUTE06では、顧客企業の新たな企業価値を生み出すために様々な技術を活用したアジャイルなプロダクト開発によって多面的かつ実践的な事業支援に日々取り組んでいます。技術の発展と浸透にはコミュニティの存在が不可欠であり、そこから得られる知見や情報は、より良いものづくりにとって欠かせない重要なものです。 また、ROUTE06に在籍するメンバーの中には、RubyとRubyコミュニティの存在をきっかけにWebやプログラミングを学び始め、現在ソフトウェアエンジニアとして活躍されている方もいます。 プログラマーズカンファレンスとして、Ruby の処理系自体の議論を促進するエンジンとして、そして世界的な Ruby コミュニティの交流のハブとして、大きな影響力と意義を持つRubyKaigiに微力ながら貢献できればと思い、この度にスポンサーとして参加させていただくことにいたしました。 ROUTE06では今後も、エンジニアコミュニティへの貢献を継続してまいります。 「RubyKaigi 2022」開催概要 開催日: 2022年9月8日(木)〜9月10日(土) 会場: 三重県総合文化センター および オンライン 公式サイト: https://rubykaigi.org/2022/ --- # ROUTE06はiOSDC Japan 2022にスポンサーとして協賛します URL: /news/15 title: ROUTE06はiOSDC Japan 2022にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06は、2022年9月10日 (土) から9月12日 (月) に開催されるiOSDC Japan 2022にスポンサーとして協賛します。 date: 2022-09-02 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 iOSDC Japanは、iOSアプリ開発など、iOSとその周辺技術に関わるエンジニアのための技術カンファレンスです。 iOSは、2007年6月に発表された初代iPhoneとともに誕生したオペレーションシステムです。Appleは2008年、iPhoneOS 2にSoftware Developer Kitを実装し、世界中の開発者に新しいプラットフォームを開放しました\[^1]。それ以来、App Storeにおけるアプリのダウンロードが1700億回を超えるなど、iOSから生み出されたアプリは人々の生活やビジネスに大きな影響を与えてきました\[^2]。 iOSDC Japanは、2016年より毎年開催されているiOS関連技術をコアのテーマとしたソフトウェア技術者のためのカンファレンスです。今年は3年ぶりにオフラインでも開催され、「技術のお祭り」として多くのiOSエンジニアが参加することが予定されています。 ROUTE06では、技術の発展と浸透にはコミュニティの存在が不可欠であり、そこから得られる知見や情報は、より良いものづくりにとって欠かせない重要なものだと考えています。 iOSとその周辺技術に関わる情報を発信、交流する場として大きな影響力と意義を持つiOSDC Japanに微力ながら貢献できればと思い、この度スポンサーとして参加させていただくことにいたしました。 ROUTE06では今後も、エンジニアコミュニティへの貢献を継続してまいります。 「iOSDC Japan 2022」開催概要 開催 : 2022年9月10日(土)〜9月12日(月) 場所 :早稲田大学 理工学部西早稲田キャンパス63号館/オンライン (ニコニコ生放送) 公式サイト: https://iosdc.jp/2022/ \[^1]: An Illustrated History of iOS \[^2]: 日本のApp Store利用は世界3位、iOSアプリは10年間で1300億ドルを売り上げる【AppAnnie調査】 by BRIDGE --- # ROUTE06は技術書典13にスポンサーとして協賛します URL: /news/16 title: ROUTE06は技術書典13にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06は、2022年9月10日(土)から9月25日(日)に開催される技術書典13にゴールドスポンサーとして協賛します。 date: 2022-09-09 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス 【報道関係のお問い合わせ】 株式会社ROUTE06 広報担当 Mail:pr@route06.co.jp " displayedHistory: false 技術書典は、技術書にフォーカスした技術共有と普及のためのイベントです。ITエンジニアを中心に、情報発信を試みるエンジニアとより広くより深く技術を求めるエンジニアが出会う場として、近年の開催では1万名近くの方が参加するなど技術の普及と情報交換を促してきました。 現在日本のIT技術者数は109万人を超し、アメリカ、中国、インドに続き、世界で4番目にIT技術者が多い国と言われています。また、日本のIT技術者数の伸び率は年間4.81%となっており、毎年多くのIT技術者が生まれています^1。 そのようなIT技術者の増加とともに技術を発展、浸透させていくためには、コミュニティの存在が不可欠であり、そこから得られる知見や情報がより良いものづくりに繋がっていくとROUTE06は考えています。広く技術をテーマにした発信とコミュニケーションの場として、大きな影響力と意義を持つ技術書典に微力ながら貢献できればと思い、この度ゴールドスポンサーとして参加させていただくことにいたしました。 オフライン開催日である9月11日(日)には、会場にてブース出展も予定しています。 ROUTE06では今後も、エンジニアコミュニティへの貢献を継続してまいります。 「技術書典13」開催概要 オンライン開催:2022年9月10日(土)〜2022年9月25日(日) オフライン開催:2022年9月11日(日) 会場:池袋サンシャインシティ 展示ホールD(文化会館ビル2F) 公式サイト:https://techbookfest.org/event/tbf13 --- # 本社移転のお知らせ URL: /news/17 title: 本社移転のお知らせ summary: "株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、9⽉30⽇付で本社をWeWork 丸の内北口(東京都千代田区)に移転します。" date: 2022-09-29 category: "INFORMATION" glossary: startup supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビルディング9F 代表者:遠藤 崇史 事業内容:エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス 【報道関係のお問い合わせ】 株式会社ROUTE06 広報担当 Mail:pr@route06.co.jp " displayedHistory: false 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、9⽉30⽇付で本社をWeWork 丸の内北口(東京都千代田区)に移転します。 新本社について 物件名:WeWork 丸の内北口 住所:東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 移転時期:2022年9月30日 アクセス:東京メトロ 丸の内線 東京駅 北口地下通路より徒歩1分 WeWork 丸の内北口を選択した理由 ROUTE06はフルリモート組織を前提として創業したスタートアップ企業です。新規事業の創出や既存事業における顧客タッチポイントのデジタル化など、大手企業の抱える複雑な事業課題を解決するために常に多様なメンバーの力を必要としており、場所や時間に依存せず働ける環境づくりに取り組んでいます。 業務自体はフルリモートで行える環境であるからこそ、リアルなオフィスは新しい発見やつながりが増えるきっかけを生む場所にしたいと考えています。時間や座席を固定したり出社を強制したりすることなく、社員が気軽に立ち寄れる場所としてWeWork 丸の内北口を新たな本社として選択しました。 また、WeWorkはスタートアップから大企業、自治体やNPO団体など多種多様なメンバーが入居しており、業界業種や企業の壁を越えたコミュニティが形成されビジネスにおけるコラボレーションを多く創出している場所として知られています。 今後はWeWork 丸の内北口のアクセシビリティを活用しながら、ROUTE06の顧客である大手企業の方々をはじめ、多様なステークホルダーとのミーティングやブレインストーミングを通じた新たな発想の創出やコラボレーションを加速させることを目指してまいります。 (最終更新:2022年11月15日) --- # ROUTE06はProduct Leaders 2022にスポンサーとして協賛します URL: /news/18 title: ROUTE06はProduct Leaders 2022にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06は、2022年10月7日(金)に開催されるProduct Leaders 2022に協賛します。 date: 2022-10-04 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス 【報道関係のお問い合わせ】 株式会社ROUTE06 広報担当 Mail:pr@route06.co.jp " displayedHistory: false 日本CPO協会が主催するProduct Leaders 2022は、Amazon、Notion、Walt Disney Companyをはじめ、世界的企業で活躍するプロダクトリーダー達が集結し、グローバルにおけるプロダクトマネジメントの最前線とプロダクトリーダーシップについて学ぶオンラインイベントです。 昨年に続き第2回目の開催となる今年は、NotionのChief Product OfficerであるMadhu Muthukumar氏が日本初登壇。コンサルティングやデザインなど幅広いバックグラウンドを持つ同氏がNotionにおけるプロダクトリーダーシップについてお話します。また、エンジニアからプロダクトマネージャーへの転身したThe Walt Disney CompanyのDaniel Hai氏、日本国内では事例の少ないアウトバウンドプロダクトマネジメントの責任者、ServiceNowのTerence Chesire氏が登場するなど、海外の第一線で活躍するプロダクトリーダー達の知見を学べる貴重なイベントとなっています。 ROUTE06では、日本国内におけるプロダクト開発の発展と人材育成にはコミュニティの存在が不可欠であり、そこから得られる知見や情報は、より良いものづくりにとって欠かせない重要なものだと考えています。 海外のプロダクトマネジメントに関する情報を発信する場として大きな意義を持つProduct Leaders 2022に微力ながら貢献できればと思い、この度スポンサーとして参加させていただくことにいたしました。 ROUTE06では今後も、プロダクトマネジメントコミュニティへの貢献を継続してまいります。 「Product Leaders 2022」開催概要 日程:2022年10月7日(金) 11:30-17:30 公式サイト:https://japancpo.org/lp/product-leaders-2022/ --- # CTO就任のお知らせ URL: /news/19 title: CTO就任のお知らせ summary: "株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、CTO(Chief Technology Officer)を新設し、共同創業者兼取締役の重岡正が就任したことをお知らせします。エンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」の開発推進とスケールに注力するとともに、フルリモートにおけるDeveloper Experienceの向上やエンタープライズ領域のプロダクト開発を牽引するソフトウェアエンジニアの採用に取り組んでまいります。" date: 2022-11-01 category: "INFORMATION" glossary: agile-development supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビルディング9F 代表者:遠藤 崇史 事業内容:エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス 【報道関係のお問い合わせ】 株式会社ROUTE06 広報担当 Mail:pr@route06.co.jp " displayedHistory: true 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、CTO(Chief Technology Officer)を新設し、共同創業者兼取締役の重岡正が就任したことをお知らせします。エンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」の開発推進とスケールに注力するとともに、フルリモートにおけるDeveloper Experienceの向上やエンタープライズ領域のプロダクト開発を牽引するソフトウェアエンジニアの採用に取り組んでまいります。 就任の背景 ROUTE06は、伝統的な大手企業の有する世界有数の設備資産・知的財産・人的資本等を活用し、大きな社会的課題を解決するために挑戦を続けているイントレプレナーのDXパートナーとして、最新のデジタル技術及びシステムインフラの提供とデジタル事業立ち上げのプロフェッショナルチームによる支援を通して、大手企業の既存資産を活用した新しい事業機会と経済価値の創出にチャレンジしています。これまで、そごう・西武様のOMOストア「CHOOSEBASE SHIBUYA」や三菱マテリアル様のオンラインE-Scrap取引システム「MEX」をはじめ、複数の大手企業のデジタル事業の立ち上げ及びグロース支援を行ってきました。 2022年6月、シリーズAラウンドとともに公開したエンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」は、あらゆる商取引のデジタル・トランスフォーメーションを実現するためのビジネスAPIプラットフォームとして、B2C及びB2Bに関わらず、オンライン・マーケットプレイスをはじめとした様々なデジタル事業の垂直立ち上げ及び継続的なサービス改善に貢献します。デジタルプロダクト開発の体制が十分に整っていない伝統的な大手企業でも、「Plain」を活用することによってシステム開発期間が大幅に短縮されるとともに、社内外の開発パートナーとのアジャイル開発や日々の業務オペレーションを円滑に行うことができるようになります。 大手企業の商取引のデジタル化を支えるAPIプラットフォームとして「Plain」をスケールさせるため、すでに導入実績のある小売・製造・不動産業や流通・仲介業はもとより、あらゆるドメインに対応できる基盤機能の共通化等、大規模かつ複雑性の高い開発が求められています。この度、共同創業者兼取締役の重岡がその取り組みをリードすべくCTOに就任することとなりました。 CTOの職務として、フルリモート組織であるROUTE06のDeveloper Experienceの向上、また、エンタープライズ領域のプロダクト開発を牽引するソフトウェアエンジニア採用等にも取り組んでまいります。 プロフィール 重岡 正 (シゲオカ タダシ) --- # デジタルトランスフォーマー(DXer)ROUTE06、シードラウンドで2億円の資金調達を実施 URL: /news/2 title: デジタルトランスフォーマー(DXer)ROUTE06、シードラウンドで2億円の資金調達を実施 summary: "株式会社ROUTE06(本社:東京都渋谷区、代表取締役:遠藤崇史、以下:ROUTE06)は、株式会社デライト・ベンチャーズおよび株式会社ジェネシア・ベンチャーズが運営するベンチャーキャピタルファンドより、総額2億円の資金調達を実施したことをお知らせ致します。" date: 2020-05-18 category: "PRESS" displayedHistory: true glossary: startup agile-development saas 大手企業向けのDXサービスを拡大 株式会社ROUTE06(本社:東京都渋谷区、代表取締役:遠藤崇史、以下:ROUTE06)は、株式会社デライト・ベンチャーズおよび株式会社ジェネシア・ベンチャーズが運営するベンチャーキャピタルファンドより、総額2億円の資金調達を実施したことをお知らせ致します。 今回調達した資金につきましては、大規模なデジタル・トランスフォーメーション案件やOMO(Online Merges with Offline)に関連する先進的なデジタルプロダクト開発案件への支援体制拡充のために、専門人材採用およびデジタルプロダクトのR\&D等への投資に充ててまいります。 背景 ROUTE06(ルートシックス)は、あらゆる社会生活及び経済活動がオンラインに包含されていくOMO時代において、「リアルとデジタルが滑らかに繋がる社会をつくる」というビジョンを掲げ、大手IT企業、スタートアップ、コンサルティングファーム等でデジタルプロダクトの企画開発および事業経験の豊富なメンバーによって、2020年1月に設立されたプロフェッショナルファームです。 昨今デジタル・トランスフォーメーション(以下:DX)への関心が高まる一方で、国内のシステム開発の現場では、DXの障壁となる様々な問題を抱えております。経済産業省の『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』(以下:DXレポート)では、ブラックボックス化および老朽化した既存業務システムを大きな問題と指摘しており、システムベンダーの多重下請構造がその状況を更に複雑化させています。 また従来型システムインテグレーションの開発アプローチや請負契約なども、必ずしも変化の早いデジタルビジネスへの対応を前提としていないため、提案・納品物・価格など様々な面で、顧客企業の期待とのミスマッチが生じており、DX以前に既存の老朽化システムの現状維持に多大な費用が投下されております。上記DXレポートでも、国内企業のIT予算の約8割がシステムの維持管理に割り当てられており、このままでは2025年以降に最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済的機会損失が生じる可能性があると、事態の深刻さが強調されています。 このような現状に対して、当社では、外部ベンダーやオフショア開発に頼らず、社内のプロダクトマネージャー、エンジニア、デザイナー等によるプロフェッショナルチームが、一気通貫のアジャイル型アプローチでシステムの企画・実装・運用まで行うことにより、顧客企業に対して「内製品質」の透明性と柔軟性を持つデジタルプロダクトを提供させていただいております。 また「顧客の最善をつくるDXパートナー」として、エンドユーザーが使いこなせない機能やベンダー都合のパッケージ導入などを極力排除し、最新のSaaSや国内外のIT企業で導入実績のあるオープンソース等を積極的に活用することで、短納期でのソリューション提供およびシステムコスト削減を実現し、顧客企業のデジタルROI最大化に貢献いたします。 サービス 現在は中堅企業から大手上場企業グループまで、業種・業界・規模に関わらず、顧客企業の課題に対して最適なDXソリューションをご提案させていただいております。 1\. DX Consulting (デジタル戦略構築と実行支援) 既存事業のDXやデジタル新規事業立ち上げなどに対して、プロフェッショナルコンサルティングサービスを提供 2\. Agile as a Service (デジタルプロダクトのアジャイル開発) 最新のデジタルプロダクト(Webサイト、Android/iOSアプリ、業務システムなど)のコンセプト設計から実装・運用まで、アジャイル開発サービスを提供 3\. Data Platform Integration (既存システムの連携/統合) 既存業務システムを最新システムへ移行するリプレイスソリューションを提供。基幹データベース構築/API開発/SaaS連携により段階移行支援 投資家コメント ■ 南場 智子 氏(株式会社デライト・ベンチャーズ マネージングパートナー) ■ 渡辺 大 氏(株式会社デライト・ベンチャーズ マネージングパートナー) ■ 永原 健太郎 氏(株式会社デライト・ベンチャーズ プリンシパル) ■ 田島 聡一 氏(株式会社ジェネシア・ベンチャーズ ジェネラルパートナー) ■ 相良 俊輔 氏(株式会社ジェネシア・ベンチャーズ インベストメントマネージャー) 役員略 遠藤 崇史 (代表取締役) 東北大学大学院情報科学研究科を卒業後、株式会社日本政策投資銀行、株式会社ドリームインキュベータを経て、株式会社スマービーを創業、代表取締役CEOに就任。アパレル大手企業への同社のM\&Aを経て、株式会社ストライプデパートメント取締役CPO兼CMOに就任。株式会社デライト・ベンチャーズにEIRとして参画後、ROUTE06, Inc.を創業 松本 均(取締役) 株式会社ベイカレントコンサルティングを経て、楽天株式会社およびヤフー株式会社にて、ECシステム/DMP/全サービスのログ統一などデータプラットフォームを中心とした開発およびPdMを担当。その後、株式会社ストライプデパートメントの執行役員CTO、株式会社Welbyの執行役員/開発部長を経て、ROUTE06, Inc.を共同創業 重岡 正(取締役) 熊本大学大学院 CS 修士課程を卒業。WEBIMPACT, INC. でグルメ、不動産、ECなどの受託開発に従事。その後、Tokyo Otaku Mode Inc. の創業前期から参画、ソフトウェアエンジニアとして越境ECサービス開発などに従事、Engineering Manager を経て、ROUTE06, Inc. を共同創業 --- # 日本経済新聞「NEXTユニコーン調査」でROUTE06が掲載されました URL: /news/20 title: 日本経済新聞「NEXTユニコーン調査」でROUTE06が掲載されました summary: "日本経済新聞社の2022年「NEXTユニコーン調査」において、ROUTE06が掲載されたことをお知らせします。" date: 2022-12-06 category: "INFORMATION" glossary: startup supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビルディング9F 代表者:遠藤 崇史 事業内容:エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス 【報道関係のお問い合わせ】 株式会社ROUTE06 広報担当 Mail:pr@route06.co.jp " displayedHistory: false 2022年12月6日(火)に日本経済新聞社が公表した2022年「NEXTユニコーン調査」において、株式会社ROUTE06が掲載されたことをお知らせします。 NEXTユニコーン調査とは 日本経済新聞社が企業価値10億ドル(約1440億円)以上の未上場企業「ユニコーン」を目指すスタートアップ企業を調査し、企業価値を独自に推計、分野別にランキングしたものです。 --- # ISMS認証取得のお知らせ URL: /news/21 title: ISMS認証取得のお知らせ summary: "、2023年2月12日付でISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得したことをお知らせいたします。" date: 2023-02-24 category: "INFORMATION" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビルディング9F 代表者:遠藤 崇史 事業内容:エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス 【報道関係のお問い合わせ】 株式会社ROUTE06 広報担当 Mail:pr@route06.co.jp " displayedHistory: false 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、2023年2月12日付でISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得したことをお知らせいたします。 今後とも、上場企業水準の信頼性とスタートアップ水準のアジリティの両立を目指し、リモートファーストな体制構築に取り組んでまいります。 認証内容の詳細 認証規格:ISO/IEC 27001:2013(JIS Q 27001:2014) 認証登録番号:IS 747897 認証登録範囲: エンタープライズソフトウェアサービスの提供 デジタルプロダクトの企画、設計、開発、構築管理、保守及び運用 デザイン制作 DXコンサルティング 広告代理店業 初回認証登録日:2023年2月12日 審査・登録機関:BSIグループジャパン株式会社 ISMS認証とは ISMSとは、情報セキュリティマネジメントシステム(Information Security Management System)の略称であり、情報の機密性、完全性、可用性を保護するための体型的な仕組みです。ISMSには、技術的対策だけではなく、従業員の教育や組織体制の整備なども含まれます。 ISMSを構築するにあたって必要となるのが「ISO/IEC 27701(JIS Q 27001) 」という国際規格です。ISMS認証とは、組織の構築したISMSがISO/IEC 27701(JIS Q 27001) に基づいて適切に運用管理されているかを、第三者であるISMS認証機関が公平な立場から審査して証明するものです\[^1]。 \[^1]: 一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター ISMS適合性評価制度 --- # ROUTE06、見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal」のプロダクト開発で三菱商事と提携 〜流通事業者の取引仲介業務をクラウド上で共有・可視化・推進~ URL: /news/22 title: ROUTE06、見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal」のプロダクト開発で三菱商事と提携 〜流通事業者の取引仲介業務をクラウド上で共有・可視化・推進~ summary: 株式会社ROUTE06は、三菱商事株式会社と提携し、見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal(パスポータル)」のプロダクト開発を行ったことを発表します。 date: 2023-03-22 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス " displayedHistory: true 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下「ROUTE06」)は、三菱商事株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:中西勝也、以下「三菱商事」)と提携し、見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal(パスポータル)」のプロダクト開発を行ったことを発表します。 「PaSS-Portal」は、鉄鋼業界をはじめとした素材サプライチェーン上の流通事業者が、バイヤーとサプライヤーの間に立って日々行う「取引仲介業務」を支援する見積・受発注プラットフォームです。クラウド上でサプライヤーとつながることで、メールやFAXを使用せず取引を推進することができます。 初期ユーザーである住商メタルワン鋼管株式会社(以下「MSTP」)への導入支援を併せて実施し、2023年1月に初期導入が完了、同3月からはMSTPのサプライヤー(継手やバルブといった配管機材メーカーなど)への導入支援も開始しました。 今後、三菱商事によるグループ内外の企業へ積極展開を通して、多数の利用企業が「PaSS-Portal」上でつながることで、業務効率化や紙の削減、また取引データを活用した経営判断・営業活動に貢献することを目指します。 ■「PaSS-Portal」提供の背景 鉄鋼業界を始めとした素材サプライチェーンの川中領域には、様々なバイヤーとサプライヤーの間に立ち、取引を柔軟に仲介する流通商社や問屋が多数存在します。時には数百明細にも上る見積依頼をバイヤーより受け取り、明細毎に仕分けて複数のサプライヤーへ展開、相見積もりも含め遅滞なく見積回答を回収し、それらを束ねて見積書としてバイヤーへ提出、受発注や納品・請求へと続きます。 そういった流通事業者は多くの場合、バイヤー・サプライヤーとのやり取り(見積、受発注、納品・請求など)を担当者同士のメールやFAXで行っており、受領する大量の情報を自社のエクセルや会計システムに手入力しています。また、日々膨大な数の取引案件を並行推進しているため、多くの担当者が関連メールやFAX、添付書類を印刷し、案件毎にクリアファイルに入れて自席で管理しています。こうした状況は、業務過多・属人化・分散管理を招く原因として長年課題となっていましたが、「取引仲介」という性質上、流通事業者が主体的に改善に取り組むのは困難な状況にありました。 三菱商事とROUTE06は、そのような状況を改善し、より円滑な取引業務を実現するため、2022年2月よりMSTPとともに、流通事業者にとって最適な機能を備え、サプライヤーにとっても利用メリットのあるデジタルプロダクト開発を開始しました。 流通事業者特有の様々な取引バリエーションや、取引条件の変更・修正といったイレギュラーな事態にも対応可能なUI・UXを設計し、また相互利用を依頼するMSTPのサプライヤーへのヒアリングも踏まえ、この度、見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal」をリリース、2023年1月よりMSTP配管機材本部の全国事業所、約200名での業務利用を開始するに至りました。 ■ROUTE06の支援内容 本プロジェクトにおいて、ROUTE06は以下の領域で支援を行いました。 事業計画の検討支援 「PaSS-Portal」のサービス設計 エンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」の提供及びカスタマイズ UI/UXのデザイン設計及び実装 コンセプト及びサービスロゴ制作/ディレクション 初期ユーザーへの導入支援 ■見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal」について \- 「PaSS-Poral」の機能・特徴 <見積、受発注、納品・請求機能のワンストップ提供> 見積、受発注、納品・請求にかかる案件管理や進捗状況を、セキュアなWebクラウド上で一元管理。流通事業者とサプライヤー間でリアルタイムに共有できます。また、各明細情報や案件一覧などをエクセルでダウンロードすることも可能です。 <クラウド上で案件・取引データを一元管理> 基幹システムとの連携開発やPC端末へのアプリケーションのインストールをせずに、案件に紐付く複数のサプライヤーへの見積情報や関連ファイル、コミュニケーション履歴や取引ステータスをクラウド上で一元的に管理・確認できます。サプライヤー側でも流通事業者から依頼された取引案件が一覧化されるため、各案件の進捗を相互に認識できるだけでなく、取引条件や明細の変更・追加といった過去履歴が蓄積されることで経緯を把握する手間も軽減されます。 <取引案件の最新ステータスを自動表示> 取引案件の修正・更新履歴が時系列で管理・表示されるため、最新内容を手間なく正確に把握でき、従来は担当者個人に閉じていた貴重な取引情報が組織内で共有化されます。 <案件ごとのタスク登録> 従来、付箋紙に書いて自席に貼り付けているような「備忘録」を案件に紐づけて、担当者の個人タスクとして登録できます。「次にやるべきこと」が担当者間で共有・可視化され、迅速な対応や抜け漏れの防止に寄与します。 <オンラインコミュニケーション機能> チャットを使ってオンラインで手軽にやり取りできます。これまでメールや電話、FAXで行っていたやり取りをチャットに置き換えることで、迅速なコミュニケーションをサポートすることに加え、いつでも柔軟にサプライヤーとコミュニケーションを取ることができます。 現行機能では、サプライヤーの選定や見積金額の査定は各担当者の経験・判断によって行うことを前提としていますが、将来的には、蓄積された取引データを活用することで、「過去取引に基づく最適な示唆」を出力するなど、取引仲介業務の更なる効率化・品質向上に寄与するプラットフォームへと進化させていくことを視野に入れています。 \- 流通事業者のニーズにこだわり、サプライヤーにとっても便利なプロダクト設計 特定少数のバイヤー・サプライヤー間の膨大な取引を効率化する上では、各社の基幹システムをEDI(Electronic Data Interchange、「電子データ交換」)で連携させることが一般的な業務効率化手法です。しかし、多数のバイヤー・サプライヤー間で取引仲介を行う川中領域の流通事業者においては、会社間でのシステム連携に多大な開発工数が必要であるため、EDIの導入が進展しづらく、結果としてメール・FAXといった従来手法が長年用いられています。 近年、基幹システム連携を必要とせずブラウザからアクセス可能な「Web-EDI型の見積・受発注ツール」も展開されていますが、主には製造業の調達部門など、自社で管理する調達明細マスタに基づき、サプライヤーに対して当該ツールでのやり取りを要請し得る立場にある事業者をメインターゲットとしたツール設計となっているケースが多く、また組織内利用を目的として、仕掛案件の登録・管理・共有、及び過去案件の蓄積・参照ができる「営業支援ツール」も存在しますが、業務省力化には繋がりづらく、日々膨大な量の取引案件に対処する流通事業者にとってはむしろ業務量を増加させてしまう懸念もあります。 それらの課題に対して「PaSS-Portal」は、川中領域の流通事業者とサプライヤーにとっての利便性にこだわったプロダクト設計となっています。 一般的なWeb-EDIと同様、「PaSS-Portal」を利用するサプライヤーとの取引では、サプライヤー側が取引内容を「PaSS-Portal」に登録できる一方、「PaSS-Portal」を利用していないサプライヤーとの取引では、従来通りメールやFAXで受領した取引内容をサプライヤーに代わって流通事業者が「PaSS-Portal」に登録できるハイブリッドな仕様となっており、流通事業者はサプライヤーに「PaSS-Portal」の利用を強制することなく導入を進めることができます。 また、「PaSS-Portal」のメイン機能である「取引案件推進」は、大別して見積、受発注、納品・請求という3つのフェーズに分かれており、流通事業者とサプライヤーの双方がその情報を閲覧できます。取引のステータスに合わせ、3つのフェーズを順次進めて行く仕様となっていますが、必ずしもすべてのステップを踏む必要は無く、取引毎の特性に合わせて取捨選択(使用しないステップはスキップ)できる柔軟性を持たせています。 全体構成としては、見積、受発注、納品・請求という一取引案件の始点から終点までをカバーしており、また案件毎に開設されるチャットルームやファイル管理フォルダは、案件が終了しても使用し続けることができます。従って、「PaSS-Portal」上で流通事業者とサプライヤーが「取引案件推進」を一度開始すれば、それに係るやり取りは全て「PaSS-Portal」に集約・完結させることができ、メールやFAXを併用する必要がなくなり、流通事業者とサプライヤーにとって業務省力化や情報蓄積の観点で高い効果を期待できます。 【PaSS-Portalに関するお問い合わせ】 URL: https://pass-portal.jp ■ROUTE06が今後注力すること 経済産業省のレポート(※1)によれば国内のB2B-EC市場は約373兆円まで拡大しています。一方で昨今の企業取引を取り巻く環境は大きく変化しており、脱炭素化やSDGsなどの社会的要請に加え、物価や金利上昇などの経済情勢を見越した対応が求められています。従来の取引先との関係強化に加え、異なる業界や地域に所在する新しい取引先を拡大するために、システム間でのAPI連携や、受発注プラットフォームやクラウドEDIなどのデジタル技術を活用した新しいソフトウェアサービスの需要が高まっています。取引の透明性、健全性、持続可能性が求められる時代において、ROUTE06では企業間取引のDXを推進するために、よりユーザーにとって利便性の高いサービスを提供すべく、今後もエンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」の開発に注力していく方針です。 (※1)経済産業省 令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査) ■エンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」について 「Plain」はあらゆる商取引のデジタル・トランスフォーメーションを実現するためのビジネスAPIプラットフォームです。B2C及びB2Bに関わらず、オンライン・マーケットプレイスをはじめとした様々なデジタル事業の垂直立ち上げ及び継続的なサービス改善に貢献します。 URL: https://route06.co.jp/solutions/product/plain 【Plain導入やデジタル事業の立ち上げに関するお問い合わせ】 株式会社ROUTE06 プロフェッショナルサービス本部 info@route06.co.jp 三菱商事株式会社について 商号:三菱商事株式会社 設立:1950年(創立1954年) 所在地:東京都千代田区丸の内二丁目 3 番 1 号 代表者:代表取締役 社長 中西 勝也 事業内容:天然ガス、総合素材、石油・化学ソリューション、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発の10グループに産業DX部門を加えた体制で、幅広い産業を事業領域として多角的なビジネスを展開しています。 URL: www.mitsubishicorp.com --- # ROUTE06はKeebKaigi 2023にスポンサーとして協賛します URL: /news/23 title: ROUTE06はKeebKaigi 2023にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06は、2023年5月10日(水)に長野県松本市で開催されるKeebKaigi 2023にスポンサーとして協賛します。 date: 2023-04-27 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス " displayedHistory: false KeebKaigiは、DIYキーボード愛好家や、キーボードの自作やカスタムに興味のあるRubyKaigi 2023参加者を対象としたミートアップです。RubyKaigi 2023の会期前日である5月10日に、長野県松本市で対面形式で開催されます。 KeebKaigi 2023は、Rubyコミュニティとキーボード愛好家のコミュニティの相互の認知と交流を深めることを目的としており、当日は、国内外のRubyコミュニティとキーボード愛好家コミュニティのいずれか、あるいは両方で活躍する講演者や一般参加の有志によるショートプレゼンテーションが実施されます\[^1]。 ROUTE06には、キーボードに愛着とこだわりを持つ社員が多く存在します。また、Rubyコミュニティの存在をきっかけにWebやプログラミングを学び始め、現在活躍しているソフトウェアエンジニアも在籍しています。 Rubyコミュニティとキーボード愛好家のコミュニティの相互の認知と交流を深めることを目的として今年初めて開催されるKeebKaigi 2023に微力ながら貢献できればと思い、この度スポンサーとして協賛することにいたしました。 ROUTE06では、今後もエンジニア及びキーボードコミュニティへの貢献を継続してまいります。 「KeebKaigi 2023」開催概要 開催日:2023年5月10日(水) 会場:33GAKU<サザンガク> (長野県松本市大手3丁目3番9号 NTT東日本松本大名町ビル1F)及びオンライン配信 公式サイト:https://keebkaigi.org/2023 \[^1]: KeebKaigi 2023 スポンサーシップ目論見書 --- # ROUTE06はRubyKaigi 2023にスポンサーとして協賛します URL: /news/24 title: ROUTE06はRubyKaigi 2023にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06は、2023年5月11日に長野県松本市で開催されるRubyKaigi 2023にスポンサーとして協賛します。 date: 2023-05-11 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス " displayedHistory: false RubyKaigiは、プログラミング言語Rubyに関する世界最大級の国際カンファレンスです。本年は、長野県松本市のまつもと市民芸術館とオンラインのハイブリットで開催され、Rubyの作者まつもとゆきひろ氏のキーノートをはじめ国内外から多くのスピーカーが登壇します。 ROUTE06では、顧客企業の新たな企業価値を生み出すために様々な技術を活用したアジャイルなプロダクト開発によって多面的かつ実践的な事業支援に日々取り組んでいます。技術の発展と浸透にはコミュニティの存在が不可欠であり、そこから得られる知見や情報は、より良いものづくりにとって欠かせない重要なものです。 世界的なRubyコミュニティのハブとして大きな影響力と意義を持つRubyKaigiに微力ながら貢献できればと思い、本年もスポンサーとして参加させていただくことにいたしました。ROUTE06では今後も、エンジニアコミュニティへの貢献を継続してまいります。 「RubyKaigi 2023」開催概要 開催日:2023年5月11日(木)12日(金)13日(土) 会場:まつもと市民芸術館(長野県松本市)及びオンライン 公式サイト:https://rubykaigi.org/2023/ --- # ROUTE06はDesign Matters Tokyo 23にスポンサーとして協賛します URL: /news/25 title: ROUTE06はDesign Matters Tokyo 23にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06は、Design Matters Tokyo 23にスポンサーとして協賛します date: 2023-05-31 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス " displayedHistory: false コペンハーゲンを拠点に活動を展開するDesign Mattersは、デジタルデザインの新境地を開拓するために探求を続け、お互いに刺激し合うことを愛するデジタルクリエーターのグローバルコミュニティです。Design Matters TokyoはDesign Matters初の海外展開先として2020年より開催され、今年で3回目を迎えます。 Design Matters Tokyo 23は「AI + Design(AIとデザイン)」「Planet-centric design(惑星中心設計)」「Designing for well-being(ウェルビーイングのデザイン)」という3つのテーマに基づき、デジタルデザインの最前線を走る世界中のプレイヤーたちが様々な視点からデザインを語ります。 ROUTE06は、顧客企業の新たな企業価値を生み出すために多面的かつ実践的な事業支援に日々取り組んでいます。社内にはデザイナーが多数在籍し、大手企業のデジタルプラットフォーム開発及びROUTE06を表現するクリエイティブ制作を通して社内外へのブランディングに大きく貢献しています。 今回、デザイナーが互いに刺激を与え、学び合うことを目的としたDesign Mattersの意義に賛同し、この度スポンサーとして参加させていただくことにいたしました。なお、前夜祭として6月1日(木)に開催される「Design Matters Tokyo Eve Meetup」には、プロフェッショナルサービス本部デザインマネージャーの熊野亜由美が登壇します。 ROUTE06では今後も、デザイナーコミュニティへの貢献を継続してまいります。 Design Matters Tokyo 23 開催概要 日時:2023年6月2日(金)、3日(土) 場所:合同会社DMM.com 及びオンライン配信 公式サイト:https://designmatters.jp Design Matters Tokyo Eve Meetup 登壇情報 日時:6月1日 (木) 19:00-21:30 公式サイト:https://ti.to/design-matters/tokyo-23-meetup/ja 登壇者:プロフェッショナルサービス本部デザインマネージャー 熊野亜由美 登壇テーマ:Design Study for Non-Designers --- # 開発生産性ConferenceにCTO重岡正が登壇します URL: /news/26 title: 開発生産性ConferenceにCTO重岡正が登壇します summary: 開発生産性ConferenceにCTO重岡正が登壇します date: 2023-06-21 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス " displayedHistory: false ROUTE06は、ファインディ株式会社が主催する「開発生産性Conference」にPlatinaスポンサーとして協賛します。同カンファレンスには弊社CTOの重岡正が登壇し、ROUTE06の開発生産性に関する取り組みについてお話しします。 開発生産性Conferenceは、開発生産性という抽象的な概念におけるベストプラクティスや考え方に向き合う場として開催されます。Keynoteには、『LeanとDevOpsの科学 テクノロジーの戦略的活用が組織変革を加速する』の著者であるDr.Nicole Forsgrenが登場。好評によりオフラインの参加枠が増枠されるなど、今注目のカンファレンスです。 ROUTE06では、エンタープライズ・ソフトウェア基盤及びアジャイルでの事業化を支援するプロフェッショナルサービスを提供しています。実践的な「ものづくり」に重きを置いた組織として、オープンソースソフトウェア開発の考え方や手法を業務オペレーションに取り入れ、効率的かつ創造的なアウトプットを生み出すことを目指しています。 この度、「より良い組織を作りながら顧客への価値提供の速さを上げ、よりグロースするサービス・プロダクト作りに向き合う」というカンファレンスの意義に共感し、スポンサーとして参加することにいたしました。ROUTE06では、より良いものづくりにつながる学びや発見を後押しすべく、今後もエンジニアコミュニティへの貢献を継続してまいります。 開発生産性Conference 開催概要 日時:2023年7月13日(木) 終日 会場:KABUTO ONE/一部オンライン配信あり お申し込み:https://findy.connpass.com/event/283417/ 特設サイト:https://dev-productivity-con.findy-code.io/ 登壇情報 登壇時間:2023年7月13日(木)14:00-14:45 登壇者:ROUTE06 取締役CTO 重岡正 タイトル:全社ワークスペースにGitHubを選んだROUTE06の開発生産性 --- # ROUTE06、新入社員向けに「The Day One Box vol.2」を提供開始〜ウェルネスをテーマに、センティングデザイナーMEGUMI FUKATSU氏と共同制作〜 URL: /news/27 title: ROUTE06、新入社員向けに「The Day One Box vol.2」を提供開始〜ウェルネスをテーマに、センティングデザイナーMEGUMI FUKATSU氏と共同制作〜 summary: "株式会社ROUTE06は、新しく入社する従業員向けに「The Day One Box vol.2」の提供を開始したことを発表します。" date: 2023-07-03 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス 【報道関係のお問い合わせ】 株式会社ROUTE06 広報担当 Mail:pr@route06.co.jp " displayedHistory: false 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、新しく入社する従業員向けに「The Day One Box vol.2」の提供を開始したことを発表します。 第二弾となる今回は、ROUTE06の企業理念からインスピレーションを得た6本のアロマオイルを、日本を代表する企業やブランドを表現する香り制作や空間デザインを手がけてきたMEGUMI FUKATSU氏とともに制作。天然の植物の香りが心身のリラックスをもたらし、ROUTE06の持つ信念とこれから始まる新たな物語を想起させます。 新たな物語の1日目を祝福する「The Day One Box」 ROUTE06は、従業員一人ひとりが主体となりそれぞれの個性や熱量が物語のように紡がれていくナラティブな組織でありたいと考えています。新しく入社する従業員は、ROUTE06に新たな物語を加えてくれる大切な一員です。このチームを選んでくれた感謝と歓迎の気持ちを伝えるために、そしてこれから始まる新たな物語の1日目を祝福するために、「The Day One Box」を入社したその日にお届けしています。 「The Day One Box vol.2 」テーマはウェルネス リモートファーストをテーマに掲げた第一弾につづき、「The Day One Box vol.2」ではウェルネスをテーマに心身を豊かにするアイテムを展開。五感の中で最も直感的に働き全身の体験を呼び起こす嗅覚に注目し、ROUTE06の企業理念からインスピレーションを得て制作した6本のアロマオイルと、天然木から作られたディフューザーを選定しました。フルリモート環境で働く日々の中でも、天然の植物の香りを通じてROUTE06の信念を感じ取ったり、自分自身の内面と静かに向き合ったりできるような余白を生み出すことをイメージしています。 6本のアロマオイルをデザインしたMEGUMI FUKATSU氏は、ANAやレクサス、ルイスポールセンなど数多くの企業やブランドを表現する香りの制作や空間デザインを手がけてきた、日本におけるセンティングデザインの第一人者です。ROUTE06の信念を表す象徴的な言葉と、産地や抽出方法の違いで繊細に変わる天然の植物の香りを専門的な観点によって結びつけ、建築やインテリア設計のようにデザインを施すことで優しくも力強い特別な6本のアロマオイルが誕生しました。 「The Day One Box vol.2」には、その他にも前回と同じく新しい航路へのスペシャルチケットとして、カジュアルにランチ会を開催する「ウェルカムランチ」、遠方に住む従業員でも好きな時にオフィスに来られる「ウェルカムオフィス」、そして創業者を身近に感じてほしいという思いからROUTE06の代表といつでも食事に行けるチケットの3種類を用意。すべてのアイテムは、新しい物語の始まりを感じさせる洋書風の特製ブックボックスに封入されており、新入社員が入社日に受け取ってから箱を開けるまでの体験にもこだわって制作しています。 ORIGINAL AROMA OIL "DEFINE THE ROUTE" ラテン語の「spirare(呼吸する)」はインスピレーションの語源です。天然の植物の香りとともに深呼吸することで心身のリラックスを誘い、それぞれが生まれながらにして持っているクリエイティビティに優しくアプローチします。 まったく表情の違う6種類のアロマオイルは不思議と相反することはなく、混ぜ合わせるとさらに豊かな香りへと変化します。高品質の精油で配合しているため、透明感があり馥郁とした香りの広がりを感じることができます。 ジェンダーレスなクリーンさを目指したボトルのデザインは、嗅覚が呼び起こす直感的な体験をロジカルに表現。平滑な紙に細かく凹凸のあるタントで制作したディフューザー用オリジナルボックスは、お気に入りの香りを自由に混ぜ合わせたような柔らかい六角形が白箔であしらわれています。個性が融け合うアロマオイルとともに、未踏の世界を発見する旅にでかけましょう。 No.1 Be a disruptor 柑橘をベースにレモングラスの力強いエネルギーとブラックペッパーの刺激が特徴。情熱を持ったチェンジメイカーと、信じる道へ踏み出そう。 No.2 Act besides 20mの大木となる清らかなブルーサイプレスと、奥行きのある個性的なラベンダーが心に静寂と落ち着きを誘う。 No.3 Build beyond うっとりする華やかさと成功の力強さを表すイランイラン。モダンな感性で明日を切り開き、まるで幸福に包まれたような気分に。 No.4 Give first 集中力を高めるローズマリーと心を落ち着かせるシダーウッドは、硬派で紳士的。シャープでスパイシーな香りが大胆な勇気を呼び起こす。 No.5 Connect anywhere 太陽のようなオープンさ、感性の広がりを赤い果肉のオレンジで表現。気分を高揚させるフレッシュな香りをどうぞ。 No.6 Go root 祝いの木と呼ばれるギンバイカや生き生きとしたボタ二カルで表現された集大成。軸を持ち、前進し続ける強さと成長を。 【ウッドディフューザー リン】 アロマオイルの相棒としてセレクトしたのは@aromaのウッドディフューザー リン。天然木から作られ、湿度・温度・経年など置かれた環境で緩やかに変容する木目や色合いの表情や個性は、常に変化し続ける私たちの良き相棒にもなってくれます。 コメント MEGUMI FUKATSU氏について Scenting Designer、大分県日田市生まれ。18歳まで大自然のなかで過ごす。20代のはじめに、航空会社で働いた経験がホスピタリティーを培う原点となる。その後、香りの世界へ。『@aroma』の立ち上げから携わり、ANA、ルイスポールセンなど、数多くのカオリ制作や空間デザインのプロジェクトを国内外で約20年にわたり手掛ける。香り素材を発掘するアロマプランツハンターとして産地での活動も。近年は、大学での教鞭、講演やセミナーも行い、この文化を広げることに尽力。2020年「A Green」設立。著書『Scenting Design -カオリしつらえ-』。 --- # ROUTE06はiOSDC Japan 2023にスポンサーとして協賛します URL: /news/28 title: ROUTE06はiOSDC Japan 2023にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06は、2023年9月1日(金)から9月3日(日)に開催されるiOSDC Japan 2023にスポンサーとして協賛します。 date: 2023-08-21 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 iOSDC Japan 2023は、iOS関連技術をコアのテーマとしたソフトウェア技術者のためのカンファレンスです。2023年9月1日(金)〜9月3日(日)にリアル会場とオンライン配信のハイブリットで開催されます。 iOSは、2007年6月に発表された初代iPhoneとともに誕生したオペレーティングシステムです。App Storeの2022年の毎週平均アプリダウンロード数は7億4,700万回以上、デベロッパは合計1.1兆ドルを売り上げるなど、iOSから生み出されたアプリは人々の生活やビジネスに大きな影響を与えています\[^1]。 ROUTE06では、技術の発展と浸透にはコミュニティの存在が不可欠であり、そこから得られる知見や情報は、より良いものづくりにとって欠かせない重要なものだと考えています。 大手企業のDX支援においてiOSアプリの開発も行っているROUTE06は、iOSとその周辺技術に関わる情報を発信、交流する場として大きな影響力と意義を持つiOSDC Japanに微力ながら貢献できればと思い、この度スポンサーとして参加させていただくことにしました。今後も、ROUTE06はエンジニアコミュニティへの貢献を継続してまいります。 「iOSDC Japan 2023」開催概要 開催: 2023年9月1日(金)〜9月3日(日) 場所: 早稲田大学理工学部 西早稲田キャンパス + ニコニコ生放送 対象: iOS関連技術およびすべてのソフトウェア技術者 主催: iOSDC Japan 2023 実行委員会 (実行委員長 長谷川智希) 共催: 早稲田大学 理工学術院, 早稲田大学グローバル科学知融合研究所 協力: WASEDA-EDGE人材育成プログラム, Beyond 2020 NEXT PROJECT, NEW \[^1]: App Storeのデベロッパは、2022 年にApp Store経済圏で合 計1.1兆ドルの売上を記録 --- # ROUTE06、ホワイトヘルスケアが展開する「あなたの薬箱」の事業立ち上げを支援 〜健康保険組合員が安心してセルフメディケーションに取り組める環境づくりに貢献〜 URL: /news/29 title: ROUTE06、ホワイトヘルスケアが展開する「あなたの薬箱」の事業立ち上げを支援 〜健康保険組合員が安心してセルフメディケーションに取り組める環境づくりに貢献〜 summary: 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、ホワイトヘルスケア株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:池本多賀正、以下ホワイトヘルスケア)が展開する健康保険組合(以下健保)向けのOTC医薬品・常備薬販売サイト「あなたの薬箱」の事業立ち上げを支援したことを発表します。 date: 2023-09-22 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス " displayedHistory: true 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、ホワイトヘルスケア株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:池本多賀正、以下ホワイトヘルスケア)が展開する健康保険組合(以下健保)向けのOTC医薬品・常備薬販売サイト「あなたの薬箱」の事業立ち上げを支援したことを発表します。 ■「あなたの薬箱」概要 ホワイトヘルスケアが健保向けに展開する「あなたの薬箱」は、専門的知見を有する薬剤師が監修した健保加入者(以下、組合員)向けのOTC医薬品^1・常備薬販売サイトです。組合員は、所属する健保を通してOTC医薬品をインターネットで簡単に購入することができます。 「あなたの薬箱」は、健保と共同で実施する保健事業として健保の保有するレセプトデータを活用し、保険証を使った通院歴・服薬歴に応じて組合員それぞれに合ったお薬の飲み方を提案することに加え、組合員自身が普段何気なく飲んでいるお薬について、理解を深めるための様々な情報を提供します。 「あなたの薬箱」を通じて軽度な身体の不調は自身でケアするセルフメディケーション^2を推進することにより、組合員が自らの健康意識を高め、自身の健康に責任を持って行動を起こす機会を増やすとともに、健保の医療費の適正化に貢献することを目指す事業です。 ■「あなたの薬箱」提供の背景 近年、医療費の高騰により、財政が悪化し解散する健保が増加していることが課題となっています。企業保険組合の約4割が協会けんぽの保険料率10%を上回っており、「解散予備軍」と呼ばれています。組合員の医療費は保険料率に応じた健保の拠出金によって支えられているため、医療費負担が増加すれば健保の収支を保つためには保険料率の引き上げが必要になります。2008~2021年度の間に111組合の健保が解散しており^3、解散した健保の協会けんぽ移行によって国費負担は年120億円増加する可能性があるという試算もあります\[^4]。 健全な健保運営のために、医療費をいかに適正化していくかが重要なポイントです。健保は、これまで保健事業として、従来も特定健診・特定保健指導の実施による生活習慣病予防や、ジェネリック医薬品の利用促進により、医療費適正化に取り組んできました。 今回、「あなたの薬箱」を通して目指すOTC医薬品の活用によるセルフメディケーションの推進も、近年注目を集める医療費適正化施策の一つです。医療用医薬品を処方されている患者が同一有効成分のOTC医薬品に切り替えた場合、約3,200億円の医療費適正化効果があるとの試算もあります^5。厚生労働省も2021年4月にセルフケア・セルフメディケーション推進室を立ち上げ、普及に力を入れています。 ホワイトヘルスケアは、健保がセルフメディケーションの保健事業を実施するための支援サービスとして、健保が保有するレセプトデータを活用しながら、組合員が安心してセルフメディケーションを実践できる仕組み作りにパイオニアとして取り組んでおり、同社の取り組みは、厚生労働省からも薬剤給付適正化に向けた先進事例として紹介されています。 ■「あなたの薬箱」主な機能 「あなたの薬箱」は、最短翌日にお薬が自宅に届き、365日いつでも利用できます。お薬を購入するだけでなく、薬剤師へのLINE相談、”お薬ナビ”で問診票に答えることで自分に合った薬を見つけたり、”レッドフラグチェック”で重篤な疾患の兆候を確認したりすることができます。 OTC医薬品の購入 症状や体質などからおすすめのお薬を提案する「お薬ナビ」 重篤な疾患を疑うサインに該当するかをチェックする「レッドフラグチェック」 LINEによる薬剤師への相談窓口提供 薬剤師監修のお薬に関するコンテンツ掲載 セルフメディケーション税制控除額が試算できるシミュレーター 「あなたの薬箱」のサービス提供に加えて、健保のレセプトデータを活用し、セルフメディケーションの活用余地のある組合員に対して行動変容を促す取り組みや、保健事業の成果となる医療費適正化の効果を検証する取り組みも行っています。 【健保向け】「あなたの薬箱」導入に関するお問い合わせ selfmed@whitehealthcare.co.jp ■ROUTE06の支援内容 本プロジェクトにおいて、ROUTE06は以下の領域で支援を行いました。 OTC医薬品ECプラットフォームにおける事業戦略の検討支援 「あなたの薬箱」のサービス及び業務設計支援 UI/UXデザイン設計及びシステム構築 エンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」によるデータ基盤及びレポートの提供 サービスグロース及び業務改善支援 ■エンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」について 「Plain」はあらゆる商取引のデジタル・トランスフォーメーションを実現するためのビジネスAPIプラットフォームです。B2C及びB2Bに関わらず、オンライン・マーケットプレイスをはじめとした様々なデジタル事業の垂直立ち上げ及び継続的なサービス改善に貢献します。 URL: https://route06.co.jp/solutions/product/plain 【Plain導入やデジタル事業の立ち上げに関するお問い合わせ】 株式会社ROUTE06 プロフェッショナルサービス本部 info@route06.co.jp \[^4]: 第196回国会 厚生労働委員会 第25号 ■ホワイトヘルスケア株式会社について ホワイトヘルスケアは、ヘルスケアの未来をつくるため、三菱商事と東京海上ホールディングスの合同出資により2020年7月に設立されたジョイントベンチャーです。 超高齢社会に伴う医療費の増加等によってさまざまな課題を抱えている健康保険組合や医療関係者に対し、テクノロジーやデータを活用した支援を行っています。そして、一人ひとりが自らの健康に向けて行動できる社会の実現を目指しています。 --- # ROUTE06、元Increments小西智也氏が取締役に就任 URL: /news/3 title: ROUTE06、元Increments小西智也氏が取締役に就任 summary: "​株式会社ROUTE06 (本社:東京都渋谷区、代表取締役:遠藤崇史、以下:ROUTE06) は、株主総会決議を経て、小西 智也 (こにし ともや) 氏が取締役に就任したことをお知らせ致します。今後は新取締役のもとで、顧客企業へのUXデザイン支援サービスや自社サービス開発などを拡充すべく、組織体制の強化を推進してまいります。" date: 2020-06-02 category: "INFORMATION" displayedHistory: false glossary: startup ​株式会社ROUTE06 (本社:東京都渋谷区、代表取締役:遠藤崇史、以下:ROUTE06) は、株主総会決議を経て、小西 智也 (こにし ともや) 氏が取締役に就任したことをお知らせ致します。今後は新取締役のもとで、顧客企業へのUXデザイン支援サービスや自社サービス開発などを拡充すべく、組織体制の強化を推進してまいります。 就任の背景 ROUTE06 (ルートシックス) は「リアルとデジタル滑らかに繋がる社会をつくる」というビジョンを掲げ、大手IT企業、スタートアップ、コンサルティングファーム等でデジタルプロダクトの企画開発および事業経験の豊富なメンバーによって、2020年1月に設立されたプロフェッショナルファームです。「顧客の最善をつくるDXパートナー」として、業種・業界・規模に関わらず、顧客企業の課題に対して最適なデジタル・ソリューションをご提供させていただいております。 昨今の複雑・多様化するデジタル事業において、一般消費者向けのUX (ユーザー体験) のみならず、CX (顧客体験) やEX (従業員体験) などへの注目が集まっています。デジタル・トランスフォーメーションの現場においても、システム化やツール導入以前に、事業運営に関わるあらゆる関係者の体験設計が非常に重要な役割を果たしており、デザイン・ソリューションに対する顧客企業からの需要も高まり続けているのが現状です。そのような状況に対して、システムインテグレーション業界を経て、Increments (Qiita) を創業・エグジット経験のあるデザイナー兼シリアルアントレプレナーである小西氏を取締役として迎え入れることで、これまで以上に顧客企業のデジタルROI向上に貢献してまいります。 新取締役略歴 小西 智也(取締役) 住商情報システム株式会社 (現・SCSK株式会社) を経て、Increments株式会社を創業、取締役に就任。デザイナーを兼任し、サービスのコンセプト設計やユーザーヒアリングから実装まで幅広く担当。開発したサービスは毎月数百万人がアクセスするサービスへと成長。大手IT企業への同社のM\&Aを経て、株式会社ROUTE06に参画。 --- # Designship 2023にスポンサーとして協賛します URL: /news/30 title: Designship 2023にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06はDesignship 2023にスポンサーとして協賛します。 date: 2023-09-29 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 Designshipは、様々な業界における一流デザイナーが集結し、それぞれの叡智や想いを集結させる日本最大級のデザインカンファレンスです。「次世代の産業に貢献するデザイン人材の輩出」というミッションのもと運営される一般社団法人デザインシップによって、2018年より毎年開催されています。 ROUTE06は、顧客企業の新たな企業価値を生み出すために多面的かつ実践的な事業支援に日々取り組んでいます。社内にはデザイナーが多数在籍し、大手企業のデジタルプラットフォーム開発及びROUTE06を表現するクリエイティブ制作を通してより良いものづくりに大きく貢献しています。 今回、最前線のデザインを学び、第一線のデザイナーと語り合う、年に一度のデザインの祭典である「Designship」の意義に共感し、スポンサーとして参加させていただくことにいたしました。 ROUTE06では今後も、デザイナーコミュニティへの貢献を継続してまいります。 「Designship 2023」開催概要 セッション:合計80セッション程度 人数:会場500人 + オンライン20,000人程度(昨年実績) 対象者:デザイナー、デザイナー志望の方、デザインに興味のある方 日時:2023年9月30日(土)、10月1日(日) 会場:渋谷ヒカリエホール(東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ9F) 主催:一般社団法人デザインシップ 登壇情報 日時:2023年9月30日(土)16:20 会場:Collaboration Area 登壇者:プロフェッショナルサービス本部 デザインエンジニア becolomochi 登壇テーマ:How do we design DesignOps? デザインエンジニアリングで解決するDesignOps --- # ROUTE06のイメージムービー「Define the route.」を公開しました URL: /news/31 title: ROUTE06のイメージムービー「Define the route.」を公開しました summary: ROUTE06は企業理念である「Define the route.」を表現したイメージムービーを制作しました date: 2023-09-29 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、企業理念である「Define the route.」を表現したイメージムービーを制作しました。このイメージムービーは協賛イベントであるDesignship 2023で配信されます。 映像紹介 エンタープライズ向けソフトウェアサービスの提供とプロフェッショナルチームによる事業立ち上げ支援を通して、大手企業の新しい事業機会と経済価値の創出に挑戦するROUTE06。 今回、企業理念である「Define the route.」をテーマにイメージムービーを制作。企業の変革者となる挑戦者達が新しい人や技術との出会いをきっかけに、大きな事業課題の解決に繋がる道筋を描き、実践的なものづくりへと向かう様子を表現しました。 今回の映像制作にあたっては、プロジェクションマッピングを主体に活躍され、世界3大EDMフェスティバルでの受賞歴をもつ映像プロダクションnanographicaの岸本圭司氏とコラボレーション。デジタルな世界観と広がりをダイナミックに表現していただきました。 クリエイタープロフィール 映像作家 演出家 nanographica 岸本圭司氏 nanographica 岸本氏よりコメント nanographicaについて VJを長年経験しイベントやプロジェクションマッピングを企画し培ってきた現場力、演出力、即興表現力が弊社の強みです。ビジュアル決定から投影までの企画と制作が同時に走ることから多社に比べ数倍もスピード感が違います。永年培ってきたデジタル機器の知見が高くXRバーチャルステージを4Kクオリティで同時に4台稼働することができます。 映像について社名の通り、繊細で緻密なナノデザインをベースとし、より美しくより感動的にお客様にご提供出来る事を基本概念として運営しております。ナノグラフィカの映像世界観に引き込まれたクラブDJからのオファーは絶えません。和柄映像、ネオ東京、サイバーパンク、日本の和と未来感を合成することに長けており、世界遺産石見神楽などとのコラボによる未来型和式エンターテイメントなども展開しています。 URL:https://www.nanographica.net/ --- # デザインコラボレーションを探求する「Design Bazaar」開催〜Figma Japan カントリーマネージャー 川延浩彰氏をはじめ、第一線で活躍するデザイナーが登壇〜 URL: /news/32 title: デザインコラボレーションを探求する「Design Bazaar」開催〜Figma Japan カントリーマネージャー 川延浩彰氏をはじめ、第一線で活躍するデザイナーが登壇〜 summary: デザインコラボレーションを探求するイベント「Design Bazaar」を10月24日(火)に開催します date: 2023-10-11 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、デザインコラボレーションを探求するイベント「Design Bazaar」を10月24日(火)に開催します。 Design Bazaarはデザイン起点でのコラボレーションをテーマにしたオフラインイベントです。 スペシャルゲストとしてFigma Japan カントリーマネージャーの川延浩彰氏をお招きし、Figmaのプロダクト開発における取り組みについてご紹介いただきます。 その他、エムスリー、Visional、ディー・エヌ・エーの第一線で活躍されているデザイナーにご登壇いただき、組織におけるデザインリーダーの役割、デザインとエンジニアリングの融合について、それぞれパネル形式でお話しいただきます。 イベント紹介 日付:2023年10月24日(火) 時間:《開場》18時00分 《開演》18時30分〜22時00分 ※21時00分からAfter Partyを開催 開催方式:オフライン開催/後日アーカイブ配信の登録方法をご案内(予定) 参加予定者数:100名(事前登録・先着順) 会場:​THE CORE KITCHEN/SPACE 参加申し込みURL:https://lu.ma/design-bazaar\_20231024 特典:当日ご来場いただいた方限定の特別ギフトをご用意しております プログラム 登壇者について 川延 浩彰氏 Figma Japan 株式会社 カントリーマネージャー 古結 隆介氏 エムスリー株式会社 CDO(Chief Design Officer)/プロダクトデザイナー 大河原 陽平氏 Visionalグループ 株式会社ビズリーチ HRMOSプロダクト本部 プロダクトデザイン室 室長 久田 歩氏 株式会社ディー・エヌ・エー デザイン本部サービスデザイン部 部長 大月 雄介氏 エムスリー株式会社 チームリーダー / プロダクトデザイナー 福田 佳世子氏 Visionalグループ 株式会社ビズリーチ ビズリーチプロダクト部 デザインマネージャー 松田 涼氏 株式会社ディー・エヌ・エー デザイン本部サービスデザイン部グループリーダー / ブランドデザイン室 --- # ROUTE06はKaigi on Rails 2023にスポンサーとして協賛します URL: /news/33 title: ROUTE06はKaigi on Rails 2023にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06は、Kaigi on Rails 2023にスポンサーとして協賛します。 date: 2023-10-13 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 Kaigi on Railsは「初学者から上級者までが楽しめるWeb系の技術カンファレンス」です。 Kaigi on Railsは技術カンファレンスへの参加の敷居を下げることを意図して企画されており、名前の通りRailsを話題の中心に据えるカンファレンスでありながら、広くWebに関すること全般(例えばフロントエンドやプロトコルなど)についてもカバーしています。 ROUTE06では、技術の発展と浸透にはコミュニティの存在が不可欠であり、そこから得られる知見や情報は、より良いものづくりにとって欠かせない重要なものだと考えています。また、ROUTE06には、RailsとRailsコミュニティの存在をきっかけにWebやプログラミングを学び始め、現在ソフトウェアエンジニアとして活躍しているメンバーも在籍しています。 そのような背景から、幅広くRailsとその周辺技術に関わる情報を発信、交流する場として大きな影響力と意義を持つKaigi on Rails 2023に微力ながら貢献できればと思い、この度スポンサーとして参加させていただくことにしました。 今後も、ROUTE06はエンジニアコミュニティへの貢献を継続してまいります。 「Kaigi on Rails 2023」開催概要 開催: 2023年10月27日 (金) - 2023年10月28日 (土) 場所: 浅草橋ヒューリックホール&カンファレンス 公式サイト: https://kaigionrails.org/2023/ --- # プロダクトマネージャーカンファレンス2023に取締役の松本均が登壇します URL: /news/34 title: プロダクトマネージャーカンファレンス2023に取締役の松本均が登壇します summary: プロダクトマネージャーカンファレンス2023に取締役の松本均が登壇します date: 2023-11-24 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 ROUTE06(ルートシックス)は、一般社団法人プロダクトマネージャーカンファレンス実行委員会が主催する「プロダクトマネージャーカンファレンス 2023(以下、pmconf 2023)」にゴールドスポンサーとして協賛します。 同カンファレンスには弊社取締役兼プロフェッショナルサービス本部長の松本均が登壇し、ROUTE06が大手企業向けに提供するエンタープライズSaaS「Plain」に関するプロダクトマネジメントについてお話します。 pmconf 2023 について pmconfは、プロダクトマネージャーやそれを目指す人、プロダクトマネジメントに関わる人が集い、情報・意見を交換し共に学ぶカンファレンスです。2016年に初めて開催され、本年で8回目となります。本年はオフラインの入場チケットに100名を超えるキャンセル待ちが発生するなど、大きな注目を集めています。 日時:2023年11月29日(水)10:00-18:00 会場:浅草橋ヒューリックホール&カンファレンス /オンライン配信あり 参加:250名 お申し込み:https://pmconfjp.doorkeeper.jp/events/162061 特設サイト:https://2023.pmconf.jp/ 伝統的な大手企業の有する世界有数の設備資産・知的財産・人的資本等を活用し、大きな社会的課題を解決するために覚悟を持って挑戦を続けているイントレプレナーは数多く存在しており、ROUTE06は、そのような挑戦者達のパートナーとして、大手企業の既存資産を活用した新しい事業機会と経済価値の創出にチャレンジしています。 本年のテーマ「その覚悟が世界を変える」について、公式のnote では以下のように述べられています。 2023年のカンファレンステーマは「その覚悟が世界を変える」と設定いたしました。 今年のテーマを考える上で、昨年の参加者アンケートからヒントを探しました。現在、カンファレンスを始めた頃に比べて、PMが広く認知され、PMになったという人も多く、「実体験をもとにした生の声が聞けるのが良い、多種多様な会社の実例が知れるのが良い」という声がたくさん寄せられました。 一方で、優れた書籍が増え、PMに関する情報格差が埋まってきたこともあり、「すでに知っている、対策している内容も多かった。より実践に繋がるようなことを学びたい」という声も増えてきました。 実際に実践しているプロダクトマネージャーとの差は何があるのか、実践をするために必要なことは何かを実行委員で話し合い「覚悟」というキーワードが挙がりました。広く情報が広まった今、実践につなげるには一歩を踏み出す覚悟が必要であり、プロダクトマネージャーカンファレンスでは、その覚悟を後押しできる場であるべきと考えました。 ROUTE06はこのpmcomf 2023のテーマに強く共感し、スポンサーとしての協賛に至りました。 ROUTE06では、今後も国内におけるプロダクトマネジメントの発展・進化に貢献するべく、企業や組織の壁を超えたコミュニティ活動を支援してまいります。 登壇情報 登壇時間:2023年11月29日(水)15:35-15:55 登壇者:株式会社ROUTE06 取締役 プロフェッショナルサービス本部 本部長 松本 均 タイトル:エンタープライズSaaSへの挑戦 〜顧客の事業を成長させるプロダクトマネジメントとは〜 https://2023.pmconf.jp/session/YVJ57uYz --- # CFO就任のお知らせ URL: /news/35 title: CFO就任のお知らせ summary: CFO就任のお知らせ date: 2024-03-08 category: "INFORMATION" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、コーポレート本部長兼社長室長の見浪康平が執行役員CFO(Chief Financial Officer)に就任したことをお知らせします。会計・財務及びM\&Aに専門性を持つ見浪を役員に迎えることによって、経営管理体制の強化に加え、ステークホルダーとの真摯なコミュニケーションを通した企業価値の向上に努めてまいります。 CFO就任の背景 ROUTE06は、大手企業のDXパートナーとして、デジタル事業立ち上げのプロフェッショナルチームによる支援及びエンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」の提供を通して、大手企業の既存資産を活用した新しい事業機会と経済価値の創出に挑戦しています。これまで、三菱商事株式会社の見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal」やホワイトヘルスケア株式会社のOTC医薬品・常備薬販売サイト「あなたの薬箱」をはじめとした、大手企業のデジタル事業の立ち上げ及びグロース支援を行ってきました。 今回CFOに就任した見浪は、監査法人、M\&Aアドバイザリー、事業会社の投資部門においてファイナンス経験を有するプロフェッショナルです。ROUTE06では2022年の入社以来、社長室長として財務・事業開発・マーケティング業務に加え、コーポレート本部長として人事労務・経理・法務などのコーポレート業務を統括。社内稟議システム「CDR(Corporate Decision Record)」や工数管理システム「DOR(Daily Operations Report)」の設計を主導するなど、経営管理体制の高度化に貢献いたしました。この度の就任を通じて、今後のエンタープライズ向けの事業拡大を見据えた管理会計やコーポレートガバナンスの強化に加え、資本・業務提携などの財務戦略の立案・実行による非連続的な成長機会の創出にも取り組んでまいります。 執行役員CFO・見浪康平のコメント 「この度、株式会社ROUTE06の執行役員CFOに就任いたしました。当社は今年の1月に創業5期目を迎え、顧客企業と共に『未来への道筋を描く』DXパートナーとして、エンタープライズ向けAPIプラットフォーム『Plain』の導入とプロフェッショナルサービスの提供により、エンタープライズ企業への支援実績を積み上げてきました。今後、スケールした事業成長と新しい大企業としての姿を実現するため、CFOとして規律ある投資・ファイナンスの実行、コーポレート体制の強化というミッションを通じて、ROUTE06の中長期的な成長に貢献し、ステークホルダーの皆様の期待に力強く応えていきます。」 略歴 慶應義塾大学経済学部を卒業後、有限責任監査法人トーマツ、PwCアドバイザリー合同会社を経て、楽天グループ株式会社でM\&A・JV出資・スタートアップ投資等をリード/執行。2022年、株式会社ROUTE06入社。社長室長として財務・事業開発・マーケティングを担当後、コーポレート本部長兼執行役員CFOに就任(公認会計士)。 --- # Appointment of new CFO URL: /news/36 title: Appointment of new CFO summary: Appointment of new CFO date: 2024-03-08 category: "INFORMATION" supplement: "#### About ROUTE06, Inc. ROUTE06 is a digital transformation (DX) partner supporting large enterprises in changing their business models. ROUTE06 contributes to realizing the creation of business transaction platforms and creating new corporate values through providing enterprise software infrastructure and agile development support. Incorporated: January 24, 2020 URL: https://route06.co.jp Location: 9F Marunouchi Kitaguchi Building, 6-5 Marunouchi 1-chome, Chiyoda-ku, Tokyo 100-0005 Representative: Takafumi Endo Description of business: enterprise software services, professional service " displayedHistory: false ROUTE06, Inc. (headquarters: Chiyoda-ku, Tokyo, CEO: Takafumi Endo, hereafter: ROUTE06) has announced the appointment of Kohei Minami as Chief Financial Officer (CFO). By welcoming Minami as executive officer, who has expertise in accounting, finance, and M\&A, we strive to enhance our corporate value through sincere communication with stakeholders, in addition to upgrading our business management system. Background of the appointment ROUTE06 is a digital transformation (DX) partner for large enterprises that strives to create new business opportunities and economic value by leveraging their existing assets. We do this by providing support from our team of digital business startup professionals and our API platform “Plain” for enterprises. To date, we have supported the launch and growth of digital businesses of large enterprises, including Mitsubishi Corporation’s “PaSS-Portal” estimate and order-receiving platform and Whitehealthcare’s “Anata no Kusuribako” (Your Medicine Box) OTC drug and household medicine sales site. Our newly appointed CFO Kohei Minami is a professional with experience in finance at audit firms, M\&A advisory firms, and the investment division of company. Since joining ROUTE06 in 2022, in addition to finance, business development, and marketing, he also oversees corporate department such as human resources, accounting, and legal as the General Manager of Corporate Division. Minami has contributed to the enhancement of our business management system by leading the design of the corporate decision record (CDR) internal decision system and the daily operations report (DOR) man-hour management system. Through his appointment to CFO, he will work to strengthen management accounting and corporate governance in anticipation of future enterprise business expansion, as well as to create discontinuous growth opportunities through the planning and execution of financial strategies including capital and business alliances. Comment from Kohei Minami, Executive Officer and CFO I am thrilled to have been appointed Executive Officer and CFO of ROUTE06, Inc. ROUTE06 celebrated its fifth year in business in January 2024. As a DX partner that “Define the route.” to the future together with our clients, we have built up a track record of support for large enterprises by providing the API platform “Plain” and professional services. As CFO, I will contribute to ROUTE06’s medium- to long-term growth and strongly meet the expectations of our stakeholders through our mission of executing disciplined investment and financing and strengthening our corporate structure in order to realize scaled business growth and a new form as a large corporation. --- # ROUTE06はRubyKaigi 2024にスポンサーとして協賛します URL: /news/37 title: ROUTE06はRubyKaigi 2024にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06はRubyKaigi 2024にスポンサーとして協賛します date: 2024-03-18 category: "INFORMATION" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 フレームワーク「Ruby on Rails」を用いてGitHubやShopify、Airbnbなどに利用されているプログラミング言語「Ruby」。そのRubyの未来を議論する世界最大規模の国際カンファレンスがRubyKaigiです。本年は、沖縄県那覇市にある那覇文化芸術劇場なはーとにて開催し、Rubyの開発者・まつもとゆきひろ氏がキーノートに登壇されます。 ROUTE06ではエンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」のアプリケーション開発においてRubyを採用しています。加えて、ROUTE06にはRubyをきっかけにプログラミングを学びはじめ、現在ソフトウェアエンジニアとして活躍しているメンバーが在籍しています。 そのような背景から、多くのRuby開発者が注目するRubyKaigiに微力ながらも貢献ができればと考え、3回目となるスポンサー協賛を決定いたしました。ROUTE06では今後も、エンジニアコミュニティの発展を支援してまいります。 「RubyKaigi 2024」開催概要 開催日:2024年5⽉15⽇(水)-2024年5⽉17⽇(金) 会場:那覇⽂化芸術劇場 なはーと (沖縄県那覇市) 公式サイト:https://rubykaigi.org/2024/ --- # 技術顧問に廣戸裕大(Hiroppy)氏就任のお知らせ URL: /news/38 title: 技術顧問に廣戸裕大(Hiroppy)氏就任のお知らせ summary: 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、技術顧問として廣戸裕大(Hiroppy)氏が就任したことをお知らせします。 date: 2024-03-28 category: "INFORMATION" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下ROUTE06)は、廣戸裕大(Hiroppy)氏が技術顧問に就任したことをお知らせします。 なお、Hiroppy氏の技術顧問就任は2023年7月1日付となります。 技術顧問就任の背景 ROUTE06は、大手企業のDXパートナーとして、デジタル事業立ち上げのプロフェッショナルチームによる支援及びエンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」の提供を通して、大手企業の既存資産を活用した新しい事業機会と経済価値の創出に挑戦しています。これまで、三菱商事株式会社の見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal」やホワイトヘルスケア株式会社のOTC医薬品・常備薬販売サイト「あなたの薬箱」をはじめとした、大手企業のデジタル事業の立ち上げ及びグロース支援を行ってきました。 廣戸裕大(以下、Hiroppy)氏は、JavaScriptの実行のために全世界で使われるNode.jsとwebpackのコア開発者として活動された実績を持ち、変化の早いWebフロントエンド領域において豊富な知識を有しています。2023年7月の就任以来、「Plain」のフロントエンド基盤開発において、事業や経営の観点も踏まえた技術・アーキテクチャの提案及びADR(Architecture Decision Record)における各意思決定の確認や議論等、当社のソフトウェアエンジニアとも頻繁にコミュニケーションを取りながらアドバイスを行なっていただきました。 今後もプロダクト開発に注力していくにあたり、組織やコードベース自体が大きくなっていく中でもスケールしやすい構成や仕組みの構築を通して、より良いプロダクトづくりを目指してまいります。 技術顧問 Hiroppy氏に寄稿していただいたテックブログ記事は以下からご覧いただけます。 技術顧問として半年間で感じた会社の成長 - ROUTE06 Tech Blog 技術顧問 Hiroppy氏のコメント 株式会社ROUTE06の技術顧問に就任させていただきました。ROUTE06社では提供するサービスや組織の急成長に伴いスケールしやすい設計を作ることが求められます。私自身も過去にこのような課題解決を行ってきた経験を活かし、将来に向けた設計を提案できるように努めてまいります。また、ROUTE06社は外部への情報発信にも力を入れているので、微力ながらお手伝いさせていただければと思います。 略歴 2015年に会津大学を卒業後、株式会社ドワンゴや株式会社メルカリでソフトウェアエンジニアとして新規サービス開発や動画最適化の研究などを担当。2021年にメルカリのグループ会社として設立された株式会社ソウゾウに転籍し、新規サービスの立ち上げに参加。2022年7月に株式会社Yuimedi(ユイメディ)にVPoEとして入社して現職。複数の企業で技術顧問を務める。Node.jsやwebpackなどOSSへもコミット。 詳細: https://hiroppy.me/ --- # ROUTE06はTSKaigi 2024にスポンサーとして協賛します URL: /news/39 title: ROUTE06はTSKaigi 2024にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06はTSKaigi 2024にスポンサーとして協賛します date: 2024-05-02 category: "INFORMATION" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 TSKaigi 2024はTypeScriptをテーマとする技術カンファレンスです。TSKaigi 2024では、TypeScriptの初心者から熟練のエンジニアまでを対象に、言語の特性やエコシステム、多様な利用領域での活用事例、チーム開発やツールの開発など、TypeScriptに関連する幅広いテーマを取り扱います。新型コロナウイルス流行以降、国内ではTypeScriptの大規模なイベントが開催されず、知見を共有する場が失われていました。そのような状況の中、TSKaigi 2024は、TypeScriptを扱うすべての人々が知識や経験を共有し、新たな発見やアイデアを得ることを目的に有志によって立ち上げられ、今年が第1回目の開催となります。 ROUTE06協賛の背景 GitHubが発表した「The State of Open Source Software\[^1]」によると、TypeScriptはGitHub上のOSSプロジェクト全体で3番目に人気のある言語となっています(ユーザーは前年比37%増加)。ROUTE06でも、エンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」のフロントエンド開発をはじめ、プロダクト開発の多くの場面でTypeScriptを採用していることから、今年初開催となる「TSKaigi 2024」を支援すべく協賛を決定しました。 イベント概要 開催日:2024年5月11日(土) 開催場所:中野セントラルパーク カンファレンス(オンライン配信あり) 運営:一般社団法人TSKaigi Association 公式サイト:https://tskaigi.org/ 登壇情報 登壇時間:2024年5月11日(土)17:20 ~ 17:40 登壇者:株式会社ROUTE06 / Software Engineer 池田 仁俊(Noritaka Ikeda) タイトル:TypeScriptが学生のエンジニアコミュニティ参加を促進する https://tskaigi.org/talks/NoritakaIkeda \[^1]: Octoverse: The state of open source and rise of AI in 2023 --- # 日本経済新聞でROUTE06が紹介されました。 URL: /news/4 title: 日本経済新聞でROUTE06が紹介されました。 summary: "スタートアップが男性社員の育児休業を取得しやすい仕組みづくりに動き出した。関連法の改正を受け、育休中に最大70万円を支給するといった支援制度が相次ぐ。普段から複数人で同じ業務に関わるなど、同僚が抜けた穴を埋めるための工夫も凝らす。働きやすい職場環境を整え、優秀な人材を呼び込む狙いだ。" date: 2021-07-13 category: "MEDIA" detailUrl: "https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC10BVW0Q1A610C2000000/" displayedHistory: false glossary: startup 男性の育休取得を促進 スタートアップが相次ぎ新制度 法改正受け 出産時に70万円支給も スタートアップが男性社員の育児休業を取得しやすい仕組みづくりに動き出した。関連法の改正を受け、育休中に最大70万円を支給するといった支援制度が相次ぐ。普段から複数人で同じ業務に関わるなど、同僚が抜けた穴を埋めるための工夫も凝らす。働きやすい職場環境を整え、優秀な人材を呼び込む狙いだ。 --- # ROUTE06はKaigi on Rails 2024にスポンサーとして協賛します URL: /news/40 title: ROUTE06はKaigi on Rails 2024にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06は、Kaigi on Rails 2024にスポンサーとして協賛します。 date: 2024-09-03 category: "PRESS" glossary: agile-development supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 Kaigi on Railsは「初学者から上級者までが楽しめるWeb系の技術カンファレンス」です。 Kaigi on Railsは技術カンファレンスへの参加の敷居を下げることを意図して企画されており、名前の通りRailsを話題の中心に据えるカンファレンスでありながら、広くWebに関すること全般(例えばフロントエンドやプロトコルなど)についてもカバーしています。 ROUTE06では、技術の発展と浸透にはコミュニティの存在が不可欠であり、そこから得られる知見や情報は、より良いものづくりにとって欠かせない重要なものだと考えています。また、ROUTE06には、RailsとRailsコミュニティの存在をきっかけにWebやプログラミングを学び始め、現在ソフトウェアエンジニアとして活躍しているメンバーも在籍しています。さらに、ROUTE06ではこれまでもRailsを活用して多様なプロダクトの開発を行っており、その柔軟性と生産性の高さを通じて、お客様に最適なプロダクトを提供してきました。現在も、Railsを用いた複数のプロダクトを開発中であり、引き続きその技術を活用し、事業の成長を目指しています。 そのような背景から、幅広くRailsとその周辺技術に関わる情報を発信、交流する場として大きな影響力と意義を持つKaigi on Rails 2024に微力ながら貢献できればと思い、この度スポンサーとして参加させていただくことにしました。 今後も、ROUTE06はエンジニアコミュニティへの貢献を継続してまいります。 「Kaigi on Rails 2024」開催概要 開催: 2024年10月25日 (金) - 2024年10月26日 (土) 場所: 有明セントラルタワーホール&カンファレンス(東京) 公式サイト: https://kaigionrails.org/2024/ --- # 塩ビ産業向け次世代型受発注プラットフォーム「step X.」開発で三菱商事と協業 URL: /news/41 title: 塩ビ産業向け次世代型受発注プラットフォーム「step X.」開発で三菱商事と協業 summary: date: 2024-09-30 category: "PRESS" glossary: startup agile-development saas supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤崇史、以下「ROUTE06」)は、三菱商事株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:中西勝也、以下「三菱商事」)と協業し、塩化ビニール(以下、塩ビ)産業向けの受発注プラットフォーム「step X.(ステップバイ)」のプロダクト開発を行ったことを発表します。 「step X.」は、サプライヤーから始まり需要家に到るまで、塩ビ産業におけるサプライチェーン全体のデジタル化に貢献するプラットフォームです。デジタル化により受発注における手入力・紙出力を削減し、業務の効率化を実現します。将来的には、取引データを活用し、物流のモニタリング、GHG算出、SDS管理等の機能拡張・高度化を目指します。 「step X.」について 塩ビは、建設、輸送、梱包、電気・電子、医療など多岐にわたる産業で広く利用されています。一方、塩ビ産業では、サプライチェーンの随所で人の手を介した業務が行われています。たとえば、メールやFAXによる受発注や納期調整の業務連絡は、そのほとんどが書類やメール等に散在して保管されているため、組織的なデータ活用の障壁となっています。さらに、こうしたやり取りが膨大になることで組織内外での情報共有が十分に行いきれず、サプライチェーン全体の効率性にも影響を与えています。 将来的な労働力不足が予想される中、これらの業務のデジタル化はサプライチェーン全体の効率性向上に寄与すると期待されます。取引業務のデジタル化を進める上で重要なのは、サプライヤー、中間流通業者、需要家の三者間でタイムリーに取引状況を共有できること、そして単価や見積もりなどの機密情報を適切に管理できる仕組みです。しかし、これらの機能を兼ね備えた最適なデジタルプラットフォームは、これまで確立されていませんでした。 「step X.」は、見積作成から受発注、納入、検収までの情報をデジタルプラットフォーム上に一元化し、取引の進捗状況をタイムリーに可視化します。サプライヤー、中間流通業者、需要家のサプライチェーン上の関係者間で取引の進捗状況を一元管理することで、塩ビ産業の受発注業務の円滑化を支援します。 また、物流のモニタリング、GHG算出、SDS管理等の追加機能を段階的に開発し、サプライチェーン上の業者間の業務効率化を支援する次世代型受発注システムを目指します。 「step X.」の機能・特徴 「step X.」には以下のような機能・特徴があります。 サプライヤー、流通業者及び需要家のサプライチェーン上の関係者間で、取引の進捗(受注状況、納期の確定状況、納入状況)をリアルタイムで共有することができます。 チャット機能やフォルダ/ファイル共有機能により、各種情報共有がより手軽に行えます。 商品の価格や品種、原料調達先、販売先といった売買で繰り返されるパターンについてマスタにて一元管理が可能です。 実績出力機能があり、導入会社の基幹システムへの連結もスムーズです。また、取引先のシステムへのデータアップロードを見据えたCSV等のデータ出力も可能です。 過去の納入状況や失注等のデータも管理でき、顧客分析にも役立てることができます。 見積書、発注書は入力された情報をもとに自動で作成されます。特定の取引先に併せて形式を選択して出力することができます。 今後の展望 以下の機能の追加を検討しており、今後もアップグレードを重ねてまいります。 取引商品を対象としたGHGの算出機能および取引先へのデータ提供機能 取引商品の運送にかかる運送計画や運送状況の開示等の機能 取引商品に関わるSDSの管理、取引先へのSDSの提供機能 ROUTE06の支援内容 サービス設計 エンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」の提供及びカスタマイズ UI/UXのデザイン設計及び実装 コンセプト及びサービスロゴ制作/ディレクション システム導入支援 ROUTE06の取り組みについて ROUTE06は、大手企業のDXパートナーとして、デジタル事業立ち上げのプロフェッショナルチームによる支援及びエンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」の提供を通して、大手企業の既存資産を活用した新しい事業機会と経済価値の創出に挑戦しています。 ROUTE06では、今後もよりエンタープライズユーザーにとって利便性の高いサービスを提供すべく、自社ソフトウェアサービスの開発及びプロフェッショナルサービスの提供に注力してまいります。 エンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」について 「Plain」はあらゆる商取引のDXを実現するためのビジネスAPIプラットフォームです。B2C及びB2Bに関わらず、オンライン・マーケットプレイスをはじめとした様々なデジタル事業の垂直立ち上げ及び継続的なサービス改善に貢献します。 URL: https://route06.co.jp/solutions/product/plain --- # ROUTE06はRubyWorld Conference 2024にスポンサーとして協賛します URL: /news/42 title: ROUTE06はRubyWorld Conference 2024にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06はRubyWorld Conference 2024にスポンサーとして協賛します date: 2024-10-25 category: "PRESS" glossary: agile-development supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 RubyWorld Conference 2024は、2024年12月5日(木)・6日(金)に島根県松江市の「くにびきメッセ」にて開催されます。16回目を迎えるこのカンファレンスは、プログラミング言語「Ruby」の国内最大のビジネスカンファレンスです。国内外の開発者やビジネスリーダーが集まり、Rubyの最新技術や活用事例を共有する先進的な利用事例や最新の技術動向、開発者教育の状況などの情報が共有される場となっています。 基調講演にはMastodon gGmbHのAndy Piper氏が登壇。Andy Piper氏は、IBM、VMware、Xでの経歴を持ち、複数のオープンソースプロジェクトやコミュニティでフリーランスとして活動しています。Andy Piper氏の幅広い視点から、Rubyを取り巻く技術エコシステムに対する新しい洞察が得られることが期待されます。 ROUTE06ではエンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」のアプリケーション開発をはじめ様々なプロジェクトでRubyを採用しており、弊社のサービスを支える重要な基盤となっています。継続的なRubyコミュニティの発展に貢献するため、この度の協賛を決定いたしました。 ROUTE06は今後も、エンジニアリング技術とコミュニティの発展を積極的に支援してまいります。 イベント概要 開催日:2024年12月5日(木)・6日(金) 会場:島根県立産業交流会館「くにびきメッセ」 主催:RubyWorld Conference開催実行委員会 公式サイト:RubyWorld Conference 2024 --- # ROUTE06、一般社団法人 経済団体連合に入会 URL: /news/43 title: ROUTE06、一般社団法人 経済団体連合に入会 summary: ROUTE06、一般社団法人 経済団体連合に入会 date: 2024-11-01 category: "PRESS" glossary: startup supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 株式会社ROUTE06は、2024年11月1日付で一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)に入会したことをお知らせいたします。 経団連が公表した提言「Digital Transformation (DX)~価値の協創で未来をひらく~」では、AI、IoT、ブロックチェーンなどの革新的な技術の進展により社会の在り方が大きく変わりつつあることに触れ、デジタル技術の活用が国際競争力を左右する時代に突入していると述べられています。 このような変革期において、ROUTE06は、デジタル事業立ち上げのプロフェッショナルサービス及びAPIプラットフォーム「Plain」の提供を通して、大手企業の持つ世界有数の設備資産、知的財産、人的資本にデジタル技術を融合させ、新たな事業機会と経済価値の創出に挑戦しています。これまで、そごう・西武のOMOストア「CHOOSEBASE SHIBUYA」や、三菱商事の商取引プラットフォーム開発など、大手企業の既存資産を活かしたデジタル事業の立ち上げに貢献してまいりました。 ROUTE06の掲げる「Be a Disruptor - 優しい変革者であり続けよう」という行動指針は、「デジタル技術が『人』の活躍を支え、『人』の暮らしを真の意味で豊かにする」という経団連が提唱するSociety 5.0のビジョンと深く共鳴しています。 この度の加入を機に、経団連並びに会員企業様との連携を深めながら、日本経済の競争力を高め、より豊かな社会の実現に向けて挑戦を続けてまいります。 --- # ROUTE06は東京Ruby会議12にスポンサーとして協賛します URL: /news/44 title: ROUTE06は東京Ruby会議12にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06は東京Ruby会議12にスポンサーとして協賛します date: 2024-12-10 category: "PRESS" glossary: agile-development supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 東京Ruby会議12は、2025年1月18日に横浜市鶴見区民文化センター サルビアホールで開催されます。本カンファレンスは、プログラミング言語Rubyを使ったソフトウェア開発について議論を行う地域Ruby会議です。東京圏の方を中心としたRubyistが集まり、Rubyを使ったソフトウェア開発・運用に関する情報が議論および共有される場となっています。 基調講演にはJohn Hawthorn氏が登壇。同氏はRubyコミッターとRails Coreメンバーであり、GitHubにてパフォーマンスとスケーラビリティに取り組むスタッフエンジニアとして活動しています。第一線で活躍するJohn Hawthorn氏の視点から、Rubyでのソフトウェア開発・運用に関する洞察が得られることが期待されます。 ROUTE06ではエンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」のアプリケーション開発をはじめ様々なプロジェクトでRubyを採用しており、弊社のサービスを支える重要な基盤となっています。継続的なRubyコミュニティの発展に貢献するため、この度の協賛を決定いたしました。 ROUTE06は今後も、エンジニアリング技術とコミュニティの発展を積極的に支援してまいります。 イベント概要 開催日:2025年1月18日(土) 会場:横浜市鶴見区民文化センター サルビアホール 主催:東京Ruby会議12実行委員会 公式サイト:東京Ruby会議12 --- # ROUTE06はTSKaigi 2025にスポンサーとして協賛します URL: /news/45 title: ROUTE06はTSKaigi 2025にスポンサーとして協賛します summary: ROUTE06はTSKaigi 2025にスポンサーとして協賛します date: 2025-03-26 category: "INFORMATION" glossary: ai supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 この度、ROUTE06は、TypeScriptに特化した技術カンファレンス「TSKaigi 2025」にBronzeスポンサーとして参加することになりました。昨年のTSKaigi 2024に引き続き、今年もコミュニティの盛り上げに貢献していきます。 TSKaigi 2025 とは TypeScriptに関するあらゆるトピックを扱う国内最大級のカンファレンスです。 開催日程: 2025年5月23日(金)・24日(土) 会場: ベルサール神田(東京都千代田区) 公式サイト: https://2025.tskaigi.org/ TSKaigiは、登壇者・参加者・運営チーム・スポンサーが一体となり、TypeScriptの知見共有や技術交流が活発に行われる場として注目されています。 ROUTE06 協賛の背景 ROUTE06は昨年のTSKaigi 2024に続き、Bronzeスポンサーとして参加します。 ROUTE06ではLiam、Giselle、Acsimをはじめプロダクト開発にTypeScriptを活用しており、TypeScriptコミュニティへの支援を継続するため今年もスポンサー参加を決定しました。 さらに今年も社内スタッフが運営メンバーとして参画しており、イベント成功に向けて尽力しています。 ROUTE06 メンバー登壇情報 今回のTSKaigi 2025では、Day1(2025年5月23日(金))のセッション枠(30分)にて、弊社エンジニアの Miyagi Hirotaka が「Valibot Schema Driven UI - ノーコードWebサイトビルダーを実装してみよう!」と題し、TypeScriptでのスキーマドリブンなアプリケーション開発手法を活用したノーコードWebサイトビルダーの実装についてお話しします。 さらに、Day2(2025年5月24日(土))のセッション枠(30分)では、弊社エンジニアの Ikeda Noritaka が「機能的凝集の概念を用いて複数ロール、類似の機能を多く含むシステムのフロントエンドのコンポーネントを適切に分割する」と題し、TypeScriptを用いた保守性の高いコードの実現手法について紹介します。 ぜひご参加ください。 TSKaigi 2025がTypeScriptに関する学びや交流をより深める充実したカンファレンスとなるよう、ROUTE06は今後もサポートしてまいります。 --- # ROUTE06、世界有数のエンタープライズクラウドマーケットプレイスであるSalesforce AppExchangeへのコンサルタント登録を発表 URL: /news/46 title: "ROUTE06、世界有数のエンタープライズクラウドマーケットプレイスであるSalesforce AppExchangeへのコンサルタント登録を発表" summary: "ROUTE06は、世界有数のエンタープライズクラウドマーケットプレイスであるSalesforce AppExchangeへのコンサルタント登録を発表しました。" date: 2025-04-23 category: "INFORMATION" glossary: saas supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 AI駆動開発時代の新しいDXプラットフォーム「Acsim」を活用し、Salesforceの導入コンサルティングから、開発・運用保守などのエンジニア領域までを支援 ROUTE06は本日、Salesforce AppExchangeにコンサルタントとして登録されたことを発表しました。これにより、お客様は特定のビジネスニーズに合った最適なSalesforce認定コンサルタントとつながることができます。ROUTE06は、AI駆動開発時代の新しいDXプラットフォーム「Acsim」、及びプロフェッショナルサービスを提供。商社、製造業、小売、配送、金融など様々なエンタープライズ企業にサービス提供した経験とSalesforceへの専門知識を組み合わせて、AIを活用したDX推進を提供します。 現在、ROUTE06のコンサルタント概要ページ(リスティングページ)は、AppExchangeの「コンサルティングパートナー」(Salesforceに関する深い知識と特定の業界に関する専門的な知見をお探しのお客様に向けたAppExchange内のセクション)で公開されています。お客様は、新しいAppExchangeのコンサルタント検索機能である「Consultant Finder」を利用することで、200社を超える日本のコンサルティングパートナー企業から、個々のビジネス課題を解決するのに最適な専門家を見つけることができます。お客様は専門性、所在地、企業規模、お客様の評価、そして、65,000人を超える認定コンサルタントが実施した何千もの顧客プロジェクトからもたらされた知見に基づいて専門家を選択することができます。 ROUTE06のコンサルタントリスティングページは、AppExchangeのこちらをご覧ください。 コンサルタント概要 ROUTE06の強みは、自社SaaSであるAI駆動開発時代の新しいDXプラットフォーム「Acsim」とSalesforceを組み合わせた、実践的かつ再現性の高いソリューション提供です。Acsimを基盤にすることで、業務の見える化・自動化から、部門横断的なデータ活用、AI導入に至るまで、Salesforceの価値を最大化する支援を行っています。AppExchange登録を通じて、こうしたROUTE06の価値をより多くのお客様に届けてまいります。 発表に対するコメント ROUTE06 取締役 兼プロフェッショナルサービス事業本部 本部長 松本均より ROUTE06では、自社の営業・マーケティング活動においてSalesforceを積極的に活用し、顧客との接点管理やデータドリブンな意思決定を実現しています。こうした自社での活用経験をベースに、私たちは自社プロダクトとSalesforceを組み合わせたソリューション提供に強みを持ち、特に開発プロバイダーのお客様に対して、業務基盤の構築から内製化支援、継続的な改善までを一貫してご支援しています。 今回のAppExchange登録により、より多くのお客様との接点を拡大し、現場に根ざしたテクノロジー活用を通じて、ビジネスの持続的な成長に貢献してまいります。 Salesforce、AppExchangeなどはsalesforce.com, inc. の商標です。 Salesforce AppExchangeについて Salesforce AppExchangeは世界をリードするエンタープライズクラウドマーケットプレイスで、企業、開発者、起業家がまったく新しい方法で構築、販売、成長できるよう支援します。7,000件以上のパートナーのアプリケーションや認定コンサルタントの登録、1,100万件の顧客導入、117,000件のピアレビューを有するAppExchangeは、業界や規模に関わらずビジネス上のあらゆる課題を解決するために、すぐにインストールし、カスタマイズ可能なアプリケーションやSalesforce認定コンサルタントとお客様を結びつけます。 追加リソース LinkedInとXでSalesforceをフォローする 報道関係者の問い合わせ先 株式会社ROUTE06 取締役 松本 均 050-1741-2091 info@route06.co.jp --- # ROUTE06、「BCN Conference 2025 夏 オンライン」への登壇・協賛決定のお知らせ URL: /news/47 title: ROUTE06、「BCN Conference 2025 夏 オンライン」への登壇・協賛決定のお知らせ summary: ROUTE06、「BCN Conference 2025 夏 オンライン」への登壇・協賛決定のお知らせ date: 2025-06-03 category: "INFORMATION" glossary: startup agile-development saas supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤 崇史、以下ROUTE06)は、2025年6月4日(水)〜6日(金)に開催される「BCN Conference 2025 夏 オンライン」(主催:株式会社BCN)にセッション登壇および協賛することをお知らせいたします。 セッション概要 「BCN Conference 2025 夏 オンライン」は、株式会社BCNが主催する、法人向けIT市場に特化したオンライン型のビジネスカンファレンスです。企業のIT導入支援を専門とするSIer、リセラー、ITベンダーのほか、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する事業会社の経営企画・情報システム部門担当者などが多数参加します。 本セッションでは、企業のDX推進やシステム開発において鍵となる上流工程、特に「要件定義」に焦点をあてます。多くの企業が直面する以下のような課題を取り上げます。 要件定義プロセスにおける属人化と知識のブラックボックス化 上流工程を担える人材不足によるプロジェクト推進力の低下 AI活用が期待されつつも、実際の導入・活用が難しい現状 これらの課題を解決するために、ROUTE06が開発したAI駆動型DXプラットフォーム「Acsim(アクシム)」を導入した場合、要件定義がどのように変革されるのかを具体的に解説します。 日時:2025年6月4日(水)13:00〜13:40 セッション名:「人×AIで磨く要件定義 - Acsimが導く新たな上流工程の推進プロセスとは」 登壇者:プロフェッショナルサービス事業本部 Acsim事業部 セールス・プロダクトマーケティングマネージャー 坪井 聡 イベント概要 2025年夏のテーマは「次世代のDXを実現する最新テクノロジーとソリューション」であり、AI活用、クラウドインフラ、セキュリティ強化、業務効率化など、企業が抱える課題に対応した最新技術や導入事例を幅広く紹介します。各分野のエキスパートによる講演や具体的なソリューションを提供する企業によるセッションを通じて、企業の課題解決や競争力強化をサポートすることを目的としています。 参加費用:無料(事前登録制) 詳細・申込URL:https://www.seminar-reg.jp/bcn/conference2025\_summer/?mparam=bcnrectt1\_0604 イベント名:BCN Conference 2025 夏 オンライン 主催:株式会社BCN 開催期間:2025年6月4日(水)〜6月6日(金) 開催形式:オンライン --- # ROUTE06、「ReadyCrew TECH MEET UP 2025」への登壇・協賛決定のお知らせ URL: /news/48 title: ROUTE06、「ReadyCrew TECH MEET UP 2025」への登壇・協賛決定のお知らせ summary: ROUTE06、「ReadyCrew TECH MEET UP 2025」への登壇・協賛決定のお知らせ date: 2025-07-07 category: "INFORMATION" glossary: startup agile-development saas supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤 崇史、以下ROUTE06)は、2025年7月17日(木)に開催される「ReadyCrew TECH MEET UP 2025」(主催:フロンティア株式会社)にセッション登壇および協賛することをお知らせいたします。 セッション概要 「ReadyCrew TECH MEET UP 2025」にて弊社が登壇するセッションでは、企業のDX推進やシステム開発において鍵となる上流工程、特に「要件定義」に焦点をあてます。多くの企業が直面する以下のような課題を取り上げます。 要件定義プロセスにおける属人化と知識のブラックボックス化 上流工程を担える人材不足によるプロジェクト推進力の低下 AI活用が期待されつつも、実際の導入・活用が難しい現状 これらの課題を解決するために、ROUTE06が開発したAI活用の上流工程支援プラットフォーム「Acsim(アクシム)」を導入した場合、要件定義がどのように変革されるのかを具体的に解説します。 日時:2025年7月17日(木)11:30〜12:15 セッション名:「人×AIで磨く要件定義 - Acsimが導く新たな上流工程の推進プロセスとは」 登壇者:プロフェッショナルサービス事業本部 Acsim事業部 セールス・プロダクトマーケティングマネージャー 坪井 聡 会場:御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター sola city Hall(2階) イベント概要 「ReadyCrew TECH MEET UP 2025」は、フロンティア株式会社が主催する、AIを用いた最先端の業務活用事例や具体的手法、技術的な導入方法など各業界のトレンドに基づいて知見を深めながら情報交換もできる特別なセッションイベントです。 参加費用:無料(事前登録制) 詳細・申込URL:https://tech2025.readycrew.jp/#entry イベント名:ReadyCrew TECH MEET UP 2025 主催:フロンティア株式会社 開催期間:2025年7月17日(木) 開催形式:リアルイベント --- # ROUTE06、「DX 総合EXPO 2025 夏 東京」への出展のお知らせ URL: /news/49 title: ROUTE06、「DX 総合EXPO 2025 夏 東京」への出展のお知らせ summary: ROUTE06、「DX 総合EXPO 2025 夏 東京」へ出展いたします。 date: 2025-07-08 category: "INFORMATION" glossary: startup agile-development saas supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤 崇史、以下ROUTE06)は、2025年7月23日(水)〜2025年7月25日(金)に幕張メッセで開催される「DX 総合EXPO 2025 夏 東京」(主催:エバーリッジ株式会社)に出展することをお知らせいたします。 当日は、AI活用の要件定義支援プラットフォーム「Acsim(アクシム)」についてデモンストレーションやセミナーを行うほか、お客様のご相談に直接お応えいたします。ご来場の際はぜひお立ち寄りくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。 出展製品の概要 Acsim(アクシム)は、AIを活用した要件定義支援プラットフォームであり、SIer/IT部門あるいは事業部門の課題を解決する製品です。 SIer/IT部門の方であれば、Acsimをご利用いただくことで、AsIs/ToBe業務フロー整理から要件定義・プロトタイプ・設計書/RFP作成までのスピードと品質を10倍向上させることができます。また、事業部門の方であれば、DX企画・要件定義の内製化支援により外部コンサルティング会社に委託している費用を90%以上削減できます。 ・「要件定義を推進できる人材を増やしたい」 ・「要件定義を推進する人材の生産性を高めて、対応案件数を増やしたい」 ・「AI駆動開発時代の波に乗り切れていない」 ・「外部コンサルに高額で、DX企画や要件定義・RFPの整理を委託しており、自社にノウハウが蓄積されない」 ・「AI活用を推進したいが、社内の業務・情報資産などのデータが散財しており、AI活用に適していない」 こんな課題に当てはまる企業様は、ぜひお気軽に弊社ブースにお立ち寄りください。 出展ブース(小間番号)は「人材育成・採用支援EXPO」における「S07-54」でございます。 イベント概要 「DX 総合EXPO 2025 夏 東京」は、エバーリッジ株式会社が主催する、業務効率化・働き方改革・経営基盤強化を実現するためのDXソリューションが一堂に集う日本最大級のDX総合展です。本展では、DX化を検討する企業の人事、総務、経理、DX推進、マーケティング、営業、そして経営者などが、最新の製品やサービスを比較検討したり、豪華講師陣によるDXセミナーで最新トレンドを学ぶことができます。 リアル展示会に加え、オンラインでセミナーを視聴したり、製品資料をダウンロードすることができます。 弊社が本展示会で出展する「Acsim」の製品ページはこちらからご確認いただけます。 参加費用:無料(事前登録制) 詳細・申込URL:https://www.bizcrew.jp/expo/entry/dx-tokyo イベント名:DX 総合EXPO 2025 夏 東京 公式サイト:https://www.bizcrew.jp/expo/dx-tokyo 主催:エバーリッジ株式会社 開催期間:2025年7月23日(水)- 2025年7月25日(金)各日10:00-17:00 開催地:幕張メッセ(4-7ホール) 開催形式:リアルイベント/オンラインイベント --- # そごう・西武とROUTE06がOMOストア開発で協業 URL: /news/5 title: そごう・西武とROUTE06がOMOストア開発で協業 summary: "株式会社そごう・西武と、株式会社ROUTE06は、そごう・西武の新事業「CHOOSEBASE SHIBUYA」のストア開発において協業いたしました。最先端のテクノロジーを活用したRaaS業態で展開し、デジタルネイティブ世代と新興ブランドの出合いを創出。百貨店とスタートアップ企業とのオープンイノベーションにより、新たな価値提供を目指します。" date: 2021-09-01 category: "PRESS" glossary: startup open-innovation supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス 株式会社そごう・西武について 「新しい発見を提案し続ける百貨店へ」 全国に10店舗を展開。フルラインアップの大都市型店舗からデイリーニーズにお応えするショッピングセンター型店舗まで立地特性を生かした多様な店舗展開をおこなっています。 創業:天保元年(1830年) URL:https://www.sogo-seibu.co.jp/ 本社所在地:102-0084 東京都千代田区二番町5番地25 二番町センタービル 代表者:代表取締役社長 林 拓二 事業内容:百貨店運営 " displayedHistory: true オープンイノベーションによる百貨店の新業態開発を推進 株式会社そごう・西武(本社:東京都千代田区・代表取締役社長:林 拓二、以下:そごう・西武)と、株式会社ROUTE06(本社:東京都渋谷区、代表取締役:遠藤崇史、以下:ROUTE06)は、そごう・西武の新事業「CHOOSEBASE SHIBUYA」のストア開発において協業いたしました。最先端のテクノロジーを活用したRaaS業態\[^1]で展開し、デジタルネイティブ世代と新興ブランドの出合いを創出。百貨店とスタートアップ企業とのオープンイノベーションにより、新たな価値提供を目指します。 「CHOOSEBASE SHIBUYA」の特徴  「CHOOSEBASE SHIBUYA」は、常に新しい出合いと学びのある購買体験を提供するメディア型OMOストア^2です。”意味に出合い、意志を買う”という次世代の店舗のあり方を提案します(本日9月1日ECサイトオープン、9月2日リアルストアオープン予定)。 店頭/ECのシステムやオペレーションを融合させ、オンラインとオフラインを自由に行き来できるOMOストアの仕組みを導入。百貨店業態では珍しい店舗とECの完全在庫連携を実現し、店頭で見た商品を帰宅後オンラインで購入する、あるいはオンラインで購入した商品を店舗で受け取るといった、顧客目線での購買体験のあり方を追求しました。 また、そごう・西武初のRaaS業態を採用。販売商品のシステム登録と商品配送以外の業務をすべて代行することで、実店舗の出店実績が少ないブランドでも簡単に出店できる仕組みを構築しました。 <「CHOOSEBASE SHIBUYA」の主要機能> Webカタログを活用した非接触でのウォークスルー決済 AIカメラによる店内データ解析(通行/来店/購買) 店頭とECの完全リアルタイム在庫連動 BOPIS及び店頭配送などの受渡/配送システム 店頭/EC/Webメディア一体のデータプラットフォーム 協業の背景 ~スタートアップとのオープンイノベーション~ 「CHOOSEBASE SHIBUYA」は、「FUTURE OF RETAIL(未来の小売)」をミッションに掲げ、デジタルを前提とした次世代の買い物のあり方を追求しています。その実現のためには、店舗とECを包括的に捉えたUI/UXの設計や、システム開発、ロジスティクスの構築など、既存の仕組みにとらわれずに作り上げる必要がありました。 ROUTE06は、リテール業界のビジネスやロジスティクスに知見を持ち、最先端のテクノロジーで大手企業のDXを実現することに挑戦するスタートアップです。新規事業という流動的なプロジェクトにおいて、ROUTE06の専門性とスタートアップとしての機動力が「CHOOSEBASE SHIBUYA」の構想と合致し、この度の協業に至りました。 <協業の内容> RaaS業態の事業開発 デジタルUXの設計及びUIデザイン 店舗、ECのオペレーションとロジスティクスの設計 システムアーキテクト及びアジャイル開発 テクノロジーパートナー選定及びAPI提供 「そごう・西武」「ROUTE06」担当者からのコメント ■ 株式会社そごう・西武 CHOOSEBASE ディレクター 伊藤謙太郎氏 ■ 株式会社ROUTE06 代表取締役 遠藤崇史 「CHOOSEBASE SHIBUYA」店舗概要 ストア名称:CHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベース シブヤ) オープン日:ECサイト・2021年9月1日(水)、リアルストア・2021年9月2日(木)予定 場所:西武渋谷店パーキング館1階 面積:約700㎡ 出品企業:54社  アイテム数:約400点 扱い品目:洋品雑貨、衣料品、インテリア用品、化粧品など 公式サイト:https://choosebase.jp \[^1]: Retail as a Service の略称 --- # 要件定義の属人化を打開する、新しいAIプラットフォーム『Acsim(アクシム)』を正式リリース URL: /news/51 title: 要件定義の属人化を打開する、新しいAIプラットフォーム『Acsim(アクシム)』を正式リリース summary: 誰でも要件定義できる時代へ。構想から稟議まで支援するAcsimが、設計に再現性とスピードを実現 date: 2025-08-05 category: "product" image: /images/news/51/acsim-top.png glossary: ai acsim dx saas agile-development supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06は、人とAIの協創によってプロダクト開発を再定義するスタートアップです。自然言語による対話と直感的なノードUIを融合したユーザー体験を軸に、要件設計「Acsim」、AIエージェント構築「Giselle」、データベース設計「Liam」などのAI駆動開発プラットフォームを提供。設計・実装・運用の全工程に対応し、開発のスピードと品質を革新します。大手企業向けシステム開発の実績とモダンなプロダクト開発の知見を活かし、大手システムインテグレーターからスタートアップまで、すべてのプロダクトビルダーが自由にアイデアを形にできる未来を目指します。 株式会社ROUTE06(本社:東京都千代田区、代表取締役:遠藤 崇史)は、要件定義の属人化や人材不足といった日本の開発現場における構造的課題に対し、生成AIによって誰でも迷わず進められる要件定義プロセスを実現する新しいAIプラットフォーム『Acsim(アクシム)』を正式にリリースしました。 『Acsim』は、構想整理、課題抽出、改善方針の提示、プロトタイプ生成、設計書の自動出力、開発稟議支援に至るまで、要件定義プロセス全体を一気通貫で支援する生成AIソリューションです。これにより、要件定義の属人性を排除し、設計における再現性とスピードの両立を実現します。 開発の背景 国内のITシステム開発市場は約17兆円規模にのぼり、今後も安定成長が見込まれています(※出典:矢野経済研究所「IT投資動向調査 2023」)。中でも要件定義や業務設計といった“上流工程”は2〜3割を占めるとも言われ、今後も増え続けていくことが想定され、5兆円規模以上の重要領域でありながら、いまだに属人性と非効率が色濃く残るブラックボックスとされています。 とりわけ日本企業では、業務の複雑化、技術の高度化などの背景から、要件定義の難易度が年々上昇。業務理解・技術知識・対話力といった複数のスキルが求められる一方で、それらを兼ね備えた人材は限られ、設計業務の多くがベテラン依存・属人化したままです。結果として、システム開発の内製化やDX推進の大きな障壁となっています。 現状、生成AIはコード生成やテスト支援といった実装フェーズでは急速に進展していますが、「思考」と「構造化」を伴う要件定義のような上流工程における支援はほとんど手つかずの状態にあります。 ROUTE06はこれまで、大手企業のDX推進や基幹システム刷新において、DXコンサルティング、システム開発までを一気通貫で支援してきました。そしていま、これまで人が担ってきたプロセスの中核である要件定義を、AIが再現性とスピードをもって誰でも実行可能にする「AI駆動開発」へと進化させたのが「Acsim」です。 Acsimは、ROUTE06が現場で培ってきた設計ノウハウや業務構造の知見をベースに、要件定義プロセスをAIが支援し、属人性の排除・プロセスの標準化・意思決定の高速化を同時に実現します。設計は特別なスキルを持つ人しかできないという常識を覆し、あらゆる現場に誰でも使える設計の土台を提供することを目指しています。 こうした背景から、ROUTE06は要件定義特化型AIプラットフォーム『Acsim』の正式提供を開始しました。 要件定義特化型AIプラットフォーム「Acsim」 『Acsim』は、AIが要件定義の“思考プロセス”を支援することに重点を置いた、上流工程向けの生成AIプラットフォームです。 ユーザーが現場ヒアリングを行うと、AIが内容を構造化し、業務課題を明確化。そこから改善方針の提示、それに基づいたあるべき業務の具体化、画面・機能設計、プロトタイプ生成、設計書の自動出力までを一気通貫で実行します。これにより、関係者間での共通認識をスムーズに形成しながら、ドキュメント作成にかかる工数を大幅に削減し、人はより本質的な検討や意思決定に集中できる環境を実現します。 さらに、開発稟議に必要なROI情報も自動生成。定量的な効果指標と定性的な背景を統合し、意思決定を迅速化します。また、AIが設計者に代わって論点・観点を提示することで、未経験者でも要件定義をリードできる仕組みを提供。属人性を排除し、誰が担当しても同等品質の設計ができるプロセスをAIで実現します。 要件定義の推進者が抱える思考の負荷を支援し、検討すべき観点や構造的な整理をAIが先回りして提示することで、設計の質を高めると同時に、属人性の排除とプロセスの再現性向上を実現します。 Acsimに蓄積された構造化データやプロトタイプデータは、実装・テスト設計・仕様レビューといった後続工程にも活用可能です。プロトタイプデータによる早期の認識齟齬の解消や手戻りの防止、設計情報をもとにしたテストケースの自動生成、リリース後のマニュアル自動生成などを支援することで、開発プロセス全体の効率化と品質向上に貢献します。 Acsimが備える5つの主要機能 Acsimには、要件定義プロセスを一貫して支援する以下の機能が搭載されています。 会話から現状業務フロー生成・課題特定を自動化  AIが会話内容を構造化し、業務の現状や課題を可視化。初期検討フェーズにおける課題整理と提案力を向上させます。 改善方針・改善計画策定をAIエージェントが支援  業務課題に対し、AIが設計観点や論点を踏まえた改善方針を提示。未経験者でも抜け漏れなく要件定義を進められるよう、思考を補完し、属人性を排除します。 本格的なプロトタイプ生成  改善方針に基づき、UIや機能のプロトタイプを自動生成。関係者との認識齟齬を未然に防ぎ、レビューや議論を加速させます。 開発稟議に必要な情報を自動生成  改善提案に対するコスト削減効果や業務効率化の定量指標をAIが計算し、定性的な背景とあわせて資料化。稟議プロセスと投資判断を迅速化します。 設計書を自動出力  業務フロー、ユースケース、画面一覧、機能一覧など、要件定義に必要な設計書を共通化された自社フォーマットで出力。ドキュメント整備の工数を大幅に削減します。 今後の展開 Acsimは、属人化しがちな要件定義を再現性のあるプロセスへと変革し、誰でも設計できる時代の実現を目指す生成AIプラットフォームです。構想整理から課題抽出、プロトタイプ生成、設計書の出力、稟議資料作成までを一貫して支援することで、これまで一部のベテランに依存していた設計業務の型を共通化し、スピードと品質を両立したプロセスをあらゆる現場に届けます。 2025年4月の正式リリース以降、すでに20社近くの企業で導入が進行しており、SIer、IT部門、開発チームを中心に着実な広がりを見せています。今後は、SAP、Salesforceなど国内外の様々なプラットフォームとの連携を実現し、幅広い業務領域に対応することで、開発プロセス全体の再現性・速度・品質の飛躍的向上を実現していきます。 設計領域の業界標準インフラとなり、「要件定義」領域でトップシェアを目指すとともに、全国のPM・SE約10万人(※出典:経済産業省「IT人材白書 2020」)が日常的に使うプラットフォームへと成長することを目標としています。 現在、Acsimを共に育ててくださる販売パートナー・再販代理店の募集を開始しています。 要件定義の高度化や業務設計支援に加え、日本のシステム開発における本質的な課題に挑戦したいと考えるパートナー企業の皆さまとともに、Acsimを通じて、日本のシステム開発の在り方そのものをアップデートしていく挑戦を進めてまいります。 Acsimを軸に、すべての業務プロセスに再現性を。すべての現場に設計の力を。日本の開発現場における構造改革に挑戦してまいります。 お問い合わせ Acsimに関するお問い合わせや無料トライアルのお申し込みは、以下よりお願いいたします: 製品サイト: https://ai.acsim.app/ お問い合わせ: https://support.route06.co.jp/service-contact メール: ps-marketing@route06.co.jp --- # 日本経済新聞で「Acsim(アクシム)」に関する記事が掲載されました。 URL: /news/52 title: 日本経済新聞で「Acsim(アクシム)」に関する記事が掲載されました。 summary: 2025年8月5日の日本経済新聞電子版に、当社の新サービス「Acsim(アクシム)」に関する記事が掲載されました。 date: 2025-08-06 category: "media" glossary: ai acsim dx saas agile-development supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06は、人とAIの協創によってプロダクト開発を再定義するスタートアップです。自然言語による対話と直感的なノードUIを融合したユーザー体験を軸に、要件設計「Acsim」、AIエージェント構築「Giselle」、データベース設計「Liam」などのAI駆動開発プラットフォームを提供。設計・実装・運用の全工程に対応し、開発のスピードと品質を革新します。大手企業向けシステム開発の実績とモダンなプロダクト開発の知見を活かし、大手システムインテグレーターからスタートアップまで、すべてのプロダクトビルダーが自由にアイデアを形にできる未来を目指します。 2025年8月5日の日本経済新聞電子版に、当社の新サービス「Acsim(アクシム)」に関する記事が掲載されました。 記事では、AIを活用したシステム開発支援サービスの詳細と、DX推進における要件定義工程の効率化について取り上げていただきました。 従来専門スキルが必要だった設計工程をAIで民主化し、より多くの企業がDXを推進できる環境づくりに貢献することが当社のミッションです。 【掲載メディア:日本経済新聞] システムの要件定義をAIが支援 ROUTE06、新サービス https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC059MR0V00C25A8000000/ --- # ROUTE06、三菱マテリアルとE-Scrap取引プラットフォーム「MEX」開発で協業 URL: /news/6 title: ROUTE06、三菱マテリアルとE-Scrap取引プラットフォーム「MEX」開発で協業 summary: "「MEX」は、世界最大級の受入・処理能力を持つ三菱マテリアルのE-Scrap取引の入り口となるオンラインサービスとして12月20日より運用を開始します。都市鉱山としても知られるE-Scrapのリサイクルを促進し、グローバルでの三菱マテリアルの金属リサイクル事業拡大に寄与することが期待されます。なお、このプロジェクトは、三菱マテリアルが中期経営戦略にて掲げるデジタル化戦略(MMDX:三菱マテリアル デジタル・ビジネストランスフォーメーション)における事業DX初の成果となります。" date: 2021-10-26 category: "PRESS" glossary: startup supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス " displayedHistory: true 世界最大級の製錬所と都市鉱山をデジタルでつなぎ、リサイクル事業拡大を支援 株式会社ROUTE06(本社:東京都渋谷区、代表取締役:遠藤崇史、以下:ROUTE06)は、三菱マテリアル株式会社(以下「三菱マテリアル」)とE-Scrap取引プラットフォーム「MEX」の開発で協業したことを発表します。 「MEX」は、世界最大級の受入・処理能力を持つ三菱マテリアルのE-Scrap取引の入り口となるオンラインサービスとして12月20日より運用を開始します。都市鉱山としても知られるE-Scrapのリサイクルを促進し、グローバルでの三菱マテリアルの金属リサイクル事業拡大に寄与することが期待されます。なお、このプロジェクトは、三菱マテリアルが中期経営戦略にて掲げるデジタル化戦略(MMDX:三菱マテリアル デジタル・ビジネストランスフォーメーション)における事業DX初の成果となります。 拡大するE-Scrap市場 E-Scrapは、使用済みの家電やパソコン、スマートフォンなどから発生する廃電子基板のことで、金・銀・銅・白金・パラジウムなど有用な金属が多く含まれています。 世界的に資源需要が増加する一方で新規の鉱山開発は困難になっており、都市に眠るE-Scrapを活用することは、今後金属資源を確保していくために必要不可欠です^1。近年、環境意識の高まりを背景とした世界各国のリサイクル率向上に伴い、国内のE-Scrapの処理量は2018年までの10年間で約3倍に拡大しており、今後もE-Scrapの活用は世界でも拡大していくと予想されています^2。  三菱マテリアルのE-Scrap事業 三菱マテリアルは、業界No.1の環境負荷低減を実現したユニークな銅製錬技術である三菱連続製銅法を強みに、かねてよりE-Scrapの受入・処理を行っており、現在、三菱マテリアルグループのE-Scrapの受入・処理能力は年間約16万トンと世界最大級(全世界で発生するE-Scrap量約80万トンのうち20%相当)となっています。今後、E-Scrapの受入・処理能力をさらに拡大し、2030年度末までに年間約20万トンとする計画となっています。 また、持続可能な社会への貢献として三菱マテリアルグループ全体では温室効果ガス排出量を2030年度までに17%以上削減(2013年度比)することを目指しており、E-Scrapの処理推進によって化石燃料の代替・削減に繋がることが期待されています。 E-Scrap取引プラットフォーム「MEX」 「MEX」は、「Mitsubishi Materials E-Scrap Exchange」を由来とする、三菱マテリアルのE-Scrap取引の入り口となるオンラインサービスです。製錬所へのE-Scrapの持ち込み予約をはじめ、三菱マテリアルとのE-Scrap取引において必要な手続きがいつでもオンラインで行えるようになります。直感的に操作可能なUI、取引ステータスや製錬所到着時点の写真の表示といった利便性と信頼性の向上に加え、堅牢な情報管理や手厚い顧客サポートを備えており、お客さまがこれまで以上に安心してE-Scrapを取引できる環境を提供します。また、多言語化対応や海外法規制準拠などグローバル展開を前提としており、より多様なニーズにも対応できるプラットフォームです。 三菱マテリアルは、「MEX」を提供することによって、業務手続きのオンライン化や他業務システムとのスムーズなデータ連携等も可能になり、データドリブンな業務改善が実現されます。そして、E-Scrapの取引が「MEX」上に集約されることにより、直島製錬所をはじめとする世界有数の製錬所の効率的な運用が可能となります。 <「MEX」の主な機能> 製錬所へのE-Scrap持ち込み予約 受入から分析確定まで取引ステータスや品位の表示 製錬所到着時点のE-Scrapの写真の開示 オンライン問い合わせ対応 協業内容 デジタル事業戦略の構築 サービス及び業務設計、UI/UXデザイン プロジェクトマネジメント及びアジャイル開発マネジメント データドリブンでのサービス及び業務改善支援 エンドースメント ■ 三菱マテリアル株式会社 執行役常務 金属事業カンパニープレジデント 酒井 哲郎氏 ■ 三菱マテリアル株式会社 最高デジタル責任者(CDO) 亀山 満氏 ■ 株式会社ROUTE06 代表取締役 遠藤 崇史 --- # 日経産業新聞でROUTE06が紹介されました。 URL: /news/7 title: 日経産業新聞でROUTE06が紹介されました。 summary: "スタートアップのROUTE06(ルートシックス、東京・渋谷)はそごう・西武と協力し、西武渋谷店(東京・渋谷)に開業した新形態の店舗システムの設計を手掛けた。QRコードや人工知能(AI)カメラを駆使し、接客する店員はいない。小売業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)をスタートアップのSIer(システムインテグレーター)が先導することを目指す。" date: 2021-11-16 category: "MEDIA" detailUrl: "https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC160OO0W1A011C2000000/" displayedHistory: false glossary: startup ai スタートアップが小売業DXを先導 西武渋谷店で実証 スタートアップのROUTE06(ルートシックス、東京・渋谷)はそごう・西武と協力し、西武渋谷店(東京・渋谷)に開業した新形態の店舗システムの設計を手掛けた。QRコードや人工知能(AI)カメラを駆使し、接客する店員はいない。小売業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)をスタートアップのSIer(システムインテグレーター)が先導することを目指す。 --- # ROUTE06 and Mitsubishi Materials collaborate on the development of the E-Scrap exchange platform MEX URL: /news/8 title: ROUTE06 and Mitsubishi Materials collaborate on the development of the E-Scrap exchange platform MEX summary: "MEX will commence operation from December 20th as an online service serving as the gateway to Mitsubishi Materials’ E-Scrap exchange, which possesses the world’s largest acceptance and processing capacity. MEX is expected to promote the recycling of E-Scrap, which is known as an urban mine, and contribute to the expansion of Mitsubishi Materials’ metal recycling business globally. Note that this project is the first achievement of the Business DX in MMDX (Mitsubishi Materials Digital Business Transformation), the digitization strategy they pursue." date: 2021-11-17 category: "PRESS" supplement: "#### About ROUTE06, Inc. ROUTE06 has established “creating a society where real and digital are smoothly connected” as its mission and provides digital solutions specializing in new business support and business transformation for major companies. In an era in which people’s lives are enveloped by digital technologies, ROUTE06 will contribute to the creation of new corporate value by creating both business opportunities that utilize existing assets and digital-first user experiences (UX). Incorporated: January 24, 2020 URL: https://route06.co.jp Location: 9F Marunouchi Kitaguchi Building, 6-5 Marunouchi 1-chome, Chiyoda-ku, Tokyo 100-0005 Representative: Takafumi Endo Description of business: digital product development, enterprise software services, DX consulting " displayedHistory: false ROUTE06, Inc. (headquarters: Shibuya-ku, Tokyo, Founder / CEO: Takafumi Endo, hereafter: ROUTE06) has announced that it has collaborated with Mitsubishi Materials Corporation (hereafter: “Mitsubishi Materials”) in the development of the E-Scrap exchange platform MEX. MEX will commence operation from December 20th as an online service serving as the gateway to Mitsubishi Materials’ E-Scrap exchange, which possesses the world’s largest acceptance and processing capacity. MEX is expected to promote the recycling of E-Scrap, which is known as an urban mine, and contribute to the expansion of Mitsubishi Materials’ metal recycling business globally. Note that this project is the first achievement of the Business DX in MMDX (Mitsubishi Materials Digital Business Transformation), the digitization strategy they pursue. The expanding E-Scrap market E-Scrap is the discarded circuit boards from home appliances, personal computers, smartphones, etc., and it contains high concentrations of gold, silver, copper, palladium and other valuable metals. The demand for resources is increasing globally while on the other hand development of new mines is difficult, so utilizing the dormant E-Scrap in cities is essential for securing metal resources going forward \[^1]. In recent years, along with the improvement in the recycling rate in each country around the world against the background of rising environmental awareness, the amount of E-Scrap processed domestically expanded by approximately three times over the ten years until 2018 and going forward the utilization of E-Scrap is projected to expand worldwide \[^2]. The E-Scrap business of Mitsubishi Materials For a long time, Mitsubishi Materials have accepted and processed E-Scrap taking advantage of its strength, the Mitsubishi Process for continuous copper smelting, a unique technology for smelting precious metals with the industry’s top environmental impact reduction performance, and currently boast the world’s number one E-Scrap acceptance and processing capacity of approximately 160,000 tons annually (equivalent to 20% of the approximately 800,000 tons of E-Scrap generated worldwide). Going forward, their plan is to further increase the E-Scrap acceptance and processing capacity to approximately 200,000 tons annually by the end of fiscal 2030. Furthermore, as a contribution to a sustainable society, the Mitsubishi Materials Group overall is aiming to reduce greenhouse gas emissions by at least 17% (compared to fiscal 2013) by fiscal 2030, and promotion of the processing of E-Scrap is expected the replace and reduction of fossil fuels. E-Scrap exchange platform MEX MEX is an online service which is derived from the Mitsubishi Materials E-Scrap Exchange and serves as a gateway to E-Scrap trading with Mitsubishi Materials. It enables reservations for bringing E-Scrap into the smelter and the other necessary procedures in E-Scrap exchange with Mitsubishi Materials to be carried out online at any time. In addition to the improved convenience and reliability offered by the UI which can be operated intuitively and by the display of the exchange status and photographs of the E-Scrap at the time of its arrival at the smelter, MEX is equipped with robust information management and generous client support, so it provides an environment in which customers can exchange E-Scrap with greater peace of mind than previously. Furthermore, it is predicated on global expansion, including support for multilingualization and compliance with overseas laws and regulations, etc., so it is a platform that can meet more diverse needs. By providing MEX, Mitsubishi Materials has enabled operational procedures to be put online and made smooth data connecting with other operational systems, etc. possible, and thereby realized data-driven operations improvement. Moreover, operation of the world-leading smelters including the Naoshima Smelter is expected to be more efficient because the exchange of E-Scrap is centralized on MEX. Main functions of MEX Reservations for bringing E-Scrap into the smelter Display of exchange status and grade from receiving to completion of analysis Display of the progress from receiving to completion of analysis and the assay Handling of online inquiries Details of the collaboration Digital business strategic planning of a digital business strategy Service and operations design and UI/UX design Project management and agile development management Data-driven service and operations improvement support Endorsements ■ Mr. Tetsuro Sakai, Managing Executive Officer and President, Metals Company at Mitsubishi Materials Corporation ■ Mr. Mitsuru Kameyama, Chief Digital Officer (CDO) at Mitsubishi Materials Corporation ■ Mr. Takafumi Endo, Founder / CEO of ROUTE06, Inc. \[^1]: Quoted from the Overseas Expansion Strategy (Recycling) by the Ministry of Economy, Trade and Industry and the Ministry of the Environment \[^2]: Japan Mining Industry Association study --- # ROUTE06、三菱商事の部品調達に関するマーケットプレイスの立ち上げを支援 URL: /news/9 title: ROUTE06、三菱商事の部品調達に関するマーケットプレイスの立ち上げを支援 summary: 株式会社ROUTE06は、三菱商事が取り組む部品調達に関するマーケットプレイスの立ち上げにおいて、顧客価値の向上及び事業化検証を支援することを発表します。 date: 2022-03-10 category: "PRESS" supplement: "#### 株式会社ROUTE06について ROUTE06(ルートシックス)は、大手企業のビジネスモデル変革を支援するDXパートナーです。エンタープライズ・ソフトウェア基盤の提供とアジャイルでの事業化支援によって商取引のプラットフォーム化を実現し、新たな企業価値を生み出すことに貢献します。 設立:2020年1月24日 URL:https://route06.co.jp 所在地:100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F 代表者: 遠藤 崇史 事業内容: エンタープライズソフトウェアサービス及びプロフェッショナルサービス " displayedHistory: true 株式会社ROUTE06(以下:ROUTE06)は、三菱商事が取り組む部品調達に関するマーケットプレイスの立ち上げにおいて、顧客価値の向上及び事業化検証を支援することを発表します。 デジタル技術の進歩に伴い、あらゆる産業で新たなビジネスモデルを展開する新規参入者が登場し、各企業は競争力維持・強化のためにDXをスピーディーに進めていくことが求められています^1。デジタル活用によって新しい売上を創出したり、既存の商取引をより活性化したりする「攻めのDX」^2を実行するための手段のひとつが、商取引のプラットフォーム化です。 この度の部品調達に関するマーケットプレイスの立ち上げによって、バイヤーとサプライヤーのよりスムーズな取引を実現し、新たな顧客価値を作り出すことを目指します。 支援内容 ROUTE06は、本マーケット立ち上げにおいて、以下の内容で支援を行います。 マーケットプレイスのサービス設計 基盤システムの開発と提供 UI/UXのデザイン設計と実装 2021年1月に本マーケットプレイスを公開後、現在はプロダクトマーケットフィット(PMF)の検証を経て、より精緻なビジネスモデルの構築に取り組んでいます。 --- # エンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」 URL: /products/platform/plain title: エンタープライズ向けAPIプラットフォーム「Plain」 summary: "「Plain」はあらゆる商取引のデジタル・トランスフォーメーションを実現するためのビジネスAPIプラットフォームです。" date: 2024-01-01 image: "/images/platform/plain/plain.jpeg" 「Plain」はあらゆる商取引のデジタル・トランスフォーメーションを実現するためのビジネスAPIプラットフォームです。B2C及びB2Bに関わらず、オンライン・マーケットプレイスをはじめとした様々なデジタル事業の垂直立ち上げ及び継続的なサービス改善に貢献します。デジタルプロダクト開発の体制が十分に整っていない伝統的な大手企業でも、Plainを活用することによってシステム開発期間を大幅に短縮できると共に、社内外の開発パートナーとのアジャイル開発や日々の業務オペレーションを円滑に行うことができるようになります。バックエンドシステムは大手企業の求めるセキュリティ水準に対応しており、各種レポートティングやモニタリング機能を充実させることで、顧客企業が安心してユーザー体験の向上及び業務改善に注力できる環境構築に貢献します。 ヘッドレスアーキテクチャ / Headless architecture ビジネス用途や顧客価値に応じて自由なユーザー体験及び業務フローを設計できるだけでなく、デザイン性の高いユーザーインターフェースを実装することができます。生活者向けのWebサービスやネイティブアプリ(iOS/Android)から、法人向けの業務管理画面やビジネスダッシュボードまで、あらゆるデジタルタッチポイントのカスタマイズに対応しています。 オーケストレーション / Orchestration クラウドサーバー上に構築された基盤データベースから、様々な外部SaaSや社内システムへのAPIその他データ連携機能を活用することで、デジタルサービスの運用及び関連業務の遂行に必要なシステムインフラからユーザーインターフェースまで、ワンストップで構築することができます。複雑かつ個別性の高いビジネス要件にも対応可能であり、事業フェーズやサービス規模に合わせて柔軟にシステム構成を組み替えることができます。 データプラットフォーム / Data platform あらゆるビジネスデータがPlainのインターフェイスを介して分析可能な状態で蓄積されるため、特別なデータエンジニアリングやデータプラットフォームを導入せずとも、顧客企業はシステムリリース直後から高度なデータサイエンスやマーケティングオートメーションなどに活用可能なデータ基盤及びビジネスインテリジェンス機能を利用することができます。また既に統合データ基盤やBIツールを導入済みの場合でも当該システムのフォーマットに合わせたデータ連携を実施することで、事業全体におけるデータ活用の幅をより広げることが可能になります。 Plainの主な用途 Plainはオンラインマーケットプレイス(B2C/B2B)、受発注プラットフォーム、OMOストア、クラウドEDI、ビジネスマッチングプラットフォームなどの複雑な業務オペレーションやデータ連携が求められるデジタル事業において導入メリットの大きいバックエンドサービスです。 リアルタイム性の高くかつ正規化されたデータ取得及び統合管理に強みを持つため、柔軟なユーザー体験の設計とその継続改善を実現し、新しいビジネスデータを活用した新しい顧客サービス及びマネタイズ手段の構築にも貢献します。店舗や工場施設のようなリアルアセットを活用したデジタルプラットフォームサービスを立ち上げたい小売・製造・不動産業や国内外での取引先ネットワークを活用したマッチングプラットフォーム事業を立ち上げたい流通・仲介業など、様々な業界の事業DX案件でPlainの導入が進んでいます。 Concept プロダクトコンセプト pléin/プレインの由来 Plainには元々、平らで、見通しの良く、飾りのない台地という意味があります。このプロダクトはあくまで土台となるものです。 Plainという「平野」に事業主体となる顧客企業や様々なパートナーが集い、新しいサービスや事業を共創してくことで、その景色は多様に移り変わり、また時間と共に発展・拡大していく可能性を持っています。 このプロダクトを活用することによって生まれたデジタルサービスは一つとして同じものはありません。 必ずしもデジタル技術に長けていない人や企業でも、各々の個性や強みを十二分に表現することができ、また新たな成長機会やきっかけを掴む舞台となれるようなプロダクトを目指しています。このようなコンセプトが「Plain」の名前の由来になっています。 --- # 個人情報保護方針 URL: /terms/privacy-policy title: 個人情報保護方針 englishTitle: Privacy Policy 株式会社ROUTE06(以下「当社」といいます。)は、「個人情報の保護に関する法律」その他の関連法令を遵守し、保有する利用者に関する情報を適正に取り扱うことが企業の重要な社会的責務であるとの認識に立ち、以下のとおりプライバシーポリシー(以下「本プライバシーポリシー」といいます。)を定めます。当社は、本プライバシーポリシーに基づき、利用者の個人情報(「個人情報の保護に関する法律」の定義によるものとします。)を取り扱います。 当社が提供するすべてのサービス(当サイトの運営を含み、以下、「本サービス」といいます。)には、本プライバシーポリシーが適用されます。そのため、本サービスをご利用いただくためには、本プライバシーポリシーを熟読のうえ、内容に同意していただく必要があります。同意いただけない場合は、本サービスへのアクセスおよび本サービスのご利用はお断りいたします。 なお、サービス別のプライバシーポリシーまたは利用規約等(以下、併せて「利用規約等」といいます。)において個別に利用者に関する情報の取り扱いを規定する場合、本プライバシーポリシーに優先して利用規約等が適用されます。 個人情報の利用目的について 利用目的 当社は本サービスにおいて、個人情報を、以下の目的で取り扱います。なお、以下に記載のない目的で個人情報を取り扱う場合には、あらかじめ利用目的を明示します。 本サービスの提供のため 本サービスの利用状況等を調査・分析するため 本サービスの改良・改善、または新サービスの開発のため 本サービスに関する情報の事前告知、紹介、ご案内等の情報提供、またはアンケート等調査のお願いのため 本サービスに関するお問い合わせいただいた方への対応、本サービスに関するご説明とご案内のため 当社の求人にご応募いただいた方へのご連絡、ご案内および採用活動のため 採用後の雇用管理のため その他、上記目的に関連・付随する一切の業務のため 取得する個人情報および方法 本サービスに関するウェブサイト上のフォーム等に入力された情報(氏名、メールアドレス等) 当社のメールアドレスに対して、メールで送信された情報(送信者名、メールアドレス等) 当社の採用活動の過程で応募者から提供される情報(氏名、住所、連絡先、職歴等) その他本サービスの提供に必要な個人情報 個人情報の管理について 当社は、個人情報の漏洩、滅失、破棄損等の防止のために、「個人情報の保護に関する法律」その他の関連法令、ガイドラインおよび当社の内部規則に従い、適切な安全管理策を施し、保有する個人情報の保護に努めます。また、従業員に対しても個人情報の適切な取扱い等についての教育を行い、その保護に万全を期するよう努めます。 個人情報の外部委託について 当社は、上記利用目的のために、個人情報の取扱いの一部を、個人情報の取扱いに関する契約を締結したうえで、外部業者へ委託することがあります。また、当社が保有する個人情報の取扱いを外部委託するときは、個人情報保護に関する当社の選定基準に基づき委託業者を選定し、契約により個人情報保護を徹底するとともに、当社の責任において、委託業者に対して必要かつ適切な管理、監督を行います。 個人情報の第三者への提供について 当社では、以下のいずれかに該当する場合を除き、取得した個人情報を第三者に提供することはございません。 ご本人の同意がある場合 人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、緊急を要するなど、ご本人の同意を得ることが困難である場合 公衆衛生の向上または児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、ご本人の同意を得ることが困難である場合 国の機関もしくは地方公共団体またはその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、ご本人の同意を得ることによって当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合 その他法令に基づき第三者に対する個人情報の提供が許される場合 個人情報に関するお問い合わせについて 保有する個人データに関する、ご本人から利用目的の通知または保有情報の開示、訂正、削除、利用停止または第三者提供記録の開示もしくは第三者提供の停止のご請求および苦情その他のお問い合わせにつきましては、以下の窓口までご連絡ください。 個人情報問い合わせ窓口 株式会社ROUTE06 info@route06.co.jp 東京都千代田区丸の内一丁目6-5 丸の内北口ビルディング 9F Cookieの利用について 当サイトは、Google LLCの提供するアクセス解析ツール「Googleアナリティクス」その他ツール等を使用しています。Googleアナリティクスはデータの収集のためにCookieを使用しています。データは匿名で収集されており、当該データ単体では個人を特定することはできず、個人を特定可能な他のデータと照合されることもありません。 詳細はGoogleアナリティクス利用規約および広告に関するGoogleポリシーをご参照ください(なお、当社は、リンク先の情報の正確性について一切保証いたしません。)。 また、本サービスでは、広告配信事業者の広告サービス(ディスプレイ広告・リマーケティング広告・リターゲティング広告)を活用し、過去に当サイトを訪問された方が特定のページを訪問した際に広告を配信します。その際、サイトの訪問履歴情報を取得するためにCookieを利用します。広告配信事業者におけるCookie情報その他のデータの取り扱いについては以下の各社のプライバシーポリシーをご参照ください(なお、当社は、リンク先の情報の正確性について一切保証いたしません。)。 https://www.facebook.com/privacy/policy https://policies.google.com/privacy https://x.com/ja/privacy https://jp.linkedin.com/legal/privacy-policy 利用者は、Cookieを無効にすることで、データの収集を拒否することができます。 本プライバシーポリシーの改定について 当社は、利用者の個人情報の取り扱い方法について適宜見直しを行い、本プライバシーポリシーを改定することがあります。その場合、当サイト上での表示その他の適切な方法により周知いたします。 制定:2022年2月17日 最終改定:2025年1月29日 --- # 情報セキュリティ基本方針 URL: /terms/security-policy title: 情報セキュリティ基本方針 englishTitle: Security Policy 基本理念 株式会社ROUTE06(以下、当社)は、「未来への道筋を描く / Define the route」を理念とし、事業を行っています。 当社の事業の中で取り扱う、お客様の情報をはじめとする情報資産は、当社の経営基盤として極めて重要なものです。 漏洩、き損、滅失等のリスクから、情報資産を保護することの重要性を認識した役員や従業員を含めた、情報資産を扱う者が本方針を遵守し、情報資産の機密性、完全性、可用性といった情報セキュリティを維持するための活動を実践します。 基本方針 情報資産を保護するために、情報セキュリティ方針ならびに、それにまつわる規程類を策定し、これに従って業務を行うとともに、情報セキュリティに関連する法令、規制その他の規範、及び、お客様との契約事項を遵守いたします。 情報資産に対して存在する漏洩、き損、滅失等のリスクを分析、評価するための基準を明確にし、体系的なリスクアセスメント方法を確立するとともに、定期的にリスクアセスメントを実施いたします。また、その結果に基づき、必要かつ適切なセキュリティ対策を実施いたします。 担当役員を中心とした情報セキュリティ体制を確立するとともに、情報セキュリティに関する権限および責任を明確にいたします。また、すべての従業者が、情報セキュリティの重要性を認識し、情報資産の適切な取り扱いを確実にするために、定期的に教育、訓練および啓発を行います。 情報セキュリティポリシーの遵守状況及び情報資産の取扱いについて、定期的に点検及び監査を行い、発見された不備や改善項目については、速やかに是正処置を講じます。 情報セキュリティ上のイベントやインシデントの発生に対する適切な処置を講じるとともに、万一それらが発生した場合に際して、あらかじめ、被害を最小限に留めるための対応手順を確立し、有事の際には、速やかに対応するとともに、適切な是正処置を講じます。また、特に、業務中断に関わるようなインシデントについては、その管理の枠組みを確立し、定期的に見直しを行うことにより、当社の事業継続を確実にいたします。 基本理念を実現するための目標を定めた情報セキュリティマネジメントシステムを確立し、これを実行するとともに、継続的に見直し、改善を行います。 2022年08月17日 制定 株式会社ROUTE06 代表取締役 遠藤崇史 --- # Webサイト利用規約 URL: /terms/terms-of-service title: Webサイト利用規約 englishTitle: Terms of Service 株式会社ROUTE06(以下「当社」といいます。)が運営するWebサイト(URL:https://route06.com )(以下「本Webサイト」といいます。)は、当社の事業運営に必要な情報提供を目的としたものです。本Webサイトを利用される場合は、本Webサイト利用規約(以下「本利用規約」といいます。)をご一読頂き、同意された場合にのみご利用下さい。 本利用規約の適用 本利用規約は、本Webサイトにアクセスするご利用者(以下「ご利用者」といいます。)による本Webサイトの利用(本Webサイト上の情報の閲覧行為を含みますが、これに限りません。)について、全てのご利用者に適用されます。 知的財産権について 当社が本Webサイトにおいて提供するコンテンツ(以下「本コンテンツ」といいます。)の内容(文章、写真、画像、音楽、データ、ソフトウェア、イメージ、サウンド、グラフィックス、アニメーション、ビデオ(映像)などを含みますがこれらに限りません。)についての著作権、商標権、意匠権及び特許権その他の知的財産権その他一切の権利(以下「知的財産権等」といいます。)は、全て当社又は本Webサイトでの使用を許諾した第三者に帰属します。ご利用者は、本コンテンツについて、当社の事前の許諾なく、複製、改変、第三者への公衆送信、転載、転用又は販売等の二次利用をすることができず、また第三者に行わせることはできません。 免責事項について 本コンテンツは、ご利用者に対する情報提供を目的としております。当社は、本コンテンツを通じて提供される一切の情報について、その情報の適合性、完全性、正確性、安全性、合法性、最新性、信頼性、合目的性、有用性、商品性及び知的財産権等の不侵害に関して、いかなる保証も行わず、またこれらに関して責任を負いません。 また、第三者の提供するコンテンツ等に関する苦情、クレーム又は紛争については、当社は一切関与いたしません。当社は、本コンテンツ及び本Webサイトの利用に関して、債務不履行責任、契約不適合責任又は不法行為責任その他その原因を問わず、利用者に対して何らの責任も負いません。 当社は、自らの判断により、ご利用者に事前の通知を行うことなく、本コンテンツの全部又は一部の更新、追加、変更若しくは削除、又は本コンテンツの提供の中断若しくは停止等を行う場合があります。また、これにより、ご利用者が情報入手の遅延、情報の滅失又は損壊その他の損害を被った場合であっても、当社は一切の責任を負いません。 個人情報の取り扱いについて 個人情報の取り扱いについては、当社のプライバシーポリシーをご確認ください。 リンクについて 本Webサイトへのリンクは自由に設定できますが、リンク元のWebサイトの内容(公序良俗に反する等)やリンクの方法によっては、事前事後にかかわらず、本Webサイトへのリンクをお断りする場合があります。また、本WebサイトのURLは、予告なしに変更される可能性があることをご了解ください。 なお、本Webサイトのリンクによって発生した苦情、クレーム又は紛争等については、リンクを設定されたご利用者の責任及び負担で解決していただくものとし、第三者からの損害賠償請求その他いかなる苦情、請求などについて、当社は一切責任を負いません。 損害賠償 ご利用者が本利用規約に違反して当社に損害を与えた場合、当社が直接的若しくは間接的に何らかの損害、損失又は費用負担(弁護士費用の負担を含みます。)を被った場合、ご利用者は、当社に対して、当社の請求にしたがって直ちにこれを賠償又は補償するものとします。 本利用規約の変更について 当社は当社が必要と判断する場合、本利用規約を変更できるものとします。ただし、当社は、本利用規約の内容を変更する場合、変更後の本利用規約の内容及び変更の効力発生時期を当社所定のWebサイト上に掲載する等の方法で周知するものとします。 変更後の本利用規約は変更の効力発生時期に効力を生ずるものとします。かかる変更の内容を利用者の皆様に個別に通知することはいたしかねますので、当社Webサイトをご利用の際は、当社Webサイトに掲載される最新の本利用規約をご覧ください。 準拠法及び管轄裁判所 本Webサイトの利用に係る契約の成立、効力、履行及び解釈に関しては、日本国法が適用されるものとします。本Webサイトの利用者と当社との間に生じた紛争については東京地方裁判所又は東京簡易裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とします。 2022年6月29日 株式会社ROUTE06